シナリオ詳細
倒せ! 大強盗ユーリカ!
オープニング
●ノリだけで情景描写書くと酷いことになる好例
「ふんぬうううぅぅぅ!」
野太い雄叫びと共に、屋敷の壁が崩れ落ちた!
もうもうと立つ煙の中から、現れたのは大勢の男達。
リーダー格と思しき青髪モヒカンの筋骨隆々とした男は、粗野な笑みを隠すことなく屋敷の中へと踏み行っていく!
「ヒャッハー! ボスのお通りだぁ!」
「金を寄越せぇ! 女を寄越せぇ!」
付き従うのは痩せたチンピラ達。
リーダーの後をついて屋敷に入り込んだチンピラは、目についた骨董品や絵画など、金目の物を手当たり次第にずだ袋に入れていった。
当然、そんな所行がまかり通るはずもない。
突然の音に慌てて現れた屋敷の主は、無礼をはたらくチンピラ達を見て大声を上げた。
「き、貴様等! 此処がどこだか解っているのか!」
「当然ですぅ! 此処は僕達が遊ぶ金を持っているカモの住み処なのですぅ!」
ぱきぱきと指を鳴らす青髪モヒカンに、舌打ちした貴族の男は手にした呼び鈴を盛大に鳴らす。
一分もせぬうちに、現れたのは十数名の警備兵達!
各々が武器を構え、突如現れた侵入者を捕らえるべく、リーダー格である青髪モヒカンの元へ突進する……が!
「邪魔なのですぅ!」
丸太のような太い腕が薙がれれば、ただの一撃で警備兵達は吹っ飛び、屋敷の壁に叩きつけられた!
気を失う警備兵達。あまりにも呆気ない戦いの決着に、貴族は驚愕を禁じ得なかった。
「ば、馬鹿な……ラサ傭兵商会連合から引き抜いてきた、選りすぐりの精鋭達が……!」
「何者であろうと、有象無象の雑兵共にこの僕がやられる筈が無いのですぅ!」
そして、青髪モヒカンのリーダーは屋敷の主さえもその拳で黙らせた!
噴き出す鼻血と同時に意識を失う貴族。その無様な姿を笑った青髪モヒカンは、そうして配下のチンピラ達と共に無惨な略奪を開始するのであった。
人を人とも思わぬ非道。人々の悲鳴と財を糧に、贅を尽くす悪鬼の如き男達。
嗚呼、叶わくば誰かこの男を止めてはくれないか。
幻想に現れた世紀の大強盗、ユーリカ・ユリカーを!
●「警備兵が傭兵出身ってマジ?」「ううん、経歴詐称」
「市中引き回しにして連れてくるのです!」
「落ち着け強盗」
「誰が強盗なのですぅ!?」
机をばしばし叩きながら涙目で叫ぶ『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)に、対する特異運命座標は表情一つ変えずに応対していた。
話す相手がすごいヒートアップしてたら、逆に自分はすごい冷めていくという、あんな感じである。
「取りあえず、まあ依頼内容はその強盗達を捕まえてくる……で良いんだよな?」
「『達』じゃなくてそのリーダーの男が問題なのです!
他は放っておいても幻想貴族の人たちがその内捕まえてくれるのです!」
まあ、そうだろうなーと特異運命座標達は首肯する。
被害にあった貴族がどれほどの規模か解らなくとも、白昼堂々屋敷に押し入って家財を奪っては堂々と去っていくなど、幻想貴族そのものがナメられていると言っても過言ではない。
加えて言えば、国内に於いては兎も角、国外の交流に於いて『顔』と言うものは非常に大きなウェイトを占める。
それが「小規模な強盗集団に好き勝手やられるお貴族様の集まり」などというレッテルを貼られれば、幻想の面目すらも丸つぶれになる可能性だってあるのだ。
「……その理屈で言えば、リーダー格の男だって幻想貴族が捕まえてくれるんじゃね?」
「それが問題なのです! 今回の件で一番被害を被ったボクが何も仕返しできずにハイおしまいなんて、絶対に許せるはずがないのです!」
……今更な話ではあるが、ユリーカの知名度が高いのはあくまでローレットの特異運命座標達の間だけである。
もっと言うと、幻想貴族の間でユリーカの仔細を知るものはほぼ居ないと言っていい。精々「そう言えばこんな名前の情報屋が居たような?」程度のものだ。
具体的に、何を言いたいかというと。
「皆さんには『リーダーの男が名乗った名前と酷似しているから』って理由で、被害者の貴族に何度も面通しされては嫌味を言われたボクの気持ちが分かるのです!?」
──まあ、こういうことである。
「ユリーカ? 本当に? 擬名とかじゃない?」「非戦スキル何持ってるの。全部教えてみ?」「実はギフト持ってて変身してウチ襲ったんじゃないの? 今なら罪軽いよ?」
件の幻想貴族に会う度、こんなことをねちねち言われ続ければ、まあこの少女の精神じゃマトモでは居られまい。
何にせよ、依頼と言われれば断る理由もないし、僅かばかりではあるが不憫に思う気持ちもある。
日頃情報屋として世話になっている礼も兼ねて、特異運命座標達は相談を開始するのであった。
「……一応聞くけど、マジでやってないよな?」
「ぶっとばすのですよ!?」
- 倒せ! 大強盗ユーリカ!完了
- GM名田辺正彦
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年08月23日 20時45分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
夜半、街の噴水広場に立つのは八人の特異運命座標。
此度相対する強敵を前にして、浮かべる表情は──微妙そのものだったりする。
「何というか……色々な意味でとんでもない奴だな」
「と言うかまず、状況を確認しようぜ。
奴の名は「ユーリカ・ユリカー」だよな? 「ユリーカ・ユリカ」じゃないな?」
半ば呆然とした口調で呟く『混獣』アブステム(p3p006344)と、未だ混乱から抜け出し切れてない『カンガルーボクサー』ルー・カンガ(p3p005172)の両者。
無辜なる混沌と呼ばれるこの世界は総ゆる可能性を許容するが、まあそれをしても今回の相手が有した符号はあまりにも非道すぎた。
「大強盗のユーリカさんですか……。
名前の類似よりも先ず、あの見た目であの口調と云うのがインパクトありますね」
「ユリカ様のように、髪を青く染めて、おへそがチャームポイントなポイントアーマーを着て、かわいらしい喋り方……。
これはもしや、ユリカー様、いつぞやのユリカ様の行いに憧れて強盗に?」
誓って言える。違う。
『自称・旅人』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)の話す敵の『特徴』に対して、何かめっちゃ思考錯誤しているのは『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)。
二人の言うとおり、今回彼ら特異運命座標達が倒し、とっ捕まえる相手の名はユーリカ・ユリカー。チラ見せおへそがチャームポイントの青髪モヒカンマッチョである。字面がひどい。
哀しいことにこれで実力はあり、それに付き従うチンピラ共も相応に強いとあって、気が抜けない戦いになることは凡そ全員が理解していよう、が。
「強盗とは品がないね。実に美しくない。
ましてや我等がユーリカ嬢に成りすますとは言語道断だ」
きし、と手袋を嵌め、仕事の準備に取りかかるのは『麗しの黒兎』ノワ・リェーヴル(p3p001798)。
所作は流麗に、しかし眦は吃として。えらく巫山戯た見た目をしても既に被害者が出ている以上、それがどれほどの強敵であろうと、彼らに退く選択肢などあり得ないのだ。
「──何よりも、貴族からの強奪という事は即ち、愛しき民から収められた税を奪われたに等しい!」
朗々と声を上げる『正義馬鹿な男爵様』ジェイド・ブラッディクロス(p3p004616)に、付近住民が起きないかなーと心配する仲間達だったりもするが。
幻想らしくも、傲慢な利己主義者でありながら『正義』を信条とする壮年の男性は、携える剣に力を込めて未だ見ぬ敵へと義憤を燃やす。
それに、応えるように。
「……くくく、今日も雑魚共の遠吠えが聞こえるのですぅ」
闇夜からぬるりと姿を現したのは、青髪モヒカンの大強盗、ユーリカ・ユリカー。
「……いや本当に、キツい」
見た目の口調の激しすぎるギャップから、生理的嫌悪感に顔を覆った『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)へと、幻が肩をぽんと叩いたりもするが、まあ置いといて。
「大方、貴様達も馬鹿な貴族が雇った護衛なのですぅ?
此処でお前達全員を血祭りに上げれば、幻想貴族達も逆らおうなんて考えを無くす筈ですぅ」
「……いやまあ、依頼主は別だが、切実なのは確かだ」
言葉を返すアブステムの脳裏には、泣き顔でばしばしテーブル叩いてる某情報屋の姿。
万一失敗したらあの泣き顔がどうなるのかと考えれば、焦燥と恐怖に駆られた身体がより反応を過敏にしてくれる。うん、マジで怖い。
「前口上は終わりか?」
言って、並び立つ特異運命座標達から、我先にと歩を進めたのは『戦獄獣』雷霆(p3p001638)。
「元より力任せの強盗には同じく力づくで返すのが礼儀だ、鉄拳制裁と行こう」
「良いだろうですぅ! 貴様ら雑兵共に僕達の恐ろしさを教えてやるのですぅ!」
叫ぶ大強盗、ユーリカ・ユリカーに合わせ、敵味方が共に戦いに向けた挙動を取る。
碌でもないけど割と切実な戦いは、こうして幕を開けたのである。
●
動くチンピラに対して、構えたのは特異運命座標。
彼我の数は11対8。単純に数だけで換算するならば特異運命座標達が不利と言えるが、臨むヘイゼルの表情には薄い笑みすらも。
「さる件のなりすましかとも思いましたが、もはやそのようなことは関係なく。
ユリーカさんは此処で終わりなのですよ。ユリーカさんを怒らせてしまったのですから……あれ」
──大丈夫か。マジで。
何が怖いって、言い間違えが些細すぎて他の仲間達も一瞬違和感を感じなかったのが余計に。
咳払いをして、高々と名乗り口上を上げる彼女へとチンピラの何名かが惹かれるが、敵方もそれは予想していたこと。
「ヒャッハー! 美人にゃ棘があるなんて知ってるんだよぉ!」
「そうだそうだァ! 俺達ゃ何度も騙されたからなあ!」
「良いから。そう言う物悲しい自虐は」
即座に癒術を唱え、怒り狂う仲間達を正気に戻したチンピラを尻目に、先ずは誰よりも早くノワが双剣を振るう。
敵方のボス、ユーリカは実力が極めて高く、付随するチンピラ共もその編成は整っていると言えたが、肝心の部分──指揮という一点が抜けていた。
これに対し、ノワが放つ大毒霧は有効打だったと言える。指を弾けば虚空に浮かぶ漆黒の珠が爆ぜ、即座にユーリカとチンピラを覆う様は正に奇術の如し。
「ハッハァァァァァァ!!」
が、敵もさるもの。
闇に包まれたセカイからいち早く飛び出したユーリカが野太い腕を振るえば、ラリアートの要領でマトモにぶち当たったノワの身体がゴム鞠のように地面をバウンドする。
「拙いな。夜乃君、回復を!」
「ユリカ様は可憐で可愛くてちょっとドジっ子で、ローレットの金庫からないないしちゃうだけなのに。
……あれ? ユリカ様もないない強盗? ユリカ様もしかして、ユリカー様への同族嫌悪……?」
「その思索はもう良い!?」
アブステムの声に我を取り戻した幻がステッキ『夢想』を振るって、ノワの身体を著しく癒していくが──効果に対して癒えきらない傷に、特異運命座標達が一気に焦燥を顕わにした。
事前に幻が回復を施すラインとして考えていた体力の七割などと言った段ではない。唯の一撃で体力の半分を大きく割ったノワの姿が、そのまま捕縛対象である敵の強大さをそのまま表していた。
「それと言って、退く道理が有ろう筈もないがな!」
畏れ。それを咆哮一つで振り払ったのは雷霆その人。
庇い手の一人も用意せず、己の肉体を誇示するかのようなユーリカに対し、獰猛に笑んだ雷霆が己の炎を叩き込んだ。
その名、戦獄焔雷衝。雷条に束ねた己が闘志の炎は、着弾と同時に自身を巻き込み敵を焼き尽くす。
「ボ、ボスぅ!?」
「お前らァ! ボスを今すぐ治せぇ!」
未だ焔に巻かれる自身らの首魁に対して、恐慌を見せたチンピラ達が即座に挙動する──否、挙動『しようとする』。
「等と、許すはずがあるまいよ。雑魚共!」
其処に動いたのが、ジェイド。
妨害と回復を主とする支援部隊、それを護衛するごく少数のチンピラ達の直中に突っ込んでは、後を顧みぬ全力の剣閃がチンピラ達を巻き込んでいく。
「て、手前ぇ!?」
「雑魚は任された! 皆はユリーカを倒すのだ!」
叫ぶジェイドであるが、流石に支援、妨害役とその護衛を含めた四名を相手に、単発攻撃のみが一人では分が悪い。
止めきれなかった回復にユーリカが賦活されれば、その表情は未だ笑みのまま、相対する特異運命座標達に拳を構え、放つ……が。
「あまり手こずらせず、ここで僕達にやられるのですぅぅぅ!」
「そりゃあこっちの台詞さ。 大人しくお縄につけってんだ」
──えらくニヒルな声と共に、渾身の打撃が渾身の蹴りによって阻まれる。
呟いたルーが軽快なステップを踏めば、再度攻手に傾倒した構えでユーリカを牽制した。
自身の拳を止めうる存在。それに一瞬だが躊躇した……のが、運の尽き。
「まったく、たかが一撃を加えるのにこの労苦とは!」
叫んだアブステムが飛びかかれば、その背から飛び出た幾重もの腕がユーリカを強かに打った。
「尤も、如何な相手であろうと気は抜かんよ。頭はおかしくとも実力は確かなようだしな!」
「中々骨のある連中だと評価してやるですぅ! だがまだまだ、この程度では倒れはしないのですぅ!」
序盤から畳み掛けられた猛攻に対し、唇から血を零すユーリカは、しかしにやりと笑って言い放つ。
どれほど可笑しくても、強敵は強敵。
未だ意気軒昂な青髪モヒカンを相手に、特異運命座標達は更なる攻勢へと臨むのである。
●
まず、大前提として。
特異運命座標達が何よりも念頭に置くべきだったのは、『彼我の戦力差は此方の連携を加味しても、相手の方が上である』と言う部分だ。
「──────ッ!!」
穿たれた拳は幾度目か。パンドラさえも燃やし尽くした利香が、此処で遂に倒れる。
「雨宮様!」
「生憎、気に掛ける余裕は無いみたいだよ……!」
叫ぶ幻に言葉を返すのは、マジックロープによって挙動を縛られたノワ。
それを即座にヘイゼルの超分析が解除するものの、生じた行動のラグは明らかにユーリカ側の攻勢に拍車をかける一助となっている。
「くく、所詮は猪武者揃いの烏合の衆、やはりこの僕達の敵ではなかったと言えるのですぅ!」
「……痛いところを突いてくれるぜ、全く」
拳を付き合わせて未だ笑みを絶やさぬユーリカに対し、利香同様にパンドラを燃焼し終えたルーがため息混じりに呟いた。
それはルーだけの話ではない。チンピラ達の足止めを前衛で一人とり続けるジェイドも、ノワすらも一度は運命を覆し、後のない状態そのものとなっていた。
対し、敵方は誰一人倒れていない。元よりボスであるユーリカに集中攻撃を取る算段であった以上、チンピラ達に被害がないのは勿論としても、ユーリカさえも未だ倒れるまでには遠く及ばない。
リソースが尽きるまでにユーリカに集中攻撃を行って倒す、という作戦は当てはまっている。それをしてチンピラへの妨害も最低限行うという部分も間違っていない。
ならば、何が問題かと言えば……行動が単調で、食い違うものがあまりにも多すぎたと言うこと。
行動が常に固定化されている脆さは、僅かなズレで容易に瓦解されうる。火力、耐久力等が予想を上回る、若しくは敵方の援護が厚かったり、逆に妨害がより顕著に刺さった場合などが最たる例だ。
現在、特異運命座標達が苦況に追い込まれているのはその辺りが原因でもある。自身らの行動に不備が生じた、或いは予測、仲間内の認識にズレがあった際の対策を考慮していない者があまりにも多すぎたのだ。
既に倒れる限界まで負傷していながら──それが敵を打倒しうる直前ならばまだしも──退いて回復を待つこともせず、未だ攻撃し続ける者は蛮勇のそれと言える。
「おのれ、正義を侵す小悪党共が……!」
「ヒャッハー! 吼えてな、お貴族様がよぉ!」
気力が尽きるまで剣を振るったジェイドもまた、動揺から復帰したチンピラ達によってその意識を刈り取られる。
「っ、此方に来なさい、今更女一人が怖いのですか?」
言い放つヘイゼルにチンピラ達が目を向けるが、それが長く保たないことなどは明白だ。
もとよりチンピラの数は10名。それをヘイゼルとジェイドの二人で負担し続けたところが、此処にいたって倍の人数を相手にするとなれば、彼女が倒れることもまた必至。
このままでは、敗ける。それを理解する彼女もまた、挑発から成ったチンピラの攻勢によって満身を朱に染めつつもユーリカを睨む。
反動を無視して撃ち込んだ雷霆の重撃と、それに合わせたアブステム、ノワ、ルーの連携は確かに彼の身を少なからず傷めていたが、倒れるには未だ一押しが足りない。
頬に汗を一滴垂らす幻が、特に傷の深い雷霆へとハイヒールを投げかけ、それと同時にユーリカへと叫ぶ。
「ユリカ様はかわいいし思いやりがあるから、ないないしても許されるのです! 貴方に果たして人望はあるのですか?」
「貴様等を倒し、また一つ幻想貴族に目に物を見せれば、僕達の武功に惹かれる者もまた現れるのですぅ!
そう言う意味では、貴様等は実によい礎となってくれたのですぅ!」
「……まあ、否定はしないが、肯定もしないぞ」
その口調と見た目のギャップについて行ける者は多くあるまい、とぼそり呟いたアブステムが、そうして未だ活きている足に無理を利かせてユーリカを切り裂く。
僅かに散らばる鮮血、そして青髪。手応えを確信したアブステムにも、ヘイゼルの名乗り口上を抜けたチンピラ達の攻撃が襲い、その身体を拉がせた。
だが、蓄積したダメージが功を奏し、此処で初めてユーリカが膝を着く。
「ぬぅぅぅぅぅっ!?」
それに追い打ちと言わんばかり、ノワのキャタラクトBSが彼の首を切り裂いた。
即座に、離脱──が、叶わず。
只ではやられるまいとノワの腕を掴んだユーリカが、その鳩尾に渾身の一撃を叩き込んだ。
絶息。そうして倒れ込んだ彼女には目もくれず、ユーリカが最後に視線を送ったのは。
「……貴様の悪いところは名前と口調、あと態度と所業、運と頭と髪型とあと諸々だ」
全部で良くなかろうか、それ。
味方はおろかチンピラ達もちょっとだけ思った突っ込みを誰も口にはしない。それほどに両者が浮かべる闘志は、これが最後の一撃となることを明確に示しており、
「くくく、罪も罰もこの僕には関係ないのですぅ!
その全てを踏みつぶして、僕は僕のやりたいことを貫くだけなのですぅ!」
「今更、言葉などが通じるとは此方も思ってはいない。
故に──ユーリカ・ユリカー、覚悟しろ」
構えを取ったのはそれぞれ、一瞬だけ。
ユーリカが叫び、雷霆が吼える。
互いの全力を乗せた一撃が、交錯の後に終を示した。
●
「……中々、見所のある奴ら、だったのですぅ」
戦闘が終わった後、ユーリカは大の字で倒れ込んでいた。
無理を利かせば身体は動こうが、その必要も無いだろうと考えた彼は、そうして満足げな笑みを共に目を閉じる。
戦いは決着を迎えた。そう──特異運命座標達の敗北を以て。
さりとて、彼ら全員がユーリカ目掛けて叩き込んだダメージは伊達ではない。結果として彼らは本来行うはずだった貴族への襲撃を諦め、寝倉へと帰還したのだった。
全く以て、この世界は無慈悲に過ぎる。
どれほど巫山戯た存在であろうが、其処に明確な力量が有るならば『牧歌的なエンディング』は夢のまた夢となる、などと。
──夜が明ける。悪党達は一時の眠りについて、やがて日が沈む頃にまた目覚め、暴れ出すのだろう。
無辜の人々を襲う悪逆非道を討つ者は、果たして次こそ現れるのか。
そう──世紀の大強盗、ユーリカ・ユリカーを!
……あと、某情報屋は結果報告を聞いて、暫くの間ずっと涙目で仕事してたそうです。
成否
失敗
MVP
なし
状態異常
あとがき
ご参加、ありがとうございました。
GMコメント
GMの田辺です。
この場を借りて某キャラクターを管理するRe-versionの皆様とバージニアイラストレーター様に深くお詫び申し上げます。
以下、シナリオ詳細。
●成功条件
・『ユーリカ・ユリカー』を戦闘不能、重傷状態にした上で捕縛(死亡はNG)
●場所
何処かの幻想貴族の邸宅をほど近くにした、街の広場です。時間帯は夜。
広場の中央には噴水があり、周囲は灯りが点されています。光源等は不要ですが、噴水を遮蔽物にすることにより視界が通りにくくなる可能性があります。
シナリオ開始時、参加者の皆さんと敵との距離は20mです。
●敵
『ユーリカ・ユリカー』
類い希なる腕力を以て幻想貴族を襲撃する、世紀の大強盗です。青髪モヒカンと、上半身のポイントアーマーから隠れて見えるおへそがチャームポイント。
見た目と口調のギャップがアレながら、そのステータスは極めて高く、スキルもランク2のものを数多く取得している強敵です。
反面、武器は素手、防具もポイントアーマー一つと、装備による補正がかなり小さなものとなっております。
『チンピラ』
上記『ユーリカ・ユリカー』に付き従うチンピラ達です。数は十名。
口調がアレながら、前後衛のバランスと、更に細分化した攻手、防御、援護、妨害の比率がかなり良く構成されております。
『ユーリカ・ユリカー』自身のステータスもあって、彼ら全員を倒すのはおよそ不可能と考えて良いでしょう。
が、同時に彼らは『ユーリカ・ユリカー』の腕っ節に惚れ込んでついてきているだけの存在なので、『ユーリカ・ユリカー』を戦闘不能に追い込んだ時点で散り散りになって逃走すると思われます。
それでは、参加をお待ちしております。
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