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シナリオ詳細

<Stahl Gebrull>虐殺の円盤

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●襲撃された騎兵達
「ぎゃああああっ!」
「ぐわああああっ!」
 晴れ晴れとした空には似つかわしくない、凄惨な悲鳴が至るところから響き渡る。およそ二十名ほどの騎兵の集団が、縁にビームの刃を生やした直径一メートルほどの奇妙な円盤に襲撃されていた。
 何とか応戦しようとする騎兵達だったが、円盤は五十ほどと数が多い上に素早く、一方的にビームの刃で斬り刻まれていくだけだ。
「ちくしょう! こんな円盤が何だってんだ!」
 隊長格の男は、如何にか円盤と互角に渡り合う。だが、それも長くは続かなかった。
「……騎士!? いや、天使か!? ……ぐあっ!」
 虐殺の様を空中から眺めていた、背に天使のような白い翼を生やした白銀の鎧の騎士――正確には、その姿をした兵器ハイアームズに急襲され、ビームで形成された馬上槍に肩口を貫かれたからだ。
 バサリ。ハイアームズが、背中の翼を大きく羽ばたかせる。すると、翼の中から数多の羽根が射出された。羽根は自律飛行しながらその先端を隊長の方に向ける。それぞれの先端から細いビームが放たれていき、胴体を蜂の巣の如く穴だらけにされた隊長は絶命した。

「隊長さん……皆……うっ、うわああああっ!」
 最後方にいる少年のようなまだ若い騎兵は、眼前の光景を信じられないと言った態で、ただ呆然と目の前の惨劇を眺めていた。だが、円盤は若い騎兵にも容赦なく襲い掛かる。
 もうダメだ! そう重い目を閉じた若い騎兵だったが、身体を斬り裂かれる激痛が何時までも来ないことを不思議に思い、恐る恐る目を開ける。
「……ククッ。戦場で目を瞑るとは、まだまだ、坊やだな……」
「副長さん!」
 副長と呼ばれた年配の男が、若い騎兵の盾となって、円盤をその身体で受け止めていた。
「お前は……軍人に、向いちゃあいねえ……。だから……生きろ。
 生きて、このことを、エピトゥシ城にいるローレットに、知らせるんだ……」
「で、でも……」
「馬鹿野郎! お前まで、死んじまったら……誰がこいつらのことを、エピトゥシ城にいる連中に伝えるんだ?
 こいつらのことが、エピトゥシ城まで……伝わらなかったら、俺らは……ただ、無駄に死ぬだけ……じゃねえか。
 頼むからよ……俺らを、無駄死に……させて、くれるなよ? なぁ……」
 次々と襲い来る円盤から盾となって若い騎兵を護りつつ、副長は一喝。それから、穏やかな語り口と笑顔で、若い騎兵を諭した。
(すみません……副長、みんな……!)
(ああ、そうだ……それで、いい……頼んだ、ぜ……)
 己が託された役割を理解した若い騎兵は、すかさず愛馬を方向転換させ、エピトゥシ城へと全力疾走させる。それを見届けた副長は満足そうな笑みを浮かべると、ゆっくりと鞍の上から崩れ落ちていった。

 逃れ得た若い騎兵以外が皆死に絶えると、円盤は次の獲物を求めて移動を始めた。目指すは、避難してきたレリッカ村の住民を含めてこの地のヒトの生命の大部分が集まる、エピトゥシ城。
 主を失い捨て置かれた馬達の、悲哀を感じさせる嘶きが、その場にずっと響き続けていた……。

●ジェノサイド・ディスクを殲滅せよ
 無我夢中で走り続けてきた若い騎兵は、エピトゥシ城までたどり着いて事の次第を手近にいた男に告げると、伝えるべき事を伝えられたと言う安堵からふっと緊張の糸が切れ、気絶してしまった。
 若い騎兵にとって幸運だったのは、彼の言葉を聞いたのがローレットの情報屋、『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)だったことだろう。
 勘蔵は補佐役の『夢見る非モテ』ユメーミル・ヒモーテ(p3n000203)に男を介抱させると、イレギュラーズ達を動かすために依頼としての体裁を整えにかかった。

「このエピトゥシ城に、とんでもないものが迫りつつあります」
 集まったイレギュラーズ達を前に、勘蔵は騎兵達を襲った惨劇について、そして、その惨劇をもたらした円盤について語った。
「この円盤をジェノサイド・ディスクと呼称しますが、ジェノサイド・ディスクは――」
「真っ直ぐこっちに向かってきているそうだよ。ヒトしか眼中にないとなれば、まず狙われるのはここだろうからね」
 盗賊時代の元部下達に偵察をさせていたユメーミルが、その結果を連絡しに現れ、勘蔵の言葉に続ける。
「とにかく、こんなものをエピトゥシ城に入れるわけにはいきません。
 何としても、そうなる前に殲滅して下さい。皆さんなら、可能だと信じています。
 どうか――よろしくお願いします」
 勘蔵が、イレギュラーズ達に向けて深々と頭を下げる。ユメーミルも、勘蔵に合わせて頭を深く下げた。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は全体依頼<Stahl Gebrull>のうちの1本をお送りします。
 エピトゥシ城の人々が虐殺されないように、ジェノサイド・ディスクを阻止して下さい。
 なお、以降で触れているアルトラアームズ=レイジについて、およびジェノサイド・ディスクが生産されている状況については、『<Stahl Gebrull>兵器と魔種の融合体』をご覧下さい。

●成功条件
 敵の全滅

●失敗条件
 ジェノサイド・ディスクが1体でもエピトゥシ城に到達する。

●ロケーション
 エピトゥシ城から1km離れた平地。時刻は昼、天候は晴天。
 環境による戦闘へのペナルティーは発生しません。

●ハイアームズ ✕1
 アーカーシュ遺跡の深部に眠る、古代の防衛兵器です。アルトラアームズ=レイジによってコントロールされ、エピトゥシ城に向かうジェノサイド・ディスクを護衛しています。
 能力はハイバランスで、弱点となるような所はありません。

・攻撃手段など
 格闘 物至単
 ビームランス 神超単 【移】【弱点】【邪道】
  鍔から先をビームで形成する馬上槍です。
 ビームランス(薙ぎ払い) 神近範 【弱点】【邪道】
  ビームランスの穂で、周囲を横薙ぎに薙ぎ払います。単体を攻撃する時よりも、威力と【邪道】の値が落ちます。
 フェザービット 神/至~超/単~域 【多重影】【変幻】【弱点】【邪道】
  翼から展開される、羽根の形をした自動攻撃端末です。羽根の先にエネルギーを集中し、ビームとして放ちます。
  攻撃範囲が狭くなるほど、ダメージは大きくなります。
 【怒り】無効
  アルトラアームズ=レイジによってコントロールされているため、【怒り】によって誘引されることはなく、ジェノサイド・ディスクを妨害する敵を効率的に排除しようとします。
 【毒】系BS無効
 【出血】系BS無効
 BS緩和
 飛行

●ジェノサイド・ディスク ×50
 アルトラアームズ=レイジから放出された、浮遊する円盤です。
 ヒト(PCになりうる種族の、知的生命体)を発見次第、その命を奪おうとします。
 縁から相手に応じて実体とビーム両方の刃を出すことができ、標的となったヒトを斬り刻んでいきます。
 命中、回避、反応が高い一方、防御技術、耐久力は高いとは言えません。抵抗はそこそこです。
 標的には必要以上に集ったりはせず、効率的に虐殺を行おうとしますので、数が余っている、あるいはイレギュラーズをなかなか倒せずこれ以上は無理と判断した場合は、イレギュラーズ達との戦闘を諦めてエピトゥシ城に向かう可能性があります。

・攻撃手段など
 カッター 物or神/超単 【移】【変幻】
  縁の周囲に展開する実体もしくはビームの刃です。実体の場合は出血系BSがこれに加わり、ビームの場合は【弱点】がこれに加わります。
 【怒り】無効
  アルトラアームズ=レイジによってコントロールされているため、【怒り】によって誘引されることはなく、効率的に敵の命を奪おうとします。
 【毒】系BS無効
 【出血】系BS無効
 BS緩和
 飛行

 それでは、皆さんのご参加をお待ちしております。

  • <Stahl Gebrull>虐殺の円盤完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年08月31日 22時06分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空の眼
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
マリカ・ハウ(p3p009233)
冥府への導き手
物部 支佐手(p3p009422)
黒蛇
ファニー(p3p010255)
ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)
焔王祈
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚
リスェン・マチダ(p3p010493)
救済の視座

リプレイ

●一機たりとも、残してはならぬもの
「ディスクの数が、すごく多いっスねぇ……」
「それでも、倒すだけなら話が早いんだがな」
 エピトゥシ城へと飛来せんとする古代兵器を遠くから見上げた『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)のつぶやきに、『スケルトンの』ファニー(p3p010255)が応じた。
 古代兵器は、背に天使のような翼を生やしたハイアームズが一機。そしてヒトたる知的生命体を発見次第虐殺せんとするジェノサイド・ディスクが五十機。確かに数は多いが、単に倒せばいいのであればファニーが言うように話は早かった。
 だが、ジェノサイド・ディスクを一機でも討ち漏らしてエピトゥシ城に至らせてしまえば、避難してきたレリッカ村の住民を含めそこにいる人々の命が危うい。故に、この場で完全に殲滅してしまわねばならなかった。
「……撃ち漏らしがねぇようにってんなら、やり方を考えねぇとな」
「そうっスね。逃げ出す前に、何とか仕留めておきたいところっスね」
 面倒なことだ、と言わんばかりにファニーが言うと、そこに篭もっている感情には気付かずにライオリットは頷いた。
「兵器とまぜこぜになった奴が魔種になって円盤とハイアームズを動かしてる、ねぇ」
 『放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が独り言ちたように、この古代兵器達はショコラ・ドングリス遺跡の奥にいる古代兵器と魔種の融合体から放たれている。
 古代兵器に融合させられたのは、魔種パトリック・アネルが率いる特務派の軍人だった。その軍人は、自分だけが不条理な目に遭った憤りから、パトリックの放つ呼び声を受けて魔種と化している。
 特務派の軍人がアルトラアームズと融合させられたこと自体は、バクルドも哀れには思う。だが、魔種となり「ヒト」を虐殺して回る円盤を放出しているとあっては、同情する気にはなれなかった。
「何にせよ、城には到達させん。一機残らず撃ち落とすことに変わりはない」
「そうだ、一機たりとも逃してはならない。心してかかろう」
 バクルドが聖弓アーク・テトロンを手にして断言すると、『焔王祈』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)が魔剣グリーザハートを抜刀しながらその言を首肯する。
 ジェノサイド・ディスクがエピトゥシ城に到達すれば、そこにいるレリッカ村の村人や鉄帝軍人を惨殺して回ることになるだろう。そうなれば、エピトゥシ城で展開されている防衛作戦は無茶苦茶になりかねない。ましてや、ジェノサイド・ディスクの行動原理から言って、虐殺はエピトゥシ城内のみに止まるとは限らない。地上まで降りて、何も知らない人々を襲う凶刃とさえなり得るのだ。
(そうだ、一機たりとも逃してはならない。
 私達の後ろには、エピトゥシ城で戦う仲間や避難した人達の命だけじゃない。
 アーカーシュの発見に喜んでいる、地上の人達のいつもどおりの生活もある!)
 それらを護るためなら、いくら傷を負わされようとも必ず立ち上がり戦い続けてやると、ムエンは固く意を決した。
「なかなか、厄介なものが来ましたね」
「そうですの。隠れる場所もないだだっ広い戦場にこの戦力差、また厄介な依頼を持ってきたもんですの」
「あ、そうじゃなくてですね……」
 『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)のつぶやきに、うんうんと頷きながら『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)が応じる。だが、二人が厄介と感じる部分は全く異なっており、鏡禍はそこについての説明を始めた。
「機械って、プログラムって言うんです? そういったので判断してくるので、妖怪の天敵の一つでもあるんですよ」
 つまり、鏡禍の妖怪としての力で、ジェノサイド・ディスクを自身の方へと誘き寄せることは出来ないのだ。
「それは、大変ですの」
「はい。でも、僕の不死性は抜けないはずです」
「なら、ちょっと手がかかるっちゅうだけですの」
 それでも、もう一つの妖怪としての特性、不死性について問題ないと鏡禍が言うと、支佐手は戦場の問題や戦力差もひっくるめてその一言で片付けた。
(こんな一大作戦の片隅で地味なお掃除するだけの仕事だなんて、最初に聞いたときは退屈そうだナ~とか思っちゃった)
 そんな風に考えていた『トリック・アンド・トリート!』マリカ・ハウ(p3p009233)は、しかしワクワクしている様子だ。
「血を吸って魔剣や妖刀になる話はよく聞くケド、まさかこんなオモチャにも“残ってる”なんてネ♥」
「魔剣や妖刀とは、根本が違うみたいだけどね」
 マリカの言葉に思わず指摘をしたのは、『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)だ。学者肌のゼフィラからすれば、魔剣や妖刀の類とジェノサイド・ディスクとでは根本的な成り立ちが違う。魔剣や妖刀は数多の血を吸ってそうなったモノであるが、ジェノサイド・ディスクは最初からヒトの殺戮を目的として生み出されたモノだ。
 それにしても、とゼフィラはぼやく。
「やれやれ、物騒な兵器が起動してるみたいだね……まったく、私は学者の端くれとしてこのアーカーシュを調査したいだけだと言うのに」
 だが、魔種パトリックが討伐されたとしてもジェノサイド・ディスクが残っていては、調査の妨げになりかねない。ならば。
「この場で、全て破壊してやろうじゃないか」
 そう宣言しつつ、ゼフィラは紫と銀の瞳で未だ遠くの空にいるジェノサイド・ディスクを見上げた。
(人を見つけ次第、機械的に命を狙ってくる円盤って恐すぎるんですが……)
 『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)は、ジェノサイド・ディスクに恐怖を感じ、それ故に身体を強張らせている。それを察した『蒼空』ルクト・ナード(p3p007354)が、リスェンの側に寄り添って肩を優しく叩いた。
「怖がる必要はない。私は空での戦いには慣れている。それに、頼れる仲間達もいる」
 もっとも、ルクトは空中戦には多少慣れているが、今回のように一機たりとも逃してはならない戦いとなると話はまた別だ。だが、恐怖に緊張している仲間を励ますためにはそうも言っていられない。そもそも、なさねばならないのならしっかりこなしてみせるまでだ。
「そう、ですよね。ジェノサイド・ディスク……恐いけど、戦いますよ」
 ルクトの励ましに、リスェンは身体の強張りが和らいでいくのを感じた。ジェノサイド・ディスクは確かに恐ろしい。だが、ここで食い止められずにエピトゥシ城まで行かせてしまえば、悲惨な事態に陥るのは想像に難くない。ルクトの後押しもあって、リスェンは勇気を振り絞った。

●イレギュラーズ、獅子奮迅
 最初にジェノサイド・ディスクに仕掛けたのは、ゼフィラだった。
「大人しくしてくれるかな? あまり動かれると、壊すのも手間なんでね」
 飛来してくるジェノサイド・ディスクの右辺の下へと突っ込むと、敵に停滞と敗北をもたらす呪術を使う。ジェノサイド・ディスクは散開していたが、それでも五機が呪術に巻き込まれ、その動きが目に見えて鈍いものになった。
「もう少し、大人しくしていてもらおうか」
 さらにゼフィラは、ジェノサイド・ディスクの左辺の下へと移動。先程と同じく敵に停滞と敗北をもたらす呪術を使い、もう五機の動きを鈍らせた。
「空対空兵装用意……行くぞ!」
 ゼフィラに続き、ルクトが動く。空中へと飛翔したルクトは、ミサイルポッドからミサイルを乱射。
 ジェノサイド・ディスクは危険を感知してミサイルから逃れようとするが、無数のミサイルはその回避を許すまじとホーミングして迫る。結果、そのほぼ全てが三機のジェノサイド・ディスクに命中し、連続して爆発していく。立て続けの爆発を受けたジェノサイド・ディスクの装甲はひしゃげて壊れ、中の機械部分が姿を覗かせた。
「畳みかけるっスよ! 倒せなくても、動きは止めるっス!」
 ライオリットは両手のレヴィアン・セイバーを、続けざまに素早く振るう。その剣閃から放たれた衝撃波は、ルクトのミサイルを受けたものを含めて五機のジェノサイド・ディスクを巻き込んだ。そのうち特にルクトのミサイルを受けた三機は、装甲がほぼ全損して中の機械もポロポロと落ちてきており、耐久力が大きく落ちているのは明白だった。
「まず、三機っス!」
 再度衝撃波を放ち、ライオリットは追撃を仕掛けた。その狙いどおり、衝撃波は耐久力の落ちている三機に直撃。三機のジェノサイド・ディスクは爆発し、その残骸が地に墜ちた。
「俺はてめぇらを、どこにも行かせやしねえぞ!」
 バクルドは咆えながら、聖弓アーク・テトロンに番えた矢を放つ。笑う死神の如く生者の生命を奪う狙撃は、機械に対しても終焉を告げた。矢は、ジェノサイド・ディスクの中心を易々と貫通して爆発炎上させた。
 さらにバクルドは、腕の内部から多数の鋼鉄球を射出する。鋼鉄球は広範囲に拡散し、五機のジェノサイド・ディスクに次々と命中して装甲を歪ませ、その中に食い込んでいく。 そして、鋼鉄球が帯びた強烈な磁力が、ジェノサイド・ディスクの動きを阻害した。
(――墜とせるか?)
 ジェノサイド・ディスクは、数は多い。しかし、耐久性が高くないのは既に撃破された四機を見ても明らかだ。ならば一気に墜としてしまおうと、バクルドは鋼鉄球を再度射出。再び鋼鉄球を受けた五機のジェノサイド・ディスクは、ダメージに耐えきれずに爆発炎上した。
 バクルドの攻勢は、さらに続く。再び聖弓アーク・テトロンによる狙撃で一機を、鋼鉄球の連射で五機を撃破。そして。
「吹けよ、西風――!」
 バクルドの持つアミュレットが、その声に応えてバクルドの時間に干渉する。傍から見れば、バクルドが急に加速したように見えただろう。続けざまに、聖弓による狙撃と鋼鉄球の連射によって六機のジェノサイド・ディスクが撃破された。
 ここまでで実に四割を失ったジェノサイド・ディスクだが、己に下された命令を放棄する様子もなく、イレギュラーズ達に均等に――一人当たり三機ほどが――襲い掛かる。
「ぐっ!」
「きゃあっ!」
 ジェノサイド・ディスクの刃によって、ファニーが全身をズタズタにされ、リスェンもファニーほどではないが深手を負った。その他のイレギュラーズ達も、回避に長けたルクト、防御に長けた支佐手やムエンを除き、それなりに傷を負わされている。
 バサリ。ハイアームズが、翼を羽ばたかせた。翼からは無数の羽根が射出され、その先端からビームが放たれていく。狙われたのは、ファニー、リスェン、そしてバクルド。ファニーはこの攻撃で、可能性の力を費やすことになった。
 さらにハイアームズが、ビームランスを構えて上空から斜めに降下するようにして突撃する。狙いは、いきなりジェノサイド・ディスクを十八機撃墜したバクルドだ。ジェノサイド・ディスクの護衛を命令されているハイアームズとしては、さすがにバクルドを放っておくわけにはいかない。
「ぐあっ!」
 ビームランスの穂は、バクルドの右胸から右肩にかけてを深々と貫いた。バクルドの回避の技量は決して低いものではなかったが、既にジェノサイド・ディスク三機と無数の羽根からのビームに攻撃されていることもあり、ビームランスまで回避する余力はなかったのだ。
「スウェンさん、ファニーさんの側へ! 僕が、二人とも護ります!」
「は、はいっ! ファニーさん、今、回復しますね!」
「俺様には回復はいらねぇ。そいつは、バクルドに回してやってくれ!」
 最初の敵の攻撃で一人が可能性の力を費やし、二人が深手を負ったこの状況はさすがにまずいと見て、鏡禍はスウェンにファニーの側へと移動するように指示した。スウェンとファニーがすぐ近くにいてくれれば、鏡禍は二人まとめて庇うことが出来る。
 スウェンは鏡禍の指示に従いつつ、治癒魔術をファニーに施そうとする。だが、ファニーは対象をバクルドに変えるように指示した。鏡禍が自分を護りに入るなら、自分への回復は不要になるとの判断からだ。
 ファニーの指示の理由は、スウェンにもすぐに理解出来た。故に、スウェンはファニーの側へと駆け寄ってから、バクルドの傷を癒やしにかかる。
「ありがとよ、嬢ちゃん。人心地付いたぜ」
 バクルドのビームランスに貫かれた傷痕が、完全にではないが塞がっていく。脂汗も引き、蒼白だった顔色も大分元に戻ってきた。バクルドはニッと笑いながら、スウェンに礼を述べた。
 そして鏡禍は、ファニーとスウェンの側に駆け寄り、自らを二人の盾とする。最初の一撃は止められなかったにせよ、これ以上は一撃たりともファニーにもスウェンにも通させはしないし、通させるわけにもいかない。
「んー、空に戻ったんだネ。でも、空に居てもマリカちゃんからは逃げられないヨ♪」
 ハイアームズは、バクルドをビームランスで貫いた後、イレギュラーズ達から後退する形で空中に飛翔した。それを見上げるように眺めながら、マリカはニタリと楽しそうに笑う。歩を進めてハイアームズの下まで動くと、ハイアームズの足下に数体の死霊を召喚した。死霊達がハイアームズの脚に絡みつき、その場からの移動を不可能としてしまう。これで、ハイアームズはビームランスを無力化され、羽根の先端からのビームで攻撃するしかなくなった。
(ハイアームズの足はそこで止まったか……ならば!)
 バクルドの側へと、ムエンが駆ける。いざと言う時に、バクルドを護れるようにだ。バクルドの側まで来たムエンは、ファニーに纏わり付くジェノサイド・ディスクに向けて数条の雷撃を放つ。雷撃は蛇の如くうねりながらジェノサイド・ディスクに迫り、三機のジェノサイド・ディスクに絡みつくようにして命中。うち、既にライオリットの攻撃を受けていた二機が、爆発して撃破された。
「わしは、バクルド殿の援護に回りましょうかいの」
 目の前のジェノサイド・ディスクは鬱陶しいが、自身の護身の技量を以てすればまだ余裕で対処できる。そう判断した支佐手は、丹塗りの小刀をバクルドの周囲へと投擲。小刀から召喚された水銀の女神は、周囲に真紅の沼を顕現させる。沼では硫化水銀が燃焼しており亜硫酸ガスと水銀蒸気が発生しているが、ジェノサイド・ディスクがそれらを浴びると装甲が腐食していき、さらに内部にも影響したのかその動きは鈍っていった。
「まだまだ、行きますの」
 さらに、スウェンに集っていたジェノサイド・ディスクに向けて、支佐手は同じように丹塗りの小刀を投擲。バクルドの周囲のものと同様、装甲を腐食させて動きを鈍らせた。
「痛ぇな、この野郎!」
 先程の報復だと言わんばかりに、ファニーは目前に残るジェノサイド・ディスクに、全身の魔力を以て錬成した砲弾を放つ。至近距離から放たれた魔力の砲弾は、ジェノサイド・ディスクに回避行動さえ許すことなく直撃。ベコリ、とジェノサイド・ディスクの中央部を大きく凹ませた。既にムエンの雷撃によってダメージが入っているジェノサイド・ディスクは、さらなるダメージに耐えきれずに爆発。残骸が、ガシャリと地上に墜ちた。

●ルクトからは、逃げられない!
 ジェノサイド・ディスクは数が多く、素早く飛び回りはするものの、耐久性は高くはない。軍人なども含めた普通の人々を虐殺して回る分にはそれで良かったかも知れないが、イレギュラーズを相手にするには明らかに不足としか言えなかった。
 ファニーとスウェンの盾となった鏡禍、バクルドの盾となったムエンを倒しきれないうちに、ジェノサイド・ディスクはその数を次々と減らしていく。鏡禍とムエンが味方の盾となったことで余り気味となったジェノサイド・ディスクが戦場を離脱しエピトゥシ城に向かおうとしたが、それはイレギュラーズ達が最も警戒している事態だ。故に、イレギュラーズ達がそれを許そうはずがない。
 バクルドの聖弓アーク・テトロンによる狙撃が、ファニーの魔力の砲弾による砲撃が、ライオリットの蒼き彗星の如き斬撃が、離脱を試みたジェノサイド・ディスクを次々と撃破していく。それらから逃れ得たジェノサイド・ディスクも、戦場から離脱することは能わなかった。
「――私の加速力を、舐めるなよ?」
 いつの間にかジェノサイド・ディスクを追い抜き、その前に回り込んだルクトに阻まれ、全て墜とされた。
 一方、戦場に残るジェノサイド・ディスクも、光の如きゼフィラの剣閃、支佐手の丹塗りの小刀、そして攻勢に回ったリスェンの破邪の聖光によって殲滅させられた。ジェノサイド・ディスクの護衛であるハイアームズは、マリカの死霊によって空中に釘付けにされたこともあって、その任を果たすことは出来なかった。
 ジェノサイド・ディスクが全滅すれば残るはハイアームズのみだが、さすがに十名ものイレギュラーズ達の敵とはなり得ず、程なくして撃破された。

 最後にジェノサイド・ディスクの残骸の数をカウントして、イレギュラーズ達はジェノサイド・ディスクの殲滅完了を確認した。
「――骨が折れる仕事だったな、まったく」
「折れたと言うより、斬られただと思うケド?」
「そうだけどよ……」
 ファニーのぼやきに、マリカが茶々を入れる。確かに、ジェノサイド・ディスクの刃はファニーの骨を折ると言うよりは斬っていた。それにファニーが気怠そうに返すと、誰からともなく笑い声が上がり、イレギュラーズ達は笑いに包まれた。
 それは、エピトゥシ城の人々を護れたと言う安心感と達成感がもたらした笑いだった。

成否

成功

MVP

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老練老獪

状態異常

バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)[重傷]
老練老獪
鏡禍・A・水月(p3p008354)[重傷]
鏡花の盾
ファニー(p3p010255)[重傷]
リスェン・マチダ(p3p010493)[重傷]
救済の視座

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。皆さんの活躍によって、ジェノサイド・ディスクは1機たりともエピトゥシ城に至ることはなく殲滅されました。
 MVPはジェノサイド・ディスクの殲滅速度に大きく貢献したとして、バクルドさんにお贈りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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