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シナリオ詳細

<竜想エリタージュ>今宵は君とパーリナイ☆

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ナンバーワンバニーボーイ
 ――ねえ。
 甘い声が耳朶をくすぐった。
「本当に困っているんだよ」
 手持ち無沙汰な右手を優しく両手で引き寄せられ、懇願されるようにきゅっと握られる。伺うように見上げてくる瞳は確かな憂いを帯びていて、その言葉に嘘は無いのだと信じられる。
「ねえ――」
 柔らかに名を呼ぶその人の頭上で揺れるウサ耳。
 それは竜宮城の者である事を示す正装(フォーマルスーツ)。
「お願いだよ、アーマデル」
 何日も――何度も何度も頼み込まれて、ようやくアーマデル・アル・アマル(p3p008599)はこくりと浅く首肯した。困っているのは本当のようだから。
「今回だけだ」
「! ありがとう、アーマデル!」
 パッと輝く笑顔は愛らしい。この優れた容姿で何人もの女性を虜にしてきたと思われる男――ソーリス・オルトゥスは整った顔で無邪気に咲った。
 ――しかし、途端にその場の空気が冷える。
「けれど、ひとつだけ条件がある」
「ああ、わかっているよ。『彼』も一緒に、だよね」
 冷たい空気に圧されずともアーマデルの手を離し、パチリと指を鳴らしてウインク。すべての動作が完璧で、不自然さなんて感じさせない。そうあることが彼の自然体でもあるかのように。
 そうして視線を向けるのは、先程から眉間に皺を寄せて難しい表情をしている『彼』――冬越 弾正(p3p007105)である。
 竜宮城と呼ばれる海底に広がる都市に住まう者たちは、文化の違いからソーリスのような距離感がごく当たり前なのだそうだ。が、どうしても『近すぎないか?』という思いが彼の眉間に皺を刻ませているのだ。
「弾正」
 いいかな、と向けられる視線。
 これから向かう場所でアーマデルの隣に居るということにはまた条件が課せられる訳だが、弾正は浅く顎を引いた。恋人を守るためならば仕方がない。
 例えバニーボーイ姿になることだろうとも、どうということはない――。

●Welcome ♡ RYU-GU
「竜宮城の人手が足りないのだって」
 海底都市、竜宮の門戸が開かれた。それによりイレギュラーズたちを始めとした外客が招かれることとなり、竜宮にある店々は毎日大勢の客で溢れていた。けれど忙しくなりすぎると、様々な問題が発生する。
 中央通りにあるホストクラブ『the play』では、キャストのホストたちが過労で倒れてしまったのだ。人手がない。それなのに、客足は途絶えない。となると、一人、また一人と無理がたたる悪循環。
 そこで『the play』のナンバーワンバニーボーイ・ソーリスはオーナーとしてホストたちに提案をした。
『英雄たち(イレギュラーズ)はオレたちに通じるものがあるよ。彼等の力を借りようよ』
 そうしてキャストが充分に休めるシフトを組み、足りないところをイレギュラーズたちに補ってもらおうと依頼を出したのであった。
「行ってもらうところは、ホストクラブ『the play』。一般的な竜宮嬢が接待する店ではなく、『竜宮男子』が接待をする店だよ。だから男性であることが条件なのだけれど――人手がないことだしね、『完璧な男装』が出来る子であれば問題ないようだよ」
 完璧な男装とは……何とは言わないが、こう、格差問題を勃発させるアレだ。
「後は……そうだね。店が賑わうのは良いことだから、『営業』をして友達を呼んでもいいと思うよ。たくさん指名を貰えるということは、竜宮の人たちにとっては誉れなのだって」
 その日限りだけれど、ナンバーワンバニーボーイになるのも夢じゃない。
 忙しくはなるかもしれないけれど、店に大いに貢献することが叶うだろう。
「君たちのバニーボーイ姿を見たいと思う子もいるかもしれないからね」
 そう楽しげに笑った劉・雨泽(p3n000218)は、僕も働きっぷりを見に行くねと告げて。
「ね。ホストクラブのバニーボーイ。興味ないかな?」
 なんて、誘うのだった。

 ――君もバニーボーイになってみない?

GMコメント

 えー! 海の底にイケウサパラダイスがある、ですってー!!?!!1!
 ウサギを追いかけて兎穴ならぬ海中に飛び込みました、壱花です。

●シナリオについて
 皆さんには『the play』でバニーボーイとして働いて頂きます。
 制服はバニーボーイの衣装です。基本的にはシャツにベスト、スラックス。ウサ耳&ウサ尻尾になります。アーマデルさんの衣装のように露出が多い等の拘りがある場合はプレイングに記して下さい。
 お客様はバニーボーイの接客を楽しみに来店しますので、男装をしても女性と解る状態の方(どう頑張っても胸の膨らみが押さえられない等)はご注意下さい。(サポートでお客さんとして来てくださると嬉しいです!)

●ホストクラブ『the play』
 バニーボーイたちが最高のおもてなしを約束するオーソドックスタイプのホストクラブです。
 竜宮の民たちは純真で優しい人たちです。歓迎(ホスト)の一環として甘い言葉は掛けますが、彼女と信じ込ませる色恋営業や本彼営業はしません。
 未成年者のお客様にはジュースが出ますし、未成年のバニーボーイもジュースを飲みます。

●ソーリス・オルトゥス
 クラブ『the play』のナンバーワンバニーボーイ。
 女性が台頭しがちな竜宮において『女であれば間違いなく竜宮嬢となっていた』と周囲に言わしめるほどの逸材。
 優れた容姿を保つことに余念のない努力の人で、自分達に通じるセンスの持ち主を見つけると自らのクラブに勧誘する。

●NPC(客)
 他にもお客さんは居ますが、特殊な顔ぶれを抜粋。

・アケミ
 20代、女性。彼女面の痛客。
 ソーリスの色彼(色恋営業を掛けられている客のこと)になりたいし、ソーリスにずっとついていてもらいたい。ヘルプは一名までなら許すわ、と言っているが……本当は常に二人きりでいたい。
 マナミのことを年増のくせに厚かましい恋敵だと思っているため、顔を合わせるとホールで喧嘩を始める。

・マナミ
 30代、女性。彼女面の痛客。
 ソーリスがやんわり否定しても本彼(ホストの本命の彼女の事)だと信じきっている、シックなドレスの美女。
 本彼としての格の差を見せるためにもヘルプは何人でも許してくれるが、本当はソーリスと二人きりでいたい。
 アケミのことをソーリスに色目を使う泥棒猫だと思っているため、顔を合わせるとホールで喧嘩を始める。

・サユリ
 20代、女性。ホストクラブ初心者。
 最近恋人の振られて傷心。優しくしてもらえると聞いて、初来店。
 次の恋へ向けて前向きになれるように背中を押してほしい。オシャレな名前のカクテルが好き。
 同時につけるホストは二名まで。大人数に囲まれると縮こまってしまう。程々に満足すると帰っていく。

・ユウ
 30代、オネエ。
 海洋の所謂オカマバーに勤めているオネエ。可愛い男子(広義)とお酒を飲むのが好き。オープンラスト派。
 沢山の人と話すのが好きなのでフリー(本指名無)。オンリー(ホストが誰もついていない状態)にならなければ満足で、出来るだけホストとは一対一でお話したい。

・ケイコ
 50代、女性。ソーリス本指名の太客。
 着物姿の落ち着いたマダムで、基本的にソーリスが出迎えと見送り、乾杯さえしてくれれば満足。飽きさせないように接客すればソーリスの売上が上がっていくし、ヘルプにもチップをくれる。何人ヘルプがついても良い。

・雨泽(p3n000218)
 冷やかしに(二重取り消し線)皆の働きっぷりを見に来た情報屋の男。
 甘味とお酒が好き。仕事のアフターケアなのでローレットの経費で落とす。

●プレイングについて
 源氏名、接客スタイル、バニーボーイ衣装、NG項目……等、拘りがありましたら記して下さい。

●ナンバーワンバニーボーイ
 通常『the play』のナンバーワンバニーボーイはソーリス・オルトゥスですが、サポート参加者・関係者のお客さんからの【指名】が5件以上得ている人が居た場合、一番【指名】が多い人が一夜限りのナンバーワンバニーボーイとなります。
 ナンバーワンバニーボーイが出た場合は、シャンパンタワーでパーリナイ!

●サポート参加について
 サポート参加者は【客】となります。友人の仕事ぶりを見に行ったり、ホストクラブを普通に楽しんだりすることが出来ます。
 具体的にはサポートらしく『推し活』、もしくは『遊ぶ』ことが出来ます。
 また、【指名】(投票)が出来ます。

【指名】
 通常参加者の1名を推すことが出来ます。投票だけなので知人で無くても大丈夫です。
 プレイングには【指名:〇〇(名前とID)】と記して下さい。
 あなたの力で推しをナンバーワンバニーボーイにしましょう。

・『遊ぶ』
 基本的には一般バニーボーイが接客しますが、一人だったり同席した弊NPCと静かに……等も可能です。
 通常参加者さんが接客する場合は、『お互いの感情活性』(プレイング送信時のデータ)がされている場合、もしくはお互いに【お相手ID】or【グループ名】が記されている場合に限り描写されます。一方通行の場合は描写されません。

・『推し活』
 具体的な描写はされませんが、あなたの推しのための活動です。
 偽名を名乗ればあなただけにしか解らないので、ひっそりと推す事が出来ます。他の人と被っている場合は『姫』になります。
「スイさんから○○さんにボトルが入りましたー!」「イヅナさんから○○さんへ花束のプレゼントです!」みたいな感じです。

 如何なる場合も、シナリオ趣旨・公序良俗等に違反する内容は描写されません。
 ※サポート参加者には竜宮幣のドロップはありません

●EXプレイング
 開放してあります。
 文字数が欲しい、関係者さんに客として来て欲しい、等ありましたらどうぞ。
 関係者さんも【指名】(投票権)があります。
 可能な範囲でお応えいたします。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは通常参加者全員(サポートは含まれません)アイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

 それでは、素敵なプレイングをお待ちしております。

  • <竜想エリタージュ>今宵は君とパーリナイ☆完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年09月11日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

(サポート8人)参加者一覧(10人)

ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)
楔断ちし者
武器商人(p3p001107)
闇之雲
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
花に願いを
冬越 弾正(p3p007105)
黄泉路の楔
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
赤羽 旭日(p3p008879)
朝日が昇る
嘉六(p3p010174)
のんべんだらり
浮舟 帳(p3p010344)
今を写す撮影者
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
たくさん燃えた
解・憂炎(p3p010784)
通行止め

リプレイ

●ようこそ、ホストクラブ『the play』へ
 暗い深海に、煌々と明かりが灯る。
 煌めくネオンに少し大人な――夜の雰囲気。
 クラシカルな入り口を抜ければ、細い廊下には額縁に嵌った宣材写真が飾られていた。写真の中で微笑むのは、粒ぞろいのイケメンたち。ひときわ立派な金色の額縁に飾られている甘めの顔立ちの男性こそがこのホストクラブ『the play』のナンバーワンホストにして、彼が竜宮嬢だったならと幾多の甘い溜息と称賛をその身に受けてきた男性版竜宮嬢と言っても過言ではない、『ソーリス・オルトゥス』、その人である。
「矢張りオレの目に狂いはなかったようだね」
 誰よりも忙しく日々働いているはずのソーリスは疲れの「ツ」の字も見せずに、制服へと着替えたイレギュラーズたちへと「来てくれて嬉しいよ」と甘く微笑んだ。
 同時にぴょこりと揺れる、可愛らしい兎耳。
 そう、つまり、ソーリスの眼前にいるイレギュラーズたちの頭上にも、竜宮城では何故だか正装の兎耳が揺れていた。
「こういうものって、男性が付けるパターンもあるんだね」
「外では付けないのかな?」
 由緒正しいバニーボーイ制服に身を包んだ『カモミーユの剣』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)――【シャル】が頭上の兎耳をいじりながら呟けば、ソーリスが首を傾げて兎耳を揺らす。未成年で、そして清廉な騎士たらんとするシャルは知らないけれど、もしかしたらそういうお店も沢山あるのかもしれない。
「弾正、なかなか似合っているぞ」
「……ビジュアルがどう見てもキツくないか?」
「ソーリス殿を見てみろ、バニーの本質は食い込みじゃない……心だ、そして耳としっぽだ」
「うん。アーマデルも弾正も素敵だよ。っと、バニマデルと武士、だったね」
 甘い笑顔のソーリスと『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)――【バニマデル】のうんうんと頷き合いながらの後押し。ひどく顔の良い男と最愛の人に全肯定されれば、『残秋』冬越 弾正(p3p007105)――【武士】だって「そうかな」な気分になってくる。……多分、なったはずだ。なったよね? オッケーです。
 ソーリス曰く、客の好みは様々だ。バニマデルのような可愛めで露出が高いバニーボーイが好きな客もいれば、イカつくて胸元がぱっつんムチムチな我侭ボディ好きな客だっている。「様々なお客様の求めに答えられてこそのオレたちだ」とソーリスはとても美しい笑みで語った。
「……なあ。俺のバニー服なんかアレじゃねえか?」
「よく似合っていると思うよ。まるで君のために誂えたかのようだよね」
 どこかおかしいかな? なんてソーリスは兎耳を揺らして『のんべんだらり』嘉六(p3p010174)の姿をじぃっと見た。
 バニーボーイと言うよりはバニーガールと言った方が近いその衣装は、際どい。際どく筋肉質な足がニュッと晒され、20デニール程と思われるパンストからはすね毛も覗いている。色んな意味で際どい。
「うーん、他の。ああ、バニマデルと同じのはどうかな?」
 チラリとバニマデルを見やれば、更に露出度が高い。ソーリス自身に悪気はなく心の底から似合うと思っての発言であるため、嘉六の心の天秤は『今の衣装』に傾いた。
「ソーリスさん。僕は生ハムが大好きで、お客様にも味わって頂きたきのだけれど、大丈夫かな?」
 ただの生ハム好きではない。生ハム大好きなのだ。ギフトで半永久的に作れるからと口にするのは『僕には生ハムの原木があるから』解・憂炎(p3p010784)――【SIE】だが、そんな彼を見てソーリスは難しい顔をする。
 何故ならここはサービスを行う飲食店である。無料で食べ物を出されては店側としては売上にならないどころか、他のフードの注文が無くなり用意してある食材も無駄になりかねない点を憂炎は見逃している。客商売をしている側である事を忘れてはいけない。
「テーブルチャージとしてナッツを置くから、それの代りに二三枚の提供。気に入って頂けたら有料という形での提供なら大丈夫だよ」
 その売上の7割はSIEの手当につけてくれると、広い心で承諾してくれた。
「紫月……お客として来て欲しかったのに」
「ヒヒ。可愛い小鳥が心配だからねぇ」
 眉を下げた『楔断ちし者』ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)――【小夜星】の視線は自身とは対象的に男の絶対領域手首しか肌の見えていない『闇之雲』武器商人(p3p001107)――【紫乃】へとチラチラと注がれている。それだけで格好良いと思ってくれている事が解り、紫乃は口角を上げた。
 対する小夜星はホットパンツにノースリーブ……と言うよりも素肌にベストという大胆な格好である。先に家でも紫乃がその姿を見ていることから、紫乃に堪能してもらうために自分で用意した衣装なのだ。
(変な虫が付かない様に注意しないとねぇ)
 目を光らせておかねばと考える紫乃の袖を、ツンと小夜星が摘んだ。
「その、ちょっと心細いし……紫月の美しさに女性が惚れちゃうと……やだし……」
「小夜星、大丈夫。我(アタシ)……あー……オレが付いてるから」
 可愛いことを口にした嘴にちょんと指を当て、客の前では呼び名に気をつけてと言葉を足した。ふたりだけの大切の名はふたりだけの時に。お客がからかって真似ても受け入れなくてはならなくなるのがサービス業の辛いところだ。
「お客さんに夢を魅せる素敵なお仕事だよね! そんな所で働けるなんてすっごく光栄だね!」
「俺も騎兵隊の執事に心構えを聞いてきた」
 へそ出しミニ袴バニーの『今を写す撮影者』浮舟 帳(p3p010344)――【明雲】がぐっと拳を握り明るく元気に口にし、『朝日が昇る』赤羽 旭日(p3p008879)――【SoL】が浅く顎を引く。そう、これは最大のもてなしをして、誰かを癒やす大切なお仕事なのだ。
「それじゃあ皆、よろしくね」
「うん、全力でもてなしてみんなに最高で楽しい夢を見てもらおう!」
 百点満点の笑顔と言葉。その姿に流石だねと満足そうに微笑むソーリスが小さく安堵の吐息をこぼす。――日々の努力を惜しまずに自分を磨き、疲れも全て笑顔で接待している彼が、疲れていない訳がないのだ。今日はソーリスの負担を減らすべく、イレギュラーズは気を引き締めるのだった。

●一夜の夢を、あなたに
 開店すれば広いホールにたっぷりの席数があったというのに、あっという間に席が埋まってしまい入店を断る程の盛況ぶりだ。
「いつも当店を御贔屓にあずかり光栄至極に存じます……ってちょっと違うか?」
「あなた、お店は初めて?」
「ああ、申し訳ない。貴女みたいな美人が相手でちと舞い上がってる」
 上品な着物姿だのマダム、ケイコは小さな失敗や言葉遣いを咎めたりはしない。穏やかにふふと品良く笑い、飲食を勧めてくる。
「私くらいになっちゃうとね、若い子が楽しくしていてくれる方が嬉しくて」
 ほら、ソーリスはいつも笑顔でしょう?
 視線を向ける先にいるソーリスは、他の席への移動中でも自分が受け持っていない席に対してバニーボーイたちに卒なく的確なアドバイスと気配りをし、様々な席へと惜しみなく笑顔を振りまいている。
「愛らしい人、席をご一緒しても? オレ達にキミを知る機会をくれないかい?」
 ソーリスが席を空けたばかりのマナミの席へ、すかさず顔を出すのは小夜星と紫乃のふたりだ。
「いいわ。ソーリスは暫く来れないだろうし……」
 マナミの視線は名残惜しげにソーリスが去った方角へと向かうが、「彼女の私が応援してあげなくちゃね」と紫乃と小夜星へと視線を戻した。
「あなたたち、見ない顔ね? 新人さん?」
「オレは紫乃。この子は小夜星。オレはこういった事には少し慣れてはいるけれど、この子は不慣れでね」
 どうぞと手で示され、マナミを挟み込む形で席につかせてもらった紫乃が甘く笑み、小夜星ははにかみながらもコクコクと頷いた。
(マナミさんとアケミさんは……今の所大丈夫そう、だね)
 グループ客のボックス席へとヘルプに向かうべくホールを移動している明雲は、さり気なくチラリとふたりの位置関係を確認する。
 問題をよく起こしてしまうふたりは、マナミは武士の案内で、アケミはヴィルメイズの案内で、互いの声や状況が伝わらないように店内のほぼ対角に通されている。ソーリスが移動する度に視線を向けてしまう彼女たちが気をもまないためにもソーリスも多少遠回りしながら移動してくれているし、中央に向かう際はSoLが偶然を装って通りかかり暁色の翼で視界を妨げていた。
「そっか……サユリさんは最近恋人にフラれたのか。その恋を忘れろとは言わないよ」
「でもあたし、全然立ち直れなくて……。友達は皆早く忘れちゃいなって言うんです」
「恋は人を強くするのさ。次の恋をお手伝いする一杯を貴方へ贈らせてくれる?」
 サユリが物憂げな表情で頷き了承すると、SIEは通りかかったボーイにカクテルを注文する。ボーイがカウンターのバーテンダーへ伝えに行き、作ってもらっている間、SIEは生ハムを勧めながらどんな恋をしたのかとサユリと話をしていた。
 ふたりの前に、ひとつのグラスが置かれる。
「カカオフィズだよ。これの言葉を知ってるかな?」
「言葉があるのですか?」
「『恋する胸の痛み』さ」
 苦味と、甘酸っぱさ。それは恋の痛みを連想させる。
 そうなんだと口にしたサユリは、確かに似てるかもと淡く笑った。
(うう……緊張します……)
 ボックス席に埋まるように身体を縮こまらせた『悲劇愛好家』クロサイト=F=キャラハン(p3p004306)は、花瓶の影からちらりと彼の御主人様――源氏名『紫乃』を盗み見た。彼は番と忙しく接客中だが、クロサイトば遠くから眺められたらそれだけで満足だ。拝みたくすらなる。
 それよりも。
(妻にバレませんように……)
 数日はビクビク過ごさねばならなくなりそうだ。
「初めまして、明雲です!」
「……シャルです」
 大勢のお客が入っているボックス席のヘルプに呼ばれた明雲は元気に、シャルは丁寧にお辞儀をした。
「あら? 今まで居なかったタイプじゃない? 騎士様っぽい~」
「こっちの子はすっごく元気ね。衣装も凝っていて可愛いわ」
「ねえ、ここに座って。何か飲みたいものはある? 何でも頼んでいいわよ」
 ありがとうございますとはにかむふたりに、お姉さんたちはキャッキャと大いに喜んだ。
「ユウ殿はこの店にはよくいらっしゃるのか?」
「そうね。アタシはここに来れるようになったらすぐはまっちゃって。ここの子たちってレベルが高いじゃない? アタシも負けてられないなって気になるし、いっぱい元気にしてもらってるのよ」
 入れ代わり立ち代わりにイレギュラーズたちがやって来ては会話してくれることに満足して、ユウは始終ニコニコしている。
「……バニマデル」
「あ、だ……ブッシー。ユウ殿、すまない」
「うふふ、いいのよ。またお話に来てね」
 武士に呼ばれたバニマデルが席を立つのも機嫌よく見送って、次に顔を覗かせるSIEにも「いらっしゃい」と微笑んでいた。
「武士だ。バニマデルの補佐として傍についている。何せ彼は特別だからな」
 マナミについていたSoLが席を外すタイミングで武士とバニマデルはマナミの席についた。
「特別?」
「彼はソーリスの気に入りの後輩なんだ」
「あら。……そう言えば、さっきホールですれ違う時に肩を抱かれたりしていたものね」
「……何」
 思わず武士が反応する。
「何度か微笑みかけてもいたのを見たわ。ソーリスが目をかけているのね……」
 ふぅんと口にしたマナミが、にっこりと笑う。
 彼女の向こうでは、武士が微妙な表情になりそうなのを我慢している。
「バニマデルって言ったかしら? 何でも頼んでもいいのよ。お姉さん、いっぱいごちそうしちゃう」
「……ありがとう」
「ん♪」
 マナミはバニマデルのことが気に入ったらしく、ソーリスがあまり寄らなくても満足してくれるようだ。
「アケミ様はそれほどまでにソーリス様のことを愛していらっしゃるのですね」
 一方その頃、アケミにはヴィルメイズがついていた。
「そうなのよ、わかってくれる? でもね、あたしはいつでもソーリスの味方だからいっぱい応援するし、他の子にだって優しいのよ」
 本当はソーリスと二人っきりでいたいけど、そうは出来ないのは頭では理解している。彼が売れるのは喜ばしいことだし、彼にとってもいいことだから。
「アケミ様は本当に素晴らしいですね」
「解ってくれる? あ、あなたお腹空いていない? 何か食べる?」
「でしたら、アケミ様がお勧めのフードを」
「だったらねぇ……」
 そうして届いたおにぎりを頬張るヴィルメイズを、アケミは面白そうにうふふと笑って眺めていた。いっぱい食べる男の人を食べるのが好きなようだ。
「ユウさん、楽しんでるかな?」
「もう、バッチリよ~。今日は知らない顔ばかりで、いつもよりドキドキしちゃったわ」
 主に飲食物の運搬側に周って皆の補佐をしていたSoLが、いらっしゃいとユウの隣に招かれた。
「アンタの翼、綺麗よねぇ。空も良く飛んでいるの?」
「そうだね。それじゃあ、空から見た絶景の話でもしようか?」
 ユウのためにウイスキーの水割りを作りながら、水平線に落ちる夕日、煌く星々の話をすれば、ユウは「星に近いと、全部宝石のように見えそうね」とうっとりしていた。
「うちは薬草系のお茶や軽食、リキュールを使ったカクテルなんかを出すカフェバーなんだけど」
 そう口にしたカティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)は、差し出されたメニューに視線を落とした。提供している酒は、海洋や豊穣で入手できる物のようだ。
「健康や美容にいいものを扱っているんだ」
 バニーボーイは詳しく話を聞きたいとカティアとの距離を詰めたのだった。
「えー、明雲くんって旅が趣味なのー? いがーい」
「えー、意外かなー?」
「明雲くんのお話聞いてると、私も旅行に行きたくなっちゃうなー」
 明雲の入るボックス席は、いつも明るい声が響いている。明雲が乗りやすい楽しい話題ばかりを巧みに提供するから、話しやすいと高評価なようだ。
 お客さんが楽しんでくれると明雲も楽しくて、お互いに笑顔で居られるこの空間がお互いにとっても楽しい時間となっていた。
「シャルくんはちょっと慣れていないところがいいっていうか~」
「そうそう、初心(うぶ)なところがいいよね~」
「わかる~」
「きょ、恐縮です……」
「やだー、かわいー」
「……姫様方の方が愛らしいかと……」
「……やだ、今、すごくキュンときちゃった」
「あたしも」
「推せるわー。シャルくん、すっごいいいこ!」
「わかる~~~~」
 10歳程年上のお姉さんたちはシャルを囲んでつまみやすい菓子を沢山頼んで楽しんだ。
「バニマデルさん『リョウ』さんから花束のプレゼントです」
「俺に……?」
 赤いラナンキュラスの花言葉は『あなたは魅力に満ちている』。
 応援の言葉を受け取ったバニマデルは、嬉しいよとはにかんだ。
「トスト様、ご指名ありがとうございます~」
 ヴィルメイズを指名して待つこと暫し、トスト・クェント(p3p009132)の席へ笑顔のヴィルメイズがやって来た。
「……なんか意外と、こういうの向いてるのかもね」
「ん~、向いておりますか?」
 実は待つ間、トストは女性客の相手をするヴィルメイズを観察していた。
 にこやかに話す、整った容姿。嫌な顔をする者はおらず、トストは――。
(……いや。おれはヴィルメイズくんが心配で見に来ただけだからね)
 何故だか胸の奥がざわついたような気もしたが、きっと気のせいだ。
「ヴィルメイズくん、何か飲む? ……んん? これってどれがなに?」
「ではこのアルマンド……? というものでぜひ~」
「じゃあおれも同じのを」
 通りがかったボーイを呼び止め、ヴィルメイズは手早く注文した。
「……イシュミル?」
 店に現れた知った顔に、バニマデルは思わず動きを止めた。
「俺は接客つかな……」
「うん、キミは指名しないよ。彼にしてもらうからね」
「えっ」
 イシュミル・アズラッドが視線を向けるのは、バニマデルの側に居た武士である。
「俺?」
「だって帰ればアーマデルはいつでも見られるからね」
 ごもっともだしイシュミルの接客をする気もなかったバニマデルが複雑そうな顔になる。
「おお、いい声の若者が揃っとるのう!」
「ちょっと待て、何でアンタがいるんだ是空社長!」
 イシュミルとバニマデルでの板挟みになっていた武士が、新たにホールに迎え入れられてきた客を見て思わず叫んだ。すかさずバニマデルを隠すように立ったが、「ワシはその子を指名する」と言われればホストに打つ手はない。
 仕方がないのでイシュミルと是空・信長を相席させ、ふたりでふたりを接客するのだった。
「紫乃さんとは親しいのですか?」
 紫乃宛に入れたシャンパンのボトルを手にバニーボーイが首を傾げれば、親しいと言うかとクウハ(p3p010695)が口を開いた。
「旦那は俺の主だ」
「おいらにとっては馴染みの店主だ」
 クウハとフーガ・リリオ(p3p010595)の答えは異なる。ミステリアスな紫乃のことが益々解らなくなった様子のバニーボーイは黄金色の液体をグラスに注ぎ、三人で乾杯をした。
 一杯だけ飲んで後はお店の子たちでとグラスを空けると、ふたりは甘いカクテルを注文する。売上を伸ばすためにはボトルが一番なのだが、クウハは甘い物の方が好きなのだ。
「なァ、何話してたんだ? 囁きとか何とかいってなかったか?」
「ああ、うん……」
 こっそりと隣のバニーボーイへ問うた会話は内緒。
 何も知らないクウハは「俺が教えてやろうか」とにんまりと笑った。
 ――悪霊らしく囁くのは得意だぜ!

「それじゃあまたな、お嬢ちゃん」
 また来る時は教えてねと生足が魅力的な女性からちゃっかり連絡先を貰った嘉六は見送りを済ませた。可愛い子とは話せるし、(竜宮城は健全なシステムだが)上手く行けば同伴やアフターだってある。しかも女の子たちはホストによく見られたいがために可愛くめかしこんでくるのだ。天職かもしれないなと思いながら嘉六が店内へと戻ると、ソーリスとケイコが話をしていた。
「そろそろ、アレを出して頂戴」
「了解、ケイコ。いつものだね」
 ケイコの声に、ソーリスが微笑む。
 彼女がソレをするのはいつものことらしく、ソーリスがホールのボーイへと視線を向ければ、すぐさまホールの中央付近にソレが用意された。
 いくつものグラスが美しく積み上げられたグラスのタワーはシャンデリアの煌きに照らされ、ホールの中央でキラキラとその輝きを放っている。
 脚立に上ったボーイたちがコールとともにシャンパンを注げば、ソレは完成した。
 ――シャンパンタワー。少し早めに帰るケイコが、その日のナンバーワンバニーボーイへと贈るご褒美だ。
「今日のナンバーワンバニーボーイは……」
 ボーイが読み上げる。
 客たちの視線は中央のシャンパンタワーへと集まっている。

「ソーリスさんです!」

「良かった。実は少しドキドキしていたんだ」
 ワッと歓声が湧き、中央へソーリスが向かう。
「ありがとう。それじゃあ、皆で乾杯しようか」
 君たちもこっちに来てとソーリスがイレギュラーズたちを呼んでケイコを中心に囲むと、バニーボーイと客全員にグラスが配られていく。
「姫たちと、そして手伝いに来てくれた君たちへ」
 ケイコと瞳を合わせて乾杯と囁やけば、数多のグラスたちが掲げられた。
 日常を忘れて楽しむ客たち。
 普段の装いとは違う装いでもてなすイレギュラーズたち。
 夜はまだまだ始まったばかり。
 タワーを終えた後も、店じまいのその時まで――今宵も君とパーリナイ☆

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

歩く度にぴょこぴょこしていて可愛いですよね、兎耳。
【指名】は注意書きの描写条件から外れていて描写が無い分も、集計はされています。

お疲れさまでした、イレギュラーズ!

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