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シナリオ詳細

騎虎邁進

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 玉髄の路。
 ソレは竜骨の道とも呼ばれるフリアノンへの抜け道に沿った場所に存在する渓谷地帯の名だ――この地は現在、覇竜にとって外界と言える『ラサ』との交易スポットになっていた。
 単純に言えば資材や食料、その他独自の資源のやり取りなどが行われ始めているのである。それは先日『亜竜姫』珱・琉珂(p3n000246)とイレギュラーズ達の活動と尽力によって成された成果でもあった……
 そしてラサの商人からすれば新たに開拓されたという地の話に乗らぬ訳がない。
 儲け話の匂いがする――もとい、興味深き交易所を目指して往く商人の影が今日もあった。
 しかし。

「く、くそ――亜竜だ! 亜竜が出たぞ!!」

 だからといって危険が全くない訳でもなかった。
 空から強襲してくるワイバーンの類。
 少しでも道を逸れようものなら覇竜に住まう魔物も襲い掛かってくる危険性。
 決して楽な道のりが開拓された訳ではないのだ。
 それでも――多少の危険なんぞを恐れてラサの商人が務まるものか。
 まだ見ぬ損得を求めて彼らは亜竜住まう領域を突き進み。
「駄目だ振り切れん……! やむを得んか、頼んだぞイレギュラーズ……!!」
「――あぁ。連中を足止めしておけばいいな?」
 しかしこの地に慣れた亜竜の脚の方が早いのか、どうにも振り切れなかった。
 故にこそこういう時の為に依頼を出していたイレギュラーズ達に――出向いてもらう。
 荷馬車を護るのだと。今の所見えるのは、後方側より迫りくる亜竜が四、いや五体……
 ワイバーン『ケトラス』だ。この付近に住まう亜竜の一種で、毒の吐息を撒き散らす個体。
 あの吐息の餌食となってしまえば体が蝕まれ、足が鈍るやもしれぬ……
 だからこそイレギュラーズに足止めしてもらう。
 少しでも連中の歩みが止まれば、それだけで逃げ切れる筈――と思っていれば。
「……流石、此処は亜竜の巣窟と言った所かな」
「ん、ど、どうしたイレギュラーズ?」
「どうにも『前』からもお客さんの様だ」
 そう簡単にも行かぬのが覇竜領域なのだろうか。
 イレギュラーズの一人が素早く勘付いた……前からも迫っている亜竜の個体がいる、と。
 恐らく同じ亜竜の個体――回り込んだ個体がいたのか、それとも偶然か。仔細は知れぬが、いずれにせよこのままでは挟み撃ちの形だ……この場所は一本道であり左右に荷馬車が迂回するだけの余裕のある道のりは無い。
 幸いと言うべきか前から来る連中は、後ろと比べてそう数は多くなさそうな気配だ。
 前方を一気に粉砕し突き進むか。
 それとも踏みとどまり体制を整えた上で前後両方相手取るか。
 接敵が早そうな後ろ側を強襲し、数が多い側を殲滅してから前も相手取るか――
「どれにしろ、さっさと決めておく必要がありそうだな……!」
 イレギュラーズ達は思考する。いずれの手段が最も迎撃しやすいか、と。
 玉髄の路――イレギュラーズ達の手により拓かれた交易所まであと少し。
 こんな所で邪魔される訳にはいかないと、思考を高速で巡らせていた……

GMコメント

●依頼達成条件
 『玉髄の路』へと向かう商人の護衛。(荷馬車が破壊されない事)

●フィールド
 『玉髄の路』と呼ばれる渓谷地帯です。『玉髄の路』のシナリオに関してはこちら『https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7900』
 交易所が建設されており、そこまでの護衛が求められています。(フリアノンまで直接ラサの商人が訪れる事はありません)

 今回の舞台は玉髄の路の途上の狭い一本道です。
 時刻は昼で、視界に問題はありません。
 周囲は険しい渓谷地帯で、人ならともかく荷馬車が迂回する余裕はなさそうです。
 なんとか亜竜を迎撃し商人を護衛してあげてください――!

●敵勢力
・ワイバーン『ケトラス』×8体
 襲い掛かって来た亜竜です。
 翼も持ちますが、もっぱら地上での走行に優れている様で滅多に飛ぶことはありません。
 毒の効果を宿した吐息を撒き散らし、獲物の動きを鈍らせんとして来るようです。【毒系列】【足止系列】の幾つかのBSを付与することがあります。その他、勢いに任せて突進してくる攻撃もあるようです。
 全体的な能力値の傾向としては、速度や技術よりも攻撃と防御の方が高い傾向にあります。

 この内の三体が前方から。五体が後方から向かってきています。
 どちらかと言えば後方側の方が、距離(接敵)が近いです。

 数の少ない前方を一気に粉砕するか。
 それとも距離の近い後方側に攻撃を集中させるか。
 或いはその場に踏みとどまり、付与など態勢を万全に整えて纏めて迎撃するか。

 いくつかの手段があると思いますが亜竜を撃退してください。

●味方勢力
・ラサの商人
 荷馬車と共にあります。玉髄の路へと食料や香辛料などの物資を運搬している様です。
 荷馬車はそれなり程度の耐久力はありますが亜竜に集中攻撃されればやがて耐えきれなくなるでしょう。破壊されれば失敗となってしまいますので、ご注意ください!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 騎虎邁進完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月28日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
炎 練倒(p3p010353)
ノットプリズン
ジン(p3p010382)
劉・紫琳(p3p010462)
未来を背負う者
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
死血の魔女
月季(p3p010632)
黒き流星

リプレイ


 ――覇竜に安全な道など存在しえない。
 例えばフリアノンの近くであろうともソレは同じなのだとジン(p3p010382)は思考するものだ……が。
「交易を行う限り、こういった危険とは隣り合わせとなるだろうが……心配はいらない。
 そのための俺たちだ。荷馬車には爪一本触れさせん。安心して構えていればいい」
「ああ――商人殿、安心してくれ。これでもそれなりに場数は通って来ている」
「あ、ああ! 頼んだぞイレギュラーズ……! お前達だけが頼りだ!」
 『黒狼の勇者』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)と共にまずはと、荷馬車を率いる商人へと言を紡ぐものだ。亜竜の襲撃が起こってしまったのであれば仕方ない――後はどれだけ迅速に安全を取り戻せるか、だ。
 前方と後方から接近しつつある亜竜達。
 どちらから潰すべきか――
「ガーハッハッハッ! 偶然か相手の策略かは知らぬが挟み撃ちとは商人殿は運がないであるな! しかし案ぜよ。この覇竜一の知識人にしてスゥーパァーウルトラハイパーインテリジェンススゥーパァードラゴォニアであるこの炎練倒には最早奴らを倒しえる未来が見えている故大船に乗ったつもりでいるがよい!」
 しかし『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)の言うようにもう結論は定めているのだ。
 狙うべくは接敵の早い後方側より。
 合流される前に数の多い向こう側へと先制し、数を減らし優位を取らんとする……
「むっ? そういえば商人殿は既に馬車に乗っておったの、ガーハッハッハ!
 ならば大馬車……否、超馬車にでも乗った気になるがよい!!」
「あわわわ……! ともあれ来ますよ! 亜竜です――!!」
 で、あれば更に高笑いつつも後方側へと布陣を怠らぬ練倒と共に『炯眼のエメラルド』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は見るものだ――亜竜ケトラスが只管に馬車へと目掛けて突進してくる様を。
 のんびり旅道中……などと最初は思っていたものだが、とんでもないのが潜んでいたものだ。
 なんとなし胸の鼓動が高まるのは焦燥か――?
 されど彼女は落ち着く術を知っている。呼吸に集中を、一つに意を向ければ静まりて……
「――打破しましょうか。いきましょうッ!」
「ええ――前方から至る者達もいます。速戦即決こそが鍵となりましょう」
「覇竜のみなさんもきっと交易を楽しみにしていますよね……
 こんな所で邪魔をさせるわけにはいきません! 絶対に辿り着いてみせますよ!
 商人さんは荷馬車の中へ! 此処は私達に任せて下さい!!」
「展開するか。皆、道が狭い――あまり詰まり過ぎぬ様に、な」
 同時。マリエットの号令が走ればイレギュラーズ達の動きが洗練されるものだ――さすれば『月下美人』雪村 沙月(p3p007273)が見据えた亜竜共を薙ぐ様に。流れる様な踏み込みから奴らの懐へと至れば……その手刀が迅速迅雷。
 更には『ためらいには勇気を』ユーフォニー(p3p010323)も決意露わに。
 収束させる魔力あらば――ケトラスらが固まっている所へと熱砂の嵐を顕現せしめるものだ。さすればジンも道の狭さが故に詰まらぬ様に、と注意の言を飛ばしながら敵を押しとどめる為に前へと赴くものだ。
 間髪入れぬ。前方側が合流する前に一体でも多く減らす。
 故にこそ馬車の上からは『紫晶銃の司書竜』劉・紫琳(p3p010462)が揺らいだ亜竜へと銃撃を重ね『月下の華月』月季(p3p010632)が速度の儘に敵陣を食い破らんとするものだ。
「予想はしていましたが、馬車一つの行き来とっても一筋縄にはいきませんね……
 ですが里のために力を尽くしてくださる琉珂様のためにも、そして里の皆様のためにも、こんな処で足を止めるわけには参りません――邪魔立てするというのであれば、何人であろうとも排してみせましょう」
「やーれやれ商売人は大変だなぁ……いやまぁおそらくはそれを守らないといけないワタシ達も大変になるんだろうけどね! 現在進行形で!」
『グ、ル、ァアアア!!』
 直後。ケトラスらが撒き散らすは――毒の吐息。
 イレギュラーズ達に抗する一撃か。そんなもので怯みはしないが、荷馬車に届けば馬車が保つとは限らぬ……故にこそ恐れずに前に出るしかない。
 臆さず、怯まず。歩みを止めぬ先にこそ――きっと望む未来があるのだから。


 俯瞰する視点で戦場を眺めるユーフォニーは常に敵の位置を確認していた。
 ――より正確には『前方』側からの亜竜がいつ到達するか、の警戒の為に。
 今は全霊を後方側に注いでいるが『その時』を逸してはならぬのだから。
「大丈夫。大丈夫ですからね――ゆっくりと、落ち着いていてください。
 そう。いい子ですね……大丈夫。私達が必ず守ってみせますから」
 そして彼女は一度、荷車を引く馬に落ち着く様に、手を伸ばして撫でながら声を掛け。
 再度紡ぐものだ。熱砂の嵐を、亜竜共の中枢点へ。
「さあ、お前達の相手はこちらだ! その爪、その牙で俺を打ち倒せるか試してみると良い!
 ――この地に、竜が覇を告げる地に住まうのならば、その格を見せてみよッ!」
「全て撃ち抜かせていただきます。加減はいらないでしょう――そちらから来たならば」
 更に吠える様に、名乗り上げる様に。
 ベネディクトが槍を振るいて亜竜らを押し留めんとすれば、援護する様な形で紫琳の弾頭が戦場に弾けるモノである――それは重力の力を宿した特殊弾頭。弾き飛ばした上で縛り付けんとする秘儀が一つ。
 ケトラス達も頑丈なモノで一発だけで揺らぎはせぬが、それも予測済みだ。
 壁を突破せしめんとする個体に次は狙い定めるだけの事。
 倒す優先順位を見誤りはしない――故に。
「荷馬車には爪一本触れさせん。
 成したくば俺達を超えてみせろ……尤も、越えられるつもりなどないが」
「ふぅぅぅッッ! ベネディクト殿やジン殿だけに見せ場はやれんなぁ――ッ! 我が知略を見よォッ!」
 ジンや練倒も続くものである。ジンは此方の守りを抜けんとする個体を目敏く見分け、立ち塞がりて――一撃紡ぎあげるものだ。これ以上荷馬車には近づけぬと……自らに戦いの加護も齎し万全を整えながら。
 そして続けざまに練倒が印を紡ぐ。
 無茶苦茶の様な、しかし意味のある刻みは呪となりてケトラスの周囲に展開。四方より迫りくる土葬の壁があらば、そのまま術を強めて押し包まんとするものだ――! ふぉぉぉこれぞ叡智ッ! 叡智の力! エイチ・イズ・パワ――!!
『ギィィィ……ガアアア!!』
「ッ――また行ってきましたか、毒のブレスですね……ですがこれならば大丈夫です!
 戦線を維持しましょう……! 敵を突破させなければどうとでもなります!!」
 しかしケトラスもイレギュラーズ側にしてやられて――ばかりではない。
 彼らも再び毒の吐息を戦場に満たし、イレギュラーズ達の動きを乱さんとするものだ。戦場が道の狭間である事も相まって躱しづらいモノである……真正面から受ける形となれば、故にこそマリエッタは声を張り上げ皆を鼓舞する。
 それは皆に纏わりついた負を払い、態勢を立て直す一助となろう。
 毒を払い、身を蝕む痛みを払いて活力を満たす。
 ――そうして再び押し返さんとするのだ。
 後方側にまずは全力を投じれば、数の上で有利となるのはイレギュラーズ達だ。ジンやベネディクト、沙月などが前線における盾となりて押し留めつつ――練倒や紫琳、ユーフォニーなどが後方より纏めて敵を穿つ。
 その上でマリエッタが必要に応じて指示や治癒の術を放てばかなり優勢であった……が。
「……ッ! 皆さん、どうやら『来る』ようです……!」
「――やはりそうですか。そろそろ彼方からも参られる頃合いかと、思っていました」
「おー挟み撃ちの側だね! まっかせっとけってね! すーぐに倒してくるよぉ!」
 警戒していたユーフォニーが気付き、同時に眼前のケトラスの顎を掌底で打ち抜く沙月が気配を感じ得るものだ――
 遅れて戦場に至らんとしている、別のケトラス達を。
 然らば高速の拳を敵に叩き込み続けていた月季が意気揚々と視線を『そちら』に向けるもの。こういう折こそ反応速度に長ける己が真っ先に向かうものだと……おっと勿論、突出し過ぎれば孤立するのは分かっているが故に足並みは合わせるが。
「ケンダマだかテト……ス? だかなんだか知らないけど、こっからが正念場ってね!」
「なぁーに! いざとなれば己が拳で状況を打破するという最終計略もあるものだ――!」
「それは果たして計略なんでしょうか? ともあれ――粉砕せねばならないのは確かですね」
 そして往く。月季に続き、練倒や紫琳も。
 ――元々の作戦の内だったのだ。後方側を押しとどめている内に前方側が至れば……今度はそちらに力を注ぎ込むと。だからこそ行動は迅速にして正確。
 突進してくるケトラスらの動きを止める様に――皆の撃が紡がれた。


 亜竜達は堅く、強い。しかし。
「表皮が硬いとしても目、関節、狙い処はあるはず……!」
「はい――! 見えてますよ……絶対に、逃しません!」
 紫琳の見定める瞳が、ケトラスの脆き点を穿たんとするものだ。
 一弾一殺。死を運ぶ魔弾を叩き込みつつ、ユーフォニーも攻撃を降り注がせる――
 一刻も早く倒すのだという決意と共に。
 戦闘音を嗅ぎ付け更なる敵の姿が訪れないとは限らぬと……
 ユーフォニーは警戒を怠らぬ。常に全体を見渡しやれる事を着実にこなしていくのだ。
 ……挟撃の形が完成し、後方側だけに集中できていた状況が崩れれば、ややイレギュラーズ側の攻勢が鈍る形となっていた。先の紫琳らの撃は前方側へと紡がれ、対応に追われている――
 しかし戦況が亜竜側優勢になったかと言われればそうではなかった。
 後方側へと加えた撃の圧はそう生易しいモノに非ず。数の有利を活かして紡ぎ続けた攻撃は連中の体力の多くを削り取っていた……壊滅させた訳ではないものの、それでも万全たる身を瓦解させていればやり様はあるものであり。
「どうした――それでも亜竜の一角か。俺はまだ立っているぞ? こんな程度か!」
 そして当の後方側はベネディクトが奮戦していた。
 抑え込む。名乗り上げ、己に向けられた敵意在らば穿つように竜血の力を沸き立たせ――撃の先端に乗せる魔力と共に敵の身を蝕もう。
 誰一匹とて通さぬ。牽制たる筈の拳が鱗を砕き、竜爪の一閃を続かせ肉を裂くもの。
 崩さぬ防の構えが堅牢であり続ける――そして。
「ベネディクトさん、ご無理はなさらず……! えぇ――私もいますので!」
「あぁ、すまないマリエッタ。感謝する!」
 その行動を支えるのがマリエッタだ。
 彼女の治癒術がベネディクトを包めば彼の傷を急速に癒すモノ――
 確実に後方の戦線を維持する為に彼女もまた全力を尽くすものだ。
 例えケトラス達が放ってくる毒の吐息が彼女にも届こうと……
「これ以上は……決して退けません……必ず、打ち破ってみせます!」
 彼女の瞼が閉じられる事はない。
 その瞳にて戦場を見据え続け、皆の援護を続けるのだ――さすれば。
「では。これにて仕舞とさせて頂きましょう」
「襲ってきたのならば返り討ちにあっても――文句は言わぬことだ。亜竜よ」
 前方側。沙月とジンが一気にケトラス達を粉砕せんと動くものである。
 雷鳴の如き加速、雷撃の如く鮮烈に。
 沙月の、縮地が如き踏み込みは肉体の強靭さにかまける亜竜らには理解出来ぬ……意識の外より至る三閃は翼の付け根、或いは鱗の狭間へ。狙い目だと思わしき死の一閃を彼女の瞳は逃さず捕らえ、命の華を細断するものだ。
 直後にはジンも全霊を叩き込む。
 最適解の一撃を。凡百には理解できぬ至高の一閃を、此処に。
 ケトラスが爪を振るいて薙ぎ払わんとして来るが――構うものか。
 全て両断すれば何一つ問題は無し。
 太刀筋が激突。甲高き音が弾ける様に響いて――だが、聞こえてきた悲鳴は亜竜の咆哮のみ。
「よし! 敵が崩れるぞッ! 今こそ猛攻猛進猛追撃の時!!
 このスゥーパァーインテリジェンスドラゴォニアたる炎練倒に続けッ――!!」
「獲物だと思って襲い掛かってきたのは軽率だったね――ハローグッバイ!!」
 となればケトラスらの攻勢が段々と、明確に弱り始めていたのを練倒は感じ取るものだ。
 蛇の如き動きを伴う雷撃を放ちて亜竜を呑み込めば、更に業火の炎で焼き尽くさんとする。敵の乱れを突く事こそ叡智の指し示す――えぇいとにかく攻勢時! その流れは月季も感じ取っており、一気に連中をぶちのめしていくものだ。
 ただ、月季は一応の『警戒』はしていた。
 なにせ連中は亜竜……ほとんど走るタイプの個体の様だが、万一には飛ぶ可能性もあろうと。故に上から抑えつける様に、或いは叩き落す様に彼女は跳躍しながら撃を紡ぐものである――流石に、飛びながら戦うのはめちゃムズ。だから飛ぶ前に、と。
『ギ、ィィィ、ルァアア――!』
「ッ! 破れかぶれの突進ですか? させません――ッ!」
 瞬間。錯乱したのだろうか、ケトラスの一匹が強引にイレギュラーズ達を打ち破らんと激しい突進を仕掛けてくるもの――であれば素早くユーフォニーが動きて、馬車を護らんとする。
 あと一歩。あと一歩なのだからと――後衛たる身として馬車に近い己が成すのだと。
 ワイバーン。其方も、ただこの付近で生活していただけなのでしょう。けれど……!
(やれる事は、全部やり切ります――ッ!)
 ユーフォニーにも譲れぬ決意があるのだ。
 ――衝突。しかし、その一撃は決して馬車には届く事はなく。そして。
「然らばこれにて。道を譲っていただきます」
「これもお仕事ですので……失礼!」
 沙月が真横より。弾き飛ばすかのように一閃叩き込めば、マリエッタも攻勢へと転じる。
 数多の負を撒き散らす漆黒のキューブを顕現せしめ投じれば、破裂する様に。
 それは亜竜の身を縛りて蝕もう。
 ――決着は着いた。最早ケトラス達が荷馬車を襲えるだけの力はなく。
 前方側は粉砕され、当初は数の多かった後方側もベネディクトがしかと支えきり。
「――退いていくな。よし。それならもう無理に追う事もないだろう」
「ま、今回は護衛の依頼だからね! あっちがやる気ないなら問題なし!」
「ふぅ……さてさてしかし、このような危険は……これからもあるのでしょうね」
 さすれば、最後の一匹は突如として逃げ出すものだ――最早どうしようもないと悟ったか。
 逃げるならばとベネディクトは追わず、月季もまた依頼の主目的を思えばこそ無理に追撃はせぬ。一息ついた紫琳は呼吸を整えつつも、他に潜む個体がいないか優れし聴覚を用いて周辺を警戒し――そうしてようやく安全が確保された事が確認できるものだ。
 では往こうか。
 後は玉髄の路へと……向かうのみなのだから。


「はは、イレギュラーズには世話になったな!
 アンタらのおかげで助かったよ……またの縁があれば、その時は宜しく頼む!」
「ああ――此方こそ、また機会があれば宜しく頼む。
 が、むしろ今度は一度、客として会ってみたいな。
 香辛料などに興味がありそうな身内が居てね……いい土産を持って帰ってやれそうだ」
 そしてその後は新たなる襲撃などはなく、玉髄の路へと到達せしめるものである。
 商人がイレギュラーズ達に礼を言い、ベネディクトは返答しつつ荷馬車の中身を見据える。中には香辛料だのなんだの珍しい代物が幾つか見えていた……知古の者がいれば目を輝かせそうだ、などと思えば口端が微かに緩むものであり。
「俺達でなかったとしても、護衛は確かな腕を持つ者達をな――此処は甘くない」
「覇竜領域を通る以上ある程度は仕方ないのかもしれませんが……やはりまだリスクは大きいですね。まあこればかりは地道に整備を進めていくしかないのでしょうか」
「そうですね……元より、過酷な覇竜領域です。中々一朝一夕ではいかないかと。ただ物流が増えることよって交易所は栄えますし、人の行き来も増えることでしょう。玉髄の路の発展が進んでいけば……いずれは、かもしれませんね」
 直後にはジンも言を紡ぐものだ。次の往来もきっと危険であると、警告しながら……
 であれば紫琳や沙月はこの危険な道のり自体に想いを馳せるものであり。
「……いずれは私達の手でも、もっと何か――今後の安全な交易の為に、何か出来る事が出てくるかもしれませんね。亜竜達の命を奪わなくてもいい、もっと根本的な……」
「うむうむ。今回商人殿は災難であったが……まぁ今すぐどうこうなる問題ではあるまいよ。だが歩み続ければいつか望むべく未来へと繋がるものだ。例え鈍重なる一歩でも、歩めば兎が亀に勝つ事もある様に――! ん、逆だったか?」
 それはユーフォニーも少なからず思うものだ。
 ワイバーンは此処で生活していただけ。彼らをどうにか刺激せぬ道はないかと。まぁそれはこれからの交易路の発展に伴って進化していくかもしれないと練倒は言を口にすれば――
「ともあれ――皆さんが無事で何よりです。ええ、本当に……」
 マリエットは皆の無事を確認して、安堵の吐息を零すものだ。
 覇竜領域。その狭間に生まれし……新たな交易所。
 この地に至るだけでも難解なれど――故に達成したという充足感も、心のどこかに味わいながら。

成否

成功

MVP

ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘

状態異常

なし

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!
 覇竜領域と外を繋ぐ新たな交易の場……
 安全とは言い難いですが、しかし皆様のおかげで文化と物資の交流がまた広がった事でしょう――

 ありがとうございました!

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