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シナリオ詳細

天風亜竜フェルグ vs 炎地亜竜ヴルゲーンズ vs ギルオス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 覇竜領域の一角にて争う影があった。
 一つは天風亜竜フェルグ。深き緑の色を身に宿し、暴風を操る亜竜達。
 一つは炎地亜竜ヴルゲーンズ。深き赤の色を身に宿し、業火を操る亜竜達。
 両種族は同じ亜竜の枠組みなれど険悪なる関係であり、顔を合わせれば昔より争っているという……そしてその二つに挟まれている様にしているのが――

「う、うわ――! やめろ、僕を巻き込むな――!!」

 ギルオス・ホリス(p3n000016)だ。
 どうしてこうなっている。どうして! 僕はただ情報屋として、この近辺の地理の調査に来ただけなのに、気付けば己が前方と後方を亜竜らに囲まれてしまっている――!!
 嘆いてももう駄目だ。前方にはヴルゲーンズに威嚇を繰り返すフェルグの群れ。後方には今にも襲い掛からんと闘志を向けているヴルゲーンズの群れ……正に一触即発の空気。
 迂闊に動けばそれが開戦の合図となってしまうだろう。
 ……幸いにしてギルオスには気付いていないのか、彼に視線を向けている亜竜は今の所いないが――しかし一度戦闘が始まれば仮にこのまま気付かれなかったとしても余波ぐらいは襲い掛かってくるだろう。つまりどの道絶体絶命である!! ヤダー!!
「ふぅ、ふぅ……落ち着け、どこかに隠れられる場所はないか……!?」
 周囲に視線を巡らせるギルオス――だが、周囲は残念ながら岩山だ。
 この辺りが、例えば森林などであれば木々の陰に身を隠しながらこっそり進む事も出来たかもしれないが……これでは厳しい。大きな岩の陰に一時潜む事はできても、隠れ潜みながらこの場から離れるルートはなさそうだ。
 では亜竜達の争いが始まったのに乗じてなんとか逃げ出してみるか――?
 しかしそれも簡単ではない。なにせ、此処にいるのは一匹二匹程度の話ではないからだ。
 ……見る限り双方合わせて三十匹は超えている様に見える。
 これらが一斉に戦闘を開始して混戦状態になれば――はたしてどのようになるか。
 逃げるルートの予想は全く付かない。やはり駄目だ。一人ではかなりマズイ――!!
「くぅ! ……いや待てよ、そろそろ合流予定だったイレギュラーズ達が来てくれる筈……!」
 故にこそ。ギルオスの思考に過ったのは――ローレットのメンバーだ。
 覇竜領域が危険な場所というのは分かっていた。だからこそ、流石にギルオスも一人でこの場所を巡ろうなどとは思っていない……本来であれば此処でイレギュラーズと合流し、そして共に調査を行おうと考えていたのだ。
 ただ何故か亜竜達がこのタイミングで群れで移動していて、何故かギルオスを挟んで対峙して、何故か今にも戦いが始まりそうな事態に巻き込まれてしまっただけで――!!
(うおー! 皆ー助けてくれ――!!)
 亜竜らを刺激するといけないので心の中で助けを求める声を叫びながら。
 天風亜竜フェルグ vs 炎地亜竜ヴルゲーンズ vs ギルオス の望まぬ戦いが――始まろうとしていた! いやー!

GMコメント

●依頼達成条件
 ギルオス・ホリスの救出!

●フィールド
 覇竜領域デザストルの一角です。時刻は昼。
 山中の一角で、周囲は岩肌が広がっています。多少大きな岩などがあったりはしますが、常に身を隠し続けながら移動できる様な場所はなさそうです。

 最初、フェルグ・ヴルゲーンズは少し離れた距離を保ちながら、どちらも睨み合い膠着状態にあります。
 暫くすると戦闘が自動的に始まるでしょう……が、それまでは動かないと思われますのでイレギュラーズが先制したり何らかの行動を行う余裕が、多少ですがありそうです。戦場の中心点に思わしき場所にギルオス君がいますので、なんとか助けてあげてください!

●敵戦力
・天風亜竜フェルグ×20匹
 深き緑の色を身に宿し、暴風を操る亜竜達です。
 基本的には空を飛行し続けている種族らしく中々地上付近には降りてきません。翼を大きく羽ばたかせ、激しい暴風を発生させる力があります。これには【飛】の効果があり、更には【乱れ系列】のBSを付与することがある模様です。
 後述の『炎地亜竜ヴルゲーンズ』には激しい敵意を抱いています。

 その他の能力値としては「反応・機動力・神攻」に比較的優れている様です。

・炎地亜竜ヴルゲーンズ×15匹
 深き赤の色を身に宿し、業火を操る亜竜達です。
 空を飛ぶことも出来ますが、基本的には地上にいる種族らしいです。その口からは遠距離まで届く炎を吐き出してきます。これには【怒り】と【火炎系列】のBSを付与することがある模様です。
 先述の『天風亜竜フェルグ』には尋常じゃない闘志を抱いています。

 その他の能力値としては「防技・抵抗・物攻」に比較的優れている様です。

●ギルオス・ホリス(p3n000016)
 ローレットの情報屋です。
 本来はこの周辺の地理の調査を、後からやってくるイレギュラーズと共に行うつもり……だったのですが、何故か亜竜らの群れに挟まれる形になってしまいました。自衛程度の戦闘力は有しているのですが、この数にはとても抗いきれそうにありません。たすけてー!

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 天風亜竜フェルグ vs 炎地亜竜ヴルゲーンズ vs ギルオス完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月28日 23時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
観音打 至東(p3p008495)
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
目的第一
ハリエット(p3p009025)
暖かな記憶
レオナ(p3p010430)
不退転
アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)
ライブキッチン

リプレイ


 ――『情報屋としての仕事には危険が付き纏う』
 ギルオスはかつてそう述べていた事を『今は未だ秘めた想い』ハリエット(p3p009025)は回想するものだ。いつか情報屋としての責務を共にしたい彼女にとって、その言葉は己が心の内に常に覚えていた――が。
「まさかこんなに早くに目の当たりにするなんて、ね……」
「ギルオスさん……亜竜に囲まれるなんて、早い所助けなきゃね」
 何があればこんな事になるのだろうか。ハリエットと共に視線をかの地へと巡らせる『決死行の立役者』ルチア・アフラニア(p3p006865)の疑問は尽きない。が、こんな状況いくら何でも情報屋の手には余ろう、と。救出の為に動き出すものである。
 情報屋でなく戦士であったとしても中々に厳しい状況である――だからこそ。

『ギルオス君詰んだ――――! はい、完ッ!!』

 ……と『suminA mynonA』観音打 至東(p3p008495)は言いたくなるが、流石に心の中に留めるものだ。だって今にも爆発しそうなこの状況だよ? 迂闊に大声なんて出そうものなら如何様に事態が転げまわるか。だから皆慎重に、しんちょーに……

「ウオオオオオオオぎるおすくんウオオオオオオオ! 無事かあああ!!」
「ウオオオオ! 大丈夫カギルオス、今行クゾォオ! プリンガ来タゾ!」
「あ、助けが来……う、わあああ!! 騒がしい人達が来たあああ!!!」

 しんちょーに――『甘いくちどけ』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)と共に突撃するものである! 此処に人が……いやプリンの化身がいると亜竜共に分からせてやるように。目立つ! ぉぉぉ目立つのだ!! 目ダァつ!!
 え? 慎重に冷静に事を進めるんじゃないかって? 冷静に考えたら詰んでるから仕方ないでしょ!! だから至東は冷静に考えるのを止めた。だってメイド道(ウェイ)とは奉仕の心! その心に準ずればやってやれないことはない! ォォォぎるおすぅ!!
「モォォォ大丈夫ダアアア!!
 ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ゛!! ギルオスヲ食ウナラ、オレヲ食エエェイッ!!」
「ほらほら〜こっちよこっち! おし〜りぺんぺん♪ あっかん・べー♪」
 ワイバーンを駆りて空より至る。炎竜達の後方側より。
 敵亜竜らのにらみ合いが続いている間に位置取りは済ませておいた――まずは此方側の陣形を乱してやるのだと一斉攻撃が炸裂するものだ。プリンのカラメル的光刃が炎竜達を穿ち、直後には『竜の祭祀』アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)もまたリトルワイバーンに騎乗し仕掛けゆく。
 挨拶代わりの挑発と一撃を共に。舌をちょっぴり伸ばして炎竜らの注目を浴びんと……さすればハリエットの銃撃やルチアの魔術も強襲する様に放たれるものだ。予期せぬ後方側からの襲撃に敵の動揺が見て取れて。
「ギルオス! そこを動いてはなりませんわよ……今助け出してさしあげますからね!」
「ありがたい言葉だけどなんか目に$マークが浮かんでない? 気のせい?」
 ほほほ気のせいですわよ――! 炎亜竜らの動揺を更に広げるべく『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)もまた介入する。ギルオスの危機! まさかこんなにも絶好のチャンス……げふん。まさかこんなにも悲しい出来事が発生してしまうなんて……!
「なんとしても助け出しましょう――主に私達の輝かしい今夜の為に!!」
「あぁ一気に抜けよう。時間が掛かれば掛かるほど場の混迷は増すばかりだろうからな」
 今夜のお酒、一体何を奢らせようかと思案しながらヴァレーリヤもワイバーンに騎乗しつつ攻撃開始。振るう炎の波はなんだかアルコールの気配が詰まっている気がした――ともあれ『亜竜祓い』レオナ(p3p010430)も救出の為、地を駆けながら往く。
「……しかし何故彼はこのような地に取り残されていたのだろうか。
 あの力量で考えると其処がむしろ難しい所であると思うのだが……」
 同時。レオナは吐息一つ零しつつも――こちらに敵がいると示すのだ。
 炎竜らが反射的に振るう尾の一閃を躱し突き立てる刃が痛みを齎し……そして。
「まったくもー! 覇竜での初依頼だと思ってたら……
 何やってんのギルオスさあああああん!? あわや命の危機だよこんなのー!!」
「ミルヴィかい!? 僕にも予想外なんだよこんなの――!!」
 生じた混乱の真っただ中を『夜に一条』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)が突き進む。
 小さきワイバーンの飛翔が戦場を貫く様に。炎竜らが統制を取り戻す前に辿り着くのだ。
 無論、如何に混乱が広がっていようとこれだけの数がいる状況であれば早々近付くのは難しかったかもしれない。しかしミルヴィは見据えた刹那の隙を逃さず、弾かれた弾丸であるかの如く加速するものだ。
 そして戦場の真っただ中にあるギルオスの手を掴まんとすれ、ば。
「さあ! 一気に離脱するよ! 振り返らないからね――しっかり掴まってて!!」
 再度飛翔する。
 止まってはならない。後ろを振り返れば大量の亜竜による地獄があるのみ!
 ただ只管前だけを往く活力こそが道を切り開くのだと――今、行動が始まった。


 ヴルゲーンズらの混乱は激しいものだった。
 背後に回って隙を窺っている存在など完全に意識の外である。堅い鱗に守られている堅牢型な亜竜達であればこそ早々に壊滅、とはいかないが……先述のミルヴィの突撃が成立する様な隙が出来たのは確かだった。
 ――が。斯様な『戦い』の動きがあれば前方側のフェルグも動き出すもの。
 炎亜竜も人間の事情も関係あるものかとばかりに。
 放たれる風の刃が全てを貫く――!
「くっ――! 流石にそう見逃してはくれない、か! ギルオスさん! 今からちょっと荒っぽくなるかもだけど――ってどこ掴まってんの!? ドスケベ!」
 誤解だ――! ワイバーンのシャールを操り攻勢より逃れんとするミルヴィがギルオスに張り手一つ。が、フェルグ達から逃れるのも簡単にとはいかなかった。なにせ先の加速は一度限りであり帰りは別の話である――
 更にはギルオス分の体重が増えた事もシャールに負担をかけつつあった。
 騎乗すべき技量が巧みであるが故にこそ致命的な一撃は避けているが。空を飛行するのはやはりある程度、地上で行動するのとは勝手が違うものである。更には数多いフェルグらの撃全てを躱すには足りぬ。
「ぎるおすくんばんざーい!! さぁ此処は私にお任せくださいネ!!」
 故にこそ其処へと至るのが至東であった。
 ヴルゲーンズの波を乗り越え彼女はギルオスを庇わんと、地表スレスレを飛翔するミルヴィのワイバーン軌道に合わせて割り込むもの。これは即ち要人警護。彼を無事にこの場から救い出し、連れて帰って自分にご褒美タイムだと!
 己に守護の加護を齎して。固めた防御で敵の攻撃を凌ぎ続けよう――さすれば。
「そうですわ!! ギルオスを救出した後はきっとボーナスタイムが待っていますわ!!
 ねーギルオス。『分かって』おりますわよね? ね? ……ね?」
「え。え? なに? こわいよぉ!!」
 ヴァレーリヤも護衛しつつ道を切り拓かんと亜竜共を薙ぐものだ。
 え? ギルオス、冗談はおやめくださいまし? こんな危険地帯とも言える渦中に来た私達にまさか……まさか、ねぇ?
 不穏なる気配。ヴァレーリヤのきらやかな笑顔が指し示すものは――後で考えよう! 今はとにかく逃げねばと!
「ヴルゲーンズらが混乱から立ち直りつつあるな……
 しかしまだだ。まだ今少しばかり此方の方に注目してもらわねば、な」
「あとはなるべく排除しておきたい所ね~。此処に残ったらどの道、いつか障害となるでしょうし」
 直後。ヴルゲーンズらが繰り出す炎の波を辛うじて躱しながらレオナは懐に飛び込むものだ。奴らの動きを掌握し、完全なる撃を此処に。鱗の下を穿つ様な一閃放てばルフィオーネが周囲の面々の治癒をなすもの。
 ヴルゲーンズの炎に惑わされ余計な怒りを貰わぬ様にと。
 せめてミルヴィの離脱が完遂するまでは乱される訳にはいかぬのだ――
 だからこそ奮戦し続ける。幸いにして初動の奇襲とギルオスに一気に距離を詰めた初動の動きが、既にイレギュラーズ陣営を『後は撤退するのみ』の段階まで進めているのだ。フェルグが動いているとはいえ、どうにかヴルゲーンズ側の囲いを突破出来れば終わりである。
 今回の目的は巻き込まれたギルオスの救助であり敵の殲滅ではないのだから。まぁ……アルフィオーネには離脱には異論ないものの別の、ある『考え』も抱いているが。
 と、その時。ミルヴィらを狙わんと首を傾けたヴルゲーンズの一体が――体勢を崩す。
「……よろけるぐらい、か。威力が低いのは私の力不足。でも、足止めくらいはできる」
 ハリエットだ。研ぎ澄まされた集中が狙撃手としての意識を紡ぎあげる。
 空気の壁を打ち破る一閃を此処に。空舞うあの人に危害は絶対に――加えさせない。
 放たれるソレはヴルゲーンズの足元を抉りて。
「竜ヨ、オレヲ食いニ来イ! 美味イゾ! カラメルトノ境目ガ最高ダゾォォォ!!」
「あんまり前に出すぎないようにね。今度はこっちが挟撃されるなんて事になったら、目も当てられないわ」
 そしてプリンが更に前面へと。『アイアム、マッチョ☆プリン』を自称する謎のプリンはギルオスに齎される不幸をオレが引き受けんと往くのである――! ヴルゲーンズらの注目を積極的に浴びつつ、同時に解放せしプリン・イズ・パゥワァーにて仲間を治癒。
 さすればルチアの行動に謎の活力が満たされるものである――糖分ってすごい。
 ハリエットが転ばせた個体に追い打ちをかける様に光輝の魔術を一つ。
 弾く様にしながら更にプリンとは異なる傷の治癒術を齎し戦線を安定させようか。イレギュラーズの中には斯様に治癒を行える者が多く、亜竜らの混戦に巻き込まれながらも比較的体力の維持が出来ていた。
 ギルオスを助けて、代わりに誰かが倒れる……などとなれば本末転倒。
 皆で帰還するのだと。暴風の力や炎息の吐息を何とか凌ぎつつ――そして。
「見えた……! 突破するよ、ギルオスさん!!」
 遂にミルヴィの眼前に敵の射線も何物も存在しない領域が見つけられたのだった。


「うあああ! 落ちる落ちる落ちる――!」
 ギルオス。必死に掴まりながらも振り落とされぬ様に死力を尽くすものだ。
 前方のヴルゲーンズ。後方のフェルグ。
 数多の攻撃が襲い掛かって来れば無傷とはいかぬが――しかしそれでも。
「『イタリアンプリン』モアルゾォォッォオ!! 硬サガ特徴的ナ新品プリンダ!!
 サァ――コッチヲ向ケェ――!! プリン☆シャイニング☆フラァッシュ!」
 あと一歩なのだとプリンはクラッカーを弾けさせる。
 それは巨大な音。安全確実な仕様であるが故にダメージこそないが、目を向けさせるのにこれほどのモノが他にあろうか――いや己がイタリアンプリン(硬)の魅力には及ばぬとは思うがな!
「さー逃げますよ逃げる逃げる逃げる!!
 脇目も振らず、えいやほらー!! アイタ!! イタタタタ!!
 ちょっと! しつこいんじゃないですかねぇコレ!!」
 そしてプリンが気を引いたのを皮切りに、イレギュラーズ達は総撤退に移るものだ。その中でも至東はメイド裏究極奥義たる『我慢!』を駆使して凌がんとするものである。
 如何に亜竜とはいえ獣は獣。
 殺気や闘志が垂れ流されており攻撃の一手を感じながら直撃を避けんとする。
 彼女は若干天邪鬼であるが故に自らフェルグ側に近付いていた――だからこそ多くの風の暴力に苛まれてはいるが。しかし舐めてはならない……こんな時の為の『観音打三劫流兵法超目録』が彼女に逃げ道を囁く――!
「えーとこういう時は? ん? 最悪の場合はこれで乗り切れ――? 土下座戦法!!」
 くそ、駄目だった!! 獣にそんなモノ通じようものか!! うわー!!
 くっそー! やむを得ずいったーいけど我慢して逃走開始! さすれば。
「どこを見ても敵だらけだな。より取り見取りで何よりだ――しかし、失せてもらおうか」
「皆でちゃんと逃げてこそ、だよね。援護するから少しずつ下がって」
 手数と連携でヴルゲーンズらに相対するレオナもまた気を見て下がり始めるものだ。
 それらを援護するのがハリエットである――上空、ギルオスを連れたミルヴィのワイバーンは彼方にまで飛翔せんとしている。後は己らも撤退出来ればなんとかなるかと……銃撃一つ。集中して一撃一撃を確実に当てて行かんとすれば。
「さぁこれで仕舞ですわ――!! 後は精々お好きに争ってくださいまし!!」
 ヴァレーリヤが全てをぶちのけるが如きメイスの横薙ぎを、此処に。
 全身の膂力を集約させた一撃は正に強烈だ。ヴルゲーンズの巨体ですら打ちのめす。
 そして開けた道があればそこからイレギュラーズ達も走り抜けるものだ。
 ……さすれば追撃の手は、薄い。
 なぜならフェルグ達がいる故。彼らはイレギュラーズの強襲によってがたついているヴルゲーンズらへと殺到する。怨敵滅すべしとばかりに。であればヴルゲーンズらにとっても去り行く人間よりもフェルグへの反撃だ。
 激突する。亜竜の咆哮と闘志が天に轟くほどに聞こえてきて。
「ふぅ、ここまで来ればもう大丈夫かな――ああっ!? 不幸にもギルオスさんがヴルゲーンズの炎により、ギリギリ生き延びたけど錯乱しちゃった! これは元に戻さないと……! ええと、斜め45度の角度から――えいっ!」
「待てミルヴィ、何をする! だからさっきの手はわざとじゃ――ぐぇ!!」
 それこそもう追撃のない証。イレギュラーズの勝利であると落ち着けば、ミルヴィは幾重にも攻撃を受けていて錯乱していた(?)と思われるギルオスに手刀一閃。更にはキュッと締めて優しく清楚に眠らせるものだ……清楚?
 あーなにはともあれちゃんと無事(?)でよかったと。そう思え、ば。
「ギルオスさん、助けに来たよ。怪我とかしてない? ……あれ? 寝てるの?」
「――はっ! うう、いま何かとんでもない事をされたような……ウッ、記憶が……と。ハリエットじゃないか! 助けに来てくれたのかい? すまなかったね、こんな所まで」
「ううん。ギルオスさんが無事なら、それでいいの」
 続けて撤退して来たハリエットがギルオスへと声を掛けるものだ。
 ――正直、彼女は気が気でなかった。
 もしも彼に最悪の事態が起こったら、どうしようかと。
 ……胸に生じた痛みが、彼女の内にずっとあったのだ。
 とても。無視できない、心の棘の様な痛みが。
 だから良かった。自分で助けに来ること出来て――
 本当に。
「いやぁ本当に良かったですわねぇギルオス! だから、ねぇ……とーっても、とー―――っても危ないところを救ってあげた私に。何か言うことがあるのではなくて?」
「え? あ、あぁ、ありがとう……???」
「うんうん御礼は大事ですわよね――それで?」
「えっ?」
 直後。ヴァレーリヤがメイスを片手にギルオスへとにこやかに接近――あっ。この笑顔、さっきの笑顔と一緒だ!
 ――まさか、他人に命がけで戦わせておいて。
「ありがとう、で終わらせるつもりはありませんわよね?」
 ひぃ! ドスの利いた声が、まるで悪魔の如く――この後フリアノンの地酒とされる超希少な酒を山ほど奢らされた挙句四軒ぐらいの酒場を梯子される物語が在るのだが……それはまた別の物語。
「ふむふむ。さてさて~お楽しみタイムは此処からよね~!
 漁夫の利とはまさにこのことね。大漁、大漁〜♪ こんなに獲れるのは中々ないわ♪」
 うふふと。紡ぐのはアルフィオーネだ。
 フェルグとヴルゲーンズの抗争。その後も続いていた様子を暫く安全な距離から観察していたのだが……初動の奇襲が影響しているのかヴルゲーンズ側が劣勢であった。さすればやがてヴルゲーンズが撤退。
 残存のフェルグがそれを追いかけ、戦場には亜竜の肉が残されており。
 アルフィオーネがソレを狙う。苦労して来た甲斐があったものだと。
「ふむふむ……なかなかいけるわね。見た目に反して上品な味わい。
 このもも肉なんてとーっても美味しいわぁ。あ、これも調査よ、ち・ょ・う・さ♪
 この辺りの事を調べるのが元々の目的だったでしょう――? あ、いる?」
「んぐ、もぐもぐ……確かにこれ、美味しいわね。
 でもいつ戻ってくるか知れないから、ある程度の所で目途を付けた方がいいかも」
 遠慮しないで、た〜んと召し上がれ♪ と。アルフィオーネは調理した亜竜の肉をルチアらにもおすすめするものだ。お土産として持って帰れないかとも思考しながら……彼女の吐く炎の吐息で熱は通りてこんがりと。塩を振るだけでも中々いける……けど。ギルオスの救出もなったし仕方ない。ある程度は包んで持って帰るにとどめるとしようか。
「……全く。いつ何時にまた、他者を護るべくの機会が訪れる事か。修練が更に必要だな……」
 そして。帰還する前に一度レオナは戦場の方を振り返るものだ。
 己はまだまだ実力が高められると、思考しながら。
 いつか他者を護る余裕をも抱いた戦士への道のりを――遠く、どこかに見据えながら。

成否

成功

MVP

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥

状態異常

アルフィオーネ・エクリプス・ブランエトワル(p3p010486)[重傷]
ライブキッチン

あとがき

 依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!!
 亜竜に囲まれるという絶体絶命の状況……しかし皆様のおかげでギルオスが助かりました。
 皆さまが来てくれなければどうなっていた事か――本当にありがとうございました!

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