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シナリオ詳細

<真・覇竜侵食>シェスタと不愉快な不仲間たち

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「私がアダマンアントに浚われた時? そりゃもう焦ったわよ。
 なんていったって揺れは酷いし体勢は変えられないし、最後には放り投げられて爆弾まで飛んできたんだから。おかげで華の乙女が人前に朝食べたトウモロコシパンをお見せする寸前だったのよ」
 そう言いながら、タピオカドリンクを太いストローですする少女。名をシェスタという。
 死ぬかそれ以上に酷い目にあう寸前であったにも関わらず、図太い精神もあったものだ。
 ここは覇竜にある亜竜種小集落のひとつパッセタン。の、およそ中程にあるシェスタの自宅である。石作の簡素な室内にはテーブルと棚。しかし棚には可愛らしい彫刻やぬいぐるみがぎっしりと並び、テーブルにかかったクロスにはポップな模様が入っていた。
「まあ色々と助かったからいいけど、もうあんなのは御免だわ」
 ヤレヤレと言った様子で首を振るシェスタ。
 そんな彼女の耳に、ズドンという激しい爆発音が飛び込んできた。
 一体何事だろうか。
 シェスタは話し込んでいた女友達に待つように言うと、窓にかかったカーテンをめくった。
 外が明るい。こんなにも、明るかっただろうか?
 そう思った矢先、シェスタは窓ごと吹き飛んだ。

 半壊した自宅。割れたテーブルとこぼれたドリンク。棚は火を上げ、ぎっしりつめたぬいぐるみは今まさに焦げ付いている。
 ぐらつく頭とかすむ視界のなかシェスタがゆっくりと起き上がると、崩壊しきった壁の向こうに赤と黒のローブを纏った人間が立っているのが見えた。
 ローブを広げると、内側に無数の破片手榴弾が下がっている。両手で一個ずつ取り外すと、同時にピンがカチンと抜けた。それが爆弾であり、自分を今しがた吹き飛ばしお気に入りのぬいぐるみコレクションを燃やしたものだと、直感で理解する。
 咄嗟に振り向く、内巻のかかった金髪の女性がうつ伏せに倒れている。先ほどまで喋っていた女友達だ。
「逃げ――!」
 シェスタが叫ぶのと、彼女に爆弾が回転しながら飛んでくるのは同時だった。
 あ、今度こそ死んだ。
 シェスタがそう思った、瞬間。
「ふーはーはーはーはー。ボマーの爆弾なぞ恐れるに足らんのじゃ!!」
 聞き覚えのある声だった。
 間に割り込み爆発を完全に防御した小鈴(p3p010431)は、両手を腰に当てちらりとだけシェスタに振り返る。
「また会ったのう!」


 ライオリット・ベンダバール(p3p010380)やディアナ・クラッセン(p3p007179)、そして星芒 玉兎(p3p009838)たちはパッセタンへ向かうドレイク・チャリオッツに乗っていた。
 大柄な四足獣型の亜竜に牽引された馬車のことである。
「つまり、アダマンアントは更なる進化種を生み出していたと?」
 玉兎はうなり、黙った小鈴に目を向ける。
 以前アダマンアントの特殊な戦闘種『バレルボマー』と戦った時の事を思い出していたのだ。
 数が多く、小集落を滅ぼすほどの増殖能力を持つアダマンアント。これがごく短期間で特別な能力を持った個体を生み出したことには驚愕したが、その更なる上位種が産まれたとなれば……。
 ライオットはゆっくりと首を振る。
「あのときオレたちが被害を食い止めていなかったら今頃どうなってたか、ッスね」
「そうね。新しい個体の名前は蟻帝種(アンティノア)。
 『帝化処置』によって喰らった人間の知識を獲得した種よ。
 これを蟻帝種『第一世代』(アンティノア・ファースト)と呼ぶわ」
 届いた情報によれば、アンティノアは人間のようなシルエットを獲得し会話能力すら獲得しているという。
 以前シェスタを助けることに成功したが、もし失敗していたら『これ』に利用されたということだ。
「アンティノアは一体だけでもかなりの戦闘力をもつわ。
 それが複数体生産されて、それぞれが部隊を率いてあちこちの小集落を襲撃してる。
 各集落の防衛部隊が対応してるけど、ハッキリいって人手不足よ。
 今向かってるパッセタンもそのひっとうね」
「であれば……今回も厳しい戦いになりそうですわね」
 玉兎は静かに呟き、仲間達と頷き合った。
 アダマンアントによって滅ぼされたイルナークの悲劇が、いま無数の集落で繰り返されようとしている。
 阻止するための鍵は、あなた自身が持っているのだ。

GMコメント

●オーダー
 覇竜領域の小集落パッセタンにて、蟻帝種『第一世代』(アンティノア・ファースト)率いるアダマンアント部隊が襲撃を仕掛けました。
 現在は現地の防衛戦力によって抵抗を試みていますが、このままでは集落が壊滅してしまうでしょう。
 集落にかけつけ、アンティノアたち中核となるチームを撃滅しましょう。

●エネミー
・コードネーム『ズダントン』
 部隊の指揮を執っているアンティノアです。
 中国語で榴弾砲の意味を持つ名で、バレルボマー同様爆弾を使った攻撃を得意とし、生体手榴弾の投擲やグレネードランチャの使用を行います。
 爆発範囲は調節できますが、広範囲爆発は敵味方関係なく巻き込むので『ズダントンだけを引き離す作戦』はかえってこちらの不利になります。
 また、BSに対して割と高い特殊抵抗能力を持ちます。

・アダマンアント×複数
 ズダントンの兵隊として集められているアダマンアントです。
 集落内のあちこちに放たれていますが、皆さんが戦うのはその一部のみとなります。
 ズダントンが連れているだけあって防御力と抵抗力がやや高めです。

●付近のNPC
 亜竜種の少女シェスタと、その女友達のイスズが近くに居ます。
 彼女たちに自衛能力はほぼないので、放置すると死亡してしまうでしょう。
 シチュエーション的に、皆さんは彼女たちが攻撃に晒される直前に割り込むことができます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <真・覇竜侵食>シェスタと不愉快な不仲間たち完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2022年07月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
ディアナ・クラッセン(p3p007179)
お父様には内緒
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
ライオリット・ベンダバール(p3p010380)
青の疾風譚
小鈴(p3p010431)
元ニートの合法のじゃロリ亜竜娘
フロイント ハイン(p3p010570)
謳う死神

リプレイ


 あえてシームレスに、そのまま状況を繋ぐこととしよう。
「ふーはーはーはーはー!! 何度やっても爆弾なんぞ効かんのじゃ!!」
 続くズダントンによる無数の爆発を無効化結界によって防御する『元ニートの合法のじゃロリ亜竜娘』小鈴(p3p010431)。
 周囲からはじわじわとアダマンアントが包囲を広げていくのが不安だったしなによりこの状況で『逃げ場を塞ぐ』という行動にでることが不気味でならなかった。
 こちらを倒す手段を相手は持っているということだろうか。
 湧き上がる不安をごくりと飲み込み、気持ちを切り替えるためにも後ろの二人へ振り返る。
「しかしシェスタ殿。お主、アリに気に入られるなんか変な匂いでも出しとらんか?
 まさか、また、アリから救い出す事になるとは思わんかったのじゃが」
「私だって攫われた相手に家まで押しかけられるなんて思わないわよ! 普通誘拐犯って家まで来る!?」
「言われて見ればたしかに」
 シェスタはうつ伏せに倒れたイスズへかけより、身体を掴んでずりずりと小鈴の後ろへと運んできた。どうやらイスズは生きてこそいるが、気を失っているようだ。
「ちょっと結界小さくない? 倍に増やせない?」
「無茶を言うな! 今の時点でギリギリなのに! せめて奴らが到着すれば……」
 小鈴がぐっと奥歯を噛む。ズダントンはそれまで続けていた爆撃を一旦やめ、両手に三つずつの爆弾を持った。
 これ以上にない大きさの爆発が襲う。直感でそう察した小鈴は、そしてシェスタは引きつった声を出し――。
「待たせたっス!」
 両手に剣を持った『青の疾風譚』ライオリット・ベンダバール(p3p010380)がそれを十字に交差し爆発を受け止める。
「青いひと! 武器変えたのね!」
「ライオリットっス! 変えました!」
 剣をしゃらりとこすり合わせると、包囲を完成しそびれたアダマンアントたちの陣形を壊すべく斬りかかる。
「バレルボマー系列って……また面倒なタイプの蟻帝種を作り出してくれたっスね。
 捕まってあんなものにされるのはご免被りたいっス。
 他に襲われてれている人たちを助けるためにも、こいつを全力で何とかするっス!」
 もはや取り囲んで潰す作戦は使えなくなったと察したからか、アダマンアントたちが次々と襲いかかる。小鈴とライオリットだけではとてもさばけないラッシュだが――。
「そこまでだよ、アダマンアント!」
 ダッシュで間に割り込んだ『竜交』笹木 花丸(p3p008689)が飛びかかる二体のアダマンアントの顔面を鷲掴みにすると、根性で持ち上げ地面に頭を叩きつける。
「人と同じ姿をして、人と同じような知識を持っているのかもしれない……けど、また人を攫おうとしてるなんて結局アダマンアント達と何も変わってないよっ!」
 花丸の目尻には涙が浮かんでいたようにみえた。
 言葉を交わせるのなら、手を取り合って亜竜種の人達と一緒に協力して生き延びる。そんな未来を……あるいは夢に見たのかもしれない。
「でも、そうはならなかったんだね」
 言葉を交わせるだけで争いが起きないなら、この世から戦争はとっくに無くなっているだろう。そうでない事実は知っていたが、そうなれる可能性も知っているつもりだった。
 そして今はどちらなのかと言えば――話が出来る状態では、断じてない。
「私は亜竜種の人達……手を取り合って一緒に笑いあう事の出来た友達を護る。それだけだよ」
「なるほど、これが必要最低限の狩りですか。これが、手を結びたいと思っている相手に払う敬意ですか」
 同じような感情が、『友人/死神』フロイント ハイン(p3p010570)の瞳の奥に走るデジタルコードに浮かんでいた。
「勘違いもここまで甚だしいといっそ清々しさすら感じます。控え目に言ってキレそうです。
 そのような傍若無人な振る舞いを行えば、世界中から袋叩きにされるのが道理です」
 なぜそれが分からない。ハインが怒りすらたたえた目でズダントンを睨むと、それまで無言で爆弾を投げ続けていたズダントンが広げたコートの裏から新たに爆弾を取り出してピンを抜いた。
「政治の話か? 政治の話は好きだ」
 投げてきた爆弾を、ハインは突き出した両手のグローブから破壊の魔術を発射することで迎撃。互いの頭上で爆発がおき、塵が舞う。
 それまで傾くに留まっていた壁と棚が今度こそ倒れ、炎の中に沈んでいった。
「政治家というやつは皆愚かで、周りを縛って餌を独り占めにするんだろう? そのくせ、自分は偉いとおもっていやがる。群れの長なら、ルールなんぞ作る前に子を百体増やして栄えればいいんだ。
 むしろ、お前らはなぜそうしない? なぜ子の一匹程度に固執する?
 たかだか子を百匹食わせるだけで解決する問題がなぜ飲めない?」
「命の価値が低すぎるんですよ。そんなことだから……!」
 新たな爆発。
 崩れた建物の裏から飛び出した『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)と『お父様には内緒』ディアナ・クラッセン(p3p007179)。
 ズダントンの背後から現れた形となった二人は全く同時に攻撃をしかける――が、ズダントンはそれを素早く転がることで回避した。
 それまでいた場所に爆弾を転がし、時間差で爆破を仕掛けるというカウンターまでつけてだ。
 が、その程度の爆発で二人を傷つけるのは難しいらしい。
 ディアナは爆発によっておきた煙を振り払うと、分かりやすく悪態をついた。
「ふざけんじゃないわよ全く!
 シェスタ、助けに来たわ。もう大丈夫。この場を何とかしたら安全な場所に連れて行くから、少しの間我慢して頂戴ね」
「ほんと良いとこに来てくれたわ! ところでこれって火災保険降りると思う?」
「それは知らないけど!」
 素早くシェスタたちのもとへ走り、花丸たちと一緒に仲間やシェスタたちを庇うフォーメーションをとる。
 イグナートは拳を鳴らすと、ズダントンの様子をもう一度観察してみた。
「アンティノアか。この第一世代で止めておかなきゃタイヘンなことになりそうだし、ここで仕留めたいところだね!」
「もう既になっているとは思いますが……」
 『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)が『仕方ありませんわね』と言って隊列に加わった。
 広げた扇子に星の光を灯し、巨大な扇子型の魔術障壁を作り出す。
 その影に隠れる形で『星の剣』を抜いた。
「バレルボマーを見た時は、次はどんな物々しい姿に進化するのかと思いましたが……。なるほど。こう、なりますか」
「彼らの目的は、相変わらず餌の確保……つまりは略奪と言うことなのでしょうか?」
 反対側を抑えるべく駆けつけた『砂漠の蛇』サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)が『光輝の冠』を頭上に浮かべてどろりと溶解させた。
 垂れ落ちたそれが身体をはい、鎧やボディスーツのように包んでいく。
「あるいは、この集落に何かいいものがあるのでしょうか」
「ハッ、まさか……」
 何かに気付いた表情のシェスタが、イスズを抱えたまま顔をあげた。
「心当たりが?」
「私、すごい可愛いから……」
「はい?」
「私、すごい可愛いから!」
 念を押して二度言われたサルヴェナーズは、『は、はい』ととりあえず応答してしまった。
「人間の形になれるなら、まずは可愛くなりたいでしょ? ふつう」
「それはちょっと同意しかねますが……」
「相変わらず神経がタフですわね」
 この期に及んでそれだけのことが喋れるなら、精神的には大丈夫だろう。
 ならば、肉体的に守ってやればいいだけだ。
 玉兎は『準備は?』とサルヴェナーズたちに問いかけ、サルヴェナーズもまた『完璧ですよ』と親指と人差し指で丸を作るハンドサインを送った。
「お喋りはもう充分か?」
 ズダントンがコートの裏に手を突っ込み、またも無数の爆弾を取り出す。一体あそこに何個入っているのだろうと考えてから、以前戦った戦闘種バレルボマーが身体から無尽蔵に生体爆弾を発射していたことを思い出し顔をしかめた。人間のフリをしているだけで、要は怪物なのである。
「準備ができたなら……仮の邪魔だ。さっさと死ね」
 大量の爆弾が、放り投げられる。

●ズダントン
 放物線を描き、無数の生体グレネードが飛んでくる。過去に戦ったバレルボマーを想像するに、拾って投げ返すような隙を相手が残すとは思えない、なんなら接触と同時に爆発しても不思議ではないだろう。
 イグナートたちは左右へ飛び退いてかわすことを考えたが、それを予期してか耐爆性をもったであろう重厚かつ流線型の装甲をもったアダマンアントたちが左右と後方を未だ固めている。小鈴は変わらず結界を張りながらも、『これが狙いか』と得心がいった。あの爆弾のうちひとつが結界を剥ぎ取るための【ブレイク】属性もちだとすれば、こちらの防御を砕いて閉じ込めたところを燃やし尽くすという非常に効率的な戦いを相手はしたことになる。
「故郷を護るためであればぁ……!」
 引きつりそうになる、というか既に引きつっている頬を抑え、小鈴は衝撃に備える。
 その一方で、ディアナはサルヴェナーズへと呼びかけた。
「イスズさんを!」
「承知しました」
 サルヴェナーズの返事を聞くより早く、ディアナは呆然と見上げるシェスタへと走り、そして飛びつく。
 彼女を押し倒し覆い被さるような形をとると、衝撃を自分の身体でうけとめた。
 しぶとさゆえかなんとか体力が『ミリ残り』をしたが、そんな彼女にトドメを刺すべくアダマンアントが妖しい毒を分泌した牙を晒して飛びついてくる。残った敵を始末するのが役割か……と察するがチームワークがこなせるのは敵側ばかりではない。
 ライオリットがディアナとの間に割り込みをかけ、剣の一本をはさんでわざと噛みつかせると、もう一本の剣でアダマンアントの頭を叩き潰した。
「住民ごと狙うのは卑怯っス!」
「ヒキョウ? 知らない概念だ。お前を食ったら分かるのか?」
 ズダントンは新たな爆弾を手にとり、更なる爆撃を仕掛けてくる。
 サルヴェナーズは一度気を失ったイスズを守った時のように両腕を広げ立ちはだかると、爆発をその身で受け止めイスズの代わりに吹き飛ばされる。
 全身をボディスーツのように覆っていた泥が吹き飛び、あちこちに穴が空くがサルヴェナーズはそれでも立ち上がれた。
 回り込んだアダマンアントが毒を分泌した牙で襲いかかってくる。ディアナに行ったのと同じ追撃目的だろうが、だとすれば念押しの意味をもった【必殺】持ちの可能性は高い。
「一撃くらいは、貰っておきますか」
 あえて差し出した自らの腕を噛ませると、サルヴェナーズは『ペイヴァルアスプ』の魔術を発動。目隠しをくいっとあげるようにして晒した魔眼が煌めき、大量のコオロギの群れがアダマンアントへと襲いかかる幻影を見せつける。
 そうしている間にも更なる爆撃を放つべくズダントンがピンを抜く。
「ライオリットは小鈴と玉兎へと呼びかけた」
「このままではキリがありません。アダマンアントを払いのける方法はないっスか!」
「そういうことであれば……。小鈴さん、一手併せて頂けますかしら?」
 上品なトーンでそう言うと、玉兎は畳んだ扇子に星の光を集め始めた。
 案の定結界が破壊されてひーひーしていた小鈴が、涙目になりつつも別の魔術を行使する。
「しかたないのじゃ。この手はあんまり使いたくなかったが……」
 来い! と叫ぶ小鈴。すると紅蓮の竜がごとき従者が六角形型の魔方陣ゲートから現れた。
 周囲を飛び回りアダマンアントたちを食い散らかしていく。
 一方で玉兎は扇子から伸びた光を刀身とすると、両手剣の構えでそれをぐるんと振り回した。
 回転斬りの要領でアダマンアントたちの装甲を断ち切り、破壊。
 アダマンアント自体にも爆発物が仕込まれていたのか、周囲で次々と爆発がおきる。
「妾を見よ、ズダントン!! ボマーの進化系だか何だかは知らんが、人の故郷に手を出そうとするなぞ、お仕置きしてやるのじゃ!」
 小鈴の挑発の一方で、玉兎は扇子から伸ばした光の刀身、そして霊刀である『星の剣』をそれぞれ握り二刀流の構えをとると、ズダントンめがけて襲いかかる。
 対抗するように、ズダントンは両手をずいっと翳してきた。
 魔法でも放つのだろうか? そう考えた矢先、ズダントンの両手首がパカッとはずれて筒のようなものが現れた。
 刹那。玉兎はズダントンという言葉の意味を思い出す。
「――砲撃!?」
 咄嗟、防御姿勢。
 思った通りに放たれる砲撃。そして爆発。
 黒煙があがり周囲を包むが――しのげたのは玉兎だけだったようだ。
 花丸とイグナートが両サイドから回り込むようにして出現し、全く同時にパンチを叩き込む。
 頭部両サイドから彼らのパンチを受ければとんでもない圧力によって顎から上がなくなりかねない――が、それを察したのだろうズダントンは手首から一個ずつ爆弾を放って即座に爆発。その衝撃を使って急速に後方へ回転をかけ、パンチをかわした。
 回転しつつ左右両側に腕を突き出す。
 自らの顎に銃口が突きつけられた花丸とイグナートは恐怖に顔を歪め……なかった。
 どころか、二人は全く同じよううに笑っていた。勝利を確信したような、あるいは未来を信じている笑みだ。
「「もらった!」」
 空振りの勢いをそのまま活かし、二人は後ろ回し蹴りを繰り出した。
 左右のプレスを逃れたと思ったらこんどは前後からのプレスを喰らったズダントン。
 至近距離での爆発はやはり起きたが、受けたダメージはズダントンのほうが圧倒的に上だろう。
 はれゆく黒煙。
 がしりとズダントンの顔面が両手によって押さえつけられる。
 ハインの、フシのあるロボット義肢のような手だ。
 猫耳のような頭部ユニットから廃熱がおこり、両手から青いエネルギーの光が漏れる。
「イレギュラーズは、あなた達を知的生命体とは認めません」
 お覚悟を。そう言いながら、ハインはフルパワーで破壊魔法を解き放った。

 破壊の光がズダントンの肩から上をなくしたところで、戦闘は終了したようだ。
 振り返れば、アダマンアントの最後の一匹をライオリットたちが倒したところだった。
 シェスタはディアナに庇われた状態で地面に寝転んでいたが、戦いが終わったのがわかったのか身体を起こす。ディアナの肩をぽんぽんと叩いた。
「ありがと。お礼にお茶でも……って言いたいとこだけど、ティーセット今燃えてるのよね」
 親指で後ろをしめすと、未だにごうごうと音を立てて燃えるキッチンがあった。
 肩をすくめるディアナ。
「無事ならそれでいいのよ。お茶は、また今度ね」

成否

成功

MVP

フロイント ハイン(p3p010570)
謳う死神

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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