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シナリオ詳細

<タレイアの心臓>凍てし茨に縛られて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『ファルカウ制圧作戦』。
 それは、ローレットによる幻想種達の保護や下層部に待ち受ける敵勢対象の排除を目的とした作戦だ。
「作戦に当たって、話を整理しますね」
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が集まるイレギュラーズへと状況を確認する。
 深緑全土を覆う『咎茨の呪い』の対抗手段として『タレイアの心臓』を得たイレギュラーズは、アンテローゼ大聖堂を拠点に作製を開始することになる。
「目指すは大樹ファルカウ。ただ、多数の障害が皆さんの前に立ちはだかるはずです」
 暦ではもう夏になろうというのに、寒々しい空気に包まれたファルカウの周囲に無数の影が飛来する。
 暴食の魔種ベルゼー、飽食の魔種カロン、冬の王、大樹の嘆きシェーム、常夜の王子ゲーラス……それらの敵の配下や魔物などがファルカウの防衛に当たる。
「深緑の幻想種達の命がかかっています。強引に突破してでもファルカウ上層を目指したいところです」

 ただ、この状況の中、勢力を拡大させる敵勢力に森林警備隊の幻想種達が捕まってしまったという知らせが入った。
「場所は大聖堂アンテローゼから程ない場所ですね」
 茨の中でも、森林警備隊は少しずつ茨を振り払い、ファルカウを目指していたらしい。
 しかしながらもう一歩というところで、警備隊はなんと大樹の嘆きに囚われてしまったのだという。
「深緑を……住民達を救おうとする幻想種を、大樹の嘆きが襲う……これまでもあった状況ではあるのですが……」
 何より、今回は大樹の嘆きの上位個体オルド種が明確な意思を持って彼らの活動を阻害しているのだそうだ。
 上位個体はサテラを名乗り、眠りに落ちた人々を解放する森林警備隊を煙たく感じたらしい。下位種である大樹の嘆きの他、氷の精霊を操り、周囲に張り巡らされた茨の力も借りて彼らを捕らえてしまったのだ。
 そこは木々に囲まれた広場のようになっており、茨の密度もかなり高いそうだ。
「『茨咎の呪い』も強い場所です。手早く彼らを救い出したいところですが……」
 意識を持った上位個体オルド種がそう簡単に幻想種の解放を許すとは思えない。それでも、『聖葉』の力を借りて彼らが戦えるようになれば、こちらの戦力が上回るはず。
「どうか、彼らの危機を救ってあげてください」
 アクアベルはわかる範囲で敵対勢力の資料を提示しつつ、戦地へと向かうイレギュラーズへと頭を下げるのだった。


 深緑、迷宮森林。
 この地で同胞である幻想種を茨から救っていたラウルを始めとした迷宮森林警備隊。
 彼らは今、複数の氷の茨に身体を絡まれ、動けなくなっていた。
「大樹の嘆き……これほどまでとは……」
 本来、深緑全土を襲っている脅威に抵抗し、無差別に暴れていたのが大樹の嘆きと、隊長ラウルは把握していた。
 だが、目の前にいるそれは明らかに自分達の活動を良く思ってはいなかった。
「気に入らないね。なんで抗うのさ」
 この事態を引き起こす魔種に同調する大樹の嘆きの上位種オルド種。
 下位種は木々に憑依するなどして力を振るうことがほとんどだが、その上位種は人型をとり、サテラと名乗って自分の意思を示している。
「お前は深緑を……幻想種を守る存在じゃないのか?」
「ああ、そうさ。彼等は茨に守られているだろう。そこから引き離しては守ることができなくなる」
 この状況を保つことこそが深緑を守ることに繋がるのだと、サテラは信じているらしい。
 だから、それを阻害するならば、幻想種であっても敵だと認識しているようだ。
「これ以上抵抗しないでほしい」
 まだ抵抗を続けるなら。サテラが腕を上げると、周囲の大樹や氷の精霊が動き出す。
 隊員はすでに周囲に張り巡らされた茨の影響によって、昏睡状態に陥り始める者もいる。
 ラウルはその気になれば氷の茨から逃れることができると踏んでいるが、サテラはそれがわかっているからこそ牽制しているのだろう。
「…………」
 下手をすれば、部下を危険にさらしてしまう。
 ラウルは自身の無力さに打ちひしがれ、うな垂れてしまうのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様、こんにちは。なちゅいです。
 <タレイアの心臓>のシナリオをお届けします。
 『冠位』怠惰カロンへと接触する前に、迷宮森林で同胞の救出を続ける警備隊の救出を願います。

●状況
 舞台は深緑迷宮森林、アンテローゼ大聖堂近辺、木々に囲まれた広場。
 茨に覆われたこの迷宮で活動を続ける森林警備隊でしたが、大樹の嘆きオルド種に出会い、拘束されてしまったようです。
 『聖葉』の力を借りて彼らの救出と合わせ、敵の討伐を願います。

●敵
◎大樹の嘆き・上位存在『オルド種』×1体
 サテラを名乗る中性的な人型をした大樹の嘆きです。
 人語を理解、操ることができ、明らかに格上の存在であることが窺えます。
 大樹の嘆きらしく腕や足を枝や根に変化させて攻撃を行う他、冬の王の力、茨の力のそれぞれ一端を得て氷の茨を飛ばすようですが、具体的な攻撃手段は不明です。

○大樹の嘆き×3体
 樹高6~7m程度の樹の姿をしており、根を動かして移動も可能です。
 根を使った広範囲の突き出し、絡ませてからの締め付け。枝を使った薙ぎ払い、槍のごとき突き出しなどを行います。

〇アイススピリット×8体
 冬の王の力の一端を得たことで、オルド種が使役する氷の精霊達。
 全長6~70センチ程度。頭と胴体に羽根と簡素な形で具現化しております。
 戦場全体に吹雪を巻き起こしたり、鋭く象った氷のつぶてを投擲して着たりします。

○茨×3体
 有刺鉄線の如く一定空間へと張り巡らされる謎の荊。
 一体範囲の茨が束なってから敵対するもの目指して伸び、絡みついてきます。また、強引に排除しようとする者を昏睡状態へと陥らせたり、体力、気力を奪いつくりして死に至らしめようとしたりする。
 茨は戦場のどこからでも束なることができるようで、その出現の把握はかなり難しいでしょう。
 ただ、茨を傷つけることでその活動は低下します。
 戦場に張り巡らされた状態では範囲攻撃に耐性を持つ為、非常に厄介な相手ですが、束なった茨は耐性が無くなるため絶好のターゲットとなるでしょう。

●NPC
〇迷宮森林警備隊×10名
 弓の名手である隊長ラウルを中心に、弓、風魔法、風精霊を操る幻想種で構成。後方、樹上からの攻撃が得意。
 オルド種サテラの生み出した氷の茨に囚われ、タイミングによっては昏睡状態に陥り始める者もいますが、救出できればこの事態の打破に協力してくれます。

●『夢檻』
 当シナリオでは<タレイアの心臓>専用の特殊判定『夢檻』状態に陥る可能性が有り得ます。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <タレイアの心臓>凍てし茨に縛られて完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
セララ(p3p000273)
魔法騎士
ジルーシャ・グレイ(p3p002246)
ベルディグリの傍ら
エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)
流星と並び立つ赤き備
ソア(p3p007025)
愛しき雷陣
鏡禍・A・水月(p3p008354)
鏡花の盾
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
月夜の魔法使い
シャールカーニ・レーカ(p3p010392)
緋夜の魔竜

リプレイ


 凍てつくような寒さの迷宮森林を歩いていたは、イレギュラーズ一行。
 亜竜種の『ベンデグースの赤竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)にとって、初めての体験だ。
「全く……ただの密林なら覇竜にもあるが、侵入者をこんな形で拒む森は初めての経験だな」
 亜竜などが出現する危険な森とは比べるべくもないが、茨や大樹の嘆きという存在にレーカはやりにくさを感じていた。
「深緑の人々を助けるための警備隊が襲われてしまうとは……」
「救助隊の救助とは、切羽詰まった状況を示すかのような依頼ですね」
 『ラストドロップ』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)が口にした現状に、『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)はほとんど猶予がないことを確認して。
「救助隊の救助隊の救助が必要とならないように気を付けませんと。……まあ、迷宮森林警備隊なのですが」
 少しだけバツが悪そうに呟くヘイゼルに、『魔法騎士』セララ(p3p000273)も、『虎風迅雷』ソア(p3p007025)も頷く。深緑の為に頑張っている幻想種達の危機を見過ごすわけにはいかない。
「彼らを助け、ファルカウへの道を切り開きたいですが」
 ジョシュアが神妙な顔で仲間達を見回す。
「相手はオルド種。連携を意識し、気を引き締めていきましょう」
 周囲の気温が低下していく。現場はもう間近だ。

 現場はあちらこちらに氷の茨が伸びており、そこに武装した幻想種達が閉じ込められている。
「これ以上抵抗しないでほしい」
 動く3体の木々、宙を飛ぶ氷の精霊8体の間に立っていた中性的な人影。
 オルド種と呼ばれる大樹の嘆き上位存在であるそれは、サテラと名乗った。
「…………」
 幻想種達……迷宮森林警備隊の隊長ラウルは眠りに落ちた部下達を見回す。彼等は人質に取られたも同然の状況。下手な手出しは彼らの命に関わる……。
 諦めすら感じていた彼の耳に足音、そして、言葉が聞こえて。
「ふーん、こいつが『大樹の嘆き』とやらか」
 『一ノ太刀』エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)は大樹の後、上位存在を注視する。
「あの子の……サテラの言うことも、少しは理解できるわ」
 途中から、オルド種の主張を聞いていた『月香るウィスタリア』ジルーシャ・グレイ(p3p002246)。
 誰だって、大切なものは手の届く所にいて欲しい。守ってあげなきゃとその想いをジルーシャは代弁するが。
「……でも、だからって無理矢理閉じ込めて自由を奪うなんて、そんなのはやっぱり間違ってるのよ!」
 あまりにも強引すぎるそのやり方までは、ジルーシャも同意しかねていた。
 『割れぬ鏡』水月・鏡禍(p3p008354)も、これまで自身の参加した依頼や数ある報告にも現れた大樹の嘆きを思い返す。
「とんでもない大物が相手ですね」
 大樹の嘆きは非常に厄介だが、その上位存在となれば推して知るべしといったところ。
「まずは茨に捕らわれている方々を助けないと自由に動けそうもありません。……働かせていただきますよ」
 鏡禍もだが、皆事前に決めた立ち回りをすべく動き出す。
「我々がそれを許すとでも?」
 敵意を示すオルド種……サテラが手足を枝や根に変化させ、イレギュラーズを牽制すると、エレンシアが首を振って。
「ま、お前らがどうあれ、敵対するなら叩き伏せるだけさ」
 時間も惜しいと、彼女は大太刀を抜いて前方へと跳躍したのだった。


 この場のイレギュラーズは8人。
 氷の茨に囚われたラウル達迷宮森林警備隊の救出は急務だが、サテラが邪魔してくるのは間違いない。
 メンバーはチームを2つに分けることにし、その両方を対処することに。
 サテラ他敵対勢力の抑えには、ヘイゼル、エレンシア、ソア、ジョシュアの4人が当たる。
 一早く動き出していたソアは茨に囚われるラウル達を一度見回してから、今度はサテラの周囲に目をやる。
(辺りにたくさんいる敵……)
 中でも、ソアはアイススピリット……氷精霊に注目して。
「がおっ!」
 嵐止まぬ突撃戦術をとるソアは咆哮を見舞い、敵の行動を止めようとする。実際に幾体かの敵は硬直してしまっていた。
「どう? ふっふーっ、痺れるでしょ、動けないでしょ」
 ドヤ顔で微笑むソア。とはいえ、その数は3,4体。
 身体強化魔術で敏捷性を高めたジョシュアもまたできるだけ多くの敵を抑えようと、銃を連射して敵陣へと鋼の驟雨を降り注がせる。
 伸ばした枝や根を穿たれる大樹。小柄な氷精霊もジョシュアの銃弾を避けることができず、右往左往してしまう。
 そんな状況にあっても、応戦してくる敵もおり、空中で薙ぎ払われる枝や吹き付けてくる吹雪。
 ジョシュアなどは耐性やゴーグルと万全の準備で戦いに臨んでいたこともあってじっと耐えていたが、広域に広がる攻撃は救出メンバーや警備隊にまで及ぶ可能性があって危険だ。
「わりぃな、邪魔はさせないぜ。お前さんらの相手はアタシ等だ」
 救出活動が終わるまでは邪魔させねぇと、エレンシアは大樹の嘆き目掛けて飛び、白銀の大太刀で大樹の嘆きを切りつけていく。
「大人しくしてほしい」
 抵抗するイレギュラーズの攻撃にさらされながらも、サテラは後方に位置したまま氷の茨を飛ばしてこちらを凍り付かせようとしてくる。
 やはり、相手も救出班の行動が気になっている様子。
「野放しにするわけにはいきませんね」
 ヘイゼルはサテラを直接抑えるべく相手の側面に回り、救出班となるメンバーの進路を塞ぐ。
 サテラがほとんど動かぬこともあり、ヘイゼルは前線で攻撃モーションをとる敵へと炎を散らす。
 巻き起こる花吹雪が如き極小の炎乱が大樹や氷精霊へと浴びせかかり、その体力を削いでいく。

 抑えを担うメンバー達が全力でサテラらを抑える間、救出班は手早く、効率よく迷宮森林警備隊の解放を目指す。
「まずは茨から引き剥がすのが最優先!」
 セララが意気揚々と手数を活かして茨に囚われた隊員へと近づく。
 戦場の側部、奥側で茨に絡まれる警備隊隊員達。
 氷の茨が絡みつき、隊員の体を締め付けるが、彼らは茨の効力もあって眠りへと誘われようとしており、半数が意識を失ってしまっている。
 邪魔な茨は攻撃あるのみ。セララは聖剣で斬りかかり、茨を切り裂いて破壊していく。
「助けに来たよ。もう少しだけ頑張って!」
「う、うう……」
 隊員も眠気に抵抗しているが、今にも眠りに落ちてしまいそうだ。
「待っていろ、必ず助ける!」
 イレギュラーズの力を借り、隊長ラウルもまた隊員の救出へと動く。
 氷の茨はそれなりに硬度もあって幾度か攻撃が必要だが、氷の茨自体に自我はなく、自分からは攻撃してこない。
 レーカは攻撃しないで茨による拘束を解こうとしていたが、難しそうだと判断。高い防御力を攻撃へと転化したレーカは自らを守る障壁を直接ぶつけることで茨の破壊を試みる。
 徐々に亀裂が走り、砕けていく茨。
 威力ある攻撃を多数打ち込めば破壊できると、皆確信していた。
 精霊の竪琴を鳴らすジルーシャは敵対勢力以外にこの場へと存在する精霊達へと呼びかけ、力を借りる。
 寒々しい森に突如巻き起こる砂嵐。
 さながらラサで巻き起こる砂塵を思わせる荒ぶる風が広域の茨を破壊していく。
 動けるならば、ジルーシャは躊躇いなくその嵐を再び巻き起こす。少なからず消耗するはずの技だが、彼は全く意にもかけない。
「アタシの充填力を舐めるんじゃないわよ、皆を離すまでやめてあげないんだから!」
 あちらこちらの茨に走る亀裂。それらと、隊員の状態を合わせてみていた鏡禍は、意識のない隊員を優先して救助に当たり、至近距離にまで迫ってから竜の一撃を打ち込む。
 茨を破壊し、1人、また1人と隊員を救出していくのだが。
「……何か来る」
 広域俯瞰で戦場に展開する茨の束なりを補足したレーカ。
 かさつく音。そして、強まる植物の香り。
 ジルーシャは加えて精霊同調でそれを察して飛び退くと、そこに鋭い茨が伸びてきた。
「キャーッ!? ちょっと、危ないじゃない! 棘が目に入ったらどうしてくれるのよ、もう!」
 ジルーシャは絶叫し、自分の影から呼び出した黒き獣をけしかけていくのである。


 隊員の解放が進む傍ら、別班が目の前の敵を抑え続ける。
 咆哮を発していたソアは自分へと注意を向ける敵が増えてきたことで、戦場を逃げ回る様に移動する。
 足は速く、鉄の脚で駆け回るソアは、動きの鈍い大樹はもちろん、氷精霊たちでさえも翻弄していた。
 今しばらく救出に時間は要する。ジョシュアは長期戦を見据え、仲間を巻き込まぬように敵陣へと散弾を降らして傷を与え、少しずつでも体力を削ろうと画策する。
 その最中、ジョシュアは1体の氷の精霊を穿ち、霧散させていた。
 強敵であるオルド種サテラはヘイゼルが主として交戦していたが、大樹を相手にしていたエレンシアも挨拶代わりにと白銀の刃で鋭い突きを繰り出す。
「…………」
 茨を操って致命傷を避けるサテラへ、ヘイゼルが朱い魔力糸を多重展開して時間差攻撃し、より強く注意を引いて。
「申し訳ありませんが、貴方に言いたいこととしましては、no thank you,それだけでせうか?」
「余所者がこれ以上関わらないでもらいましょうか」
 ヘイゼルへと素っ気なく返答するサテラ。大樹の嘆きからすれば、深緑以外の者であれば、混沌勢でも旅人でも変わらないらしい。
 蠢かせる根を広く広げるサテラはこちらが抵抗できなくなるよう締め上げようとしているのは間違いない。

 救出は進み、自由に動ける隊員の数は増える。
「悪夢に囚われる時間はお終いだ。現実は、悪夢よりもなお酷いものかも知れないが、起きて貰う」
 防御攻勢によってレーカが氷の茨を切り裂くことで、また1人救出に成功する。
「他の警備隊員達を助けてあげて!」
 セララはその隊員に同士の救助を託すと、目覚めぬ別の隊員を戦場の入り口側へと退避させる。
 手荒と分かってはいるが、彼女は怪我をしない程度、低めにぽーいと放り投げて次なる救助の為の時間短縮。
 戻る際、セララは邪魔な茨があったことで、聖剣で思いっきり斬りかかって排除を試みると、ジルーシャのけしかけた獣がセララの斬撃に重ねて躍りかかり、真っ二つに切り裂いた。
「ラウル。そろそろ指揮は取れそう?」
「あ、ああ」
 ジルーシャの一言で、自由になった隊員に効果的に指示出しし始めるラウル。ようやく、彼も冷静さを取り戻したようだ。
 ただ、隊員達も動けるとはいえ、万全な体調とはお世辞にも言えない。
 鏡禍はそんな隊員が大樹に狙われたことで身を張って庇いに当たる。
「そのまま、救助をお願いします」
 鏡禍の一言に大きく頷く隊員は氷の茨を破壊せんと弓を射っていた。


 最後の隊員を助け出すのにそう時間はかからない。
 目覚めぬ隊員も2,3人いたが、助けるごとに更なる救助は加速する。
 全員を茨から助けられれば、後は敵対勢力を撃破するだけだ。
「わぁい、待ってたよ!」
 駆け付ける救助班にソアが喜びの声を上げ、一気に反撃開始だ。
 一気に殲滅を加速させようと鏡禍が名乗りを上げる。
「僕の方を見てください」
 鏡禍の声に、氷の精霊らがつられて氷のつぶてをぶつけてくるが、ほとんどの相手がかなり弱ってきている。
「さぁ、こっからは掃討戦だ! 一匹残らず全力で叩き潰してやるぜ!」
 ここまで耐える戦いを行っていたエレンシアも、『対城技』と称される武技に切り替えて火力重視で斬撃を見舞う。
 荒れ狂う一撃はエレンシアにも大きな負担を強いてしまうが、その分威力は絶大。
 エレンシアの刃が見事に1体を断ち切ると、聖骸闘衣を纏うレーカが防御攻勢で攻撃の手を強め、精霊1体を消し飛ばす。
 氷精霊は力尽くでもと警備隊を凍り付かせようとするが、ソアが身を挺して庇いにあたって。
「しっかりして! みんなで生きてリュミエ様を助けようね!」
「いくぞ、我々を縛り付ける存在を排するのだ」
「「はい!」」
 隊員は弓、風魔法、風精霊を操り、それぞれの武器で1体ずつ始末していたようだ。
 もちろん、イレギュラーズも負けてはいない。
 ジョシュアの狙撃が氷精霊を穿って消し飛ばし、『セラフィム』のカードをインストールして変身したセララもドーナツをくわえて雷撃を繰り出し、氷精霊にとどめを刺す。
 その合間に、束なる茨がメンバーを襲う。相手はイレギュラーズ、警備隊無関係に襲い来るので、イレギュラーズは彼らを守りつつ立ち回る。
 激しく闘争心を高めた鏡禍は襲い来る茨から仲間を守り、幻想を穿つ竜撃で茨を砕く。
 散開時と違い、束なりさえすれば茨は脆い。鏡禍の一撃でボロボロと崩れていく茨の傍で、新たに束なった茨がこの場のメンバーを襲う。
 だが、この段になれば、皆的対処に集中している状態。茨へと攻撃を集中させ、ジルーシャが熱砂の嵐を巻き起こして茨の活動を停止させた。
「まだ抵抗するのかい?」
「悪いが、この状態が守ることに繋がるというのは一方的な独善にしか思えないな。と言っても、敵対する私が何を言ったところで無意味なのかも知れないが」
 涼しい顔をしていたサテラもレーカの反論に少し顔を引きつらせ、氷の茨を展開し始める。
 これで、再度メンバー達を捕らえようとするのだろう。
 茨に貫かれたレーカは戦乙女の呼び声によって傷を塞ごうとする。
 ヘイゼルや鏡禍も彼女を癒そうとするが、サテラの茨がなおも襲う。
 加えて、ここまでサテラの配下である大樹型大樹の嘆きが全て残っていたことも大きいだろう。
「く……」
 レーカが意識を失って崩れ落ちてしまう中、警備隊もかなり苦しい状況が続いていたようだ。
「回復の手は緩められないわね……!」
 ジルーシャは本気を出したサテラの攻撃の激しさに、旋律を響かせて皆を癒す。彼はそのまま回復役に注力することに決めたようだ。
 残る大樹の嘆きを討伐すべく攻勢を強めようとするイレギュラーズ。だが、警備隊は満足に態勢を整えられず、離脱する者も増え始める。
「戦える者達だけでいい。ローレット勢の援護を!」
 それでも、ラウル指示で弓に風術で援護する隊員達。
 ジョシュアが鋼の驟雨を浴びせかけるが、序盤から抑えに当たっていた彼も気力が続かず、通常攻撃での応戦へと切り替える。
 同じく、序盤から抑え役となっていたエレンシアも苦しい状況だが、根や枝を槍の如く突き出す大樹へと白銀の刃を振り下ろし、太い幹を半分くらい切り裂いて完全に動きを停止させた。
 大樹も序盤から交戦しており、全身傷だらけ。
 イレギュラーズは手数を活かして一気に追い込む。
 セララが雷光纏う一撃で枝を振り上げる大樹を切り倒した直後、ソアもまた雷光を煌めかせて。
「びりびりどーん!」
 轟く稲光に焼かれた最後の大樹型は黒煙を上げ、その巨体を横たえていった。
「なぜ、そこまでして……」
 理解できないと首を振るサテラは自身の周囲に氷の茨を展開する。
 そして、それを一気に全方向へと伸ばし、この場のメンバー達を貫かんとしてきた。
 警備隊が追いつめられる状況の中、イレギュラーズは協力してサテラを攻め立てる。
 的確に戦況を見定めて回復するヘイゼル。鏡禍もこれ以上仲間が傷つかぬようにと身構え、絶気昂て自己回復しつつ盾となる。
 そんなメンバーの支援を受け、サテラへと切りかかるエレンシア。
 ソアも突撃戦術を仕掛け、さらに雷光を煌めかせてサテラを追い込まんとする。
「サテラさん。茨によって人々を守るって方法は確かに有効かもしれない」
 救出で動いていたセララはまだ多少の余力を残しており、雷のカードを再度インストールして勝負を挑む。
「けれどね、茨が無くても人々はこの危機を乗り越えていける。ボクはそう信じてる」
 激しい光に顔を顰めるサテラは身をかがませ、何かを狙う。
「だから、茨を壊して皆で未来を勝ち取ってみせるよ!」
 再び雷の一撃を撃ち込むセララに、サテラは氷の茨を前方へと展開して、直撃を防ぐ……が、全身を傷だらけにしていたサテラもさすがにダメージが大きかったらしい。
「次こそは、必ず……」
 苦しそうに呻き、サテラは茨に包まれてこの場から姿を消していったのだった。


 戦いは激しく、イレギュラーズ達も傷の大小はあったが、とりわけ、警備隊の疲弊は激しい。
 ラウルですらも気を失って倒れるほどで、よほど気を張っていたのだろうとメンバーは察する。
 とはいえ、警備隊もまだ目覚めぬ者はいたが、犠牲者はなし。
 彼らを近場の集落へと移すイレギュラーズはさらなる戦いへと臨むべく、大樹ファルカウを目指すのである。

成否

成功

MVP

ソア(p3p007025)
愛しき雷陣

状態異常

シャールカーニ・レーカ(p3p010392)[重傷]
緋夜の魔竜

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは悩みましたが、多数の敵の気を引いて救出の時間を稼ぎ、
 かつ大樹の嘆きも1体討伐したあなたへ。
 今回はご参加ありがとうございました。

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