シナリオ詳細
<Bloom*Bloom>夢を見てる
オープニング
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夢を見たの。
お母様と、それからお兄様。お父様も居たようなきがするわ。
お母様はすごくからだがよわいひとだったけれど。私のことを、ちゃんとあいしてくれたのよ。
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「……ぅえ?」
フローラの朝はとっても遅い。従者に起こされるのを待っているから。というより気が済むまで寝ているから、起こされるまではぐうすか眠っている。
寝起きはふらふらふわふわ、マイペースに磨きがかかる。そんなフローラ。が。自力でちゃんと起きた。
(……起きちゃった)
だから、普段は従者がやってくれるカーテンをばさっと開けてしまうのだってやったし、着替えも化粧も自分でした。
けれどなにか物足りないような気がして、どうしてこんなにすっきり起きられたのかを考えてみることにした。
女王にしっかり近付いているから? いや、今も女王だ。足りないとしたら己の精神面ではあるが、それはさておいて。
だとしたら昨日は疲れていたからぐっすり眠ってちゃんと起きたから? いや、昨日は特に何もしていない。
うーんうーんと頭を悩ませるフローラ。しかし考えても何も浮かばないのでベッドにぼすんと腰掛けたそのときだった。
「あ!!」
そうだ、と思い出す。いつもと少しだけ違ったルーティンをしたのが昨晩だ。といってもそこまで違うわけではない。ちょっとだけ変わった紅茶を飲んだのだ。
紅茶を飲むのが好きなフローラは、花の紅茶を飲むことを一層愛している。それはこの世界が花で満ちているからかもしれないが。
「この紅茶……?」
ちらりと缶の底を覗けば魔法陣が書き込まれている。思わずガッツポーズ。
「こんな面白いもの、みんなで楽しんで使わなくっちゃ!」
ふんす、と意気込んだフローラは。さっそくカナタを呼び寄せたのであった。
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「ということでね、今日はみんなに王城でのお泊り会への招待状を届けに来たんだ」
四枚の封筒を見せて笑ったカナタ。
曰く、王城で紅茶を飲んでから一日泊まってほしいらしい。
「なんでも、その紅茶をのんで寝ると大切だった記憶が思い出せるらしいんだ。
例えば、自分が忘れていたとくべつな約束。
例えば、もういちど思い出したい大切なプロポーズ、などなど。
どうしたって失いたくないものを、もう一度追体験させてくれるのだ。
「すこしだけ不安に思うかもしれないけど、本当にちゃんと起きて帰ってこられるから大丈夫」
だから、よければ検討してみてほしいな。
カナタはうんと伸びをしてから、はつらつと笑った。
- <Bloom*Bloom>夢を見てる完了
- NM名染
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年08月20日 22時10分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
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「フローラ女王様、素敵なお泊り会にお招きいただけてとても嬉しいですわ。このような会に呼んでいただけるなんて初めてだから少しドキドキしています! ふふふっ」
「ようこそ! ゆっくり楽しんでいってね。お菓子もたくさんあるから!」
楽しげに声を弾ませた『骸骨姫』フローレンス ポー(p3p010733)。両手でカップを持つ。柔らかくて甘い紅茶の香りがした。
「とても良い香りのお茶……わたしはどんな夢をみるのかしら。素敵な夢が見れますように」
ゆっくりと歓談を済ませた後は、用意された個室のベッドに身体を沈めた。
フローレンスを抱きしめながら、ごめんなさいと嘆く声が聞こえる。すすり泣く女性の声。その女性を励ますように声をかける男性。
(ああ、お母さまとお父さまだわ。お会いしたことはないのに、何故かわかるの……)
父母の美しさを妬んだ悪しき魔法使いの呪いによって、肉体を持たずに骨の姿で産まれてきたフローレンス。
肉も、皮もなく。ただ煌めく赤い心臓(ガーネット)。
「貴女に悲しい運命を背負わせてしまってごめんなさい」
「側にいてやれなくてすまない」
小さな赤子の頬を撫でる両親の顔は、愛で満ちていた。
「……弱い父母が貴女に贈れる最初で最後の魔法よ。受け取ってくれるかしら」
見つめ合い頷きあった父母。きっと決めていたのだろう。
「――貴女の名前は「フローレンス」。貴女の生きる道が、悲しい運命に負けないくらいの幸せの花で溢れますように。花が咲き誇るあの丘のように彩り豊かなものになりますようにという願いをこめて贈ります」
沢山の花が入れられたゆりかごに横たわり、産声を上げ続けるちいさなフローレンス。
「例え離れていても、共に在れなくても、貴女の幸せを一番に願っているわ……――」
「おはよう、小鳥さん達」
フローレンスのヴェールが風に揺れた。ちゅんちゅんと鳴いていた鳥たちはフローレンスに挨拶を返すと、空へと羽ばたいていく。
「お父さま、お母さま、フローレンスは大丈夫です。確かに幸せの花で溢れる人生を生きておりますわ」
苦しいこともあるけれど。花道を歩いている。きっと、彼等が喜んでくれるであろう、幸せの花の咲いた道を。
(きっと、あの魔法のお茶がなければ思い出すことができなかった温かな記憶……生まれたばかりの頃の夢……)
「大切な思い出をくださったお礼をフローラ女王様にしたいわ! ケーキを焼いても良いか伺ってみようかしら」
きっと了承が返ってくることだろう。女王の好物は甘いものだから。
フローレンスは、花の広がる世界で笑みを浮かべた。
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「不思議な紅茶もあるものですね。元の世界にいた頃は毎日アフタヌーンティーをしていましたが……懐かしいです」
世界をこえて。また、世界をこえて。『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)は今こうしてパジャマパーティをしている現実にふ、と笑みを浮かべた。
紅茶を口に含み、緩やかに眠りへと落ちていく。
真っ暗だ。真っ暗で、誰もいない。
「誰か」
助けを呼んだ。
誰も来なかった。
声が暗闇に溶けていく。
「誰か」「誰か」「誰か」
――どうした、と誰かの声。
黒から齎される声。
「助けて。助けて。怖いの。
真っ暗で、誰もいないの」
ひく、ひく、と小さく肩を震わせる。
泣きじゃくるメルヒェンの頭を、誰かがそっと撫でた。
――大丈夫。怖くない、怖くない。
頭上から降ってくる優しい声。
怯えていたはずなのに。怖かったはずなのに。
知っている。私は――メルヒェンは、この声の主を知っている。
「……にぃ、さま……」
怖い夢を見たとき、眠れないとき、そばにいてくれたのは彼だった。
母様はお忙しくて、いつも自分だけに構ってくれるわけではない。
泣きじゃくる私はきっと母様にとって面倒な存在だったのかもしれない。
恐れていた。捨てられることを。怖がっていた。お前はいらないと言われることを。
生まれたばかりの私の面倒を見てくれたのは彼だった。
彼はいつも難しい本を読んでいて、物思いに耽っていることが多かった。
けれど私が泣いていると、離れた場所にいても必ず見つけてくれた。
まだ文字の読めない私のために、絵本を読んでくれた。
穏やかだった思い出。
大切だったはずの記憶。
今眠るメルヒェンの心を逆撫でていく。
だいすきだった。
だいすき”だった”。
あのときまでは――。
跳ねるように飛び起きる。
忘れていたわけではない。
けれどできれば、奥底に仕舞っておきたかった。
「……嗚呼、なんて、滑稽なんでしょうね……」
毎日アフタヌーンティーをしていた。そんな、過去の世界での日々。
ただのメイドだと名乗るまでのメルヒェンのこれまで。
遠き日が思い出されるようで、目眩がした。
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「この国で魔法のかかった紅茶というのは一般的なのかい、女王サマ?」
「そりゃもちろん、魔法とお花の国なのよ、此処!」
「ふふ、そうかい。ヒヒ……我(アタシ)は忘れるということは少ないけれど、それでも優しい記憶は何度でも思いだしたくなるものだよねぇ」
髪をとかして遊ぶ妖精たちを撫でながら『闇之雲』武器商人(p3p001107)は笑った。
「ゲームに寝る前のお話、なんでも付き合うよ」
「もう銀のフルールはなにがしたいか決まってる?」
「ああ。思いだしたい記憶はたくさんあるけれど、やはりあのコの夢がいいね」
「じゃあぼくたちもじゃましない! おかしもたくさんあるけど、ねてほしいもんね」
「うん! わたしたち、すてきなゆめをみてほしいから、おふとんをふかふかにしておいたのよ!」
「そうかい、そうかい。じゃあ隣人たちに甘えて、今日は眠らせてもらおうかな」
「ふふ、そう? おやすみなさい、武器商人!」
すぅ、と魔力が溶け込んでいくのが武器商人にはわかった。
拒絶することなく受け入れれば、それは夢へと作用する。
ずっと、ずーっと昔。まだ陸や人に興味のなかった頃。
そういう気分だったから、あのコの背に乗せてもらってゆっくりと海原を進んでいる。
潮風の匂いだとか、空の日射しだとか。そういうのがまだ気に入らなくて、ぼんやりしていた頃。
きっと片手どころか小指だけで壊すことが出来た。でもそれをしなかったのは、きっとどこかの未来でそれを愛する日が来るかもしれないことを信じていたから。
海の青、空の青、真っ白なあのコの身体。
今と比べたら遥かに退屈で、でも確かに穏やかに過ごしていた日々。
『あれはなに』
『あれは──』
今は亡き白鯨の君との記憶。
もう眠ってしまった白鯨の君。
きっとまた巡り会えるだろうし、この世界にも『居る』かもしれない。
『またね』
白いあのコが。笑ったような気がした。
緩やかに目覚め、覚醒していく。
眠りというのは本来は意味を持たないけれど、人間に馴染んでいった武器商人にとっては楽しい営みの一つであった。
「あ、おきた!」
「どうだった、どうだった?」
「ふふ、良かったよ。我(アタシ)はヒトリではあっても孤独ではないと教えてくれた、原初のトモダチの記憶は我(アタシ)にとっても忘れ難い。こういう風に思い出せるのもいいものだねぇ」
「よかった!」
「銀のフルールしあわせそう。うれしい!」
「ああ。懐かしいトモダチの夢は……穏やかになれるものだね」
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(大切だった記憶の追体験とは不思議な紅茶だな……。大切だったということは、最近の大切な記憶だと見れない感じか……?)
ふぅむ、と首をひねった『カースド妖精鎌』サイズ(p3p000319)。
(なかなか活用が難しそうだな……しかし下手な利用したら依存性がやばそうだな……そこら辺は注意しとかないとな)
試しに不思議な紅茶を使ったケーキでも作ってみるか、と厨房を借りて。料理技術とファーマシーの力を駆使し、紅茶の力を維持したままのケーキを作っていく。
クリームたっぷりでフルーツをたくさん使った、美味しいデザートを作るのだ。
「寝る前に食べるには少しよろしくないかもしれないが、まあたまにはいいのでは?」
「……太っちゃうわ!」
「大丈夫ですよ、多分。美味しくて甘いケーキゆえに変な夢は見ないとおもいます」
「あらそう? なら一切れ頂くわ!」
最近食べてばかりかもとやや危機感を抱いたフローラに思わず笑みが溢れた。
紅茶の効果もあってか、二人はゆっくりと眠っていく。
暖かい紅茶がサイズの眠っていた記憶を呼び起こす。直前にフローラと話していたこともあってか、仲もよくお世話になっている友人の夢をみた。
それはまだ混沌に来たばかりの記憶。
上質な鍛冶屋の設備を得られなくて、まともなメンテナンスが出来ずに、コアが不調になったころ。
メンテナンスはサイズにとっては生命線に等しい。ので、やや危機感を覚えながら混沌を動いていた。
なんとかありふれた設備で繋いでいたもののやはり無理をすると人間でも不器用性でも倒れてしまう。そしてサイズも例に漏れず倒れた。
行き倒れた時に赤いバンダナの鍛冶屋の少女、ルチル・アーゲタイトに砥石を貰って、助けられた記憶だ。
あの砥石がなければ今サイズはここに居なかったかもしれない。
今も倉庫を借りてたり、設備を借りたり、鍛冶屋として世話になっている。
鍛冶屋としてのサイズがあるのは彼女のおかげと言っても過言ではない。こともないかもしれない。
「あら、起きた?」
「日頃の世話になってる礼でも送らないとな……あれ、フローラ様は寝てないんですか?」
「まぁね。ふふ、心配?」
ふふ、と笑みを浮かべたフローラの表情は、心から笑っているようには見えなくて。サイズは不安を覚えたのだった。
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
お高めのホテルに止まって数日ぼーっとしてみたいです。どうも、染です。
今回は王城でパジャマパーティです。準備は宜しいでしょうか。
●依頼内容
王城で不思議な紅茶を飲み一泊する
女王様からの依頼です。不思議な紅茶を手に入れたのだという女王様は、皆さんにもその不思議な紅茶を共有したいようです。
花の世界ということだけあって花の紅茶です。種類は紫苑。
追憶の花言葉の通り、大切だった瞬間の記憶をもう一度呼び起こします。
ちなみに紅茶の味付けを帰れば夢の方向性(恋愛、復讐などなど)を変えて聞きます。
●世界観
魔法世界『ブルーム・ブルーム』。
花と魔法で満ちた世界。魔法で文明が築かれています。
基本的には物理攻撃よりも神秘攻撃がメインの世界です。
また、ファンタジーな世界ですので、妖精やドラゴンなど、ありえない生物がいます。
●フルールについて
フルールとは、花冠師のこと。
魔法や魔術を使う人々のことを指し、この世界に住まう人々の半分は花冠師です。
現地の人々はもちろん、異世界から来た人がフルールと呼ばれる場合もあります。
また、フルールにはギルドがあり、各々所属している団体があるようです。
●NPC
・フローラ(ティターニア)
妖精女王、花の妖精。若草色の髪が特徴で、桜色の髪留めが宝物。
エルフのような長耳と少女のような凹凸の少ない身体。性格はお茶目でお転婆、然しながら王としての自覚も芽生えつつあります。
母親との夢を見たようです。
・カナタ
花冠師ギルド『Flowers Flag』のギルドマスター。
トップクラスの実力を持つ温厚な青年です。
剣術を得意とし、フローラ達の護衛として腕を買われています。
呼ばれたら出てきます。
胃薬に溺れた夢を見たそうです。
以上、ご参加をお待ちしております。
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