シナリオ詳細
お届け、交易商人!
オープニング
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『覇竜領域デザストル』は今なお、危険な地域として混沌の民には認知されている。
現状、ローレットイレギュラーズの活動として、覇竜に住む亜竜種を助けるものが多い。
例えば、アダマンアントとの戦い。
亜竜種達にとって脅威となる存在と交戦し、彼らを護る依頼にイレギュラーズは尽力している。
覇竜に存在する亜竜や魔物は種の存続をも脅かす程の力を持ち、今なおローレット所属のイレギュラーズ以外は覇竜へと立ち入ることすらほとんどままならぬ状況である。
ただ、最近になって、玉髄の路と呼ばれる場所に交易スポットができたのだとか。
「そうと聞いたら、黙ってはいられないっす!」
『パサジールルメスの少女』リヴィエール・ルメス(p3n000038)は比較的早いタイミングで覇竜との交易に目をつけていた。
先日、覇竜に生息するアビススネークの皮を多数入手した彼女達は早速各地の好事家や資産家へと届けると、喜びの声が上がってきたという。
交易としても大成功で、パサジール・ルメスの民もローレットに頼んでよかったとご満悦だ。
そんな中、リヴィエールは少しずつラサとも交易の場が生まれ始めていることを知って。
「是非とも、行ってみたいっすよ!」
そこには少なからず亜竜種がいるはず。直接多くの人々と交流、交渉できる場ができるのは大きい。
玉髄の路へと彼女が行きたいと考えるのは無理もないことだろう。
「では、ドラネコ配達便が皆さんを玉髄の路へとお届けするというのはいかがですか?」
話を聞いていた『誰かと手をつなぐための温度』ユーフォニー(p3p010323)がそんな提案をリヴィエールへと持ち掛けると、彼女はうんうんと頷いて。
「是非ともお願いしたいっす!」
とはいえ、覇竜が危険なことには変わらない。
イレギュラーズの1チームが護衛する人数には限界がある。
さらに、ラサの商魂逞しい商人達も同行を申し出ている。それもあって、パサジール・ルメスからはやむなく2名のみを同行させることに。
多少多めに運んだ荷物はすでにフリアノン傍に建造しているという積み下ろし場で保管できるとリヴィエールは考えている。
「できるなら、いつかそこに自分の足で行ってみたいっすね」
スタッフを数名常駐させ、交易のパイプを作れれば、もっと覇竜と他地域の交易が活発に……リヴィエールの夢は膨らむばかりだ。
その足掛かりとしても、直接玉髄の路へと一度向かっておきたい。
「それでは、よろしくお願いするっす!」
早速、リヴィエールは荷物を纏めるからと足早に準備に向かっていったのだった。
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普段、イレギュラーズは竜骨の道……フリアノンへの抜け道をたどって覇竜へと至ることが多い。
しかしながら、そこを外部者が使うことはできない為、その抜け道に沿った形で存在する渓谷をたどる。ここが玉髄の路である。
ここは両側を岩場に挟まれた深い谷となっていた。
両側ははるかに高い崖となっている間を歩いていくが、谷底の中央を小さな川が流れている。
それを避けつつ、ラサの商人やパサジール・ルメスの運ぶ交易品を3台の馬車で運びながら進む形だ。彼等は基本的に馬車から動かないよう話をしており、戦いとなった場合でもイレギュラーズの指示に従うよう了承の上で今回の交易に参加している。
他の場所に比べれば、比較的危険度が小さい区域。
交易場所となっている簡易宿泊所付近には獣除けの罠も存在し、獅子型の亜竜シャーロックも常駐しており、安心して詰めることができる。
ただ、ラサとの往路復路に関しては覇竜に生息する生物からの襲撃の可能性は0とはならない。
「何かくるっす!」
馬の手綱を引いていたリヴィエールが空から降り立ってくるフロストワイバーンの姿を視認する。
イレギュラーズはその迎撃をと身構えていると、同時に崖を伝って近づいてくる巨大なイワトビトカゲの接近も察知することに。
馬車と商人達を護りつつ、亜竜と魔物を同時に迎撃する必要がある。
「大したことはできないっすが、怪我したら治療くらいはできるっす」
リヴィエールは同胞2人と頷き、治療の為のグッズを見せつける。
ラサの商人達は一応武装しているが、自分達の戦力がここでは役に立たないことを重々承知している。基本的にはイレギュラーズの指示に従い、退避に当たる構えだ。
商人達へと指示を出しつつ、イレギュラーズは向かい来る魔物達の迎撃を開始するのである。
- お届け、交易商人!完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年07月31日 22時07分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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イレギュラーズを含む一団はラサから覇竜へと差し掛かる。
「はぁい、商人ギルド・サヨナキドリ覇竜支店長、紲家の冥穣よ」
道中、商人達へと自己紹介する『紲の魔女』紲 冥穣(p3p010472)は亜竜種にとってもまだ開通したばかりという認識の玉髄の路に沿うようにして続く道を仲間や商人達と共に歩く。
実地調査もまた現在の重要な任務と冥穣は考えている。
「交易や交流が始まれば、新たな風が吹く」
玉髄の路が機能しそうだと『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)も期待を寄せる。
彼もそうだが、例え危険があろうとこの商機を逃すわけにはいかないと考える商人は多い。
ジョージ自身もまたその一歩を手伝う心づもりだ。
「やっと始まった覇竜交易だ、深緑交易くらいには活発化して欲しい」
『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)は山積みの問題を少しずつ切り崩していこうと語る。この護衛もその一つだ。
「何度か護衛の依頼を受けましたけど、本当にここは狙われることが多いですね」
『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)はすでに同様の依頼でこの道を行き来しているようだ。
そんなマリエッタだが、笑顔を浮かべているのは、『誰かと手をつなぐための温度』ユーフォニー(p3p010323)の引き連れる一団の愛らしさからだろう。
「ドラネコ配達便はお届けものから護衛まで!」
「助かるっす。よろしくっす!」
8匹のドラネコと共に依頼に当たるユーフォニーも改めて、リヴィエールと挨拶を交わす。
「ソーちゃん、頑張ろうね!」
彼女の呼びかけに、大きなドラネコロボット「ソア」が応える。運搬もしてくれ、仲間達も共に運んでくれている。
ソアを含め、ドラネコ配達便の可愛らしい商行に、マリエッタは笑みを零してしまう。
「……魔物か」
そこで、ユーフォニーの友人として助太刀に来た『焔王祈』ムエン・∞・ゲペラー(p3p010372)が呟く。
覇竜の魔物、亜竜は交易において最大の障害。それ故に商人も、亜竜種達もこの道を行き来することに難色を示すのだ。
「外は危険がいっぱいで大変だろーにな。ごめんなー?」
仔竜の姿をした『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)が商人達へと申し訳なさそうに声をかける。
「いえ、商売の機会が生まれただけでもめっけものっすよ!」
それでも、商魂逞しい商人達はリヴィエールを始め、この状況にも文句すら言わずに付き従ってくれる。
「代わりにきちんと護衛して送り届けるからなー? みんらんー、俺頑張るからな!」
帰ったらお腹いっぱいご飯を食べたいと主張し、さながらペットを思わせるような仕草をする熾煇に、冥穣は小さく微笑みを返していた。
●
さて、イレギュラーズと商人ら合わせると20名余りにもなる。
イレギュラーズの駆るワイバーンやドラネコロボット、商人達の馬車3台となかなかの規模だ。
当然、目に付けば魔物らに狙われてしまうだろう。
「商人さん達は確実に集落に送り届けて見せるっス」
折角得た交流チャンスを潰させるわけにはいかないと、『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)は意気揚々と語る。
その為、ライオリットは護りやすいようにと基本馬車内での待機を願う。
「きっと守りますからね」
ユーフォニーは馬車を引く馬達にも撫でながら動物疎通して安心させていた。
「何かあったら馬車に入って固まるんだぞ。一ヶ所にいた方が、俺達も守りやすいからな!」
渋滞せぬようにと気掛ける熾煇はワイバーンを駆り、頭上から商人達へと呼びかける。
現状進んでいる道は崖に挟まれた比較敵狭い場所。小川が流れていることもあって横に広がることができず、縦に長く編隊する形をとっている。
ラダもまたリトルワイバーンのがんもに騎乗し、低空飛行しつつも感覚を研ぎ澄ます、ジョージもエネミーサーチを働かせて索敵を行う。
一方で、冥穣は別の見地から周囲を警戒する。
ズバリ、この路はどのくらい使いやすいか。
舗装、補修など、整備が必要な箇所について、彼は逐一記録していたのだ。商人達も一緒になり、進行に当たって気づくことをチェックしていく。
だが、それも長くは続かず。
「空からはフロストワイバーン……崖にはイワトビトカゲもいるようだ」
「商人達は馬車へ! 自分の身を守る事を一番に考えてくれ!」
ジョージが敵襲に気付くと、すでにラダも大声で戦闘に備えるよう呼びかけていた。
万が一の際は逃がす必要もあるだろうが……。
「そうならなくても済むように尽力するッス!」
馬車を守り切ろうと、ライオリットは気合いを入れる。
変化に敏感な覇竜の生物。常に狩るか狩られるかという生死の境にいるようなそれらの生存本能は強い。
「少しでも生きたいと思って行動を起こすのは仕方ない……が、こちらもそれは同じこと」
「守って見せます。ドラネコさん達も、仲間も、友人も」
覇竜の捕食者となり続けんとする生物。ムエンがそれらと戦うべく魔剣を抜けば、表情を引き締めたマリエッタも外敵の排除にかかる。
「敵は2種……なら数の少ない氷亜竜はジョージ、任せるぞ!」
応戦の構えをとるラダの呼びかけに頷くジョージ。
とりわけ、姿が見えづらいイワトビトカゲから馬車を襲撃されぬようしたいところ。
「蜥蜴は保護色で隠れるのが上手いんだな?」
あんまり見付けるのは上手じゃないからと、熾煇は仲間が射線上にいないことを確認してから、魔砲を発射するのである。
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アアアアオオオオォォォ!!
シャアアアァァ、アアアアアァァァ!!
獲物と見定めた面々目掛け、2体のフロストワイバーン……氷亜竜と3体のイワトビトカゲ……蜥蜴達が迫る。
「どーん」
保護色で岩壁と同化したように見える蜥蜴を狙い、熾煇が撃ち込んだ魔砲はどうやら跳躍する1体に命中したらしい。
「迷彩色でないのであれば、注視すれば発見できそうな気はするっスね」
保護色で見えにくいのは違いないが、ライオリットは蜥蜴の擬態を看破できるよう目を見張る。
丁度、氷亜竜が降りてきたのと合わせ、ライオリットは空間ごと敵を切り裂く。
直後、血飛沫と共に現れる蜥蜴。氷亜竜1体も鱗を裂かれて激しく嘶く。
蜥蜴は目つき鋭く威嚇しながらも尻尾を振り回してこちらをしばりつけようとし、氷亜竜も氷の刃や凍気のオーラを飛ばしてイレギュラーズを攻め立ててくる。
「氷の飛竜に大トカゲ……冷静に迎撃しないと」
幸い、今回のメンバーは攻め手として優秀な者が多い。
場を支え、好機を作り出すべく、マリエッタは仲間達の支援回復に当たる。
まず、マリエッタはアーリーデイズで自身の能力を十全に引き出す。
そこから引き付け、盾役の回復を行うのだが、先手を取ったマリエッタは初手だけは血の糸を展開して敵に血を流させ、動きを止める。
「今です」
応じた引き付け役のラダが動き出し、蜥蜴の動きを音や匂いで探って。
「そこだな、狙いは人か荷か、いずれにせよ好きにはさせんよ!」
声を荒げたラダに向けて氷亜竜と蜥蜴が集まってくるが、彼女を護る様にジョージが前に出て。
「さぁ来い! 貴様らの相手は俺だ!」
ジョージは主に氷亜竜のヘイトを買うべき立ちはだかるが、蜥蜴も合わせて請け負い、仲間が攻撃しやすい状況をつくる。
何より、商人らの馬車が狙われないようにジョージは抑え込みにかかる。
「この状況でもまだ姿を……」
傷ついてもなお姿を消す蜥蜴を、ユーフォニーも感覚を働かせてその動作音から居場所を特定し、「彩波揺籃の万華鏡」を使う。
彼女が詠唱を行う間、仲間を狙って回り込む蜥蜴が丁度馬車に近づいてきたことで、冥穣が衝術で吹き飛ばし、安全を確保していた。
ムエンも温度視覚によって敵の位置を把握し、ノーモーションで叩き飛ばす。
姿を現せば、馬車を護っていた熾煇も狙いを定めやすくなり、今度は確実に狙いを定めてから魔砲を撃ち込み、蜥蜴を追い込む。
「それは、世界。私だけの世界」
程なく、ユーフォニーの術式が完成し、自身の周囲に鮮やかな色の乱舞を浴びせかけ、魔物達の体力を削いでいくのである。
ラダやジョージへと攻撃を仕掛ける覇竜生物の群れ。
グガオオオオオオ!!
咆哮を上げて吹雪を吐きかけてくるフロストワイバーンは力攻めをしてくる印象で、かなり手強い。
イワトビトカゲは俊敏な動きで舌を叩きつけ、尻尾を絡めて縛り上げてくる。
「我々に手を出すと高くつくぞ!」
ラダは叫びながら、血の凶弾を撃ち込み、敵の体のあちらこちらから血を流させる。
そうして、血痕、血の匂いがあれば、位置の特定はかなり用意になる。
そこで、ユーフォニーが「未来を願う色」を発して蜥蜴を穏やかな心地で包み込もうとする。
その蜥蜴のうち1体をライオリットが捉え、空に高く跳ね上げた。
さらに、ラダが別の蜥蜴を狙い、黒顎魔王に噛みつかせる。
シャアアアァァ……。
地面へと落ちてきた1体と身体深くへと牙を食い込まれた1体はついに戦意を失くし、岩を駆け上って撤退を始める。
「逃げてくれるなら深追いはしません。傷つけてごめんなさい……!」
逃げ去る蜥蜴にユーフォニーが謝るが、残る蜥蜴1体は果敢に舌を伸ばしてきた。
すかさず迫るムエンが舌をタイニー・フェニックスで防いで。
「守りの力は一丁前なんだ……この焔の身体を持つ小鳥は」
すぐさまムエンはその長い舌と合わせ、尻尾をそれぞれ先端部分を切り裂く。
シャアアアァァァァ…………!?
これには慌てふためき、危機を察した蜥蜴は逃げ帰っていく。
「頭蓋を叩く必要まではなかったか」
最後の1体は氷亜竜の疑似餌としての利用も考えていたムエンだったが、逃げる敵を追うことまではないと判断していた。
1種を撃退はしたものの、問題は氷亜竜だ。
アオオオオオオォォ!!
こちらは激しく吹雪を撒き散らし、その余波が商人の馬車に及びかねぬ状況だ。
「覇竜は弱肉強食なとこがあるし、他の場所より強いのがいっぱいだからな」
そうは考える亜竜種の熾煇。
弱い者がすぐ食われるのは自然の摂理だと熾煇も自認しているが、護れる者は絶対に守りたいと氷亜竜の前に出て。
「フロストワイバーン、俺と勝負だぞ」
グアアアオオオオオ!!
敵は小さな竜がコケにしているとでも認識したのだろう。激しく荒ぶる氷亜竜が凍気のオーラを放ってくる。
直撃すれば一溜りもない威力。事実、回復に当たっていた冥穣へと直撃してしまう。
吹雪で多少体力を削られていた冥穣がその一撃でパンドラを使って立て直しをはかる中、マリエッタが彼へと福音をもたらし、
ただ、前線のラダやジョージもかなりの負担がかかっており、マリエッタはそちらの回復を急ぐ。
「魔力切れはそうそう起こしませんよ」
回復を振りまき続けるマリエッタだが、あらかじめ対策していたことでまだまだ仲間の傷を塞ぐことができそうだ。
攻めに転じたいところだが、代わる代わる吹雪を起こしてくるのが実に面倒だ。
「……氷亜竜の起こす吹雪、か」
ムエンはそこで、深緑の戦いを思い出して。
「なら、私は友人の為、仲間のために命を燃やそう」
命を燃え上がらせ、ムエンはこの覇竜の大地で深緑を覆った吹雪を討ち払った焔王フェニックスの姿を再演する。
「夢焔よ、燃え上がれ。私の剣に宿るフェニックスの魂片よ、今再びその焔で吹雪を打ち払え!」
多少亜竜が強かろうが、深緑の吹雪には比べるまでもない。
吹きつける吹雪の中、ムエンはその吹雪ごと夢焔を纏わせた刃で吹雪ごと氷の竜の体を切り裂いて見せた。
グアオオオオオオ!!!
痛みに悶える氷亜竜へ、ユーフォニーが再度心地の良い色で相手を包み込まんとする。
凍てつく空気に包まれる氷亜竜目掛け、さらに熾煇が膨張した黒の大顎を食らいつかせていく。
これには氷亜竜もたまらず、空へと飛翔する。
ライオリットはそれを見送りつつ、残る1体目掛けて仕掛ける。
相手はやや態勢を崩しかけている状態だが、ライオリットは足元へと潜り込み、その巨体を空中へと跳ね上げてみせた。
苦しい態勢からでも、氷亜竜は氷の刃を飛ばしてくるのはさすがだが、ジョージがそれを受け止めて。
「自由にはさせん!」
反撃として竜撃の一手を翼へと叩き込み、傷めつけていく。
さらに、ラダが相手の状態を見て、ゴム弾を飛ばす。
トドメに至ることはない一撃だが、その痛みはかなりのもの。
「できれば人を襲わないよう学んで逃げてくれ」
グ、グワアアアアッ……!
相手は見た目によらない。
氷亜竜はそれを学びつつも、同種の1体を追うようにこの場を去っていったのだった。
●
覇竜の魔物達を撃退して。
「リヴィエールさん、一緒に手当てをお願いしてもいいでしょうか」
「もちろんっすよ!」
共に傷つく仲間達の手当てをユーフォニーが願うと、リヴィエールは快く受け入れて馬車内の薬を使って治療してくれる。
ユーフォニーもまた大天使の祝福をもたらし、仲間の傷を癒す。
その間、ラダは少し探索範囲を広げつつ、近隣に魔物や亜竜の巣がないかとチェックする。
崖上まで登ればわからないが、谷底となるこの路では確認できなかったようだ。
「お腹空いたー!」
空腹を訴える熾煇だが、遠足は帰るまでが遠足。到着するまでが護衛だと気を張っていた。
やがて一行は簡易宿泊所へと至り、詰めていたシャームロックと呼ばれた獅子型の亜竜の姿を認めて。
「お疲れ様です」
守護者としてこの地を護る彼らを労うユーフォニーは、亜竜種達と商人らの交流を見守ることに。
冥穣もここではサヨナキドリ関係者として、亜竜種として、交渉を取り持つ。
(なんだかアタシ、『サヨナキドリ』の人間としてこの辺りの動きを期待されてるようね)
思った以上に名が知られた商人ギルトの名代を引き受けたことに気付き、彼は思わず溜息をつく。
「おっと、失礼」
気を取り直した冥穣は微力ながら期待に沿えるよう頑張らないとと、彼は存在感を示しつつ積極的に商人と亜竜種の間に立って仲立ち、話題振りを行う。
例えば、道中の危険、里の需要状況、里にきて感じたこと……。
双方の視点を持ち、双方が意見を出し合う。
「亜竜種達としても、人が増えるなら安全性は高まるんじゃないか?」
「交易路の確保は……」
必要に応じ、亜竜種のライオリットも中継ぎに入る。
常に護衛をというわけにはいかぬが、正式に依頼があるなら、喜んで引き受けるとライオリットは自身の主観を口にしていた。
「…………」
ジョージはしばらく黙って話を見守る。
この場において、ローレットはいるだけでも緩衝材となり、互いに要望を出しやすくなるだろうと彼は考えたのだ。
「亜竜や魔物が活発になる時期が分かればいいのですが」
ユーフォニーも何か役に立ちたいと自分の意見を出す。
繁殖期や産卵後などは生物が活発になることが多いとのこと。生物の動きが鈍くなる冬場は狙い目という印象だ。
「亜竜種の里に魔物や亜竜避けに良い品や情報も知りたいな」
「そうですね。匂い袋とかでしょうか?」
ラダも合いの手を入れると、ユーフォニーがそれも聞きたかったと頷く。
生物は刺激の強い物を嫌う。例えば激臭のする物などだ。
「大きな音で怯ませることもできませんか?」
マリエッタも音爆弾のようなアイテムを提案する。聴覚の鋭い魔物も多い。
それらを商路周辺に設置することで役立つことだろう。
「とはいえ、いつまでもこんな状況では交易も続けにくいかな」
「あっし達の荷物を置く場所も作ってもらっているっすがね……」
行き来だけでもこれだけ難儀している状況をラダは素直に議題として挙げる。リヴィエールはすでにイレギュラーズに作ってもらっているフリアノン傍の積み下ろし場の話をし、実際に自分でそれを見に行くことすらできないもどかしさを語った。
「常駐を希望するなら、しっかりと宿を建てるのもいいかもしれないな」
ジョージは時に口を出す。
商人達の詰所があれば、亜竜種達の要望を聞き、逆に出荷できるものを纏めることも可能だ。
リヴィエール発案で作っている積み下ろし場はその役目を十分に果たせるだろうが、それにはやはりフリアノンまでの路を商人達らでも踏破できる状況が必須だ。
「私、一番最初に行った依頼が覇竜の地でした」
なかなか話が進まぬ状況となった時、ユーフォニーがこんな想いを話す。
覇竜の皆さんにはたくさん世話になっているとのことで。
「……役に立てることがあれば、頑張りたいんです」
今回の交易路の開拓に尽力する姿勢を見せるユーフォニーに、傍のムエンも少なからず思うことはあったようだ。
「先ず商人達に匂い袋、覇竜に商人らの詰所といったところか。あと、やはりというか実際に商人らに里を見てもらいたいな」
新たな動きに期待しつつも、冥穣は今回の商談について締めくくった。
その後、実際の交易品の売買を目にする一行。
マリエッタは実際に違いの品を見比べ、目を輝かす。
商人と覇竜の亜竜種達。互いの利害が一致し、交易が盛んになればと、ユーフォニーもその光景に目を細めるのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは戦い、交易の場でも活躍を見せたあなたへ。
覇竜との交易が活発になることを願っております……!
ご参加ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
こちらは、『誰かと手をつなぐための温度』ユーフォニー(p3p010323)さんのアフターアクションによるシナリオです。
玉髄の路と呼ばれる渓谷にラサとの交易スポットが完成し、そこへと商人達を護衛することになります。
リヴィエールもこれに興味津々であり、是非とも同行したいということでパサジール・ルメスの民を数名伴い、同行を決めております。
合わせて10名ほどの商人を、玉髄の路まで護衛していただきますよう願います。
●成功条件
リヴィエールを含むラサ商人の護衛。
●概要
覇竜での交易に興味を持つラサ商人とパサジール・ルメスからリヴィエール含む2名を伴い、覇竜の渓谷「玉髄の路」を目指します。
道中の安全はある程度確保されてはいますが、それでも亜竜、魔物の襲撃は少ないながらもあるようです。
渓谷の幅は10m程度、両端の崖の高さは100m以上あります。底の中央に2~3mほどの川が流れています。
そんな中、ラサ商人達、パサジール・ルメスの馬車、合わせて3台を護りつつ以下の敵を撃退する必要があります。
事後は商人と亜竜種達の交流を見守っていただければ幸いです。
何らかの働きかけがあれば、大きな動きが起こる……かもしれません。
●敵……亜竜、魔物、計5体
略称はプレイングの文字短縮などにご利用くださいませ。
○亜竜:フロストワイバーン(略称:氷亜竜)×2体
全長4mほどある氷の飛竜、覇竜に生息する生物を丸呑みにするとも言われます。
生物の動きを止めるべく、吹雪を巻き起こし、鋭い氷の刃や凍気のオーラを前方へと放ってくることがあります。
○魔物:イワトビトカゲ(略称:蜥蜴)×3体
全長3mほど。岩の間を軽やかに飛ぶ脚力が異常に発達したトカゲ。
土気色の体表を持ち、保護色で岩場に隠れることも。
跳躍からの飛びかかり、長い舌や尻尾での拘束と素早さを活かした襲撃を得意としています。
●NPC
いずれも交易目的の商人達。
イレギュラーズの指示に従うのを前提として交易に参加しています。
〇リヴィエール・ルメス&パサジール・ルメスの民2名
今回の依頼人。パサジール・ルメス所属。情報屋もしています。
自分の足で覇竜の地へと踏み込めるとあって、目を輝かせて今回の依頼を持ちかけています。
今回、同胞の若い男女のみを連れ、同行します。
戦闘では馬車に駆け込むことで若干の治療も可能。ただ、2,3ターンを要しますので、状況は考える必要があるでしょう。
○ラサ商人
人間種、30~40代男性達。
過酷な場所とあって、商魂逞しい者達ばかりです。
他地域で有れば多少の自衛ができる程度にナイフや銃を使いますが、さすがに覇竜の魔物には適いません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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