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シナリオ詳細

<光芒パルティーレ>死を運ぶ船と鮫、そして所謂不幸の運び手

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 海洋と豊穣を繋ぐ海域、『静寂の青』。『絶望の青』と呼ばれていたころの悪意溢れる状態はすでに鳴りを潜め、今はフェデリア海域――シレンツィオ・リゾートと名を変えたその地を中継点として交易が盛んである。
 だが、全てが平和になったわけではない、『ダガヌ海域』と呼ばれる場所では未知の敵が現れ、ローレット・イレギュラーズはその海域の調査と原因究明を依頼のひとつとしてこなしていた。が、彼らとて手が足りている訳では無い。
 今この瞬間にも、未知という心理的脅威は海洋の、鉄帝の、そして豊穣の兵達を脅かしている。
「なあ、俺達……夢でも見てるのか?」
「この海はもう、魔種から開放されたはずだろ? あいつらがいるなんて聞いてない!」
 鉄帝の屈強な軍人たちは、数年前の戦いを知っている。この地に現れた脅威をしっている。だからこそ、海の向こうから現れた大型の幽霊船、謂わば『冠位嫉妬』の置き土産に瞠目したのである。が、脅威はそれだけではない。それだけなら、彼らが怯えることはあるまい。
 その幽霊船には、数多のフジツボがこびりついていた。
 それらには謎の光を帯び、爆ぜたと思えばその光が軍艦に襲いかかる。まるで、使い物にならなくなった砲塔の代わりのよう。
「SHHiiiihhhh……」
 そして、その幽霊船を先導するように現れたのはサメである。
 であるが、それは通常の個体と趣を大きく異にする。背びれが幾重にも連なった棘の形状を持ち、腹部の辺りに折りたたまれた節足のようなものが見える。果ては、その顎。ずらりと並んだ牙が通常の口より大きく開く構造になっており、さらに口腔内にもペンギンにも似た鑢のような牙をずらりと備えている。それは『あれに食いつかれたら』という恐怖を大きく人々に植え付けるものだった。
「あ、あれに取り付かれたら登ってくるぞ! 近づく前に沈めろ!」
「幽霊船は衝角突撃もしてくるぞ! 絶対に取り付かせるな!」
「鉄帝の誇りを見せてやれ!」
 鉄帝軍人達の意気は軒昂、真っ当にぶつかれば最悪何隻かは逃げ果せよう。だが――
『だから言った』
『近づくなといった』
『沈む定めだと、他のやつが伝えた』
 海の底からざばりと顔を出した人面魚、所謂『人魚』は数日前にダガヌ海域近傍に訪れていた兵士を視認すると、嘆かわしいと言わんばかりにつぶやき、次々と腹をみせ、ぷかりと浮かぶ。死んだのだ。
 それは警句を告げるもの。警句を現実に及ぼすもの。それは豊穣に伝わる海妖怪。
 あまりに激しい状況に、人々は恐怖するしかない。
 『彼らは不幸だから死ぬのだ』。不幸だから死ぬのでは、なく。


「以上、命からがら逃げ延びた、というか海域ギリギリの縁で待機していた鉄帝観測船団の最後の一隻が持ち帰った情報です。『彼らは遠巻きに見ただけで声を聞かなかった』。だから生き延びたと言えるでしょう」
「……いや、たしかに予言する人魚の噂はだいぶ前に聞いていたけど。人魚って淡水性じゃないのか?」
「私の世界で最も有名な人魚は、深海の魔性と不退転の契約を交わしておりましたが」
 『ナーバス・フィルムズ』日高 三弦(p3n000097)の報告に、イズマ・トーティス(p3p009471)はしばし呆然としたあと、ようよう口を開いた。が、あまりの意趣返しに今一つ言葉の要領を得ない。
 彼の考えていた人魚と、実際に現れた『人魚』の違いが大きすぎるのだ。
「ともかく、今回はかなり悪意を感じる敵の編成です。強敵、という言葉が似合うでしょう。皆さんが勝てないとはとても思いませんが、多少齟齬があれば崩される相手でもあります。ひとつずつ説明しましょう」
 彼女はイレギュラーズに対し、勝てないとか敵が強いとか、そういう事は余り言わない。信頼しているからだ。それでも口にする意味は、まあ小さくはないだろう。
「まず、幽霊船です。これは遠距離からフジツボ型の砲塔でこちらを狙い撃ってきます。超長距離射撃で様子見をしてくるので、優先度は低いでしょう。もしかしたら、次に述べる敵を倒せば去る可能性もあります。
 次に、これが厄介ですが、鮫です。ですが、節足らしきものを腹に隠し、背びれが強化されているため水中戦は危険です。海上での低空飛行戦闘でトントンというところでしょうか。船に取り付かれれば破壊しつつ乗り込んできます。小型船では航行も危うくなるでしょう。口の構造が激しく変化していますので、所謂『深怪魔』の一種と思って差し支えありません」
 眼鏡越しに映し出された情報からは、幽霊船の脅威度は低くはないものの、相対的に然程ではないように思えた。そこそこの火力で打ち込んでくるらしいが、邪魔をしてくるが船を庇える者が間に入れば、もしくは直接撃破に人を割けば脅威度はさらに落ちる。問題は鮫だ。
 船に乗り込むことも、背びれによる切り裂きも可能。水中戦闘で節足に絡め取られ、牙で食いつかれたら……想像するだにゾッとする。空を飛ぶ手段があるなら、確かにそちらの方がよさそうだ。それでもジャンプしてきそうなものだが。
「そして、人魚。これらは浮かんでは『不幸』を告げて去っていく……というか死んでいくそうです。これらは数に限りがなく、実質的に死んでは復活してを繰り返していると推察されます。浮上した瞬間に確実に殺さないと、『予言』を振りまき延々と不幸にしていくようなのであまり放置もできず……と、多方面で凄まじく戦力の振り分けに窮する相手です」
「俺の知ってる人魚じゃないんだけど」
「奇遇ですね。私も昔文献でみたタイプですがここまで悪意はなかったです」
 三弦の呆れたような声に、イズマは思わずひどく歪んだ顔をしてしまった。

GMコメント

 お手軽なダガヌ海域のシナリオを出そう! と思ってましたよ書き始める前は。
 どうして……。

●成功条件
・幽霊船を除く全敵戦力の排除
・(オプション)それらの死体の回収

●幽霊船(+フジツボ砲)
 基本的に戦闘区域外から当たるかどうかも怪しい砲撃を延々打ち込んできます。運悪く他の敵に追い立てられると射程圏に入ってしまいますので注意。
 撃破は努力目標ですが、そちらに割く戦力が在るかはとてもとても疑問。
 なお、内部に人員は確認できていません。

●水陸鮫×5
 水陸両用型の鮫です。節足は水中戦での抑え込みから船への取り付きからなんでもイケます。
 背には滅茶苦茶鋭いトゲのような背びれがはえており、これを飛ばします。『致死毒』『スプラッシュ(小)』あり。
 牙による噛みつきは激しい出血を伴うもので、ハードヒット以上で『移動不可』『継続ダメージ(大)』がついてきます。これは抵抗判定で脱出可能ですが、食いつかれた時点で1回はダメージ負いますし、すぐ逃げないとまた噛みつかれ……のループが発生します。とても厄介です。
 ほか、鮫なので水中戦もジャンプもできますし体当たりもその質量的にヤバめ。

●人魚×20
 こいつらの基本行動は、毎ターン『不幸の予言(神中範:【不幸系列】複数、無)、自分に致死ダメージ』ばらまくことです。
 なお、EXFが極めて高いため腹見せて死んではすぐ沈んで生き返って戻ってくるという糞ほどキモいことをします。
 なおビジュアルは人面魚です。日本の古代文献ではそういうものでした、人魚というのは。

●戦場
 ダガヌ海域内。
 魚系全排除で幽霊船は追撃をしてこないので脱出可能となります。
 なお、船については従来どおり持ち込み可、なければ鉄帝海軍兵の操縦する小型スチーム船となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <光芒パルティーレ>死を運ぶ船と鮫、そして所謂不幸の運び手Lv:20以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年07月22日 23時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール

リプレイ


「人魚は何なんだ??? 不幸の予言が嫌すぎるし何故死んで戻ってを繰り返す!?」
「人魚……人魚ねえ? ジンメンギョの間違えじゃない?? 見た目は魚のくせに顔だけニンゲンとか、美味しくなさそーだし、いやねえ?」
 『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)と『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)……のみならず、この場にいるイレギュラーズの大多数は『人魚』のあまりの外見と名前の相違に動揺を隠せずにいた。否、その異常な姿はいい。その生態こそが問題なのだ。死んで生まれ変わり、その度に他者の不幸を祈って、否、呪っていく。
「海で不幸を告げるのは色々いますが、よりによって人魚ですか。肉を食べると不老不死になるとかも聞きますけど、ちょっと死んでいく人魚の肉を食べたいとは思えないですね」
「おまけにあの鮫だ。小型船に取り付かれると不味いとはいうが、なあ?」
「ああ。まるで、生物を寄せ集めて作った出来損ないのキメラだ」
 『守護者』水月・鏡禍(p3p008354)は一般的な人魚の伝承、不老不死の逸話の真相が混沌では『こんなもの』だったら、と思うと暗澹たる気持ちになった。それも大概であるのだが、『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)や『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)らはそれぞれの船の上から今や遅しと距離を測る鮫の姿に警戒を強くしていた。理解できないものというのは、いつの日も厄介なものなのだ。……本当に、理解の外すぎる。
「これまでお仕事で見てきた感じ、海の生き物はこういうものかな……と」
「って珠緒さん騙されちゃダメ! 普通の鮫に節足は無いの!! 節足は無いのよ!!!」
 『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)は混沌に来てから様々な異形に接してきたことで、いい加減ちょっとやそっと異形でも全然驚かなくなってきた。そもそも召喚時点で感情の起伏がなかったそうなので、これでも感情豊かな部類なのだろう。相棒である『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)にとってはそれはそれで非常に困る。異常なものを普通と理解されたら、普通なものを見たときのリアクションが狂いそうなので。……いや、「これが普通」だったらサメ映画はどうなるのだろう? という疑問はなかったことにしておく。
「どこまでも青い海! 砲撃をしてくる幽霊船! 足のついた人食い鮫! フッ……口では違うといいながら、体はバカンスを求めているのさ……行こうぜ蛍ちゃん珠緒ちゃん! 私ちゃんはKawaiiに囲まれて幸せだぜ!」
 ワイバーンの胴に「いけるな!?」ってバンバンしつつ、『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)のテンションはブチ上がりだった。バカンスっていうか闘争を求めてそうなことを言い出すなこの娘は。あと空上を積極的にアピってるんだけどこの娘、水着が危険すぎるのでもう少し大人しくして欲しいという親心を感じなくもない。
「人魚ったらあれじゃない? アタシみたいに綺麗で可愛くて、ナイスバディなやつっしょ? あんなんアタシは人魚だなんて認めないから、ロマンがないわロマンが」
「……そうだな。人魚があのような異形では少々……」
「幽霊船が沈んだ原因かもしれませ……うわっ!? 近くに着弾した!?」
 京が水着姿をアピールするように身をくねらせると、ジョージと鏡禍は敢えて視線を外しつつ敵方の異形ぶりに話題を移す。のだが、冷静に状況を推察していられる時間もあんまりなさそうで、遠巻きに降ってくる砲弾の密度は大概にして無視できない。
「このままじゃ不味いな。とっとと倒して死体を持ち帰るか!」
「こいつらを放っておいたら凄まじい被害が出てしまうし、全く同感だ!」
 エイヴァンもイズマも、眼前の状況に対して『危険である』という認識は十分に共有できた以上、一分一秒でも生かしておく道理はない。
 数隻の小型船団にむけて奏でられたイズマのカンタービレを開戦の合図に、イレギュラーズは各々の手段で海上に躍り出る。若しくは、船上から戦闘態勢に移行する。そんな彼等に向かって緩やかに、しかし確実に迫る敵の影は実に奇怪。
 遠巻きに様子を窺っていた人魚達が各々動き出し、呪いの言葉を吐き出す姿は――言うまでもなく不気味の一言。
「まとめて相手してやんよ! ウェーイ! バイブス上げて行くぜぇ!」
「無理はなさらず! 日高さんが強敵と明確に述べた相手ですから!」
「珠緒さん、もう遅いと思うわよ……」
 人魚達が慎重に距離を取るのをみて撃破に向かった面々とは別に、襲い来る鮫へと挑発をぶちかます秋奈。飛んでくる棘を打ち返して刺し返し、大ジャンプからの噛みつきはかすった程度でいなす。常軌を逸した動きに注意を促す珠緒であったが、蛍は注意して素直に聞く人種とは思っておらず、追撃を入れる準備を始めた。
 降り注ぐ砲弾は命中には程遠いが、密度が邪魔すぎる……果たして、イレギュラーズは不幸な事故に遭わずこれを撃退できるのだろうか。


「いっくわよー……燃えろッ!」
 水上を駆けるように飛ぶ京は、勢いそのままに独楽のように足を回転させ、炎とともに人魚達の群れへと突っ込んでいく。水中にも関わらず燃え盛る脚は渦と化して人魚達を炎にしずめ、当人たる京は一瞬のうちに遠くへと去っている。
 呪いの言葉を吐き散らすだけのそれらに避ける道理などなかったか、燃え上がる姿は不気味そのものである。……あるのだが、それで倒れないのだから相応の体力は会ったのだろう。
「うーん、僕の知ってる人魚はもっとこう美人なんですけど……でも死んでも死なないって僕もこう見えてるんですかねぇ」
 鏡禍は京と入れ替わりで人魚達のもとへ向かう……はず、であった。が、空も、まして海も自由に移動できない彼が利用できる移動手段は小型船しかない。
 仲間と相乗りのそれを彼の一存で使用することは、かなり無理があった。あったのだが、エイヴァンの船は『運搬用』であったためなんとか使えたのである。……なければ海で沈む運命だっただろう。
『恨み骨髄、沈むが定め』
『嗚呼、砲弾を受け沈めばよろしい』
『滑稽、滑稽――』
「貴様らは、ダイナマイト漁を知っているか?」
「沈むのが定めなら、その身で証明してもらいてえな!」
 呪いの言葉は、爆発と暴虐によってかき消される。即ち、ジョージの打ち込んだ爆弾、そしてエイヴァンの圧倒的暴力からである。
 イズマのカンタービレによる加護を受けた二人は、人魚の呪いなどものともせず、寧ろ死に瀕したそれらを次々と真実の死へと追いやっていく。血を流し沈んでいき、もしくはその身を爆散させた人魚たちの醜態は、本来の悪意を発露させる暇すら与えられることはなかった。――が、この死すらも最後に多少の混乱を招くのだが。
「不吉に襲われる運命なのは、お前達の方だったらしいな」
「いいねいいねー! やっちまえー!」
 イズマの生み出した泥が海に浮かぶと、サメたちめがけ襲いかかる。水中と陸上を襲う覇者としての異形は伊達ではなかったか、全てに不調を与えることは叶わなかったが、威力面でいえばかなり強力だ。秋奈もワイバーンの上から攻勢に転じ、煽るように体を捻ったりなんだりしていた。
「ちなみに私ちゃんの水着どう?」
「どうって」
「どうよ! なあ、見ているんだろキミは!」
「……秋奈嬢、どこに向かって問いかけているのだ?」
 唐突に水着の話をした秋奈の姿に、イズマとジョージはちょっとたじろぐ。この子どこに向かって聞いてるの?
「冗談のような状況、味方の心強さ……ですが、回復を途切れさせる訳には行きません」
「この命、預けるわっ! ボクも……珠緒さんの教育に悪い鮫は、近づけさせない!」
 珠緒は秋永冗談めかして立ち回るその危うさを理解していた。冗談を言うのは己の危機感を悟らせぬため。彼女は彼女なりに、他者への気遣いゆえの行動だったのだ。
 その心遣いを知っているからこそ、秋奈の口はバリバリに回るし、それらを逃れて船に接近する個体は蛍の蹴りで押し返されるわけだが、それだけで足りるとは到底思えない。
「――その一体、アタシがもらうよ!」
「あーっ、私ちゃんの今晩のディナー!」
「……流石に嘘だよな?」
 京は十分に距離をとり、鮫のうち明らかに手隙の一体目掛け強烈な炎を浴びせかける。『禊ぎ焔』と名付けた固有技術は、そのまま鮫の敵意をも強く引き付ける。秋奈が京と恐るべき勢いで追いかけっこを始めた鮫を口惜しそうに見るが、その口から出た冗談が果たして冗談で済まされるのか、エイヴァンには測りきれなかった。それはそれとして、鮫の討伐には参加するのだが。
「攻撃、引受けますよ!」
「え、あ、あー……えっと大丈夫?」
 敵の猛攻をなんとかいなしていた秋奈は、しかし明らかに負傷が多い。鏡禍はその状況に待ったをかけるべく回り込み、その身を庇いつつ反撃の隙をうかがおうとした。……のだが、秋奈の表情が明らかにおかしかった。
 ざばっ、と飛び上がった鮫の狙いは正確無比で、というか小型船にとりついたことでしっかりとした足取りで鏡禍を狙い、牙をむく。
 大口を避けようとしても、一瞬の出来事。噛みつかれ、船から引き剥がされ海に落下した鏡禍は、そのまま鮫と水中デートに追い込まれる羽目となった。逃れても自由のきかぬ海の中。彼の対抗手段は、危険な海の中でなんとか反撃に出るか、守りを固めるか、不死性に頼るか……或いは仲間が速攻で鮫をなんとか蹴散らしてくれるのを待つか、その何れかとなった。
「鏡禍さん!? 簡単に倒れないとしてもその、痛みとか大丈夫?」
「ガボゴボボガバゴボッ(死なない限りは大丈夫ですー)」
「……どう思うね、蛍嬢」
「放っておけないわね! フカヒレになる時間よ、鮫共!」
「同感だ。幸い、私もまだ元気一杯なのでね。その鼻面を殴り飛ばして海で腹ばいになってもらおうか!」
 ジョージの問いかけに、蛍は一も二もなく即答する。いかに不死性の強い彼でも、あの状態を絶えられる精神の強さがあるかといえば甚だ疑問だ。彼の安全のためにも、早急に全滅させなければ意味がない。
 焦りは戦局の不利を生む。のだが、運命に守られ、全霊を尽くして敵を倒し、或いは珠緒の決死の治癒をうけて戦った彼等が、奪うことに特化した鮫に負ける道理はどこにも見当たらない。
 斯くして戦闘は、多少の混乱を招きつつも概ねがイレギュラーズ優位のまま勝利を収めることとなる。
 惜しむらくは、人魚達が己の脅威をイレギュラーズに十全に発揮できなかったことにある……の、だろうか。


「鮫が浮かんでくれてて助かったぜ。人魚は……網かなにかで引き上げるしか無いな」
「この節足、蟹のものだったりすると意外にお得……いえ、毒ありそうですね」
「珠緒さん? ぜったい食べちゃだめよ?」
「わかっております。わかっておりますとも……」
 エイヴァンは浮かんでいる鮫を「はくよう」に括り付け、持ち帰る準備を整える。鮫はいいが、人魚は沈み始めているので色々と工夫は必要そうだ。他方、珠緒の食への興味をホタルがなんとか押し留めている状況があるがそれはそれとして。
「アタシ、焼き魚の匂いでお腹が減ってきたの。フカヒレ、ここで焼けない?」
「……今か!? 無理せず戻ってからでもいいとおもうけど……!」
 京は、炎とともに蹴り飛ばした人魚の焼ける匂いが鼻の奥にこびりついたか、お腹を擦りながら鮫を見ていた。海中から辛くも人魚を引き揚げていたイズマは、その元気の良さと食欲に目を丸くする。この異形を食べようと思う食い意地も。
「ワイバーンくん! がんばるんだワイバーンくん! 陸地までもう少しだぞ!」
「……いや、まだまだずっと先だから船に運ばせたほうがいいと思うが」
 秋奈はイズマが引き揚げた網をつかんでワイバーンに牽引させようと四苦八苦している。しているのだが、どうみたって苦しそうだ。ジョージの忠告どおり、船に引かせたほうがいいだろうと思うが。そこは意地があるのだろう、頑として応じようとしなかった。
「…………」
 なお、鏡禍は鮫ごと牽引されているが無事である。無事だってば。

成否

成功

MVP

ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海

状態異常

鏡禍・A・水月(p3p008354)[重傷]
鏡花の盾
イズマ・トーティス(p3p009471)[重傷]
青き鋼の音色

あとがき

 お疲れ様でした。成功です。
 EXFも水難には勝てないゾ☆

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