シナリオ詳細
シャラフホフラの子供達
オープニング
●『親切者の』グレンダラ
探求都市国家アデプト。通称練達。
覇竜より怪竜ジャバーウォックが襲来し都市部及び郊外に壊滅的な打撃を与えたのはいかほど前の出来事だったろうか。
練達全体は持ち前の技術力とローレットの助力によって急速に立て直しを図り、既に復興という言葉すら陳腐化するまでに至っていた。
例えば肉体にできた傷がカサブタになって剥がれる程度の時期である。
そんな中にあって――。
「いいかい、あんたらのように何も出来やしないガキを食わせてやってるんだ。戦後間もない練達国家の代わりにね! ここ以外にはあんたらの面倒を見てくれる場所なんでひとっつもないんだよ!」
四十代になろうかという肥満気味の女が、長い定規を振りかざす。よくしなる竹製のそれが、子供の二の腕をしたたかに叩く。
子供は本来あげるべき悲鳴すら神殺し、目を瞑って痛みに耐えていた。
神宮レイという少年である。
彼が目を開き、女を見ると……女はもう一度少年の腕を叩いた。
「なんだいその目は。文句があるなら今すぐ放り出してやろうか? あんたは今すぐ金を稼ぐアテがあるのかい。あたしは親切心で、あんたのために言ってるんだよ!」
今度はレイの頬へと定規が叩きつけられる。
この場にいる子供は、レイだけではない。
部屋の隅には両手を下ろし自分のつま先だけを見つめる少年少女が五人ほど並んでいる。
「ほら、言ってみな。全員でだよ」
女がキツくその少年少女をにらみ付けると、顔色をうかがうように彼らが口を開く。
「「いつもありがとうございます。『親切者の』グレンダラ」」
●孤児院を焼くために
「以上が、『シャラフホフラ孤児院』の現状だ。私営の孤児院として練達でうまれた孤児達を一時的に引き取り、里親を探す機関として登録されてる。
竜種災害とマザーAIの暴走によって爆発的に生じた孤児問題は知ってるよな? 親を亡くした子供が増える一方、孤児院がまるごと破壊されたり運営資金が失われたりして受け入れ先が減少した。私営孤児院の多くを頼らなければ大量の子供達がホームレスになるって状況だった。家無き子の末路が可愛そうってんじゃない。こういう連中が犯罪を犯してアンダーグラウンドな組織に吸収されていけば国の治安が崩壊しかねないっていう、政治の話だ。
だから――多少汚い孤児院ですら、練達は潰せない」
理屈をいくつか並べてから、マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)は深く毒気付いた。『けったくそわるい』などと呟いて。
「シャラフホフラ孤児院は『親切者の』グレンダラと下働きのシャーロットの二人で運営されている。
『親切者の』……なんて言ってるが施設内での暴力は当たり前で、里親を探す体裁だけをとりながら限界ギリギリまで育ってしまった子供を国外の貴族連中に売って金に換えている。
子供はモノと知らないからな、外に出たら死ぬだけだと吹き込んで雁字搦めにしてるんだ。ったく……ブラックなトコは大体そう言うんだよな」
場面を、説明していなかった。
マニエラは練達にあるファーストフード店のボックス席につき、集まった数人のイレギュラーズ相手に説明をしている所だった。
マニエラが突然こんな話をもちかけるのは二つほど理由がある。
ひとつは、孤児院の腐敗を国に訴えたが国は立場上『明確な証拠が無い状態』で孤児院をいたずらに潰すことができないこと。そんなことを始めたら似たようなケースをグレーゾーン問わず全て潰さねばならず、放出される孤児の数は計り知れず、潰すコストだけでも膨大だ。無限に金と人員が沸いてくる泉でも無い限りは無理な政策なのだ。
そしてもうひとつは……。
「私の夫になるかもしれない男の子なんだぞ!?」
そう。ROOネクスト世界に住むマニエラの同一存在『リアナル』がなんかいつの間にか美少年と結婚しており、幻想貴族としてのほほんと幸せに暮らしている事実を目の当たりにしたためである。その夫の名はレイ・マギサ・メーヴィン。血眼になって探したところ、練達の街に同一の存在が確認された。
……まあ、極論してしまえば彼はマニエラにとって他人も他人なのだが、『あったかもしれない可能性』として見せつけられてしまえば他人事にはできないのである。
かくして、『強硬策』がとられることになる。
「シャラフホフラ孤児院を――燃やす!」
- シャラフホフラの子供達完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年08月28日 22時15分
- 参加人数6/6人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 6 人
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参加者一覧(6人)
リプレイ
●
ハイウェイ高架下。決して豊かとは言いがたい風景の中に、シャラフホフラ孤児院はあった。
バーやレストランや、あるいは名前の付けがたい店が並ぶ通りのこと。隣人には深入りしないことがここでのルールであるらしく、シャラフホフラ孤児院の実情を外に訴えるものはいない。
だが、それも今日までのことだ。地下一階の狭いバーにて、ローレット・イレギュラーズたちはテーブルを挟んで顔をつきあわせている。
「ふーむ、孤児院に人身売買ですかー。
何となく懐かしい響きですが、それはともかく用が済んだら残った関係者はみーんな始末しても構わねーんですよねー? 脚、貰っちまって構わねーですよねー? フフフ……」
「燃やしていいって言うからイタズラし放題かと思ったのに、なんだかそうもいかない雰囲気?法の裁きってそんなに大事? 今日はあんまり『お友達』増えそうにないネ……」
『A級賞金首・地這』ピリム・リオト・エーディ(p3p007348)と『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)はそんなことを言って、手元のカップに手を付ける。
ローレットの多様性が見えるのはこういうときだ。
六人のローレット・イレギュラーズがこの依頼に名乗りをあげ選出されたが、そのうち誰一人として『ふつうの感想』を述べた者はいなかった。
あるいは常人が顔をしかめるようなことを、しかし幸せそうに語れる彼女たちこそが、多様性の先鋭たる所である。
『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)は『そういう人もいますよね』という様子で、反応らしい反応はせずに机に頬杖をついている。
ややダルそうなのは、現実と理想が頭のなかで揺れているからだろうか。
(ウチの手落ちの話ですが……反社の増長を抑えないといけない立場ですし、高橋室長あたりが黙殺してたんでしょうね)
たとえば『世界を守るスーパーヒーロー』になったとして、難民や人種や発展途上国の経済格差が突然解決できるわけではない。ノーベル平和賞を100個とったとしても、地球全土を幸福にはできないだろう。
どこまで手を伸ばしても社会という天秤は揺れ続け、ひずみは常に生まれ続けるものだ。
重要なのはもしかしたら、『世界』の定義を狭めることなのかもしれない。
「美咲さん?」
問いかけられて、美咲はぼんやりと視線をなげかけた。
「あ、すみません考え事してました。もう行くんでス?」
「ええ。準備は済んだようですから」
『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)は席を立ち、奥の部屋(?)から出てきた『白い影』ミリアム・リリーホワイト(p3p009882)に手を振る。
ライは一見すれば清潔なシスターに見える。
「世界中で起こっている事、ですよ。
この程度であれば実際、世は並べてことも無しです。
今回の私達はこいつらを潰す。
これだって、世は並べてことも無し……」
何について述べたのか、あるいは何かを察しているのか、美咲は沈黙だけでそれに応える。
ライが店を出ると、ミリアムもまた一緒に店を出た。
「戦災孤児、ねぇ……親を失っただけで何も出来なくなるのはよくないんじゃないかな?
尤も、自分みたいなのは稀であることは自覚してるけどさ。
でもね、与えられたものを疑うことなく受け取ってくれる無垢な子供って、自分は大好きなんだよねぇ……うへへ……」
小声でそんなことを言うミリアム。ライもまたそれに、否定も肯定も返さなかった。
多様性を認めることは、異なる考えを受け入れることではない。単に否定しないだけのことだ。
人を集めるに至った『戦支柱』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)も、そのことはよく解っている。
店の外で待っていたマニエラは飲み干した飲料の缶を潰してくずかごに放り投げると、歩き出す。どこかの貴族かあるいは富豪のような身なりをしているが、マニエラらしくないといえば、ない。
「色々調べた、今の私につながりそうなものはない。ないから幸せな道を選べるようにサポートするんだ……」
彼女のそんな呟きが、あくまで孤児院ではなく一個人に向けられていることを他のメンバーは薄々気付いている。しかしそれもまた、否定しない。
人間は人間の数だけいて、正しさもまた同じ数だけあるのだから。そこをぶつけていては、始まるものも始まるまい。
「さて、作戦開始と行こうか」
主義も宗教も関係ない。
ローレット・イレギュラーズが守るべき唯一のもの。
それは、受けた依頼の達成義務である。
●
シャラフホフラ孤児院に、三人の客が訪れた。
なんといっても孤児院である。客が来ることは珍しくなく、そして訪れた彼女たちも『よくある客』であった。
一人目はあえて名乗らない、幻想貴族のような格好をした女である。
「労働力――いや、養子をもらいたのですわ」
あからさまに言い間違えたという様子を見せる彼女に、シャラフホフラ孤児院の院長であり絶対的な支配者でもあるグレンダラは小さく笑った。
「労働力だなんて。こちらの『噂』を聞いていらっしゃったのかしら? 滅相もございません」
などと言いながら、グレンダラは銀色のトレーを机の中央にスッとすべらせる。
女は――マニエラはそこに金貨を数枚これみよがしに置いた。
「ええ、勿論。そんなつもりは御座いませんわ」
次に訪れたのはシスターだった。
天義で一般的に使われるロザリオを持っていたので、おそらくはその手の者だろう。
「こんにちは……私、近くの街でシスターをしております。貴女達の行いに神も喜んでいるでしょう」
『世界のルール』を信仰する天義という国が、『ルールの突破』を国是とする練達とどれだけ仲が悪いかなど言うまでもないが、そうした国家がわりとやる手口が『宗教侵略』である。
あんまり耳馴染みのなさそうな言葉だが、たとえば仮想敵国に自国の宗教を流行らせ、彼らの思想を統一させ、一個の巨大な集団に仕立て上げ、最後に『この国の支配者は不正である』という主張をし内乱を起こせば、国は救助を名目に戦端を開くことが出来る。内と外から同時に攻撃できるという点で非常に有利であり、敵国の兵力をそのまま利用できるのも利点だ。
まあ、練達で天義系の宗教がはやったという噂は全然聞かないので、その試みはうまくいっていないのだろうが。
「ええと……」
グレンダラはシスター……ライの狙いを判別できぬまま、どう追い返そうかと悩んでいた。
先ほど契約を結んだ貴族(マニエラ)との取引まで時間があまりないからだ。
「シャーロット、この方を案内して」
グレンダラは下働きのシャーロットにライの対応を丸投げすると、奥へと引っ込んでいく。
その次にやってきたのは『情報通』を名乗る人物……ミリアムであった。
彼女の存在をついぞ知らなかったグレンダラは怪しんだが、彼女が天義系のロザリオをちらりと見せたことで得心がいった。
天義を拠点にし、あのシスター(ライ)を追いかけてきたクチ……ということだろう。
実際ミリアムが見せてきた映像は、マニエラとライが地下のバーで会っている様子だった。
会話はうまく聞き取れていなかったが、どうやらグレンダラをはめる意図があるらしい。
「だから引き渡しはぼかさず明確に行うべきだと思うかな?」
「……どういうことかしら」
「彼女たちが欲しいのは人身売買の証拠。孤児の受け渡しだけじゃ証拠にならないよね?」
じゃあ自分はこれでと席を立つミリアム。彼女の目的はあくまでライの妨害なのだろうか。
信用してよいものか迷うグレンダラに、ミリアムは『ああ』と何かを思い出したように金貨を数枚、テーブルに置いた。
「そこで拾ったんだけど、キミの落とし物だよね?」
「……ええ」
表情を消すグレンダラ。彼女の中で計算が働いた。
計算の内容はこうだ。
マニエラからは事前に受け取った金貨だけを懐におさめ、孤児を引き渡しはするが金をうけとらない。相手は金をおしつける理由がないのでそれ以上踏み込めない。
そうすれば証拠になるものは残らずライも手出しはできないだろう。
一方でミリアムからの『袖の下』はちゃっかり受け取り、ライの妨害を事実上完遂する。
多少の不手際を装い、より多くの金を手に入れるという寸法だ。
そのためには……やはり未だ孤児院に居座っているライが邪魔だ。
「仕方ないね。『あの場所』を使うか……」
●
マニエラは本棚から通れる隠し地下室へと案内された。
「この孤児院は昔あった建物を改築して使っているんです。だからこういう場所もあるんですよ」
グレンダラはそう言うと、地下室を降りていく。
あからさまにあやしいが、証拠にはならない。地下には引き渡し予定の孤児がおり、裏口からマニエラ共々外に出すことでライと接触させないという作戦である。
だが、そこにいたのは孤児ではなかった。
「待ってたよ」
マリカやピリム、そして美咲たちが孤児の代わりに地下室で待ち構えていた。
ハッとして振り返ると、マニエラが通路を塞ぐように立ち……すらりと扇を抜いた。
そして裏口側からは、ミリアムとライがそれぞれ入ってくる。
キッと彼女たちをにらみ付けるグレンダラ。
「アタシをはめたのか!」
「グレンダラさんよぉ。知っての通りこの国家、人身売買は基本的にアウト。落とし前を取る時間だ」
咄嗟にグレンダラが魔法を唱えるが、動きはピリムの方が圧倒的に早かった。
すぱんとグレンダラの脚部を切断し、転倒する彼女をよそに脚部を手に持ってしげしげとながめている。
「あ、ああ……!?」
「逃げようとしてもだめだよ? 外には『お友達』が待ってるから」
マリカは孤児院の裏手を塞ぐように『お友達』を召喚し配置しているらしかった。
そして、取引についてきていたシャーロットへ目をやる。
「シャーロットちゃんは居場所を失うかもネ。
いっそマリカちゃんの『お友達』になってみる?
嘘。半分だけだケド。
でもこれまでも働かなかったワケじゃないんでしょ?
死ぬ気で仕事探せばこれまで通りの働きで生きていけるんじゃない?
まぁ無理だったらマリカちゃんのトコに来なよ。『お友達』にしてあげるよ」
マリカの歪みに気付いたのか、シャーロットはヒッと短く悲鳴をあげて壁へはりつくように後じさりした。
倒れたグレンダラを押さえつけ、足に止血用のバンドを巻き付ける美咲。
「大丈夫。死にませんよ。ああ……人に親切にしてもらったときはなにか言うべきこと、ありますよね?」
眼鏡越しに光のない瞳を向ける美咲。
ややあって、外側から扉を破った護衛の人間たちが突入してくる。
護衛といってもグレンダラが金で一時的に雇ったアウトローな傭兵たちだ。
ライと美咲はノールックで拳銃を抜き、扉側へ乱射。
咄嗟に扉両脇の壁に身を隠した護衛の男達。
「燃やしちまうのは勿体ねーですから、しっかりとれる分の脚は頂いていきますー」
そこへピリムが突撃。
護衛一人の脚部をもっていく代わりに、ピリムが派手に殴り飛ばされていた。
が、逆に言えばそれだけだ。
ミリアムは『マジックロープ』の魔術を発動させると、マニエラとマリカにそれぞれ合図を出す。
今だという瞬間にロープを放ち、マリカはそれと同時に『Death apple』の召喚術を発動させた。
どこからともなくローブを被った骸骨が現れ、大鎌で護衛の男へと斬りかかる。
ミリアムのロープによってバランスを崩していた男は派手に切り裂かれ、吹き上がる血をマリカはなんてことのないような表情で見ていた。
一方のマニエラはグレンダラを扉の影になる場所へと引きずり、畳んだ扇を彼女の心臓部に押し当てるようにした。
「練達の方の番人、マニエラ・マギサ・メーヴィンの名の下にグレンダラ及びてめーらを捕縛させてもらう。ま、警察じゃあないんだがな」
マニエラが今からやることは、いわば略奪。あるいは強盗だ。
ライもマリカもミリアムも、どうやら金品にたいして興味は無いらしい。ピリムに至っては目もくれないほどだ。
美咲にだけは『とめてくれるなよ?』と念押しの視線を送り、マニエラはグレンダラを抱え上げるようにして運んでいく。
彼女が隠してため込んでいる金を引っ張り出すためだろう。
美咲も美咲で、彼女がいたずらな理由で金を得ようとしているわけでないことを察しているので止めはしなかった。
「大体の脅威は鎮圧できました。あとはまあ、好きにしていいですよ」
そう言われ、ライはあらためてシャーロットを見た。壁にはりつき、振るえている様子だ。
「あなたはまあ、運が良ければ好きに生きなさい。
最悪私の所に来たら、まあ碌な仕事は無いですが少しは紹介しますよ」
これだけの光景を見たのだ、頼ってくるとは思えない……などとライは優しい笑みの奥でそんなことを思った。
●
後日談。
シャラフホフラ孤児院はその悪事がSNSによって晒され、数日の間社会的に燃え上がった。
よもやこんな形で孤児院を『燃やす』と思っていなかったマリカたちはスーンとした態度だったが、彼女たちは彼女たちなりに得るものがあったらしい。
ピリムはグレンダラと護衛たちの脚部を、マリカは数人の『お友達』を手に入れ、ミリアムは接触したさいに目を付けていた可愛らしい少女たちを独自に保護していた。
一方でマニエラは……。
「あの、お姉さんは……?」
神宮レイ。ROOにてマニエラ(リアナル)の夫となった人物。いかなる縁でROOがそうしたのかわからない。いずれにせよ……それを理由に自らが関係をもつのは……。
「私みたいなのに関わるな」
マニエラは冷たくそう言い切ると、レイに金貨の入った袋を手渡した。
多くは孤児院から子供達を解放するために使ってしまったもので、いまレイに渡したのもその一環だ。
つい手がレイの頬にのびてしまうが……それを、マニエラはすとんと下ろした。
背を向け、歩き出す。
『幸せになってくれ』と、口の中でつぶやきながら。
美咲がファーストフード店のカウンター席に座り、スマホを弄っている。通知音が鳴り続け、指は凄まじい速度で動いていた。
隣にトレーが置かれ、何かと思うとライだった。
「忙しそうですね?」
穏やかな微笑みの裏に隠しているものを、美咲は気付いている。見抜くにはあまりにも巧妙すぎる仮面でも、それが仮面であると推察することはできる。それがある意味も。
「今回は手の届く範囲に入ってしまった。
大局のために少数を切り捨てる必要もない。それなら責任を取らないといけないでしょう」
「はは」
ライは初めて半笑いを浮かべた。
世は並べてことも無し。
孤児院がひとつ燃えて、孤児がまた別の孤児院に入っただけ。
社会は止まらず、周り続けるのだ。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――mission complete
GMコメント
●注意事項
この依頼は『悪属性依頼』です。
成功した場合、『練達』における名声がマイナスされます。
又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。
●オーダー
『孤児院を焼く』というあまりにもありふれたオーダーを、しかし今は出さねばなりません。
なぜなら国家は立場上グレーゾーンの孤児院に手を出せず、そして主観的にあなたはこの孤児院が完全に黒(ブラック)だということを知っているのです。
あなたに大義があることを、おそらく地域の治安維持組織や自治体もうっすらながら理解しているでしょう。あなたが孤児院を焼いたとしても、おそらくは見て見ぬ振りをしてくれるはずです。
なぜなら彼らも、できることなら、そうしたかったのだろうから。
●シャラフホフラ孤児院
とはいえ、なんでもない日にいきなり押しかけて『親切者の』グレンダラをスパーンとぶった切れば終わりというわけではありません。
この『事件』に相応の大義を持たせなければ皆さんの身柄の安全を(政治的に)確保できないのです。
具体的にどうすればよいかと言えば、グレンダラが育ちきった孤児を人身売買業者に引き渡す瞬間をおさえることです。
人身売買業者への引き渡しは孤児院内で行われ、他国の貴族を装う形で彼らがやってきます。
彼らの身柄を(特に担当者は)殺さずに確保しましょう。罪は裁かれる者を用意しておかないと浮くものなのだそうです。
その際、護衛の何人かと戦闘になるでしょうが、皆さんの戦闘力をもってすればそう難しくは無いはずです。
人身売買業者の身柄を確保したら、適当に証拠資料を押収して行政機関に匿名で突き出しましょう。こうなればもうグレーゾーンでもなんでもないので適切に孤児院を潰せます。
これらの作業の際、孤児院を燃やしてもグレンダラを殺しても特に問題ありません。どうせ解体工事はするので。
※余談ですがこの孤児院には下働きのシャーロットという21歳ほどの女性がいます。彼女はいわゆる売れ残った孤児であり、グレンダラからほぼ無賃金で働かされているようです。
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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