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シナリオ詳細

<深海メーディウム>シャークな海水浴と夏の思い出

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鮫好きのフリーパレット
 情報屋の男――劉・雨泽(p3n000218)はこの夏一番頭を悩ませた。
「サメとおよいでみたいの」
「鮫と……?」
 幾度かフリーパレットの願いを聞いてイレギュラーズたちに助力を求めてきたけれど、また想像の斜め上の願いが飛び込んできたせいである。
「いっしょにおよいでね、えいっておさかなつかまえて」
 多分銛で刺して捕まえたいのだろう。えいっとフリーパレットが手で何かを突くような仕草をした。
「おさかなをやいてたべて、それからねスイカをね」
「わかった。海遊びがしたいんだ?」
「うん。ぼくたち、サメとうみあそびしたい」
「鮫かぁ……」
 どうやらこのフリーパレット、鮫に対しての何らかの拘りがあるらしく、とにかく二言目にはサメサメ言っている。魂の集合体であるフリーパレットだが、鮫好きの魂のみが何故かぎゅぎゅっと集まってしまったようだ。鮫好きは鮫好きを呼ぶのかも知れない。
 ともあれ、悩むべきはフリーパレットの願いを叶える方法だ。
 どうにか安全にフリーパレットの願いを叶える方法はないか――。

 ――という訳で!
「本物の鮫は危ないからわしらに声が掛かったんじゃな」
「成程な」
 得心した様子で深く頷くのは、鮫の海洋種の海音寺 潮(p3p001498)と波の精霊種で鮫型の姿のリック・ウィッド(p3p007033)だ。ふたりとも種類とサイズの違うイケサメンズである。
 リックよりも更に小さな鮫『ポチ』が潮の側でふわふわふわふわと移動するのを目で追っていた少女が「あれっ?」と長身の潮と小さなリックの間で首を傾げ、大きな三角な頭がぐにゃりと歪む。サメに捕食されている――ようなサメボディスーツを着たリコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)である。
 いかにも鮫! なイケサメンズのふたりに声が掛かった理由はわかる。けれど、確かにこの夏は鮫っぽい格好をしているが、リコリスは気高い狼だ。どうして自分が呼ばれたのかがさっぱりと解らない。
「いやぁ、鮫ジャッジをしようかなって」
「サメジャッジ」
 視線を雨泽へと向ければ楽しそうに笑いながらそんなことを言うから、思わず鸚鵡返し。
「フリーパレットにとって何処までが鮫判定になるか解らないからね」
 リコリスのようなスタイルが判定を通るのなら、他の人もボディスーツや工夫次第では鮫だと思われる、と思っていいとのことらしい。なるほど?( ‘ᾥ’ ) よく解らないけれど、リコリスは解ったような顔をした。
「それじゃあフリーパレット、この人(潮)は?」
「おおきいサメー」
「この人(リック)は?」
「ちいさいサメー」
「この子(ポチ)は?」
「ちいさいサメー」
「この子(リコリス)は?」
「うーん……サメー?」
 フリーパレットは首を傾げるけれど、リコリスも一応鮫認定。
「大丈夫そうだし、一緒に泳いだりしてあげてほしいな」
 場所は押さえてあるから、と雨泽は一番大きな潮へと地図を手渡す。
 地図に丸がついているのは、三番街(セレニティームーン)シロタイガー・ビーチ。その一角を貸し切りにしてあるらしい。『鮫が出たー!』と慌てさせないように、の配慮である。
「おう。任せとけ。おれっちが満足させてやるぜ」
「ポチも喜んどるようじゃしのう」
「あれ? 雨泽くんは行かないの?」
「僕、泳ぐのは苦手で」
 解りやすい嘘を吐かれた事にリコリスは気付いたけれど、ふぅんと流す。リコリスはお師匠のオトナな嘘だって見逃してあげるオトナなレディなのだ。
 大丈夫そうなことを確認するようにリック(精霊種鮫)と潮(海洋種鮫)とポチ(ミニ鮫)とリコリス(犬科鮫)をぐるりと見回した雨泽は、満面の笑みを浮かべて。
「それじゃあ、フリーパレットのことをよろしくね」
 そう言って、イレギュラーズたちに鮫好きのフリーパレットを託した。

 今日はサメとビーチと海遊び!
 フリーパレットとともにビーチへ繰り出そう!

GMコメント

 頭が夏になっている壱花です。
 鮫は危ないので、サメっぽい人たちを集めてみました。

●シナリオについて
 フリーパレットの願いを叶え、竜宮幣を得ましょう。
 今回の個体のお願いは『鮫と海遊びがしたい』です。フリーパレットと海遊びをしましょう。
 時間帯は昼間。民間の人たちの誤解を招かないよう、ビーチの一角を貸し切っています。
 サメさん(サメっぽい格好等)だと「サメいっぱい!」とフリーパレットは喜びますが、サメじゃなくても遊んでくれる人がいっぱいなのは嬉しいので喜びます。
 浜辺には大きなスイカがふたつと、薪。それからパラソルや休憩スペースがあります。獲った魚は薪を使って焼いて食べられます。他に必要な機材等がありましたら持ち込んで下さい。
 水着かサメな格好で来て下さい。プレイングには「水着着用」「サメボディスーツ」等でもOKですが、イラストのタイトルが書いてあると見に行きます。リコリスさんはサメ固定です。

●フリーパレット
 カラフルな見た目ですが、死んだ人たちの未練であったり、思念の集合体です。
 竜宮幣に砂鉄のように結びつくことで実体化しているため、願いを叶えて未練を晴らしてあげることで成仏し、竜宮幣をドロップします。
 鮫グッズに興味があります。

*フリーパレットのしたい海遊び
 ・鮫と泳ぎたい!!!!!(メイン)
 ・魚を捕まえてお昼ご飯に塩焼き
 ・スイカ割り

●シレンツィオ・リゾート
 かつて絶望の青と呼ばれた海域において、決戦の場となった島です。
 現在は豊穣・海洋の貿易拠点として急速に発展し、半ばリゾート地の姿を見せています。
 多くの海洋・豊穣の富裕層や商人がバカンスに利用しています。また、二国の貿易に強くかかわる鉄帝国人や、幻想の裕福な貴族なども、様々な思惑でこの地に姿を現すことがあります。
 住民同士のささやかなトラブルこそあれど、大きな事件は発生しておらず、平和なリゾート地として、今は多くの金を生み出す重要都市となっています。
 https://rev1.reversion.jp/page/sirenzio

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 このアイテムは使用することで『海洋・鉄帝・ラサ・豊穣』のうちいずれかに投票でき、その後も手元にアイテムが残ります。
 投票結果が集計された後は当シリーズ内で使える携行品アイテムとの引換券となります。
 ※期限内に投票されなかった場合でも同じくアイテム引換券となります

 それでは、素敵なプレイングをお待ちしております。

  • <深海メーディウム>シャークな海水浴と夏の思い出完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)
氷の狼
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
花でいっぱいの
物部 支佐手(p3p009422)
黒蛇
レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)
青薔薇救護隊

リプレイ

●シャークに首ったけ
 ざざんと鳴る波が押し寄せては返す砂浜に、サメが集合していた。
 何を言っているかわからない? 文字を読んだままです。深く考えてはいけない。感じろ……夏を感じるみたいに、鮫を感じるのだ……!
「わぁ、うれしいな。うれしい!」
 ほら、フリーパレットは喜んでいるので万事オッケーです。オッケーだね? いいね?
 ぴょんぴょんぴょんと飛び跳ねて、フリーパレットは大喜び。
「サメおじちゃん、ポチとヒレつないでもいーい?」
「ああ、構わんよ」
「フリーパレット様、スタウト様も良いようですよ」
「わーい」
 ちゃんと保護者の『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)と『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)から許可を得て、ポチと陸鮫のスタウトとヒレを繋いでルンルンルン。
「僕もね、今日は鮫なんだよ」
 どうかな?
 ゆったりとした白いパーカーを羽織っている『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は、おもむろに頭に顔出しタイプの鮫の被り物を被り、首を傾げてみせた。
 どうかなと言うことはつまり、サメジャッジ希望者である。
「うーん」
 悩んでいる。
「うーーーーーーーーん」
 フリーパレットがめちゃくちゃ悩んでいる。
「サメかもー?」
「あ、これでもいいんだ?」
「フリーパレット様も鮫になりますか?」
「ぼくたちもなれる?」
 はいと大きく頷いたニルが三角形の何かを差し出した。
 銀鼠色に、ちょっぴり鎌の先のようなトンガリ。それから紐のついたそれは、胴に巻いて使う鮫の背びれ型浮き具(ビート板)である。
「どれ、着けてあげよう」
 潮が装着を手伝ってやれば、フリーパレットもサメになった。
 またひとり、サメが増えた。
「お。似合ってるぜ、フリーパレット」
 お揃いだなと『ウォーシャーク』リック・ウィッド(p3p007033)がニッと笑みを向けると、フリーパレットは「ぼくたちもサメ!」と喜ぶ。
 そんなサメに溢れ、サメに賑わうフリーパレットを微笑ましげに見た『赤頭巾の為に』リーディア・ノイ・ヴォルク(p3p008298)は――内心、困惑していた。愛弟子の『お師匠が良い』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)から「フリーパレットを助けてあげるんだ」と言われた時はなんて優しい愛弟子なのだろうかと感動し、情操教育(子育て)が成功していると心の中でガッツポーズをしたものだ。
 それなに。
 それなのになぜ。
 何故この場にはサメで溢れているのだろう?
 事情を知らずにリコリスに連れて来られたリーディアはひどく困惑していた。
「お師匠! どう? 【( ‘ᾥ’ )賞】を受賞した水着だよ!」
 ( ‘ᾥ’ )賞って何? わからない。わからないこと尽くしだ。
 だが!
「入賞してよかったねリコリスさん、私も鼻が高いよ」
 得意げな顔で何故かびったんびったんぐにょんぐにょんと砂浜で跳ねている愛弟子にして、この師匠。弟子にはとても甘かった。
「ははあ、鮫。鮫と遊びたい、と」
 しかし如何に『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)であろうとも、竜巻に乗って空を飛ぶ鮫や三つ首の鮫や蛇口から出てくる鮫を捕まえてくることは難しい。
「では、海を背にポージングしながら『イケメンは死なない』と言う遊びではどうしょうか」
「なぁにそれ」
 どうやら違うらしい。要求水準の高さに密かに衝撃を受けた支佐手は密かにぐっと拳を握る。ラッシュガード姿で来たが、海に入らずにやることが出来た瞬間だった。わしが真の鮫体験をさせたります!
「皆さんお元気そうですね」
 海風に揺れる髪をそっと押さえた『青薔薇の御旗』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)は、車椅子に座って。砂浜では動きが制限されるから、ビキニ姿に薄手のブランケット、日焼け止めもたっぷり塗って、日差し対策をばっちりしてパラソルの下で太陽みたいに賑やかな仲間たちを見守っていた。
 青い海の前で潮の声に合わせてラジオ体操を始めた面々はとても賑やかで、眺めているだけでも楽しめそうだ。
 という訳で本日のメンバーは、サメ、鮫、鮫、狼、クラゲ、サメ、イケメン、令嬢でお送りします。
 なお、イケメンと令嬢が揃っていてもロマンスは発生しません。令嬢には婚約者が居るし、今日はサメによるフリーパレットのためのシャークな一日だからです!

●レッツ・シャークフォーメーション!
 青い海に、ぷかぷかと浮き輪が浮かんでいる。
 浮き輪に身を預け、波に揺らされるまま海を漂うのは心地よく、ヨゾラはそっと瞳を閉じてそのひと時を堪能していた。――迫る恐怖に気付くこと無く。
 少し離れた場所に特徴的な背びれが現れ、それは音もなく静かにヨゾラへと迫り――
「どーーーーーーん!」
「……うわーーサメだーーーー!!」
 鮫の背びれをつけたフリーパレットの体当たりに、ヨゾラが楽しげに笑った。
 青い海に、ぷかぷかと浮き輪が浮かんでいる。
 浮き輪に身を預け、波に揺らされるまま海を漂うのは心地よく、ヨゾラはそっと瞳を閉じてそのひと時を堪能していた。――迫る恐怖に気付くこと無く。
 少し離れた場所に特徴的な背びれが現れ、それは音もなく静かにヨゾラへと迫り――
「どーーーーーーん!」
「……うわーーサメだーーーー!!」
 鮫の背びれをつけたフリーパレットの体当たりに、ヨゾラが楽しげに笑った。
「レッツシャークフォーメーションじゃ!」
「わかったの!」
「了解だぜ」
 潮の一声で、背びれが浮かんで潜れないはずのフリーパレットがちゃぷんと海水に消える。フリーパレットは気付いていないが、リックが水の精霊たちにこっそりと呼びかけてくれているお陰だ。そのおかげでフリーパレットはリックや潮、ポチやスタウトたちと、スイスイ泳げていた。
 ――シャークフォーメーション。この場においてのそれは、獲物を中心としてぐるぐる泳ぐアレである。
 プカプカと浮き輪で漂うヨゾラの周りを皆で背びれを見せてグルグル廻れば、どこからかデーデン、デーデンと音楽が聞こえてきそうな臨場感。
 そんな中でポチがすりっとヨゾラの足にすりついた、その瞬間。わーっと楽しげな悲鳴を上げ――ヨゾラの姿が浮き輪の中にスポンと消える。彼は鮫の犠牲となってしまったのだ……。
 まあ、そんな訳もなく。
 ヨゾラは海中でフリーパレットと一緒にクスクス笑いあい、フリーパレットは潮に勧められてポチの鼻の頭をわしゃわしゃ撫でた。
「昼時前に、狩りをしようぜ!」
「そうじゃのう。腹を満たしてから遊ぼうか」
「ぼくたちでもえいってできるかなぁ」
「追い込み漁にしようぜ。沢山魚を追い込めば、フリーパレットも捕まえられるはずだぜ」
「うむ、名案じゃ。ほれ、フリーパレット、わしの背びれに捕まるとよい」
「ふたりはそこで待っていてくれ!」
「いってきまーす!」
 潮にくっつくフリーパレットに、フリーパレットにくっつくポチ。その隣をリックがついて、全力遊泳。ポコポコ上がっていた水泡がびゅんびゅんと頬を撫で、景色が流れていく様にフリーパレットは目を丸くした。
「わあ、みなさまとってもはやいのです!」
 ぷかぷか泳ぐクラゲ水着のニルは、鮫たちの遊泳にがんばってくださーいと声援を送った。

 一方その頃、浜辺では。
「リコリスさん泳がないのかい?」
 大好きな師匠がそういうけれど、リコリスは散歩を嫌がる柴犬みたいな顔をしてぶんぶんと頭を振ってイヤイヤのポーズ。
 手を引いて泳いであげるよと言われたって、抱っこで入ろうかと言われたって、今日のリコリスは砂浜から動く気はない。だってそんなの、レディっぽくない。
「なんじゃ。そこの二頭身の犬とも鮫ともつかぬ存在は真の鮫にもなりきれんのかの」
「なにを――って……」
 そういう支佐手は何をしているのかと言えば、海辺でハリボテを作成している。
 もう一度言おう。海辺でハリボテを作成している。
 しかもなんか結構力作感のある、水しぶきを上げて襲いかかろうと大口を開けている鮫の巨大ハリボテである。どうやらそれこそが彼の真の鮫――巨大にして全てを喰らい、見る者全てに恐怖を与える存在を具現化したもののようだ。
「そんなのサメじゃない!」
「はん! 犬っころには鮫の違いがわからんようじゃの!」
「ボクは高貴な狼でレディだからわかるよ!」
 言い合うリコリスと支佐手。
 リコリスさんは元気だなぁと見守るリーディア。
「皆さん、水分補給も忘れずにしてくださいね」
 賑やかなその姿を見ているのは飽きることがなく、楽しい声に誘われるように車椅子を降りて義足で波打ち際まで出てきていたレイアはそっと波が白砂を浚う海水に足を着けていた。
(これが海水、これが海ですか……)
 無表情ながらも、レイアは静かに海を楽しんでいる。
「レディとは、ああいうお方を言うもんじゃろう!」
「うわああああん、お師匠ー!」
 製作途中の力作をけなされた支佐手が吠える声も、語彙力が足りなくて言い返せないリコリスの声も、波がざざんとさらっていく。

「見て下さい、フリーパレット殿」
「なぁに?」
 銛でえいっと出来て――勿論リックがいっぱいサポートしてくれたからだが――大満足なフリーパレットは、リックが火を付けるのを眺めていた姿から顔を上げて支佐手を見た。
 どうやら『真なる鮫』を見せてくれるらしい。
「ってうわーっ! パッケージと本編のクオリティが全然違うB級サメ映画みたいな奴が襲ってきた!」
 リコリスに襲いかかる支佐手力作の鮫(ハリボテ)。
 やーんっと逃げるリコリス(サメ)。
「ほれ、この様に……ってうおおお、波が! 波がわしのハリボテを!」
 波に連れ去られていくハリボテと、必死に海に向かって走り出す支佐手。
 丁度魚を水中銃でバシッと獲って海から上がってきたリーディアの足にびたんとくっつくリコリス。
 魚を落とさないように抱えて、どうしたのリコリスさんと頭を撫でてやるリーディア。
 カオスである。
「すごーい」
「たのしいですね、フリーパレット様」
「うん、たのしーい」
 全部お芝居だと思ったのか、フリーパレットは楽しげにぺちぺちと手を叩き、すごいねーとニルと顔を見合わせた。
「お魚、焼けますよ」
「食べごろじゃぞ」
「フリーパレットは一番大きいのをやるぜ」
「ありがとー」
 はいっとレイアから棒に刺さった塩焼きを手渡され、勲章みたいにじゃーんっとフリーパレットは魚を掲げる。初めて銛で獲ったお魚だ。ちょっとワクワクしてしまう。
「おいしくなぁれをしましょう」
「おいしくなるの?」
「はい、おまじないです」
「おいしくなぁれ! いただきまーす」
 ふーふーしてからカプリとすれば口内いっぱいに海の味。
「すごーい! お師匠、水中銃も使えるんだ! ボク、お師匠の獲ったお魚食べたい!」
「はいはい、リコリスさん。ちょっと待ってね」
 悪しきハリボテがいなくなり、リコリスは上機嫌。大好きなお師匠が美味しいお魚を食べさせてくれて、それを見たフリーパレットもはいあーんっと差し出してくれて、更に上機嫌! ……哀れな残骸となった元ハリボテを抱えて戻ってきた支佐手が調理を始めるまでは。お師匠のほうがお料理上手だもん!

「そこだー!」
「違う違う、もっと右じゃよ」
「えーい、ここだー!」
 ぶんっと空振りしたフリーパレットが転ぶ。
「おしかったぜ、フリーパレット。次は当てられるはずだ!」
「もう少し右、ああちょっとだけ左……何故後ろを向いたんだい?」
「お師匠の声が聞こえたから!」
 嬉しいけれど、ちょっと趣旨が違うかなぁ。
「……えい! あれ?」
 空振りしたら交代の、割りたい人は交代制。
 振り下ろしても何も無かったことに目隠しからチラリと瞳を覗かせたニルは、むずかしいですねとはにかんだ。
 誘導する側も苦闘しており、太陽の下で賑やかな声がわぁわぁと響いていた。
「ふふー、おいしいね」
 皆で協力して割ったスイカは、赤い宝石みたい。黒い種がツヤツヤ光って、レイアが食べやすいように並べてくれたスイカに手を伸ばすフリーパレットはとっても嬉しそう。
 口にしたスイカはリーディアが氷で冷やしてくれていたから、冷たくてとても美味しくて、いくらでも食べれてしまいそう。けれどもシャクシャクと食べれば、口の中もお腹の中も水分でひんやりしてしまうから、食べすぎないようにねと優しく声を掛けてくれるのも嬉しかった。
「多ければリーディア殿の氷で氷菓にしてもよさそうですの」
「ああ、いいね。熱中症にもならないように気をつけないといけないからね」
「ねぇねぇ、これできる?」
 ( ‘ᾥ’ )三∵ペペペッ!
 リーディアがちょっと目を離せば、リコリスが楽しいよ飛ばそうよとフリーパレットを誘っている。こら、リコリスさん! そういうことをすると、他の子が真似しちゃうでしょ。
「ぺぺ……むずかしい」
「ニルもやってみます!」
 ほらー。
「新聞紙を敷いたので、こちらにどうぞ」
「飲み込まないようにするんじゃぞ」
 はーいっと揃って響く声に、潮が良い返事じゃと笑った。

 レイアが飛行で人力ジェットスキーをし、楽しくニルとヨゾラが笑って。
 リックが語るさめでんせつに瞳を輝かせて。
 小腹が空いたら支佐手が作ってくれたバター焼きや、潮が焼いてくれた焼きおにぎりを食べて。
 楽しく笑って食べて、時間はあっという間に過ぎていった。
「フリーパレットや」
 沈む夕日を見るフリーパレットの瞳は満ち足りたもので。声を掛けた潮に振り返ったフリーパレット、は既に夕暮れの中に輪郭がゆらゆらと揺らめいていた。
「今日の記念に持っていきなさい」
「なぁに?」
「鮫の歯じゃよ」
「わあ! サメのは! はじめてさわった!」
 フリーパレットは弾けるように笑って――そうして潮が握らせた歯が、ぽとりと砂の上に落ちた。
 空気に溶けるように消えて、夏の風景の一部になったように、フリーパレットは成仏したのだ。
「楽しかったか、フリーパレット。おれっちは楽しかったぜ!」
「いっぱい遊んだこと、ニルは忘れないのですよ」
 少しだけ流れるしんみりした空気に、波の音が優しく響いた。
「夏も終わっていきそうですの」
「何だか少し、寂しいね」
「――では、花火でもしませんか?」
 レイアの提案に勿論あがるのは、賛成の声。
 すぐに闇の帳が降りてきた海辺で、カラフルな夏の思い出の軌跡を描いた。
 キラキラ、燦々、赫赫と。
 きみの笑顔といっしょに。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

シャーーーーク!
フリーパレットはたくさんの遊んで満足しました。
フリーパレットのために楽しいひと時をありがとうございます。

皆さんにとっても素敵な夏の思い出になりますように!

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