シナリオ詳細
わる狐のバラッド
オープニング
●わる狐のバラッド
「こっち来んなよ、わる狐!」
「なんでそんな事言うの? ぼくはわるい事してないのに」
「キツネは嘘をつくから気をつけろって、母ちゃんが言ってた!」
狐は嘘をつく。化かされて騙される。
どこに行っても前評判は覆せない。
だから俺は精一杯がんばった。誠実に、正直に。
ーーその結果がこれだ。
『おーっと、リヒト選手、決勝戦でまさかの不正だー!』
「待ってくれ、俺はこんなカード知らねぇ!」
「禁止カードを使おうとするなんて、リヒト先輩……見損ないましたよ」
「違う、信じてくれ!」
「信じられると思いますか? だって貴方はーー狐でしょう?」
ちくしょう、ちくしょうッ……誰も彼も俺を悪役にしやがる!
それなら、なってやろうじゃねぇか。狡くて悪いヴィランってやつにッ!!
●運命力:善
「集まったか、特異運命座標」
新しい"討伐クエスト"の依頼を受けた特異運命座標は、伝承の薄暗い路地裏に集められた。酒樽の上に無造作に置かれた黒いマスクを不審がる彼らへ、依頼主であるR.O.Oの札貫リヒトは睨みをきかせる。
「ボサッとしてんな。お前達はこれから、俺と一緒に表通りの銀行に強盗に入るんだよ。
銀行の警備員を倒すんだ。ちゃんと"討伐クエスト"だろ?」
分かったらさっさと準備しろーーそう言いかけたリヒトの声に被さるように女性の甲高い悲鳴が辺りへ響き渡る。
「なっ、何だァ?!」
様子を見に表通りに出てみると、声がしたのは襲撃予定の銀行から。銀行員の女性が泣きながら店から飛び出して、リヒトの身体に縋りついた!
「お願い、助けてっ!」
「はぁ?」
ふと銀行の入口に視線を戻せばーーそこにはなんと黒いマスクで顔を隠し、銃や刀を携行した強盗がいるではないか!
(嘘だろ、先客かよ?!)
「おいテメェ、戻って来い!」
「嫌ぁっ!」
「言う事が聞けないなら躾が必要だな」
銃口が火を噴いた。強盗からの一撃は銀行員を狙っていたが、リヒトが彼女を抱きしめて庇う。肩をざっくりと弾が掠め、血が煉瓦の地面へ滴り落ちた。
「特異運命座標、依頼内容の変更だ。……討伐対象はあの強盗団。徹底的にブチのめしてやれ!」
- わる狐のバラッド完了
- NM名芳董
- 種別クエストテイル
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年06月02日 22時05分
- 参加人数4/4人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(4人)
リプレイ
●
『こちら"愛紅"、1階の制圧完了ですぜ』
「金目の物をありったけ袋に詰め込ませろ」
部下との無線通話を切り、ディズリは天井を仰いだ。そうしなければながーいお耳が天井に擦れてしまうからだ。
生まれつきスレンダーで長身だった彼は、兎の因子もあって常に天井の高さを気にする生活を強いられていた。しかしこの強盗騒ぎが上手くいけば、この抑圧された日々も終わる。
(吹き抜けだらけのおセレブ屋敷をブッ建てて、ストレスフリーなウサ耳ライフをエンジョイしてやらぁ!)
「おい、窓の外もしっかり監視しとけよ」
「何言ってんですかボス、ここ2階ですよ? 異常なんてある訳が――たっ大変です!」
窓の外を覗いた部下が慌ててディズリの元へ戻る。怪訝そうな顔をするボスの前で、部下は青ざめたままこう報告した。
「窓の外に、目元を隠した麗人と! おっさんのケツが!!」
「分かった、とりあえず病院行け」
ガシャアァン!!
派手に窓ガラスをブチ破り『夜告鳥の幻影』イズル(p3x008599)は夜告鳥の護る揺り籠を自身に付与。アクティブスキル2をもって目の前の強盗を蹴散らした。
「安心して、不殺だよ」
「それより早く降ろしてくんねぇ?」
『おっさんの尻』もとい俵抱きで担ぎ上げられたリヒトは、頭をイズルの背の方へ向けて担がれたせいで状況が掴みきれていない。周囲の強盗も一般人も「おっさんのケツね」と連呼してるのは何事か。
「ごめんね。最初はお姫様抱っこにしようと思ったんだけれど、あれはツルギさん専用だったから」
「何でもいいから降ろせって!!」
「イズルさんの潜入が成功した様です。私達も行きましょうか」
状況を見ていた『闘神』ハルツフィーネ(p3x001701)が抱えていたクマさんをよいしょと立たせる。
「あれ? 悪い依頼違う? 善い依頼?」
その横で、ホニャホニャ…と不思議な音と共に動き出した『不明なエラーを検出しました』縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧(p3x001107)は、まだ今の状況の頭の中で整理している様だった。その答えと言わんばかりに、ハルツフィーネのクマさんがバッ! と鼠小僧風に顔につけていた唐草模様のほっかむりを投げ捨てる。
「どうやらその様です。まあ本当に強盗することにならなくて良かったですよね」
「……」
(まァ、それはそれでいいのだけれども)
アバター自体はバグだらけでも、縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧の自我、思考能力はアバターの主そのままだ。リヒトが強盗を起こしたいと言い出せば、『それを君が望むなら』と沿うつもりだったが――今回、厄介なのは人質がいるという点か。
(あまり人が死んでは小鳥が哀しんでしまうかもしれないから、なるべく助けておきたいところだ)
「あちぃいい!!」
真面目に思考していると、目の前へ火だるまになった強盗が転がり込んで来る。火の元は『炎獄の聲』レンゴク(p3x009744)だ。
「他者の金を盗むだけじゃなく、命まで奪ろうだなんて図々しいにも程があるよなァ? 嫌いだねェ、そういうヤツ。頭プッツンしちまいそうだよ」
「も キレ てる?」
「安心しな、まだ半殺しで済ませてるからよぉ」
クマさんがバケツで丸焼け強盗の消火を終えた頃には、2階の騒ぎは最高潮に達した様で。上から降って来る強盗を避けると、レンゴクは入口のドアを派手に燃やして銀行内に踏み入った。
「抵抗すんじゃねーぞ? 大人しくすりゃ丸焼きだ。暴れるンなら――消し炭だッ!!」
どう、と大気が揺れて紅蓮のフレイムバーストが強盗に襲い来る。神性を込めた炎の一撃は、単純ゆえに対策も難しい圧倒的な火力。混乱に乗じて客に紛れようとした敵をもレンゴクは見逃さない。
「ひぃっ!?」
「隠れても無駄だぜ、俺の【眼】は見逃さねェ…!」
腹の内に燻っている敵意の炎。その熱を心根炎魔棲まう馥郁で暴きながら、火神は笑う。
「そらそらぁっ! 反撃してこいよ鼠ども! 尻に火がついたんなら猫を噛むほどの気概を見せなァ!」
「これは後で、消火活動が大変な気配がします」
出口のあたりに立ちながら、ハルツフィーネは室内の様子を伺った。壁には「ないないどうぞ」と言わんばかりにバールが飾られ、視線を外へ移せば「今日も先越された!」「次回にするか」といかにも強盗っぽい集団が引き上げていくのが目にうつる。
「この銀行、今朝の占いで『強盗に注意しましょう!ラッキーアイテムは強盗です!』って言われてそうなくらいに狙われてますね……」
視界の端ではなんか縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が避難誘導に乗じて金庫の前でごそごそしているし、果たして事件を解決しても、銀行に平和は訪れるのか。
そんな不安だらけの中でも、彼女にとっては、ひとつ揺らがないものがあるだけ救いがあった。それは――
「クマのぬいぐるみ? 何だこりゃーーぐふぅ!?」
裏口から逃走を試みていた強盗が星のきらめきと共に吹き飛ばされた。クマさん渾身のクマさんロアーが炸裂したのだ!
そう。どんな時もクマさんは揺るぎなくハルツフィーネを守る最強の存在。更に今回はもうひとつ特別な事を用意している。
『クマさんのカードが欲しい?』
『はい。可愛いのなら買いたいのですが』
突然依頼を変更させた迷惑料もかねてとお願いすれば、リヒトはカードの束を取り出して、何枚かを彼女へ託した。
「これが私の切り札です。ドロー! 引いた装備カードをクマさんにセットすれば……ゴールデンファラオ・クマさんへ進化しちゃえます!」
まばゆい光に包まれたクマさんが、ドン★ と王様コスチュームで顕現する。クマさんクローを放った瞬間まわりに黄金の輝きが飛び散り、放たれた一撃は威力も見た目も派手になったように見えた。
「最高ですクマさん!!」
「なんだあのエフェクト、妙に燃やしたくてウズウズしやがるぜ」
地下は大していなかったぞと黒焦げの強盗を転がし、レンゴクが上の階を睨む。
「先に行った文字化け達は上手くやってんだろうなァ?」
●
(やっぱり、ボスの居る階は守りが厚いね。怪我人のNPCと二人だけじゃ難しいか)
PCは不死身であれど、NPCはそうはいかない。立ち回りにイズルが苦労し、歯を噛みしめた時だった。
【不明なエラーが発生しました】
(おや?)
表示されたウィンドウに一瞬イズルは眉を寄せるも、理由をすぐさま悟る。
【不明??エラーが??生し????た】
練達の叡智の結晶にすら正体不明と判別されたソレは、電脳存在に恐怖を与える反面、クエストの受託や買い物などの一部のシステムは正常に使う事が出来る。
だからこそ、その時まで縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧は『銀行を訪れた普通のPC』として強盗の目に映っていた。
「 ば ぁ 」
「ひっ、ひぎゃああぁぁ!?」
「おおおおーーっ!!!」
制御を解かれ悍ましい姿を人々が認識した瞬間、強盗の絶叫と人質の感極まった声が混じる。
ノイズ混じりに放たれた繧「ク$ィブ◆キル1は一撃、二撃と重なって、強盗達を飲み込んで。助けた人質は幸か不幸か、二人がよく知る人物だった。
「ハムレス ど して」
「研究費の前借りの件でちょっと。いやそんな事はどうでもいい」
「そ。 ここ居たら 死ぬ ぞ」
「死ぬのは御免だが、今日こそは解体を――うっ」
目をギラギラと光らせにじり寄って来る研究者ハムレス。その首根っこを掴んでディズリが銃を突き付ける。
「おら退けぇ! 人質がどうなってもいいのかぁ!」
「うん」
二言返事でイズルがアクティブスキル2を放った。あまりの判断の早さに避けきれず倒れ込むディズリとハムレス。
「よかた の?」
「人質が不憫属性を纏ったおっさんの場合は巻き込んでもセーフだと思って」
大丈夫、ミスリードだよ。不殺だよ。
……そう笑う彼の非戦スキルは『イケ面(めん)無罪』である。こんな暴挙もイケ面ならば許されるのだ!
「チッ、ナメやがって!!」
ブチ切れてマシンガンを取り出したディズリが吠える。ガガガガ! と放たれる弾丸を躱しながら接近する縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧とイズル。通常攻撃の一撃を受けてディズリは笑った。
「効くかよ、そんな――」
「まぁ、時間稼ぎだからね」
イズルの言葉と同時、背後に二つの影が迫る。炎を拳に纏うレンゴクと蒼薔薇と共に舞うクマさん。悲鳴を上げる前に放たれたスキルは彼を抉り、そして――
●
「俺は結局、悪の才能ってのがねぇのかもな」
肩を落とすリヒトと帰路を共にする特異運命座標たち。落ち込む彼の肩をレンゴクが叩く。
「これでもまだ強盗したいと思ってるなら、また手伝ってやってもいいぜ。正義のヒーローさんよぉ?」
「焚きつけちゃ駄目ですよレンゴクさん。まぁ、今回は人質に被害なし。強盗も死人ゼロで円く収まったと思いますよ。
クマさんには劣りますがウサギさんも可愛いので生かしてあげれて良かったです。死んだ振りをして命乞いしてくれましたし」
そう、ディズリとその一味は全員死なずにしょっ引かれた。余罪の追及のためである。
まさかその折、イズルがディズリの服装をバニースーツにすげ替えて兎感マシマシなご無体を働くとは誰も予想していなかったが。
「リヒトさん。狐がヒトを騙すより、ヒトがそうする絶対数の方がずっと多い。雑音は気にしなくていいんじゃない?」
「イズル、お前……」
リヒトが何か言いかけた時、じゃらりとリヒトの首に豪華な首輪がかけられた。縺薙?荳也阜縺ョ繝舌げ繧が客を逃がすついでに金庫から拝借したものだ。
「は??」
「? これ、欲しかった じゃ ないの?」
「えっ、あ、あぁ」
「よかた ねぇ」
きゃらきゃら笑う文字化けを見ているうちに、リヒトもまた元気を取り戻した様だ。ニヤリと笑い腕を突き上げる。
「今日はこれから打ち上げ焼肉パーティーだ! 戦利品でいい肉買って、レンゴクに焼いて! 明日こそは悪役だ!」
「俺の炎を肉焼きコンロ代わりにするんじゃねぇ!」
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
今日も貴方の旅路に乾杯! NMの芳董です。
まさかの強盗ダブルブッキング。大変な事になってきました!
●目標
強盗団の全滅
●エネミー
『梟雄バニー』ディズリ
獰猛で狡猾と恐れられる強盗団のボス。黒ウサギの獣種で、マシンガンをぶっ放したり【飛】付きのキックで吹っ飛ばそうとしてきたりする。残念ながらちゃんと黒いジャケットと黒いマスクを着用している。バニースーツではない。
ディズリの手下×13
銃やら刀やら思い思いの得物をもって強盗を働く悪漢たち。ディズリに倣い黒いジャケットと黒いマスクを着用している。木っ端とみせかけて、R.O.O.のエネミーなので、それなりに力量がある。
エネミーについて
銀行員の女性を追ってきたのは手下二人。それ以外のエネミーは銀行の各フロアに散らばっている。非戦を駆使すれば、何人がどの階にいるか探る事もできるかも。
●味方
『自称悪役』札貫リヒト
特異運命座標の札貫リヒト(p3p005002)に似た顔のNPC。ワルを公言しているが、悪事を働こうとする度に不思議な運命力が働き悪事ができない。
戦闘ではトレーディングカードゲームのカードを扱い、火炎系の神秘攻撃を扱う。
●フィールド
伝承信用銀行ないない支店
よく凶悪な強盗エネミーがポップするR.O.O.の危険な名所。地上2階と地下倉庫B1階の3階で成り立っている。
店内にはまだ銀行員と客が10名ほど囚われている様子。
●情報制度
このシナリオの情報制度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
説明は以上です。それでは、よい旅路を!
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