PandoraPartyProject

シナリオ詳細

新装開店かき氷

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●かき氷を売らねばならぬ
 かき氷を売らねばならぬ。
 理由を考える脳はおよそ整然とせず、陽光と蝉の声にくらんでやまぬ。
 汗の耐えぬ夏の日の空に、手を翳しメロンフラッペヌスは思った。
 かき氷を売らねばならぬ。
 その想いだけを書にしたため、配達人に手渡すと、彼は幻想王都の路上でうつ伏せに倒れたのであった。

「かきごおりおいしいのです! かきごおりおいしいのです!」
 メロン味のかき氷をこの世の春とばかりにあむあむしている『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)。
 依頼説明を始めるに充分な人数が集まったと知るや、スプーンががしゃがしゃやって残る氷を頬張り始めた。
「待っててください! 今食べちゃうのです! こう見えてかき氷食べるのは早――ッアアアアアアア゛!」
 頭を押さえてのけぞるユリーカ。
 夏の風物詩にしてかき氷あるあるであった。

「今日のお昼頃、こんな依頼がローレットに届いたのです」
 頭をとんとんってやりつつ、ユリーカは依頼書と手紙をテーブルに広げていった。
 差出人は幻想王都でかき氷露天商を営むメロンフラッペヌス45歳独身。
 二十年くらい前に脱サラ(貴族のお仕えから外れること)をして心機一転かき氷売りとなりがっぽがっぽの大もうけ。これで一生喰っていけるわとガハハってたらあっというまにブームが過ぎ去り残ったかき氷などただの凍った水。
 それでも再びのブーム到来を信じて細々とかき氷を売り続けたものの波はこず、冬場の漁船バイトで食いつなぐ日々。
 気づけば取り返しのつかぬ歳となり、このままではひからびて死ぬだけだと再びの心機一転。移動式屋台を購入してかき氷を売り歩くことにしたのだが……。
「幻想はこの暑さ。通りがかった真夏灼熱スーパークソ暑大権現の猛威もあって熱中症になってしまったのです。
 遠のく意識の中、この依頼をローレットに託し……この方は……っ」
 クッと目を伏せるユリーカ。
 空気を察して目を伏せるイレギュラーズ。
「自宅でひえひえぴったんをして寝込んでいるのです」
「生きてるんだ……」
「生きてなかったら受けるのちょっと迷ったのです」
「迷ったんだ……」
 何でもありのギルドローレット。ぶっちゃけ死者が相手でも依頼くらい受けちゃう度量はあるが、それはそれでこれはこれ。
「ローレットに託された依頼は『かき氷を沢山売ること』!
 最初からあるのは固定式屋台と移動式屋台。そして各種シロップと沢山の氷だけなのです!
 けれど今はアイデアの時代(?)……工夫ひとつでかき氷だってばかうれするかもしれないのです!」
 さあいざゆけイレギュラーズ!
 かき氷を売りまくるのだ!

GMコメント

 ほそくせつめい!

 皆さんにはかき氷を売りまくって頂きます。
 期間はあんまり決めてないんですが大体2~3日くらいと考えておいてください。
 つってもただかき氷ごりごりしてらっしゃーせーするだけだと寂しいので、沢山工夫を乗せましょう。
 ということで、プレイングのフックになりそうなとこをざーっと書いていきます。使うも無視するもご自由に、どうぞ!

・固定式屋台
 昔から使ってる固定式の屋台があります。下町のガード下にあるビニールシートと鉄パイプのアレを想像して貰うと大体ちかい筈です。
 そのくらい寂れている外観に『かき氷 イチゴ・メロン・レモン』とか黒墨で書かれているので、とってもお客がきません。
 人通りはまー悪くは無い程度。近くのジェラートだクレープだスムージーだにお客をとられまくってる昨今です。

・移動式屋台
 一念発起して買った屋台。それだけあっておニューでぴかぴか。
 人力で引くタイプで、木製ラーメン屋台のかき氷版をなんとなく想像してください。『かき氷』みたいな小さいハタがたっています。
 こいつのネックは『どこへ行くか』。昼はどこで夜はどこか。場所を変えるだけで客層が変わり客層が変わるなら商品も変わるというのが移動販売の基礎なんだそうです。

・メニュー
 ぶっちゃけ味の変わらない色つきシロップしかありません。
 よく聞く『かき氷は全部同じ味』って風説あるじゃないですか。あれはシロップが悪いだけであって、練乳だの抹茶だのふりかけたら当たり前に味が変わるものなのです。けど氷くらい冷たいと味覚が甘みを認識しづらくなるらしくて、アイス系スイーツは味付けに一癖あるのだとか。

・宣伝
 2~3日で効果が出るズドンとした宣伝はともかく、ビラ配りをはじめとするコツコツ系の宣伝はあんまり効果がないかもしれません。宣伝するならインパクト重視。即効性重視。

・禁則事項
 依頼内容が『かき氷いっぱい売る』なのでじつはNGとかないんですが、一旦皆さんで話し合って「こういうのはよそう」というのを決めておくとお互い気持ちよくかき氷ごりごりできると思います。
 カツアゲ禁止とか、他の店を燃やすの禁止とか、その辺の貴族から巻き上げるの禁止とか、そういう細かいところです。
 逆に言えばみんなが『アリ!』て言うならアリです。地獄までだって付き合うぜ私ぁ!

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 新装開店かき氷完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年08月17日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Suvia=Westbury(p3p000114)
子連れ紅茶マイスター
主人=公(p3p000578)
ハム子
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)
特異運命座標
白井 炎(p3p002946)
科学忍者
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ロク(p3p005176)
クソ犬
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの

リプレイ

●氷を売るにはなにが要る
 風鈴の音色が甘い。
 切ったスイカとセミの声。道行く人々を横目に、『科学忍者』白井 炎(p3p002946)はたまの汗を首掛けの手ぬぐいでぬぐった。
 白いタンクトップタイプのシャツがびっしょりと濡れるほどの猛暑日。日曜大工めいたことをすれば流れる汗も多かろうものである。
「こんな所か……」
 かき氷屋が奮発して買ったというノーマルな移動式屋台は、風鈴や暖簾の飾り付けで随分と涼しげだ。
 固定式の屋台にはクーラーボックス的なやつが運び込まれ、氷をどさどさと移動式屋台に積み込んでいく。
「わー! すごーい! みんな女子力の獣!」
 『脳内お花畑犬』ロク(p3p005176)が落ちてる棒きれを執拗に噛みながら地面を転がっていた。
「みんなすごいアイデア思いつくんだね! わたしじゃ考えられないね! ね!」
 自分のしっぽを追いかけて無限に回転するロク。
 言われなきゃロクが女性だって気づかないので、今のうちに言っておくことにしよう。ナチュラルに雌って書いて慌てて添削したことも正直に述べておく。ごめんなさい。
 色々な資材が入った木箱に腰掛け、大胆に足を組む『酔興』アーリア・スピリッツ(p3p004400)。
「まさか、この前倒した真夏灼熱スーパークソ暑大権現の影響がこんなところにまで出てたなんてねぇ……」
 足を組み替えて、かき氷の使い捨て容器を振りかざした。
「アレを倒した者として、その影響で生まれたお仕事もきーっちり果たしてみせるわぁ!」
「夏にかき氷はやっぱり定番ですよね。がんばりましょう」
 『年中ティータイム』Suvia=Westbury(p3p000114)が木箱をとんとんと叩いて、きゅっと拳を握った。同時に拳を握るアーリア。
「茶葉代のために」
「飲み代のために」
「わー、夏休みのバイトみたいだあ……」
 本能的に喉から出た台詞をそのまま言ってみる『ハム子』主人=公(p3p000578)。
「この世界何でもありだから『異世界に来て現代知識無双!』ってわけにいかないのが辛いところだよねー」
 いやはやと頬をかき、屋台の旗を筒にさして立てる。
「具体的に役に立つスキルがあるわけでもないけど……アイディア出しやお手伝いならボクにもできるから頑張るよ!」
「その通りでございます!」
 『特異運命座標』エリザベス=桔梗院=ラブクラフト(p3p001774)が正座姿勢で叫んだ。
「是非この機会に、商売というものを学んでみたいと存じます。商いは水物と申しますしね。かき氷だけに」
 ニヤリと笑うエリザベス。
 僅かに首を傾げる公。
「えっと、うん、溶ける氷とかかってるんだよね」
「ウワアアアアアアアアアアアア!」
 腹にナイフをかっちんかっちん打ち当てて切腹ごっこをするロボ。目から噴射されるイチゴシロップ。
「やめて! わかったから使わないシロップを芸につかうのやめて!」
「ふふふ、ご安心ください」
 『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)がなんか見たこと無いポーズで現われた。
「態々シェルピアを新しく取ってまでかみさま状態のまま儚き花を装備してきた私に死角はありません」
「ないかな?」
「今の私こそアドリブのかみさまです。令嬢の水着ピンが受理されたのも私の功績といって過言では無いでしょう」
「それは過言ですけど」
「オーッホッホッホッ!!」
 更に見たことも無いようなポーズで屋台の屋根から現われる『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)。
「このわたくしが来たからにはもう色々大丈夫ですわ! そう、この――」
 高らかなフィンガースナップ。
 どこからともなく現われる男たち。
「「きらめけ!」」
 どこからともなく現われる女たち。
「「ぼくらの!」」
 どこからともなく現われる子供たち。
「「タント様!」」
 即座にはける全員。
「ちょっとまってください。タントさんの能力って声だけのやつですよね」
 タント様と同じポーズで振り返る樹里。
「私があつめました」
「それ接客パートでやるやつ!」
 タント様と同じポーズで振り返るエリザベス。
「私も便乗しました」
「要するに何もやってないんじゃ!」
 無理矢理タント様のポーズをとる犬。じゃなかったロク。
「なになにわたしもやる!」
「おすわり!」
 一通りツッコミを入れてからぜえぜえと息を荒くする公。その肩を、Suviaとアーリアが『まかせた』って言う顔で叩いた。
「これボクが全部引き受ける流れなの!?」
 屋台の引き歩き用バーを握る炎。
「今度の夏は、アツいな……」
 りん、と風鈴の音がした。

●シフトくみくみ
 読者諸兄の中に飲食店でアルバイトを経験した方はおられようか。
 もしあなたがそうなら実感できるかもしれない。三日連続フルタイムシフトのしんどさを。
 故にアルバイトにはシフトがあり、入れ替わりで休むことでクオリティを保っているということを。
 そんなわけで。
「一日目昼の部、この二人でいってみましょうか」
 ティーポットを手に微笑むSuvia。
 公が救われた者の姿勢で固定式屋台の前に立っていた。
 可能性の獣が目覚めた時みたいな脳内BGMと共に天空に感謝の祈りを捧げる公。
「一番気持ちが楽な組み合わせだ……」
「んー?」
 分かってるんだか分かってないんだか曖昧な笑顔のまま、Suviaはカフェテリアみたいな円形テーブルを回っていた。
 手製の天幕で日差しを遮った涼しげな白テーブル。
 各種かき氷の横には透明な使い捨てコップが置かれ、アイスティーがなみなみと注がれていた。Suviaが注いで回っているものである。
「こちらのブレンドティーはフルーツかき氷に合いそうな特製ブレンドですの」
 かき氷にあう紅茶ってなんだよと思うかも知れないが、実は結構重要なことだったりする。
「かき氷のシロップは同じ味ですけど、香りのフレーバーは違うんです。それを氷の冷たさと砂糖の甘さで果実の味を錯覚しているんですけど、ここに例えばアップルフレーバーの紅茶を並べるとどうでしょう。香りが混ざって新しい味になるんです」
 勿論そのまま氷をぶっ込めばアイスティーが更に冷たいというオマケもついてくる。紅茶マイスターならではの工夫だった。
「すごいや、ツッコミどころがまるでない」
 かえって仕事(?)がなくなっちゃった公はといえば、パンドラアイテムのプレイ・パンドラ・ポータブルをぽちぽちやって性別を女モードにチェンジ。
 セーラー服を水着に改変したような水着姿で客前に飛び出した。
「皆! 新開発のフルーツ100%かき氷だよ! 凍らせた果実をそのまま削ったよー!」
 かき氷に何かをつけるのではなく氷そのものを入れ替える発想。
 これなら見た目オシャレでクレープやワッフルやさんにも負けはせぬ。
 そのうえ水着で接客すれば集客効果もアップだ。
「すごいや。Suviaに教わった通り……あれ?」
「んー?」
 いつものメイド服(裸足)で振り返るSuvia。
「だまされた!」

 というわけでこちら夜の部。
「今宵の担当は――」
 円形お立ち台。
 下からあてられるスポットライト。
 鳴り響くクラブミュージックと共に照らし出されたのは。
「WATAKUSI!」
 キラキラを周囲にまき散らしながら現われるタント様。
「タント様! タント様! すてき! きらめくタント様! そこら辺のスイーツ屋からその輝きをもってしてお客様を奪い返してくれるって! あの存在感できる! すてき!」
 リードで繋がれた犬みたくぴょんぴょんはねるロク。
 この子、犬フォームの所しか見たこと無いけどちゃんと人間なのよね?
 喋る犬のウォーカーとかじゃなくて。
「らっしゃーせー!!」
 夜の営業方法はきわめてシンプル。
 タント様がそういうスタンスの芸人なのかなってくらい指をぱっちんぱっちん鳴らしながら高いところで様々なポーズをとり続け、その横でロクがかき氷をひたすらにごりごりし続けるのだ。
 どうごりごりしてるかって……えーっとそうだな、ほねっこをあげた犬を想像してみて。ほねっこにかき氷器が接続されたさまを連想してみて。……それやで。
「あれー! まわらない! レバーまわらな――こおりおいしい!」
 タント様&ロクの運営方法は昼のそれとはうってかわってのイベント商法。
 古来より人間は気持ちにお金を払うと言われていて、たとえば一個100円のやきそばもイベント会場だと500円出せちゃうものである。同じ弁当でも『祝』って書いてあるとなんか高くてもいいやって気持ちになるものである。
 そこへきてタント様とロクのほぼほぼ大道芸みたいなアピールっぷりに人が集まり、投げ銭気分でごりごりされた氷を買っていく。
 昼間に公が打ってた100%フルーツかき氷をそのまま売っているが、地味にネックだったコスト面(ひいては最終的な売値)もタント様とロクの異様さによって完成を見たといっていいだろう。
「きらめく旬のフルーツ目白押しですわ! イカガカシラー!」
「らっしゃーせー!!」
 今宵もスポットライト(自前)に照らされて、『きらめけぼくらのタント様~ロッテルダムテクノversion~』が鳴り響く。

 さて翌朝。移動式屋台を担当している炎のほうに視点を移してみよう。
「今宵の妖刀は氷に餓えている」
 とか言いながら仕込み傘から抜いた刀で氷をめっちゃクラッシュする炎がいた。
 クラッシュした氷はというと、なんか時代を感じるハイレグ姿のエリザベスがカップに入れてトレーに乗せていた。
「かつて全国のビアホールを席巻し、今となっては絶滅してしまった伝説の存在『バド〇ール』を、まさか我が身で復活させる事になろうとは」
「バード……なに?」
 単語とテンションに置いていかれてる客たちに、炎が腕組みをして語った。
「しらんのか? ――キャンギャルだ」
「よけい分からなくなった」
「キャンギャルだ!」
 勢いと漫画でいう見開き顔アップページのノリで解説を押し通す炎であった。
 急に関係ないこと言うけど炎のプレイングには『必要ならばパンドラ復活だ』と書いてあるんですが、かき氷売っててHPがゼロになることってなんだろう。過労死?
「今日の俺は職人に徹するつもりだ。客引きなら仲間がやってくれるから……な!」
 『な』の部分へ無駄に説得力を全振りする炎。
 人力屋台の先端にはア○ボ的な犬がベルトを通してつながっており、移動力なら任せろとばかりに只管地面をひっかいていた。(つまり移動力にはなっていない)
 炎がよしよしといってベルトを外してやると、南極救助犬みたくシロップボトルを首からさげてお客のもとへと走って行った。
 全然関係ないけどジャングルと化した東京でロボット犬がサバイバルする話する? やめとく?
「へへへ……あんたもこれが我慢できなくて来たんだろ……? こいつは……効くぜぇ……?」
 イチゴシロップを差し出してにやりと笑うエリザベス。
 あとこの子のプレイングにも『酒に酩酊時パンドラ復活使用』って書いてあるんだけどどういうことなの。そもそも酔うの?
「酔いますよ」
 うわ話しかけてきたこいつ!
「今夜はちょっぴりアングラな雰囲気の屋台にしてみましょう。夜明け前の屋台のおでんとか……堪りませんわよね」
 カメラ目線(?)でウィンクしつつ、エリザベスは手動でシーンを切り替えた。閉店ガラガラ。

 とかやってたその次の日。
 移動式屋台には樹里とアーリアがついていた。
 屋台をひくのは樹里の軍馬とアーリアのトロイカちゃん(パカダクラ)。
 二馬力である。ついでにカピブタのきゅいちゃんに『氷!』て書いてあるハッピみたいなもんを着せて歩かせてみた。
「可愛いわねぇ」
 昼からずっと飲んだくれてたアーリアが、かき氷にブランデーぶっかけながら食べていた。
「いけるわぁ、ブランデーアイス。国よってはご禁制」
 アーリアの『お酒をつけて売るくらいならいっそかけちゃえ作戦』は思いの外うまくいって、仕事帰りの幻想民たちにビアガーデン的ななにかをもたらしていた。
 今更なハナシかもしれないが、一日目から固定式・移動式双方に宣伝効果をもたせるべくそれぞれのクーポン券を配っていて、移動式屋台を見た人に『へー、あそこにもあるんだ』的な効果をもたらしていた。
 クーポン券の意味は『捨てづらいこと』にあるらしい。ポケットティッシュと同じで暫く財布とかに入れてるせいで宣伝効果が持続するんだとか。
「とーっても美味しいから、また来てくださいなぁ?」
 アーリアは持ち前の色気でキュートに接客。
 一方で樹里は水着イラストの描かれた聖書(?)を翳してくるひとくるひとに安寧の光を与えていた。
「あなたに受理があらんことを」
「あ゛~結いち絵師の水着待ち遠しいんじゃ~」
 発注してもいない水着イラストの完成を待ちわびる民ができあがった。
 みずぎいらすとってなんだろう。ぼくしらない。ぼくじゅうだから。
「さぁ、全ての迷える仔羊……聞こえますか……今、貴方方の脳内に……直接語りかけています(物理)……。かき氷……しゃりしゃりのかき氷を、食すのです……。熱き地獄の業火の如き炎天下、そこに齎されるきんきんのかき氷。明日、かき氷店が再始動します……徹夜で並んででも……食すのです。我らは敬虔なるかき氷の使徒。粋は氷のみなのです……自前で持ってきたジュースやウィスキーを掛けても良いです……きっと極上の美味です。さぁ、全ての迷えるかき氷の信者……今、本能を解き放つのです。かき氷が待っています……かき氷を、欲望のままに……貪るのです――!」
 メガホン片手に馬にまたがり、選挙カーみたいなことをする樹里。
「油断してはなりません……きっとじきにサンタコスの個人企画がどこかでたちあがります……リバコインを溜めておくのです……窓が開くのを待つのです……」
「あ゛~ミカスケ絵師のタンサコスみたいんじゃ~」
「さあ今こそかき氷教に入信するのです。かき氷を食べればすくわれるのです」
「「あ゛~」」
 そんな具合に、夜の幻想都をかき氷屋台が進む。
 彼女たちは暫くかき氷を布教しまくり売りまくり、依頼人のおっさんに改造屋台と高級レシピを残してさっぱりと消え去った。
 そして三日三晩のかき氷屋台は、『幻のかき氷』として幻想の都市伝説となったのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 氷を売る。
 こと現代においてかなりの工夫を必要とするこのミッションには、キャラクターの個性を爆発させるタネや特技を活かせる隙が沢山仕込まれていました。
 OP時点で商業知識や接客礼儀作法その他のスキルに言及していなかったのは、スキルよりも個性が活きるシナリオだったからに他ならないのです。
 ……という狙いをバッチリとらえて、皆さんの個性があちこちで爆発した素敵なシナリオになりました。
 これを記念(?)して樹里さんには『スイーツ大明神』の称号を差し上げようと思います。スイーツに関わるたびに神威を(自力で)顕わしてください。

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