シナリオ詳細
<デジールの呼び声>たすけて! バニーさんがピンクわかめに絡まれてるの!
オープニング
●竜宮城
「い、いやー!! あぁ、おやめになってください……どうかおやめに……!!」
竜宮城の一角――薄暗い空き地にか細い悲鳴が響き渡った。
声の主は息も絶え絶えに助けを求めてはいるが、今はどこもかしこも騒ぎに包まれているせいでその声は掻き消されてしまう。皆、竜宮の防衛に手一杯なせいである。通りがかる人々も疎らで、ネオンや街灯はやや遠くに見えるのみ。好き好んで薄暗い場所を通ろうという者など居やしなかった。
ならば振りほどいて逃げるのみ。しかし身体中にはピンク色のワカメが巻き付いており、逃げ出すことも難しい。身体をよじれば、それに追随するよう巻き付きが強められ、ヌメヌメとした感触がなんとも悩ましい声色を誘発していく。
粘着質な液体を拭い取るように、否――広げていったのは、そこらの風呂場で見かけるようなスポンジ達だった。明確な意思を持ち、声の主――バニセンボンのやや硬質な肌を磨き上げていく。
「そんなことされたら……あっ、困ります!! ……身体が――」
膨れてしまいます。そう言い終える前にバニセンボンの身体はパァンと膨らんだ。
その衝撃によって巻き付いていたドリームピンクわかめたちを弾き飛んだ。
今のうちに逃げなければ。バニセンボンが距離を取ろうとしたものの、周囲にはまだ沢山のワカメたちが海底を揺蕩う流れによってその身を震わせている。それどころかフライングスポンジ達もバニセンボンを逃すまいと徒党を組み、徐々に近づこうとしていた。
これは大ピンチ。このままではバニセンボンがあられもないお姿になってしまう。
このまま放っておけば、暗がりに広がるのはいやらしいピンク色の展開のみ――。
バニセンボンは助けを求めるため、エラを力強く震わせて叫んだ。
「たすけてください!! こんなにも可愛らしいバニーがピンクわかめに絡まれているんです!! たすけてください!!」
●ギルド・ローレット
「……ピンク色のいやらしいワカメ、これは大変なのです」
ユリーカは手元の書類に目を落とし、真面目な顔つきで呟いた。
どうにも防衛戦の最中、空き地にドリームピンクわかめが大量発生したらしい。得た情報が確かならば、混戦に乗じて足元を掬ってくる可能性もある。そしていやらしものは全て断ち切るべきなのである。ユリーカは薄い胸元に手を置き、必ずしや退治してもらう事を決めた。
「ん……? 救出依頼が来てるのです、バニーのハリセンボンが襲われているのです?」
ユリーカがそう呟いた時、近くに居たベーク・シー・ドリーム (p3p000209)がそれに反応した。
「バニーのハリセンボン……バニセンボンのことですか!?」
「知っているのです?」
「はい、彼には以前竜宮城エリアを案内してもらった事があります。……場所はどこですか? 無事なんですか!?」
ベークが詰め寄れば、ユリーカは少しばかり説明し辛そうな表情を浮かべた。
何せ、件のバニセンボンは襲われてはいるものの、助けを求めるその声は矯正混じりらしいのだから。
「うんと、はい。ええ、多分そう……なのです?」
「なら人を集めてから行ってみます。あの日の恩を返すためにも――」
- <デジールの呼び声>たすけて! バニーさんがピンクわかめに絡まれてるの!完了
- GM名森乃ゴリラ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年10月08日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●なんていやらしい光景なのだ
「あっ♡ お助けください、お助けください!! アァッ♡」
空き地に響くのは憐れな獲物、バニセンボンの声だ。身体に巻き付くピンクわかめから逃れられたものの、窮地は未だ変わらない。周囲にはうねうねと蠢くわかめに、ふよふよと浮いているスポンジ達。
絶体絶命。そんなバニセンボンの様子を窺う者達が居た。
「本当に嬌声が響いているのね……」
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)は建物の影から様子を眺め、驚きに満ちた表情を浮かべた。依頼の内容を聞いた時は「そんなに面白い話があるわけない」と思っていたのだが、嬌声は響いていたし、ピンク色のわかめと海泳ぐスポンジ達はやたらと元気だった。なんなのだこれは。
「くっ……いったいどうしてバニセンボンさんがこんな酷い目に……」
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)は拳を握りしめる。親切なバニセンボンに何をしているのだこのけったいなわかめとスポンジは。そもそもなんでそんなにいやらしい流れになっているのか不思議で堪らなかった。そんな彼を余所にヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は冷静な目をバニセンボンへと向けている。
「……唐揚げにしたら美味しそうな方ですね」
「食べないで下さいね!?」
否、ただの捕食者の目であった。
「いやいや絵面ですよ!! どうなっているんですかこれ!?」
思わず声を荒げたのはネーヴェ(p3p007199)だ。何がどうなってこんな展開になっているのだろうか。そもそもバニセンボンはバニーという括りで良いのか、疑問ばかりが湧き上がる。
「というか普通のバニーよりも、よりいかがわしいのは何故ですか!?」
「よりいかがわしい……? ちょっとそれは分からないのですが、確かにおかしな絵面ですよね」
一条 佐里(p3p007118)はネーヴェの言葉に首を傾げる、何をどうしたら『より』という言葉が出て来るのか分からないが、絵面が大変な事になっているのは理解ができた。
その隣に居たMeer=See=Februar(p3p007819)はぬるぬるのわかめとすべすべに磨き上げてくれるスポンジが齎すものを導きだし、表情を変える。
「……これえっちなやつだ!?」
そう、これはもしかしてもしかしなくてもえっちなやつ、基いやらしいシナリオなのだ。相手がハリセンボン――バニセンボン? な所だけは分からないが、誰かのえっちな念が暴走しているのならば止めるべきだろう。
「そうだよ、なんていやらし……じゃなかった、大変だね。助けないといけないね」
「あれがいやらしい……? 世界は広いな」
エーレン・キリエ(p3p009844)は 問夜・蜜葉(p3p008210)の呟きを反芻する。
バニーのハリセンボン、ピンクわかめ、磨いてくるスポンジ。異質な光景は中々お目にかかれるものではない。言葉に出してみても理解は追いつかなかった。どうしてこんな事になっているのか、それは誰にも分からない。
一行がどのように動くべきか考えていると、ノアが勢いよく手を上げた。
「わかめは私が引き受けるわ、任せてちょうだい!!」
堂々と胸を張る姿はとても頼もしいものだ。どんな策があるのかと皆は耳を傾けたが、聞けば聞くほど表情は困惑に支配されつつある。しまいにはエーレンが静かに合掌し始めたのだから、その内容は推して知るべし。
だが、やる気だけは誰よりもある。少々難のありそうな案ではあるが、皆はそれに乗ってみることにした。
●P倫との戦い
「あぁ……っ!! 気持ち、わるぅ……♡ だ、だめえそんなに絡まないでぇ……!!」
ノアは嬌声を上げながらもその身を捩る。皮膚を這うのは沢山のわかめ。分泌液を出しながらも彼女の豊満な身体をまさぐっていた。四肢を封じるようにして巻き付きながらも緩やかに這う感触はえも言われぬ感情を与えてくれる。ノアはそれらに気を許しながらもはくはくと口を開き必死に抗おうとしていた。
先程の宣言から僅か数十秒、空き地には即堕ち2コマもびっくりな光景が広がっていた。
意気揚々と前線へ飛び出したノアは、なんとわかめの全てを引き受けたのだ。
「よし皆、ノアの死を無駄にしないようにしよう!!」
エーレンは捕らわれたノアから視線をずらしつつ高々に言い放った。
「死んで、ないっ……ん、だけど♡」
「……社会的に死んでいるようなものでは?」
やり取りをしてもエーレンはノアの方を見なかった。何せ広がっているのはあのわかめにも負けないドピンクの世界なのだから、流石に直視するのは憚れるものである。
「僕は別に構わないんですが、あの方大丈夫なんですか……?」
ベークはノアへと視線を移した。自分から行くと宣言し、その通りに捕らわれた彼女をあのままにしても良いのだろうか。悩むベークであったが、その肩にぽんと掌が置かれる。
「大丈夫だ、仲間を信じよう」
「わかりました……では僕が庇いますので、その間に救出を」
幸いな事にノアのおかげでわかめ達は引きつけられている。解放されたバニセンボンはビクビクと震えているが思ったよりも元気そうであった。早く安全な場所へ運ばねば。ベークは逸る気持ちを抑えつつバニセンボンの元へと駆ける。
しかしスポンジがこちらに気がついた。ベークはスライディングをしてスポンジの元へと潜り込む。天に向けるのはブラスター、被害が出ぬよう銃口を真上に向けトリガーを引いた。
その音を合図とし、エーレンは魔の手から逃れたバニセンボンを優しく抱え、その場を全速力で後にする。
「もう安心だぞ、バニセンボン嬢……嬢でいいんだよな?」
問うたもののバニセンボンは息も絶え絶えだ。そのまま置いておくのは忍びないが、引きつけているノアがいつまで持つかは分からない。彼? 彼女? には空き地の外で待機してもらうことにしよう。そっとバニセンボンを横たわらせ――というか転がせば、囮を終えたベークが走ってきた。
「大丈夫ですかバニセンボンさん!!」
「おそらくは。そのうち気がつくだろう」
「そうでしたか……では僕がお守りしますので前戦はお任せします」
気を失ったまま放置するには忍びない、それに再びわかめに掴まっても可哀想なことだ。戦うのは生粋の攻撃手に任せたい。ベークがそう伝えれば、エーレンは一つ頷きその場を後にする。
「わかめはあのままで良いとして、倒すならスポンジからか……」
ノアの救出は後回しでも良いだろう。どことなく楽しそうなのだから。
エーレンは腰を落とし、十字剣の柄に手を掛ける。狙うは漂う不思議なスポンジ、つま先に力を入れ、放ったのは海水を断ち割る剣圧と雷の御業。
鋭い一太刀はスポンジの側面を捉え、胴体を二つに分かつ。ひらひらと落ち行くスポンジを眺め、エーレンは呟いた。
「そういえば石けんの泡ってどこから出ているのだろうか」
落ちたスポンジを見てもそれらしいものは見当たらない。今回の依頼、なんとも不思議なものばかりで満ちている。だが、それはこの世界に来てから幾度もなく味わっていることだ。
「いや、ともかく場を制さねば……考えるのは後でにしよう」
エーレンは小さな溜め息を零し、剣をそっと鞘に収めた。
「深怪魔……なんですよね、あれらも」
ヘイゼルは相手の姿形を凝視し、思案する。わかめはまだ分かるのだが、どうしてスポンジまで海の中を泳ぎまわっているのだろうか。
「……いえ、依頼ですから考えるのは後にしましょう」
考えた所で欲しい答えが得られるかは分からない。だが、深怪魔と銘打たれている以上は討つより他ない。
しかし、わかめはノアに絡みついている。下手にわかめを巻き込めば、彼女の身にも危機が迫るだろう。尤も、現在進行形で危機な訳だが――。
「あ、あっ♡ だ、だめぇ……っ!!」
「楽しそうなので問題ないですね」
ノアはエロ小説もびっくりなほどの嬌声を上げている。触手のような存在に全身を蹂躙されているというのに、どことなく嬉しそうな気配すらもあった。放っておいて問題無い。ヘイゼルは大きく頷き、棒きれと盾を構え、手近に居たスポンジに狙いを定める。闘志を向ければスポンジのいくつかはヘイゼルの存在に気がついたようだ。ふよふよと海を揺蕩い、彼女の方へと向かってくる。それをひらりと躱し、海底を蹴り上げた。浮遊する体を海中へと留め、そのまま駆け抜ける。下を見れば追従するスポンジと、その奥にはその者らが吐き出した石けんの泡が沈んでいた。
「わかめと組み合わさらないのでしたら、ただ体を洗われるだけなのですよ」
離してしまえばただのスポンジ。精神力を奪われるとはいえ、洗ってくるだけの存在などそう脅威にもならないだろう。
ヘイゼルは棒きれを荒々しく振るい、追いかけてきたスポンジを捉えた。圧倒的な素早さは鋭さを伴い、柔らかそうな体を押し潰す。振り抜けばスポンジはボシュンと音を立て、くるくるとその身を揺らして落ちていった。最後には小さな泡を残し、動かぬものと化す。
「良い調子です。それではいつも通りに、ゆるりと参りませうか――」
「ここは危険です!! 可能なら退避を、不可能であれば隠れていてください!!」
佐里は周囲の建物へと声掛けを行っていく。竜宮防衛によって避難している人々は多い。だがその全てではないだろう。そんな者らが戦いに巻き込まれぬようにしたい。しかしそれよりも心配なのがノアの事だ。このままではあられもない姿となり、人としての尊厳も失ってしまうかもしれない――。
「楽しそうなのがこう、余計にあれですけど」
今思えば自ら挙手したのは己の欲を満たす為では? 佐里の脳内にそのような事が浮かぶ。
「い、いえ……そのような事は無いでしょう多分きっとおそらく……」
しかし聞こえる嬌声には、痺れるような甘さと官能的な息使いが混ざっている。竜宮防衛の最中とは思えないほど異質な雰囲気が辺り一帯を覆おうとしていた。
「…………倒しましょう、とりあえず。全部終わらせてから考えます!!」
邪なる者を野放しにはできない。助けを求める者がいるのなら答えは決まっている。佐里は武器を手にフライングスポンジへと対峙する。
出来るだけ数を減らすのが吉。討ち漏らすよりは的確な対処が良い。
息を整え喚び出すは虹色の輝き。麗しい星はゆるやかな弧を描き数多の色を軌跡として残していった。その尾を追うようにして佐里は地を蹴る。獲物を屠るため、追撃に放つのは体を蝕む術だ。触れたスポンジはビクビクと跳ねながらその身を震わせ、スポンジの色を徐々に変えていく。ぶくぶくと噴き出された泡は心なしか小さくなり、そして最後にはパチンと爆ぜた。
「ふぅ……とりあえず掴まらないようにしましょう。出来れば他の方への補助もしたいところですね」
佐里は止まぬ喘ぎ声を背に、周囲の警戒をしながらスポンジ対峙へと勤しんだ。
「か、数は減ってきたのですが……えっ、これもしかしてわたくしがいかないといけないやつです!?」
スポンジが少しずつ数を減らされた頃、ネーヴェは顔を青ざめさせながら周囲を見渡した。
なにせ、纏めているノアの表情がそろそろ限界を迎えそうなのだ。語尾のハートも増えつつあり、表情は蕩けっぱなし。このままではとても表に見せられない事態になってしまうだろう、もしかしたらモザイクが必要になるかもしれない。だからこそ、交代しなければならない事態でもあった。
「嫌なんですけれども!? でも、行かないとP倫に屈しますよね……? えっ、でもわかめは減っていませんよね??」
もしかしてあれを自分が……? ネーヴェは耳をぷるぷると震わせた。しかしこのまま放置する訳にもいかない。ネーヴェは右往左往して顔を上げた、ちょっぴり泣きそうだけれども仕方がない。そうこれは仕方がないことなのだ。
「兎、頑張ります!!」
ヤケクソで駆け、向かうのはぬめぬめとしたわかめたち。耳を震わせ存在感をアピールすれば、ノアに絡みついていたわかめがするりとその触手を離した。わかめたちはわさわさと移動をし、標的をネーヴェへと切り替える。
「そう簡単には掴まりませんよ。いやそもそもワカメが動くの謎すぎませ――誰ですかお尻触ったの!?」
脱兎が如く駆け回ったネーヴェはひんやりとした感触に思わず身震いした。振り向けばその体を伸ばしたわかめの姿。触手のようにうねうねと体を這いずり、その全てを暴こうと柔肌を滑っている。
その向こう側には息も絶え絶えに転がっているノアの姿があった。人差し指を咥え、物欲しそうな目でこちら――わかめを見つめている。
「良いなぁ……♡」
「よくありませんよ!? ま、まってください。ヌメヌメ……!? ひっ、変なところ触らないで下さい服の下はダメです変態!! も、もぅ……やぁっ♡ ですっ!!」
雷撃で振り払おうにも他人が見ている羞恥のせいで上手く体は動かない。そうこうしているうちにわかめ達はドンドンとネーヴェへと浸食し、分泌液を散らしながら巻き付いていく。スポンジが交戦中なのが未だ救いだろう。ネーヴェは上ずる声を抑えながら周囲の様子を眺め――そしてMeerと目が合った。
「た、たすけっ♡」
「えっ、えっ、でもえっちなのはあんまり見ないであげた方がいい……んだよね? でも助けを求めているし――」
見ないように助けるべきか。熱砂の嵐を喚べばいけるだろうか? Meerは頭にハテナマークを浮かべ困惑した。状況が状況だけにどう動いたら良いのか分からない。そもそもこの状況は一体何なのだ。
悩むMeerはうんうんと唸り、そして足元から這いずる何かに気がついた。
「ひっ!?」
ピンク色のわかめだった。ネーヴェの元より何株かが移動してきたのだ。
「やっ……だめ、んんっ。はなしてぇ……♡」
言ったところで相手は答える訳でもない。ただただその触手のような身を伸ばし、小柄の少女の肌を緩やかに締め付ける。ぬめぬめとした触感が身体中を這い回り、気付けばそれは服の隙間へと侵入していく。
焼きわかめと焼きスポンジにしてやるつもりだったのに。喘ぎながらもそう考えていたMeerはハッとした。ギフトが発動し始めたからだ。
体つきは徐々に大きくなり、華奢で小柄だった体型は少しずつ変化していく。胸元も少しずつだが大きくなり始め、手足は筋肉が見え始めた。
――そう、彼女はこれにより程よい筋肉を持つ男性へと変化してしまったのだ。
「よりによって今なるか!? あっ♡」
低くなった声で叫びながらもMeerは割と絶望した。このままではシナリオの流れが変わってしまう。
しかし、そんな彼女らに手を差し伸べる者は居た。
「うらやまし――じゃなかった、今助けるね!!」
密葉は刀に手を駆ける。決して羨ましい訳ではない。いや、本音をいえばちょっとだけ体感してみたかったが、耐久力が心許ない己では、それはもう大変な事になってしまうだろう。だって、あんなに気持ちよさそうな――蜜葉は頭をブンブンと振り、わかめたちの魔の手を躱した。そのまま駆け寄るのはノアの元である。
具合を確認してみたが、幸いな事にとろんとしている事以外に外傷はなかった。少し休めば元に戻ってくれるだろう。ならばその時間を稼がねばならない。
「スポンジもそろそろ終わりだよね……? みんなが来るまで耐えないと」
できれば攻撃を以て場を制したい。
結晶のように美しい輝きを持つ刀を構え、わかめに向かって穿つ。鋭い攻撃は幾重にも重ねられ、わかめを細かく切り裂いた。切り口からはあの粘着質な液体が漏れ出し、少しずつ広がっている。アレに触れるのはなんか嫌だ。密葉は注意しながらもわかめの根元を狙い、少しずつ数を減らし仲間を解放していく。
「数は多いですが……!! あっ♡」
再び攻撃の構えをしたものの、わかめは彼女の刀へ飛びついた。そのまま腕へと這い上がり粘液が少しずつ♡密葉の体を穢していく。
「そ、そんなぁ……」
また子羊が増えてしまうのか、このままではリプレイの納品チェックが危ういものとなる。絶体絶命。そんなピンチを前にし、立ち上がった女性がいた。
「んっ♡ いいわ、このまま纏めて倒すわ!!」
ノアが立ち直ったようだ、多分。まだ表情は赤らんでいるし、ややフラフラとしている。しかし担いだ魔砲はしっかりとわかめへと向けられていた。
「動けないものは任せてくれ」
「尊厳保てていますか!?」
「まぁ、凄い有様……」
スポンジを倒し終えたエーレン、佐里、ヘイゼルがわかめの餌食となった女性陣(うち現在男一名)を担ぎ、空き地の外へ走り抜ける。準備は整った、後は丸ごと屠るのみ。
「――さあ、全部全部焼き尽くすわよ!!」
空き地の地形を変えてしまうほどの魔力が練られ、放出された。
●終幕
「――えっ、地形変わっちゃったのです?」
ユリーカは報告書を纏めながら、一行の話に首を傾げた。
確かに今回は討伐依頼である。いやらしい深怪魔が出たとは聞いているが、そこまでの強敵だっただろうか。不思議に思った彼女がことの詳細を聞いてみても、イレギュラーズ達は不自然に目を背け、咳払いを落とすのみ。誰に聞いても『バニセンボンを救助し、依頼は完遂した』この一点張りである。
「一体何があったのです……? バニセンボンさんは何かご存じなのです?」
ユリーカが問うてみればバニセンボンは転がるのをやめ、彼女へ視線を向け口を開いた。
「――実はですね、もぐがががががが」
被害にあった女性陣はしゃべるバニセンボンの口を無理矢理押さえつけ、なんとも言えない表情でバニセンボンをそのまま引きずっていってしまった。
「まあ、依頼が完了したのなら良いのです?」
代わりに失ったものも間々あるが。被害に遭わなかった者らは顔を見合わせ、そして小さく息を吐いた。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
なんていやらしいシナリオだったんだ……。
GMコメント
●依頼達成条件
バニセンボンのいやらしい展開を阻止しつつ、周囲のいやらしい深怪魔を排除する
●依頼詳細
可愛らしいバニーちゃんをいやらしい魔の触手から救うシナリオです。
周囲に蔓延る深怪魔を蹴散らし、バニーちゃんことバニセンボンさんを助けてあげて下さい。
●エネミー
・ドリームピンクわかめ(10株)
そよそよとその身を揺らしているいやらしいピンク色のわかめです。
近づいた者の手足を絡め取り、粘着質な液体を出してヌメヌメにしてきます。おまけに捕獲した者にピンク色の夢を見せ、精神力を削ってきます。なんていやらしい深怪魔なんでしょうか。
・フライングスポンジ(8個)
どこからともなくやってきたバススポンジです。しかし魔法によって改造されているのか、明確なる意思を持ってドリームピンクわかめが捕獲した者を石けんなどで磨き上げます。綺麗にはしてくれるのですが、精神力を奪い取ってきたり、前述したわかめの特性も相俟ってとってもいやらしい深怪魔です。
●フィールド
竜宮の一角、周囲に建物はありますが竜宮防衛によって人は疎らです。
開けた公園くらいのスペースとなっています。
●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●GMコメント
なんていやらしいシナリオなんだ……。
Tweet