シナリオ詳細
ビールが逃げるので捕まえる話
オープニング
●夏といえばビール
「うわー! ビールが飛んだぞー!」
今年の夏は暑い。凄く暑い。
水があれば飛び込んでバタフライしたい程度には暑い。
ちなみにすぐそこで噴水に飛び込んだ馬鹿がいる。さておいて。
だからこそ、ビールが飛ぶとか、そういうことを言い出すアホがいても仕方ない。
いや、ちょっと待て。
本当に飛んでいる。ビール樽が合体変形して飛んでいる。
一体何処に行こうというのか?
そもそもなんでビール樽が合体変形しているのか?
分からない。分からないが……現実は受け入れなくてはいけない。
これはアルコールがもたらす幻ではないのだから。
それに此処は鉄帝だ。ビール樽が人型に変形合体したくらいで驚いてはいられない。
「チェエエエエエンジ、ビールバード!」
見上げる空ではビール樽たちが人型から何か別の形に変形しようとしている。
ああ、もう理由は誰の目にも明らかだ。
どっかの研究所でまた何かロクでもないもの作ったんだ。
そしてまたソレが逃げたんだ。
諦めにも似た境地の中、ビール樽たちは分離して、また集合していく。
そうして……。
「あー、やっぱり……」
響いた住人の声の示すとおりに。
ちゅどーん、と変形失敗して大爆発を起こしていた。
しかしこの問題。これだけでは終わらなかったのである。
●鉄帝のビールの危機
「鉄帝のビアガーデンが今ピンチです」
旅するグルメ辞典』チーサ・ナコック(p3n000201)は、集まった面々にそう切り出した。
ビアガーデン。
主に建物の中で楽しむビアホールとは異なり、屋外で楽しむ酒場のことである。
あくまで鉄帝流の解釈なので気をつけるように。
さて、そんなビアガーデンだが通常はビールを含む酒類、そして簡単な料理やおつまみなどが提供される。
具体的にはキンキンに冷やしたビールと、焼きたてのウインナーなどが定番だろうか。
まずはビールをぐいっと喉に流し込み、フォークでウインナーをブスリと突き刺して口に放り込み、パリッと弾けるジューシーさを楽しみビールで口の中を洗い流す。
ああ、なんと素敵な無限機構。
夏の暑さも相まって、きっとビールが進むことだろう。
しかし、しかしだ。
そんなビアガーデンで提供すべきビールの樽が、何やら変形合体してしまう事件が続発しているのだ。
走ったり飛んだり、まあそういうことをするようなのだが……どうやら例によって鉄帝の研究所での古代文明の技術の解析中に起こったことであるようだ。
ビール樽に取り付き合体変形機構をもたらす超極小ナノマシン。そういった代物であるらしい。
暴走させてしまった研究員は責任をとってバンジージャンプの刑になっているのでさておいて、ナノマシンは止めなければならない。
しかし今までの事例を見るに、樽が壊れる程度では他のビール樽に取り付いてしまう。
「そこでコレです」
言いながらチーサが取りだしたのは練達で売ってそうな子供向けスペースファンタジー風のレーザー銃の玩具みたいなものだ。
「ナノマシンブッコロ銃です。今回のナノマシン対応に特化したビームを放つです」
試しにチーサがその辺に向けて引き金を引くとビビビ、と冗談みたいな色のビームが出る。
樽を破壊してコレを撃てば、ナノマシンが機能を停止する。そうなればもう、新しい樽が乗っ取られる心配もない。
つまり今回は、そんな感じの「大人の夢を守る」お仕事なのである……!
- ビールが逃げるので捕まえる話完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月30日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●樽がいっぱい
樽、樽、樽。
樽がいっぱいある。
鉄帝人は皆お酒がだーい好き!
ビアガーデンでビールがないなんて事になったら大騒動間違いなし。
たくさん用意されているのは当然のことと言えよう。
「困っているという人がいると聞いて、ヴァイスドラッヘ只今参上!」
そんな中に現れたのは『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)だ。
「ビール樽が自分から動いて暴れるとか、そんなことあるわけない!……といえないのが混沌ね。実際、目の前で暴れているし、色々な人が困っているわ。助けを呼ぶ人がいるならヒーロー「ヴァイスドラッヘ」の出番! さぁいくわよ」
なんという頼りになるヒーロー、ヴァイスドラッヘ。
鉄帝の(ビールの)危機に立ち上がってくれたのだ!
「……ビール楽しみー!!」
おおっと。
「ビールだって? 何だか分からないけど、ヴァリューシャのお土産に狩り尽くしてやる!!」
「どれが本物でどれが規制してるか分からん? いい考えがある、全部飲み干せば全て解決だ。ここの成功報酬がタダ酒なんだろ? なぁに成功させればいいってことだ。あん? この後騒ぎたいから残してくれってそれなら仕方ねえ前向きに善処してやるよ」
『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)と『放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が怖いことを言っているが、一体どういうことなのか?
「ビール樽に付いたナノマシンの退治? またよくわからんけったいな物を研究しとるわい。何を研究するかは自由じゃが酒をダメにするのいかんじゃろうて、じゃが酒をくれるとあらば話は別よ。ナノマシンとやらを破壊してパーッと宴会と洒落こもうじゃないか、ヌーハッハッハッ」
そう、『ろくでなし』ナール・トバクスキー(p3p009590)の言う通りビール樽にナノマシンが寄生して変形合体する事件が多発しているので、それを退治せねばならないのだ。
「えーと、よくわからんのだけど、よくわかったような気がする。とりあえずナノマシンをぶっ殺すって形でいいんだろ? 終わったら目一杯飲めるらしいから、そのために汗だくになって働こうっと」
「何はともあれ、酒だ酒! せっかく覇竜から外に出られたんだ、こうなりゃ味わったことのねえ酒を片っ端から飲み尽くすしかねえだろ? まずは鉄帝から行ってみるとすっか、ってな! ……いやまあ、想像してたよりちょいと可笑しな絵面だがよ」
『死を謳う者』ベルトア・ウル・アビスリンク(p3p010136)と『桜花絢爛』祭・藍世(p3p010536)もそんな事を言い合うが、まあつまるところのん兵衛が集まったわけである。
「その為にもビール樽をとにかくスナイプですよネ!」
『フリースタイルスナイパー』コヒナタ・セイ(p3p010738)も気合を入れるが、つまりそういうことである。
「どうも、酔っ払いです。タダ酒が飲めるって聴いて釣られクマー! ……ってことで内容何も聞かずにきちゃったんだけど、どんな状況なのー?」
「とらぁ……」
ギフト「無尽の酒」で出した酒を飲んでいる『呑兵衛』紲 酒鏡(p3p010453)に『VDMランドの謎の生物兼マスコット』とらぁ君が説明しているが、酒鏡はそれに頷いている。
「ビールの樽が合体変形して人型にぃ? そんなこともあるよねー。酒鏡さん的にはお酒飲めればなんでもいいんだけど、結局どうすればいいかなー? あ、一つ一つ開けて調べるのね? おっけーおっけー、じゃあ手あたり次第に味見していこぉーう!」
通じたらしい。とらぁ君凄い。さておいて。
「さあ、宴の時間だ!」
「とらぁ君には私と一緒にナノマシン寄生ビール樽を探してもらうよ!」
「とらぁ……」
「ビール樽は無差別に攻撃しちゃ駄目だからね? 気を付けておくれ!」
そんなバクルドやマリアの言葉が響き、ナノマシンブッコロ銃を手にナノマシンの駆除が始まったのだ。
●ナノマシンをやっつけて酒を呑め
「さぁ、私が来たからにはもう大丈夫!早くみんな避難して!」
レイリーが野次馬を避難誘導させているが、そちらはおおむね順調だ。
元よりこの場で駆除が行われるという話も伝わっていたため、然程の苦労もない。
「とらぁ君に騎乗し蛮族ムーブだ! 行くよ! とらぁ君!」
「とらぁ……」
「ヨシ! 手分けしてビール樽を開けようとしてナノマシン寄生樽を探そう!」
とらぁ君に騎乗したマリアは早速樽を開けようとしていた。
勿論コレは仕事にかこつけて飲もうとしているのではなく、こうすることでナノマシン寄生樽が分かるのだ。
何しろ、寄生樽は顎を狙ってくるらしい。なんと恐ろしくも分かりやすい話だろうか。
だからこそマリアはその時、顎を狙ってくる攻撃に対してカウンターを狙うつもりなのだ。
「ぐわぁ!? 乙女の顎を殴るんじゃあないよ! このっ! このっ! このっ!」
おっと、失敗してしまったようだ。
「これがタイガーカウンターだ!」
取り敢えず酒瓶でぶん殴ってから光線銃で追撃するマリアだが、やってることが酔っ払いに近い。まだ飲んでないのに不思議である。
「食らいたまえ! ヴァリューシャの為に! ビールを撒き散らして死ぬがいい! あ! 駄目だ! ビールは残したまえ!」
「とらぁ……」
「見た目だけじゃ中々判別できないし、やっぱり開けようとしないと駄目だね! 顎を殴られないように注意しながら奴らを探そう! って、あああ!? ビールを零さずに破壊できないのかい!? 許すことが出来ない……!」
周囲を見てもやはり寄生樽は壊してしまうしかないようで、その事実にマリアは憤る。
そんな中、バクルドとレイリーも2人で組んで寄生樽を狩っている。
基本的にはレイリーが向かってきた樽の攻撃をしっかりと盾で受けてさばきつつ、カウンターの要領で光線銃を当てているのだが、そこにバクルドが光線銃の狙撃を加えることでより一層処理速度を上げているのだ。
「しかし、潜んでいる寄生樽もあるでしょう、あるよね、あるに違いない……一つ一つ確認しなければな」
そうして、各樽を覗いて行って一口味見するレイリーだが……もちろんすべてを飲みはしない。
(だって、そしたら、この後の宴会で飲むお酒がなくなるもの。好みの味のビールは覚えてておくけど)
「お、こりゃ旨えな! 仕事中の酒は格別だな」
バクルドも味見しているが、すでに何度か顎に喰らっていて痛そうではある。
あるが……気にした様子もない。
「開けようとすりゃ顎狙いで攻撃してくる? ハッハッハ、動かなけりゃ見つからなかったものを。良いビール樽は動かない樽だけだってな」
「しっかり全部確認して、全部光線銃で倒しきって、安全確保してから宴会に映るわよ!」
「おう!」
そんなコンビとは違い、ナールはソロで樽を狩っていた。
「この光線銃のデザインは何とも言えんが……銃の扱いはそれなりにできるからのう任せておくのじゃ」
玩具みたいなデザインの光線銃で威力も玩具一歩手前だが、それでも銃であることに変わりはない。
「依頼とはいえ酒の入った樽を撃つなど酒くずの名折れじゃ、ぬおぉぉぉお! 呑まねばやってられんわ!」
魔法瓶の酒を煽りながら間違えて普通の樽を撃ってしまうナールだが……ドドド、と店主が走ってくる音が聞こえる。
OH、マッチョ! プロレスラーか闘士かと勘違いするような巨漢がラリアットの態勢で走ってくる。
「ぬおっ⁉ ま、待つのじゃ店主今のはわざとじゃないのじゃ! 今は先にナノマシンの破壊をグワーッ⁉」
ナールが吹っ飛ぶのを見ながらセイは寄生樽を狙撃する。
「ヘイヘイヘーイ! 元気なビール樽でース! うめぇの呑ませてくださいネー!」
「よくわかんねえが、下手人は樽に取り付いてんだろ? ならまあ、中身を杯にあけて確かめてみるしかねえよなあ……痛えっ! ……樽の分際で頭突きとは、頭が高えぞてめえ! 大人しくアタシに飲まれろってんだ!」
藍世も天下御免の一撃を加えるが、その程度で樽は全壊する。まあ、所詮樽ということだ。
「……ところでさ、ナノマシンが仕込まれてるってことは通常のビール樽とはその時点でちょっと違うわけじゃん? 【鑑定眼】でじっくり見たら見分けついたりしない? 開けて確認した方が飲めるし手っ取り早いかも? 一応試すだけ試してみよっかナ~」
ちなみに試したところ別に価値的には変わらないようでよく分からないことに酒鏡は残念に思いつつも、そのチャレンジ精神を仲間たちは評価している。そしてチャレンジといえば、もう1人。ベルトアである。
「……ってかさ、これ……今気づいたんだけどさ。先に盗み飲みしてもいいんじゃね!? 俺様なんて天才なんだろう。ってことでいただきま~~~す"っ!!?」
的確に顎をやられて転がったベルトアが見たのは……合体変形していくビール樽の姿。
「いてて……うおっ、なんかデカいのになってる!? が、俺のやることは変わらん!! 酒飲むためなら生命捨ててでも取りに行く!! それがこの俺よ!!!」
「なんじゃあの頭の悪そうな物体は、酒樽で遊ぶなど言語道断じゃ、今すぐ解体してやるのじゃ」
「合体するってなんなんだい!? 良い度胸だ! 合体した程度で虎が倒せるものか! 何がビール樽王だ!!! それなら私は虎王だ!!! めちゃくちゃにしてやる! 自爆などさせるものか! 2丁ビーム銃乱舞を喰らえ!!!」
「狙いは上々!デカいなら的になるだけでス!」
無数の攻撃が乱れ飛べば、合体変形したビール樽王はアッサリ霧散して中身のビールを周囲へとぶちまける。
「これぞビール腹ってな、ハッハッハッハッハッハ! よし一網打尽だな」
バクルドがそう笑うが……ともかく、これで仕事自体は完了。あとは残ったビール樽で呑み会である。
「レイリー=シュタイン! まずは1樽いきまーす!」
まず一番手はレイリー。「もちろん、樽ごと飲むわよ!」の宣言通り、豪快に樽を空けている。
え、酔わないかって? うまいウインナーやハムがあれば平気平気、ということらしい。
「ぷはーっ、美味しいわ! こんだけビールあるなら朝まで飲めるわね」
「二番手バクルド、俺も一樽に樽を飲み干すぞおおおおおおおおおおおお!」
レイリーが最初に場を温めれば、バクルドが一気飲みでビールを飲み干す。こちらも迷いのない豪快な飲み方だ。
「っっっっっっっっっぷっっはあああああああああああああ! 仕事終わりの酒は旨えなあ! 更にそこにつまみの肉がありゃ最早何も言うこともねえ。今日はただ酒だ! 酒蔵の酒が全部なくなるまで飲むぞおおおおおおおおおおお!!!!!!」
豪快に楽しむ2人を見ながら、ナールも壊れずに残っていた椅子に深々と座る。
「あぁ、全くけったいな依頼のせいで酷い目にあったわい。吞まねばやっとれんわ、店主! 取り敢えず1樽とつまみを頼む。今夜はタダ酒! さぁ、店の酒を全部飲むのじゃ!」
「酒だああああ! 宴だああああああああ!! お、みんな飲んでるねー……酒鏡さんも負けてられないなー!!」
酒鏡もナールと乾杯して一気に飲んでいく。
やっぱり樽な辺り同類なのかもしれないが、良いことだ。
「さあて、お待ちかねの酒だ酒! いい機会だ、呑み比べといこうぜ! 誰が最後まで酔い潰れずに残るか勝負だ!」
「皆で楽しもうビールパーティ。いいことですネー」
藍世とセイが飲み比べを始めているが、それもまた無理をしなければ楽しいものだろう。
(……まあ、アタシは酒には自信はあるが、ビールは慣れてないからキツいかも知れねえな)
確かに他の酒を呑む人間でもビールはまた違うというが……楽しい事に変わりはないだろう。
そしてマリアとベルトアは……こちらは自分ペースでビールを楽しんでいた。
「うおー! 皆お疲れ様だよ! かんぱーい! ぐびぐび! はー! 美味しいね! 疲れた体に染みわたるよ!」
「流石にビールだけではアルコール吸収速度でいろいろ危ないからな。何か腹に入るものも準備しないと……そういやディストピア飯持ってきたけど、流石にコレがおつまみー……は、やめよう。ゼリー型飲料、ブロック型食料がおつまみはシャレにならねえ。っつか元の世界の研究者時代思い出して吐くわ」
ディストピア飯はただ辛いので罰ゲームとか向けであるだろうか。
「じゃあ仕方ねえから闇市で出た唐揚げ持ってきてるし、それ食べるかー……闇市産の唐揚げってなんかヤベーもん入ってそうな気もするけど、まあいいか。味付けも人によって様々だから飽きないよなー。サクッと香ばしい衣と、じゅわっと広がる肉汁が口の中に溢れて、そこにビールを流し込むと……」
うめえ! と叫ぶベルトアの姿はまさに基本に忠実であるだろうか。
……ちなみにだが。ビール樽を拝借しようとしているのを店主にバレ、ラリアットを喰らったマリアにとらぁ君がファイナルとらぁバスターで追撃をかけて「どうして!?」という声をあげさせていたが……それも含めて、美味しいビールであったらしい。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
最近ファンタジーな名前のお店オリジナルビールを飲みました。
美味しかったなあ
GMコメント
ビールのたっぷり詰まった樽を破壊して光線銃でビビッとやってトドメを刺す話です。
光線銃はちょっと攻撃力があるので、無実のビール樽を撃ってはいけません。店主がラリアット仕掛けに来るからね。
ビール樽は集まると合体変形しますが、一定時間がたつと自爆してしまいます。その前にやっつけましょう。
え? 見極める方法? 樽を開けようとすると顎を狙って脳を揺らそうとしてくるので分かるみたいです。
●ビール樽(ナノマシン寄生)×50
体当たり攻撃を仕掛けてきます。
・ビール樽王(合体後)
残ったビール樽が合体変形して人型になります。
攻撃方法は格闘技です。合体変形した意味は?
なお装甲は結局ビール樽なので脆いです。
なんで合体変形したの?
全部終わったらビアホールで依頼人の奢りでタダ飲みです。
未成年はジュースですけどね。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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