PandoraPartyProject

シナリオ詳細

山へ行こう

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「ハイキングに出掛けよう」
 幻想国、バルツァーレク領の空の下、そんな提案が上がった。
 それを発案したのは若い青年は、周りに集まった同じような若者達をぐるりと見回す。
「……なぁ」
 答えるのは、地面に座りあぐらをかく男の子だ。
 確認いい? と律儀に手を挙げた彼は、どうぞ、と返事をもらうと頷き、一言。
「バカなんじゃねえの?」
 と、呆れたように言った。
「理由のない罵倒はただ悪戯に人を傷つけるだけなんだぞ、具体的に今の俺」
 心が痛いと胸を押さえてうずくまる青年を白い目で見ながら、男の子の隣に座る少女も手を上げる。
「優しく、優しくね? はいどうぞ」
「暑いし虫いるしなんか先生気持ち悪いから嫌です」
「道徳から教えるべきだったかなーと先生後悔してます」
 そして聞くべきじゃかったかなーとも後悔しつつ。しかし引くわけにもいかない。
 なぜならこれは、課外授業の意味も兼ねた、言わば遠足的なイベントなのだ。
 はいわかりました気持ち悪くてすいませんでしたぁー!
 と素直に謝ってたまるものか。
「つーか先生、今、山の方にモンスターとか出るって噂じゃん。俺、さすがに怖いんだけど」
「はっはー小生意気な口でも怖いってわけだな! このおこちゃまめっ」
「子どもにそこまで言える先生に言われたくないよ……」
 ともあれ。
「ともあれだ。そこら辺は大丈夫。そういう駆除は、専門業者に任せるから。だからね? いこ? ハイキングいこ?」


 茹だるような熱気から逃れ、ローレットに足を踏み入れたイレギュラーズは顔をしかめて思う。
 外よりマシだが、ここも暑い、と。
「や、よく来たね。ちょうど説明に入るところだ」
 そんな彼を出迎えたのは、『黒猫の』ショウ(p3n000005)だ。
 目の前の椅子を勧めたショウは、腰かけるのを確認してから口を開く。
「今回の仕事は魔物退治だ。と言っても、ただの退治じゃない。ハイキングだ」
「仕事なのかレジャーなのかはっきりしないな?」
 そんな当然の疑問を手で制したショウは、幻想国の地図、バルツァーレク領の拡大図面を机に広げる。
「今回の依頼主は、とある学童塾の先生だ。生徒を連れて山登りをしたいが、山道や付近に生息するモンスターや山賊が怖い、ということでね。それの駆除を、みんなにお願いしたい」
 つまり、
「実際に子ども達が歩く予定の山道を歩き、出てくるモンスターを蹴散らしながら、魔物避けの仕掛けを設置しつつ山頂に向かって欲しい」
 割りとハードである。
「出てくるのはゴブリン、野犬、山賊だ。適度に排除しながら、出現地点にモンスターの嫌う臭い袋を道の両側に設置。山賊は倒すか説得しておいてくれ。みんなのやり易い方法で構わないから……うん」
 あからさまに嫌そうな顔のイレギュラーズに苦笑しながらも、ショウは言葉を締めに行く。
「暑いだろうから、水分補給は十分にね。頑張ってくれ」

GMコメント

 ユズキです。
 混沌の世界ってクーラーないのに生きていけるの???
 って思いながら設定温度18℃で書いてます。

●依頼達成条件
 山道の安全確保。

●情報精度
 今回はBです。なにが不明かというと、山道のどの地点にどの敵が出てくるのかわからない、という一点です。

●敵について
 種族毎に、特定の地点で4体出てきます。
 ゴブリンならゴブリンで4体、野犬だけで4体、という風です。
 特別な攻撃方法はなく、ゴブリンは防御力に優れ、野犬は回避力に優れ、山賊は攻撃力に優れているという特徴があります。

●ポイント
 敵の出現ポイントは計4つです。
 戦場はちょっと細目の山道で、舗装はされてませんので足場は悪いです。また直線上の射線は取りにくいでしょう。
 出てくる敵はダイスもとい運です。
 
 ではではそんな感じで。ハイキング楽しんでください。

  • 山へ行こうLv:7以下完了
  • GM名ユズキ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月26日 23時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ガルズ(p3p000218)
ベイグラント
ヴィマラ(p3p005079)
ラスト・スカベンジャー
美咲・マクスウェル(p3p005192)
玻璃の瞳
蓮乃 蛍(p3p005430)
鬼を宿す巫女
紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)
紫閃一刃
セーレン・キリザリ(p3p006191)
真昼のような夜
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
瑞泉・咲夜(p3p006271)

リプレイ


 空に快晴、太陽が照りつける。
 そんな休日の事だった。
 そびえ立つ、とまでは行かない山を見上げながら、『砕き、狩る者/世界を放浪する刀』紫電・弍式・アレンツァー(p3p005453)はため息を一つ吐いて表情を沈ませる。
「ハイキング……とは名ばかりの懸念材料排除依頼ではーー」
「あぁ、蛍が山登りだなんて……なんだか夢を見ているようです……!」
 しかし対称的に明るい『鬼を宿す巫女』蓮乃 蛍(p3p005430)は、麦わら帽の下に笑顔を浮かべてワクワクを全身に表していた。
 緊張感……と思わなくも無いが、
「まあ、大丈夫だろう」
 腰に下げた刀の頭に手を置いて、紫電は気持ちを切り替える。
「ふふ……山頂でおむすびなど、いいかもしれませんね。いえ、あえて道中というのもーー」
「いや本当に大丈夫だろうか」
 蛍の漏れ伝わるワクワクに少し、自信が揺らぎそうになる。
 いや、そんな催事テンションで浮かれるのはそうそういない。筈だ。
 そう思い、紫電は他の面子を見た。
「こういう地道なフィールドワークも、大切なものだ」
 手にした水筒をあおり、一口。口の中を冷たい水で満たしてから飲み込む『真昼のような夜』セーレン・キリザリ(p3p006191)は、照り付ける太陽に手を翳して「しかし暑いな……」と熱に呻く。
 持参した手拭いに別の水筒の水を染み込ませ、首後ろから巻くようにして熱が体に溜まらない様な対策を取っている。
「ハイキングなんていつぶりかなー」
 と、そんな感慨に思考を寄せた美咲・マクスウェル(p3p005192)は、「いや、ハイキングじゃない」と言いたげな紫電の視線とかち合うと、「まあまあ」と身ぶりを入れ、
「私らがするわけじゃない……のは分かるけど。所々でモンスターや山賊倒すだけだよね?」
 多少の手間があるというだけで、ハイキングと大差ないのではないか。
 それが美咲の心情だ。
「実際、行楽も兼ねての安全確保だろう?」
 と。そう言うのは『応竜』華懿戸 竜祢(p3p006197)だ。瞳孔が縦に開いた野生を思わせる目を弓なりに、喉を鳴らすように笑った彼女は、
「未来ある輝きの種を守る為だ、無下には出来ないが、私達が楽しんではいけないということもない」
 そう言って、だろう? と同意を求める疑問符を飛ばした。
「そうですよね! ええ、蛍もそう思います!」
「勿論、やるべきことも解ってるよ。だから大丈夫だって」
 蛍と美咲に言われれば、紫電も頷くしかない。
 実際イレギュラーズとしての仕事だとは、みんな割りきっているはずだ。

「危険がいっぱいハイキングツアーを企画するなんて中々ロックな教師だぜ、気に入った! このツアー、全力で生ぬるくしてやるぜ!
 ーーえ? 前半は色々違う? ……まぁ細かいことは無視して、ハイキング楽しんでくるぜ!」

 あちらで、鈴の付いた杖を振り回してロックンロール! と叫ぶ『スカベンジャー』ヴィマラ(p3p005079)も、きっと、わかっている。
 はずだ。
「ハイキングしながらの魔物討伐、か」
 言葉での認識を改めた瑞泉・咲夜(p3p006271)は、手につける鉄甲の具合を確かめた。
 ひとつ、ふたつと握っては開きを繰り返し、頷く。
 あらかたの意思が確認できた所で、新たに声が上がる。
 落ち着いた男の声で発せられた音は静かに響き、
「話は済んだか。じゃあ、そろそろ行くぞ」
 と、イレギュラーズの意識を切り替えさせた。


 バックに撫で付けた髪が、微かに風に揺れるのを、『ベイグラント』ガルズ(p3p000218)はなんとなしに感じていた。
 山道に足を踏み入れてからは、天上からの照り付ける陽光は木々から延びる枝葉に遮られ、いくらか過ごしやすくなっている。
「それでも暑いが」
 ハイキングには割と適した環境だろうと、そう思いながら進む。
 踏みしめる山道は舗装らしい舗装はない。が、人が通るための整備は成されている。
 山の斜面を斜めに切り崩しながら作られた道。勾配がキツくなりすぎないようにと考えられ、どうしようも無いところには小さな丸太で組んだ数段の階段が設置されていた。
 召喚前は猟師だったガルズとしては、ある意味歩き慣れた道と言える。
「ふむ。多少足場は悪いが、歩く分には問題無さそうだな」
 と、前列の中で、少し後ろを歩く竜祢がくくっと喉を鳴らして、ガルズの背を見る。
「お前が足で、地面を踏み均したり、邪魔になりそうな石を蹴飛ばしてくれるおかげで、随分と歩きやすい」
 そうでなければ凹凸の激しい道だ。足裏を平に着けて歩けないと疲れやすいし、なによりストレスとなっただろう。
「そうだな、助かっている」
 進む一団でも後列を歩くセーレンも、素直にそう思う。
「後日に来る子供達も、怪我のリスクが減っていい」
 転けたり、足を捻ったり、絶対に無いとは言えない。けれど、その可能性は減っただろう。
「それならいいがーー」
 と、ハイキングする子供達を思い浮かべた時。
 均そうと踏んだ地面に、ガルズは痕跡を見つける。
 落ち葉の混ぜ込んだ柔い土に残る凹みだ。自然には出来ないその跡は、
「足跡……これは人間でも犬でもない」
 魔物だ、そう結論が出た瞬間。 
 激しい動きが起きた。

「魔物だ」
 真っ先の初動を得たのは紫電だ。
 イレギュラーズ中で最も反応がいい紫電の行く先は、最前列より5m程登った所。山道としての経過で言えば、4分の1程進んだ箇所だ。
 そこの横合い、茂みから、緑色の肌をした小柄なモンスター、ゴブリンが出てくる。
「取り合えず止めるぞ」
 先頭切って出てくるゴブリンの眼前に、紫電は躍り出る。前へ出ることを封じるための動きだ。
 それを受けたゴブリン達の動きは、一連したものだった。
 通れないのなら仕方ないと、手にした棍棒で紫電を襲う一体に、残りの三体もそれに倣う。
 敵を仕留める為の連携。というよりは、ただ近くに居るから襲う。そんな動きだ。
 殺到する。
 上段から振り下ろされる四撃へ、刀を水平に構えて受け止めた紫電の体が、沈む。
 否。
「ふっ」
 自ら沈めたのだ。瞬間の衝撃を、屈伸させた膝に逃がし、攻撃直後の硬直するゴブリンを見る。
「そこ、当たるな」
 言葉と同時に、結果が起きた。

 発生したのは、三つの攻撃だ。
 ゴブリンが紫電へ向かうのを認めた蛍が、呪符の一枚を二つの指に挟んで抜き取る。
「ゴブリンさんは、殲滅。ですね」
 そうして攻撃の準備をしながら、彼女は射線の確認を行う。
 前衛の数は五人。つまり、自分の前にその人数がいることになる。
 足場は狭く、そのまま攻撃すると仲間の体に掠める可能性もあった。
「ハイ、ハイ! 撃ったら直撃当たると痛い、寄れたら寄ってね、左がいいな!」
 だから、ヴィマラは声を作った。
 それはとても適当で、微妙にリズムに乗った、歌ーーの様なもので、しかし。
「これで、通せるね!」
 意味は伝わった。
 後衛から前線までの道が、左側に仲間が寄った事で確かに開いたのだ。
 だから、すっきりと見えるゴブリンに向けて、美咲が杖の先端を向けた。
「私は右のね」
「では蛍は左を」
「オッケーじゃあワタシ……残りどっちか適当に!」
 そうして同時に射ち出された三射が、紫電に張り付く三体に当たった。

 所詮はゴブリン、知性の無い敵だ。
 遠距離から穿たれた三体が威力に吹き飛ぶのを見た残りの一体は、可哀想な程の動揺を見せる。
「疲れる前に手早く処理してしまおうか」
 その隙だらけの敵を、竜祢が追撃した。
 後退りするゴブリンの眼前で地面への踏み込みを大きくし、逆の足ですくい上げる様に蹴り上げる。
「力の差を理解するといい」
 爪先が鳩尾に深く突き刺さり、数mを地面から浮いたゴブリンを、セーレンが追いかけた。
 イレギュラーズに広く普及した刀を鞘から抜き、防御の体制も取れないそれに向けて、袈裟へ一閃。
 肩から肉と骨を断ち斜めへ抜けさせて、撃破した。
「次」
 血払いに刀を一振り。
 遠距離攻撃で倒れたゴブリン達へと歩み寄る。
「ーー!」
 その姿に、恐らく敵は恐怖を得た。
 戦うという選択肢を頭からすっぽ抜けさせる程度の恐怖を、だ。
 だからそれらは、迫り来るその恐怖から逃げる様に、山の斜面へと滑り逃げていった。
「追うか?」
「……いや、傷も深いだろうし、大丈夫だろう」
 判断したガルズは、用意されていた魔物避けの仕掛けを取り出した。
 辺りを一通り眺めた彼は、
「臭い袋を設置して、次に向かおう。仕掛ける位置は、大体わかる」
 と、知識を活かしてセッティングの指示を出した。


 山の中腹に差し掛かる程の場所。
 一行は、警戒を密にしつつ、歩を進めていた。
「……便利だよね、あれ」
 土を踏みながら咲夜が見るのは、自分達より先を進む大小二つの影だ。
 それは、人の様なシルエットを持ちながらも人ならざるモノ。
 蛍が先行させた式神だ。
「喋れるんでしょ?」
「あ、ええ、はい。大きい方だけですけれど。敵を見つけたら、知らせる様に命令してありますよ」
 問い掛けに肯定を返した蛍は柔らかく微笑んで、
「前方から来るのであれば、間違いなくわかると思います」
 と、そう言って、直後の事だ。
『にんげんー!』
 その式からの声が響いた。
 伝わるのは、敵の種族が人であること。ならば、来るのは予定している者だ。
「来るよ……!」
 鉄甲の拳を、胸の位置まで上げた咲夜が言う。
 そして、言った通りのタイミングで敵が来た。
「ひゃっはー!」
 山賊だ。
 上半身裸の、荒々しさを感じさせるビジュアルをした四人が、狭い道を四人ぎゅうぎゅうと並んで通せんぼしながら歩いてきた。
「金目のモノを置いてけー!」
 手には手斧。血や垢にまみれて汚れた武器を持っている。
「……俺が前に出る」
 向かう様に出るのはガルズだった。
 事前情報と目の前の容姿を鑑みるに、彼らの攻撃性能は高い。体力に余裕のある自分が行くべきだと、そう判断したからだ。
「金はやらんし先へ通してもらう。それでも来るならーー」
 抜いた短剣を真っ直ぐ突き付けながら、言う。
「さっさと掛かってこい。怖くなければな」
「あんだとごらぁ! っすぞ!」
 挑発だ。
 単純な台詞の煽りだが、山賊には十分だった様で、イキりも強く敵が動く。
 四人で並んでいた隊列を、一列に近く変更した。そうして行うのは、波状攻撃だ。
 足場狭く、動きに制限もかかりやすい場所での戦闘に適した隊列と言える。
「サポートして行くよ!」
 それに最初に対応するのは、ヴィマラだ。
 ちりん。と、鈴を鳴らして杖を振り、放つのは縄状のオーラだ。
 それが、先頭切って突っ走る山賊の足に巻き付いた。
「うおぉなんだごりゃば!」
 驚き、前のめりに倒れそうになるそいつの顔面へ、
「おとなしくしてろ」
 握った盾を、拳を叩き込む要領でガルズがぶちこんだ。
 前のめりに仰け反るという面白い挙動を得た山賊を、飛び越える様にした二人目が、ガルズの体へと斧を叩き込む。
「ちっ……」
 短剣を挟み、肩に刺さる斧が致命となるのを避ける。
「オラオラおらぁ!」
 三人目の動きは、はやい。
 二人目の横をすり抜ける様にしてガルズへ接近したソイツは、盾と短剣の二つを使用した直後の隙を、完全に突いてくる。
「おらぁー!」
「うるさい奴だな」
 だが、そこに割り込む者がいる。
 紫電だ。
 振り下ろしの斧の行く先に、刃を上に向けた刀を差し込んで受けた紫電は、
「語彙力足りないぞ、アンタ」
 カチ上げる様にして三人目を弾いた。
「ここで俺が登場ーー獲ったぜぇ!」
 四人目が、逆サイドからガルズに接近を果たす。明らかに、山道で戦い慣れている動きだ。
 低い体勢の踏み込みから、振り回す様に両手に握る斧が、ガルズの背中に突き立った。

「ちょっと間に合わないな」
 山賊の動きを知覚出来ていた竜祢は、だからこそそう思い、
「参ったな」
 とも思う。
 何が参ったかと言えばそれは、
「殺さない努力は難しい」
 手加減するのがだ。
 さて、どうしたものかと、考えるその後ろで、美咲は杖を地面に立てた。
 そうして、開けた片手を山賊の一人に向ける。
 そうすることで生まれるのは、魔術式の含んだ円形の術式陣だ。
 魔力の通されたそれが発光し、そして、
「シュート」
 短い命令で、魔法が射ち出された。
 それは空間を焼きながら戦場を一直線に横断し、その道程のついでと言うように山賊の一人を豪快に焼く。
「一人ずつ、確実に行こう」
「わかった」
 そこへ飛び込むのは、セーレンと咲夜の二人だ。
 他のイレギュラーズに比べて、一撃一撃の威力も精度も甘い二人だが、合わせて行けば体力を削られた山賊一人を倒しきる事は出来る。
 だから行った。
 新鮮な焼ける臭いを発する山賊の懐に飛び込んだ咲夜は、まず拳を振り抜く。横からねじ込むフックだ。
「ぐえっ」
 脇腹に打ち込まれ、折れる体に追撃を割り込むセーレンは、鞘に納めた刀で思いきり胸を突く。
「ぐぞ、はっ、かっ……」
 肺から吹き出した空気を取り戻そうと、力んだ呼吸が続く。そんな山賊の眼前に、一枚の札が浮かんだ。
「さて」
 と、言葉を作るのは蛍だ。
 他、三人も巻き込む様に視線で舐め、
「さて、蛍達は、幻想国のさる貴族様から山道の調査を任された者。……イレギュラーズです」
 言う。
 実際に依頼してきたのはただの教員だが、ハッタリとしては貴族という響きは強い。
「山賊が出ると知れれば、山狩りが間もなく起きることでしょう。ええ、蛍達の様な人員を動員して、です」
 そうなれば、山賊はどうなるか。考えるまでもない。
「…………マジか」
「マジです」
 少しの沈黙と間が訪れ、そして。
「行くぜお前ら。命にゃかえらんねぇ」
 ほぼ死に体の一人を抱えた山賊は、木々の間に紛れて逃げていった。

「ひゃっはー! 新鮮な鴨だー!」
 山賊を退けて十数分。
 狭い道を埋める様に四人並んだ山賊が、
「いやお前らそれさっき見たから」
 十数分前に見たのと全く同じ陣形で迫ってきた。
 だから、やって来ることも同じだろう。
 そう思い、実際にその通りの事が起きる。
 一列に並び直した山賊に対しては、まず後列からの遠距離攻撃を先頭にぶちこむことでリズムを崩す。後はガルズが注意を引く隙に紫電が一人を抑え、竜祢とセーレン、咲夜が別の一人を戦闘不能に陥れた。
「俺達はギルド、ローレットの者だ。これ以上暴れるなら、大規模な討伐隊を組んで根刮ぎ狩り尽くされる事になるが……」
 と、口端を吊り上げただけの作り物の笑みを浮かべたセーレンに言われてしまえば、やはり山賊にはどうすることも出来ない。
「わたし達がツいていたのか、こいつらがツいて無かったのか」
 逃げていく背中に向けた呟きに、答えるものは無かった。


「うーん見える、見えるけど敵は見えない」
 鳥のファミリアーと視覚の共有をして、斜面を登る様に見た美咲がそう言う。
 間もなく山頂だ。それくらいの位置ならば、どこで敵が現れてもおかしくない。
「……ここらへんに、居るのかな」
 少しでも痕跡や、情報が欲しい。
 そう思った咲夜が身を屈め、道の端に生える花に手を添えて意識を読み取る。
「敵は」
 何処。そう聞くつもりで、しかし。
「ーーッ」
 それが急に来た。
 見えたのは、空洞だ。
 黄ばんだトゲが付いた穴が飛び込んで来たと、咲夜はそう思い、
「ぁ……」
 それが野犬の口腔内のモノだと理解したのは、ソレが自分の首元に深く突き立った後だった。
「チィ……!」
 致命な深さに牙が達する直前に、竜祢の白い大剣が野犬の胴を下から薙いで飛ばす。
 そして浮いた体を、セーレンの刀が上からの振り下ろしで両断。
「一気に決めるぞ……!」
 カンカン! と、盾を短剣で打ち鳴らして野犬の意識を引き付けるガルズが叫ぶ。
 咲夜は動かない。否、動けないのだ。パンドラによる立ち上がりも無いのなら、迅速に場を納めなければ。
「じゃあ」
 それを理解したヴィマラが、ロープを野犬に引っ掛けて掴み、背負う様にして空へ浮かばせる。
「よろしく!」
 そうして浮いた的に向けて、杖の先端を突き付けた美咲は、
「解った」
 短く答えて、魔力の調整も荒く放出してそれを焼いた。
 炭化したそれが落ちてくる間にも、忙しなく、急激な動きは止まらない。
「どうせ、これが最後だ」
 飛びかかる野犬の爪に足を裂かれた紫電は、腰が落ちる。
 傷ついた足を後ろに、半身を前にする構えだ。
 そうして、ターンを決めて再度の突撃をしてくる野犬へ、
「全力で斬る」
 抜いた。
 蒼の軌跡が水平な線として刻まれ、両断を成す。
「ああ、こいつで終わりだ……!」
 腕に噛みつく野犬を、ガルズは引き剥がさない。深く、強く噛みついたその瞬間を計り、腕ごと野犬を地面に叩きつけた。
 脳天から落ち、口が緩んで外れたそこへ、白光が飛び込んだ。
「これで締めです!」
 それは蛍の放つ、光明の式。野犬の体内を貫いて尚、白さを保つ鴉が、空へと飛翔した。

「危ない場面もあったけど、終りよければいいよね」
 ふよふよと、地面から少し浮いて帰路を進む美咲はそう思う。
「ハイキングといえば素敵な景色にアゲアゲな歌! 高みから見下ろす世界は美しいねぇ!」
 しかしヴィマラはどれだけ元気なのだろうか。テンションばかりではなく、安全を再確認しながらの帰り道だ。
 兎に角。
 万全を期したハイキングはきっと、問題なく行われるだろう。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ユズキです。
ハイキングは秋くらいがベストかもしれませんね。
お疲れ様でした、また別の依頼でご一緒出来たらいいなと思います。

PAGETOPPAGEBOTTOM