シナリオ詳細
再現性東京202X:限界までぐるぐるバットしないと出られない教室
完了
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オープニング
●再現性東京202X、希望ヶ浜学園、保健室
再現性東京、希望ヶ浜学園、それは練達における『現代の再現』とでも言うべき場所だ。混沌世界に馴染めなかった旅人が積み重ねてきた『逃避の集大成』とも表現出来るだろうか。そんな平穏を求めたところにも怪異は住み着くもので――灯台もと暗し、彼等はおそらく隣人と謂うに相応しい。
保健室――それは体調の悪い生徒達が横になったり、診断の為に使われる部屋。普段は殆ど人の行き来しない場所だが、如何いうワケかおしくらまんじゅう状態になっていた。椅子に座る者、壁にもたれる者、ベッドで横たわる者までいる。全員が全員青い顔でうんうんと唸っているようだ。
もう嫌だ、止めて、気持ち悪いよ――うわ言が飛び交う中、保険医である白石恭子は若干の焦りを覚えていた――保健室が盛況だなんてあってはならない。
はやくどうにかしないと私ももらっちゃうわ。健康そうな生徒や先生に手伝ってほしかったのよ。お願いね?
呼び出された君達、イレギュラーズが頼まれたのは原因不明の体調不良の調査だ。おそらくは夜妖の仕業だろうと勘ぐった君達はそれらしい気配を掴もうと後者を探索していく。すると――誰しもがひとつの教室に行き着いた。※年※組、今では使われていない、伽藍堂な――。
●デスゲームが始まると思ったか?
机も椅子もない、ひどく静かな教室だった。不思議に思って中に入ると突如、ピシャリと扉が閉まる。嫌な予感を覚えた君は扉を開けようとするも――謎の力によって開かない。閉じ込められたようだ。まったくお約束な展開にもほどがある、しかし、当事者となれば話は違ってくるもので心臓に冷や汗が垂れてきた。校内放送かもしくはマスコット・キャラクターでも出てきてゲームが如何とか……?
件の夜妖の仕業に違いないと構えていると、ふと、視線が黒板の方に流れていく――限界までぐるぐるバットしないと出られない教室――あっこれ与太シナリオだ。体調不良って目を回してるだけだこれ。よくも騙してくれたなノベルマスター。いやタイトルの時点で見えてると思うけど兎も角――。
黒板の下にはたくさんのバットとなんか色んな小道具が置いてある。リアクションは派手にしてね、そんな笑い声が響くかのような――こうなったら覚悟を決めてぐるぐるする他ない。
ちなみにぐるぐるバット終わったら夜妖は消滅するよ。黒板の端っこにそんな事が書いてあった。親切なのか不親切なのか。
- 再現性東京202X:限界までぐるぐるバットしないと出られない教室完了
- NM名にゃあら
- 種別カジュアル
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月21日 20時20分
- 章数1章
- 総採用数5人
- 参加費50RC
第1章
第1章 第1節
轟音――鳩が啼いても蛇が叩いても、戸口はまったく、嘲るかのように無傷で在った。んだヨ、このめんどくせぇ条件! ご丁寧に扉ブッ壊せねえし人数分バットおきやがっテ。傍らでぐるぐる回っているねこのたまだって首傾げながらサイクロンな勢いだ、それに反応がないって事はこの教室『ガチ』らしい。そもそも夜妖ってこんなにも俗物的だったか? アア、やりゃあいいんだロ! チクショウ! ひどいヤケクソを発揮する他現状を打破する方法は存在しないのだ。取り敢えず邪魔なものを右や左へ、ついでに小道具箱を教壇へ。これで回り易い環境は整った。あとは――バットを握るだけ。
意を決して首を垂れるかの如く額を柄へ、つかつかと歩むように、速度を上げろと黒板がギィギィ鳴いた。頭にひびク! いーチ、ニー、さーン、よン、ゴ、ろ――テンポ・アップだ、猫の目も回ってしまう。数分間姿勢を維持できたのはうつわで在るが故か。
汗、臓腑、ご挨拶したジクジクする気分の悪さ。そろそろ一回くらい止まっても罰は当たらない。夜妖の反応もないと謂う事は満足しているという事だ。ぐ、ら、り――眼球振盪してたらそりゃ傾く、ふらり――オ゛ア゛ッッッ!!! 小指が机の角に吸い込まれた、これは痛い。
一瞬の内に訪れた不幸、其方に意識をもっていかれた玄野、限界が来る!
ヴ、ヴェッ……ェエ……。
映像が乱れております。しばらくお待ちください。
深緑の花畑の映像――。
成否
成功
第1章 第2節
耳石を無理に転がしてくれたのだ、治す為には安静が不可欠。
えっちっち袋な史之には罰ゲームが相応しい、そんな雰囲気を黒板は垂らしていた。汚れちまった哀しみの代わりに禊としてのぐるぐるバット、それが良いものかは知らないが、回り過ぎて崩壊するよりは断然、人類的だ。きっと俺を悟りの向こうへ連れて行ってくれるに違いない。このまま日が暮れても上等だと考えているのは、きっと、隣に愛しが在る故だろう。見ていてくれ睦月、俺の雄姿を――。
ねえ、しーちゃん。ぐるぐるバットってなぁに? よくわかんないの。そんな呟きは聞こえていたのか聞こえていなかったのか、自棄っぽい勢いで彼はラムをキメていた。こんなの飲まなきゃやってられない。訴える為に駆け込んだって神様は聴いてはくれないものだ。呂律回らなければ足元勝手に回ってる、アハハ、カンちゃんたくさんだね。ちょっと話聞いて、こっち見てよしーちゃん……もう。ふくれ頬。
夫さんは既にへべれけなのでコッチはコッチで試すほかない。とりあえずバットを抱えてみて、その場でほんわりクルクルしてみた。不意に鳴り響くブザー、ダメです、これではぐるぐるバットとは謂えません。天井から降ってきた水で衣服が台無し。この夜妖はいじわるなのか、それとも親切なのか――そう謂えば聞いた事があります、とある宗派では神と一体化する為にぐるぐる回るとか。やっぱり何かしらの儀式……?
思い返してみれば元居た世界でもバット片手に火の用心と回っていた。不審者を見つけたら即座に滅多打ち、あの頃の苦い記憶と共にボコスカやりたい気分にもなる――あっ、しーちゃん。お手本見せてくれるの? 奇怪なポーズ、なんだろうか、まるで魚を獲る鳥?
結局のところはコンパスよろしく大回転してしまえば好いのだ、うん、まわる、まわる。本当に脳味噌で考えなくても済むように、永久、まわるまわるまわる。飛ばなくても良いのが唯一の救いだろうか。ふわふわいい塩梅で腸が刺激されている。どうにもならない塩水に変化したのは何故だ。それで、ちゃんと掃除してくれるんだろうねあの夜妖……。
なんだかしーちゃんの顔色が赤かったり青かったりで愉しそうな様子だ。それならきっと素晴らしい行為なのだろう。鳥さんの真似をして頭を垂れ、ふたり一緒にぐるぐるまわる。そろそろ速度を上げてみようか。ぐるぐる、ぐるぐるぐる、ぐるるるる……。
これかるく地獄だと思わない? カンちゃん?
僕はもっと回っていたいよしー……ちゃ……あ、ああ……?
世界は僕等が想像していたよりも遠くて、傾斜だったのだ。
勘弁してくれと漏らす刹那にやわらかな幸せに倒される。
頭をぶつけなかったのは良いのだが。
……いたあい!
そのままふたりして横たわっていればまわるまわる。
回転する灯に中てられた儘、互いの貌を確かめた。
小道具なんて最初からなかったのだ、吊り橋効果ならぬ目回し効果。
成否
成功
第1章 第3節
ブラック・サンタの噂の方が幾等か理解し易いものだとアイザックは四角形を傾けた。ぐるぐるバットを愛してやまない夜妖なんて、少し前に再現性東京で流行った漫画みたいじゃないか。夜妖の仕業なのだと、だから、こんなにも人々が目を回している。良い子も悪い子も前後不覚じゃプレゼントを取りに来てくれない。これなら単純なお話の方が好いと思うんだけどな。まあ、外に出られないのは困るからお望み通りぐるぐるしよう。乱雑に置かれていた丁度いい長さのバットを構える、さて、疑問。
目が回るなんて感覚を知らない、解せない、だってやったことがないから。生まれてこの方バットはプレゼントとしか認識していなかったのだ。おや? 逆L字の儘、ぐるぐるしていたら四角形までぐるぐるしてきた。これで二倍ぐるぐるしたら早めに夜妖も満足してくれるだろう。え? 本当は人間がぐるぐるしてるところが見たかった?
見境なく君が閉じ込めた所為だろう? 僕だって振盪しているんだ。
ブラック・ホールとホワイト・ホールの真ん中で拉げるような気分。流石の僕にも影響が出てきたようだね。端っから不安定な輪郭にマドラーをぶち込まれた、ぐちゃどろプリズムとはつまり牢獄の事か。ぐらり……隅っこに追いやられた机と椅子が文句を垂れている、べしゃり。床に広がってしまいそうな金魚鉢の中で。
現れたものは衣を纏っている、自分を装っている?
どろりと溶けた遊色のほねぬき。
成否
成功
第1章 第4節
百合色の世界に美しい音色が響いた、模造を聞き取るには真面な耳朶が不可欠だと思わないか。当たり前を知っているフーガだからこそ、平常、眼球を真直ぐに為さねばならないのだ。限界までぐるぐるバットしないと出られない教室? 反芻したところで夜妖は返事をしない。首を傾げて触れる事もなく、ぐるり、バットとやらを掴んでみた。で――手首を痛めるまでバトンみたいにぐるぐる――ブザー音、違うらしい。誰かさんみたく濡れ鼠にはならなかったが。
黒板に描かれたポーズと説明文を読み込んでようやく咀嚼が出来た。つまりは目を回す事を目的とした遊びだと。早速持ち手の先端におでこをコツリ、逆さLにした所為か若干厳しい姿勢――脱出の為だ、仕方ねえ。満足してくれたらきっと優しい霊魂の如く、からから、笑ってくれるのだろう。最初はゆっくりと、ゆっくりと、慣れてきたら徐々に早く……。
かるいフラツキと同時に汗、倒れるよりも先に疲弊が伸し掛かった様子だ。少し休憩してから二回目を――何度回ったかなど忘れている。夜妖なら数えていたのではないか。黒板が口笛を吹いている。
テレビ番組で聞いたことがある、それとも親友の友達からだったか。寝返りを繰り返すことで三半規管が強くなるらしい。普段昼寝ばっかりだからグルグルしないんだろうか。吐くほど酔うなんてないし。
ぶぅぶぅと文句を吐いて、教室の戸が開く。
体勢不利も混乱もオマエの脳には届かない。
成否
成功
第1章 第5節
イレギュラーズの回転により夜妖は満足したのか『限界までぐるぐるバットしないと出られない教室』は消失した。
次の日、あんなにも忙しなく、目を回していた保険医も一息つけると笑ってみせた。少し静かな気もするけど保健室は『暇な程度』が丁度いいのだ。
めでたし、めでたし。
NMコメント
にゃあらです。
バラエティ番組+出られない部屋。
このシナリオはラリーです。一章での完結を予定しています。
カジュアルシナリオなので必ず成功となります。
●限界までぐるぐるバットしないと出られない教室
限界までぐるぐるバットしないと出られない教室です。夜妖らしいです。
限界までぐるぐるバットする以外で倒す方法はありません。
●白石恭子
保険医さんです。
体調不良の生徒さんで保健室がいっぱい、てんてこ舞い。別の意味で目を回しています。
●サンプルプレイング
「何……この……なに?」
やりたくないけどやるしかない、仕方がない、私そんなに三半規管強くないんだけど。
こっそり頭を下げずに回ろっかな。えっ?
限界までしないと夜妖が消えないから出られないですって?
「あー、わかったわよ。やりゃあ良いんでしょやれば!!!」
保険医さんにお世話になりそうね。
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