シナリオ詳細
<俺のナマコを守って>後方ナマコを気にしつつ。ペリカンを倒すよくあるお仕事
オープニング
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その海鳥にとって、地面にずらりと並べられている黒い肉はごちそう以外の何物でもなかった。
ゆえに大空から一直線に狙いを定める。
タイミングが合えば、自分の身と同じくらいの魚類や水鳥、海生生物を襲って食ってきた。
おやつ以外の何物でもない。
ただ、おやつの周りにまあまあ大きい陸の生き物がわらわらして何やら振り回すので邪魔なのだ。おやつの上に邪魔なものを広げるならそれごと持ち上げてしまえば転がり落ちるおやつをついばむなどぞさもないことだが、面倒ではある。
ならば、片付けるべきなのは、この陸の生き物ではないか?
なに、頭をつつき割ってしまえば、まあまあの量の柔らかいものがすすれたりするだろう。
続々と群れが集まってきている。これだけの量があれば十分皆の小腹を満たすことができるだろう。
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「――そんなことを考えてるんじゃないかと思うほど、こっちに飛んでくる水鳥魔獣が怖いの」
『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)の顔が青い。
「今、俺、ナマコの加工やってんだよ。そのナマコを狙って魔獣が来るとかありえなくない?」
いつもは菓子と茶をたしなみながら仕事の話をするというのに、今はゴム手袋ゴム長靴ゴム引き前掛けだ。まさしく本業作業中。「おらの畑に魔獣が出るだ」と訴えてくる依頼元の農家さんと同じ顔をしている。状況はまさにそれなのだろう。
「そういう訳で、飛んでくる水鳥魔獣を退治してくれない? でっかいのが三羽。細かいのがたくさんかな。まあ三羽を落としてくれれば小さいのはやばいと学ぶだろう」
逆に言えば、学ばない小さいのが途切れるのがいつだかよくわからないということだ。
「ナマコ加工の依頼も同時にかけてるから、そっちの作業してくれてる人にナマコの保全は頼んでるから、手加減なしと言いたいところだけど、範囲攻撃の位置取りには重々注意してくれよ。かばう対象には限度があるからな」
後方は守るべき対象なのだ。
「フレンドリファイヤには気を付けて。パーティ内だけじゃなく、ナマコ加工班の方も。量が半端じゃなくて、精神状態がとてもセンシティブになっております。俺含めて」
- <俺のナマコを守って>後方ナマコを気にしつつ。ペリカンを倒すよくあるお仕事完了
- GM名田奈アガサ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月27日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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手を振ると、一緒にナマコを拾ったやつがいる。
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「えっ、とんでもない量のナマコがいる……」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は、うわぁ。と、言った。
とあるビーチを埋め尽くしていたナマコの、文字通り山だ。幾分水分が抜けて傘は減っているがそれでも十分目をむく量。
「これは確かに襲撃されたら大変だ。ナマコを食われたり、荒らされてブチ撒けられたりしたら目も当てられない」
見上げれば、いつ襲ってやろうかと頭上をくるくる滑空しているペリカン型魔獣の群れ。
でかい。陽光を遮ってあたりが暗くなる程度にでかい。
地面すれすれまで急降下してきてブルドーザーのようにナマコを口に押し込み、再び上昇していくペリカン飛行隊。少し考えただけで、だいぶスペクタクルな情景。夜中に夢に見そう。
「何とかしないとな」
「俺の妻を侮辱したナマコをこんどは守らねばならないなんて……」
『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)は嘆いた。
ああ、お仕事とはかくもやりきれないものか。まぶたに浮かぶ愛妻の顔。『ナマコ、食べられちゃったの?』 きっと。悲しむに違いない。
「一羽たりとも後ろへはいかせないぜ〜! ナマコは食べないけど仕事だからなッ」
『元魔人第十三号』岩倉・鈴音(p3p006119)は、元気に言った。
「え?」
「なに?」
思わず声を出した史之に、鈴音はきょとんとした顔をする。
「いや、こっちの話」
(おいしいよなあナマコ。でもめっちゃすべるんだよなあ、ナマコ)
ソースは史之。めっちゃすべった。
「あの鳥どもがすべって落水しちゃえばいいのに。根性見せろよ、ナマコ」
史之は小さく悪態をついた。残念ながら、あの浜のナマコは駆逐された。ほかならぬ史之達に。
「餌を求めて集まった水鳥魔獣……正に食物連鎖ってやつですね! えぇもう、この程度じゃ驚きませんよ。むしろまともな生物で安心した位です」
その一人、『ワタシコノヘンノヘンナカイヨウセイブツチョトワカル』ルーキス・ファウン(p3p008870)、本当にこの辺の変な海洋生物にちょっと詳しくなっていた。
「ナマコ拾いに携わった者として、その行く末は最後まで見届けます」
そんな歴戦の猛者もいれば――
「まさかこちらでの武蔵の初陣が、鳥相手の砲台として使われることになろうとはな……」
大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)は戦艦が少女の形をとっている。そんな種族。戦艦? 空母ではなく? 甲板はどこが該当するのだろう。
「しかし、例え守る対象がナマコであろうと、敵戦力が――大きいとはいえ――水鳥の群れだろうと、手を抜いたり情けない姿を見せるのは主義に反するのである」
実際は人員と施設も含む。申し合わせも完璧だ。その意気やよし。
「無論、こちらの常識は私の知識では計り知れぬのもあることであるし」
それな。場にいるウォーカーの心は一つになった。
ウォーカーにとっては大事なことだ。自分の身の回りはローレットの支援があるとはいえ自分で整えなくてはならない。混沌の空気は肌で体得していくしかない。
「――――」
黙って、空を見上げる『特異運命座標』陰房・一嘉(p3p010848)。
たくさんのペリカン型魔獣が飛んでいる。
この筋骨隆々の、ローレットで活動したての大男がそんなことを考えていただなんて、その時は誰も気がついちゃいなかったのである。
「やはり強さを示さないと安心してナマコ加工に専念できないだろう。イレギュラーズの只者ではない背中を見せて安心させるのだ」
鈴音は仲間を鼓舞した。
加工している連中もイレギュラーズだが、同類に守られているという安心感はさもありなん。
「ンッフッフ♪ 鳥なんぞに邪魔はさせないので加工を続けたまえ!」
遠くから。おー。という声が返ってきた。
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作業場の方から、うまそうな磯の匂いがしてくる。本格的に茹での作業が始まった。
「あれって食べるのかなー」
『森ガール』クルル・クラッセン(p3p009235)は、新緑の奥地出身の純度100%の森ガールだ。
カイヨウセイブツゼンゼンワカラナイ。
いかついお兄さん達が、黒い部二部にしたものを鍋に入れたり上げたり地面に転がしたりしている。
「さあー、お仕事するからにはしっかりやらないとねっ。ペリカン退治、頑張るよーっ!」
拳突き上げて、おーってする。うん、世界は広い。
ペリカンたちが作業場の方に滑空を始める数瞬前。
「ナマコより俺を狙え!」
食材適正によりイズマの名乗り口上は腹をすかせた魔獣に効果てきめんだった。
「ナマコは内蔵を吐くし毒のある種もいるが、俺は柔らかくもありつつ引き締まってて無毒だ」
毒の有無は生き物にとって大事なことだ。あるよりない方がいいに決まっている。
「ナマコは栄養豊富だが水分の割合が多く、俺なら栄養もエネルギーも詰まってて何ならミネラルも摂れる! 食べて満足すること間違いなしだぞ、ほら来い、食ってみろ!」
鉄騎種は、ミネラルと書いて金属と読む。
何を言っているのか一回の魔獣の群れが理解することはできなかったが、カモがネギしょって踊っていることだけはわかった。
一斉にそちらに降下目標を切り替える。
「……いや、食われる気は無いがな!!」
十分ひきつけてから、踵を返す。そりゃないぞ、ごちそう。
白目を怒りで真っ赤に染めた怪鳥がイズマめがけて飛んでくる。鋭利なくちばしが刺さればただでは済まない。ましてや、おいしさが保証されているのだ。そのまま食い尽くされる危険性まである。
「私が足止めするから! ペリカン達の機動力を奪い、ナマコ方面への後逸阻止を試みるよ」
クルルが長弓を放った。狙いすました矢は敵をしたたかに打ち据え、その出鼻を挫き、釘付けにする。群れの統率が揺らぐ。
「主砲、対空戦闘用意! 斉射!」
高射砲などの近接防空兵装への改装はまだ先の話だ。武蔵の間合いでは接近されると有効な攻撃を出すのが難しくなる。クルルの牽制射撃は武蔵にとって値千金だった。
砲弾からなお進もうとする怪鳥。イズマと作業所からさらに離れたところに誘導するためルーキスが立ちふさがった。
「お前らに逃げ場はないぞ!」
そう。逃げ場はない。
小さな台風の目が、ペリカンたちの脳から食欲を追い出し死に至る怒りを上塗りしていく。
「俺の間合いに寄らないで。巻き込むよ」
トルタ・デ・アセイテ提督が率いた海洋王国無敵戦列艦隊アルマデウス旗艦エル・アスセーナ号の主砲から作られた刀が旋回し、史之を中心に小さな暴風域を作り出す。
飛行姿勢を制御できない怪鳥は失墜。刃の餌食になる。
「ふーん、頭カチ割って脳髄を喰らうって魂胆カ。こりゃ交渉の余地とかは無いナー」
落ちてくる怪鳥を『ねこのうつわ』玄野 壱和(p3p010806)が、待ち構える。
言葉を交えても、同意に至らないこと、割とよくある。仕方ない。ならば、暴力だ。
箒に飛び乗り宙に舞い上がるも、この飛行術では移動が精いっぱい。媒介のほうきから手を離しただけで失速して墜落する。
飛んでみないとわからないこともあるものだ。頼みのたまもペリカンの前では無力だ。
こちらの世界の術式ではもっと上級の術式でないとかつての実力は発揮できないらしい。修復のに必要性をひしひしと感じる。頭から衝術のやり方が飛んだ。ペリカンのくちばしが壱和をとらえる。
「抜け駆けは許さん!」
いと高き光輝がペリカンを縛り上げ、激しく地面に撃墜させる。
今回、経験が浅いイレギュラーズが多い。鈴音は回復し倒すと心に決めていた。
「大丈夫だ! ワタシがいるからな! 急いで回復しなくちゃな!」
壱和の傷をふさぎながら、鈴音は自分と同じような気配を感じる。
「君はまだまだ戦えるぞ! 戦わせてやる!」
「よおし。今だな!」
攻撃の機会をうかがっていたイズマが紫色の終焉の帳を下ろす。
紫色に魅入られた怪鳥は、狂気に飲まれて自分の血肉をすすり始める。突き立てられる自分の肢詰はたやすく自分の急所をえぐるのだ。
一羽、一羽と海に落ちる怪鳥。海上に足場を築いて待ち受けた史之がそれらを巻き込み、次元ごと消し飛ばす。
「今度は踏まないように気を付けよと思ってたけど、ここはナマコの被害ないとこなんだ。そっかあ、もしもの時は海中のナマコ投げて囮にしてやろうと思ったんだけど」
こっちに来ないでねー! と、史之は気遣いを忘れない。今日は奥さんも居ないしある意味冷静なのだ。
「悪いが食事ならば他を当たって貰おう。このナマコにはまだまだ役に立って貰わないといけないからな!」
ルーキスの飛ぶ斬撃を受けた派手に血しぶきをあげながら怪鳥が落ちていく。
「未来の名産品を守るとあらば、刀を握る手にも力が入るというもの……!」
高らかに叫び、更なる獲物を追うルーキス。
「名産品……?」
史之に尋ね返す暇はなかった。更なる怪鳥をつぶすのに忙しかったので。
集中攻撃を浴びた大型ペリカンが落ち始める頃合いになると、すでに群れの秩序はないも同然。各個撃破に戦況は移行していく。
加工班の主に警護を担っていた者達があえて自分たちを囮にして干場を守り、一撃食らわせて海の側に押し戻してきていた。
とどめは撃墜班の仕事である。加工場に墜落されるとせっかくのナマコが痛む市は閨拉致やらが落ちて苦労が水の泡だ。
一嘉は、ペリカンの鼻先に飛んだ。至近での肉薄戦が性に合っていた。
まだ、この世界での戦い方は手探りで、でも、今はこの魔獣の翼をへし折ることだけを冠がて件を振るう。手負いの獣だ。油断したら一発で落ちる。ただでは済まない。
少しでも機動力を削るのだ。何度も同じところを切る。相手が力尽きるまで。動きを読まれようが構わない。相手が落ちるまで。
最後の一羽が落ち、鳥の鳴き声が聞こえなくなって、迎撃班の仕事は終わったのだ。
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日はまだ十分高い。
「頭つつかれた奴はいないかー」
鈴音が「いないなら、私はナマコと焼き鳥食いに行くぞー」と言っている。
「俺もナマコ食べてみたいな……加工班に頼もうかな? 作業を手伝うからさ」
イズマも移動を始める。
「えー、海のナマコ拾わなくていいの!?」
史之は、ぱっと表情を明るくした。
「よかったー。俺、今回書生服だからさ」
海に入れって言われたらどうしようかと思ったー。と、にこにこする。
だが、加工場ではまだ働くという。干したナマコを袋詰めする作業が残っているという。
何人かは加工場の方に行くという。
「しょうがないなー倒してハイ終わりってのも気が引けるし。それじゃまあ拾うとしますか」
手持無沙汰になったクルルも加工場に行く。
「加工の見学でもしてようカナ――ナマコって美味しいの?」
「ナマコは食した経験はないが、海のものを食べれぬというわけにもいかぬ為、挑戦しよう」
武蔵、挑戦。こりこりこり。ぱく。こりこりこり、ぱく。神妙な顔でかみ砕き規則的に飲み込んでいく。味の感想を聞く雰囲気じゃない。
「何処かで買える?」
クルルが情報屋兼依頼人に聞こうとすると、すでにルーキスがすごい勢いで詰め寄っていた。
「ところでメクレオさん。そのナマコ、加工した後はどういう用途に使うんでしょう?」
戦闘中にひらめいたのだと言う。なぜ、そんな時に。
「俺、ちょっと思い付いたんですけど……干したナマコを粉末にして、色々な料理に混ぜて売り出してみるのはどうでしょうか」
どうしてそんなことを思いついてしまったのか、思考過程を開示してほしい。
「ナマコアイス、ナマコプリン、ナマコパフェ…メニューは無限大です!」
聞くともなしに聞いていたクルルは、首をひねった。それって、おいしいの?
「……味? ソレハチョトワカラナイネ……」
ルーキスの語尾が掻き消える。情報屋兼依頼人は踵を返した。
「折角ここまでやり切ったんです。新しい名産品を作って、更にお客さんを呼び込みましょう!」
プレゼン資料、練り直してどうぞ。
一嘉は、比較的可食部がありそうな一羽を確保すると黙々と作業を進めていた。
胸肉は叩いて筋繊維を解したら、海水で塩茹でを試す。鳥皮は串に刺し、パリパリになるまで焚火で直火焼きを試す。焼き上がれば味付けに作った塩を少々。上二品を作っている間、腿肉は海水で漬け込んでから焼いた。準備している内に非が暮れなずんでいく。
動きによどみはなかった。料理はできた。異世界でも。
「……まあ、塩味ばかりだが状況上、勘弁して貰おう」
かまわない。と、壱和は焼けた足をもらい、大口開けてかぶりついた。
「んむっ、臭みがあって大味だが食えねぇもんでもねぇなナ――まあ、オレは口に入ればいい大喰らいなんだがナ~」
一般的に壱和は悪食の部類だ。つまり、客観的に言えばくそまずい。食うに適しない。食えたもんじゃない。ペリカンはまずい鳥なのだ。
「食料として弔えるなら、奪った命を無駄にはしたくない」
黙々と一嘉は肉を口に運んだ。動物好きゆえにただ殺して終わりではいけない気がした。
じきに、混沌の何がうまくて、何がまずいかわかってくるだろう。
その頃には、今より強くなっている。必ず。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れさまでした。加工場の作業を守り切ることができました。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。
GMコメント
田奈です。
こっちは水鳥魔獣を倒す方。
拙作「<深海メーディウム>海辺の恋を滑らせるメッチャスベルナマコ!」の直後になりますが、別に知らんでも「ナマコを加工してる背後に気を付けつつ、魔獣退治」だけ押さえていてもらえれば大丈夫です。が、より味わい深くなるのは受け合います。
敵
「いや、普通の水鳥って嘴にのこぎり歯は生えてないし、きりもみ急降下してこないと思うんだよね。規格外にでかいのもいるし」
*全長300センチメートル。翼開張600センチメートル×3
*全長150センチメートル。翼開張300センチメートル×たくさん
水鳥は海の向こうから来ます。一番近いのはペリカンです。
群れで連携して、大型でラインプレスしてきつつ、間隙を縫って小型が獲物を奪取。こちらの防衛ラインが崩れたところを大型種が上空からの急降下でダウンを狙ってきます。
場所
繁華街から離れたとんでもなくひなびたビーチ――というか岩場というにも中途半端な――何もかもが中途半端な潮だまり。
波打ち際で迎え撃って下さい。
足元は砂砥石が混じっていて、安定しているとはいいがたいです。潮だまりの端から端まで30mです。
そこから20メートル後方でナマコ加工の作業をしています。一定割合以上ナマコと人員と設備が被害を受けたら失敗です。
ナマコ加工班でも、ナマコと設備の保全と作業優先で動きます。水鳥を倒すのはこの班です。
範囲攻撃に巻き込まないように、いろいろ気を付けてぶっ放してください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
この依頼は「<俺のナマコを守って>ペリカンからナマコを守りつつ作業するやさしい仕事。」と連動しています。
1) 連動先の状況に応じて、不測の事態が発生します。
2) 同時に依頼を受けるのは物理的に不可能ですので、ご注意ください。
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