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シナリオ詳細

<Celeste et>金狼と竜児、相並びて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 レリッカの郊外に、重々しい振動が響く。
 薄暗がりの空の下、周囲は稲光の残滓の如き発光を伴って淡く光っている。
 振動音の原因となった二者――尻餅をついた巨大な木偶人形と、それと対峙する老兵、そして亜竜種を思わせるフォルムの女性とは、つまらないものを相手した、と言いたげに息を吐いた。
「一先ず哨戒任務で勘を取り戻し、然る後に探索行を命じる……か。パトリックめ、俺のような老耄(おいぼれ)を頼るようではいよいよ底が知れたな。しかも、貴様のような外様の娘すら口説き落とす始末だ。奴の程度が知れるというもの」
「アナタが強いのは十分に理解できたわ。それとも、この木偶が役者不足過ぎるか。少しビリっとしてリーチが長い以外は普通ね」
 老兵が剣を収め、呆れたような物言いをしつつ女性を見た。深く刻まれた皺は老いによるものというより、鉄火場にあって張り詰め続けた皮膚が過度な肉を拒絶し続け、研ぎ澄まされた年輪を思わせる。女性はといえば、姿かたちは扇情的でこそあれ、仙骨のあたりから伸びる太い尾はその打擲で並の兵士や生物の意識を刈り取る獰猛さを思わせた。なにより、苛烈な存在感を誇る老兵とあって一歩も引かず軽口を述べる辺りで実力の程と胆力が知れる。並ではない、と。
「一体何が……父上? どうしてここに?」
「聞いてませんわよ、どうしてここにおいでですの、カタラニア様……?」
 ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)は呆然と、シャルロッテ・ナックル(p3p009744)は驚きと嫌悪を7:3ぐらいの混ぜ方で。それぞれの知人を見た。
 かたや老兵。『金狼』ヴォルフ・アヒム・ローゼンイスタフはヴィーザルの鎮守としてその身を置き、軽々に領地を離れられぬ立場ではないはずだ。
 かたや女性、『竜人』カタラニア・ローゼット。ラド・バウB級闘士であり、昇格の有力候補の一角たる彼女は、兵隊として戦場に立つ義理はないはずだった。
 何れも、誰かの命令にホイホイついてくる訳がない。ついていくだけの理由に足る事実が、きっとどこかにあるに違いない……と、一同はそう考えた。
「パトリックの要請だ。調査で後れを取るわけにはいかん、とな」
「アタシは強い奴と戦えるって呼びかけに応じたのよね……褒められた理由じゃあないわね」
 と、いうことらしい。どうやら両者ともに『特務大佐』パトリック・アネル麾下、要は『特務派』として来たのだと。そして、レリッカ周辺警戒の折、いきなり起き上がり、襲いかかってきた人形……『セレストアームズ』と遭遇したのだという。
「稼働停止になって久しい姿の割に佳く動く。それに」
 背後から掴みかかろうとしたセレストアームズの一体、その手首から前を鋭く切り落としたヴォルフは、見る間に紫電を纏いつつ再生するそれを見て息を吐いた。
「これで大凡5回めの復帰、延べにして17体ほどは切ったか。切り刻んでも貫いても立ち上がるのは頑健やしぶといという次元ではないが……ベルフラウ、そちらの叢に石を投げよ。何度か『手応え』があるまでな」
「はっ……父上、一体何を」
 ベルフラウはヴォルフの言葉に首を傾げこそすれ、決して彼を裏切らないこと、彼の言葉に誤りがなかったことを思い出す。咄嗟に拾い上げた石が放られた先から、ひときわおおきな電流がほとばしる。
「火のないところに煙は立たん。ならば、不自然な敵には裏があるということだ。想像通り、寝た子を起こすような無粋者がいたわけだ」
 それは鹿やトナカイの姿を継承しつつ、しかし肉体のバランスの悪さと全身を覆う紫電のスパークは脅威性をありありと感じさせた。
 これどころじゃないのだが、と不満がないわけではない。
 現状を整理しないと、ベルフラウもシャルロッテも困惑するばかりで戦う余裕がないのである。


 鉄帝国南部の町ノイスハウゼンの上空に、浮遊島『アーカーシュ』の所在が確認されたのはつい先日のことだ。
 そこに存在するもと鉄帝調査隊の子孫たちの村『レリッカ』を足がかりに、『歯車卿』エフィム・ネストロヴィチ・ベルヴェノフによって立ち上げられた新生調査団としてアーカーシュの調査に赴いた現状であるが、ヴォルフ達はその流れで介入してきたパトリックの部下(という名目)として降り立ったのだという。
 そんな中で偶然起動したセレストアームズは、防衛機構、というだけでは理解しきれぬ耐久性や攻撃特性を持ち合わせていた。
 それが無差別攻撃なんぞでレリッカに到達した日には、少なくない被害が舞い込むだろう。
 なにかの原因があるに違いない――ヴォルフの読みはあたっていたことになる。
「貴様もローゼンイスタフの血を引くのであれば、この場を収めてみせよ。この木偶の足止めは俺達で十分だろうよ」

GMコメント

 鉄帝なのでやっぱり出さないと、ホラ。坐りが悪いところとかありますのでね。

●成功条件
・古代獣『キラウシ』およびサンダーエレメンタルの撃破

●失敗条件
・ヴォルフおよびカタラニアが重めの負傷を負う(但し、相当悠長に延々成功条件を先延ばしにしない限り起こり得ない)

●セレストアームズ(天空機兵)タイプ・プラズマロッド×3
 本来は駆動停止していたものが、キラウシやサンダーエレメンタルにより強制的に動いている状態です。AIは半壊しており手当たり次第に攻撃してきています。
 長射程のロッドにプラズマを纏わせることで受けてもいなしても一定ダメージを与え、痺れで動きを鈍らせる……という設計であり、委細語ると結構強敵感のある個体ではあるのですが、ヴォルフとカタラニアが抑えている状態です。
 OP内でも何度か撃破している様子が窺えますが、すぐに破損箇所を中心につなぎ直し再起動してくるしぶとさを兼ね備えているようです。
 これらの特性は電力供給がなされている間は継続するので、キラウシらを撃破しなければなりません。
 彼等が後れを取る可能性はリプレイ開始時には万に一つもありませんが、時間経過に応じて可能性はじわじわと上がっていきます。
 尤も、失敗に相応する遅延戦になったりキラウシらに後れをとることがなければ拝めない状況ではあるのですが。
 
●キラウシ
 古代獣の一種で鹿やトナカイに類する巨大な角(珪酸塩鉱物で組成されている)を持ち、二足で立つ、上肢(前肢?)が非常に発達した鹿のような生物です。
 上肢、後肢を始めとして非常に高い通電性を有しつつ、高い絶縁性を誇る血管系を持っている様子で、何らかの原理で全身から放電しています。
 常に至近距離に【痺れ系列】を受ける電流を放っており、これにより至近距離で戦闘する際は毎ターン抵抗判定を強いられることとなります。
 また、全ての攻撃に【摩耗(大)】を伴います。
 但し、【必殺】【反動(中)】を伴う攻撃を行った場合、攻撃ターンと次のターンは上記の特性が消失します。その代わり攻撃力が大きく上昇します。
 攻撃は蹄による殴りつけや、蹄跡同士の間に強力な電流を流す攻撃(範・列ないしはラ)、【移】を伴う超単攻撃などを扱います。

●サンダーエレメンタル×15
 キラウシの周囲を飛び回る精霊達。単体でも攻撃を仕掛けてきますが、これらの本領は広がって敵対者を取り囲んだ時。
 3~体で取り囲んだ内部に敵対者がいた場合、【連鎖行動】相当の連携で同時に通電させ、内側の相手に【スプラッシュ(特大)】【恍惚】【麻痺系列】【窒息系列】(威力小~大、取り囲んだ数で変動)の攻撃を放ってきます。
 なお数が多い場合、上記以外の効果が付随する可能性もあります。取り囲んだ場合の最大半径は『域』相当となります。
 単体で攻撃してくる際は様々な電撃系攻撃を行い、精神系BSが付随することが多いようです。

●特殊ルール『新発見命名権』
 浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
 発見者には『命名権』があたえられます。
  ※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
 特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
  ※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
 命名権は放棄してもかまいません。
  ※放棄した場合には、何も起りません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <Celeste et>金狼と竜児、相並びて完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年05月11日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘
恋屍・愛無(p3p007296)
獏馬の夜妖憑き
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
北辰連合派
マッチョ ☆ プリン(p3p008503)
ミニスカ☆プリン
リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)
ワクチン接種済み
シャルロッテ・ナックル(p3p009744)
ラド・バウB級闘士
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ


「わひゃー! 今まで平和だったのに――ってなんかすっごい嫌な感じだけど、とにかくなんとかしないと村が危ない!」
「然り。謎多きこの地に『とこしえの安寧』は有り得ん。それがこの地で時を刻んできた者達であろうと、だ」
 だから直ちに仕留めねばならんと。『青と翠の謡い手』フラン・ヴィラネル(p3p006816)の激しい焦りを含む声に、ヴォルフは静かに、そして端的に応じた。その間も立ち上がったセレストアームズの一体を鞘で打ち据え間合いをとると、待ち構えていたとばかりにカタラニアが飛びかかる。一気呵成といった動きには、一切の淀みがみられない。
「全く、父上は普段女が戦場に立つなど烏滸がましい等と仰る割にこういう時は血を語る。だがしかし、良かろう。父上や弟とは異なるローゼンイスタフの道を我が旗にて見せよう」
「唯我独尊なカタラニア様が此処に来ていた事に始めは驚きましたが、これはワタクシをライバルとして意識してもらえる好機なのでは!?」
 『戦旗の乙女』ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)はヴォルフがこの期に至り、己に『戦いで』役割を強いる姿に驚きがなかったと言えば嘘になる。常々女としての役割を己に強いているというのに。だか、頼られることに否やはない。『ラド・バウC級闘士』シャルロッテ・ナックル(p3p009744)に至ってはより顕著な欲求がある。B級闘士として上位にあるカタラニアに名を売ること、ひいては好敵手と認めさせることも可能ではないか……と。
 尤も、叢から現れた異形と精霊を排除せねば叶わぬ話ではあるのだが。
(あのキラウシとかいう電気トナカイ……プリンの材料として良いのではないか?)
「ウオオオオオ! マッチョハオレ一人デ十分! アイツハプリンニスル!!」
「刺激的な味はしそうだが。喰いでって事なら、あっちの鉄帝組のがありそうだよな。実際な」
「……老人ハマッチョデハナイ……」
 『ビューティープリン』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)(以下プリン)はキラウシを強者(マッチョ)と見做し、プリンとして消費することで己がより強いと証明したい……の、かもしれない。彼に理論的なものごとを求めるものでもないだろうが。他方、興味深げにヴォルフを眺める『獏馬の夜妖憑き』恋屍・愛無(p3p007296)の目の光には強い対抗心と闘争心が漲っていた。されど、今相対すべきはそちらではない。非常に残念だが、見送るしか無い時もある。歯噛みする愛無をよそに、プリンは興味がなさげだった。強いだけでは駄目らしい。
「プリン……でっかい美味しそうな喋るプリンさんがいる!」
「オレハ! マッチョ☆プリン! ダ!!」
 『( ‘ᾥ’ )』リコリス・ウォルハント・ローア(p3p009236)はプリンの姿に凄まじい感銘を受け、目を輝かせてその体に触れようとして即座に手を引いた。ジビエとプリンの頂上決戦というなんとも言えない状況に、彼女は心を乱されそうになり。咄嗟にフードを被る。なにかのスイッチが入ったかのように寡黙になった彼女は、⊂( ‘ᾥ’ )⊃に跨ると戦場から一気に離れ――否、キラウシから距離をとった。
「グルルルルオオオオオオオ!!」
 己の前に立ったプリン、思い通りに動かぬセレストアームズ達。その有様はキラウシにとって不快なものであることは間違いなかった。強く吠え、エレメンタル達へと号令をかける姿は駄々っ子のようにも見える。
「ふふ! 雷撃を操る古代獣か……。面白い。私と君達、どちらの雷撃が上か……勝負!」
「体力もさることながら気力も削ってくる敵か……俺とはなかなか相性が悪いが、これもまたよい修練だ」
 『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)は今や遅しとキラウシに飛びかからん勢いだ。が、己の役割ではないことは十分承知しているからこそ、より興味をそそられるというのもある。
 『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)のようなタイプにとって、エレメンタルは相性最悪だがそうも言ってはいられない。プリンとリコリスの奮闘に報いるため、今ここで成長せねばならぬのだ。
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。さすがにお前たちをこの先の村に通すわけにはいかん」
「こっちだよ、あたしを囲んで倒せるものなら倒してみなー!」
「食事の時間だ。精々食い飽きぬ相手であってほしいものだがな」
 エーレンの名乗りに合わせて、フランと愛無がエレメンタル達を挑発する。エレメンタルに感情などあろうはずもないが、その呼びかけは確実に奏功し、全員が取り囲まれる最悪を阻止する格好となった。
「剣を持て! 声をあげよ! 我らの誇りは此処にある!」
 ベルフラウは朱い旗を掲げ、高らかに宣言する。『旗持ち』と呼びたくばそうすればよい。夫を迎えるだけが役割だなどと思いたくはない。叫び、仲間の前進を支える。もっと前へ、もっと強く、したたかに。


「人為的に引き起こされる落雷というものを見せてあげよう! 天槌裁華ぁ!!!」
 蒼雷状態を発動させたマリアは、フランの側に近付きつつあるエレメンタルに強烈な一撃を見舞う。愛無と比して彼女がか弱いなどということは有りえぬが、さりとて貴重な治癒手だ。不利な状況に置くことは許されない。その気合の顕れか、二度目の雷鳴が響いた時にはさしものヴォルフも呼気がやや鋭くなる。負けてはいられぬという意気込みが伝わってくる。ベルフラウはその空気を敏感に感じ取り、息を呑んだ。
「囲んで一人を、まして多数を貶めるなど惰弱の極み! ワタクシの前でそんなことさせませんことよ!」
「同感だな。戦いは痛めつける為に行うべきではない。高め合ったうえで打倒すべきだ……このように!」
 シャルロッテは所在なげに飛び回り、ターゲットを絞れずにいた個体の間合いに踏み込むと、素早く拳を振るって前進する。動きが乱れたそれを巻き込む形で刃を振るったエーレンは、次なる標的へと刃を傾け、足を撓めた。
「少しでも余裕があれば距離をとって包囲しようとしてくるようだ。一体たりともフリーにはしておけないな」
「ならば、私がやることは一つしかない。そうは思わないか、愛無?」
「異論ないよ。遠慮なく楽しんでくるといい」
 ベルフラウの雄々しい視線と声音に、愛無はおもわず肩を竦めてしまった。二人体勢でも、数が数なら軽々に全ての敵を抑えられるわけではない。マリアは距離を取るスタイルだからいいが、エーレンとシャルロッテはガンガン前に出る近接アタッカーだ。軽々に倒されるタマではないが、それでも無視しちゃいられない。
「――だから、私がここにいる。卿の勇猛果敢さには驚かされる。もう少し近くでその勇姿を見たくなったのでね」
 エレメンタルから放たれた雷撃がシャルロッテに届く寸前、ベルフラウは槍を地面に突き立て、正面からそれを受け止めてみせた。いかなる力の流れがあったか、彼女は無傷だ。焦げ跡ひとつ残っちゃいない。
 そんな姿でその殺し文句なのだから、シャルロッテが一瞬心奪われるのもさもありなん。ついでのように、エーレンに向かった雷を片手で蝿でも払うかのように打ち払った姿は最早並の人間のやることではないのだが……。
「べ、ベルフラウさん大丈夫? すっごく痺れそうだけど!」
「卿の黄色い声に心が痺れてしまったな、フラン」
 慌てて治癒術の準備をするフランであったが、ベルフラウはいつも以上に言語センスが走っているようだった。それだけピンピンしてるということだが、恐らく自らのあり方をアピールしようとしているのもあろうか?
「ジャブ! ジャブ! ジャァァアブ!!」
「キ……!」
 他方、プリンは正面きってキラウシに相対し、至近距離からカラメルを叩きつけに行く。黒い拳はカラメルの色とでもいうのか、連続した拳打はキラウシの視界を奪いにいく。一発一発の速度と精度は兎も角、手数がとにかく多い。プリンを振り払うことは、その巨躯を加味すれば並大抵の相手には困難だろうことが窺える。
 そして、キラウシが思い通りの戦いができない原因……主因は、『プリンではない』。
「もうマーキングは終わってるよ。逃げられると思わないでね」
 フードの下では非常に獰猛な( ‘ᾥ’ )の顔を保ちながら、リコリスは着実にキラウシに銃弾を打ち込んでいた。プリンの派手さで霞んでしまうが、遠距離から一発も外すことなく撃ち込み続け、敵の最も嫌がる動きを率先して行う彼女は間違いなく、狩人のセオリーを踏んでいる。
 派手に動き、自らの巨大さを否応無しにアピールし行く手を阻むプリン。それに紛れて強烈な一撃を絶えず放ち、瞬く間に気力を使い果たそうとするノーフューチャー極まりないリコリス。キラウシの不幸は、汎ゆるイレギュラーズの前座としてこの名状し難い敵が出迎えたことにこそあろうか。
「アナタの娘さん? 面白い仲間に恵まれたものね」
「この血筋の真似事に走ろうと、何れは子を授かる身であろうに。何時までああしているものやら、理解に苦しむ」
 尾でプラズマロッドを絡め取り、本体ごと宙へと持ち上げたカタラニアは、ベルフラウを指差してヴォルフに問う。彼はため息一つ漏らすこと無く、淡々と不満を口にした。そのやり取りの間に、セレストアームズを打ち砕きながら。
「数も三分の一程度まで減った。あとは僕たちのデザアトだ。メーンディッシュは預けるよ」
「あと一息、お付き合いしますわ! ……精霊であっても拳(これ)があれば大丈夫、殴って解決しますわ! セイレイ・ナグル・ボコボコ! セイレイ・ナグル・ボコボコ!!」
 愛無の言葉にあわせ、仲間達はキラウシ討伐へとシフトし……後少しだけといわんばかりにシャルロッテが拳を構え突貫してくる。相当殴り合って気分が高揚しているのか、もう人語と認識することすら怪しい。

「キラウシ君、待たせたね! 約束通りひと勝負といこうか!」
「待テ! キラウシハ、マダコノプリンガ」
「――キィィィェェエエエエェェ!!」
 仲間に先んじてキラウシ側へ向かったマリアを、プリンは制止しようとした。だが、それはあまりに無謀だったと直感する。
 猿叫のごとき咆哮をあげたキラウシがひときわ強く光り、蒼雷をまとったマリアと正面衝突を遂げたのだ。
 キラウシはほぼエネルギーも体力もからっけつの筈で、あとはトドメぐらいだった。それを絞り出してまで、戦っているというのか。それほど……マリアという少女は興奮を覚える好敵手だというのか。
 雷撃から手を伸ばし、雷撃を打ち払い、蒼と黄の電撃が撃ち合い、蒼が先行する。時間にして数十秒の邂逅は、しかし周囲が舌を巻く程度には激闘だったことは、語るまでもないだろう。

 そしてリコリスはフードを脱いだ。慌てるあまり⊂( ‘ᾥ’ )⊃から転げ落ちたそのさまは、先程までの狩人然とした姿からは想像できぬほどに……まあ、アレだった。


「皆お疲れ様! 怪我はないかい? 私は少し辺りを調べてみるよ!」
 マリアはそう言うと仲間達から離れ、セレストアームズの調査へ向かう。先程までの激戦が嘘のようにピンピンしているのは、流石というほかはない。
「たった二人でセレストアームズを抑えていたのか……素晴らしいな」
「思いの外、早かったな。予想外だが、悪くはない」
 なんとか眼前の敵を掃討し、駆け寄った一同の前はほぼ無傷でセレストアームズを抑え続け、しかしほぼ無傷のヴォルフとカタラニアの姿があった。エーレンが舌を巻く姿を見て、ふんと鼻を鳴らしたヴォルフの姿には言葉以上にも言葉いかにも評価していない旨が窺えるか。
「……ねね、ベルパパさん! ベルフラウさんすんごくかっこいいでしょ!」
「ローゼンイスタフの旗を掲げるのであれば、立っていて当然のことだ。それを差し引いても、名を穢さぬよう修練に……否、早々に血を継いでくれた方が幾らか助かろうものだがな」
 フランはヴォルフに駆け寄り、ベルフラウの勇姿を我が事のように胸を張る。イレギュラーズからすれば特筆すべき活躍ぶりだろうが、彼から見れば、未だ遊戯の域を出ぬように思えたのだろうか。
「むー……っ!」
「よせ、フラン。我が事のように私の姿を誇ってくれること、嬉しく思うよ」
「ベルフラウさん……」
 ベルフラウは肩を震わせてぷりぷりと怒るフランを宥め、改めて父を見た。パトリックが如き奸物におもねる人間ではないはずだが、さりとて拾の娘であってもその本心は判じ難し。もしかすれば、思いもよらぬ本心があるのかもしれない。
「見て~~キラウシのお肉! 鹿やトナカイみたいな生き物ってことは焼いたら絶対美味しいやつだよね!」
「ああ、結構な量だ。一人ふたりで食すには骨な量だな。皆は食うかね?」
「ウオオオオオオ!! キラウシノプリン!」
 リコリスはフードを脱ぎ、先程までの冷静さが嘘のようにアホの子の顔になっていた。プリンとキラウシの肉とに死線を往復させているあたり、プリンにすら食いつきそうな勢いを感じる。愛無はすでにそれの解体を試み始め、プリンは新たなプリン(食べ物)の創出を既に脳内ではじき出そうとしていた。どうあっても失敗しかみえない。
「味が気になりますわ! バクバクですわ!!」
「俺も気になるな。相伴に与りたい」
 先程まで戦った相手とて、ベースは鹿のたぐいである。シャルロッテやエーレンとて興味がないといえば嘘になる。
「マリアさんが戻ってくるまで時間がありそうだし、お肉を食べるにしても何か味付けが必要だよね……? あっ、っと、っと……!」
 フランは多少のわだかまりがありつつも父娘が語り合う機会を無下にさせたくはないので、怒りを発散させるため散策に向かっていた。彼女には家を繋ぐために自由を奪おうとするヴォルフの考えは相容れない。だが、それに対して旗を振り、ここにありと叫ぶベルフラウの姿は非常に美しいと思う。せめてなにかしてあげられれば、とあたりを見回していたフランは、セレストアームズの残骸に蹴躓いて盛大にずっこけた。辛うじて頭は守っていたが、勢いが良かったので少し痛い。
「痛、ったた……ん? んんん? なんだろうこれ、光ってる……?」
 そこで、フランは燐光を放つ草を見た。カタバミのような小さい草だが、まるで電気が通っているかのようだ。触れても危険はなさそうで、導かれるように彼女はそれを摘み、口に放り込んだ。
 悲鳴。
「どうしたんだいフラン君!? なにか悪いものでも食べちゃったのかい?」
「それとも、餓狼の気にでも中てられたか。食いでのありそうな御仁だ、側にいるだけでも食傷気味に……」
「ちがうの! すごいんだよ、これ!」
 その悲鳴に慌てて戻ってきたマリアと(ちょっと口惜しげにヴォルフを見る)愛無を前に、フランはちょっとだけ涙目で呂律がちょっと回ってない。ないが、指さした草が「すごい」のは分かる。
「ビリビリするけど凄く……凄く美味しい! お肉にいいんじゃないかな?」
「キラウシの影響かな? それともこれを食べてキラウシが成長したのかな……?」
「卵か鶏かの話のようだな。何れにせよ新種であることには違いないか」
 なお、彼女らの話題にかぶりつかんばかりに視線を送っているカタラニアの姿に、なんだか負けた気がしてしまうシャルロッテである。
「ウオオオオオオオ! キラウシガ焼ケタゾッ!」
「デザ……プリンさんも居るし、美味しく食べられそうだね!」
 プリンが高々とキラウシの肉を掲げる姿を、リコリスは涎を垂らしながら見守っている。
 お楽しみは、これからのようだ。

成否

成功

MVP

フラン・ヴィラネル(p3p006816)
ノームの愛娘

状態異常

なし

あとがき

 ひかる くさ を みつけた!

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