PandoraPartyProject

シナリオ詳細

夜砂漠の星祭り

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 星祭り。それは七夕の事を指し示している単語だ――
 その日にどのような催しが行われるか。地域によって多少の違いはあるだろうが、傭兵と商人の国たるラサの方では七夕祭りとあらば……『商機』と見据えられる日でもあり。
「――まぁこの辺りじゃ星祭りに限らず。
 隙あらば何かに事付けて商売に繋げてるけどな……
 ったく。商人どもはいつもいつもそういう事ばかり考えてやがる」
「お祭りは、楽しければきっと良いと思う」
 故にこそいつだって此処は騒がしいのだと、ハウザー・ヤーク(p3n000093)は酒をカッ喰らう様に飲み干しながら――イヴ・ファルベ(p3n000206)と言を交わすものだ。
 此処はラサの首都ネフェルスト……の、一角。
 今日と言う日の為に大規模に開かれているサンドバザールの真っただ中である――時刻はもう夜に差し掛かろうとしているだろうか。しかし、灯りは消えず活気は冷めず、だ。そこかしこで客寄せの声が飛び交い、金と物が取引される。特に最近ではカムイグラが発見された事に伴い……かの国からの輸入品も場に並ぶようになっている。
 特にこの日を象徴するかの如き一品を中心に、だ。例えば。

「……ふむ。これは金平糖、ですか。おや笹団子もありますね」
「珍しいモノが沢山……流石ネフェルストと言った所かしら」

 小金井・正純(p3p008000)が眺めている――食べ物系統などは顕著だろうか。
 金に白、青に赤にと色とりどりの金平糖や、文字通り笹に包まれている笹団子。
 海の果てより砂漠の地までたどり着いたかとエルス・ティーネ(p3p007325)も眺めるものだ……と、そうしていればまるでビアガーデンの様に開かれている場にて、季節もへったくれもない肉と酒を山ほど更に乗せているハウザーと目が合う者であり。
「あっ? イレギュラーズじゃねぇか――
 なんだ、予感がしやがるな。こういう時はいつも……」
「ぁぁあハウザー様! こんな所でお会いできるなんて……うぉあわ!? なぜ今爪を一閃して!!?」
「うるせぇ! この夏の時期にお前に逢うと、ビソシソの奴を思い出すんだよ!」
 そんなー! と言うは黎 冰星(p3p008546)だ。ビソシソとの思い出……レインボー・ドゥームズ・デー……うっ、頭が……虹が……まぁ大体去年の似たような時期にあった、忘れた方が良いかもしれない虹の想い出はともかく。
 偶然にも出会ったイレギュラーズ達と、イヴにハウザー。
 ハウザーは有り余らんばかりの肉をかっ喰らうのに忙しい様だが。ちびちびとお気に入りの金平糖を食べるイヴはイレギュラーズ達に語り掛けるものであり。
「あっ。そういえばイレギュラーズは知ってる?
 今ね。この辺りでお買い物をすると――『短冊』が貰えるの」
「え、短冊……? 短冊が? どうして?」
「うん。只の短冊じゃないよ――ごくまれに『願いをささやかに叶えてくれる』短冊……というか、そういうマジックアイテムが混じってるみたい。正確には幸運をちょっとだけ呼び寄せる短冊かな?」
 正純が首を傾げる様にイヴに尋ねれば、イヴは正純の真似をする様に首を傾げながら言を紡ぐ。
 それは『金の短冊(ゴールデン・ストラップ)』と呼ばれる代物らしい。
 この辺りの商店で買い物をすると、商品と一緒に短冊もくれるのだが……その中に極々稀に、幸運を呼び寄せるマジックアイテムが混じっている――のだとか。
 まぁ幸運と言っても程度は知れている。
 例えば『お金が欲しい!』と書き願えばほんの微かな、お小遣い程度のお金が後々巡ってくるとか。『怪我がありません様に!』などと書き願えば、転びそうになった時に辛うじてセーフで在れるとか……そんな程度だ。
「ははぁ。でもそういうのをオマケに付けて『季節らしさ』を出してるのね。」
「夏のサンドバザールの雰囲気も出しながら、更に購入意欲をも煽るとは……正にラサの商人ですねぇ。財布の紐の緩め方をよく知っている! でも本当にオマケ程度の効力みたいですし、今日一日だけで、どこまで煽れるんでしょうね」
「あん? この祭りは一日や二日じゃおわらねぇぞ――
 確か七月七日にちなんで、七日は続くんだったかな」
「商魂逞しすぎませんか……?」
 イヴより手渡された普通の短冊をエルスと冰星は眺めながら思考も巡らせれば、次は巨大なる七面鳥の様な鶏肉にかぶりつくハウザー。さすれば彼の言った『七夕だから七日続く』とかいう滅茶苦茶な理論に正純は額を抑えながら軽く吐息を零すものだ……
 まぁ。折角にもラサに来たのだ。
 あちこち珍しいモノが出ているバザールも開かれているようだし、願いがささやかに叶うとされる短冊にも思いを馳せながら、この場を楽しんでみるのもいいかもしれない。

 星祭りと、暑い夏。

 この場には、どちらの季節の色がより濃く出ている事か――さてさて。

GMコメント

 リクエストありがとうございます――
 ラサの夏色を感じる事が出来たら幸いです。以下詳細です。

●依頼達成条件
 イベントを楽しむ事!

●フィールド・シチューエション
 ラサの首都ネフェルスト、の一角で開かれているサンドバザールの場です。
 時刻は夜に差し掛かろうとしています。
 もう少し時間が経つと、夜に満天の星空が見え始める事でしょう――

 なお、なんでも今は七夕特別バザール中なのだとか。
 世界各国の七夕にちなんだ商品なども取り扱われている様です。
(普通の商品などもあります。例えばハウザーが喰ってる肉とか)

 買い物をすると記念品として『短冊』がサービスで貰えるようです。『短冊』は95%以上が普通の、何の変哲もない短冊の様ですが……稀に『金の短冊』と呼ばれるマジックアイテムが混じっている様です(詳細後述)
 ともあれ、商店で取り扱っている商品には例えば以下の様なモノがあります。
 お買い物をしても楽しんでみてもいいかもしれませんね。

・金に白に赤に青に、と色とりどりの『金平糖』
・笹に包まれた『笹団子』。食べるとほんのり甘く上品な味わいがします。
・短冊を飾る『七夕笹』。手に持てて、花瓶の類があれば飾る事も可能でしょう。
・七夕を象った『花瓶』。七夕笹と一緒にご購入どうでしょうか!?(by商人)
・とても澄み渡った水である『姫涙』。笹を少しでも長持ちさせるためにどうでしょうか!? 後ですね、普通に飲み水としても美味しいのでお肉と一緒に食べても合いますよ!!(by商人)

・七面鳥。とってもジューシーでかぶりつきやすいです。
・その他、フランゴ(鶏モモ)、コラソン(鶏の心臓)、ピッカーニャ(牛の尻部分)、オンブロ・デ・ポルコ(豚肩ロース)、リングイッサ(豚生ソーセージ)、アウカトラ(牛ランプ)、クッピン(牛コブ肉)……などの食べやすい肉も沢山あるみたいです。七夕???
・お さ け ッ ! カムイグラより取り寄せた豊穣酒や、幻想のバルツァーレク領で獲れたブルニア・ワイン。海洋のシレンツィオにもあるとされるビール・リヴァイアサンなどなど――沢山取り揃えておりますよ!(by商人)

 などなど!

●金の短冊(ゴールデン・ストラップ)
 バザールで何か物を買うと、オマケとして『短冊』が貰えるのですが……その中には『金の短冊』と呼ばれるマジックアイテムも混じっている様です。
 これは、普通のと異なり、手に持つとほのかに神秘性を感じさせる代物で――何かを書き記すと願った事が(ほんのり、ささやかに)叶うとされる神秘の札です――効力に関してはあまり期待しないでください。ほとんど願掛けみたいなモノです。

 例えば『お金が欲しい!』と書き願えばほんの微かな、お小遣い程度のお金が後々巡ってくるとか。『怪我がありません様に!』などと書き願えば、転びそうになった時に辛うじてセーフで在れるとか。そんな程度です……が。
 もしも入手する事が出来たら何かを願ってみてもいいかもしれませんね。
 砂漠の星空に、祈りを込めて。

●イヴ・ファルベ(p3n000206)
 イレギュラーズ達と偶然出会った精霊種です。
 バザールの、あちこちにある珍しいモノを見て回ってるようです。

●ハウザー・ヤーク(p3n000093)
 肉喰ってます。
 ひたすら酒と肉喰ってます。
 肉喰ってます。

  • 夜砂漠の星祭り完了
  • GM名茶零四
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年07月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談8日
  • 参加費150RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ティエル(p3p004975)
なぁごなぁご
回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エルス・ティーネ(p3p007325)
祝福(グリュック)
※参加確定済み※
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
※参加確定済み※
黎 冰星(p3p008546)
誰が何と言おうと赤ちゃん
※参加確定済み※
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎
モアレ・M・バーガンディ(p3p009418)
ポンコツポート

リプレイ


 七夕。星の祭り、賑やかなる囃子はどこまでも……
「なぁごなぁご。ラサのお祭りはいつだって盛況にゃ。
 おっ。七夕ゼリーにゃ。それに魚肉ソーセージも揃えているとは分かってるにゃ。
 此処から此処まで全部欲しいにゃ」
 さすれば、渦中において『なぁごなぁご』ティエル(p3p004975)の気も昂るものである――彼女は無数に並ぶ食品の輝きに目を奪われていた。魚肉ソーセージとは猫の事を考えたラインナップにゃ。おっ、それ以外にもかき氷や雑魚天串なんかも欲しいニャ。買い占めるニャ。
「ラサにもこういうイベント、増えてきたわよね。
 満天の星空の下でお祭りなんて……ふふ。なかなかロマンティック!」
「その上で金の短冊、なんてちょっとしたモノを入れるのがラサの上手い所だよなぁ。ま、聞いたところささやかな範囲らしいが……一体どういう魔法が掛かってそんなモノが用意されてるのか調べてみたくなるものだな」
 更に続けて『青鋭の刃』エルス・ティーネ(p3p007325)や『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)も通りの盛況を見て回る。以前は『傭兵』のイメージが強かった気が、エルスはするものだが……最近はこういったイベントも前面に出て変わってきている気もする。
 まぁいずれせよ楽しむのが吉かと。
 イベントの目玉たる『金の短冊』を求めて買い物に出かけるのも良いものだ――
 もしも手に入れる事が出来たら何を願おうか。
 世界の言う様に、入手できても小さな願いの様ではある、が。
「せっかくお招きいただきましたし、楽しませていただきましょうか――
 イヴさん。案内はお願いしてもいいですか?」
「うん――一緒に巡ろう。星の祭典は、この時期だけ……楽しもうね」
「うんうん! 七夕、星祭り……色々楽しみたいな!
 さ! あちこちお店が出てるみたいだし、ゆっくり見て行こうか!」
 まぁ短冊の事は運が良ければ程度に。それよりも『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)に『不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)は、折角の機会であればこそと、イヴとの一時を楽しまんとするものである。
 星祭りと言えばどこの国でも、なんらか似たような催しが行われるものだが……流石商魂が逞しいというか活力に溢れているというか……ラサでは一際大賑わいしている様な印象を受けるものである。故に正純は逸れぬ様に、イヴと手を繋いで巡るもの――
「正純さん、なんだろうアレ。お団子かな?」
「ああ――アレは笹団子ですね。食べたいですか? あ、金平糖なら手元にありますよ」
「イヴさんイヴさん、こっちもどうかな? 『姫涙』の水、結構美味しいよ!」
「わぁ……これも綺麗なお水だね。色々あって凄いなぁ……!」
 なのだが、あれ? どちらかと言うとこれ、私がイヴさんから眼を離してはいけないのでは?
 ファルベライズの遺跡から出て新たなる世界に目を輝かせる彼女を――正純は微笑む様に眺めるものだ。更にはヨゾラも彼女に様々な代物を勧めるもの……おっ、この水美味しい! 七面鳥にもかぶりつきながら、巡り行くものである――
 リングイッサやフランゴも一つずつ。おっ、ブルニア・ワインもいいではないか!
 うーん。一杯だけ飲んでみようかな? あ、美味しい。もう一杯、あと一杯、更に一杯だけ……

「祭り事か……うむ。実に賑やかで結構な事だ。
 ……我とは程遠いモノだと思っていたが中々にどうして……
 こういうのも悪くないのかもしれんな」
「ハウザー様と~♪ お肉~~♪ シャバダバダ♪ フゥフゥフゥ♪」
「ハッ。まぁ折角の機会なら楽しまねぇとな――オラ、もっと肉持ってこい!」

 そしてビア・ガーデンの様な地では『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)や『ラサの悪魔(出禁)』黎 冰星(p3p008546)がハウザーと共に肉を喰らい合うものである。その勢いたるやまるでフードファイトの如くであり。
「酒は要らん、とにかく肉だ、調理が間に合わないなら生で出せ」
「おぉ。中々テメェ行けるヤツじゃねぇか、肉なんてのはカッ喰らってなんぼだよなぁ!」
「ああ――しかし、フッ。こんな祝い事を願う場ですら花より団子とはお互い哀しくなってくるな」
 特にウルフィンは張り合わんとする勢いである。
 いつもであれば戦いが付いて回る事が多いが――偶にはこういう、祭りを愉しむという事も良いものだと。生憎と礼儀作法は知らぬが……こういう時は場に応じた喧嘩を売って勝負するのが楽しいものである。
 故にハウザーの食欲と張り合う一戦。さぁさ一体どちらに天秤は傾く事か。
「クンクン……アレ……? なんダカ、いい匂いがスル……気がスル!
 お肉!? お肉祭りなのデス!? ワタシも欲しいのデス!」
 そして。『ポンコツポート』モアレ・M・バーガンディ(p3p009418)はモフモフ(ハウザー)達と、迸る肉の気配を嗅覚で感じて……う~ん! 食べたイのデス! お肉! お肉フィーバーなのデス!!
「ハッ!! 店員サン! このお鍋は一体ナンですカ!!?」
「ほほう。お目が高い――この鍋はオーバル型といいまして、楕円形をしていますから、このように肉をまるごと調理したりもできるんですよ。是非如何ですかお一つ。お持ちになって損はありません」
「ムムム! わぁスゴイわかッタ! 店員サン、その鍋の中のお肉ヲおひとつ下サイ!」
 然らば彼女は物珍しい、肉を調理する鍋を思わず仕入れるものである。
 もののついでに付けてくれた肉もあらば、心躍りながら彼女の歩みはまた進みて……
「フフフ~ン♪ 楽しみなのですヨ! なーにを焼きましょうカ!」
 数多の人込みを何とかかき分けながら彼女は祭りの中を闊歩する。
 お肉♪ お肉♪ と、かぶりつく未来に――胸を躍らせながら。


「うおおおお!! マタタビ酒で乾杯!! イエ――!! ハウザー様イェェェイ!!
 あっ! 僕最近ジンギスカンにハマってる話ってしましたっけ? してない気がする! なのでそう勝手に話を進めるんですけど僕最近ものすごいジンギスカンにハマっててですね、わざわざ東のハラビダ高原まで行って羊を狩って新鮮なラム肉持ってきたんですよ。ハウザー様が来ると分かっていれば羊なんてそりゃもう92489013900体ぐらい狩ってくるところだったんですが、生憎1体しか狩ってなくて……しかも連中結構強く抵抗してきて……ハウザー様これ半分こしませんか? しましょう! さぁこっちはぼ~く♪ こっちはハウザーさ~ま♪ さ! ハウザー様ジンギスカン食べましょ、うぉぉぉぉ何故また爪を振るって!!? あっ! もしかして今のは愛!? 愛の抱擁でしたか!!? ならばワンモアアアアア!!」
「誰かコイツの口に肉突っ込ませて少し黙らせろよ!!」
 やかましすぎる! と、パクチーに似た芳香を宿すマタタビ酒にて気分も魂もハイテンションに染まる冰星はジンギスカン(塊)片手にハウザーに絡みまくっていた。マタタビとアルコールの相乗効果で最早怖いものなど何もない……あぁいい気分~~! わぁ、ハウザー様の爪、すっごぉい!

「イヴにゃー。イヴにゃー。これ付けてみるにゃ。むむむ、にゃ~」
「わ、わ。何? なにこれ? 猫耳生えた?」

 そして怒涛に激しい冰星タイムの現場とは異なり――ティエルとイヴの触れあいは実に穏やかなものであった。山ほど買い物をしたティエルはイヴらと合流。さすればティエルはイヴの頭に触れて……宿りしギフトにて猫耳を授けるものだ。
 わー、と物珍しそうに自分の頭に触れるイヴ。
 ふふ。お祭り時ならお面屋さんやくじ引きで手に入るアクセサリーと思って貰えるはずにゃ……つまり何の違和感もないイヴにゃーの誕生にゃ。やっぱり猫は最高にゃ。
「ほら、イヴさん。こちらにはまた新しい金平糖もありましたよ。
 食べてみますか? とっても美味しいですよ」
「わわ、ありがとう。金平糖って不思議だよね……とっても綺麗で、とっても美味しい」
「ふふ。他にも沢山のモノがありますね――豊穣縁の品も。それに、国交が復活した深緑の品に、最近リゾートが出来た海洋の品まで。これがラサの商人としての力でしょうか……利用する側にとってはとても便利でありがたいですが」
 次いで正純もまたイヴと共に在りながら巡るものだ。
 多くの買い物をしながら。金平糖を一つプレゼントすれば、イヴは口に含みて舌で転がそうか――広がる甘味に目を輝かせれば、なんとも可愛らしさが目の当たりになるもので。
「あ、そういえば正純さんは、何かほしいのはないの?」
「私? 私は、そうですね……先程から商人の方がめちゃくちゃ推してくるので七夕の商品と、後はなにか星を象ったアクセサリーなどあれば。豊穣の方に持ち帰って飾っておきたいでしょうか」
 星の社や天香邸に、と。
 彼女が想うはいつも他者の為に。あぁ如何なる品が良いですかね――と視線を向ければ。

「よぉぉぉし! 勝った、飼ったぞ! 確率5%のガチャは、まだ信じられる方だったか!」
「あっ、『金の短冊』だ! やったー! 当たるもんだね、こういうのもさ!!」

 ガッツポーズを決める世界やヨゾラの姿が目に映るものであった。
 捕らぬ狸の皮算用とならぬ様に、ゲットしてから考えようと思っていた世界であったが……まさか上品な味わいと名高い笹団子を買うと同時に当たるとは。
 ふふふ! ここまでハズレで手に入れた普通の短冊に『金! 金!! 金!!! レリーック!!!』と願い続けただけの事はある。はっ? 俗物すぎる? お金を願って何が悪い! 当たれば正義だ――!!
 同時に、酔い醒ましがてら再び買い物に赴いたヨゾラも『七夕笹』『花瓶』『姫涙』をセットで買って大量に手に入れた短冊の中に『ソレ』が混じっていた。普通の短冊は後で館に持って帰って自室に飾るとして――
「ははぁ、確かに。ほのかにだけど神秘性を感じる気も……うむむ。願望器志望の僕としては、願った事がささやかに叶う神秘の札だなんて……ちょっと羨ましいな」
 ひとまず。入手できたコレをどうするかと悩むものであった。
 今の僕は不完全だから……と、思った瞬間に頭を振りて思考を払う。七夕兼誕生日にそう思うのはやめやめ! 混沌世界に召喚され、己で『この日が良いな!』と決めた誕生日なのだ。それよりも。
「うーん……やっぱりこれかな?」
 悩み、悩みて。
 果てに思いついたは一つだけ――

『未来への希望や道標になりそうな、ささやかな幸せが訪れますように』

 小さな願望義にも似た、綺麗な短冊に。
 己が抱いた願いを――託したかったから。
 飾る。近くの、笹の一角に。
 さすれば淡く、金の短冊が刹那に輝いた気がして……
「神様への願い、かぁ……そうね……でも……
 わ、私にだって少しだけ神頼みしたい願いは一つや二つ……」
 更に。エルスもあちらこちらへとショッピングすれば、一つだけ手に入れたモノであった。
 金の短冊――おまじないを信じるなんて、少し子供っぽいかもしれないけれど。
 折角だから何を願うべきかと思案し……浮かんだのは、ある人物の背姿で。
「いやでも……あの方と幸せになるなんて……」
 ……あんまり想像した事はないかしら。
 だって。その。
 私はあの方の女……の一人みたいな感じでも充分と言うか。
 だってずっとからかわれてばかりだったしっ。何度会ってもそんな感じだし!
 今も少女が駄々こねてるとしか見てないんでしょうから?
 分かる。分かってるんですよ! 此処にもしいたら、絶対面白がって見てるって事ぐらい!
「だから、そう……」

 ――せめて、この身が成長出来るようになれたら。

 その想いを、短冊へと記すものだ。
 ……こう見えてもエルスは吸血鬼。彼女が成長する為には血が必要なのだ、が。
 彼女は飲めぬ。ある事情によって……
 故にこそ、言の葉の節々に時折、未熟と思うが故の自信の無さが現れるのやもしれぬ。
 だからこそ。その願いは『自信』を持ちたいという意志でもあり。
「あっ。エルスさん、願いを書いたんだね……それって『どっち』の意味?」
「ふふ――身体と心、どっちだと思う?」
 刹那。イヴが訪れ、窺うように見据えれば。
 エルスは意味深な微笑みと共に――笹の、高い所に括りつけるものだ。

「ぉぉぉ! やるじゃねぇか。その喰いっぷり、中々気に入ったぜ!」
「フッ――ハウザー……お前も良きファイター(食)だな。死力を尽くすに相応しい」

 そして。様々な願いが括られていく最中――ハウザーとウルフィンの両名はフードバトルに勤しんでいた。同時に『えぇ!? 気に入ったってまさか僕よりもですかハウザーさまぁ!!?』と足元でやかましい冰星は足蹴にされていた。
 ――ウルフィンにとっては願掛けよりも、自らの力をもってして求む未来を手に入れんとする。
 そう……化ケ之皮を排してでも! この死闘だけは負ける訳にはいかぬ――!!
 互いに凄まじい速度で肉を片付けていく。最早吸ってる勢いだ。
「モグモグ……これハどうやラ鶏肉……? 表面はパリッと……然し中はジュウシィ……さっきノお店デハ姫涙といウお水……? というものモ購買しまシタけれド、お肉と一緒に食べるトなんて美味シイ……! ラサは、食物の宝庫ナンでしょうカ……!?」
 皿すら飛び交う勢いの激しさ――の中で。ゆっくりと肉を味わうのはモアレだ。
 舌鼓を打つ。鳥の美味さに、肉の美味さに。
 いやそれ所か――この透き通る様な水も実によく合うものだ。
 ……肉の味をホントに味わって食べてるか滅茶滅茶怪しいハウザーとは異なり、モアレは満面の笑みと共に肉にかぶり付く。よーく歯を動かして、舌で遊んで喉奥へ。ほわわ。美味しいのデス!
「あれ、お水の中……これ白い金平糖ノ……欠片……?」
 刹那。モアレが見据えたのは、盃の底に見えし――何かの欠片。
 人ごみで誰かがいつの間にか一粒紛れたのカナ? ちっちゃイなぁ……あっ。
「溶けちゃったデス?」
 溶けてもう見えない……もしかしたら、泡沫と見間違えたのかモ。
 デモ。それでもいいのだ。例えさっきのが幻だったのだとしても――
 今だって、とってもとっても綺麗な景色が見えるのだから。
 街々のお祭りノ明かりガ、お水の中デずっと……キラキラ揺れてル。
 奇麗だな、と思いながら――モアレはゆっくりと。盃を口元へと傾けるのであった。
「偶には魚も食べるにゃよ。ギョニソなら変わんないにゃ」
「あぁ!? なに混ぜやがる変わるんだよ! ちげぇだろやっぱ肉と魚じゃぁよ!!」
 そして――宴もたけなわと言った頃合いだろうか。各地に散ったイレギュラーズ達も再び同じ場所に、いつの間にやら戻ってきており……ティエルがこっそりとハウザーの肉の中に魚肉を追加。なんか文句言われてるが知らないにゃ。お魚も大事にゃー
「ハウザー様ハウザー様ぁ! お肉お持ちましたぁ!!
 ところでなんですけど。僕いつか凶に入りたいんですけど入団試験とかってあるんですか? 僕のような回避ヒョロガリヤサモヤシでも試験を受ければ入れたりするんでしょうか? イレギュラーズとの兼業も出来ますかね!?」
 出来なくても、なんかこう、個人事業主として出向みたいな形で、確定申告をこちらですればなんとなったりしませんか? しません? しないね!? どうでしょうかハウザ―さまぁ!
「まぁ実力が相応にありゃ入る事もできるんじゃねぇか――?
 大事なのは腕っぷしと虹を吐かねぇかだろ。ていうかテメェ凶に入って何を」
「あーいやいやいや! ただ凶に入れればいつでもハウザー様のお・そ・ば・になんて……あっ! 虹色のゲロゲロゲロッピは出しませんからね! 多分ね……多分!! もーし気持ち悪くなってウッカリ出ちゃったらごめんなさい!! あっなんか急に気分が悪く……」
 ヴォエー! ぎゃー!! あぁあぁ阿鼻叫喚!
 まーたどっかにビソシソでもいるかな? ん、今そこの隅になにかいたような……
 ともあれ。とんでもない事になりつつある場からはちょっと離れて、そこには。
「はー。やれやれ。騒がしいのも、まぁ祭りらしいけど……
 締めはやっぱり静かな場所で、だよなぁ」
 世界だ。買い物が終わりて、星空を眺められそうな場所へとやって来れば。
 騒々しい声色は彼方に置いて。一人でゆっくりと――空を見上げるのもいいもんだ。
 購入した甘味と共に。茶の湯気が、星空舞う天へと揺蕩えば……
「ふぅ。相変わらず向こうは騒がしいですね……
 ですがなんとも楽しい一時でした。イヴさん、今日はありがとうございました」
「こっちこそありがとう。お肉も美味しかったね」
「ええ。ハウザーさん達が……些か貪りすぎですが。無中になるのも分かります」
 更に正純も。イヴの手を引きながら想起するは今日と言う一時。
 心残りはない程にはあちらこちらを巡れた――
 ファルベライズの一件以来、イヴの事も気掛かりだったが……お元気になられていたようで何より。あぁ強いて言うならば、お酒だけは取らなかったけど。
「いつか一緒に呑みましょうね――飲めるようになった、その時にでも」
「うん。……あっ。そういえば、正純さんは何を願ったの?」
「私ですか?」
 と、イヴが見れば。正純の手にも短冊が握られていて……その、記述は一つ。

 ――私の周りの方々が、幸福でありますように。

 切なる願い。空に輝く星空に届いたかどうは、知らねども。
 祈りは純粋に。
 一日でも一時でも安らかたれと願うのであった。
 奇麗な星々を見据えながら。
 ああ――この国は、星がとてもよく見える……

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お待たせしました。お疲れさまでしたイレギュラーズ。
 お祭りの一時、如何だったでしょうか。
 来年もまた、平穏に祝える事を祈って……

 ありがとうございました。

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