シナリオ詳細
<デジールの呼び声>静めよ沈め、我が■■らよ
オープニング
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「先だっては助かったよ、ラダの嬢ちゃん」
「私らは頼まれた通りにしただけだよ。それで、連中の様子は?」
幾つかの商船を背後に告げられたカリーナ・サマラからの言葉にラダ・ジグリ(p3p000271)は小さく首を振ってこたえる。
数日前、ラダはカリーナ直々の依頼を受けた。
彼らはダガヌチなる存在に望郷の念を増幅され、ある島を占拠していたのだ。
それをラダやイレギュラーズ達はダガヌチを倒して商会員たちを救い出した。
「それならよかった。……ところで、何でこんなところに?」
ラダは本題に移らんと問いかけた。
今、ローレットは戦闘体制へ移行しつつある。
イレギュラーズ達の調査の結果、『深怪魔』は『悪神ダガヌ』によって生み出される怪物であることが判明した。
悪神ダガヌの再度の――そして完全なる封印を施すための最終作戦。
インス島への一斉攻撃が為に、ローレットは戦備を整えつつあるのだ。
「あぁ、出発前に挨拶しておこうとね。
私らサマラ商会はあんたらの作戦の手伝いをすることにしたのさ」
「手伝い?」
「そう。うちとうちの実家の船を動員して、補給隊を買って出たのさ。
いい商売になりそうだろう?」
にやりと笑うカリーナの姿は、確かに商魂の逞しさが見えている。
「どうだろう、あんたにうちの補給隊の護衛をお願いしたいんだけどね」
「そういうお願いか。……分かった」
少しばかり考える様子を見せた後、ラダは頷いて見せる。
「助かるよ、それじゃあ頼むよ」
にやりと笑ったカリーナに肩を叩かれながら、2人は船の方を向いた。
「今回の任務は、あんた達に助けてもらった連中の嘆願でもあるのさ」
「そうなのか?」
「迷惑をかけてしまったから、挽回できる機会がほしいってね。
まぁ、そこまで言われちまったら会長としては無視するわけにもいかないだろ」
ラダの隣、慈しむような眼でカリーナが船を見上げていた。
●
船団が海原を駆けて行く。
晴天が瞬くうちに曇天へ変わり、荒く打つ波を裂いてカリーナ率いるサマラ商船団は走っていた。
先を多くの軍船を主とする船団が進んでいく様を見ながら、カリーナは先を見据えた望遠鏡から目をはなす。
いよいよと見えた島は、仄暗い影を纏っていた。
「到着みたいだ! 私らの役目は補給、前線まで行く必要はないよ!」
叫んだカリーナは、ふと険しい表情を浮かべた。
そのまま足を踏みしめ、舵の方へと歩き出す。
「どうなってるんだい!」
目的の場所まで辿り着いて、船室に入ろうと試みたカリーナは思わず立ち止まって声をあげた。
「ちょっ、はなしな! このままじゃあ、船団を追い抜いて前線まで出ちまう!」
しかし、カリーナを食い止める船員は聞いてないように食い止めるばかり。
「……おい、聞いて――なっ」
押しやられ、後退したままに相手を見て、目を見開いた。
「……これは一体どういうことだい?」
どことなく気怠そうな印象すらあるその姿は、まるで寝ているかのようで。
「なんなんだい、一体……っていうか、どこへ連れて行こうってんだい……」
カリーナがぽつりと呟く。
その呟きに答える者はなく、ただ船は進んでいく。
包囲網の只中にあるインス島――その戦場を突っ切るように。
衝撃音が轟いたのは、それからすぐの事だ。
「なんだい!」
大いに揺れる船に、目の前の船員が大きくのけぞって頭をぶつけ、小さく唸る。
「大丈夫かい!」
「……んん? 会長……いつつ……俺は一体……」
後頭部をさするその船員は不思議そうに声をあげる。
●
「敵襲だ! 皆、早く臨戦態勢を!」
ラダは衝撃音を聞いて外に出るやその光景に声をあげた。
「――あれは」
その視線が船団の前を塞ぐように展開するダガヌチたちを捉えた。
そのうちの1体、それを見てラダは思わずスコープを見た。
天使、或いは亜竜のような不可思議なソレは、大きな二対四翼を羽ばたかせていた。
灰髪を曇天に溶かすソイツは狙撃銃を担ぐように肩に付け、盾を持つ手をだらりと下げる。
「――あの、意匠は――」
ラダは思わず目を瞠る。
狙撃銃に、盾に刻まれた意匠は、あまりにも見覚えがある。
「――嬢ちゃん! 悪いけど迎撃を頼めるかい!」
「あぁ、分かってるよ先輩。それより何とかして下がれないか!」
「分からない! 舵を取ってたやつも
動力部を操作してた連中も、眠ったように動きゃしない!
今、動ける連中に動いてもらって動きゃしない奴らをどけて退却できるようにする。
それまで頼めるかい!」
カリーナからの声。それを聞きながら、ラダは愛銃のスコープがソレの顔を捉えるのを見た。
――――愉しそうな、それでいてどこか懐かしそうな笑みが刻まれた顔がそこにあった。
- <デジールの呼び声>静めよ沈め、我が■■らよ完了
- GM名春野紅葉
- 種別通常
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2022年10月09日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「なんだありゃ。
ダガヌチともまた違うようだが……なぁ先輩。
例の手記にああいう手合いの情報、あったりするか?」
改めて『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)が問えば直ぐに答えは返ってきた。
「あんなのは知らないよ……ただ、いや。一旦あとにしよう。
こんなとこに居ちゃあおちおち話も出来やしない」
「それもそうだ。よろしく頼む、先輩」
ラダはカリーナの護衛をするように傍を離れず銃口をダガヌチへと向けた。
「あんまり無理してくれるなよリドニア、フラン!」
ラダの言葉を受ける『ノームの愛娘』フラン・ヴィラネル(p3p006816)はというと。
「……なんかあの人? こっちすごい見てるけどほっぺにご飯粒でもついてる?
はっそれともあたしとかラダ先輩がかわいいから竜宮嬢にスカウトかなぁ!?」
――なんて可愛らしい反応を見せている。
「……皆のお手伝いに手を貸して!」
そのまま切り替えて、フランは精霊たちへとコンタクトを取る。
それに応えるように、フランを中心とした周囲を穏やかな風が吹いた。
導きを与えてる悪戯の加護がイレギュラーズを包み込む。
「戦いもそろそろ佳境でございましょうか。向こうの動きも活発になって来ますわね」
携帯用の灰皿に煙草を捨て、『夢先案内人』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)はキュッとグローブを引っ張った。
「それじゃ、一つこれが終わったら竜宮のクラブでシャンパンでも開けましょうか」
見上げたそこで、ダガヌチたちが動き出そうとしていた。
「ラダ君も妙な知り合いが居たモノだ。友好的とは言い難いようだがね」
ラダとカリーナの近くへと移動しつつ『戦飢餓』恋屍・愛無(p3p007296)が言えば、当の本人からは初対面だと返ってくる。
「さて。彼女の執着は何処にあるのか」
粘膜を槍状に伸ばしながら愛無は思考する。
(補給隊が前へ出たタイミングで、示し合わせたようにこの敵襲……操られている?
……ううん、考えるのは後にしなきゃ。被害が出る前に、彼らの退却の時間を稼がないと!)
その加護を受けつつ『カモミーユの剣』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)は状況の不自然さを思う。
「……危ない戦場ばかりごめんね。今回も頼むよ!」
どこからともなく飛んできたワイバーンへと跨れば、一気に空へと羽ばたいていく。
愛無と同じような疑問を抱いているのは『ヤドリギの矢』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)もである。
飛空探査艇に跨り、海上へと跳び出せば、そのままやや間合いを開けるように移動しつつ。
「気になるけどあれはあっちに任せるとして……」
薄明の大弓を静かに構え、視線は静かにダガヌチを見る。
空に揺蕩うようなそれを見据え、『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)もまた、ミヅハや愛無のように疑問を抱いている。
(とはいえ、それを探ったりする余裕は無さそうですね)
そもそもの前提、人なのかさえ怪しいところではあるものの、それもまた探っている暇はなさそうだ。
聖なる血を以って象られた印に温かな熱を帯びながら、マリエッタは戦場を見る。
「ふふ、海の上で踊る機会なんてそうないから楽しみね」
加護を受けて軽く跳躍したのは『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)である。
そのまま優雅に踊るように着水すれば、海上をするすると滑るように走り抜けていく。
「お願い」
シャルティエがワイバーンへとそう言えば、ワイバーンが咆哮を上げる。
それはさながら名乗りをあげるかのように戦場へと轟き、ダガヌチたちの視線がシャルティエに向かった。
一斉に近づきはじめ、銃口がずらりとシャルティエを巡らせる。
●
「突っ込んで!」
シャルティエがワイバーンへと指示を与えれば、咆哮を上げたワイバーンが戦場を飛翔する。
狙う先は、シャルティエ以外の方へと銃弾をぶちまけるダガヌチたちの1匹。
射程圏内まで移動すると同時、シャルティエはハイディを抜いた。
光を湛える検診を振り抜けば、光刃は戦場を駆け、ダガヌチの身体を斬り裂いた。
思わぬ位置からの斬撃に、ダガヌチがシャルティエの方を向く。
「行かせないよ!」
動き出したラミエルへフランは立ち塞がった。
「あ、は」
真っすぐにラミエルを見据えて告げたフランに、彼女?が笑う。
「沈め」
呪詛のような言の葉には質量があった。
振り抜かれた斬撃がフランの身体に傷を刻む。
「痛くない、痛くないよ!」
自分へと激励をかけるように告げて、フランはラミエルを抑えるように声をあげる。
「何しに来たかはわかりませんが、あんまり余裕面してると火傷しましてよ?」
ラミエルへ肉薄し、リドニアは拳に霊力を籠めた。
そのままラミエルの懐に潜り込めば、その場で跳躍。
鋭く伸びた拳はラミエルの腹部辺りへと突き立ち、纏った霊力が刃のような裂傷を刻む。
「流石に海の上の戦闘は慣れないわね……義足についた潮水をちゃんと落としておかないと錆びちゃうわ」
海上を滑るように行くヴィリスは僅かに身を屈めるや、一気に跳ねた。
海上を舞い、曇天の空を踊る少女は1匹目のダガヌチを蹴り飛ばすと、その勢いに合わせて踊り狂う。
幾度も幾匹ものダガヌチを穿ち、蹴り飛ばし、打ち、くるりと最後の着水まで美しき踊りであるが如く。
「そんだけ集まってたら躱せないだろ」
ミヅハは静かに弦を引く。
放たれた魔弾は一斉に空を翔け、鮮やかな軌跡を描く。
曇天を裂く鮮やかなる朝日が空に線を引く。
遥かなる空へと飛翔したそれは、重力に従うように降下。
落下地点にいたダガヌチたちを一斉に撃ち抜いていく。
その軌跡は宛ら流星群の如く。
「私が支えます」
マリエッタは静かに祈るように手を組んだ。
どくんと脈打つような感覚と共に、祈る願いに引きずられるように魔力が聖印に吸い込まれていく。
願いにこたえるは幻想の福音。
温かき祝福の福音は幻想なれど確かな力を以って降り注ぐ。
「……にしてもあんな形状のは初めて見たな。
率いてる、という風でもないし一体どういう関係だ?」
小さな呟きを残しつつ、ラダは鋼鉄の弾丸をぶつまけて行く。
「動向を見る限り、すぐに船を沈めにかかるような事はなさそうだが……さて。
なんであれまずは仕事と行こうか」
愛無は事も無げにそう言いつつ、槍状の粘膜を投擲する。
放たれた粘膜は戦場を走り抜け、傷だらけのダガヌチの中心部あたりに突き立った。
粘膜はダガヌチの体内で炸裂、無数の棘と化して内部からダガヌチに風穴を開けた。
シャルティエは煌々たる光を湛える愛剣を空へ掲げた。
「これが僕の覚悟だ!」
聖光が光量を増して、炸裂する。
全周を穿つ光の刃が近くにいたダガヌチたちを切り刻んでいく。
「――あと少し、一緒に耐えてくれる?」
ワイバーンから小さな唸り声の返答がある。
奮い立たせるようなワイバーンの咆哮に頷いて、シャルティエはダガヌチの数を確かめた。
●
リドニアは拳を握り締めた。
「私を狙いに来るとはいい度胸してますわね……望むところでしてよ」
ラミエルの銃口がリドニアを狙っている。
「あ、あ」
声がして――魔弾が放たれた。
泥にまみれた魔弾は強い毒性と共に身体の動きを抑え込む。
(この感じ、麻痺、ですわね……それに、随分と重く……)
放たれた弾丸を敢えて受ければ、そんなものはどうという事はないとばかりに、そのまま拳を握り締めた。
(まだあれを使うには早すぎますからね……もっと狙ってもらいましょうか)
握りしめた拳をもう一度。
優雅に、鮮やかに放つ拳打が鮮やかにラミエルの身体に突き立って、どろりと泥がリドニアを包む。
(……流石にこれ以上は負担が大きすぎるだろうか)
愛無は傷の増えて行くシャルティエを見上げ、ラダとカリーナの傍から少しばかり離れた。
深く深呼吸して、本性を露わにすれば、一気に咆哮を上げた。
戦場を揺らす質量を持った咆哮が船体に軋みを上げさせ、シャルティエへと向かっていたダガヌチたちの視線を愛無に向ける。
「ふふ、楽しませてもらってるお礼よ! もっと行きましょうか!」
ヴィリスは微笑を零すや、一気に走り出した。
「私の踊りに魅了されればされるほど、他の誰かが貴方達を倒す隙が出来るのだから!」
終わらぬタランテラ。少女の舞踏が戦場を掻き乱す。
それから逃れるようにダガヌチたちが散開を試みる。
「ま、流石に知性はあるか。でも――」
ミヅハは僅かにばらけたダガヌチたちを見据えながら弓を引き絞る。
形成されるは大樹の剣。あるいは新芽の矢。
迷宮森林の奥地に眠る伝承の魔剣を思わせる一条の矢。
射出された矢は空を翔けて1匹のダガヌチを貫いて、そのままその後ろにいたダガヌチをも巻き込んで撃ち抜いていった。
「……海の上だからと、影を見ないのは危険ですよ。もちろん、作り出した血鎌もね」
マリエッタは此方に向かって飛んでくる1匹のダガヌチを見据えて静かに告げる。
その直後、こちらへ向かうダガヌチの身体を、一斉に影が穿つ。
幾つもの風穴を開けた影がダガヌチの泥を滴らせながら消失し、海水へと落下したダガヌチはそのまま溶けて消えて行った。
●
「ヴィリスさんが沢山踊ったって息切れしない活力を!
皆に戦い続けられるだけの力を――!」
フランは森の激励を放つと同時、愛杖を天へと掲げた。
刹那、分厚い曇天の空が切り開かれていく。
降り注ぐ陽光が戦場を照らし付け、暖かな風が周囲を包み込む。
慈愛の息吹に導かれた仲間達の攻勢が始まろうとしていた。
同時、ラミエルが絶叫を上げる。
悲鳴にも似た絶叫の後、一気に後退。
「あははは! 還ろう、還ろう、わた、私と一緒に!」
刹那、一気に飛翔、フランを飛び越えラダの方へ走り出した。
「――仕方ありませんわね。
私の魔導術式は少し凶暴でしてよ――後悔なさいな」
リドニアは静かに手を払う。
「第八百二十一式拘束術式、解除。
干渉虚数解方陣、展開」
幾重もの方陣が浮かび上がり、蒼炎がリドニアの腕を覆いつくす。
「起きなさい。蒼熾の魔導書」
グローブが焼け焦げて用途を為さず、蒼炎が踊り、雷光が奔りだす。
「焼き尽くしなさい」
それこそが承認であったかのように、その言葉の刹那に出力が跳ね上がった。
「さぁ、踊りましょう! 見物が終わったらすぐに帰ってもらいましょうか!」
ヴィリスはラミエル目掛けて走り抜けると、瞬く間に踊りゆく。
美しき舞踏はラミエルさえ魅了するばかりに逃れることの出来ぬ連撃の始まり。
終息へ迫る足運び、船体をカツンと叩いた一歩。
「私の攻撃はじゃま程度にしかならないでしょうけど、
ほんの少しでも邪魔に思ってもらえればそれでいいわ!」
始まるは轟きのファランドール。
軽快なるステップは未だに終わらない。熱狂を誘う連撃は苦痛さえ気づかせず鋭く突き刺さる。
「的は4枚もあるんだ、一枚くらい射抜いてやるぜ!」
ミヅハはラダの方へと走り抜けたラミエルの背中を見据え、魔弾を番える。
神性と調和し、大いなる魔の抱く殲滅の魔力を降ろす。
「後悔するなら、こっちを見てないアンタを恨みな」
たった1つ。ただの一条の光へ、大いなる魔力を集束させていく。
陽光を思わせる輝きを放つ魔弾を、真っすぐに据えて――放つ。
戦場を駆ける魔力が一条の流星を思わせる輝きを残してラミエルの翼の1つを抉り取る。
「……本当に、何を願って、そうなったのですか。
この者達に向けれる救いは……命を奪うことだけなのですか」
マリエッタの呟きは潮風に攫われていく。
得体の知れぬラミエルなる存在も、ダガヌチも。
その性質上、何かしらの願いはあるのだろうが――それは分からない。
祈りを捧げ、幻想福音を鳴らしながら、マリエッタはひたすらに想う。
「何かあるなら見てばかりいないで口で言ったらどうだ。金とるぞ!」
ラダはそういうと、思いっきり銃床でラミエルを殴りつけた。
ぐんにゃりと折れたように曲がったラミエルがすっ飛んでいった。
「――あぁ、あぁ! 連れて帰る――お前、オマエ、おまえも、一緒にににに!」
にたり、にたりと笑うラミエルが羽ばたいてこちら目掛けて飛翔する。
「人の話を――」
あらん限りの弾丸をぶちまければ、幾つかがラミエルを捉えた。
「――ああああ!」
けらけらと笑い、ふるると震えたかと思えば、泥が甲板に零れ――そこからナニカが姿を見せた。
「――やはり、産むのか」
最速で愛無が反応したのは、予測していたから。
生まれ落ちたばかりのダガヌチがカリーナに飛び掛かるその寸前に割り込めば、粘膜が反撃とばかりにダガヌチへ襲い掛かる。
「――散れ」
刹那に放たれた粘膜が槍状に伸びて生まれたばかりのダガヌチを脳天から真っすぐに串刺しにすれば、泥になって消える。
「―――――あぁ、あぁ、あぁ」
嘆くラミエルが、ふらふらと浮かび上がる。
「次は、一緒に――沈んで、死ね!」
視線をカリーナに固定して、そう告げたラミエルが飛翔しどこかへと消えていく。
●
戦いが終わり、撤退へと舵を切る船の中、ラダは約束通りにカリーナの下を訪れていた。
「信じたくはないがね……」
そう前置きして、カリーナはラダだけではなく、この場にいる面々全員に向けて話し始める。
「ラダの嬢ちゃん、アンタは海底都市で石板を見つけたんだろ?」
「あぁ。確か神殿みたいなところにあったな」
「そうだ。その神殿、何が祀られてたか思い出せるかい?」
「たしか……あぁ、そうだ。『飛行種みたいに背中に羽が生えてる像が出てきた』」
「……多分、それだよ」
「……いや、待ってくれ。流石にそれはないだろう。
確かに、顔やらなにやらは砕けててろくに判別は出来なかったが……あそこまで悍ましくはなかったぞ」
「そうだね。だからアレは多分、ダガヌチって連中で間違いないのさ。
理由は分からないけれどね、『あの海底都市と一緒に心中した連中がいた可能性ってのがある』。
そういった連中の望みがダガヌチって連中に巻き込まれて出来た願望……みたいなやつだとしたら、あの姿は説明がつく」
「私やあんたに反応してたのは」
「少なくとも、私に反応してたのは『私があの都市の末裔だから』だろうね。
嬢ちゃんは髪とか目とか、あとまぁ、肌の色もか。
少し私と近い部分があるだろう? そういうのに反応した可能性がある。
それが血なのか、偶然似たところがあるからかまでは私も知りようがないけどね」
「奴がこっちを狙ってくる理由は分かったが……
じゃあ、あのダガヌチはどうして奴と似た姿をしていたんだ?」
ラダの問いにカリーナも首を傾げる。流石にそこまでは分からないようだ。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お疲れさまでしたイレギュラーズ。
MVPは愛無さんへ。
GMコメント
こんばんは、春野紅葉です。
それでは、早速始めましょう。
●オーダー
【1】『竜骨堕姫』ラミエルの撃退
【2】前線からの撤退
●フィールド
インス島近海に存在する大海原です。
皆さんはサマラ商会が起用する船団に滞在しています。
ここから戦闘するもよし、ミニワイバーン、飛行能力を駆使して航空戦を試みるもよし。
あるいは水上を移動するもよし。
●エネミーデータ
・『竜骨堕姫』ラミエル
長い曇天に溶けるような灰の髪と背中に灰色がかった二対四翼を持ち、
飛行種とも亜竜種とも取れる不思議な姿をした謎の存在です。
どちらかというと女性体のように見えます。
常に海上に浮かんで此方の様子を窺っています。
ラダさんやカリーナに向けて、愉悦とも懐古ともとれる不思議な笑みを浮かべています。
以前にラダさんがカリーナの依頼で探し求めた
銃、剣、盾のレプリカと似た、けれどより禍々しい武器を持っています。
射程、技などは一切不明ですが、銃や剣を持つことからレンジは問わないと思われます。
この単体でHARD相当に強いです……が、
今回は相手としては『何かを確かめる為に顔を出しただけ』のようです。
比較的簡単に撤退はしてくれます。
・ダガヌチ×10
飛行種を思わせる翼と羽毛、下半身が鱗に覆われ、両腕からは泥が滴り続け、
泥で出来たような銃を握り締めています。
総じてどことなくラミエルを簡略化したようにも見えなくもありません。
見た目こそ強そうですが、意外と脆いです。まるで産まれたてのようです。
遠~超距離に魔弾をぶちまける戦闘スタイルです。
【毒】系列、【崩れ】系列、【足止】系列、【暗闇】を持ちます。
●NPCデータ
・『サマラ商会』カリーナ・サマラ
海洋出身、ラサに嫁いだ海の女。
サマラ商会の商会長です。ラダさんの遠縁にあたります。
商船を用いて補給を買って出ましたが、
船員たちが勝手に前線も前線まで打って出たため、今回の状況となっています。
皆さんの迎撃中、動ける船員を動員して何故か動かなくなっている船員たちをどけ、
撤退戦へ移行する準備をしてくれます。
・サマラ商会員〔???〕×10
挙動が不自然だった商会員たち。
補給船であるはずなのに前線まで出張った挙句、
現在は沈黙し、全員持ち場を離れようとしません。
●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
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