シナリオ詳細
亜 竜 ウ ナ ギ ス ケ ル ト ン
オープニング
●土用の丑の日の逆襲
土用の丑の日――。
元々は、とある世界の慣習であるという。
大雑把に言えば、七月の月末くらいに、「う」のつく食べ物を食べると、身体によい――というもので、この場合に選ばれる「う」のつく食べ物と言えば、「うなぎ」がほとんどであった。
これがウナギである理由はいろいろあるらしいが、そのうんちくを今語る必要はあるまい。必要なのは、旅人(ウォーカー)達からそう言った文化はもたらされ、商魂たくましい商人たちは柔軟にそれを受け入れ、七月の末にはうのつく食べ物を売り払う……混沌において、そんな光景が見られることも、またあるのである。
それは、長らく外と隔絶していたとはいえ、ラサとの多少の(隠れた)交流のあったここ、覇竜領域でも、それをマネするような姿勢はあった。土用の丑の日。意味は分からないが、皆で「う」のつく食べ物を食べて、少しくらいのお祭り気分を味わってもばちは当たるまい。元より、此処は過酷な地だ。少しでも、色々な娯楽はあるにこしたことはあるまい。
そんなわけで、今年も丑の日は、色々なうのつく食べ物が食べられた。うなぎ、うなぎ、うなぎ、うさぎ……うのつくものをおいしくいただき、今年も良い事があるといいね――そんな風に、七月ももう終わりという時期に入った最中。
それは、蠢きだしたのである――。
「あー、ウナギスケルトンが出た」
と、イレギュラーズ達に言うのは、フリアノンの亜竜種、真我(マナガ)である。いわゆるリザードマンタイプの亜竜種である彼は、その竜のような頭をポリポリとかきつつ、
「ウナギスケルトンが出た」
と繰り返したのである。
「ウナギスケルトンっていうのは」
あなたともに、依頼にやってきたイレギュラーズの一人が尋ねる。
「ウナギの……スケルトン……?」
「うむ。亜竜だ」
「亜竜なんだ……」
困惑したように、仲間が言う。もう亜竜ってついていれば何をしても許される領域に片足を突っ込みかけている気がする。
「土用の丑の日は知っているか? 「う」のつく食べ物を食べるお祭りの様な日なのだが。
外から多少、文化はもたらされていてな。この地でも、そう言った催しを楽しむ集落は存在する。
で、食べ物……食事とは命を奪う行為だ。それは間違いない。この時期に大量消費される「う」のつく食べ物……まぁ、大体はウナギなんだが、その慰霊も兼ねて、土用の丑の日の後は、祈りをささげるのだが……やはり、これも人の傲慢なのかもしれんな。決して浄化しきれぬ怨念は、いつかアンデッドとなって、ウナギスケルトンとなることもあるのだ……」
「まぁ、そういう事も……」
仲間の一人が頷く。
「あるの、かも、な。で、その。今回は、ウナギスケルトンの退治で?」
「そうだ」
真我が頷く。
「ウナギスケルトンは、ウナギのスケルトンだ」
「まぁそうだろうな」
仲間が頷く。
「そして、この地に生まれた恐ろしいアンデッドは、時に亜竜とも呼ばれることがある……ウナギスケルトンは、亜竜なのだ……」
「そっか……」
仲間が頷くのへ、あなたも頷いた。まぁ、そういう事もあるのだろう。混沌は不思議な世界だ。
「ああ、決して油断はしないでくれ。お前達を呼んでいることからもわかる様に、一般の亜竜種ではなかなか、対処の難しい相手だ……」
戦士である真我がそういう通り、敵は強いのだろう。でなければ、身内で処理するはずだ。ローレット・イレギュラーズ達に頼む理由は、しっかりとあるという事。
「では、頼む。敵は、この集落の奥、水場に出ている――」
その言葉に、あなた達は頷いた。そして、集落の水場へと向かったのである――。
『ウナギー!!!』
ウナギスケルトンが鳴いた。そう、水場にいたのは、体長にして3mほどの、巨大な――。
「ウサギのスケルトンじゃねぇか!!!!」
仲間が頭を抱える。発達した後ろ足。なぜかいように鋭い前歯。存在しないはずなおに、なぜか存在する長い耳の骨。どう見てもウサギだ!!!
「どうなってる! 情報伝達がおかしいぞ!!」
『うなぎ!!』
「でも、ウナギって鳴いてるし……」
『うなぎーーー!!!!』
「ほら、自分たちもウナギって」
『うなぎ、ぼくたち、うさぎじゃない』
「ほら」
「ほらじゃないよ!?」
仲間達も混乱の渦の中にある! だが、あなたはコホン、と咳払い。こうなったら、とりあえず戦うしかない、と告げる!
「そうだな……! なんにしても、あれが敵意を持っていることは確かだ……!」
『くくく……ぼくたちウナギスケルトン、人類への反逆を企てています』
「なんと恐ろしい……!」
仲間が慄くのへ、あなたも頷く。よくわからんが、こいつらは敵なのだ!!!
『さぁ、勝負だイレギュラーズ。土用の丑の日の食われた同法の怨み、思い知るがいい……!』
なんにしても、ウナギスケルトンはやる気だ! さぁ、武器をとり、これを迎撃するのだ、イレギュラーズ!
- 亜 竜 ウ ナ ギ ス ケ ル ト ン完了
- GM名洗井落雲
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年08月15日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●今回のあらすじ
ウナギスケルトン(うさぎ)が出たぞ!
「わけが わかりませんの……!」
そう言って頭を抱える『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)。ゆっくりと視線をあげれば、目の前にいるのはウサギのスケルトン。話にきいていたのは、亜竜・ウナギスケルトン。目の前にいるのがウサギスケルトン。ただし材料はウナギスケルトン。所で亜竜でアンデッド。
「わけが わかりませんの……!」
そう言って、もう一度頭を抱える。出発前は、
「ウナギが 有名すぎるせいで どれだけ アナゴが 見くびられていることか……。
ウナギなんて 食べられてしまえば いいですの!
……いいえ
ライバルだからこそ
食べられてしまう無念は わかりますの
ですから…… せめて かれらが やすらかに ねむれるように……」
等と納得顔で言っていたのだが、いざ遭遇してみればこれである。ノリアでなくとも頭を抱える。
「うなぎすけるとん。
うなぎであるのに後ろ足と、前歯、なによりも耳の骨……がある、のであるか。
おまけに亜竜でもあるという。
……竜というものの懐の深さの表れ、といったところであるな」
なんか嬉しそうに尻尾が少し揺れている、『花咲く龍の末裔』咲花 イザナ(p3p010317)。本当に誇っていいのだろうか。相手は混沌面白生物なのだ。
「うなぎ? うさぎ?
ニルはなんだか混乱してきました……。
でも本人?がうなぎっていう以上は、きっと、うさぎなの……ですよ、ね?」
そう言って小首をかしげるのは、『なめらかなふともも』ニル(p3p009185)だ。むむー、と唸りつつ、ぐぐ、と小首をかしげて見えると、ウサギ……いや、ウナギスケルトンも小首をかしげて見せた。
「何か不思議なことが?」
ウナギスケルトンがそういう。ニルはむむー、と唸った。
「どちらも亜竜でアンデッドでスケルトンなのです、ね?」
「そうです。亜竜アンデッドウナギスケルトンウサギです」
ウナギスケルトンがそういうので、ニルはしばし、困惑した表情で、ええと、ええと、と呟いていたが……やがて諦めたようににぱー、と笑った。
「やっつけるの、ニルもがんばります!」
思考放棄。だが今はそうするしかない。
「ふむ、キミたちは、土用の丑の日に食べられたウナギの怨念、という体で出てきているのだったね?」
興味深げに『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が言うのへ、ウナギスケルトンが頷く。
「はい。人類への復讐などを趣味としています」
「なるほど」
ほう、とゼフィラは嘆息した。
「土用の丑の日というのは日本出身としては馴染み深い話だ。
私がまだ日本に居た頃は、ウナギも年々高くなって、食べる機会が減ったものだし、実は亜竜ウナギとやらが可食であれば少し楽しみな依頼だったんだ」
遠い目をする。まぁ、フリアノンの民が食べているウナギに近い種類は、フリアノンで採取できるのだろう。帰ったら食べよう、とゼフィラは頷いた。
「そういえば、ウナギスケルトン、なんだね……」
「だが、少し待ってほしい」
びしっ、と手を突き出して何かを制止するのは『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)である。
「ウナギスケルトンよ。ここははっきりしておきたい。
御主、ウナギの骨なの? 亜竜の骨なの? ウサギの骨なの?」
真剣な表情で言う汰磨羈に、ウナギスケルトンは仰々しく頷いた。
「ウナギです」
「間違いない?」
「間違いないです」
「嘘じゃない?」
「嘘じゃないです」
「ほんとにウナギ?」
「情報精度はAです」
しばしの問答の後に、汰磨羈は満足げに頷く。そして、こう言った。
「ウ ナ ギ の 骨 せ ん べ い っ て し っ て る ?」
その背に信楽焼のたぬきめいたオーラを立ち昇らせる汰磨羈のその顔は、のん兵衛の表情だ!
「ウナギの骨せんべい……確か地球世界の、日本の静岡あたりでよく食べられてる奴だったか?」
純種や他世界出身のものにも伝わる様に、『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が言う。
「ふむ……確かに再現性東京の土産物屋で何度か食べたことがあるが、あれはなかなかの味だったな。酒によくあう」
「だろう? 食べたいだろう?」
じゅるり、とたまきちが目を輝かせた。
「おいしい、なのですね?」
ニルが笑った。
「食べて供養 ですの……?」
ノリアがが続いた。
「なるほど、いいね!」
にっこりと笑って、『不壊の盾』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が頷いた。
「正直、ほんとにウサギの骨だったらどうしようかと思ってたけど……ウナギの骨なんだよね? 確定なんだよね?
じゃあ問題なしじゃない! というわけで、ウナギの骨をたれをつけて、カリッカリに焼いたりあげたりして食べてみよう!」
「いいね。悪くはないと思うよ」
ゼフィラが笑う。
「うむ! それにこう、これだけでかければ出汁もとれる!」
わっはっは、と笑うのは『鉄帝うどん品評会2022『金賞』受賞』御子神・天狐(p3p009798)である。
「うどんとかスープを作ってやろう! うむうむ、夢が膨らむのう! その後はお腹を一杯膨らませたい所じゃのう!」
めっちゃくちゃいい笑顔でわははと笑う天狐。よいしょ、と屋台をひっぱりだし、ひいふうみい、と素材をチェック。完璧だ。いつでもだしをとることができる!!
「ふむ……食べても良し。出汁をとっても良し。これも竜の懐の深さであるな」
得意げに、ぱたぱたと尻尾を振るイザナ本当にいいのか? 出汁をとられてポリポリ齧られようとしているんだぞ?
「えっ」
ここにきてようやく、自分たちの運命にウナギスケルトンたちも気が付いた。
「お食べになる」
「食べるぞ」
天狐が頷いた。
「マジで?」
「マジじゃぞ」
「情報精度は?」
「Aじゃぞ」
くぅーん、とウナギスケルトンが鳴いた。兎はたぶん、くぅーんとは鳴かないし、ウナギもくぅーんとは鳴かないだろうが、まぁとにかく鳴いた。
「許せない……これがヒトの業……」
くわって感じに吠えた。
「しかし、愚かな人間どもよ、私たちを好き放題に食べられると思わない事ですね!
これはノーマルな戦闘シナリオなので、しっかりと戦闘はしていただきます!」
「のぞむところ ですの!」
ノリアが、むぅ、と頬を膨らませた。
「途中まで 真剣に悼んでいた気持ち 返してもらいますの!」
「まぁ、里の亜竜種たちが倒しきれないような奴だ」
義弘が、に、と笑った。
「油断はしない。確実に処理させてもらう」
「亜とは言え、竜の名を冠するもの。
世界や種族は違えど、龍として、君たちの力に敬意を払い、全力を以ってお相手しよう」
イザナがその目を細め、斬竜の刀を抜き放つ。その身体から立ち上るは、確かな剣気。確かな実力を持つ八名のイレギュラーズは、当然のことながら、戦闘で手を抜くようなもの達ではない。
「……あれ? これ、もしかして詰んでますか?」
ウナギスケルトンたちが小首をかしげた。まぁ、でもほら、出目がどう転ぶかはわからない。もしかしたらワンチャン、勝ち目があるかもしれない。
「まぁ、こう言うと己惚れのように聞こえるが……」
ゼフィラは、少しだけ微笑んだ。
「私たちも、相当の修羅場をくぐっている。
そっちこそ、簡単に人類への復讐とやら、完遂できるとは思わない事だね」
「ぬぬぬ!」
ウナギスケルトンが吠えた! 力の抜ける感じだが、しかしそこはアンデッド・亜竜。確かな力を、イレギュラーズ達も感じている!
「勝負です! 人間たちよ! 我々ウナギスケルトンの必殺キックを受けるがいい!」
ウナギスケルトンたちがぴょんぴょん跳ねる! イレギュラーズ達は武器を手に取り、勇敢にそれに立ち向かった!
●VSウナギスケルトン!
「さぁ、恐怖に震え慄くのです! 我々ウナギの」
「ああ、失礼」
と、ウナギスケルトンが口上をあげる前にゼフィラが抜き放った霊刀の斬撃が、一体のウナギスケルトンの耳を切り飛ばした。
「ぎゃーーっ!!」
ウナギスケルトンが悲鳴を上げる!
「ダメでしょ! まだこっち反応してな」
「おーーーーーっと失礼じゃなぁ!」
ぎゅおおおおん、と音を立ててばく進するリヤカー屋台! いや、天狐! ドリフトを決める屋台が、しゃべるウナギスケルトンをごりっと踏みつぶした! そのままバラバラに分解!
『一号ーーーーーッ!!』
残るウナギスケルトンたちの悲鳴! まぁ、そうだろう。ウナギスケルトンたちでは、反応が300とか200とかある人たちに追い付けるわけがない。確実に先手を打たれるだけである。
「なんじゃ、脆いの。カルシウム足りておるのか? そんなんじゃ良い出汁にならんぞ?」
「ええい、なんという言い草。EXF判定に成功していなければ死んでいました」
「ふむ、やはりスケルトン……というかアンデッド。その辺のしぶとさは持っている様だね」
ふぅむ、と興味深げにそういうゼフィラ。
「ふふふ、これこそ我々の真骨頂。そして中途半端にダメージを与えたことを後悔なさい!」
がぁ、と吠えたウナギスケルトンが、後ろ味でゼフィラをキックする! 強烈な衝撃が、その身体を駆け巡る!
「これは……なるほど、ダメージを与えれば与えるだけ、強化されるのか……というか」
痛みに顔をしかめながら、ゼフィラが微妙な顔をした。
「なぜ私はウサギの骨に蹴られて死にかけているんだ、まったく……」
「くくく、恐ろしいでしょう、我々ウサギ……あいや、ウナギの報復は!」
はっはっは、と笑うウナギたち。とはいえ、イレギュラーズ達も無策でここまで来ているわけではない!
「よし、ならば一体ずつに攻撃を集中し、敵の強化を抑えながら戦うとするか」
義弘が声をあげた。
「ノリア、イザナ。お前さん方は敵の分断と抑えを頼む。残りのメンバーで、一体ずつ一気に仕留めるぞ。
敵は復活するらしいな。俺は止めを刺すのには向いていないが、瀕死に追い込むのならば任せろ」
「わかりましたの……!」
「ノリア君、無理はするなよ! 小生も可能な限り敵を分断するのである!」
イザナの言葉に、ノリアは頷いた。果たしてノリアは、ばーっ、と両手に何かを持ちつつ、じまんののれそれを披露し始めた。手に持ったもの! おお、それはオオウナギのかば焼きだ!!
「やーい、生存競争の敗者……」
ふわふわと揺れるかば焼きとのれそれ。
「どうしてそういうこというのぉぉぉぉぉぉ!?」
ウナギスケルトンがマジで泣いた! 存在しないはずの涙腺から涙を流し、ノリアに襲い掛かる! 鋭い歯(ウナギの骨でできたウサギの歯)が、ノリアにかみつくが、つるんとしたしっぽはかみきれない!
「今 ですの!」
「はい! ニルががんばるのです!」
ぴょん、と軽やかに飛んで接近するや、ニルはその手を「えいっ」とかざす。その掌から凝縮された魔力が放たれるや、爆発せんばかりの圧力が、問答無用でウナギスケルトンをバラバラの骨に還元した!! 良く視れば、確かにウナギの骨の集合体だったらしくて、バラバラになったウナギの骨が転がっている。
「ひどい! 必殺の一撃で必殺攻撃を!」
「これではいくらEXFを誇っても意味がありません!」
ウナギスケルトンたちがざわめく。
「ごめんなさいです。でも、これもおいしいのためなので……」
ニルが申し訳なさそうに言う。
「いや、我々にはまだ復讐攻撃があるのです。舐めないでもらいたいのです!」
ウナギスケルトンがそういうが、問答無用で汰磨羈が霊刀を、その首元に叩き込んだ。必殺の一撃が、ウナギスケルトンの首を切り離し、そのままバラバラとウナギの骨へと還元する。
「復讐? ああ、知っているとも。
それは、反撃される前に仕留めてしまえば問題ない類のものだろう?」
にぃ、と笑うその目は、既に食欲に染まっている!
「うう、鬼だ、タヌキだ……」
「ねこだ!!」
汰磨羈が霊刀を再び振るうが、ウナギスケルトンはそれを何とか受け止めて致命打を防いだ。そのまま、だん! と脚を地面にたたきつけて、衝撃波を打ち放つ。咄嗟の攻撃にイレギュラーズ達がひるんだすきに、ウナギスケルトンは後方へと跳躍――だが、義弘がその背後に立っている!
「おう、遅いな」
そのままぶち込まれる、体重を乗せたケンカキック! ぎゃあ、と悲鳴を上げて転がるウナギスケルトンを、イシュラークとファル・カマルを携えたミルヴィが、踊る様な剣舞で細切れに分解した。
「それにしても巨大ウナギじゃなくてよかったよー。
だってあいつらのぬめぬめ喰らうと痒いのと絵面的にも危険だもん。
特にアタシの場合!!」
茶目っ気たっぷりに笑ってみせるミルヴィ。とても清楚。さて、破竹の勢いでばらんばらんとなっていくウナギスケルトンたち。残りは二体。相手尾をするイザナが、斬竜の刃でけん制打を放ちつつ、二体のウナギスケルトンからの攻撃を捌いた。
「うなぎであれうさぎであれ。
その命を頂き、味わう事は生あるものの営みである。
感謝を捧げつつもそれで足りないと云うのであれば、それはもはや生の営みを外れた事。生ある者の側としては、討ち取る他はあるまい」
食事とは、他の命をいただくこと。それ故に、せめて人は、奪った物への感謝を忘れてはいけないのだ。
「ノリア君、もう一体を!」
「おまかせ ですの!
やーい、生存競争の敗者~」
「それほんと傷つくからやめて!!」
残り二匹の内、一匹がノリアへ、もう一匹がイザナへと迫る。イザナは跳躍してウナギスケルトンののしかかりを回避。斬竜の刀を切り付け、前足を粉砕!
「ぬわーーっ!」
ごろりと転んだウナギスケルトンを、天狐の屋台がどかーん、とひいて吹っ飛ばした。きゅい、と屋台を翻すと、設置された鍋の中にウナギの骨がカラカラと落下する。
「うむ! 好し!」
にっ、と笑う天狐。一方、ノリアがひきつけるウナギスケルトンへ、ゼフィラの斬撃が迫る。外側の骨を削り取るような一撃が、ウナギスケルトンに悲鳴をあげさせた。
「痛い! 骨なのに痛い!」
「うーん、骨に痛覚はないはずなんだけどな……」
ゼフィラが苦笑しつつ、再度斬撃。振るわれた刃が、ウナギスケルトンの骨を切り裂いた。
「痛覚があろうとなかろうと、姿形がウサギであろうと関係ない。その質、そして味がウナギの骨であれば良いのだ!
さあ、美味しい食材になぁれ☆」
にっこりと笑ったたぬ……汰磨羈が、霊刀で首を吹っ飛ばす。
「無念ーーッ」
ウナギスケルトンが叫びつつ、爆発――はしなかったが、とにかくバラバラになって落下する。というわけで、大量のウナギの骨だけが、そこに残った。きれいさっぱり肉の取り除かれた骨は、なぜか新鮮で食べるのにちょうどよい。多分『ソウルオブガストロリッター』のおかげだろう。
「うむ。これにて仕舞いだな」
イザナが言った。
「じゃあ――調理の時間だよ!」
と、ミルヴィがそういうのへ、皆は「おー!」と声をあげるのであった。
●さようならウナギスケルトン
香ばしい香りが、あたりに漂っている。イレギュラーズ達は大量のウナギの骨を運搬して、集落へと戻ってきていた。
そうなれば、早速、食べるわけであるが。
ウナギの骨を、しっかり焼いたり油で揚げたりして、カリカリにする。そこに醤油ベースのたれや塩などで味をつけてできるのが、ウナギの骨せんべいである!
「というわけで、乾杯!」
汰磨羈が声をあげるとともにグラスを掲げた。かんぱーい、と、イレギュラーズ、そして里の亜竜種たちがアルコール非アルコール問わずに笑顔でグラスを掲げた。
せっかくの大量の食材である。食べて供養というわけではないが、食べられるのに食べないのはもったいない。そして大量にあるのならば、後は里のものに配ってもいいだろう。
「然らば、いただきます」
イザナがそう言って、ウナギの骨せんべいをポリポリ齧る。美味しい。香ばしくて癖になる。
「ダシもとれたし、骨湯やうどんもたぁんと食べるが良い!」
と、早速うどんを振る舞う天狐の屋台には、多くの亜竜種たちが物珍しさに並んでいる。
「しかし、骨というのもおいしいものだね。
……とは言いつつ、ウナギのかば焼きが食べたくなってしまったよ。再現性東京に食べに行きたいね」
ゼフィラがそういうのへ、
「いいね! 骨もいいけど、身も食べたいよね♪」
ミルヴィが笑う。
「今度は化けて出てきてくれるなよ?」
会場の端で線香などをあげつつ、義弘が苦笑した。
「……やっぱり ウナギは ライバル ですの……!」
人気のウナギに、静かに闘志を燃やすノリア。
「みんな、おいしい、なのですね。
とってもよかったのです」
そう言って、ニルが笑う。何にしても、無駄にせずにおいしくいただいたわけだ。命をいただくこと。その是々非々はあるだろうが、しかし今は、しっかりと感謝して、残さず食べることで祈りに変えるものとしたい。
かくして、期せずして訪れた酒宴は、多くの者たちの笑顔と共に、長く長く続いた。
この光景に、ウナギスケルトンたちも成仏してくれた……だろう。きっと。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
ご参加ありがとうございました。
皆様のおかげで、ウナギを残さず食べることができました!
里の皆も来年の丑の日を楽しみにしているようです。
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
ウナギスケルトンが出たぞ!!
●成功条件
すべてのウナギスケルトンの撃破
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
●状況
土用の丑の日――うの付くものを食べる、そんな文化。
亜竜種たちにもそんな文化を受け継いだものがおり、丑の日はウナギを食べています。
とはいえ、大量消費されるウナギたちに、敬意を欠かしません。後日には、慰霊のための祈りがささげられるものの、それでも、やはり、怨念とは消えぬものか。その怨念は骨を動かし、恐ろしきアンデッド亜竜、ウナギスケルトンになるのです……!
今年のウナギスケルトンは、ウサギの形をしています。来年はうどんの形になるんじゃないですかね。まぁ、とにかく、ウサギの形をしたウナギスケルトンが敵なのです! 斃しましょう!
作戦決行エリアは、亜竜種たちの集落の奥、水場になります。
奥に行くと深い湖になっていますが、近寄らなければ陸戦オンリーの戦場になるでしょう。また、集落は洞窟内ですので、少し薄暗いです。なにも用意しなくてもペナルティにはなりませんが、暗視など用意すると、優位に立てる可能性があります。
●エネミーデータ
亜竜ウナギスケルトン ×5
ウサギの形をした亜竜ウナギスケルトンです。土用の丑の日に食べられたうの付く食べ物たちの怨念が、亜竜の骨とかと反応し、何やかんやあってアンデッドとして復活したものと言われています。
今回はウサギの形をしています。
攻撃方法としては、『飛』を持つ「ウナギ後ろ脚キック」や、『必殺』を持つ「ウナギ必殺前歯」など。
『復讐』を持つ攻撃や、『出血』系列を付与する攻撃なども行います。
アンデッドゆえか、EXFが高めで、複数回の復活の可能性があります。必殺を持ち込むと、スムーズに倒せるでしょう。
腐っても亜竜、それが5体です。油断はめされぬよう。
以上となります。
それでは、皆様のご参加とプレイングを、お待ちしております。
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