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シナリオ詳細

怨府

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 かつて、その地では戦いがあった。
 人と魔、双方のぶつかり合いだ。
 結果として相討ち。死体が転がるその土地には草も生えず、また、なんとかしようと人が寄ることもなかった。
 つまり、そこは捨てられた地である。
 だが、そこには想いがあった。
 なにもなくとも、そこに生きた者達の怨念があった。
 長い月日を経てなお強まるその想いが、一つの悪霊となった頃。
 その想いに惹かれ、魔物が集まってきた。


 と、そんな昔話を語り終えた所で。
「みなさん! 現地に赴き、沸き出した悪霊と、集まってきた魔物を駆逐してほしいのです!」
 イレギュラーズを集めた『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はそう言葉を作った。
「いいでしょうかっ」
 と、一度区切り、改めて説明を始める。
「現地には実体化を果たした大きな人間型の悪霊が居ます。その周りには魔物がうろちょろしていますが、認識としては9割が野良犬レベルなのです」
 問題は残り一割。悪意に惹かれて来た魔物だ。
「数にしては4体ほど。高さ2mくらいの大きな四足歩行の魔物ですね」
 鋭い牙と爪を持つ、尾の無い怪物だ。
 恐らく知性は無いだろうと推測される。
「悪霊は中~遠距離からの状態異常をもたらす攻撃を、魔物は至~近距離からの威力を重視した攻撃を得意レンジとしています。悪霊を倒せば自然と魔物は散って行くでしょうが、4体の魔物は念のため討伐しておいて欲しいのです」
 また、周りの野良犬のような魔物は、手を出さない限りは自主的に襲って来ない。
 なので、悪霊と魔物に集中して大丈夫だろう。
「それじゃあみなさん、よろしくお願いしますね!」

GMコメント

 ユズキです。
 純戦闘依頼です。
 以下補足。

●依頼達成条件
 悪霊一体、及び魔物4体の討伐。

●現場
 荒涼とした土地。周りには何もないです。

●敵の能力

 悪霊:
 呪詛の吐息:神中域:封印(アクティブスキルの使用を封じる)
 怨嗟の咎め:神遠単:呪縛(30%の確率で行動出来なくなる)

 魔物:
 爪で切る:物近単:防無(防御値判定を無効化する)
 噛み付く:物至単:流血(毎ターンHPを200失う)


 それでは、参加お待ちしております。

  • 怨府完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月29日 22時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)
世界の広さを識る者
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
イフリート・マッシャー
ヴィクター・ランバート(p3p002402)
殲機
赤羽・大地(p3p004151)
双色クリムゾン
リヴリー・ピクティー(p3p005058)
特異運命座標
しだれ(p3p005204)
特異運命座標

リプレイ


 夏だというのに感じるのは、生温く吹く風の嫌な熱だ。
 そんな天上を望む下に、彼らは居た。
 ギルドに身を起き、依頼により戦う者達だ。
 向かう先に見えるのは、どす黒い雰囲気の漂う場所。
 戦場だ。
「あア、この空気、なんとなく知ってる気がすル」
 それを感じた『自称、あくまで本の虫』赤羽・大地(p3p004151)が、赤く色付いた長髪を風に泳がせながら呟いた。
「あら」
 その呟きを聞いた『特異運命座標』リヴリー・ピクティー(p3p005058)が、少しだけ目を開く。
 そうして桃色の髪をふんわり揺らし、大地の赤い目を見ながら聞く。
「あそこは、なんだか寂しい物語の予感がするのだけど。あなたのお話もそれに近しいものなの?」
 その問いには、「さテ、俺達かはともかク」と前置きをして、一息。
「……身体は朽ち果てても、魂までは、消えきらなかったんだな」
 生きたかったのか、殺したかったのかはわからないが。
 恐らく、そう言うものなのだろう。と、大地は心中で思う。
「何を怨んでそうなったのか、あれらは思い出せもしないのでしょうね」
 ほぅ、と息を吐いた『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)は一言呟き、
「怨みまでは消せなくても、せめて安らかに」
 そう思う。
「しかし。戦いに終止符が打たれ、残るのは遺恨のみ。それがこうして後の世に生きる者を脅かすとなるのなら……」
 何のための戦いだったのだ。
「或いは他に、もっと、マシな方法が……」
 そこまで思考した頭を緩く振った『世界の広さを識る者』イシュトカ=オリフィチエ(p3p001275)は息を吐く。
「我ながら合理的ーーいや、ナイーヴかな、これは」
「でも、私はちょっと羨ましいかな」
 それぞれに重苦しい雰囲気でも、『幽霊……?』しだれ(p3p005204)は柔らかい笑みを浮かべて言う。
「元の世界じゃ私、誰にも気づいてもらえなかったしね」
 肉体を得た今とは違い、召喚前は見えず、触れられずの幽霊だった彼女だ。
 悪霊となってしまったとはいえ、
「こうして討伐依頼が出て、他人に認識されるって、羨ましいね~」
 素直にそう感じた。
「ーー皆様」
 各々の感じるものがある中、『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)が口を開く。
 静かな、しかしよく通る声で告げるのは、開始の合図だ。
 それは、
「行きませう」
 どこか古い音の掛け声だった。


 八人の行く古戦場は、見通しのいい平地だ。
 暗雲に似た空気の充満はあっても、視界の邪魔をするほどではない。
 つまり、近づけば直ぐに気づかれるのだ。
 それなら最速で到達し、戦う体勢を全体的に整った状態で始められるようにする。そういう目的だ。
 だから八人は、走って移動していた。
「古戦場に悪霊、と云うのは判るのですが、そこに大小の魔物まで集まってくるのは不思議な話ですね」
 先頭を走るヘイゼルの疑問を言う声が、風に乗って聞こえる。
 悪霊は魔物を襲わず、魔物もまた悪霊に害を為さない。そこに理由があるのだろうか、と。
「知性が無いとは此方の勝手な思い込みで、そこにはソレなりの考えが存在している、のでせうか?」
 そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
 既にもの言わなくなった者と、意思を介する機能を持たぬモノが相手だ。
 真意を知るのは、きっと彼らには出来ない。
 人で有り続ける限りは。
「まあ、アクリョウがファイターであれば、言うことなしだったのだけれど」
 と、ヘイゼルの疑問を聞きながら『無影拳』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は口にする。
 拳ではワカリ合えない相手だ。
 ただ、
「キョウボウな敵らしいからね、楽しみだよ」
 その分、戦いに集中できるはずだ。
「ーー目標を補足した」
 そう思う最中、『殲機』ヴィクター・ランバート(p3p002402)が淡々とした口調で、接敵を報せた。

「先頭との距離、約20m」
 ヴィクターが言うのは、ヘイゼルと魔物の距離だ。
 敵の配置は、四匹の魔物が付かず離れずの距離で固まった状態でいる。そしてその後ろ。
「悪霊と魔物の距離は、約、5mと見る」
 地面から数cm身体を浮かした、背景を少し透かす様な肉体を持つ悪霊がいた。
「ちょっと私と特性かぶってます~?」
 しだれがポツリと言う言葉の意味は、ヴィクターには分からない。
 ……そういうこともある。
 と、思うだけだ。
 なにせ、既にここは敵の射程の内。既に戦闘行動は開始されていて、予定では、
「いざ」
 ヘイゼルの動きが第一に入る。
 凛と届く声は、魔物達の正面だ。
 そうして狙うのは、魔物達の狙いを自分へと引き付ける事。ここに集まる八人の中で、最も高い体力と回避力を持つ故の作戦だ。
 ただ、しかし。
「ーー!」
 起こったのは、咆だ。しかも一つではなく、四つ同時。
 四匹の魔物が、眼前で立つヘイゼルに殺意を持った。
「ブロックするよ!」
 それは狙い通りでもあるが、同時に危険でもある。
 四匹の攻撃が一挙に命中すると、それだけでヘイゼルの体力を根刮ぎ持っていかれる可能性があるからだ。
 だから、イグナートが行った。
 立つヘイゼルの横を抜ける様に前へ出て、左端の魔物の前で行く手を阻んだ。
 そして、ヴィクターも動いた。
 イグナートとは逆側から最前線へ抜け、一匹の魔物を狙って攻撃を行う。
「……ッ!」
 デカイ。
 大柄なヴィクターの眼前に、四足で駆ける魔物の顔がある。間近で見れば、その大きさは威圧感を感じるだろう。
 だが、構わず彼は行く。
 衝突する様に真正面からしたのは、頭突きだ。
 鼻頭の伸びた魔物の顔にそれをぶちこみ、間隙を挟まずに足を振り上げる。
 位置としては、胸を強打する形だ。
 そして、魔物が空に浮いた。

「あれは……」
 土くれの様なアンデットを召喚し、仲間と敵から適正な距離を取ったアイリスは、それを見ていた。
 四匹の魔物がヘイゼルに向かう中、内一匹をイグナートが抑え、それに続いてしだれが後ろに、リヴリーが援護に入る形だ。
 そうして残る三体の内、一匹。ヴィクターが攻撃した魔物が、自分から跳ぶのを見た。
 それは攻撃してきた相手を飛び越える動きで、同時に、ヘイゼルへの攻撃の動作でもある。
「……まずいでしょうね」
 調査に聞いた魔物の攻撃特性は、守りをぶち抜いて切り裂いてくる爪と、傷口を深くする牙だ。
 直撃すれば無事かどうか、正直なところは分からない。
 だから、
「治療の準備を」
 回復を何時でも行える様にしておく。と、同時に、攻撃の準備も。
 そして、ヘイゼルに魔物の三体が到達する。
 その、直前の事だ。
 彼女の眼前で、赤黒い霧が散った。


 ヘイゼルは、目の前で三匹の魔物が霧に包まれるのを見た。
「そんな所に固まってちゃいい的だゼ、お前ら」
 聞こえる声は背後、ハキハキとしたそれは、大地のものだ。
「助かります」
 半径5m。起点から自分まで届かない、しかし魔物を纏めて覆える様に調整された攻撃に、ヘイゼルは思う。
 それは、自分が無事だとか、そういう意味ではなく、
「狙う対象が絞れました」
 と、言って、彼女は狙った。
 まず行くのは、短い屈伸からの跳躍だ。
 それは敵に向かうと同時に、回避も兼ねる。
「噛まれたら痛いでせうから」
 ヘイゼルが一瞬前に居た空間を潰す、魔物の大きな口。噛み付きを狙った攻撃だ。
 顔を横に向けて行われたそれを、幸いとばかりに足場にする。
 剥き出しに噛み合わせた歯に足を乗せ着地。
 その際にチラリと見るのは横手、イグナートが抑えた魔物に突撃していくしだれの姿だ。
 ふわりと飛翔した彼女は、腕を回すようにして武器を振り上げ、息を溜める。
 そうして、呼気のタイミングと力の充足を得て、しだれは行った。
「豪腕粉砕ーーしだれちゃんくらっしゅ!」
 言った。
 気合い十分に振り下ろすそれは、墓のどこにでも見掛けそうな卒塔婆だ。それが平面を向いて、魔物の脳天にめり込む。
「いい一撃です」
 幽霊という希薄なイメージとは裏腹に、八人の中で随一の筋力自慢の一撃だ。
 そのダメージは、計り知れない。
「あたしも援護ね」
 衝撃によろめく魔物へ手を翳すリヴリーが用意するのは、イレギュラーズが扱う術式の中でも基礎的なものだ。
「さあ、あなたの終幕の時よ」
 そこに、リヴリーは強化を加える。
 澄んだ赤色を伴う呪術式。それが、一直線に魔物へと向かい、
「ギャ!」
 直撃した。
「私も、続きます」
 思い、ヘイゼルは足を乗せていた魔物からもう一度跳躍。行く先は、ヴィクターが頭突きをした魔物だ。
 衝撃の為か、その顔は鼻からの流血が見て取れ、
「毒も苦しいのでせうね」
 大地から受けたモノが吐血となって表れている。
 この戦場で、間違いなく消耗した敵だ。
 だからヘイゼルは、その魔物の顔に広げた手のひらを五指から先に触れ、細胞の働きを弄くって攻撃した。
 表皮を剥がし、肉の繊維を引き裂き、そして、
「ッ、あ……!」
 横合いから振り抜かれた魔物の爪が、ヘイゼルの背中に突き立った。
 さらに、目の前の魔物が怒りに目を血走らせ、腕を振り上げ、瞬間。
「ーー!」
 ヘイゼルの肉を深く引き裂いた。


 まるで紙切れの様だ。
 悪霊の動きを一人で妨害するイシュトカは、背後で起こる戦闘を視界の端で認め、そう思う。
 魔物の爪は聞いていた通り鋭く、守りごと両断しそうな程だ。
 いや、しそうな、ではない。
「……あれはマズイだろうか」
 見るのは、ヘイゼルが二振りの爪撃に身体をなぶられるシーンだ。
 そして、それをみたアイリスが、手にしたポーション用の薬を裂かれた体に向けて放っている。
 液体だ。
 瓶に納まっていたそれが、向かう空中で囲いから漏れ出し、傷にそのまま染み込んで肉を塞いでいく。
「大丈夫。なら、私は私の役目を果たそう」
 改めて見る先、悪霊がゆらりと行く手を変える。
 その前に立ち、移動を制限する。
 それが、戦闘開始からのイシュトカの動きだ。
「悪霊のスキルは怖いからね」
 技の封印と、行動の阻害。どちらも戦闘に大きな障害となるスキルだ。
 魔物の攻略中にそうなるのは、可能な限り避けるべきーー
「ぬぅっ」
 そう思う最中、衝撃が来た。
 悪霊からの攻撃だ。
 振り上げた拳を薙ぐ様に打ち出す、シンプルなもの。
 横殴りに来る拳を、イシュトカは受ける。紫色の薔薇のアクセサリーが淡く光り、散る様な動きで花弁を幾つか形成。
 拳と身体の間に薄く広く展開し、守りとした。
「……そう何度も受けらそうにないね、これは」
 早く決めないといけない。
 思い、イシュトカは行動した。
 広げた花弁をそのまま回して、向けるのは、四匹の魔物の内、一匹。
「まずは減らそうか!」
 そうして、光りが空間に飛ぶ。
「じゃあ、集中だ!」
 応じたのはイグナートだった。
 自身も爪に切り裂かれ、深い傷を負いつつも、地面を踏みしめて行った。
 尾から直撃したイシュトカの攻撃に、前へとつんのめるその隙を狙う。
 両の拳を握り一発、正面衝突するように拳を鼻先へぶちこむ。怯んで膝が折れ、下がる首へ踵落としを見舞った。
 骨を砕く快音と、肉を潰す粘着音が鳴る。
「ーー次!」
 撃破の余韻に浸る暇はない。
 死骸を踏み越えイグナートが行く先には、ヘイゼルがいる。
 膝を付き、大きく深呼吸するその姿は、明らかに一度【終わって】いる。
 だから、
「ヴィクター!」
 呼ぶ声への応答が、音で来た。
 射撃音だ。
 ド、と鳴る重い響きで放たれるのは、ヴィクターの魔弾。
 長大の銃身を支えるのは、片膝を地面に落として逆の足を立てた姿勢だ。
 超距離を貫通するその射撃は、最初に殴った魔物に照準を合わせている。
 そのまま二匹目、三匹目と一直線に並ぶ瞬間に引き金を引いたのだ。
 そして、それが通った。
 弾丸が身体を通過する異物感に、魔物達は一瞬の硬直を余儀なくされ、それが致命へと至る。
「これ以上長引かせる訳には行かないな。ここラでおしまいと行こうゼ?」
 撃つ。
 大地の放った、尾を引く一条の攻撃が、毒に侵された魔物に直撃する。
「残念、あなたの登場はここで終わりみたい」
 だめ押しでリヴリーの術式が追撃すると、遂に魔物は地に伏す。
 崩れ落ちるその姿に、彼女はパタンと魔導書を閉じた。


 魔物が残り二匹。
 イレギュラーズは現状、ヘイゼルが一度倒れ、イグナートも前に出て妨害していた分のダメージは濃い。
 それでも、進行は順調と言える。
 アイリスに加え、大地とリヴリーも回復に回り、前衛の損害をある程度まで立て直す事が出来たからだ。
 更に付け加えるなら、否、なによりも大きいのが、イシュトカの存在だ。
 彼が悪霊の前に陣取ったのは、スキルの狙いを付け難くする為だった。
 しかし結果、悪霊が取ったのはスキルを使う攻撃ではなく、通常の攻撃手段で彼を殴ることだ。
 前衛で魔物と戦うイレギュラーズからしたら、有り難い戦果と言える。
 が、それは、イシュトカを一人悪霊の攻撃に晒し続けるということでもあった。
「……すまない」
 三匹目の魔物を、しだれが卒塔婆で叩き潰す頃。
 イシュトカの限界は訪れた。
 そして同時に、悪霊の動きが変わる。
 頭を後ろに、胸を張る様に前へ。息を吸い込む動作を入れた。
「……ブレスが来るか!」
 予感と同時、それが来る。
 大きく開いた口から漏れだすのは、気色の悪い、ねっとりとした空気だ。
 それが、前衛で戦うイレギュラーズ達目掛けて発射される。
「マズイですね」
 悪霊からの封印が付与された場合、それを回復出来るのはメンバーの中で二人いた。
 前衛で戦うヘイゼルと、先ほど倒れたイシュトカだ。
 もしヘイゼルがスキル封印の攻撃を受けたら、以降の回復は難しくなる。
「それは、危険です」
 アイリスは思うが、だからと言って事が起きた今はどうしようもない。
「問題ない」
 その時、ヴィクターが行動した。
 ブレスの前に飛び出し、ヘイゼルを庇う動きを見せたのだ。
 そんな彼の質量分だけ、ブレスの侵食は一瞬止まり、その一瞬でヘイゼルは後方へとバックステップを入れた。
 有効範囲から、抜け出す。
 巻き込まれたのはヴィクター含め、イグナートとしだれだ。
 攻撃方法を制限された彼らに、最後の魔物が飛びかかる。
 好機と思ったのか、魔物にそんな知恵があるのかはわからないが、ともあれ。
「!?」
 ダメージを負ったのは、魔物の方だ。
「コテサキのワザよりもパワーが大事だってね! ゼシュテルじゃジョウシキさ!」
「というか私、大体の力は消費しちゃってるしね~」
 なにせこの二人、素の筋力が群を抜いて高い。
 魔物の顔面に拳を叩き込み、フルスイングで卒塔婆をぶちこむ。それが十分にダメージとして通るのだ。
「これはもしかして、ジャイアントキリングというやつね?」
「いヤ、なんカ違う気がするゾ……」
 クスリと笑うリヴリーの言葉にツッコミながら、ヴィクターのレールガンが魔物の腹を焼き切るのを、大地は確認した。
「これで後は、アレだけだな」
 魔物を全滅させ、残るはただ、佇む悪霊を倒すだけだ。
「では」
 と、声を作るのは、ヘイゼルだ。
 パンッと手を打ち鳴らし、戦場に響くように言う。
「その恨み、ここで散らせて頂きませう」
 合図だ。
 その一言で、封印を刻まれた三人は、身体が軽くなるのを感じる。
「まあ私は結局だけれど~」
 と、言いながらしだれが行く。
 構える卒塔婆は水平に、腕を引き絞った体勢だ。
 至近まで近づき、一気に突き出した卒塔婆で悪霊の胴を打ち込む。
「さぁ、エンディングね。終わりは悲しいものだけど……しょうがないよね」
「しかし、アレは既に一度エンディングを迎えた者達です。だから、冥府への旅路を示しましょう」
 開くページを前に示し、リヴリーは術式を展開する。
 そして、アイリスが攻撃用の薬瓶を山なりに放り投げると、その着弾に合わせる様にして呪術の光が悪霊を貫いた。
「アアアアア!」
 その時、悪霊が吠えた。
 怒りなのか、悲しみなのか。消えることへの反抗なのかもしれないし、この世への執着かもしれない。
「悪霊か。本機の世界では存在しなかったが、なるほど」
 その呻きを淡々と見たヴィクターはそう言って、
「撃てば当たる、殴れば触れられる。なら、殺せる存在だ」
 一つ跳躍の動作を挟み、振り絞った拳で尚も叫ぶ顔を思いきりぶん殴った。
 ゆらぐ。
 存在が揺らいでいく。
 無念が集まり、一つの悪意となった悪霊の身体が、有象無象へと還っていく。
「せめてもの弔いだ」
 それでも。そうなってなお、足掻く悪霊に、大地は構えをとる。
 肩幅に立って、左手を前に、右手を引く姿勢だ。
「身体を亡くしても死にきれない魂達……」
 そんな魂達にしてやれることは、もうこれだけだ。
 そう思い、大地は束ねた力を矢に形成する。
 そうして引いた矢を放ち、
「最後ダ、決めてしまエ!」
 高く跳び上がって悪霊へ向かうイグナートを援護した。
 迎撃しようとする悪霊の腕を吹き飛ばし、無防備となったそこへ、
「これで、終わりだ!」
 跳び蹴りをぶちこんで、爆発させた。
「さよならだ」
 辺りから消え去っていく霊魂達に、大地が呟く。
 戦いは終わり、各方位へ去る小型の魔物を見送り。
 静かになった寂しい土地を、アイリスの手向けた花だけが、色を持っていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
悪霊と魔物退治は無事終了です。
また、別の依頼で。

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