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シナリオ詳細

<竜想エリタージュ>勇者進水GC:悪望を払う光

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「へえ、じゃあ遺跡で目覚めてから数年しか経ってないんですね。若い!」
 カウンター越しに綺麗な女性が喋っている。身を乗り出すでも身体に触れるでもないが、カウンター一枚挟んだたかだか1m未満の距離感には独特の雰囲気がある。
 出されたグラスを手に取り、しげしげと眺めてからグッドクルーザー(p3n000117)は振り返った。
 青いクルーザーが人型に変形したかのようなロボットスタイルの秘宝種。純朴そうな顔立ちそのままに、彼は笑顔だ。
「なるほど、これがガールズバーなのですね。丁度パーソナルティスタンスを保つよう設計されたサービススタイル。勉強になります、希望の戦士風牙!」
「お、おう……」
 隣の席でオレンジジュースのストローをくわえていた新道 風牙(p3p005012)が、なんともいえない顔をした。
 新しくできた知り合いに前からのともを会わせてみようという試みが、なんか『友達をガールズバーに誘ってみた』という現象に昇華した事実に気付いて、風牙は己が目を覆った。齢17歳にしてやることではない。
「風牙くんもそんな顔しないでくださいよ。安心して、子供とその友達から大金むしりとろうなんて考えてないから」
 女性は――竜宮城の女ヴィナース・V・ファリディアはおかしそうに笑う。彼女の頭には、うさみみはついていなかった。

「おいカイト、マジでここが海の底だってのか? 古代遺跡の名残だって?」
 ネオン輝くストリート。といっても人が三人ほどギリギリすれ違える程度の狭さの中に、無数の店舗が詰め込まれている。ここは『竜宮城』の中でも広くて華やかでオープンな中央通りと異なり、どこかアンダーグラウンドな雰囲気を醸すマイスター通りである。
 その中をレッドコプターはきょろきょろしながら歩いていた。
 彼の様相は赤い消防ヘリを人型に変形させたようなロボットタイプの秘宝種で、同じく赤い大鷲型飛行種のカイト・シャルラハ(p3p000684)と連れだって歩いている。
「バリバリの歓楽街じゃねえか。王国でもこんなの滅多にないぜ?」
「しかも住民が全員バニーガールだからな。世界は広いっていうか……初めて聞いたときは何かの冗談かと思ったよな」
 はははと笑いながら、カイトは片手にもったメモと近くの看板を見比べて立ち止まる。
 密集した看板には、『ガールズバー・ファリディア』という文字と、それが半地下一階にあることを示す矢印があった。
「ここだここだ。依頼人の店だよ」
 扉をあけるとベルが鳴り、風牙とグッドクルーザー、そして誰より早く店長であるヴィナースが振り返る。
「いらっしゃい。あ、カイトさんですね? 噂は聞いてますよ」
 座って座ってと言ってカウンター席を勧めるヴィナース。といってもこの店には数席のカウンター席しかないので、それ以外は立って話を聞くことになるのだが。
「じゃあ、早速今回の依頼を説明しようかな……ええとね」
 堂々とした様子のヴィナースは、懐(懐!)から一枚のポラロイド写真をとりだした。
 うさ耳をつけ、こちらに手を振る若い女性の写真だ。パステルカラーのペンで『メグ』というサインが書かれていた。
「この子はメグ。ダガヌチに取り憑かれちゃった子です。この子を助けてあげてほしいんです」

●竜宮城と竜宮幣
 シレンツィオを襲う深怪魔問題解決のため、竜宮城の力を借りることになった各国代表。その主力として依頼されたローレット・イレギュラーズたちは深怪魔封印のために必要となる竜宮幣を集め、ついに竜宮城へと到達したのだった。
 折にして深怪魔によって窮地をローレットに救われた竜宮はシレンツィオへの参画を決め、それまで閉じていた門を広く開くこととしたのだった。
 だが外の世界を受け入れれば当然問題も湧き上がる。ダガヌチ問題はそのひとつである。

●メグ、そして欲望の暴走
「いちばんに――いちばんになりたい!」
 怪物がそんなふうに叫びながら、通りの真ん中で暴れている。
 真っ黒に淀んだ全身は醜い魚人の姿をとり、両手には三本の鉤爪。
 顔面は醜い仮面に覆われたその姿は、とてもではないが――。
「メグさんとは似ても似つかない姿ですね」
「これが『ダガヌチ』か……」
 逃げ出す周囲のバニーガールたちを庇うように、道の真ん中に立ち身構える風牙たち。
 レッドコプターとカイトが、周りの市民が避難し終えたことを確認して集まってくる。
「カイト、ダガヌチってのは?」
「ここ、ダガヌ海域に現れた、竜宮幣を核にした怪物だ。取り憑いたやつの欲望を暴走させる性質があるらしい」
「なるほどな」
 取り憑かれてしまったのはガールズバー・ファリディアで働くメグというバニーガールであった。
 彼女は日夜コミュ力を鍛え、お客さんが気分良く喋って楽しく帰ってもらえるようにとトークを磨く真面目な子であった。というのも、何かで一番になりたいという欲望を叶えるためだ。店長であり卓越したトーク力をもつヴィーナスだっていつかは越えるという気概で生きてきた彼女が……ある日ダガヌチに取り憑かれてしまった。
 暴走した欲望は地道な努力をすっ飛ばし、自らの周りの人間を破壊し尽くすという間違った形で力を発揮してしまったのだった。
 槍をくるりと回し、鋭く相手を睨むカイト。
「これはあの子の意志じゃない」
「だな。積み重ねてきた努力が、バケモンの暴走ひとつでパーになってたまるかよ」
「同感です。悪を倒すことが正義であるならば――悪とは人そのものにあらず!」
 レッドコプターとグッドクルーザーも武器を構え、最後に風牙も槍を握りしめた。
「そういうことだグッディ! この子を止めるぞ!」

GMコメント

●オーダー
 ダガヌチを倒す事で、取り憑かれてしまった女性メグを救い出すのだ!

●バトル
 ダガヌチに取り憑かれたメグは強力な近接戦闘能力をもち、鋭い鉤爪で鋼鉄をも切り裂いてしまいます。
 また、ダガヌチは複数の深怪魔と別個体のダガヌチを増援として呼び出しており、戦場はより過酷なものとなっています。

・ダガヌチ×複数
 メグに取り憑いた個体の他に何人かが取り憑かれ、同タイプの怪物となって集まっています。

・フォアレスター×複数
 かなりの数の半魚人型深怪魔が集まっています。彼らは三叉槍を武器としており、数に任せて襲いかかってくるでしょう。

●合体について
 ローレット・イレギュラーズと深く心をかわし正義を学んだグッドクルーザーは、最終希望合体によりファイナルビッグクルーザーに変形合体することができます……が、ここは竜宮城の都市内なので巨大なフォームで戦うことは非常に危険でしょう。
 なので、コンパクトでかつ強力な深層希望合体で戦うことが推奨されます。
 この合体はグッドクルーザーとレッドコプターどちらかと可能です。
 初対面のPCでも『戦いの中で絆が芽生えた』『今日一緒に遊んだことで友情が芽生えた』といった具合に合体が可能になるものとしてOKです。


----用語説明----

●特殊ルール『竜宮の波紋・改』
 この海域では乙姫メーア・ディーネ―の力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができ、水中では呼吸が可能になります。水中行動スキルを持っている場合更に有利になります。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)
 希望の戦士イレギュラーズと使命の勇者グッドクルーザーが心を通わせることで発動する力です。
 このシナリオ中、ないしはシナリオ以前にグッドクルーザーと仲良くなっておくと、大型ロボットビッグクルーザーDの核として合体することができます。
 その際名称が『ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・〇〇(PC名)』となり、戦闘スタイルも核としたPCを反映したものになります。
 システム的には1ターン限定の超強化状態と考えてください。ここぞという必殺技や超防御、超回復、敵の群れを大量に殲滅する時など見せ場を引き寄せましょう。

・潜水艇ホエールクルーザー
 グッドクルーザー専用の潜水艇です。
 これとグッドクルーザーが合体することで大型ロボット『ビッグクルーザーD(ディープ)』となります。いわゆる水中行動仕様の本気モードです。

  • <竜想エリタージュ>勇者進水GC:悪望を払う光完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月20日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
防戦巧者
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
リサ・ディーラング(p3p008016)
特異運命座標
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)
青薔薇救護隊

リプレイ

●深海、悪を断て
「私が、私がいちばんに――!」
 咆哮を上げるダガヌチ。それに応えるように無数のフォアレスターたちが集まってきた。
 半魚人型深怪魔であるフォアレスターは水中用のサブマシンガンを手に乱射を浴びせてくる。
「くっ! これではメグさんに近づけない!」
 グッドクルーザー(p3n000117)は両腕をクロスさせるように弾幕を防御すると、後方に飛び退きながら両肩のクルーズキャノンを連射。
 その一方でレッドコプターもプロペラを回して高速移動をかけながらファイアガンを実弾モードにして反撃を始める。
 彼らの攻撃はフォアレスターを撃破するに充分な威力だが……。
「次から次へと増えやがる! キリがねえぞ!」
「僕が敵を引きつけます」
 『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)がたいやきモードに変身すると、尾びれで空中をびゅんと強く蹴って加速。フォアレスターたちの射撃を真っ向からうけながら突っ込むと、先頭の一体めがけて体当たりを仕掛けた。
 その衝撃で海中に広がる甘い香り。つい意識を奪われたフォアレスターたち。
(ふぅむ……いい加減被害が増えてますねぇ。少しずつでも片付けていくほかありませんか。しかしまぁ、欲望とは……。
 ……僕、あんまりそういうこと考えたことありませんでしたね。とりあえず頑張って助けましょうか)
 集中砲火を浴びることでかなりのダメージが蓄積する……とみせかけて、ベークは圧倒的再生能力によって蓄積ダメージ量をかなり軽減していた。それでも無傷でいられない程度には、フォアレスターたちが密集し彼を攻撃しているのだが。
「ナイス・ヘイトっす! ベークさん!」
 『蒸気迫撃』リサ・ディーラング(p3p008016)は外骨格アーマーの両足を地に着けると、両脇に引っ張り出したレバーのスイッチを押し込んだ。
 畳んでいた海中用ガトリングガンが展開。両肩のパッドに乗るようにガチンと音をたてて銃身を固定。両足からはツメが展開し地面を掴むように体勢を固定すると――。
「そのまま動かないでくださいっす。『Final Heaven』――ファイア!」
 激しい弾幕がフォアレスターの群れを『削り取って』いく。
 かと思えば、側面からかけつけた『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)が轟音に混じるようにして腕の『血印』をそっと撫でた。
 ぶわりと広がった地の翼がバラバラに砕け、大量の血のナイフとなるとフォアレスターの群れめがけて飛んでいく。
 二人の弾幕がフォアレスターだけをバターのように溶かしていき、ベークだけがその中心に残る形となった。
 が、そこへメグのダガヌチが急接近。鉤爪でもってベークを思い切り殴りつけた。
「うわっ!?」
 流石のベークですら吹き飛ばされ、そのたい焼きボディがへこんでしまうほどの衝撃。
「ダガヌチ……何か豊穣であった肉腫だか何かに似ている様にも見えるっすけど、欲望を解放して暴走させるってのはROOの奴を思い出すっすね」
「ROO? 練達にあるというシミュレーターですね。肉腫、というのは?」
 飛んできたベークを二人でキャッチするリサとマリエッタ。
「豊穣で初めて出現した、寄生するタイプの魔物っす。アーク版の精霊種って感じっすね」
「そんなものが……。一番になりたいという気持ちを欲望として暴走させることは悲しいことです。絶対に助けてあげましょう」
「はい!」
 メグが追撃を仕掛けようと地を蹴る――その瞬間、建物の屋根の上を飛行して『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)が突撃をしかけた。
 すれ違いざまに叩き込む槍。メグはそれを鉤爪で弾くことで防御した。火花が大きく散る。
「一番になりたい……か。それはとりさんも抱えている欲だ。海洋一の船乗りになるって決めてるからな! そして、かっこいい船乗りは海の民を見捨てないんだぜ! レッドコプター! 『助ける』ぞ!」
「おう!」
 レッドコプターによる援護攻撃。そこへ『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が魔法を打ち込み始めた。
「夢や希望に、意志、願い……それが欲望という黒っぽい名前でも、そのヒトにとって大切なものに変わりはないんだから、歪ませるのはよくないよね……」
 メグを中心に爆発する雷。アクセルは指揮棒のような杖『雲海鯨の歌』を軽やかに振ると、鳥の形に集まった雷を縦横無尽に操作してカイトと共に波状攻撃を浴びせていく。
「ふむ……ダガヌチに取り憑かれたとは言え、ここまで真剣に一番を目指して努力できる彼女には、素直に敬意を抱くよ。
 個人的な感傷だけど、かつては私も病のせいで夢を絶たれていた時期があったものだからね。
 自分と関係のない理不尽な存在のせいで夢を絶たれるのは、見過ごせないな」
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)は手首を掴むと、翳した手で小指から波打つように握り込む。
 すると両腕がグリーンに輝き初め、ゼフィラはそれを全身に纏うように展開した。
 カイトたちがサッと離れた瞬間を狙ってダッシュ。
 ほぼ同時のタイミングで、『青薔薇の御旗』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)が治癒の祈りを捧げた。
「ゼフィラさん、援護します」
「助かる――」
 ゼフィラが纏う光にレイアの流したブルーの光が重なり、シアンカラーの光となった。
 メグが迎え撃とうと鉤爪を繰り出すが、ゼフィラは拳を繰り出すことでそれを相殺。無論、レイアの治癒力による相殺である。
 ゼフィラは開いた拳をメグへ叩き込み、鱗に覆われたそのボディを吹き飛ばした。
「フォアレスターは倒した。あとはメグにとりついたダガヌチ一体を倒すのみか」
「いいえ、待って下さい!」
 レイアが叫び、大きく振り返る。
 治癒の祈りを捧げるために地に突き立てていた槍をそのままに、中段の後ろ回し蹴りを繰り出したレイアは『後方から迫っていた』ダガヌチの攻撃をはじき返した。
 不意打ちに失敗したダガヌチは飛び退き、メグと同様の鉤爪や鱗を出現指せる。
「新手です。それも……」
「囲まれてる!」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)は横から飛び込むようにダガヌチを槍で払うと、新たに現れた複数のダガヌチから放たれた黒い弾幕を槍の回転によって防御した。
「みんな気をつけろ、メグさんに取り憑いたダガヌチと同格の奴らだ!」
 と、その瞬間。
 キャアという小さな悲鳴を風牙の鋭い耳がとらえた。
「この声は――」
 戦闘から逃れるため隠れていたヴィナースがダガヌチに見つかり、追い詰められているのが見えた。
 ダガヌチたちが腕を鞭のように延長させ、先端の鉤爪を妖しく光らせながら襲いかかる。
 が、それを見逃す風牙ではない。
「ヴィナースさん!」
 超反応によって飛び込み、ヴィーナスを庇う。が、無数の鉤爪が風牙へと刺さり黒い電撃が風牙を襲う。
「うわあ!」
「戦士風牙!」
「この野郎、風牙を離せ!」
 グッドクルーザーとレッドコプターたちが射撃をあびせダガヌチたちを一度追い払うが、風牙はがくりと片膝をつく。
「風牙くん、大丈夫? しっかり!」
 駆け寄るヴィーナスに、へへっと笑う風牙。
(ヴィナースさん、ベタベタスキンシップしないのはありがたいし、いい人ではあるんだけど、押しの強さと物怖じしなさに圧倒されるというか……)
 苦笑し、そしてゆらりと立ち上がる。
「大丈夫だ。グッディ、コプ太! 相手は強いが……行けるよな、『俺たち』なら!」
「はい、戦士風牙!」
 拳を突き出す風牙。その拳を合わせるグッドクルーザー。彼の胸のコアには、勇者の光が輝いていた。

●深層希望合体
「いくぜグッディ!」
「了解、風牙」
「「深層希望合体(ディープパンドラフュージョン)!」」
 どこからともなく飛んできた潜水艇ホエールクルーザーが分解、変形。グッドクルーザーと変形合体すると、十字を描くように腕を伸ばした風牙を包み込むように装着――否、合体した。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・風牙!」」
 生成された三叉槍を握り込み、ダガヌチへと突進する。
「薄汚ねえ汚濁ども!」
 ダガヌチが鉤爪の腕を放つが、突き出した槍とそこから噴出するエネルギーが激突。
 禍々しい黒と勇気の青が衝撃となって競り合い、正面から拮抗する。
 いや、拮抗ではない。
「そこまでだ。あんたたちの手は、人を傷つけるためにあるんじゃないだろ?」
 風牙はこの竜宮城で少なくない出会いを経験してきたつもりだ。
 派手な格好と派手な街。しかしそこに生きる人々は夢と笑顔に満ちていた。
 訪れた人々を癒やし、元気にして、そして世界をもっと明るくしようと生きている。
 グッドクルーザー風に言うならば……彼女たちも『希望の戦士』だ。
「お前達はいらないんだ。そこから出ていけ、ダガヌチ!!」
 鉤爪を破壊。そのまま腕をめりめりと破壊しながら突進し、ダガヌチを槍で貫く風牙。
 合体を解除した風牙とグッドクルーザーはそれぞれ腕と槍を突き出した姿勢でダガヌチの後ろへと通り抜け、エネルギーの逆流によっておこった爆発を背にした。
 そんな二人めがけ、別のダガヌチが腕を無数にふやして弾幕を展開。
「グッドクルーザーさん! 私たちの絆ってもんを見せてやるっす!」
 が、そこへリサが飛び込みパワードスーツを一時的にパージ。
 蒸気が噴出し、煙が渦を巻いてリサ、パワードスーツ、そしてグッドクルーザーとホエールクルーザーを包み込む。
 分解した各メカが次々に再合体。リサの両足や両腕をサポートするように装着されると、衝撃によって煙を吹き払った。
「「深層希望合体――ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・リサ!」」
 四連装ビームガトリングガンを展開。ダガヌチが浴びせてくる弾幕に対してあえてどっしりと足を止めると、更にミサイルポットとロケットランチャーを展開。
「フルオープンアタックっす!」
 もてる限りの全ての火力を放出。ダガヌチを穴あきチーズにした後大爆発を起こさせた。
「負けてられないな! いくぜ、コプター!」
「おう、見せてやろうぜ。オレらが手にした――ダチを守る力ってやつを!」
「「深層希望合体!」」
 ホエールクルーザーのパーツと合体したレッドコプター。カイトの全身を覆うように変形すると、両手に赤と青の槍を握った大型ロボットの姿をとった。真っ赤な翼を広げ、炎を纏う。
「「ビッグコプター・XZ(クロスゼット)・カイト!」」
 炎を纏って飛ぶカイトはダガヌチの放つ衝撃をことごとくに回避していく。
 そして、至近距離で相手の鉤爪と槍を交差激突させた。
 黒と赤の衝撃がぶつかり合い嵐を生むその一方で……。
「グッドクルーザーさん! 私もやってみたいです」
「希望の戦士レイア……?」
 ぐいぐいと袖(?)をひっぱるレイアに振り返るグッドクルーザー。
「私はもうすぐ結婚するんです! 帰ったら婚約指輪貰うんです!」
「なんと!」
「私の幸せは――いいえ、私達の幸せは邪魔させません。力を貸して下さい!」
「了解、行きましょう」
 グッドクルーザーは頷き、そしてばきんと自らを分解させた。
 飛び込んできたもう一体のホエールクルーザーもまた変形し、白と青を基調とした女性的なフォルムの大型ロボットを形成する。その中心に両手を胸の前で交差させるように収まるレイア。
 彼女を格納すると、顔にベールをかけるように青いエネルギーフィールドを。そしてウェディングドレスの裾のように広がるフィールドを展開し、合体した旗槍を握りしめた。
「「深層希望合体――ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・レイア!」」
 レイアが旗を大きく振ると、美しい海のさざなみの如く治癒の魔法が放たれる。
 それは今まさにダガヌチと激突するカイトの傷を瞬く間に修復していった。
「赤く輝く一筋の彗星に!」
 カイトはその後押しをうけ、ダガヌチを突破。交差した槍を開くように構え、地面を長くスライディングする。
 後ろ手はX字に切断されたダガヌチが炎に包まれ破裂した。
「いやぁ。こいつらの対処も慣れてきたのは、良いことなのか悪いことなのか……」
 一方、ベークはダガヌチに寄生されたメグの攻撃をなんとかしのいでいた。
 もう何度目かになるパンチによって吹き飛ばされるベーク。たい焼きフォームのままぴょんと立ち上がるベークをささえるようにグッドクルーザーがやってきた。
「グッドクルーザーさん。ボクとあなたは――誰かを守るという志は同じ。つまり、力を合わせるに不足はないということです」
「その通りです。希望の戦士ベーク!」
 ベークを包み込むように合体したグッドクルーザーは一つの大きなたい焼き型ロボへと変形。それを更に包み込むようにホエールクルーザーが巨大なたい焼き型となって合体した。
 二重いや三重の装甲をもつたい焼きロボとなった彼らは、目にあたる部分をギランと青く輝かせた。
「「深層希望合体――ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・ベーク!」」
 『シャンパン・ゴールド!』の加護によって治癒力を爆増させながらメグダガヌチへと突っ込むベーク。
 対するメグに、周囲のダガヌチが飛びつくように合体を始めた。
 巨大な魚人型の強化ダガヌチと化したメグは『アアア!』と苦しげに叫ぶと、巨大化させ禍々しいオーラを纏った鉤爪でベークを斬り付ける。
「ベークさんが抑えきれていません。このままでは……」
「お嬢ちゃん、力が欲しいかい?」
 マリエッタの隣にレッドコプターが着地する。
「レッドコプターさん……。けど、私、よくわからなくて……」
「オレもだよ。正義だの希望だのサッパリさ。けどな、アンタも思ったんじゃねえか? 『ダチを守りたい』ってよ」
 思えばシンプルなことだ。彼らはそんな、誰もが抱くような感情で戦っていたのだろうか。
 マリエッタが黙って頷くと、レッドコプターが親指を立てる。
「なら、やれるぜ。オレとあんたは同じだ。力に身を任せな!」
「……はい!」
「「深層希望合体!」ふゅ、ふゅーじょん!」
 赤い暴風に包まれ、ぎゅっと目を瞑って中を舞うマリエッタ。
 彼女を包み込むよう腕に、脚に、背に、腰に、分解されたレッドコプターとホエールクルーザーのパーツが合体していく。
 暴風が晴れると前進を地のように赤いエネルギーが包み、血しぶきのように吹き上がった炎が翼となって広がった。
「ほい、せーの――」
「「ビッグコプター・XZ(クロスゼット)・マリエッタ!」」
 マリエッタは合体したことによって大型ビームライフルとなったファイヤーガン改めBFB(break fire blood)ライフルを構えた。
「な、なにか台詞があったほうがいいんですか!?」
「気にすんな、ぶっ放せ!」
「は、はい!」
 しゅーと! と叫んだマリエッタに応じるようにライフルが発射され、真っ赤な光が強化ダガヌチの腕を貫いていく。
 派手な破壊をうけた強化メグダガヌチが一歩後じさりした所でゼフィラとアクセルが飛び出していく。
「今この瞬間、メグたちを救いたいという気持ちは同じはずだ。力を貸して欲しい!」
「当然です、希望の戦士ゼフィラ!」
「「深層希望合体!」」
 ゼフィラは青い光りに包まれて浮きあがると四肢に装着していた義手をパージ。それらを包み込むように巨大な腕が、巨大な脚が、そしてゼフィラを優しく包み込むように巨大な胴体が完成し、最後に装着された頭部にギラリとグリーンの光が走った。
 四肢が再合体されると、各関節部からグリーンの光を迸らせながら身構えた。
「「ビッグクルーザー・XZ(クロスゼット)・ゼフィラ!」」
「さあ、大人しく、彼女たちを解放してもらおうか!」
 その一方、空を飛ぶアクセルとレッドコプターが顔を見合わせる。
「戦う前の君の言葉、オイラのハートにグッときたよ! 自分の望みへの努力が、こんなことで失われていいわけないもんね!」
「気が合うじゃねえか、やるか、アクセル! ついてこいよ!」
「うん――」
 もう一体のホエールクルーザーが大きく分解したかと思うと、翼を広げて飛ぶアクセルに誘導レーザーを繋げた。
 彼を包み込むように合体を始めるパーツたち。最後に青い海のエネルギーを前進に纏うと、それは巨大な鷹の形をしたロボとなった。
「「深層希望合体――ビッグクコプター・XZ(クロスゼット)・アクセル!」」
 アクセルとゼフィラ、二つの大型ロボットが突撃をしかけ、強化ダガヌチの身体を二つの力が貫いていく。
 派手に破壊を受けた強化ダガヌチはがくりと傾いたかと思うと、見栄を切るアクセルとゼフィラの背後で爆発を起こし消え去った。
 その中からメグが放出され、合体解除したアクセルが空中でキャッチした。
「……おかえり」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 後日、店では元気に働くメグの姿があったという。
 彼女の笑顔……そして彼女がもたらす笑顔は、君が守った希望なのだ。

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