シナリオ詳細
真夏の海賊ブレイカー
オープニング
●大海原に銃声を
美しい音楽と踊る紳士淑女。
きらびやかな船のホールに突如として振動と轟音が走った。
なんだと振り返る船長らしき男に、水夫が慌てた様子で駆け込んでくる。
「船長! 海賊です! 『枯れ薔薇』ジャクリーンです!」
その名前に船長らしき男も、周囲の紳士たちも、一様に動揺を見せた。
海賊というワードにではない。
『枯れ薔薇』ジャクリーン。
その恐るべき名前にである。
大砲の音。
サメやヒトデに似た姿の海種たちがそれぞれ大砲を構え、近づく船へと砲撃を繰り返す。
爆発と振動。そして燃え上がる炎と灰の香り。
それを胸一杯に吸い込んで、まつげの長い女は笑い声を上げた。
「オイ、野郎ども。この海で一番美しいのは誰だ」
「「『華麗な薔薇』ジャクリーン様です!!」」
「オーケーイ」
女は美しい睫をしていた。
大きくえらの張った顔をしていた。
ひどく肉のたるんだ頬をしていた。
恐ろしく横にひろい樽のような体型をしていた。
手に持っているのはバラ模様がはいった大砲だ。
「いま『枯れ薔薇』つったのは誰だい!」
大砲を振り回し、部下の一人を殴り倒す。白目を剥いて気絶した部下を踏みつけ、周囲をにらむ。
残る部下が冷や汗を流して首を振った。
「そ、そんな奴はおりませんよ……船長……」
「いいだろう。オラ野郎ども、突っ込みな!」
『枯れ薔薇』ジャクリーン。
海洋で暴れる海賊の一人である。
●海賊退治もローレットにお任せ
「あら、こんな所で出会うなんて偶然ね。依頼を受けに来たのかしら? それとも観光」
麗しい水着姿で、『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)はトロピカルジュースのグラスを掲げた。
「前者ならこのまま説明をしちゃいましょうか。他のメンバーもそろっていることだし……」
「依頼内容はずばり、海賊退治よ。
『枯れ薔薇』ジャクリーンという女海賊とその部下たち。彼らを倒し、奪われた財産を残らず取り返すこと……」
流れも目的もきわめてシンプル。
敵の船に近づき、乗り込み、戦い、そして倒すのだ!
「ジャクリーンは凄まじいパワーを持った海賊よ。攻撃力はもとより非常にタフ。
部下たちもそれに習ってかパワーの強いタイプが多いみたい。
攻撃のいなしかた、防ぎ方、もしくは回避のしかたを工夫しないとすぐに潰されちゃうかもしれないわね。
この海賊船がある場所は補足済みよ。船は貸し出せるみたいだけど、自前の船があったらもっとステキな筈よ」
そこまで説明すると、ジュースのストローに口をつけた。
ぷは、と開いた唇が鮮やかに照る。
「回収した財産はみな、奪われた海洋の人々にできるかぎり返却されるけど……私たちにだってちゃんと報酬は出るわ。帰ったらパーティーしましょ」
- 真夏の海賊ブレイカー完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年08月14日 21時45分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●果て無きラインは人々を海へかりたてた
「よっしゃ! 海賊退治ィ――!」
頭にバンダナを巻き付けた『不屈の』宗高・みつき(p3p001078)は、船の手すりに足をかけた。
「海賊退治と聞いて燃えない男はいねぇよな! 仕事も大事だが、せっかくだから船旅も楽しまねぇと」
大海原。船の上。
波に揺れる甲板と涼しい潮風が肩をゆする。
河上・サフィニア(p3p006171)は船の舵に手をかけて、羅針盤から顔を上げた。
「アハハ! まさかこちらでも海賊業と関わり合いが出てくるとは思わなかったよ! でもこっちの海賊はダメダメだよね、こんな風に僕達みたいな海賊退治の集団を派遣されちゃうんだから」
奪うだけじゃ駄目なんだよ、ちゃんと還元しなくちゃ民達は味方になってくれない。それが彼女の海賊観だ。
「悪い事ばっかやってたら海に嫌われちゃうからね! そこら辺、元河上快賊団の副船長として教えてあげようかな? っと!」
「ひひひっ……」
揺れる船の木箱に腰掛け、ナイフの手入れをする『こそどろ』エマ(p3p000257)。
「盗賊と海賊ってどうしてこうも違うんでしょう。まぁまぁそれはともかく……海賊退治とは冒険者らしくなってきましたね。ひひっ」
「海賊は困るな……いると漁できなくなっちゃうから……。漁師さんたちのためにもやっつけないとね」
その横でふんわりしている『九本足のイカ』エルラ(p3p002895)。
小舟とはいえそれなりの大きさなので、水槽くらいはあったりするもんだが、それをお風呂のようにちゃぷちゃぷやってエルラは三角形の頭(?)を外に覗かせる。
それを軽くつつく『魂の牧童』巡離 リンネ(p3p000412)。
「本当、こういう海賊ってのは面倒だよね。でもまあ、力業ならイレギュラーも得意だから、一気に叩き潰すとしようね」
といいつつ、エルラもリンネも今日はちょっぴり本調子ではないようだった。特にリンネは軽く船酔いみたくなっている。どうしたんだろう。甲子園で力尽きたんだろうか。いやあれ別のひとだ。
黒い日傘、というよりビーチパラソルの下でへばる『落ちぶれ吸血鬼』クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)。
「ああ、暑い……干からびてしまいそう………こんな暑い中海賊なんてよくやるもんッスね。暑さもそうですが……水の上は苦手なんッスよ。早い所済まして帰りましょう」
「なんで? 泳げないから?」
『牙付きの魔女』エスラ・イリエ(p3p002722)の問いかけに、クローネが自分の真っ白な顔色とちょっとトゲトゲした歯並びを指さした。
あー、と納得の頷きをするエスラ。
「あなた『本物』なのね」
鏡に映らない特徴から似たもの扱いされることのあったエスラ的には、ちょっと芸能人に出会ったような感覚である。別に初対面というわけでもないのかもしれないが。
その話はおいといて、のジェスチャー。
「『枯れ薔薇』ジャクリーンってこの辺では名前の知れた海賊みたいだけれど。その悪名に敬意を表して先制攻撃といきましょ」
「『枯れ薔薇』? なんでそんなネガティブな名前を名乗ってるの?」
話を割と途中から聞いていた『浄謐たるセルリアン・ブルー』如月 ユウ(p3p000205)が船の手すりから振り返った。
「まあ、どうでもいいといえばどうでもいい事ね、被害がこれ以上広がらない様に対処するだけよ」
魔道具のブレスレットを指でなぞり、精霊力の結界を展開し始める。
「今までの行いつけを払う時が来たようね、せいぜい足掻くといいわ」
●無敵な風が君を導く
帆を張った船の舵を握り、サフィニアは舵を盛大に回した。
波立つ海をカーブして、会場ドリフトをきめる船。
それまで船のあった場所を、大砲の砲弾が無数に抜けていった。
「ヒャッハー! そんな距離からじゃ、僕らのローレット号には当たらないよ!」
対するは『枯れ薔薇』ジャクリーンのローゼンクロス号。
はためくは海賊旗。交差するバラとドクロのマーク。
ずんぐりと太った女、『枯れ薔薇』ジャクリーンが大砲を振りかざす。
「野郎ども! チンタラしてんじゃないよ、あの小舟をぶっ壊しな!」
「「ヘイッ!!」」
「オイ、野郎ども。この海で一番美しいのは誰だ」
「「『華麗な薔薇』ジャクリーン様です!!」」
「オーケーイ、撃ェッ!」
一斉に掲げられ、放たれる大砲。
放物線を描いて飛来する砲弾がローレット号に迫るが、サフィニアの前に出たエマが強引にナイフを振った。
ゴスンという鈍い音と共に軌道のそれる砲弾。
「船を寄せられますか!?」
「任せてっ!」
派手な蛇行をしたローレット号がローゼンクロス号へと迫る。
みつきはブレッシングウィスパーを唱え、リンネやエルラの充填や抵抗効果を強化していく。
「敵に近づいてからが本番だ、ここでリタイアしてるワケにはいかねぇ! 撃ちまくれ!」
「敵方もこちらと人数は変わらないわ。地の利は向こうにあっても負けないんだから」
エスラは鍵のついた魔導書を翳した。ひとりでにロックの外れた魔導書がページを荒々しくめくりはじめる。
天空に生まれた血色の魔方陣が複数出現。一眼レフカメラのレンズ構成のごとく連なった末、彼女の唱えた魔術を砲弾に変えて発射した。
更に進む船。
船首近くに立ったユウはブレスレットのついた腕を高く前に掲げた。
「一気に行くわよ」
周囲に展開した氷の結界が無数の丸鋸のようになって発射される。
ローゼンクロス号の砲手たちへと殺到していく。
それに伴ってリンネがソウルストライクを発射。
手持ちの様々な注入式薬品を使い分け、派手な威力をたたき出す。
やがて敵の砲弾をかいくぐり、ローレット号はジャクリーンのローゼンクロス号へと激突した。
ここぞとばかりに毒撃を放つエルラ。
いっそ自分で泳いで船に近づいてもいいかなと思ったりもしたけど、水面から甲板までの距離を考えると船に乗ったままのほうが撃ちやすかったのでこのタイミングを待ったようだ。
彼の毒撃が砲手にあたり、相手の船からうめき声があがる。
ここぞを待っていたのはエルラだけではない。
クローネは被弾によって吹き飛んだビーチパラソルを背に立ち上がり、黒木に金の装飾がはいった木製ライフルをひっつかんだ。
「見た目はふざけた連中ですね。大砲の方は冗談じゃ済まなさそうッスけど……」
トリガーをひくと金の弾丸が放たれる。
美しい彫り込み模様の入った球体が敵砲手たちの間へ。スローモーションになった世界の中で、中央線で僅かに開き、互い違いに回転し、毒霧を大量に噴射した。
霧に覆われたローゼンクロス号。
「今ッス――!」
ユウが飛び上がり、リンネやエスラが駆け出し、エマが引きつるように笑い、ローゼンクロス号へと飛び込んでいく。
一方でローゼンクロス号の海賊たちがハンマーや大砲を掴んで飛び込んでくる。
それらが一斉に交差した次の瞬間、船が派手に激突。大きな揺れにそれぞれが近くのものに寄りかかる。
悪夢のような音をたてて船の壁をこすって削り、それぞれの船はすれ違っていく。
相手の船に着地し、ごろんごろんと転がっていくエマ。
大砲で殴りつけようとする海賊の攻撃をかわすように股の下を抜けると、エマは相手の内股をナイフで切り裂いた。
襲撃に慌てないのはさすがに海賊。殺し合いに躊躇しないのも流石に海賊。されど人は人。痛みによろめくも無理はなし。
「えひひ……」
薄暗く笑うエマが、ジャクリーンを見た。
「あのひときわデカい樽見たいな女が『枯れ薔薇』ジャクリーンですね!」
「オ、オイ……!」
先程よろめいた海賊が顔を青くした。
一方のジャクリーンは顔を真っ赤にしていた。羞恥と怒りとその他諸々の暴力的な感情である。
「オイ野郎ども! アタシは誰だ!」
ユウを狙い撃ちにしようとしている海賊が、リンネと押し合いへしあいしていた海賊が、そしてエマの攻撃によろめいていた海賊もまたそれぞれ振り返る。
「「『華麗な薔薇』ジャクリーン様です!!」」
「ああ……それって自称だったのね」
台無しにするように呟くユウ。
「テメェラ全員ぶっ殺す!」
怒りの爆発したジャクリーンが、エマへと襲いかかった。
一方ローレット号。
舵を握ったままのサフィニアに海賊が殴りかかってくる。
ここを離れればコントロールを奪われる。そんな状況をかえって利用して、自分を追い込んだサフィニアは相手の海賊を蹴り飛ばした。
階段を転げ落ちる海賊。
かつての力のほんのちょっとしかでないパワーも、サフィニアにとっては素敵なアトラクションなようだった。
「いやあ、やっぱり弱体化って素晴らしいね! 戦いにもスリルが出て嬉しいよ!」
「戦い終わったらパーティーするんだよね……戦い終わって余裕があったら、何匹か魚を獲っておこうかな」
今からあとのことを考える余裕をあえて見せつつ、エルラは襲ってくる海賊に毒撃を連射。毒針がつきたところでマジックフラワーを発射した。
触手のさきから放った火花に、海賊がよろめく。
その後ろから連続で放たれた。
「なめんな……!」
みつきがロベリアの花を発射。
悪意の霧が周囲に蔓延した。
が、それも一発限り。敵味方が入り交じる状態になればこの手は使えない。
大砲による強引なスイングを転がって回避。頭上を抜けた大砲が船の柱に激突し軽くへこませた。
みつきはそのまま派手に走り、反転しながらマジックロープを発射。
海賊の足首に魔術のロープが絡まった。
船の帆をひっかけて伸ばされたロープをみつきが引けば、逆さになって釣り上げられる。
「パラソルの仇ッス……」
クローネはドンと足を踏みならすと、振った腕から夜色の霧が生まれた。否、生まれたのは大量のコウモリである。
コウモリは吊られた海賊へ群がっていく。
霧を払って背を向けるクローネ。
後ろでコウモリの群れの中から大量の血が吹き上がった。
「さあて……あとで相手の船からいくらかお酒を頂きましょうかね。ちょっとくらいなら……いいッスよね?」
クローネはどこか艶やかに目を細めた。
「こいつ……!」
背後から狙おうと殴りかかる海賊――が、エルラのおこした火花によって弾かれる。
「これが最後だよ」
咄嗟に転がり出た爆弾が爆ぜ、吹き飛ばされるエルラ。一方で自分の爆風で転がった海賊を、サフィニアが船の際でキャッチ。
「お疲れ様。海賊の勉強をして出直しておいでっ」
手すりを乗り越え、海賊を海へと放り投げた。
軍師能力で味方を強化したりヒールオーダーの回復を振りまいたりしていたリンネがジャクリーンの砲撃によって吹き飛ばされた。
船の外、海へと落ちていくリンネを振り返りつつも下がるわけにいかないユウ。
連続で放たれる海賊の砲撃を右へ左へ飛行して回避していく。飛行の軌跡に砕けた氷が散ってきらめいた。
「今ならいけそうね……」
敵味方が入り乱れていた状態ではうまく使えなかったが、今ならきっぱり分かれている。
「いちかばちかやってみるわ。時間を稼いで」
氷の鎖を連続で放ちながら距離をとりはじめるユウ。
逃がすまいと追いかけるジャクリーンを、エスラが組み付いていく。
「今よ!」
船の外にまで飛び出したユウがダイヤモンドダストを発射。
氷の爆発が海賊たちを巻き込んで、一気に彼らを吹き飛ばした。
残るはジャクリーンひとり。
組み付いていたエスラがジャクリーンのでっぷりとした腹に手のひらを押し当て、巨大な魔方陣を足下発生させた。
「悪さで手に入れた財産なんて没収よ。大人しくお縄につきなさい!」
キルザライトの深き闇が、突如としてジャクリーンを飲み込んでいく。
軽く白目を剥いたジャクリーン。
その後ろに回ったエマが人間の急所にあたる部分にナイフを深く差し込んだ。
ナイフを引き抜くエマ。
手を離すエスラ。
海からぷはあと顔を出すリンネ。
彼女を引っ張り上げて息をつくユウ。
振り向けば、海賊たちを捕まえたローレット号がターンして戻ってくるのが見えた。
こうして、『枯れ薔薇』ジャクリーンはとらえられた。
軽く傾いたまま海をすべるローゼンクロス号とローレット号。
海賊たちは船倉庫の端っこに縄をかけて詰め込まれ、奪った財産やらなにやらは回収された。
どのくらい残っているのか確かめるためにみつきがリストを確認し、エルラやリンネが傷を癒やすべく眠り、クローネとエマが日陰で体育座りしてワイングラスで乾杯していた。
「それって返す財産じゃないの?」
「毒味ですよ毒味」
「奪った宝じゃなくて蓄えた食料ッスから」
セーフセーフ、と言いながらチーズを取り出す二人。ユウは肩をすくめた。
「港が見えてきたよ」
ネオフロンティア海洋王国の港が見えてくる。サフィニアが声をあげた。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
あとがき
――mission complete!
――congratulation!
GMコメント
海賊退治オブ海賊退治
OPの説明に加えることはあんまりないのですが、強いていうなら……程度の内容をいくつか書き加えていきますね。
船は一隻まで借りることが出来ます。ですが自前の船アイテムがあればそれを使った方がベターでしょう。海賊船に接触するタイミングで優位をとれる可能性が高くなります。
また、逆にこちらの船に乗り込まれた時にもうまくバランスをとることができるでしょう。
戦闘の流れは大きく分けて前半後半の二つ。
前半は敵船に近づき、銃撃を交わすこと。大砲での攻撃がかなり苛烈なので、味方を庇ったり回復したりと防衛が必要でしょう。こちらから攻撃して敵を減らすのもいいですね。
後半は船を接触・固定させての殴り合い。互いの船に乗り込んで乗り込まれての大乱闘です。
なのでここでは『自船防衛』と『敵船襲撃』の両方に人手を割いてください。4人ずつ半々くらいが普通です。
敵の数はこちらと大体同数。
ジャクリーンは船長ですがちょっぴり部下より強いだけなので人手を多く割くほどのことではありません。でもってジャクリーンの船に残ってPCたちを迎撃します。敵船襲撃チームで協力して戦いましょう。
【アドリブ度】
ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。
Tweet