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シナリオ詳細

<Stahl Eroberung>四天王・『獣王』アディン(なお個体数)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「吾輩は四天王が一柱、獣王ル=アディンである。怯え、竦めよ。さすれば血肉も臓腑も美味くなる。喰らってくれよう、その一欠片さえ!」
 魔王の居城、エピトゥシ城。偶然にもそれを見つけてしまったローレット・イレギュラーズは、この地ともうひとつ、『ショコラ・ドングリス遺跡』の危険を排除すべく、そして鉄帝特務派のパトリック・アネル大佐の陰謀を阻止するため、両遺跡への突入を敢行するはこびとなった。数多の罠、危険な個体達。それらを退けた先で、彼らはひときわ強力な敵と相対すこととなった。
 魔王四天王、『獣王』ル=アディン。残されている文献によれば、その命に死という概念が希薄であり、殺傷力に特化した物理攻撃や炎を操る魔術を得意とし、空を舞い挙句炎を吐く。強靭な剛毛で覆われた身は攻撃を通すどころか、たたきつけた武器に突き刺さり攻め立てた者を痛めつけもする……正真正銘の強敵であるとされた。
 その伝説が今、イレギュラーズの前にいる。
 いる、のだけど。
「……それ何度目の自己紹介か教えてくんない? ボク達も暇じゃないんだからそろそろ倒しにかかりたいんだけど」
 セレマは呆れ顔でそう問いかけた。アディンは気にした風でもない。
「吾輩『も』四天王が一柱、獣王ル=アディンである! 恐怖を奏でよ、その悲鳴で!」
「吾輩『が』四天王が一柱、獣王ル=アディンである! 強き者が心挫ける様を見せよ!」
「吾輩は」「吾輩と」「吾輩で」
「さすがに多すぎるわよっ! やっちゃいなさい朱華丸DX!」
「ゴシュジン メイレイ ゼッタイ。あでぃん 倒ス」
 いい加減増えすぎたアディン『達』に、朱華も思わずゴーレムをけしかけた。朱華丸DXは朱華の声に応じ立ち上がり、両腕を持ち上げガッツポーズのような格好で身構えた。
「「「小癪!」」」
 アディン『達』は次々と火炎魔術を朱華丸DXに打ち込んでいく。短期決戦を企図した――つもりだったのだろう。完全な裏目であった。
「CHHHHHHHHhhhhhhhhaaaaaaaarge....」
「いいわよ朱華丸DX! 今必殺の!」
「必殺アタック要請承認。『赤熱バーニングミキサーDX』」
 ギュイイイイイドガガガガッ、ズシャアアアアアア「「「ギャーッ!?」」」
「何あれ。ほんと何あれ。ボクこの間あんなものにミンチにされたの? おかしくない? なあフミノ!」
 セレマは瓶詰めにされた粘性生物『フミノ』の加工品を叩きながら話しかけた。その辺にしとけよ。
 どうやらこれらは加工すると凄い体力が回復するなんかになるらしいと明らかになったので、セレマが持ち込んだらしい。他意はないそうだ。この野郎。
「いくらでもでてこいよ自称四天王! ボク等は朱華丸DXとフミノ、そう、ボクをさんざっぱら痛めつけた連中のちからで勝つんだからなァ! ……馬鹿じゃないの?」
 本当に君ら馬鹿じゃないの?

GMコメント

 イラストが納品されましたよって聞いた直後にもうボイスが納品されてて、設定委託が投げ込まれたので早朝の窓ぶち破る例の新聞ばりに打ち返しました。
 出さざるを得なくなりました。またキミか壊れるなあ……。

●成功条件
 古代獣の撃破

●失敗条件
 朱華丸DXの完全破壊

●『獣王』ル=アディン×すごくたくさん
 OPの情報が大体です。四天王のはずなのにいっぱいいるのは、彼らがクローンだからです。
 なお、飛行に際し不利を被りません。
 また、最後になるにつれて強い個体が出てきます。

● 朱華丸DX
 友軍。
 朱華さんが『イワコショウの洞窟』で発見、起動に成功したゴーレム(セレストアームズ)です。このシナリオがNormalに堕した理由その1。
 腕がミキサーブレードになっており、通常攻撃に【必殺】を伴います。
 また、朱華さんの炎が決定的なきっかけになったため、【火炎系列】BSのあるスキルや朱華さんのスキル攻撃に限りダメージではなく『蓄積』し、一定以上蓄積すると『赤熱バーニングミキサーDX』(物中貫、【火炎系列】多数、【必殺】など)を放てます。
 こうして列挙すると強そうですが、所詮ゴーレムなので万能ではありません。ケアは大事。

●加工済みフミノ
 セレマさんが同じく『イワコショウの洞窟』にて発見した粘性生物。の、成れの果て。
 非常に高い滋養を持ち、なんていうか凄い勢いでHPとAPとが回復できます。(ソーダ寒天型がAP、餅型がHP)。
 なお、食べる(副行動)時にファンブルすると喉に詰まらせて【必殺】を伴う大ダメージを負います。いちいち【必殺】が強調されてて素晴らしい『他意』を感じます。かわいいね。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <Stahl Eroberung>四天王・『獣王』アディン(なお個体数)完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年07月24日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
ゼファー(p3p007625)
祝福の風
セレマ オード クロウリー(p3p007790)
性別:美少年
ファニー(p3p010255)
百合草 瑠々(p3p010340)
偲雪の守人
煉・朱華(p3p010458)
未来を背負う者
リエル(p3p010702)

リプレイ


「その自己紹介聞き飽きたんだよ。お前らフミノか?」
\キィエエエエエエエエエ/
 『獣王』アディンのあまりの多さ、そして繰り返される名乗り上げに『性別:美少年』セレマ オード クロウリー(p3p007790)は思わず喧嘩を売るかのごとく相手を指弾した。なおここで用いられた「フミノ」は「しつこい奴」の隠語なんだそうだ。おい。その瓶詰めの『加工済みフミノ』が喚いてる気がしたけど気の所為か?
「ライオンっぽいってことは群れ一単位で四天王と言われたのかしら……え? 違うの?」
「ホント、何匹いるのよ、って感じで嫌になってくるんだけど、これが四天王かぁ……」
「四天王のうちの一人がたくさんいた、というのは今回初めて聞きました」
 必死で四天王が多い事態を言語化しようとしたリエル(p3p010702)は、その実態が全く異なるという事実に目を白黒させていた。『群れにして全』、素晴らしい発想力である。だが違うんだ。そう言うんじゃないんだよこいつら。『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)も、四天王の座のレアリティがバチボコ下がってしまった状況に頭を抱えたくなっている。多分他の戦場では、それなり格を残した状態で大暴れしてるんだろうなと思うと悲しい気持ちになりはしないだろうか。まあクローンだしこんなもんだろ。『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は敵方の「四天王(5人目)」ならいざしらず、「四天王(群れ×4)」で現れるとは流石に思ってなかったようだ。あと、仲間の方にゴーレムがいるのはいいとして得体の知れない瓶詰め粘性生物があるのは理解の外だった。……はい、私が出した敵がろくでもなくなりました。ごめんなさい……。
「いやおかしい。おかしいだろ。四天王だろ? 四体いる中ボスクラスの敵のことを言うんだろ?」
「四天王って雰囲気だけは強そうなんだけどな。どうしてこうなった」
 『スケルトンの』ファニー(p3p010255)は持ち続けてきた『四天王』に対する幻想が足元から瓦解していく感覚に、酷い頭痛を覚えた。今まで抱えてきた感想が、幻想が、願いが奪われたかのような感覚はどうにも抗いがたい絶望を感じる。……と、いうと非常に重い話なんだけど、要するに四天王の格落ちに子供じみた熱情が否定されたのでショックがでかいのである。『朱色の決意』百合草 瑠々(p3p010340)にそういう感情はないので仲間達のショックの度合いは理解しきれないが、ひとまず
「――なるほど。つまりこれはアレね、バカばっか」
「それ言うと自分にもかかってくんだけど今回ほんと知性失うなよ?」
「って誰が馬鹿よ朱華は馬鹿なじゃないわよ!?」
「……オーケー、この状況で真面目に考えるのは損する奴ね」
 『煉獄の剣』朱華(p3p010458)は眼前の状況と仲間達のリアクションからどんどんIQがデバフ掛けられている状況を確認し、ああこれはもう駄目だと悟った。悟ったので、全員馬鹿だと仮定して行動に移ろうと思った。のだが、セレマに事実を告げられ否定しきれないことに気付くとガチギレし始める。情緒不安定にも程がなかろうか。そんな二人の様子を見ていた『風と共に』ゼファー(p3p007625)は、『朱華丸DX』と『加工済みフミノ』、双方を持ち込んだ二人の有り様をみてシリアスぶるのをやめた。普段は格好いいシリアス要因なのにどうして……。
『マスターへの敵対意思を確認。排除対象に追加しますか?』
「お前ホントふざけんなよ」
「朱華丸ステイ!」
「「汝らに禍あれ。禍は我等の手でこそあれ」」
 朱華丸はセレマを見て敵か? みたいなリアクションを取るし、アディンは最初に吹き飛ばされた分の補充が終わってるしでもう最低の状況。正常な反応でこの地獄を乗り切れるやついるのか?
「強そうなゴーレムが味方にいるのは頼もしいわね。最大限利用させてもらうわよ」
「あの様子だとあんまり信用できねえけど、死ににくい連中が警戒してるしそこそこ役立つんだろうなあ」
 リエルは朱華丸DXの有能さを聞かされて(そして立証されて)いるため期待の視線を向けているが、他方でファニーは警戒していたりする。そもそもセレマと瑠々がガチ目に警戒している辺りで色々察するところはあるのだ。
 アディン『達』も朱華丸DXの特殊性を理解したらしく、イレギュラーズを取り囲むと尾を威嚇的に振るい、一同に叩きつけるべく間合いを取る。そうでなくとも、鋭く伸びた四肢の爪の危険性と来たら。
「前に出てきた奴はウチが引き付ける。あとは任せた」
 瑠々はそう言い残すと、次々と攻撃態勢に入った敵陣へ血染の赤旗を掲げ、己はここにありと宣言する。数は多い。されど本来の実力に満たぬなら勝ち目はある。イレギュラーズは、冗談めかした状況であろうと油断の二文字は存在しない。
「さっきはよくやったわ朱華丸DXっ! この調子であの馬鹿みたいに群れてる四天王を纏めて焼き尽くしていくわよっ!」
「この間はよくもやってくれたなお前。忘れてないからな」
 朱華とセレマの朱華丸DXに対する感情が正反対なのは考えるところがありそうだが、でも便利なんだよね……。


「数がいるなら纏めてひと当てすればいいのよ! 朱華は賢いからそれくらいわかるわ!」
「狙わなくても群がってりゃあ当たるんだ、魔砲使いにはこの上ない状況だぜ」
 朱華とファニーは互いに別の方向を向くと、それぞれの技でもって掃討にかかる。朱華から放たれた炎と鉛の合奏は、遠間のアディン達の包囲網に不自然な空隙を生み出す。ファニーの魔砲は射線に入った個体群を次々と打ち抜き、その多数を撃破していく……当たりどころが良すぎたヤツは生き延びたが、それだけだ。
「個体の違いどころか初対面なのですから、理解しようがないですね。不幸にしてしまえばどうにでもなるでしょう」
「不幸にしたならいっそフミノで喉詰まらせねえかな。駄目かな」
 セレマの微笑に舐められたと理解したアディン達は、我先にとセレマのもとへ襲いかかり、その尾を振り上げミンチにせんと襲いかかる。潰される姿と再構築する過程と無傷の状態、どれが一番周囲の目に焼き付いてるのか分からぬくらいの繰り返しは、しかし瑠璃のケイオスタイドの影響で潮目が変わっていく。……ひと当てすら失敗し仲間を強打する。自分に当たる。セレマの反撃を受け消滅する。朱華丸DXの必殺技(小規模版)から逃げられず燃え尽きる。明らかに不運な目に遭う回数が増えたのだ。瑠璃の技術の高さもあろうが、多分こいつら己の不幸度合いを理解していなかったとみえる。
「朱華、ちゃんと合図はお願いね! 一緒にBBQにされるのだけは勘弁願いたいわ!」
「分かってるわよ! リエル、調子はどう?」
「敵の数は散らしてるけど、今のところはさっきの一撃を撃つにはエネルギーが足りてないみたいなのよね。さっきはアディン達から一斉に炎を受けてたし、出力が違いすぎるわ」
 セレマが引き付けた個体を蹴散らし、瑠々の側へと向かうゼファーは眼前に飛んできた火球から身を逸らし朱華に声をかける。さしもの朱華もその偶然は制御できなかったようで、怒鳴り返すことしか出来ない。イリスが朱華達を守り、リエルが炎で以て近づく個体を蹴散らす様子は堅固な守りに見えるが、やはり彼女一人でエネルギーを満たすのは荷が勝つようだ。そして、彼女の炎ひとつではアディンを倒しきれないこともまた事実。
『ブレードアタック』
「ギャッ!?」
「炎で弱ってるといっても、そのブレード強力じゃない……? 確かに心強いけど……」
「美少年じゃなくてもそんなの繰り返し突っ込まれたら死ぬだろ普通。近くにはいられねえな……」
 朱華丸DXは炎がなければ動けない、というほどの木偶ではない。近づく個体は積極的に蹴散らしにかかるが、そこに朱華以外の相手に対する気遣いはない。ときにイリスそっちのけになりそうなので必死に庇いながらの位置取りを要求されるので、イリスの気苦労たるや通常時の護衛対象相手のときの比ではない。なんと面倒な話だろうか!
 遠巻きに状況を観察している瑠々も敵の猛攻をしのぎながら今喰らいたくはないな、と白目をむく。
「あんまりこれのお世話にはなりたくないけど、贅沢言ってられませんものね……! あの辺り、ひと当てさせてもらうわよ!」
 ゼファーは腰に吊った加工済みフミノ(餅)に視線を向け、不愉快そうな顔をしつつも一気に前進する。朱華丸DXを中心として、一番手隙の区画へ飛び込んだ彼女はそのまま短槍二本で嵐のごとく暴れまわる。その攻撃範囲内には生き残った個体は残されていなかったが、代わりに彼女の身を体毛が貫いていた。フミノがなければ危なかった。なんだよそれ。
「派手ね! すごく派手でいいわ! 朱華も一撃炎を叩き込むから、射界から離れて頂戴!」
「魔砲とどっこいな気がするけどな」
「しっ、ああいうのは女性のロマンみたいなものですよ」
 ゼファーの雄姿をみた朱華は、なんだか触発されて自分も早く一撃ぶち込みたいと思った。ゆえに、朱華丸DXを巻き込む形で炎の剣の斬撃を放つ。魔砲をぶちかましていたファニーの素直な感想は、同じく(破式)魔砲を使う瑠璃が押さえた。
「にしても、これだけ数を蹴散らされて次から次へ生まれる辺り、クローンって便利ね……皆が頼もしくて助かるわ」
(アンタも結構頼もしいけどな……)
(あんだけ殴られて平然としてる時点でイリスも大概だよな)
 イリスは仲間達の猛攻に喜ばしいとばかりに目を細め、襲い来るアディンの攻撃を正面から受け止め続ける。朱華丸DXの身勝手な行動を制御しつつ一人と一機を守り続ける姿勢は、どうみてもなんていうか瑠々やセレマ以上に常軌を逸した守りだったといえるだろう。


\チックショォォ! ギミックコワレタァァァァ!!!!/
「……今のどっちの声だ?」
 セレマは瓶詰めの中から(加工済みだよね?)聞こえたと思しき声に首をひねった。冗談じみた経験を重ね続けた結果得てしまった『どこか』への干渉能力は、必然触れざる何者かの声との境界が曖昧になるわけなんだけどわざわざ長期戦し易いようにお膳立てしたやつにそういう発言させるのおじさんよくないと思うな。
「俺様割とこういうの喉に詰まらせそうな気がするんだけどなー……ン゛っ」
「えっ、大丈夫ですか?! っていうかどこに詰まるんですか?」
「……きくなよ」
 ファニーが寒天型フミノを嚥下しかけたところで激しく噎せたような素振りを見せたため、瑠璃はその様子に動揺を強くした。今餅型のフミノ食べるとこだったんだぞ、という激しい抗議の念を感じる。だがそれだけだ。彼はなんとかつまらせずに住んだし、両者ともに体の底から湧き上がる凄まじい滋養に目を丸くしていた。用意されたからにはちゃんと効果があったらしい。紛らわしいな。
「できればああいうのにはお世話になりたくないものですけど! お前もアディン! アンタもアディン! こっちもアディン! コイツはちょっと他のと違うし! 迷惑千万なヤツね!」
「相応の出来の個体……と、つまりはそろそろ打ち止めなのね。いいわ、面白くなってきた」
 ゼファーはフミノを食べる仲間の様子、そのそこはかとないエグさに顔を顰めつつ、『お世話にならない程度』の傷で済んでいる現状を神に感謝する。彼女が神をどの程度信じているかはともかく。四方から襲いかかるアディンは概ねが『雑魚』だが、最後に槍を交えた個体だけは、恐るべきかな二合も打ち合い、平然としている。その様子にリエルは強敵への興奮を覚え、前に出かけた足を押さえた。徐々にエネルギーを溜めている朱華丸DXに最後のひと押しを仕掛ければ、きっと相手が仕事をする。それだけ信頼できると、戦いで理解したのだ。
「「おのれ、燃え尽きよ!」」
「学習しなかったのかしら、お馬鹿さん! それとも焦ったのかしら?」
 アディン(弱)は自分をさんざ殺し、煽ってきたイレギュラーズへの苛立ちを募らせていた。だからこそ、四周から本気の炎を吐き出すべく身構えたのだ。の、だが――その射程圏に朱華丸DXがいる事実を見逃していた。そりゃあ朱華からみてもお馬鹿だよなと仲間達は思った。
「皆射線からは逃げたわね! 何度もは聞かないわよ!」
「いいや聞けよ! そこはちゃんと聞いておくところだろ! 何考えてんだよ!」
「ウチだって今までの切った張ったで消耗してんだ、死ぬにしたって場所ってモンがあるんだよ!」
 朱華の合図に一番焦ったのはセレマと瑠々だ。セレマはあれに数度命を脅かされているし、瑠々は此処暫くの死闘の連続でまあまあ消耗が激しく、割と冗談抜きに命の危険が有り得る。こんなところで消耗を深めるのは本意ではないはずなのだ。
「――やりなさい、朱華丸DXっ! 今一度必殺のっ!」
 朱華丸DXは朱華の要請を受け、その場で一番危険な個体を認識し、ミキサーアームを向けた。ちょうどゼファーが戦っていた個体にほど近いところにもう一体、強化個体が潜んでいたのだ。そして、その護衛にアディンがいっぱいいた。
 自分で自分を守るという行為に意味があるや否や、不明点ばかりだが……とにかくそれは牙を剥いた。
「必殺アタック要請承認。『赤熱バーニングミキサーDX』」
「「「ギャアアアアアアアア」」」
「ヌゥ……っ!」
「あ、生き残った……面倒ね、今なら一撃当てられそう」
 強化体アディンが踏み止まった様子を見て、朱華達を守っていたイリスは好機と認識した。そして、動く余裕があると理解した。間合いも十分。釵を振り上げた腕から振るわれた破邪の一撃は、成る程、魔王の四天王を討ち倒すには十分すぎる『謂れ』のある一撃だ。
「……フミノは食べずに済んだみたいね。食レポまでする余裕はなかったし」
 イリスはほぼ掃討が終わった時点で魔力の残余を確認し、未だ問題なしと理解した。セーフだ、自分は賭けに勝ったのだ、と。
「食べないのですか?」
「不味くはねえけどな。寒天味だし」
「朱華も食べたんだから食べなさいよ。在庫余ってるのよ」
「イリスが食べるなら私も食べるわよ」
 だがそんな状況を誰が納得するだろうか。仲間達からの盛大な食すことを強要する圧力は、視線という形で現れる。
「ええ……」
\ギミィィィィッック…………/
「フミノもこうして自分の有用性をフミノ(しつこく主張)してるから、食べてやれよ」
「どういう理屈?!」
 そういうわけで、イリスとリエルはフミノを食べました。美味しかったそうです。心に傷を負った気がしないでもないけれど?
「おのれ、我はまだ健在なり!」
「……っっっせぇつってんだよクソがぁフミノかテメェはよぉっ!!!!! 喉詰まらせて死ね!!!!」
「ゲッ」
 最後に生き残っていたアディンいち個体は、フミノすぎたのでフミノを喉に詰まらせて死にました。
 なあ、もう頭痛くなってきたよ。泣いていいか?

成否

成功

MVP

ゼファー(p3p007625)
祝福の風

状態異常

なし

あとがき

 食べられたり叫ばれたり食べられたり忌避られるフミノの気持ちにもなってくださいよ。

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