PandoraPartyProject

シナリオ詳細

そーゆーワケで、闇鍋なんですけどね?

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●緊急の依頼なのです……
「緊急の依頼なのです……」
 章題まんまのセリフをのたまった『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)の顔には、開始直後から疲れが浮かんでいた。
 いつもの元気さはどこへやら、話を聞くイレギュラーズも何があったと思ってしまう。
「緊急事態発生につき、ここまで人員を寄越してほしい、とのことなのです」
 なんか声も平坦だ。
 ユーリカは地図を広げて一カ所を指さした。
 緊急事態とは穏やかではない話だが、それと彼女のこの様子は何か関係あるのだろうか。
「人員はそれぞれひとつずつ食材を持ってくるように、ということなのです!」
 はて、食材とな?
「依頼内容は闇鍋なのです」
 何て?
 イレギュラーズのひとりが紡ぎ出された単語を理解できずに首を傾げた。
「依頼人はとある村落の村長なのです。その村落がある領地を治めているのは、ヤーナ&ミーベ兄妹という2人で、毎年冬になると近隣住民強制参加の闇鍋を連日開催して領地の村落を恐怖のどん底に叩き込む経済的に優しい悪徳貴族なのです」
 その兄妹が複数の意味で胃に優しくないことだけは伝わってきた。
「ちなみに兄のヤーナはゲテモノ食材フェチ(極)。妹のミーベははいぱぁメシマズあれんじゃあ(極)なのです。そして二人とも揃ってアルケミーに傾倒してて、目指しているのは『究極の料理の創造』とのことなのです」
 何たるお料理冒涜三段活用。
 要するに、村民はただの実験台じゃないか。
 生かしておくべきではないのでは、と、イレギュラーズは思った。
「今までこの兄妹の闇鍋イベントで生き残った人は皆無なのです」
 そりゃそうだよ、そんな死のイベント。
「だけど今年はちょっと事情が違うのです。兄妹の領内にある村落が闇鍋ボイコットをかかげて公然と反旗を翻してしまったのです。これは明確な反逆行為だとして闇鍋兄妹は村落の人々を投獄するとまで言い出しています」
 闇鍋ひとつがエライ話に発展していた。
「兄妹が処罰をとりやめることの条件として村人に提示したのが、これまでひとりも達成できていない、闇鍋終了の完全達成なのです。そこで、村人じゃ無理だということになってこっちに依頼が来ました」
 来ましたと言われても。
 イレギュラーズの間に流れる微妙な空気。
 だが、その逡巡にユーリカは無慈悲な一言を突きつけてくる。
「ちょっと闇鍋してきてくださいなのです」

●はいどーもー! そーゆーワケで、闇鍋なんですけどね?
 という感じで、問題の兄妹がいるお屋敷まで来てみた。
「「はいどーもー!」」
 するといきなり門前で、若い男女が左右から同じタイミングでフェードインしてきたのだ。
 男が名乗る。
「ヤーナです!」
 女が名乗る。
「ミーベです!」
「「2人合わせて、闇鍋兄妹でーす!」」
 すごく、不穏な単語です……。
「そういうワケでしてね、ヤーナ兄さん!」
「はいはい、なんでしょうか、妹のミーベちゃん!」
「見ての通り、私、鍋が大好きなんすけどね!」
「おっとこれは奇遇だね、僕も鍋が好きなんだよ!」
「わ、そーなんですかー! すごーい! ぐーぜーん!」
「だねー、いやー、これはまさしく奇跡だねー!」
「兄さんはどんな鍋が好きなんですか?」
「うーんそーだねー! シンプルなのもいいし、海鮮鍋とかもいいねー!」
「あー、いいですねー! 私は鶏肉が入った鍋なんか素敵だと思いますけどねー!」
「おー! 鶏肉! グッドだねー!」
「いやー、でもでも兄さん!」
「はいはい、何だい妹さん!」
「どの鍋もおいしい! どの鍋も最高! ひとつになんて絞り切れないと思いません?」
「いやはや全くそのとーり! 鍋はもう、鍋というだけで最高! 至高! ブリリアント!」
「ああ、でも胃袋には限界があるー! でもすべての鍋を食べたいー!」
「分かる、分かるよミーベさん! そんなときはどうすればいいんだー!」
「ヤーナ兄さん……、実は私、いい方法を知っているんです!」
「何だってミーベ、それは本当かい!」
「すべての鍋を同時に味わえてしまうかもしれない魔法の鍋! それは!」
「そ、それは……、ゴクリ!」
「闇鍋でーす!」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「闇鍋、いいですよね闇鍋。みんなで材料を持ち寄って、鍋で煮込んで、食べる!」
「いいねー、実にいいねー! 美味しいで終わるかどうかも分からないスリリング!」
「そして最初は朗らかな雰囲気で始まったのに時間が経つごとにぎすぎすしていくサスペンス!」
「まさに――」
「そう、まさに――」
「「闇鍋サイコー!」」
「闇鍋をしましょう、ヤーナ兄さん! 善はクイックモーション・フルスロットルです!」
「善は急げと言いたいんだねミーベちゃん! しかしひとつだけ問題がある!」
「何ですって、兄さん、それは一体!?」
「僕と君だけじゃ人数が足りないということだー!」
「ああああああああ、何たる悲劇ーーーー!」
「「と、いうわけで――」」
 闇鍋兄妹の視線が、同時にイレギュラーズの方を向く。
「「闇鍋しましょう」」
 疑問形ですらなかった。
「はーいでは闇鍋参加者追加でーす!」
「ささ、こちらへどうぞ! どうぞ!」
 かくして勢いに流されるまま、イレギュラーズは闇鍋に参加することになった。
 ノリと勢いでごまかされているように見えて、村人の命もかかってるっぽい。実は事態は深刻だ。
 頑張れイレギュラーズ!

GMコメント

 はいどーもー! GMの天道です!
 PPP、シナリオコンテンツ開始おめでとうございまーす!
 ちょっと遅れてしまいましたが、初シナリオ、がんばっていこーかなー、なんて!

 しかし寒い! 冬真っ盛りですね!
 きっとイレギュラーズの皆さんも寒い中、日々頑張られていることだと思います!
 ですので、そんな皆さんのためにアッツアツの鍋シナリオ、用意させていただきました!
 皆様がおいしい鍋を食べられますよう、天道は心から願っております!

●シナリオ目的
 闇鍋をする。

●成功条件
 楽しく鍋を食べる(理想的結末)。
 生き残る(現実的に考えて遂行可能なライン)。

●闇鍋
 参加される方はプレイング中に1~3個、持ち寄る食材を記載してください。
 誰が何を食べるかは完全ランダムで決定となります。
 どう食べるか。
 ギフトを使うのか。
 アイテムを使うのか。
 スキルを使うのか。
 持ち寄る食材は相談時に公開するか、非公開で行くか。
 闇鍋兄妹に一言モノ申すのか。
 すべては自由です。
 ただし唯一のルールとして、持ち込むのは『食べられるもの』限定でお願いします。
 仮にそうではないものが混じっていた場合、GMの判断で除外されることがあります。
 ご注意ください。
 なお、ステータスを参考にして『闇鍋ダメージ』が発生する場合があります。
 それ如何によっては……、
 色々と御覚悟召された上でご参加ください。

●あと注意すること
 こちらでアドリブ的なアクションを描写する可能性があります。
 それがOKという方はプレイング中に【アドリブOK】を記載をお願いします。
 場合によってはキャラが崩壊する可能性もあります。

  • そーゆーワケで、闇鍋なんですけどね?完了
  • GM名天道(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年01月29日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

フニクリ=フニクラ(p3p000270)
歪んだ杓子定規
ミルク・ココナッツ・ヨーグルト(p3p000600)
ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)
盲目の花少女
PXC-4=ソフィア(p3p000743)
赫腕の鉄
スリー・トライザード(p3p000987)
LV10:ピシャーチャ
宗高・みつき(p3p001078)
不屈の
コルザ・テルマレス(p3p004008)
湯道楽
シラス(p3p004421)
超える者

リプレイ

●そーゆーワケで、地獄の釜の蓋が開かれるんですけどね?
「闇鍋の!」
「お時間です!」
 兄ヤーナ、妹ミーベ、二人合わせて闇鍋兄妹が決戦の場となる屋敷の食堂で踊っていた。
 さすがは貴族邸宅、広い食堂である。
 そこに集められたるは8人のイレギュラーズ。
 彼らと闇鍋兄妹が囲うテーブルの上に、デカイ鍋がドカンと置かれている。
 鍋からは、さっそく何か黒々とした鬱々としたそれでいて滅々とした瘴気めいたものが漂っている。
 真っ昼間だというのに深夜の如き様相を呈している鍋は、もはや完全に地獄。
 コイツァただ事じゃないぜ!
「では行きますよヤーナ兄さん!」
「ハイ、行っちゃって、ミーベちゃん!」
 テーブルの周りを回りながら、闇鍋兄妹の妹が鍋の蓋に手をかける。
「さぁ、いよいよ始まってしまう! ついに! 地獄の釜の蓋が開かれたー!」
 なぜか実況を始める『pick-pocket』シラス(p3p004421)。
 彼の声を合図に、ついに命と名誉と人としての尊厳を賭けた大激闘闇鍋ファイトが幕を開ける!

●そーゆーワケで、不屈の女なんですけどね?
 まず、見た目からしてヤバかった。
「フフ……、なかなかのモンだな」
 鍋の中を覗いてしまった『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)は、己の頬を伝う一筋の汗を自覚する。
 闇鍋兄妹が中身を器に盛って、イレギュラーズにわざわざ配膳していった。
 みつきの器の中に、プカリと浮かんでいる何かの脳みそとウサギの頭。
 何かの脳みそと! ウサギの! 頭!
 汁は濁ったミルク色、テラテラとした光沢が逆に見た目の際どさを強調している。
「…………」
 椅子から立ち上がって、無言で己の器の中身を見つめること数秒、
「成し遂げてやるぜ、完全達成!」
 確かな決意をそのエッカイ胸に秘め、みつきがスプーンを握っておぞましき具材を一気に口にかっ込んだ。
「宗高・みつき、行ったァ――――!」
 実況シラスのボルテージも、ここで一気に高まった。
 しかし果たして、その声はみつき本人に届いていたのか。
 器の中身は見事に空。
 汁の一滴までも飲み尽くし、気合の果てに食べることは食べたみつきだが――、
 込み上げてくる。
 込み上げてくる!
 腹が、胃が、具材の受け入れを拒んで吐き気と共にいろんな何かが込み上げてくる!
 それでも――!
「「…………」」
 皆の視線を一身に受けながら、彼女は静かに右手をかかげてサムズアップ。
「止まるんじゃねぇぞ……!」
 そしてみつきの動きは止まった。
「食べきった、食べきったァァァァ! だが宗高、立ったまま気絶――――!」
 見事、先陣を切ったみつきは己の仕事を全うしたのだった。

●そーゆーワケで、ミルクなココナッツのヨーグルトなんですけどね?
「食べる! いじょう!」
 次に挑んだのは何やら可愛らしい外見の不定形イレギュラーズ、ミルク・ココナッツ・ヨーグルト(p3p000600)である。
 その名の通りの好物を鍋にぶち込んだミルクだが、よそられた具材はだが甘くはなかった。
 いや、甘かったのだ。最初だけ。
 口に入れて、感じたのは飴の甘みだった。
 まだ溶けきる前の一瞬だけのほのかな甘み。あ、これなら大丈夫かも。
 ――などと、思ったのもつかの間。
 はい、激辛ハバネロ餃子で味覚が超エキサイティンにドーン!
 さらに、何か凄く凄~く苦い根っこみたいなので味覚がヘルアンドインフェルノにバーン!
「……食べ、ごふっ」
 それでも何とか、何とかギリッギリ食べきって、ミルク、轟沈。
「「一同、敬礼!」」
 まだ生きているイレギュラーズ全員が、不定形な仲間に敬意を表した。

●そーゆーワケで、錬金術の実験だと思ってるんですけどね?
 『LV2:ワイト』スリー・トライザード(p3p000987)にとって、今回の闇鍋は実験イベントのようなものだ。
 闇鍋兄妹が謳う『究極の料理の創造』。
 それに興味を惹かれた面は多分に存在した。
 無論、村民の解放を願う気持ちもある。だがそれと同等に、彼は知識欲が強かった。
「それでは、謹んでいただきます」
 さて、そんな彼であるが、器に盛られた具材を口に入れてまず一回動きが止まった。
 辛い。凄まじく辛い。
 ミルクの味覚を破壊しかけた、ハバネロ餃子であった。
「なるほど」
 彼は、押し寄せる痛みを伴った辛さの中に錬金術的要素を見出そうとする。
 だが見つからないまま、さらに一口。
 今度は何と形容すればいいのか分からない味だった。
 渋い? 苦い? キツい? エグい?
 いずれにせよ美味くはない。間違いなく『不味い』の領域に深く突っ込んでいる味わいだ。
 彼は気づいた。
 あ、これ私が持ち込んだ『熟したカラスウリの果実』ですね。
 自爆だった。
「……なるほど」
 深く深くうなずいて、彼は三品目を口に入れる。
 白菜。この闇鍋に煮出されたエキスをじっくり吸い込んだ、変色した白菜。
 味とか、とりあえず筆舌に尽くしがたい。
「…………なるほど」
 全てを食べ終えたスリーの眉間に海溝よりも深いしわが刻まれた。
 顔色をケミカルな紫色に変えて、彼は結論を述べる。
「この実験は失敗ですね」
 誰だって分かり切っていることだった。

●そーゆーワケで、エンターテインメントにやるんですけどね?
 ……エンターテインメント性とは何だろう。
 『赫腕の鉄』PXC-4=ソフィア(p3p000743)は考える。
 誰かと鍋をつつく。初めての体験だ。
 どうせならば楽しくしたい。盛り上げたい。
 つまりはエンターテインメント。
 と、そんな感じの思考経路で今の疑問にブチ当たる。
「……大食い、早食い」
 こと、食にまつわるイベントではそれらが場を盛り上げると聞く。
 ならばこの場でのエンターテインメントとは、まさにそれ。
 結論を得たソフィアが、具材盛り盛りの器を手に取った。
 彼女の器にあるのは、お馴染みハバネロ餃子、豚のブラッドソーセージ、そしてミズゴケ。
 待て。何だミズゴケって。
 こっちをコケにしやがってとでも言わせるつもりか?
 しかし一瞬走った思考を区切り、ソフィアはスプーンを強く握りしめる。
 勝負は、一瞬――!
「……ふっ!」
 深呼吸の後に、ソフィアは一気に具材を口の中に詰め込んだ。
 みつきよりもさらに素早く、さらに鋭く、最短の時間で「ごちそうさま」を言うために。
「……ぐ!」
 しかしやはりというべきか、体が受け付けない。
 体内に強大な負荷が発生する。
 彼女はそれを全力でこらえ、ついに具材を飲み下す。
「……スゥゥハァァァ!」
 そして呼吸だ。
「……スゥゥゥゥゥハァァァァァ!」
 体内の調子を整える、これぞ秘伝のシン・呼吸(つまり深呼吸)だ!
「…………」
 動きを止めて数秒、ソフィアを見る皆がみつきの結果を思い返して息を呑む。
 ゆっくりと、彼女の右手が掲げられて、
「……ごちそうさま」
 鉄の女ソフィアは、厳かに己の勝利を宣言した。

●そーゆーワケで、猿の手が浮いてたんですけどね?
 そう、『盲目の花少女』ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)の器に猿の手が浮いていたのだ。
 折れ曲がった指が器のふちを掴んでいる。
 見た目、凄絶インパクト。
 しかし視力の低いソフィラには、それもはっきり見えていない。
 だが声は聞こえるので、ここまでの連なる悲劇惨劇はキッチリと認識していた。
「あらあら、大丈夫かしら……?」
 おっとりした物言いで、だが自分の番になってみれば、まず香る匂いに顔をしかめる。
「なんだか、変な匂いがするわね? ……いえ、何にせよ食べられるはず。だったら気合でどうにかするわ!」
 気合は万国共通語!
 小柄で華奢な体格からは想像もつかぬ度胸を見せて、今、ソフィラが猿の手に挑む!
 モシャ、モシャ、グジュ……。
「あら、変な歯応え……、それに、そこはかとなく甘いのね……」
 それは猿の手ではなく一緒に煮込まれたココナッツミルクが原因であった。
 色々と混じり合い、雑味極まるものの、猿の手という見た目最凶伝説具材を見ずに済んだからか、ソフィラは時間をかけつつもほぼ食べきることに成功する。
「あとは……、これだけね」
 残った最後の具材を、彼女は口に入れてみた。
 大根。
 白菜以上に吸水性に優れた、汁にまみれて変色した、大根!
「……あら、あら」
 食い切ると同時、ソフィラは倒れた。
 猿の手という見える敵ではなく、大根という見えざる敵にしてやられた、皮肉な末路であった。

●そーゆーワケで、謎の蠢く肉塊なんですけどね?
 『私は考える葦ではありえない』フニクリ=フニクラ(p3p000270)の器では、盛られた肉が蠢いていた。
 盛られたのは肉、そして魚肉、それらを覆っている白くねっとりしたものはヨーグルトっぽい。
 白くねっとりしたヨーグルトに覆われた肉と魚肉が、どちらもプルンプルン、ビクンビクンしているのだ。
 そしてそれを、フニクリはこれから食べるのだ。
「……人生とは何だろう」
 フニクリの思考が、現実を乖離してどこか遠いところに赴いたようだった。
「闇鍋をするときはね、なんというか救われてなきゃダメなんだ。静かで、豊かで……」
 自分は何を言っているのか。
「そう、遠い、遠い星の彼方に闇鍋の星がある。闇鍋の星を照らすのは闇鍋の太陽と、闇鍋の月と……、分かる?」
 自分は誰に語っているのか。
「この肉はまだ生きている。だから動くんだ。これぞ命の力、これぞ生命の神秘。すごいね、人体」
 自分で言っておいて何だが、人体じゃない気がする。
「生きているとは何だろう。それはつまり食べることだ。では食べるものが生きていたら、食べるものが何かを食べる必要があるということにならないだろうか」
 自分は誰に向かって問題提起をしているのか。
「どれだけ考えても答えは出ない。食とは一体、うごごごごご」
「いいからそろそろ食べて?」
「あ、はい」
 シラスに言われ、フニクリが意を決して鍋の具材を食べてみた。
 美味しかった。
 何か、ムカついた。

●そーゆーワケで、まさに『混沌』との死闘なんですけどね?
 これまで、どれだけの犠牲が出ただろう。
 みつきの戦死(してません)から始まり、ミルクが戦死(してません)、スリーのが戦死(してません)、ソフィラも戦死(してません)。
 生き残ったのはわずかに二人。
 そして今、大いなりし『混沌』との死闘に『白仙湯狐』コルザ・テルマレス(p3p004008)が挑む!
「生きて帰ろう……!」
 多くは望まない。ただ、生還はしてみせる。
 気高き決意を胸に、彼女は自分の器を手に取った。
 目玉があった。
 こっちを見ていた。
「ひゃあああああああ~~~~~!?」
 決意、早くも挫けそうです。
「……い、いや、大丈夫。みんな頑張った。僕だって!」
 再び器を手に取った。汁に沈んでいた目玉がもひとつ、浮かんできた。
 目と目がばっちり合ってしまった。
「あびゃあああああああああああ~~~~~!!?」
 心、もはや折れそうです。
「見ちゃダメ……、見たらダメなんだ……!」
 己に言い聞かせて、コルザは目を閉じた。
 大丈夫。甘くても辛くても、しょっぱくても不味くても、耐えきれたら彼女の勝ちだ。
 あ、酸っぱいのはキツいかもだが、まさかそんなドンピシャな――、
 食べたミカンが酸っぱかった。
 続いて食べたカボチャもミカンの味が移っていた。
「あ、ダメだこれ」
 コルザ・テルマレス、あえなく撃沈!
 まさに起承転結、水の流れの如きスムーズな死闘の顛末であった。
 それでも何とか盛られた分を食べきって見せたのは、せめてもの彼女の意地に違いなかった。

●そーゆーワケで、最後の一人なんですけどね?
「ついに、ついにイレギュラーズも残ったの最後の一人! 俺だァァァァァ――――!」
「解説のヤーナ兄さん、今これどういう状況でしょう!」
「はいはい、同じくの解説のミーベちゃん! ぶっちゃけここまで完食されたことないですよね僕達!」
「ええそうですね、ないですね!」
「どうしましょうねミーベちゃん!」
「どうもこうも解説しましょうヤーナ兄さん!」
「だが、だがそこで遮って実況を続けるのが、俺だァァァァァ――――!」
 ストッパーはいない。
「元気な人ですよミーベちゃん、さぁ、闇鍋を食べてもらいましょう!」
「そうですね、ヤーナ兄さん! 食べてもらいましょう! さぁ! さぁ! さぁ!」
「できらァァァァァ――――!」
 ストッパーはいない。
「はいどうぞ!」
「どんなグロだって食べきってやるさ、気合だ、気合だ、気合――……?」
 シラスの動きがふと止まる。
「何か、色鮮やかなゼリーに金箔まぶしてあるんだけど……?」
「美味しそうだねミーベちゃん!」
「美味しそうですねヤーナ兄さん!」
 まさに佳境に至った今、こんな普通に食べれそうなモノが出てくるとか、シラス、完全に想定外。
「いやいやいやいや」
 かぶりを振って、シラスは器を見直した。
 金箔がまぶされたゼリーがぷるるんと震えている。食べることは、できそうだ。
「いやいやいやいやいやいやいやいや」
 またかぶりを振って、シラスは鼻先をゼリーに近づけてみた。
 特に匂いはしなかった。いや、若干フルーティで爽やかな香りがするかもしれない。
 まさか、美味しい……?
「いやいや、まさかまさか」
 周りでうめいている仲間の姿を見て、美味などという幻想は抱くべきではないとシラスは思うのだが、
「奇跡的に、イケるかもよ?」
 生き残りの一人であるフニクリの言葉が、シラスの常識をブチ叩いた。
 そう、フニクリはその奇跡を実際に大変しているのだ。
「…………」
 シラスが己の器を見る。
 イクか? イケそうか? イッちゃうか?
「よーし、イッちゃうかコレ!」
 漢・シラス、決意を胸に一気に器の中身を頬張った。
 凄く、不味かった。
「でーーーーすーーーーよーーーーねーーーー! うわらば!」
 完食、そして、殉職!

●そーゆーワケで、残るはおまえらだけなんですけどね?
「おやおや、ヤーナ兄さん、鍋が少し残ってますよ!」
「何だってミーベちゃん、他に食べられそうな人はいるかい?」
「いませんよヤーナ兄さん!」
「だろうねミーベちゃん!」
「「つまり、今回も完食達成はならず――」」

「「「ま だ だ !」」」

 闇鍋兄妹が勝ち誇ろうとしていた矢先、幾つもの声が重なり、それを遮った。
 みつきの視線が、ギョロリとヤーナを睨む。
 ミルクの身体がプルルンと震える。
 スリーの怜悧な眼差しがミーベを射抜き、ソフィアの沈黙が重圧となって兄妹を襲う。
 ソフィラがゆっくりと立ち上がり、コルザが静かにその隣に立った。
 フニクリの眼鏡がキランと光る。
 そしてシラスもフラリ、力なく頭を上げて、
「闇鍋兄妹……、おまえらの番が残ってる、だろ……?」
 イレギュラーズを代表し、みつきが鍋の残り全てを器に盛って示した。
「「…………」」
 兄妹の顔が、青ざめていく。
「ここまで来て、食べないとは言いませんよね? 実験とは己の手で証明するものでしょう?」
 スリーの知的な笑顔が、この場面だとすこぶる怖い。
「どうしましょう、ヤーナ兄さん」
「フフフ、食べてあげようじゃないかミーベちゃん!」
「さすがですヤーナ兄さん!」
「じゃあ食べてミーベちゃん!」
「じゃあ食べてくださいヤーナ兄さん!」
「えっ」
「えっ」
「「…………」」
 闇鍋兄妹が顔を見合わせる。
「ヤーナ兄さん」
「ミーベちゃん」
「「食えよ」」
 異口同音。
「「食べろって」」
 異口同音。
「「そっちが食べれば終わるんだってば」」
 異口同音。
「「食えって!」」
 異口同音。
 そろそろ鍋の押し付け合いが本格的な抗争に発展しそうな闇鍋兄妹の肩を、ポンと叩く手があって、
「「はい?」」
 兄妹が異口同音で振り向けば、そこには背景に『ゴゴゴゴゴゴゴ』を背負ったイレギュラーズがいた。
「「「「いいから食えよ」」」」
 異口同音。
「「はいぃぃぃぃぃぃ……」」
 そしてやっぱり、異口同音なのだった。
 無論、闇鍋兄妹がこの地獄闇鍋ヘルインフェルノを凌げるはずもなく、二人とも一口食べてノックアウト。
 かくして、闇鍋完食達成と闇鍋兄妹撃退によって、村民投獄の危機は救われたのだった。

●そーゆーワケで、それからの話なんですけどね?
 その後について少し語ろう。
 まず、闇鍋兄妹について。
 錬金術の研究は続けるというが、闇鍋についてはイレギュラーズから滾々と説教されて考え直すらしい。
 今後、仮に闇鍋が開かれるとしてもそれはイベント色を強くした安全性の高いものになるだろう。
 村の人々も、やっと解放されたという喜びに沸き立っていた。
 ここまでは、めでたしめでたし。
 そして、イレギュラーズは――
「あのハバネロ餃子を入れたのは、誰ですか?」
 スリーの背中より、殺気が揺らめく。
「オイ、脳みそ入れた奴、素直に名乗り出ろ」
 みつきもまた同様に、怒りの気を全身に纏っていた。
 互いに食材を持ち寄るというのが今回の闇鍋のルールだったワケだが、その結果発生したのはある種の同士討ちだった。
 当然あとに残るのは、食材を持ってきた相手に対する根深い殺意だ。
 互いに殺気のみを発し、だが言葉は交わさずにイレギュラーズは帰途に就く。
 鍋は楽しく食べましょう。
 フニクリが得た教訓だった。

成否

成功

MVP

シラス(p3p004421)
超える者

状態異常

なし

あとがき

お鍋、いかがだったでしょーか!
見事に一致団結して闇鍋兄妹の悪しき野望をくじくことができたようです!
色々とギリでしたけどパンドラ消費が必要なデッドエンド食材組み合わせは誰にもあたりませんでした。やったね!
それでは、お疲れ様でしたー!

そーゆーワケで、次回にまた次のお話でお会いしたいんですけどね?

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