戦闘薬師は夏に山焼きを敢行する！

オープニング

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『そこにいる』アラギタ メクレオ（p3n000084）は、薬師である。
　ローレットを介して顧客の心配事を解消してストレス解消。そのタイミングで薬を売り、更なるコネクションを構築する。ストレスがなくなってるから効きがいいように感じる。
　薬を売るためにコネクションがいるのか、コネクション構築の手段が薬なのか、定かではないが。
「薬草生やすから、山焼きしてきてくれないかな。群生地を放置してると生えてこないから、お手入れしないとね」
　春にはやたらと燃えにくい薬草畑を焼き、今年は別の土地も夏に焼く。
　草原を維持するため、一定の範囲に火を放つのだ。よそに延焼させないのがポイントだ。火付けと火消しの気持ちを同時に味わえるぞ。火消したくなければ暴走しないように。
　こういうことを言い出してくると、そっかー、薬師なんだー。と思えてくる。
「お互い知らない仲じゃないし。こういうの得意な人もいるでしょ。ここの草、燃えにくくてさ。ちょっと火を放つくらいじゃ燃えないんだ、これが」
　適材適所をそれなりに想定したらしい。
「山焼きって燃やすより消す方が大変だからさ。傭兵がする仕事じゃないんだけどさ。燃やしてほしい若木の根っこモンスター殺す勢いでやらないと燃えないんだよね。たっぷり難燃性の成分を含まれてるから。ん～。魔力尽きるくらい燃やさなきゃって感じ？　あ、草とか切り払うとやっぱり幾分効率あがるかな。ちょっと気を抜くとすぐ消えるから、消火の心配はしなくていいよ」
　笑顔が胡散臭い。
「そう。これは延々と燃やし続ける戦い。火が消えたら負けだよ」
　適材適所を考えたらしい。
「コツコツ地道にしなくちゃいけないことも多いけど、そういうの得意な人もいるよね！」
　こいつ、見てやがる！――って、当然か。情報屋だった。
「という訳で、よろしく頼むよ。ちゃんとローレット通してあるから支払いとかは心配しないでね」
　自分が雇用者として胡散臭いことは自覚してるわけだね。

参加者 : 6 人

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参加者一覧（6人）

リプレイ

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　出発前。
「でも何故こんな真夏に山焼きするんだ」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス（p3p009471）の素朴な疑問。
　情報屋兼薬師は答えた。
『説明すると三時間くらいかかるけど、聞くか？』
　さすがにそれでは不誠実と思ったのか、要するにだ。と続けた。
「どうしてもせにゃならんから、イレギュラーズを手配する。そういうもんだろ」
　戦闘能力より頑健な体目当て。体が目当てなのね、そうなのねっ！？
　薄い本案件にはならないが、薄い報告書案件にはなる。

　そして、現場だ。
　むせかえるフィトンチッド！　地面から湧き上がってくる熱い湿気！　今にも襲い掛かってきそうな虫の気配！　軟弱な都会の住人は即死する。これが自然！
「幻想種とは、自然を愛する種族」
『自然を想う心』エルシア・クレンオータ（p3p008209）は、常に考えている。
「但し、それは決してありのまま全てを受け容れる事では無いのです……もし本当にそうならば、人間種が森を切り拓く事もまた自然の営みとして受け容れている筈なのですから」
　自然へのかかわり方は、千差万別。すり合わせが必要です。
「つまり……大地が特定の植生に偏るのを避ける為に草木を焼くのも、自然を愛する者の責務と言えるのです」
　そういう訳で、フルウェポンで総火力戦を旨とするガーデナーは微笑んだ。
「へー…」
『秩序の警守』セチア・リリー・スノードロップ（p3p009573）は意外そうに声を出した。
「緑に関わる人達って、てっきり『緑に火をつける奴は死刑』的な思考の人ばかりだと思ってたんだけど……」
　世界は白黒ではない。グラデーションかつマーブル、所により色素分解である。
「命を奪う事が罪深いとは解っています。でも、必要な犠牲はあるものです。今はただ、彼らの灰が新たな生命を育み、命が無駄になる事なく受け継がれる事を祈りましょう……」
　エルシアは、にっこり微笑んだ。

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「オーケーオーケー。草原が欲しいけど木々の根っこが邪魔、と……山焼きは初めてやるなあ。がんばるぞ！　まあ簡単でしょ……！」
　メクレオに、「好きな人を虜にするお薬は中長期的に客が破滅して俺が損するから作りません」と言われてしまった『星月を掬うひと』フラーゴラ・トラモント（p3p008825）の破滅しない明日を祈ろう。
「『天気予報』で今日は晴れって知ってる……！　しばらく晴れ続きですっかり乾燥してるはず――」
　その通り。日頃しっとりしているところからここぞとばかりに上がる水蒸気。陽炎が見える。ゆらゆらしている！
「とりあえず真っ当な射撃はないけど、まずやるのは粉々に粉砕する？　オーラキャノンとかで」
『亜竜祓い』アンリ・マレー（p3p010423）の指がクロスボウの引き金にかかっている。
　よく焼くにはまず対象物を燃えやすいように細かくする。なにも間違ってない。
　だが少し待ってほしい。よく役には、色々準備がいるのだ。
「山を焼くなんて滅多に味わえないからな、ストレス発散ついでにきっちり焼き上げてやるよ」
『戦場歩き』クロム・Ｓ・ハーベンス（p3p000234）、あるのか、ストレス。
「で、だ」
　いきなり焼くような真似はしない。お道具作りは大事だ。
「物騒だって？　何言ってんの、こんな機会でもないと火炎瓶なんて作れねぇだろ！！」
　度数がくそ高い酒の封を切り、その中にぐいぐい新聞紙を詰めていく――自分の記事が載っている奴ではなかろうか。ちょっと精神状態が心配――クロムの笑顔がさわやかで何よりです。
「実用的に燃やすもあり、ネタとして活用するもありで美味しいアドリブアイテムだ！」
　即席だから効果は微妙なのだが、テンションをヒャッハアさせるにはめっちゃ効く。
「ほれ、君もおひとつ」
「ありがと。でもほら」
　アンリの荷物から油やらパリピ御用達の甘くて苦い薬草酒。大丈夫。合法だから。考えることはみな同じ。
「じゃあ、これを」
　クロムはニュースペーパーを差し出した。
「焼くためのものはSADボマー」
　自立自走タイプの爆弾とか。
「着火しやすくなれば爆破でも燃やすことはできるんじゃないかな？　それと制圧攻勢」
「燃料に引火してとかお父さんが大変だったと言ってるし、これも引火する物が用意できている状態なら十分な火力になるんじゃないかな？」
　一年前からアンリを育てているウォーカー夫妻。教育方針について最寄りのローレット事務所に提出してください。
「ほんとは火矢にしようと思ったけど、ボウガンで射出する攻撃手段がなぜか見当たらないんだよね」
　弓と違って、本体との距離が近いから取り回しに難が出るのだろう。開発の余地はあるだろうが。
「自前の焔式っていう便利な着火技もあるし、こいつでガンガン燃やしていこうぜ！！」
　この時のクロムは、のちにあんなことが起こるなんて露とも思っていなかったのです。

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　じゃっこじゃっこじゃっこじゃっこ。
　スコップで掘り返す土の音が耳にやさしい。
　さすがにズタ袋に入った白骨死体が出てきたりはしない。
「本当に消火は任せていいのか？　そうだとしても、外周の草を刈って防火帯を作った方が安全だ」
　イズマは難燃性の作業着にスコップを担ぎ、せっせと防火帯を作り始めた。周囲の環境を気遣うその姿勢、イエスだね！
　まだまだ端っこからまんべんなく焼く前段階の細かいお仕事が続くお。
「去りなさい、虫達よ。ここにいては命がなくなりますよ」
　エルシアは虫たちに危機を知らせた。フンコロガシでも十分逃げおおせられるであろう時間は十分あるだろう。何せ――。
「まず周囲の草木を切り刻み根を掘り起こし、燃やしやすくする」
「うんうん、火は上へと行くので山の山頂付近から下へ行くとコントロールしやすいかな。後ずさるようにやれば囲まれない。風の向きはね……」
　イズマとフラーゴラがどっちから燃やして、どっちに逃げるか打ち合わせ。
「じゃあ、掘り返しいくよーぉ」
　アンリがオーラキャノンで地面を耕しだした。宙を舞う芋虫。
「ぴいいいいい！　虫があああ！」
　フラーゴラのかわいらしい高周波な悲鳴。妙齢な女子が上げる悲鳴からしか摂取できない栄養素がある。
「BSこそ、この看守に任せなさい！　抵抗力は誰にも負けない自信があるもの！」
　セチアが虫に侵すこと能わずとの意思を載せて殴り飛ばしていく。
「別に虫が怖いって訳じゃないけど、作業中に不意に来るのは困るし普通に嫌なのよねー…」
　なんか色々つくしね、何とは言わないけどね。
「燃やす事に集中したいし、レジストクラッシュで何匹かぶん殴ったら帰ってくれないかしら……？」
　変えるというか、ぞろぞろとどこかに移動していく虫。襲い掛かってくる虫。断固として動かない虫。ああ、それぞれの生存戦略。
「――み、みんなにAP供給。虫のBSもこれで対応だよ……！」
　フラーゴラがイレギュラーズたちの内なる華を開かせる。今は、より効率的に虫を――いや、畑を焼くため！
「ふあああああああああっ！」
　フラーゴラは、触れれば飛び散る鳳仙花の種のごとく縁談をまき散らした。
　どこかの世界の花言葉「私に触らないで」のごとくに。
「ぐおおおおおお、なんだこの虫共！？　足から這い上がってくるんじゃねえ！！(火炎瓶or焔式を足元に」
　焔式で着火し、火炎瓶をばらまいた、
　ところで、クロム。それだインセクト系とパニックムービーで４５分経過辺りで虫にたかられて死ぬヒトのフラグが立つから言動に気を付けた方がいい。
「あっちいいいいいいい！！！！」

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「生半可な火では燃えないというのなら、火線砲の火力ならどうでしょうか？」
　エルシアの問わず語りが止まらない。内省しているともいう。これが自然との対話。
「植物の回避と防技を0だと仮定すれば、直線上40ｍに対して命中度含めてダメージ期待値4000程度」
　すでに魔力回路は回っている。全身の全ての力を魔力変換し、破滅的威力の熱線を生み出す大技だ。
「流石に根ごと消し飛ぶでしょう……しかも、着火する前に標的を吹き飛ばすので燃え広がらないタイプです！」
　うわあ。高火力。
「――虫たちは逃げてくれたでしょうか。念のため――」
　エルシアは、罪を犯す覚悟を深く祈った。覚悟を持つ者への悪意は身をむしばむ。
　これで、土の中で焼け出され花火のように爆ぜた班品hh賞の虫がエルシアに襲い掛かることはない。体を削って魔力に注ぎ込んだエルシアには飛んで火にいる夏の虫で十分致命傷なのだ。
むしろ、この劣化した環境で死ぬんじゃなかろうか。
　生きてる限り絶好調。針の上でタップダンスを踊るピーキーさだ。
　数瞬後、超特大の火柱がメクレオの畑をなめ尽くした。

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「火は暑いし天気もいいのでドロドロ……」
「俺は『過酷耐性』があるし死なないから問題ないが、普通に考えたら酷だぞ？」
「はぁ……はぁ……なんだ、調子に乗って燃やしまくってたら息苦しくなってきたな……歳か？」
「まぁ4％の確率でファンブルするけど」
「まだ脚に虫がいる気がする……うう……灰でワタシの自慢の白い髪がすすけてるう」
「うぐぐ焼ける……機械化部位が融けそう……！」
「森羅伝心があると、きっと植物達が苦しむ声も聞こえてしまいますね……」
「火の海状態だとしても私なら突っ込んで行けるはず！」
「ああっ風向きが変わって煙が！　びええええーーーー！」
「あ、虫出てきた。あっ脚部で焼けた。汁がっ！」
「悪辣が詰まった刑務所で仕事したいと思うなら、これくらい耐えなきゃ！」
「アンリの声がしないっ！」
「うぇ、ごほ……って火に囲われてんじゃねえか！？　おい逃げるぞ！」
「帰りたい……お風呂入りたい……こんな姿アトさんに見られたくない……」
「4％なんてここぞって時に引く訳無いわよね！　……ね？」
「でも……苦しんでいるという事はまだ生きた根があるという事」
「……痛って、生身の部分は普通に痛い！」
「返事しろーっ！！」
「声が聞こえた場所は後で聞こえなくなるまで措置する事に致しましょう」
「いっそ極限まで耐え抜こうじゃないか。」
「どうしてもしぶとい根でも火線砲IIなら焼けるでしょう」
「これは修行！　ストレス発散！　踏ん張れ！！　うおおおお！！」
「煙が目に染みるよおおお！」
「燃えぬなら火力上げよう燃えない木」
「お山は消毒だあああああ！　ファイヤーーーーー！！」
「私はこんな所で負けたりしないわ！」
「何で叫んでるのかってえええええ？　そっちのほうが効果ある気がするからああああ」

　い～んふぇ～るの～っ！
　エルシア的に、何の声も聞こえなくなるまできっちり畑は焼かれた。

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「……なんか酷い目に合った気がするけど、これでやり遂げたは、ず……！」
　セチアが肩で息をしている。消耗しきっているのは４％のせいではない。多分。きっと。自滅とかじゃないから。ほんとに。
「上から見て燃え残りが無いか監視する感じ？」
　比較的涼しい顔をしたアンリがひょっこり現れた。
「アンリ、今までどこに」
　火炎瓶ナカーマのアンリを呼んでいたクロムは声が枯れていた。
「火に巻かれそうな人がいたから、離れてもらった」
　それも業務の一環。
「よし、やりきったぞ。スッキリした！」
　耐えた分だけ復讐を乗せて、さらなる火力を草木に叩き込んだイズマの笑顔がまぶしい！　なにしろ、ぴかぴかシャボンスプレーで身体の煤や灰や泥を落としたからね。煤まみれのフラーゴラの眼光の鋭さで刺殺できそうだ。
　後は、溶けた火炎瓶のかけらを回収して終了だ。何しろ畑だから。ちょっと熱いけど、がんばって？

成否

成功

ＭＶＰ

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。きちんと細やかなお気遣い。メクレオも喜んでおります。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。