シナリオ詳細
再現性東京202X:終わらない夏の夢見
オープニング
●再現性東京202X街:終わらない夏の夢見
『あーあ。もー……だるいなー』
あの事件を乗り越えて、平穏な日常が取り戻されつつある、再現性東京。
そんな日常を取り戻した街角には、その日常を彩るが如く通学路を歩く少年達がおり、空を見上げ、大きな溜息wを吐く。
『まったくだよなぁー……あーあ。あの時はちょっとこわかったけどさー……あれくらいのしげきがねーと、なんだかたいくつなんだよなー』
『そうだよなぁ……あの人たちって、どこにいるんだろ? 少なくともこの近くで見たことないし……とおくに住んでるのかなー?』
『かもしれねーなぁ……あーあ、あの時のようなじけんが起きればまたおもしろそうなんだけどなー……』
かの小学生達は、つい先月に皆で近くの田舎へと向かい、海岸線で肝試しをしようとした子供達。
幸い、イレギュラーズ達のお陰で彼等は命を奪われることもなく、無事にこうして帰ってきて居る。
……しかし、子供の好奇心というのは底が知れない。
救われれば、その幸福に感謝する事も無い……それよりも刺激を求めようとしてしまう部分もある訳で。
『……なー。この近くにかいだんばなしとかなかったっけ? こわーい、こわーいようかいが出るとかさー』
『んー……あー、そういやさぁ、がっこうのうらにあるじんじゃで出るってうわさなかったっけ?』
『ん……あー、そういやあったなー。よーっし、んじゃーぜんはいそげだし、いこーぜー! おれたちも、レベルアップしたはずだしさー!』
『『『おー!!』』』
元気良く拳を振り上げる子供達。
……勿論、そのような噂が立つ所が、再現性東京において平穏無事な場所など訳も無く。
『……グフフフフ……来ルゾ、来ルゾ……オイシソウナ、匂イガ……』
と、不穏な声が響きわたるのであった。
●
「あ。みんなみんな、大変だよ、大変だよー!! こっちこっちー!」
再現性東京のカフェ・ローレットにて、ぶんぶんと手を振り注目を集めようとする、綾敷・なじみ。
そんな彼女の言葉に頷き、促されるままに部屋に入ると、そこには水月・鏡禍の姿。
「なじみさん、皆さんを集めていただき、ありがとうございます。そして皆さん……大変です。先月に助けた子供達が、どうやらまた、夜妖の事件に巻き込まれようとしている様なのです」
神妙な表情をしている鏡禍に、うんうんと頷きながらなじみは。
「うん。まぁこのなじみさんがちょっと追跡調査してたんだよね、鏡禍さんからの不安を聞いて。そしたらまぁ、この子達懲りてる人も入れば、懲りてない人もいたみたいなんだよねー。そして懲りてない子達が、また怪談スポットに行こうだなんて言い出している様なんだよ」
「そういう訳です。このままでは、子供達が再び被害に遭って仕舞います。流石に放置……という真似は出来ません。彼等にもうちょっときついお灸を据えながらも、救いの手を差し伸べてあげたい……勿論僕一人の力だけでは、厳しい所ですので、皆さんにも協力をして貰えないか、という御願いです」
「またかー、って思う人も居るとは思うんだけど、再現性東京に住む人達は、総じて怪談話に対する姿勢が似てる所もあるからねー。まぁ、繰り返しにはなって仕舞うんだけれども、でも地道にこういうのに対処していかないと、いつのまにか夜妖の力が大きくなってきてしまうなんて事もあり得るから、みんなの力を貸して欲しいって訳。という訳で……宜しく頼むねっ!」
ニコッと笑みを浮かべたなじみに、鏡禍も深く頭を下げるのであった。
- 再現性東京202X:終わらない夏の夢見完了
- GM名緋月燕
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年09月24日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●喉元過ぎた夏
再現性東京。
様々な事件に見舞われたものの、棲まう人々は次第にその厳しい生活にも慣れ始めてしまい、それがまた夜妖に襲われる羽目になって仕舞う事も多くなりつつある時。
「……全く、懲りない奴らだよな」
空を仰ぎ見ながら、深く溜息を吐く『黄金の旋律』フーガ・リリオ(p3p010595)……それに『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)が。
「ええ……本当に。皆さんに手を貸して頂き、ありがとうございます」
深く頭を下げる鏡禍。
つい一月ほど前に発生した、夜妖事件。
そこで救出した再現性東京の小学生達が、再び夜妖に襲撃されるという事件を聞きつけ、イレギュラーズ達は小学生達の地元へと急ぐ。
まぁ、以前救出した小学生全員が、また再びという事ではないので、懲りて言いつけを護っている子供達も居るのだが……。
「んー。こいつら、前何とかなったし、次も何とかなる、とでも思ってんだろうなァ。テメェらの力で助かった訳でもねェ癖に、調子に乗りやがって」
と『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)が舌打ちすると、『赤薔薇の歌竜』佐倉・望乃(p3p010720)も。
「そうですね。以前も一歩間違えれば死ぬという、危険な目に遭ったと言うのに」
と目を伏せる。
そんな望乃のしょんぼりした雰囲気に、その肩を軽く叩きながら『アラミサキ』荒御鋒・陵鳴(p3p010418)が。
「……幼きヒトの子の好奇心は、一度の恐怖では留まる理由には足らんのだろう。だからこうして、また恐怖を求める。だが噂が夜妖を生むのならば、無闇矢鱈と噂を拡大する様な行動も謹んで貰わねば切りが無いだろうさ」
陵鳴の言うとおり、夜妖というのは人の噂が立つところに良く現れる。
根も葉もない怪談話であったとしても、その噂話がどんどんと広まっていって仕舞えば、いつしか夜妖が姿を表すなんて事……今迄に何度も発生している訳で。
「うむ、そうじゃな。陰の気はよからぬ者を呼び寄せるらしいからのぅ。それこそ寂れた神社が今回の噂話の舞台となれば尚更、低俗な此の世ならざる何かが居座るそうじゃからな」
「ええ……僕が言うのも何ですが、子供の呼気心は元の世界なら嬉しかったものです。ですが護る側になると……どうもこうも頭が痛いですね……」
『鉄帝うどん品評会2022『金賞』受賞』御子神・天狐(p3p009798)と鏡禍の会話。
その会話を聞きつつ『青薔薇の御旗』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)は。
「……なんて私、この依頼受けたのでしょうね。ほっておいても良かったというのに」
ぽつり、そんな言葉を零す。
その言葉を聞いた上……かは分からないが、『鍛えた体と技で』コータ・ヤワン(p3p009732)は。
「まぁ……オレ、ここ錬達はほぼ初めて来た所だけど……皆の話を聞いてると、好奇心の強い人が多い土地柄なのかもしれないな? それが子供心で更にブーストされている印象……でも、それで命を失ったら元も子も無いし、しっかりと守り切らないと」
コータの言葉に促されるように、望乃も。
「ええ本当……頭が痛い所です。お灸を据えたいところですが……まずはしっかり助けなくては」
ぐぐっ、と拳を握りしめる望乃。
……そんな仲間達のやりとりに。
「……ええ。多分私、子供たちに同情してしまったのでしょうね。御父様に怒られても、やってしまってた昔の私と重ねているのかもしれません。私もまだまだ子供ですから……彼等の気持ちもわからなくはない。少しだけ、この経験を通じて大人になれるかもしれません。それが、良い方向でも、悪い方向でも」
そんなレイアの言葉にフーガが。
「そうだな……でもこのまま放置しておく訳にも行かない。夜妖達……を退治するとしよう」
と言うと、うむっ、と強く頷きながら天狐が。
「そうじゃな。子供達を救いつつ、積もりに積もった穢れの大掃除といこうではないか! ほれ、速達ッ! 饂飩ッ! 出前一番ッ! 安心安全をお届けに参るのじゃ!!」
チューンドリヤカーを背にして、強い強い使命感を宣言しつつ……イレギュラーズ達は、少年達の噂話の元となる、小学校の裏手の神社へと急ぐのであった。
●人里の影に眠る闇
そしてイレギュラーズ達が辿り着くは深見町。
噂の神社は石段の上にあり、この時刻ともなれば灯りもなく真っ暗闇に包まれていた。
更には余り整備もされていない様で、石段や石畳は所々が砕けていて……言いようのない不気味な雰囲気を強く漂わせている。
「さて、と……この辺りか?」
とクウハは目を凝らしながら、石段の上に目を凝らす。
数十段といった所で、そんなに神社が高所に位置しているという訳でも無さそう……ただ周りから視界が通るような場所では無い、というのは明か。
「うむ。では急ぐぞっ!」
迅速に己に健脚の力を付与すると共に、先陣切って石段を登って行く天狐。
最上段に達すると共に、暗視を活かして神社の中に目を凝らす……。
『……う、うぅぅ……く、くるなよぉ……!』
目の前に獰猛な唸り声を上げてにじりよる漆黒の狼。
そしてそれに睨まれ、完全に腰を抜かした様な状態に陥っている……子供達。
「居たぞ! 皆、こっちじゃ!」
そう仲間達に声を掛けつつ、天狐は子供達と狼の間に割込む。
『う、うわぁああ……なんだよぉぉ……!!』
弱り目に祟り目……と言うべくか、恐怖に恐怖が重なり完全に怯えた子供達。
そんな子供達をとっととリヤカーの荷台へひょいひょいっと乗せていく天狐。
『グガルゥゥ!!』
それをさすまいとばかりに、狼達は次々と天狐に向けて駆けてくる。
……だが、その狭間へ。
「させませんっ……!」
全力移動で割込み、その身を呈して狼の攻撃をその身に受ける鏡禍。
かなりのダメージを初手から受けてしまうが……どうにか持ちこたえ、狼達をじっと見据える。
『な、なんだよぉ……え……あ、あれって……!?』
『あ、あの時のおにーちゃん……じゃん……!!』
絶望の表情は、先日も助けに来てくれた鏡禍を見て、ほんの僅かではあるが光が差す。
だが、鏡禍は子供達に振り返らずに、狼を見据え続ける。
そして……残る仲間達も、石段を上がりきり境内へと到着……子供達と合流。
「おい、オマエ達! いいか、この辺りは夜になると、ああいう殺人鬼やら獣が出るんだ。俺達がいいと言うまで、リヤカーの中で大人しくしてな! あとオマエ、その懐中電灯はここに落として行け!」
とクウハは言い捨てる。
……だが、その身の周りにぼんやりと薄ら浮かぶ人魂の様なものに、ひぃっ、と声にならない悲鳴を上げる子供達。
「そうじゃ! いいか、不審者が居る此処は危険じゃ! 急いで避難するぞ!!」
と有無を言わさず天狐は子供達を乗せて、石段の下まで子供達を避難させようとする。
……だが、その目の前に、ぼんやりと浮かぶ闇の人影。
「っ……!」
それが夜妖だと判断するのには時間は不要……天狐はそのまま勢いを止めずに、リヤカーと共にひき逃げる。
「反応型の進行方向に立つのが100%悪い! わし悪くないのじゃ!」
幸いそれでリヤカーは止まる事無く、避難は出来る。
とは言え闇の中での人型夜妖一体がイレギュラーズ達の後方から出現したとなれば、もう一体は何処に居るのか見当が付かない。
「兎に角あいつを下らせる訳にはいかないな……さぁ、オレが相手になってやるよ!」
とコータは背後に現れた人型夜妖に挑発し、己への怒りを付与。
勿論、逆側の狼夜妖らに向けては鏡禍が。
「さぁ、僕の不死性を越えて僕を倒せるか……やってみましょうか」
と戦線布告。
狼の戦意が完全に鏡禍に向いた所で、レイアは。
「……意味が無いとしても、守れるものは守ります」
と、戦場全体を破壊から守る結界を張り巡らせて戦場を整える。
更に陵鳴からは。
「オマエタチに餌をやる気は無い。我が名はアラミサキ。此の地に眠りし神の御先である。神域を荒らす不届き者には罰を下してくれようぞ。先ずは穢れた獣共を。次は……オマエ達だ」
それと共に、クウハが子供達が落とした懐中電灯を灯し、ぐるりと周囲を一周。
……すると、後方の人型の影の他、狼達の後方にも光が歪む場所を発見。
「やっぱあそこに居た様だな……良し、これで夜妖の場所は全部判明、と」
ニッ、と笑みを浮かべながらフーガは大ダメージを負っている鏡禍に即座に治癒魔術を飛ばして、その体力を回復する。
「ありがとうございます……! 取りあえず、敵の引きつけは僕とコータさんで……闇時侍をマークします。その間に、狼達を……!」
「ああ、了解した」
頷くコータ……彼はぴったりと、背後に立つ闇時狭を逃がさぬ様にマーク。
そしてその間に、まずは陵鳴が狼共を纏めて神々しき光に纏めて灼き尽くす。
その光に苦悶の咆哮を上げつつも、狼共は左へ右へと移動しながら、鋭く尖った牙で噛みついてくる。
「っ……たく、いてーぞ!」
とクウハは苛立ち声を上げながらも、踏み込んできた闇狼に失意の呪術を撒き散らす。
その二人の攻撃に続き、レイアはコータに向けて救いの音色を奏でその体力を回復し、一方の望乃は仲間達を鼓舞するように、勇壮なる曲を奏で士気を高揚させる。
そんな仲間達の動きもあり、壁役の二人は完全に闇時侍の動きを制御した上でブロックを継続。
一刻目が過ぎ、次の刻。
子供達を非難させていた天狐が再び石段を登り、コータの対峙する闇時狭を挟み撃ちにすると。
「あの子達も恐れておるのでな、そんなに時間は掛けられんのじゃ!」
と、己の限界を突破させつつ、目の前の敵を薙ぎ払うひき逃げ攻撃を積み重ねる。
天狐とコータ二人が闇時狭を相手している故に、間に挟まれた仲間達は狼だけに攻撃を集中。
「兎に角動きが素早いのは厄介ではあるが、惹きつけられている間に打つのが最善……!」
ピンポイントに攻撃する事無く、範囲を軸にした攻撃を繰り返す事で、狼達の体力を総じて削る陵鳴とクウハ。
……段々と体力が削れ、動きが鈍り始めた所で、望乃が更に茨の足止めを付与し……そこへクウハが。
「動けねえ相手なら、ピンポイントに狙ってやるぜ!」
と邪悪な怨霊を嗾け、闇の狼を喰らい尽くす。
狼一匹が喰らわれ、残る9匹は……攻撃の勢いを変えない。
「獰猛なのは間違いない様だな。だが、勢いだけじゃ、どうにもならない事があるぜ」
そうフーガは狼共に言い捨てる。
……ともあれ闇狼達の獰猛なる牙は、完全にフーガ、望乃、レイア三人の回復力が上回り、傷を残さない。
そして……次第に削れ行く狼の体力は、地に臥すタイミングが次第に加速していき……10匹居た狼達全ては、十数分の後に全て消滅。
後に残る葉、人型の闇、闇時狭。
『……っ……』
舌打ちをした様だが、全てが闇に包まれている故に良く分からない。
だがブロックされている故に、回り込む事も出来ない。
「もう逃げられないぜ……さぁ、大人しくここで眠れ」
フーガの宣告と共に、クウハは魔光によるピンポイントな一閃。
その一閃を躱せずに、身を貫かれた夜妖は闇の中に霧散……そして、最後に残る一体。
「後はアンタだけだ。覚悟しろ」
其の意思を破壊力に変えた、強力な一撃を叩きつけるコータ。
闇の身は躱す事も出来ず……光の歪みが放射状に霧散すると共に、其の身は消え去っていくのであった。
●涙の雫
「よぉ、ガキ共……今回も『他人様のお陰で運良く』助かって良かったなァ?」
そして、神社の石段の下。
泣きじゃくる子供達を前に、クウハが不敵な笑みを浮かべながら、そう声を掛ける。
『だ、だってぇ……お、おにいちゃん達とあいたかったんだよぉ……』
と子供の一人は、鏡禍を指さす。
……それに鏡禍はふぅ、と溜息を吐く様を見せながら。
「……海の件で懲りたと思っていたのですが、本当に痛い目を見ないとわかりませんか?」
と、いつもの柔和な表情とは違い、厳しめの表情で声をかけ、更にクウハも。
「アァ。安心出来ねぇかもしれねぇぜ? なんせ『オレは殺人鬼じゃない』と、そう言った覚えはないからなァ。夜、こういう場所に来たって事は、テメェら全員死にたいんだろ? 最初に殺されてェんはどいつだ? ん?」
その背中の人魂の様なものが、更にグルグルと子供達の周りを周回。
『し、しにたくねぇよぉぉぉ……!!』
恐怖に耐えきれずに泣き叫ぶ子供達……そんな子供達の言葉にニンマリとした笑みを浮かべて。
「……ま、そいつは冗談だ。だが、死ぬ覚悟も身を守る力も無いんなら、こういう遊びはやめときな。妙な噂がある場所には、それだけで死が呼び寄せられるものなんだよ」
そんなクウハの注意に、望乃、フーガからも。
「そうです……夜の冒険、未知のものへの好奇心。わくわくどきどきする気持ちはわかりますが……いつもいつも、通りすがりの親切な誰かが助けてくれるとは限らないのですよ?」
「そうだ。アンタ達は本当に恐れ知らずだ、そこは尊敬はする。けど……アンタ達を庇った人達を良く見ろ。冒険する前に……自分や友達が傷つく恐れを知ってくれ」
フーガの言葉……鏡禍とコータ二人は流石にかなりの傷を負っており、見た目からも痛々しいのが分かる。
この傷は、自分達がこのような事をしなければ、負う事が無かった傷……そう暗に伝えようとしていた。
……その傷に、流石に子供心ながらも恐怖と罪悪感を抱いたようで、目を伏し涙を流す子供達。
そんな子供達の頭を撫でるコータ。
「そうだ。肝試しはいいけど無謀はだめだぞ。何かあってからでは遅いんだしな」
そして、望乃、鏡禍の二人からも。
「ええ。自分の命を自分で守れるようになるまでは、危険な冒険は控えた方が良いかと思います。家族や友人等、あなた達の身に何かあったら悲しむ人達がいる事を忘れないでください
。お姉ちゃん達との約束……守ってくれませんか?」
「ええ……死んで幽霊になりたいわけではないのなら、もうやめること。大事な家族、友達……もう逢えなくなりますよ?」
二人の言葉を聞いて、ぶわっと走馬灯のように子供達の脳裏に、お母さん、お父さん……あの混乱の中で、もう逢えなくなった友達の顔……様々なものが浮かんでいく。
……そして。
『……うん……分かった……よぅ……』
かなりしょんぼりしている雰囲気で、心底まで堪えたのは間違いない。
そんな子供達にうんうんと頷きながら天狐が。
「うむ、それでいいのじゃ。ほれ、こんな深夜じゃからお腹も空いてるのではないかの? わしは通りすがりのうどん屋じゃからのう! ほれ、暖かい饂飩でも食べていくが良いのじゃ!」
差し出される饂飩の器……温かい湯気が立ち、いい匂いが鼻腔を擽る。
『……いい、の……?』
「うむ! たんと食べるが良い! お代も不要じゃからな!」
満面の笑みの天狐に、無邪気で嬉しそうな表情を浮かべる子供達。
そんな子供達を遠目にするレイア。
「……」
「……どうした?」
陵鳴が問い掛けると、レイアは。
「……子供ながらに思う所はあるでしょう。きっと……また此処に来る事も無いと思います」
「そうだな……きっと大丈夫であろう」
と、静かに陵鳴も頷くのであった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
子供達の夜妖事件第二弾にお付き合い頂き、ありがとうございました!
流石に今回の事件、子供達の心に強く刻み込まれたでしょうし……もう言い出す子も居ないと思います。
GMコメント
皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
夏休みも終わってしまいましたねぇ……。
夏の終わりに対応した小学生達が、どうやら懲りずにまた騒ぎを起こしてしまった様です。
●成功条件
小学生達(4人)の安全確保。
又、彼等を殺そうとする、夜妖達を全て始末することになります。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●周りの状況
都心近郊、彼等の住んでいる深見町。
彼等が通う小学校の裏手にある、人気無く寂れてしまった神社が舞台となります。
正月位しか参拝客が来る事が無いこの神社には、いつの間にか掃除などもされなくなってしまい、幽霊が出るという怪談話が広まってしまいました。
そしてその話に呼び寄せられたかの如く、漆黒の闇を纏った夜妖達が子供達を喰らおうと蠢いている状態です。
つまり、戦場となる舞台は真っ暗闇で、灯りが灯らない場所です。
又、どうもこの夜妖が灯りを吸収してしまうという特殊な技能を持っている様で、かなり暗い戦場で戦わざるを得なくなります。
子供達の場所もかなり見辛い状態なので、その点の作戦を考えて見て下さい。
●討伐目標
・漆黒の闇を纏いし人型の夜妖『闇時狭』:2体
其の身に灯りを吸収する性質を持ちし夜妖です。
灯りを吸収する事で、体力を回復するという特殊な機構を持って居ます。
当然漆黒の戦場では、その身を隠して移動する事も可能ですので……不意に背後に回り込まれて、強烈な一撃を叩き込んでくる、という可能性が高いので、ご注意下さい。
尚攻撃手段としては、その手の切れ味鋭い『鎌』の様なものになります。
この一撃を小学生達が食らえば、一撃で命を奪われるのは間違いありません。
・夜妖に従いし狼型夜妖『闇侍狼』:10体
人型夜妖に付き従いし漆黒の狼です。
こいつらは光を吸収とかの性質は持ちません、ですが凶暴な性格の様で、目に付くモノを全て喰らい尽くそうと噛みついてきます。
その牙で噛みつく事で、攻撃に加え出血効果のBSを与えてきます。
又、狼故に素早い動きをするので、回避力が高い様です。
●夜妖<ヨル>
都市伝説やモンスターの総称。
科学文明の中に生きる再現性東京の住民達にとって存在してはいけないファンタジー生物。
関わりたくないものです。
完全な人型で無い旅人や種族は再現性東京『希望ヶ浜地区』では恐れられる程度に、この地区では『非日常』は許容されません。(ただし、非日常を認めないため変わったファッションだなと思われる程度に済みます)
それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。
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