PandoraPartyProject

シナリオ詳細

Carpe diem

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング



「今日も我等を神様が導きくださいますよう」

 汚いシーツ。
 ボロ布と呼んだほうがマシな衣服。
 きっと何回も床に触れたであろう固いパンから埃を取ることも許されず、毎朝五時に起きて石(それ)を食む。
 乾いた日常を過ごす彼等の居る場所の名前を、<楽園の孤児院>。
 大いなる災いと呼ばれた冥刻のエクリプス以前に不正義をなした一家、或いは貴族たちの不正義の種(こども)を纏めて育成、支援する孤児院があった。
 否、元々は孤児ですらなかった彼等を『神の恩赦』で救い支える施設だ。
 父が居て。母が居て。友が居て。きょうだいが居て。
 そんな子供達から全てを奪った後の行き先。其処が今回の依頼先であった。

 正義の名の元に。
 神の御慈悲の元に。
 体よく取り繕われた正義のかたち。
 殺すことも断罪することも出来なかった『不正義達』の子供達は集い、共に暮らしている。
 天義の外れ。誰も知ろうとはしない楽園とうたわれた孤児院。誰かが訪問することもない。故に誰も真の不正義を知りはしない。
「貴方達が生きていられるのは神の恩赦なのですよ」
「だから、貴方達は頑張らねばなりません」
 何を? どう頑張れば良いのか?
 神様が居るのならば今こんなくそったれな環境に居ること自体が慈悲なのだろうか?
 固いパンを食べ不衛生なシーツで眠り正義をなせと躾けられることが正しいことなのだろうか。

 自らの意思の介入しない不正義のせいで、劣悪な環境に身を置かれて。
 惨めに生きることだけが、僕達に残された正義なのだろうか?

「貴方達を迎えに来るひとなんて、誰も居ないのですからね」

 シスターは僕をその手で叩いた。

 ――嗚呼、結局のところ。
 僕達は、不正義の子供でしかありやしないのだ。


 子供達を殺してください。
 穏やかそうな老女は笑顔で告げた。
「彼等は不正義の残した未熟な子供達でした。大いなる災いが来るまでは穏やかだったのですが」
 悲しげに小さく溜め息を吐いた彼女。
 ……曰く。子供達が老女や他の職員へと手をあげて居るのだという。
「ほら、私達も歳ですから。あと少し彼等が大きくなっては、もう手もつけようがありませんのよ」
 子供達のリストが手渡される。
 人殺しの子。汚職事件を起こした親の子。強盗の子。様々だ。
「……もしも本当に神様がいらっしゃるのならば、私達はどうすることが正しいのでしょうね」
 老女の問いかけは、かつての天義であれば不正義であったのだろう。
 であれば、今の天義に置いて。何が正義で、何が悪になるのだろうか。

NMコメント

 こんにちは!!!!!!!染です!!!!!!!!!!!
 悪依頼が出せると聞いてうきうきで出しました。

●依頼内容
 孤児達の殺害

 但し、カジュアルシナリオに置いてはどのような結果になろうとも成功になります。
 ので、皆さんの納得行く形で成功させてください。
 別に殺さなくてもいいですし、孤児院に油まいて火つけてとっとと殺してもいいです。
 依頼主からの生死は問われていません。

●状況
 夜間の孤児院に皆さんは招かれています(子供達と遊ぶ依頼という名目です)
 職員は帰宅しています。皆さんは宿泊するという風に子供達には伝えられていますが、実際は殺害を依頼されています。
 ご飯に毒を盛るもよし、ひとりひとり殺すもよし。生かすもよし。

●ロケーション
 天義の外れにある孤児院。
 小さな教会を改装して作られたであろうものです。教会にあるものはだいたいあります。小部屋もいくつか。
 外観は美しいですが中はそこそこ。子供達の部屋まではそう遠いわけではありません。
 子供部屋は不衛生です。

●エネミー
 10代前半から後半の子供達 ×30

 しっかりとした食事をしていなかったせいで写真よりも痩せ細っていることでしょう。簡単に死にます。殺せます。
 外部の人間には普通の態度を取りますが、シスターなどの人間には反抗的、または怯えます。
 足が速いので殺すなら逃げられないようにしましょう。または殺しているところを見つからないようにしましょう。
 いくら子供とは言え孤児院は彼等のほうが詳しいです。誰かを殺しているところを見つかった場合は隠れたり妨害に走ります。
 皆さんを警戒することはしません。

 リーダー格となる少年の名前はリオ。白髪の少年、不正義の子供です。
 子供達に何らかの交渉をするならば彼へプレイングをかけてください。

●依頼主
 シスターの老女。
 温和な老女です。かつての天義の思想が強く、子供達に手をあげていました。
 いくら屑でも子供の遺体を見るのは気分が悪いと死体の確認は望んでいません。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『天義』における名声がマイナスされます。

 また、この依頼は『カジュアルシナリオ』です。
 どんな形でも成功はしますが成功以上の判定は出ません。

  • Carpe diem完了
  • NM名
  • 種別カジュアル
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月28日 22時15分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
アオ(p3p007136)
忘却の彼方
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
水無比 然音(p3p010637)
旧世代型暗殺者

リプレイ


 嗚呼、そうだ。くそったれな朝が来る。
 けれど今日この日だけは違ったんだ。
 そう、なんだか素敵なことが起こる気がした。

 それが、最悪の知らせだと気付くにはあまりにも遅すぎたのだ。

 孤児院に足並みを揃えてきた正義のヒーローたる四人。
「手に負えないモンは処分する、っつーのはまー妥当か。愛着とかないのかね? もしくは、情が移ってるからオレらみてーなのに頼んだか」
「粗悪な環境で生活している彼らが成長し屋敷の外に出た場合、外界に悪影響を及ぼすのは明白ですからね。……今のうちに終わらせておく必要があるのでしょう」
 嗚呼、そうだ。でなければ呼ばれることもない。
 けれどどうしたって子供を殺すのは面倒だ。『悪しき魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)はやれやれと肩を竦めながら、表情の晴れない『旧世代型暗殺者』水無比 然音(p3p010637)を見やる。
「どうしようもない時というものはあるものだ。それが彼等にとっては、今日だったというだけのこと」
「だな。まァいっか。貰うモン貰えりゃオレは仕事するだけだし?」
 せせら笑った『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)は、持ち込む予定である肉をちらりとみやり肩を竦める。にひひ、と笑うことほぎに頷いた『忘却の彼方』アオ(p3p007136)はあくまで冷淡だ。
「なんだって関係ないよ。何の力も与えられず、何の意味も与えられず。世界に選ばれなかったヒトヒラの命はこんなにも軽いのだから」
 世界にすら見放された子供達。
 どうしたって死んでしまうのは明白なのに。なぜそんなにも笑えるのだろう。
 アオの胸の奥は、ひどく冷えていく。

 親の罪を子供に背負わせる理不尽も。
 大人を見て子供が育つ意味も。
 自身が可愛い故に気付いていないのか、見て見ぬふりをしているのか。

「ああ、きっとそうだろうな」
 どうだっていいのだと。ことほぎは一人先に歩き出し。

 相手の死を望んだ対価は自身の命でしかないことを、きっと依頼人たちも知るだろう。
 法の裁きなど生者の為の救いであって、奪われた命への償いにはなりはしない。

「……」
 然音は夜の闇に紛れていく。

 だから君たちにはおやすみと告げよう。
 恐怖も絶望も救いも安寧も全て纏めて。
 逃げても抵抗しても構わないよ。

「…………さて、いけるかな」
「ああ。行こうか」

 ルブラットがからかうように扉を開いた。
 アオはふ、と笑って。その扉を潜り抜けた。


(ガキ受けってなんだ? わっかんねぇ……)
 話を聞かせて欲しいとねだられたことほぎ。誰かに助けを求めるが、一人は屋敷の闇に紛れ、一人は食事の用意をし、一人は小動物を召喚していた。
「空を埋め尽くすような亜竜! 迎え撃つイレギュラーズ! とか、興味ある?」
「わあ、すっげー!!」
「聞かせてくれよ、ねーちゃん!」
 きらきらと瞳を輝かせた子供達に笑みをこぼしてことほぎは冒険譚を語り始める。
 英雄たるイレギュラーズ。
 敵を困難に揉まれつつも倒していく。
 空から飛来するドラゴンとの死闘。
 ……どれもちっぽけでありふれたイレギュラーズの日常にすぎない。
 それでも、子供達は嬉しそうに笑い、未来に思いを馳せる。
「ねーちゃんねーちゃん!」
「ん? 何だ」
「おれもイレギュラーズ、なれるかなぁ」
 なれやしない。どうせここで潰える夢なのだ。
「……ああ、きっとなれるんじゃね? オレも突然召喚されたし、アンタらも今ぽんって召喚されるかもしれねーだろ」
「……そっか!」
「あ、ずりーぞ!」
 それでも笑ってやった。
 どうせ叶わぬ夢なのだ。夢は夢らしく、期待をさせておくほうが都合がいいのだから。

 緩やかに。日が暮れていく。
 どうしてと嘆いたとて変わり無い。
 そうして、命も潰えていくのだから。

 決行はルブラットの食事が終わり眠りについた頃。
 まだ歳の幼い子供達は既に就寝した。
 アオとルブラットはそれぞれ席についた。

「諸君は神を信じているだろうか」
「……かみさま?」
「今は何方でもいいよ。何れにせよ主の絶対性が揺らぐことはあるまい」
「おにいさん、なんか変だね」
 お昼ごはんには不釣り合いな沢山のハンバーグを作りながら、ルブラットは紡ぐ。
「諸君は神の愛を信じているだろうか。現世の利益こそが神の愛と嘯く者もいるが、誤りだ。
 我々万人の下に等しく太陽は昇り、星は巡り、そして我々はここに立ち、生きている。それだけで、私達はこの上なく主に愛されているのだ」
 料理を運び、並んで、頂きますをする。
 …………その食事に毒が盛られているとも知らずに。
「なんか、ちがうとおもう……」
「ふむ、納得できないかね? ……君達は己に降りかかった理不尽を呪っているだろうか」
「だって、……とうさまや、かあさまのせいで、ここにいるんだもん」
「呪ってもよいが、その代わり、君達の隣に居る者を同じぐらい愛したまえ。すぐ隣に居る者を愛して、愛されて、そうして周りに目を向ける余裕が生じた時に、諸君は再び神の愛を信じられるだろう」
 食事を進める手が少しずつ止まっていく。
 肉を食らったものから、緩やかに。
「それでも信じられないか?」

「では言っておくが、私がここへ訪れ、他ならぬ君達にパンを恵んでいるのは主の思し召しだ。主は確かに、報われぬ人々を見て下さっているのだよ」

「君達のような、ね」

 ルブラットの言葉と同時。子供達の幾人かが、倒れた。

「ひっ!」
「……どこまで話したのだったかな。そう、主は諸君を見ているのだ」
 変色していく肌。
 青。青。青。
「大丈夫だ。君達はきっと信仰を取り戻せるし、神の国へ招かれるよ。だから、隣の者を愛してあげてほしい」
 隣にいたものは既に死んでいたりするのに。
 野菜から手をつけていた子供達が走って逃げ出した。
「それにしても、やはり毒死が一番美しいな」
「……じゃあ、行ってくるね」
「ああ。後は任せた」
 そうだ。終わりは皆、同様に理不尽なのだから。


 既に眠っている幼児達はことほぎの担当だ。
 ひとりひとり確実に、首を絞めて、ついでに折って。息の根を止めていく。
「……ねー、ちゃん?」
「あ? なんだ、毒盛ったっつってたのに。効きわりいのかな」
 否である。彼はただ、ハンバーグを食べていないだけだ。
 英雄譚に憧れ、ハンバーグを欲しがった子にあげた。ただそれだけ。
「どう、して? ぼく、なにもしてないのに」
 ぽろぽろと涙がこぼれていく。
 ことほぎの手に込められた力は弱くなることはない。
「ぇ、イヤそーゆー仕事だし。恨むんならお前の親を恨めよ」
「ぁっ」
 ひゅ、と息の途絶える音がした。
 やれやれと掌を払う。
「……そちらは終わりましたか」
「ああ、無事にな。後は頼んだぜ」
「案外、抵抗されるかと思ったのですが。……殺人に抵抗はないのですね」
「なんだよ、依頼だぜ? 罪悪感なんてあるワケねーじゃん。なァ?」
「…………そう、ですね」
 然音のことばに、ことほぎはからから笑って。

 我々は必要悪である。
 百の希望ある未来の為に
 千の現在(いま)を殺す大罪人である。

(さて、そろそろルブラット様の毒が回り始めた頃合いでしょうか……)
 確実に、一人残らず殺さねばならない。その為なら殺す必要がある。
(この足音……やはりあの食事に手を付けなかった子もいましたか。助けを呼ぼうとしているのか、逃げ出そうとしているのかは知りませんがそういう訳にはいきませんので……)
 追いかけて。
「何処へ行こうというのですか……? 逃げても無駄ですよ、視えていますから……」
 殺して。
 その繰り返し。
 苦しい夢に溺れた子供達の瞼を閉じて、然音は進んでいく。
「ひとごろし! こないでよおお!!!」
「……」
「ひっ、いや、いや! まだいきていたい、やめて!」
「そうでしたか……残念です」
 小さな亡骸の山が、積み上がっていく。
 血で汚れた己は最早怪物だろう。
 泣いていた子供達の表情が、脳裏から離れない。
(我々は必要悪である)

 ほんとうに?

 わからない。

 それでもただ、殺していく。
 そうする他、無かったからだ。

「あぁ、やはり私は……殺す事でしか生きられない」

「だって、この世界が望むから」
「……なら、人を殺したっていいっていうのか」
 アオは最後のひとりの恐怖の感情を伝い、向き合っていた。
 己が腕のように感覚が冴え渡った赤き茨は、少年を嘲笑うように地面を叩く。
「そうだね。君達は世界に望まれていないんだ」
「…………ああ、くそったれ」
 涙がこぼれた。


 ぐちゅり


 そうして、命が潰えていく。
 滴る雫は、アオを汚した。
「ねぇ、僕は正しかったと思う?」
 緋色の狐は踊り続ける。
 まるでアオの言葉なんか聞いちゃいない。
「おい、帰るぞー」
「……そろそろ、火の手が回る頃です」
「おっと、そうだったんだ。それじゃあ、いこうか」
「ああ。依頼は無事達成だ」

 マッチ一本。
 たったそれだけ。
 終幕は美しく、それから速やかに。

 燃え上がる火は孤児院の柱を燃やし、窓を歪め、そうして全てを燃やしていく。
 死体はもうきっと燃えている頃だ。『なんて不幸な事故だったのだろう』!
 駆けつけたイレギュラーズは為す術もなく、ただその火の手を見守るだけだったと、翌日の新聞が語った。
 悲劇のヒーロー。
 救えなかった命を悔やむ。
 ……そのどれもが、嘘である。
 その日、楽園とうたわれた孤児院が、地図から消えた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

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