シナリオ詳細
夜海に咲く万華之焔
オープニング
●
シレンツィオ・リゾート。
近年注目されているフェデリア島に建設されたリゾート地で――キルシェ=キルシュ(p3p009805)は珍しいモノを見つけていた。それは、海の近くにある露店で販売されていた『花火』の一種であり……
「でもね! なんでも、持つ人の感情によってね色が変わるらしいの! ほらほら見てみて! リチェが持ってるの、黄色く光ってるけれど、お店の人が持って試してくれたら蒼かったのよ!」
「へぇ? 持ってる人によって色が変わるなんて、確かに珍しい代物やね」
「ふぅむ。持ち主のなんらかに反応してるのかねぇ。しかも花火たぁ今の時期に似合うもんだ」
彼女がその花火をもってして語り掛けるのは蜻蛉(p3p002599)に十夜 縁(p3p000099)へと、だ。
近くではキルシェに懐いているジャイアントモルモットのリチェルカーレ――キルシェが『リチェ』と愛称で呼んでいる子もいる。リチェは花火の輝きを楽しむ様に、そして実演する様に手元で火花を散らせているものだ。
その花火の名は『万華之焔(ばんかのほむら)』
キルシェが説明したように、持っている人物に呼応して色を変える花火であり。
万の華へと変じる様に応じて名付けられたらしい。
「それとね。聞いた話だと、誰か他の人に近付くと、また色が変わるらしいのよ!」
「ホント? ふふ。そら、試してみたい所やね――」
「あぁそれじゃ、近くに確か浜辺があったよな。そこまで行ってみるか」
更には、近くに人がいれば更に変じるのだと……花火はおろかキルシェの目すら輝かんばかりに期待していれば、蜻蛉が視線を縁へと向け、縁もまた穏やかに口端を緩めながら意図を察するものだ。
丁度たしかこの近くには静かな浜辺があった筈だから、と。
向かってみた――までは良かったのだが。
「…………おいおい、なんだありゃあ?」
縁は、見た。浜辺を占拠する様に群がっている――少し大きめな海老の姿を。
いや正確にはアレはロブスターだろうか……巨大なハサミが特徴的なその個体の名は『ロブスター・マルクイット』。この付近に時折出現する個体であり、周辺の魚などを喰い尽くさんとするちょっと困ったロブスターである……
が。実はアレ、食べると結構美味しいらしい。
かなりの肉厚。弾ける程の食感と、重厚なりし肉は正に絶品で、一部の漁師は血眼になって探す事もあるんだとか――そんな話を思い出していれば、おっと腹もちょっとばかし空いてきたか。
「折角だ。他の食材も買い込んで――バーベキューってのも悪くないな」
「!! いいわね、それ! ルシェもお手伝いするわ!!」
「ふふ。でも花火も忘れないように――ね?」
プィィ~♪ おっと三人に続けてリチェも乗り気のようである……!
然らば食材を買って、ロブスター共もバーベキューの材料として狩って。
静かな浜辺を取り戻せば――後は大望の花火を楽しむとしようか。
あぁ……空には満天の星空が広がっていた。
イレギュラーズ達が咲かす、地上に輝く星を今かと――待ちわびる様に。
- 夜海に咲く万華之焔完了
- GM名茶零四
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年07月31日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
夏の海。浜辺で遊ぶ、ロブスター。
さっさと狩って、バーベキューかな――字余り。
「ぬぅ、アレはエビではないか! 花火を食べられると聞いたのに、エビまで見られるのか!」
コホン。テンションのあまり、なんだか文章が入り乱れてしまった『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)だが、咳払い一つと共に平静を取り戻すものだ。祭司長はこの程度では焦らない! あと祭司長。正確にはエビじゃなくてロブスターです。
「どっちも似たようなモンじゃろ。さて……落ち着いて楽しむ為にもしっかり片付けんとな」
「はは。バーベキューの材料も現地調達出来るたぁな……ま、俺はちょいと魚介の類は遠慮させてもらうんでな。狩るには狩るが――ロブスターに関しては皆で楽しめばいいさ」
「あなたたち、とびっきり美味しいってお話やし……早くお料理させて頂戴な」
ともあれまずはロブスター共を片付けようかと『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)に加え『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)は浜辺をゆったりと眺めるものである。野菜や肉に関しては既に近場のお店で揃えてきた……着物の袖を蜻蛉は捲りながら、完全に調理前の微笑みをロブスター達に向けて。
「蜻蛉さん、十夜さん、今日はお邪魔させていただきます。ルシェさんも、よろしくね」
「はーい! マルクさんも、よろしくね! それにしても……あのエビさんはルシェたちのご飯になりに来てくれたのね! 頑張って狩らせてもらうわ! ね、リチェ!」
「わぁ。キルシェさん、張り切ってますね。
ふふ。リチェさんも久しぶりですね。撫でてもいい?」
さすれば縁達に挨拶を交わすマルク・シリング(p3p001309)は近くで張り切っている『桜花の決意』キルシェ=キルシュ(p3p009805)にも視線を滑らせるものだ――さすればキルシェはジャイアントモルモットのリチェと視線を合わせ、更なる笑顔たるもの。
近くには知古の『夜空見上げて』クロエ・ブランシェット(p3p008486)もいてリチェの顎下あたりを擽る様に撫でている――さすればリチェは『ぷぃぃ~♪』と気持ちよさそうだ。満足気な表情を見ればクロエの表情も緩むもの。
ま、でも今は海老さんね! とキルシェが其方を振り向けば。
「とっても食べ応えがありそうだわ! エビさんは鮮度が命と聞くし――
つまり氷漬けにしたら鮮度ばっちりよね! うんうん冷凍しちゃいましょ!!」
「ロブスターか。昔、依頼でロブスターを狩ってビスクを作ったな……あの時の味も、なんだか懐かしいものだ。ま、とにかく折角のロブスターなら――今回も是非食材にさせてもらおうか!」
更に『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も続く。彼は以前に食した事のある場面を想起しながら……再度のロブスターへと己が武と食欲を向ける。海老らが嫌な予感をしてイレギュラーズ達の方を振り向くものだが……もう遅い。
「僕好きなんですよね、海老。煮て良し、焼いて良し、蒸してよし、生でもおいしい。こんな素晴らしい奴はいませんよ――ちなみに僕は基本生です。やっぱり連中は生が一番ですよ。ぷりっぷりの食べ応えを愉しむのが一番ですね。
と言う訳で――あなたたちには今日のご飯になっていただきます!」
もう完全に『狩る』目をしている『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が突っ込んできているのだから。今日はでかいなりの食いでがありそうで、尚に楽しみなのだ。
ハサミにだけは注意し踏み込み、海老(食材)を抑え込む様に往けば。
更に続く形でクレマァダの一撃が天より叩き込ま――いや待てよ?
(いかん。これでは万一、身が焼けてしまってはかなわん。やはり此処は――!)
「活〆じゃな! うむうむ、やはり新鮮さこそが命よ! ……むっ? 海老は無脊椎動物じゃから活〆ができんではないか!? えぇい氷水で冷やせれば簡単なんじゃが、倒した瞬間手取早く殻を剥いてしまうほかないか! うぉぉ大人しくせぇ――!!」
「そうそう。僕もその方針で行こうかなと思ってね――さ、これで活け締めって所かな」
方針転換。マルクと共に、不殺たる撃が海老に放たれるものだ。
クレマァダが姿勢を崩させ、マルクの放つ光が連中の気を奪う様に。続けざまにはキルシェの氷の魔術も降り注ぎ――更にはクロエの放つ黒き犬の妖精が、連中の殻を食い破らんとする。あ、食べちゃダメですからね! まだ!
「大丈夫よ。大人しくしてれば――痛くはせぇへんからね?」
「ま。ステージ(海洋言語で『鉄板』と読む)までのエスコートは任されてるから――後は適当にいい感じに焼かれて喰われてくれや。お前らの事(味)は皆が覚えてるだろうからよ」
さすればなんとか抵抗を見せんとする海老達だが、歴戦のイレギュラーズ達には敵う所か逃げる事すら出来ず。最後に見えた光景は――にっこりと微笑む蜻蛉と、殻すら断ち切る一撃見舞う縁の姿であったとか。
●
「――とまあ、冒頭から色々あって今に至るってわけだ。お疲れさん」
「お疲れ様です、十夜さん。後は料理の準備かな……よし。
折角の海にいますから、もうすこし食材を増やしてみますね」
そしてあっという間に平穏が取り戻されれば、BBQの準備が進み始めるものである。
縁の手に抱かれているのは酒と、未成年用に仕入れていたジュースの数々だ。やはり海辺でなんぞや喰らうならばコレが無ければ始まらぬと――そしてマルクは今少しばかり海の幸を増やさんと海に駆り出すもの。
砂浜で潮干狩りを行えば……おぉ取れる取れる数多の貝が。
スープに入れれば美味い出汁が取れるだろうか。更には長釣り竿を用いて魚をも狙わんと画策し。
「我は先程捕らえた海老に仕込みを入れるかの。基本は茹でじゃがBBQスタイルなら、やはり豪快に殻ごと焼くのもありじゃな……取れたてじゃからサシミもうまい。うむむ。如何な形で進めるか、悩むの!」
「楽しみですねえ、海老。ロブスターなんですっけ? 違いはとんと分かりませんが。まぁどっちにしろ似た感じなのは間違いないでしょうし、スープとか焼いたりとか、そこも似た感じで行けるでしょう。お手伝いしますね」
「そうやね。大事な命やし、余すところなく頂きましょ!」
一方で先程の海老クッキングを行わんとするのはクレマァダにベーク、そして蜻蛉だ。
手際よく料理として整えていく蜻蛉を中心に、クレマァダもなんとか頑張……頑張……
「……こう、その、じゃな。焼いて砕いてソースアメリケーヌやビスクに……頼むぞ……我は魚やイカタコも探してくるが故!」
「ふふふ。はいはい、任せといてね」
頑張ったけど、料理の上手そうな者に頼むとしよう! べ、別に諦めた訳ではなく適材適所というヤツなのじゃからな!! と言う訳でクレマァダは蜻蛉に調理を託し、釣りを行っているマルク側の方へと。ふっ、流石シレンツィオ。海の幸も豊富であると。
「あ、イズマさん。申し訳ないんやけど、こっちの殻剥くのちょい手伝ってもらえる――?」
「ああいいですよ。そこを剥いたら焼く作業に入りますね。熱が入ったらより旨そうだ……と、あれ? あっ! 間違えてベークさんを串に通して焼く所だった! ごめん……」
「ふっ――慣れたものですよ。ええ、まぁ、ホントに……慣れたものですよ……」
然らば蜻蛉は力のありそうなイズマに殻剥きを頼め……ば。ベークが誤って調理される寸前であった。慌てて作業中断。危ない危ない!
「蜻蛉ママ、ルシェもお手伝いします! あのね、あのね! 此処にね、もうお野菜は用意してるのよ! ほら此処にトウモロコシが……あれ? リチェ……つまみ食いはめっ! なのよ!」
「リチェさんは相変わらずですね。後で皆と一緒に食べましょう? ね?」
ぷぃぃ!!? キルシェに叱られショックの表情を見せるリチェ。
一口だけ。一口だけ~という様子で擦り寄ってくるが『めっ! ダメよリチェ!』と、もふもふしながら怒られれば、傍で様子を見ていたクロエは仲睦まじい様子に微笑みを見せるものである――
かくして進んでいく調理と調達。
クロエも家事に優れし経験を活かして手伝えば……やがて生じるは美味なる匂いだ――わぁ。これは海老のスープだろうか!
「蜻蛉ママ、エビさんのスープ凄く美味しそう!」
「お味はどうやろか? ちょっと味見してみぃる?」
「え、味見して良いの!? ありがとう!! はわぁ……!
とーってもエビさんの美味しさがぎゅーと詰まっててすごく美味しいわ!」
であれば目を輝かせて見据えるキルシェへ、蜻蛉は味見役をお願いするものだ。リチェはさっきつまみ食いしちゃったからダメよ~! 後でいっぱい食べさせてあげるからね。
――そして準備が整えば他に散っていた者達も戻り始める。
縁が更に酒や飲み物を揃え、マルクやクレマァダが海の幸を確保して。
そればかりか肉や野菜と言ったモノも揃えば正により取り見取り。
「あぁこのロブスターは絶品だな……! 新鮮で美味しい。肉厚で濃厚。最高だな……!」
「うーん、海の幸の贅沢な所をぎゅっと集めて、食べてるような気がするね。これぞ正に海洋の夏を感じるよ……さっきマグロやカツオ、海底にいるヒラメも頑張って取って来たから、これも調理しようか」
「しかし食べ切れるかのうコレ? まぁ獲った以上は喰らってみせようが」
「しかしスープとか焼いたりとか。やっぱり味がついてたり手が加えられたりしてると味って変わるものですね。後は調理する人によっても変わるのでしょうが……えぇ実に美味しいです。海老おいしい」
さすればイズマがまずに頬張るはロブスターだ。やはり話に聞いていた通りの至高であり、噛めば噛む程に味わいを実感できる……次いでマルクやクレマァダ、そしてベークもロブスターを中心に作り上げたスープの味わいを喉にて感じ得るもの。
野菜のスープも美味いものだが、魚介の出汁はまた違う絶品である。
濃厚にして芳醇。そう感じているのはクロエやキルシェもであり……
「わぁ……本当に美味しいですね! あ、もちろんお肉と野菜もいただきますよ。鳥だけはちょっと避けますけど……」
「ルシェはさっきスープは味見したから、生の海老さんから食べるわ! 焼いたのもスープも美味しくて幸せ……リチェも食べる? お野菜も美味しいわよ!」
ぷぃぃ~♪ あちらこちらから絶賛の声が響き渡るモノ。
「クロエさんにも堪能してもらえてる様で、良かったわぁ。あ、そえと……お刺身に蒸し焼きに……海老が駄目な人の為に、お野菜やお肉もあるよってよおけ食べてね」
「はっー……一仕事した後の一杯ってのは特に旨いねぇ。この瞬間が最高なんだよなぁ」
「あぁ縁さん。いい肉の食べっぷりだね――お酒も進みやすいのかな」
「やっぱりこういうのは味が濃いからなぁ。さて、一段落したら……花火も試してみるかい?」
そして――皆の食べっぷりを蜻蛉は満足げに眺めるものだ。
ご好評な様で何よりだと……魚介の類は食せぬ縁は肉や野菜を中心に取っているが、それは蜻蛉も準備したいたが故に問題なし。さすればそんな縁へとイズマが語り掛ければ……縁は酒の盃を一端置いて、例の代物を取り出すものだ。
――万華之焔。持ち主によって色を変じさせる、花火を。
●
そして――美しき万華之焔の時が訪れる。
「おぉ。花火はえーと、こう持てばいいんですね? おお、着いた。
……赤色ですか。うーん、よくわかりませんが、落ち着く……んでしょうかね。
なんで赤色が検出されてるのかは分かりませんが。まぁ確かに綺麗ではあります」
「ベークさんは手持ち花火は初めてやの?
花火って言うたらお空に挙がるのがパッと思いつくんやろうけど……
……お空に上がるだけやのうて、こうして手に持って、見上げない花火もあるんよ」
「はは。僕は白色だね――いやちょっと色が混じってるな? 灰色……?
いやちょっと蒼っぽい気もするな。ブルー・ミストかな?」
早速に。その花火を抱いたのは、ベークにマルクだ。手持ち花火に慣れぬベークへと蜻蛉が言を紡げば……おぉしかと点いた。ベークは赤色。マルクは些か白に近い蒼色の焔が点灯している……
精神の色を映し出すとも言われているが如何なるイメージがあるのか、とその時。
「あれ? ちょっと……ほかの人が来たら橙というか、茶色になるってどういうことなんですか? ていうかなんか匂いも甘い感じに……なんで匂いも変化するんです?」
「匂いは気のせいではないかの? そんな機能は流石にない気がするのじゃが……
おぉ。我は――色が変じおるの。最初は深き青で……段々淡くなりよるわ」
ベークの花火色は何故か茶へと変じた。いや色が変わるのは良いんですが、なんで? なんで橙~茶ぐらいの色になるんです? 尽きぬ疑問の近くにて、クレマァダの代物は……青足り得る色であった。
……打ち上げ花火も良いが我はこちらの方が好きじゃな。
騒がしいのも……最近では嫌いではないが、やはり、静かに過ごす時間は何にも代え難い。
「さて――と。じゃあ舟も準備しようかな。
これは、ある地方の弔いの儀式を模したものなんだ。『精霊流し』って言ってね。
ルシェさんは知ってるかな? いっしょにやるかい?」
「あっ! ルシェも聞いた事があるわ……弔いの花ね。ルシェもやる!
ん? リチェもやる? じゃあ一緒にね! ほら、これ持って!」
然らば。静かなる気配を感じ取れば……マルクは小さな舟を作るものだ。
人が乗るものではない。花火を乗せて海に流す、儀式が一つ。
……この前の深緑では犠牲になった者も多い。
だから、せめてこの場で弔いを。
遥かなる海に――鎮魂の意思を。
キルシェが火を灯せば穏やかな黄色。リチェは、モルモットの様な明るい茶色だ。
双方組み合わせれば朗らかなピンクに。
ああ――届くだろうか。この美しい光が、彼方に往かれた皆々に……
「深緑ですか……茨に閉ざされた時はどうしようかとちょっと怖かったですけど、今は少しだけほっとしてます……キルシェさんもお家に帰れたんですよね?」
「うん! 今はもう大丈夫なのよ!」
「そうですか――良かったです」
さすれば。クロエもまた火を灯し……同時にキルシェに問いかけるものだ。
あの事件は色々と悲しい事があった。
妖精郷の女王様のことや悲しいこともあったけど。
復興に向けて前に進んでいきたいから――
「わ。私のは――何でしょう。夜空の様な……濃い藍色と、白が混じってますね」
そしてクロエの焔はまるで夜空と星空をイメージしたかの様な色合いであった。
美しき色合い。他者と混じれば、時々に星空の色の部分が変じて、様々な星色に……
「精霊流しと言うのか……風情があって落ち着くね。
じゃあ俺も一つ、乗せようかな――あっ。
俺のは皆と混ざると、緑……いやシルバー・グリーンみたいな感じだなぁ」
更にはイズマのも変化し、淡い緑の様な色合いへと成りうるものだ。
調和の様な色。これもまた美しく、見惚れるが如き時間を一拍、二拍……
「――祈りか。然らば、我も捧げようかの」
そして。舟に花の焔を乗せれば。
クレマァダは息を吸う。海へと赴く、舟にまた、その言も乗らせる様に……
うみよ うみよ ははなるうみよ。
おんみの かいなに いだかれて。
ひとつに もどった ものたちの。
やすらかなるを いのりたまえ。
いのりたまえ いのりたまえ♪
――響き渡るはこの場のみに。
誰ぞ彼そに、平穏なる一時を。
美しき地上の星々と――共に。
「キルシェちゃんの花火も綺麗やねぇ……あら。一緒にしてみたら、白」
「蜻蛉ママー! 蜻蛉ママとだと優しい白ね! ふふ、面白いわ!
じゃあみんなのだと何色かしら! とつげき――! リチェ、いくわよ!」
だけど。舟が流れてもまだまだ花火は続く。
ハイテンションのキルシェはリチェと共に皆の方へと駆け寄って……と。
「……知っとる? 合わせたら、淡い紫やって。紫は”優しさのお色”なんよ」
「優しさの色、か……俺が優しく思えるんなら、そいつはお前さんに釣られたんだろうさ。というかあのなぁ……俺の花火ばっかり見てねぇで、お前さんは自分の手元から目を離しなさんな。火傷しても知らねぇぞ?」
「ふふ――心配してくれとるん?」
一方で蜻蛉は、彼の隣に往くものだ。
縁。彼の焔は、火をつけた先――海のように青く光が燃えて。
だけど蜻蛉の輝きが至れば変わっていく色合い。
……隣を見ずとも分かる。彼女が傍にいるのだと。
新しい花火を抱いている彼女の色は――最初、薄い桃色。
だけど。縁の色が変じるのに伴って、蜻蛉の色も移ろい往く。
「あ、見ぃて? 赤紫……紫陽花の御色みたいやねぇ。とっても綺麗」
と、その時。
縁が視線を上げれば、色とりどりの光に染まる――蜻蛉の横顔が見えて。
思わず。口端が動く。
――それはお前さんの方だろ。
呟いた声。それは、花火の音にかき消された。
浜辺に打ち寄せる波の音にも。涼む様な風の音にも。
蕩ける様に。解ける様に……
その言の葉を知るは――散り行く消える花火のみであったのだろう。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――夏の一時。楽しくも美しい、一時であれば幸いです。
ありがとうございました。
GMコメント
●目標
魔物を排除して、一時を楽しみましょう――
●フィールド
シレンツィオ・リゾートの一角に存在する浜辺です。
場所的には三番街の付近でしょうか。時刻は夜で、周囲に一般人は見当たりません。後述の(とっても美味しい)魔物が出現していますので、彼らを片付ければ後は存分に楽しむ事が出来そうです!
ロブスター達を順当に狩れれば後はバーベキューを楽しんだ後に、終わりに花火の時間に移行するかと思います。戦闘よりも花火らの方がメインになりますので、プレイングも花火などに比重が大きくて全然OKです。よろしくお願いします!
あ、ちなみにバーベキューの食材は買ってきたという事で、下記の(現地調達の)ロブスター以外にも沢山持ち込んでいてもOKです。野菜とか他のお肉とかもね!
●敵戦力
●ロブスター・マルクイット×2匹
リゾート地に出現したちょっと大きめのロブスターです。
彼らは縄張りとする場所に住まう己より弱い魚らを狩り尽くす、ちょっと困った存在らしいのですが……しかし捕まえて食べると美味らしく、最近は漁師によく狙われてる存在でもあります。
あぁ火を通せばとても柔らかく、噛み応えのある肉厚な海老が其処に在る事でしょう……じゅるり。醤油がいいかな。それとも塩だけで食べてみようかな。いっそ生エビで楽しむという手も……
ともあれ。戦闘方法としては大きめのハサミを持っていて、そのハサミで敵を両断しようとしてきます、が。動きは緩慢な為、注意していれば回避する事は容易です。数も少ないので正直戦闘自体はそこまで難しくないです。
サッと倒して後はバーベキューと花火を存分に楽しみましょう!
●万華之焔(ばんかのほむら)
シレンツィオの一角で売られている、特殊な花火です。
持ち主の感情に呼応して色を変えるのだとか……更には、近くに他の人がいると混ざり合う様に別の色にも変わるようです。故に万の華をイメージして名が付けられたのだとか。
夜の海にとても映える代物だと思います。
貴方の色は、何色でしょうか?
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
Tweet