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シナリオ詳細

新たな交易路を開拓せよ!

完了

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『覇竜領域デザストル』。
 混沌の民はこの地に、有象無象の恐ろしい生物が多数闊歩する魔境といった印象を抱く。
 この地へと近づく人々はおらず、混沌を旅する行商人らですらも敬遠するほどだった。
 しかし、最近になってローレットイレギュラーズが覇竜へと至り、亜竜種とも交流するようになってから、徐々にその印象が変わりつつある。
 特に、各地で交易を行うパサジール・ルメスの民にとっては、先んじてでも亜竜種とのコネクションを強めておきたいところ。
「今のうちに多くの亜竜種の人達と交流しておきたいっすね!」
 『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)は早くフリアノンに行ってみたいと目を輝かす。
 先日、覇竜における表から誰でもフリアノンへと至ることのできるルートの開拓を行う依頼に参加したリヴィエール。
 中継ぎとなる簡易宿泊所に詰めていた亜竜種達の交流し、彼らの欲する物資など、少しずつ情報を得ている。
 ただ、問題はそこに至るまでの道程だ。何せ、普通に往来するだけで生死を賭けねばならぬ程の脅威が存在するのだから。
「なら、覇竜の一部を領地とすることで安全を確保してみるのはどうでしょう」
 先日の依頼にも同行していたユーフォニー(p3p010323)の提案は、パサジール・ルメスの民にとっては渡りに船といったものだった。
「それはいいっすね! 是非ともお願いしたいっす!」
 喜ぶリヴィエール。なんでも、交易路となりそうな道は先の交易開拓依頼で通った道と別にもう一つあり、そちらなら領地も兼ねられそうだということ。
 とはいえ、その為にはその区画に生息する魔物、亜竜らをある程度倒しておかねばならない。また、先日の路よりもやや険しい場所の為、考慮しつつ進まねばならない。
 それでも、少しずつ歩を進められれば、フリアノンへとたどり着くことができるかもしれないと、リヴィエールも鼻息を荒くする。
「では、予定を合わせましょう。それでは……」
 ユーフォニーはパサジール・ルメスの面々とスケジュールを合わせ、有志を募りつつ未開拓の路を進むことに決めたのだった。


 先日の依頼では玉髄の路を進んでいたのだが、今回はそこから少し外れた場所を進むことになる。
 こちらでも小川が流れ、両サイドを高い岩場に挟まれた道を進むことになるのだが、問題はその小川が蛇行していること。
 おかげで、川沿いの道を進むにも、2、3度向こう岸へと渡らねば先へと進むことができない。
「このままでは馬車は進めないっすね」
 リヴィエールが言うように、今進んでいる道は小川に遮られてしまう。何らかの手段がないと、往来するのは厳しい。

 それらの対策を講じつつ先へと進めば、一行は小川に屯す亜竜と出くわすことになる。
 ワニをベースとしたような亜竜、ドラゴゲイター。
 非常に獰猛であり、獲物を見つければ見た目に反して素早く飛びかかってくる恐ろしい生物。力なき者は瞬く間に鋭い歯で噛み砕かれてしまうことだろう。
「申し訳ないっす。キミたちにお願いするしかないっす……!」
 各地を旅するパサジール・ルメスの民であっても、覇竜の生物には全く太刀打ちできぬのが実状だ。
 彼らをこの先の小集落まで導くべく、イレギュラーズは武器を手に取るのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、『誰かと手をつなぐための温度』ユーフォニー(p3p010323)さんのアフターアクションによるシナリオです。
 覇竜との交易路をもう1本増やし、新たなパイプラインとしようという動きが始まっています。
 今回はパサジール・ルメスの民のみを引き連れ、小さな亜竜種の集落までの道のりを踏破してくださいませ。

●成功条件
 リヴィエールを含むパサジール・ルメスの民の護衛。

●概要
 覇竜での交易に強い関心を抱くリヴィエールら、パサジール・ルメスの民。
 そこで、ユーフォニーさんが覇竜に領地をという話を持ち掛けたことで、交易路の開拓が一気に進むことに。
 現状存在する道とは別ルートを開拓する形です。
 玉髄の路と同じく川沿いを進む形ですが、こちらは川が蛇行しており、時々向こう岸に渡らねば進めません。
 パサジール・ルメスの馬車も数台引き連れる形となる為、向こう岸に渡す手段を講じる必要があります。
 スキルやアイテムで手段がありますが、後々、パサジール・ルメスが往来できるよう永続して渡る手段があると喜ばれるでしょう。
 
 道中に襲い来る亜竜の群れを掃討し、亜竜種の小規模集落へと到着できれば、今回の交易路開拓は終了です。
 この地の人々と交流しつつ、次なる小集落へと至る路についての情報を集める形となるでしょう。
 
●敵……亜竜、魔物、計5体
 略称はプレイングの文字短縮などにご利用くださいませ。

○亜竜:ドラゴゲイター(略称;鰐竜)×3体
 全長3mあまり。竜の頭、四肢と尻尾、鰐の口と体を持つ亜竜です。
 非常に獰猛で、獲物と見定めた相手にはしつこく食らいついてきます。竜の四肢もあって跳躍も可能で、口を開閉する力も強化されており、並みの生物では瞬く間に餌になってしまうでしょう。

●NPC
〇リヴィエール・ルメス(&パサジール・ルメスの民)
 今回の依頼人。パサジール・ルメス所属。情報屋もしています。
 別所の交易路より険しい道でも、交易のパイプが太くなるならと喜んで今回の開拓に参加してくれます。
 リヴィエールの他は6名。2台の馬車に分譲し、交易品を運ぶことになります。
 戦闘では馬車に駆け込むことで若干の治療も可能。
 ただ、治療には2,3ターンを要しますので、手当を受けるタイミングは考える必要があるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 新たな交易路を開拓せよ!完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月19日 22時20分
  • 参加人数9/9人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 9 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(9人)

亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
アルシィ・コルティス(p3p009470)
リスタート勇者
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚
紲 冥穣(p3p010472)
紲の魔女
セレナ・夜月(p3p010688)
夜守の魔女

リプレイ


 出発前、覇竜の手前にてイレギュラーズはパサジール・ルメスの民と合流して。
「今回はよろしくお願いするっす!」
「リヴィエールさん、今回もよろしくお願いします!」
 挨拶してきたリヴィエール・ルメス(p3n000038)に、『ドラネコ配達便の恩返し』ユーフォニー(p3p010323)が頭を下げて応じる。
 今回、領地にして通行できるよう話を持ち掛けた彼女は、しっかりこの開拓事業に取り組みたいと意欲をみせた。
 もっとも、覇竜の人々からの理解を得ることが大前提となるのだが、依頼メンバー達の意欲は非常に高い。
「新しい交易路! サヨナキドリとしてはぜひ手を貸さなきゃいけない案件ね」
「交易路の追加とは、実にふろんてぃあな心意気なのです」
 商人ギルド覇竜支部長『紲の魔女』紲 冥穣(p3p010472)も実利も考慮して協力を申し出ていたし、『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)もこの挑戦を高く評価して無二のパートナーと参加していた。
「未踏の交易路の開拓、か。なかなかの冒険になりそうだね」
 『リスタート勇者』アルシィ・コルティス(p3p009470)がその道のりは険しく、大変だろうと口にすると、『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)が同意して。
「皆さんやる気がすごいですね。なら僕もできることをしないとです」
 鏡禍も皆に合わせ、依頼を成功させるべく尽力する心づもりだ。
「さて今回の仕事は、パサジール・ルメスの民の護衛だ」
 改めて、今回の依頼目的は、『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が言う通り、小川の流れる渓谷を進み、亜竜種の小規模集落まで交易目的の移動民族一隊を導くことだ。
「覇竜でのお仕事は初めてだし、こうして、キャラバンって言うのかしら。そういうのの護衛も初めてよ」
 混沌中を股にかけて往来するパサジール・ルメスの一隊、そして彼らとの依頼に、『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)は胸をワクワクさせる。もちろん、護衛は真面目に行う構えだ。
 とはいえ、馬車が通行可能な状況にせねばならないし、亜竜や魔物が襲ってくるという情報もある。
「亜竜種達との更なる交流と交易――つまりは共存共栄に繋がるお仕事ってことよね。頑張りましょう!」
「土木工事等は不得手ですが、他できる範囲のお手伝いで力になりましょう」
 将来の混沌における人々の繋がりの為、『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)が気合を入れれば、相方の珠緒も同調して頷く。
「馬車渡らせるようにしなきゃならねえし、魔物も襲ってくるときた。やる事は多いが、確実にこなしていこう」
「うん、頑張っていこう」
 再度、今回の依頼を確認する義弘の言葉に続き、アルシィがスタイルの良い身体を弾ませて気合を入れたのだった。


 覇竜を行く集団は馬車数台というそれなりの規模となる。
 まず、パサジール・ルメスが所有する馬車数台。今回は、イレギュラーズも数台馬車を持ち込む為、そちらに物資を分譲し、ラサの集落に3台待機させ、2台持ち込む。
 イレギュラーズ側は、義弘、鏡禍が通常の馬車を。蛍が牽引力に優れる覇竜用のドレイク・チャリオッツを持ち込む。
 都合5台。イレギュラーズもそれぞれの手段で敵襲にも備えていた。
「思ったより道が曲がりくねっているから、見通しが悪いね」
 小川の流れに沿う道は少し先がすでに岩壁で遮られていることもあり、アルシィは敵の不意打ちを十分警戒する。
 箒に跨って浮遊していたセレナは馬車のすぐ上くらいの高度を基本としていたが、時折高空へと飛び上がり、偵察や警戒を強めていた。
 地上からは、珠緒がファミリアーを飛ばし、感覚を研ぎ澄まして小さな異変にもアンテナを張る。空の気象状況に今自分達の進む地形。あらゆる面における安全確保が最優先だ。
 安全といえば、義弘も魔物の襲撃はもちろんのこと。
「馬車を管理している奴等にとっちゃあ危険だからな」
 彼は両端の岩壁からの落石、落盤も気にかけていた。

 程なく小川の流れによる影響で進む川岸が狭まり、進行不能となってしまう。
「橋作りを試みる……のかしら?」
 川を見下ろすセレナに、同じく上空を飛行していたユーフォニーが頷いて。
「……この辺りなら川幅が狭そうですね」
「両岸もそこまで複雑な地形をして」
「それじゃ、お願いするっす!」
 アルシィも状況を見て問題なさそうだと返事すると、リヴィエールが同意し、一行は早速橋造りを始める。
「橋を造るにしても木製や石製かってところも考えておかないといけないっスね」
「岩場だからよ、殴って削り出す事も出来そうだが」
 『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)が言うように橋を何で作るかは重要だ。周囲を見回す義弘の言葉通り、素材となる岩は事欠かない。
「でも、木の方が建造のコストや、今後のメンテナンスとかもしやすい気はするっスけど……どうなんっスかね」
 唸るライオリットの傍で、馬車を持ち込んだ蛍や義弘、鏡禍が自身の領地から持ち込んだ資材を使い、架設作業が始まる。
「できることならきちんとした渡河手段を作って、長く使える様にしたいわ」
 冥穣が主張するのももっともなこと。なにせ、これから長く自分達はもちろん、混沌の人々が幾度も往来することになるからだ。
 現場監督となるのは、この近辺を領地とすると主張したユーフォニーだ。
 すでに、資料検索で橋設置の知識を得ていた彼女は、その手順を確認しつつ作業を進める。
 また、蛍が工兵としての技術をフル活用して作業を主導する。
「さっきも話あったけれど、長持ちするよう造りたいね」
 ユーフォニーと協力し、蛍はこの場の面々の力、器用さなど作業を振り分け、効率的に進める。
 何せ、覇竜の生物がいつ襲撃してくるか分からないから、馬車の守りにも人員を割かねばならない。加え、情報によれば橋が必要となる箇所はここだけではない。
 作業はある程度スムーズに行う必要もある。
 それでも、頑丈さを最優先と蛍は判断する中、珠緒が彼女を支え、簡易飛行して対岸へとロープを回すなど実作業でもサポートする。
「資材輸送とかのお手伝いができない分、こういう処で働かないとね」
 張り切るアルシィもパサジール・ルメスの面々に交じって材料の切り出し、建設作業と汗を流す。
「こう見えてアタシも男よ、力仕事は任せてちょうだい」
 同じく、運搬など行っていた冥穣は精霊……素材となる木、一部土台の補強を行う土や石に呼びかける。
「しっかりここを守って」
 接合部など、要所要所を補強するよう、冥穣は働きかける。精霊達も応じてくれていた。
 やがて、木製の端が完成し、馬車が1台、また1台と渡っていく。耐久度も問題なさそうだが、それはこれからのメンテナンス次第だろうか。
 ただ、少しすれば、またも川岸の幅が狭くなり、対岸へと渡る必要を迫られる。
 2度目となれば、作業もスムーズ。
 川幅の狭い場所を選定して橋の製造を始めるが、今回はセレナの所持してきた丸太を利用する。
「1枠で橋の分を賄えるか、分からないけど……」
 耐久度を考慮すれば、さすがに1本では難しい状況であったが、1本目の橋で余った端材の利用もあり、かなりの部分を網羅できた。
 2本目も完成し、渡ろうとし始めたその時だ。
 箒に乗っていたセレナが水の精からの伝達で、上流から接近が確認されたのは、ワニの体躯を持つドラゴゲイター3体。
 それらは明らかにこちらを意識して接近している。
「馬車の管理は頼んだぞ」
「馬車と交易品を守るために盾として使っても構いません」
 自身の馬車をパサジール・ルメスへと託す義弘。鏡禍もまた同様だが、自分達の身を最優先にと気遣いを忘れない。
「これで、バリケードとして利用できるはずです」
「傷ついたら治療するっす。……お願いするっす!」
 蛍もまた呼びかけたリヴィエール等の言葉を背に受け、珠緒と敵を迎撃すべく構える。
「できれば1台に纏まっていただけたら。後は……」
 ユーフォニーもまた戦いの前にそう願った後、馬車を引く馬達にも意思疎通して。
「必ず守りますからね」
 そう約束し、ユーフォニーもまた仲間に続いて戦線へと出ていくのである。


 アオオオオォォォ……!!
 亜竜達を迎え撃つローレット。
 しかし、現れた敵はそれだけではなかったようだ。
 シャアアアアッ……。
 岩壁を伝って降りてくる魔物イワトビトカゲ2体が近づいてきていた。
 珠緒が素早く、こちらへと接近していた亜竜ドラゴゲイター目掛けてにじり寄ってきたこともあり、そちらへと神気閃光を放つ。
 加えて、蛍が神聖を纏う一撃を飛ばすが、馬車を背にしたまま動かず、馬車の護衛を最優先に立ち回る。
「鰐竜の動きを制限するっス」
 ライオリットも先に近寄ってくる敵の対処を優先し、嵐止まぬ突撃戦術をとって炎と氷のブレスを吐きかけて相手の体に不調をきたす。
 その間に、魔物どもも谷底へと飛び降り、戦いへと加わる。こちらもイレギュラーズを獲物と見定めて襲ってくる。
「不意打ちしてこなかったのはありがたいが」
 相手は大所帯であるこちらを舐めてかかっていたのだろう。強者である亜竜がいようとお構いなしに飛びかかってきた。
「相手に連携はない。確実に攻めれば問題なさそうだ」
 義弘は敵5体全てを視認したことで、割り込むように入ってきた魔物もろとも、収奪の腕を叩き込み、その身を毒や呪いに侵して弱らせる。
「こちらです。他の獲物と同じようにみていると痛い目に遭いますよ」
 鏡禍は近づいてくる亜竜、魔物を纏めて引き付けようとする。
 食らいついてくる鰐竜に、長い舌でこちらを捕らえてこようとする蜥蜴。
 仲間の方にも向かってはいたが、鏡禍は亜竜、魔物各1体を引き受ける。
「数は5体。後は撃退できれば」
 ともあれ、鏡禍はこの場を凌ぐべく、敵の攻撃で受けた傷を絶気昂で塞ぐ。
 抑えに当たる面々を冥穣がヒーラーとして支えるが、現状はまだ仲間の疲弊は軽微と判断したのか、亜竜を中心に魔光を発して牽制する。
 戦況は逐一チェックする冥穣。
 相手がかなりこちらを舐めているとはいえ、覇竜の生物。抑えの仲間達の傷が瞬く間に広がりを見せていたことで、彼はすぐに回復に動き始めていた。
「馬車には近づけさせないよ!」
 仲間達はしっかり押さえてくれてはいるが、いつ敵の注意が別所に向かうか分からない。
 アルシィは敵と馬車の間に立ち、そうした敵のブロックを担う。
 その上で、抑える敵目掛けてアルシィは格闘戦を仕掛けていく。相手が隙を見せた時が攻撃のチャンス。それまでは地道に敵を抑えつける。
 低空飛行し、戦場を俯瞰しつつ立ち回るセレナは戦場を俯瞰しつつ鰐竜1体へと虹色の軌跡を残すリリカルスターを投げつけ、強く気を引いていた。
「分担できているこの状況なら……」
 相手は鰐の体躯にもかかわらず、跳躍してセレナへとくらいかかることも。ただ、そのタイミングを狙いすまし、セレナは少し後退しながらも破壊の光を撃ち込む。
 ユーフォニーもまた、戦列に穴ができぬようくまなく戦況を見回していて。
「魔物にここを抜かせはしませんよ!」
 気の多い敵へ、ユーフォニーはすぐさま魔力を放出する。
 それは見る者にとって様々な色に見える一撃。魔物には、自らの行く末を暗示するかのような漆黒に感じられたようで、激しく暴れてその中から抜け出ようとしていたのだった。


 しばらくは覇竜の生物とローレットイレギュラーズによる激しい攻防が続く。
 メンバー達の邪魔にならぬようにと、リヴィエールらパサジール・ルメスの面々は馬車内で息を潜める。
 だが、その時間もそう長くは続かなさそうだ。
「この馬車の中にいるのは、パサジール・ルメスと覇竜の未来の架け橋、希望の光……。一歩も通さないわよ!」
 蛍が凛として叫ぶと戦場を見回す魔物イワトビトカゲが身を躍らせる。
 相手が近づいてくれば、無我の果ての領域へと自らを至らせていた蛍が桜吹雪を舞い散らす。
 敵がその彼女の方へと飛び込んでくれば、珠緒が他の敵と纏め、閃光を迸らせて相手の体を灼く。
 動きを硬直させたところで、蛍がエクス・カリバーでその身を先、見事に切り裂いてみせた。
 相手は馬車のパサジール・ルメスの面々には意識を払っておらず、外で立ち回るイレギュラーズのみを獲物と見定めている。
 亜竜の顎は全てをかみ砕く程に強靭。魔物とて覇竜を生き抜く強者だ。鏡禍は仲間からの回復の優先度を落とすよう告げ、決死の盾で仲間達を庇う。
「まだです……!」
 傷つき、血を流す鏡禍の横から、ユーフォニーが攻勢の落ちてきた魔物へと彩とりどりの万華鏡の世界を見せつける。
 どうと岩場に崩れ落ちた敵を視認し、ユーフォニーは亜竜の牙によって血を流す仲間の為に波紋を起こしていた。
「このまま押し切りましょ」
 ヒーラーとなる冥穣も激しい戦いの中、号令を上げて仲間達の体力気力を支える。
 苦しい状況が続くが、亜竜とて生物。徐々にその動きが鈍り始める。
 戦いが進み、接近戦を仕掛けていたセレナ。鰐竜にかぶり疲れてしまうが、結界を張っていた彼女はそれに耐えきり、格闘魔術によって亜竜を昏倒させてしまった。
 傍では、義弘も亜竜を追い込んでいた。
 鰐をも飲み込みそうな大蛇の如き乱撃を浴びせかけていた義弘だったが、敵の数が減ったことで仲間が集まってきた為、彼も攻撃パターンを変えていた。
 全身の力を雷撃へと変え、義弘は膂力のみをもって鰐竜へと叩きつける。
 凄まじい破壊力と全身を迸るエネルギーに耐えきれず、2体目の鰐竜もまた地へと果てていく。
 共に獲物を喰らうべくやってきた仲間が倒れ、最後の鰐竜はいきり立ちながらも大きく口を開くが、背後へと回り込んだアルシィがその隙を見て刹那高めた力を鱗の上から叩き込む。
 間髪入れず、攻め入るライオリット。相手がすぐには動けぬと判断し、速力をもって軍刀で切り裂く。
 腹をすかせた鰐竜は空腹を満たすことができぬまま、冷たい岩の上に崩れ落ちていったのだった。


 亜竜と魔物の群れを撃退し、進む前に少し休息をとるメンバー達。
 新たな敵がまたやってくる可能性もあるとみていた珠緒は、仲間達の体力気力を満たしていく。
「できるだけ消耗したままの状態は避けたいですね」
 逆に自分が回復される立場となった時には、珠緒は音楽を奏でることを提案して。
「楽器は……これで」
 水辺の草を採った珠緒は穏やかな曲を響かせ、この場の人々、馬達の緊張をほぐす。ここからもうひと踏ん張りだ。

 目的の集落が迫ってきたところで、またも川岸が狭まって進行不能に。
 3本目の橋を造る流れとなるのだが、材料はこれまでの状況を考えると心もとない。
「さっきの鰐竜以外にも亜竜やらはいるっスから、多少なりとも強度を確保したいというのであれば石橋ってのもありかもしれないっス」
 ライオリットは石橋が木造に比べれば柔軟性が落ちる難点と合わせ、炎ブレスで燃え落ちることが無くなる利点も挙げる。
 状況をみるに、この1本で今回の架設作業が終わるはず。
 先程、義弘が主張していたように近場の岩を切り出し、石をベースとした橋を架けることになる。
「大きく掘削できるなら、岸壁を通路状にすれば……」
 そこで、珠緒が岩を切り出すべく、一点集中させた攻撃スキルを放出して岩を切り出すことに。傍では、ユーフォニーも岩壁に向かって魔力を飛ばし、岩を掘り出していた。
「岩場を切り崩すなら、攻撃魔法を撃ち込むのもアリかしら!?」
 なかなか本格的な作業には加われないセレナだったが、ここぞと仲間を巻き込まぬ位置へと魔法を発し、渓谷底にせり出す岩を破壊する。
「……崩れちゃう?」
 上手く使えるかどうか気にした彼女も石の精に補強を願うことを忘れない。
「橋が崩れないように気を付けてな」
 義弘が切り出すメンバーへと注意を促し、冥穣が用意した現地調達用の工具で切り出しを始める。
 同じく、基本的に寸法計算は仲間に任せ、彼女は実作業のみに専念していたアルシィ。
「強度が気になるんなら、こんなのはどうっスか?」
 そこで、ライオリットがアーチ型にすることで強度を確保できると提案すると、アルシィはふむふむと頷いて。
「こうだね」
「その上を平らにして緩い傾斜の乗り入れ口を別途作るとかもできるっス」
 岩場の多い亜竜の地で生まれ育ったライオリットのこうした素材の扱いは、橋建設の知識を得たメンバー達も更なる耐久性を持たせられると確信させ、作業を進めることに。
「時間をかけてるとまた亜竜が来るかもしれないっス」
「なら、早く完成させないとね」
 新たな敵襲をライオリットが懸念すれば、冥穣が岩を担いでここぞと力仕事を推し進めて作業の進行度を高める。
「とは言っても、今後も利用することを考えると手は抜けないっスからね」
 手早くしながらも、妥協は許されぬ作業。
 ライオリットも神経を研ぎ澄まして岩に手を加える。
 作業人数が多いが、ここも蛍やユーフォニーがしっかりと指示を出し、無駄なく手早く作業を完了させる。
 作業を終えたアルシィは仲間達の連携に加われて、満足げな表情をしていた。
 
 日が暮れる頃になり、一行は亜竜種達の住まう小集落へとたどりつく。
「遠路はるばる、よくぞ参られた」
 小規模とはいえ、亜竜種は精悍な体つきの者が多い印象だ。そうでなくては、覇竜で生き抜くことは難しいのだろう。
「この度は、迎えていただき、感謝いたします」
 丁寧に挨拶を交わすユーフォニーはそんな亜竜種達が今回の交易に対する働きかけについて、どう思っているのか聞いてみたいと考えていた。
 覇竜は閉ざされた地だからこそ守られた治安もある。
 戦闘力を持たぬ商人達が自由に行き来できるようになれば、悪事を働く人だって行き来しやすくなるという問題が発生すると、ユーフォニーは懸念していたのだ。
「私は覇竜の方々が困ることは絶対したくありません」
 領地となる人々の理解を得ることが肝要。ユーフォニーは治安維持にも努めたいと主張し、真摯な態度で人々を説得する。
「覇竜は貴公らの来訪で変わろうとしている。主の存亡をかけて全力を尽くさねばならなかった我らにとっても大きな契機だ」
 イレギュラーズは脅威に対する力となり、亜竜種達も命が危機にさらされる事態は軽減した。跋扈する亜竜、力を持った巨大アリなどの存在があったとしても、である。
「生きることに余裕ができれば、そうした方面に目を向けることもできるだろう」
 自分達を助けてくれるのなら、我々も助力は惜しまない。そうした亜竜種達の考えに、ユーフォニーも笑顔で手を取る。
「これからよろしくお願いするっす!」
 リヴィエールも嬉々として、さらに両者の手を取っていた。
「きっとお互いに、まだ知らない文化や、物なんかがあると思うの」
 他地域との交流のなかった覇竜に、お互いを知ることができる環境ができた。
 それはきっと素敵なことなのだろうとセレナはこの交流を見て実感する。
 そこで馬車の点検整備を終えた蛍が入ってきた。
「少し、交易ルートの話をしたいとのだけれどいいかしら?」
 蛍は今回実験した地勢と照らし合わせ、今後の交易で使う馬車改良案などを提示する。
「折角なので、次の集落に辿る情報もあると嬉しいのですが」
 ユーフォニーは覇竜の人々へとさらに上流へと存在する集落へと至る為の路について尋ねた。
 空から行くことも多いそうで、地上ルートについては亜竜種達も改めて情報を集めたいとのこと。
「今後の交易で相互理解と相互利益が進んで、未来が明るく開けることを願ってるわ!」 
 笑顔でこの場の全員へと話す蛍を、傍らの珠緒は微笑みながら見守っていたのだった。

成否

成功

MVP

藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは架橋、戦闘両面で活躍を見せたあなたへ。
 交易路開拓に一歩前進です。次なるシナリオをお待ちくださいませ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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