シナリオ詳細
<Celeste et>プ~ン、ピトッ、チクッ、チュー(※蚊)
オープニング
●蚊が倒せない
――その日、貴方は就寝に付いていた。
ぐっすりだ。昼間に沢山運動をして疲れたか、それとも純粋におねむだったか。
まぁ何でも良い。快眠が取れているのなら、それで十分だろう。
むにゃむにゃと……良い夢も見ながら睡眠を楽しんでいて――しかし。
「う、うぅん……? 体が、痒い……?」
異変が起こる。己が身に。
何か妙だと気付いた時にはもう遅かった――
首筋の裏が痒い。指先を伸ばして触れてみれば、なんだかちょっと膨らんでいて痒い。
なんだ? この痒み……知っているぞ?
寝ぼけているが記憶の片隅に確かにあると思っていれ――ば。
直後に聞こえてくるは羽音。
其は甲高き不吉なる象徴。
人の大敵。ああ遂にそんな季節が来たかと思えば――!
「――あああああ!! 蚊がいる――っ!!」
地獄の闘争の始まりであった。
●
翌朝。
レリッカ村近くの小川では、発見された新種の鮠(ハヤ)であるエリザベスアンガス正純が穏やかに泳いでいる――おぉ目を凝らしてみれば、彼方には最近名付けられたタワーオブ夢心地の影も見えるではないか。陽光が降り注ぐ良い天気だ……が。
「う、うぅ……結局一睡もできなかった……」
貴方のコンディションは最悪であった。
結局蚊との闘争には決着が付かなかったのだ――部屋に灯りを付け探せども姿は見えず。どこぞへ行ったかと灯りを消してみれば……しかし確実に音がするし、頬辺りに接触してくる様な感触も多々。
都度に追撃。灯りを付けて周囲確認。けれどいなくて――と。
繰り返していればいつの間にか朝日が! うーん良い天気だ、くそう!!
「ほっほ。さては貴方達も『奴』の餌食になったのですかな――?」
「……『奴』?」
「蚊ですよ。まぁあまりにも速度が素早過ぎて、誰も見たことはないんですがの……」
蚊にやられてしまった部分を掻いていれば、声を掛けてきたのはレリッカ村の住民だ。
なんでも彼の話によれば、この辺りには尋常ではない速度と隠密性能を持つ蚊が毎年現れるのだという――まぁそれ以外は別に至って普通の蚊であり、伝染病とかを媒介したりはしない為、そこまで危険視はされていないのだが……
しかしあまりの速度が故に誰も目にしたことがなく、倒せた事もないという。
「……もしかすれば外の貴方達であれば『奴』を倒せるのかもしれませんな」
「くそ、このまま負けっぱなしも癪だ……! いっちょ倒してみるか!!」
奴らは夜になると頻繁に出てくるという……どこから侵入するのか分からないが、いつの間にか部屋の中に侵入を果たせる性能があるそうだ。故に、適当に部屋で時間を潰していたりすれば勝手に出てくるだろう――後はそこで死闘を繰り広げるのみ!
まぁ蚊との死闘も大事だが、折角にも噂の浮遊島……その一角、レリッカ村に来ているのだ。
昼の時間を使って周囲を散策してみるのもいいかもしれない。もしかしたら未知の動物や、植物、その他なんらかの遺物などに出会える可能性もあるだろう。或いは蚊を殲滅してから散策するのも一興か。
まぁなにはともあれ――モスキート・バトル。開催である!
- <Celeste et>プ~ン、ピトッ、チクッ、チュー(※蚊)完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2022年04月30日 23時25分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
ぷ~ん。あぁその音を聞くたびに芽生える感情がある――
「あああああ許すまじっす! 昨日の夜からぷんぷんぷんぷん!
何様のつもりっすか! 絶対許さないっす! 絶対にッッッ!」
「くっそー! 蚊のやろう! オイラ達の安眠を邪魔しやがってー! 一匹残らず駆逐してやる!! みてろよみてろよ――あああ痒いんだ、くっそ――!!」
恋ではない。殺意だ。
昨晩、散々蚊にやられた『赤々靴』レッド・ミハリル・アストルフォーン(p3p000395)や『鮪導弾』ワモン・C・デルモンテ(p3p007195)は体のあちこちを掻き掻きしている――なんか、こう……レッドは胸の内に憤怒の感情が渦巻いているのを自覚する程だ。
「こんにゃろあの蚊め、けっきょく夜寝られなかったよ……うう。しかも、最後の最後についでとばかりに鼻の頭なんか刺されたもんだ……ふっくらしてるじゃん!」
そして被害を受けたのは二人だけではない――『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)なんて首から上は生身……つまり顔に集中してしまうぐらいなのだから!
「だけど今日は負けないぞ! 今夜は蚊を退治してぐっすり寝たいからね……! だからまずは――なぁなぁオイラ見てのとおり蚊に刺されちゃってさ、なにかこういうのに効くものとか知らないかな?」
「ん。ああ坊主、奴らにやられちまったのか? それなら確かこっちの方に痒み止めの薬草が……」
「へー! なんかヨモギみたいな形してるんだ!」
「鎮痛作用のする薬草っすか! それボクも! ボクも欲しいっす!!」
レリッカ村で聞き込みを行うチャロロ――夜になるまでに対策を立てるのだと、虫刺されに効きそうな代物を探すものである。どうせ夜になったらまた刺されまくるのだ……少しでも抑える術があればと、切なる願いと共に……!
さすればレッドも探して採って患部にぬりぬり。
「後は――奴の囮にでない人は夜の前に川でよく足を洗って清潔にしとくっすよ。練達の研究者論文によると蚊は長くは宙に飛んで居らず、壁に張り付き隙を窺うそみたいっすから」
そして彼女は早速宿泊場にて決戦の備えに取り掛かるものだ。宿泊場所の壁に隙間なく粘着糊ペタペタ……ふふこれに引っ掛かって少しでも減るのなら御の字だと。
「まぁ。あちらも生き残り、種を存続しようと命を賭して挑んでくる小さき戦士という事か……うむ。その意気やあっぱれ。ならばこちらも全力で相対するべきであろうな――」
そして『善なる饂飩屋台』御子神・天狐(p3p009798)は想う。
蚊にも蚊なりの事情があろうと――奴らの行為は生きる為。つまりは……
「生存戦略という事か――宜しい! ならばいざ、互いの生存戦略を始めようぞ!
手は抜かぬ! 奴らが寄り付かぬ香草などがあるやもしれぬ。
まずはそれらを片っ端から集めるとするか……!」
故にこそ夜に向けて準備を進める。使えそうな代物を掻き集めるもの……
特に狙い目なのは清涼感のある香り――例えばミントやバジルなど――そういった香草がないかと。所謂、虫が苦手な香りという訳だ。聞いたところによれば基本、人間以外には刺激が強く毒だという……
草木をかき分け茂みの中を探し続ける。
虫が寄り付いていないモノがないか――彼女の料理人としての勘を働かせながら――! えっ、食べるのかって? ハーブやアロマは時として料理のアクセントに使われる事もあるのだからおかしくない!
「あああああ!
プーンプーンうるさいんだよ! 痒いし眠れなかったじゃないか!
く、くそう! まだ蚊の羽音が聞こえてくる気がするよ……!」
同時。やや眠げな表情でいるのは『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)だ。
蚊も一つの命……一時は見逃してあげようと思ったけど如何に寛大なマリアでもこれだけの痒み、許す事はもう出来ない! 虎の怒りを思い知らせてやるよ! がおがお!!
「でもとりあえず蚊が出てくるのは夜なんだよね? ならちょっとだけゆっくりしておこうかなぁ……あっ! あれが噂のエリザベスアンガス正純かい!? ふふ! これは上手く調理すればマリ屋の新メニューにもなりそうだね……!」
「うおー川があるじゃねーか! 気持ちよさそうだな、ちょっと泳いでみるぜー!」
それでもお昼の蚊が出てこない時間にはのんびりと。
周囲を散策していれば川の中に見えるエリザベスアンガス正純――ピーンと、CEOの勘に来たマリアは早速吊り上げ素揚げにしてみた。うーん、美味しい! 正純君、美味じゃないか!
川の水質も良さそうだからか思わずワモンが飛び込むものだ。ふっふっふ。じっとしてるとまた寝ちまいそうだからな! 水しぶきを上げながらエリザベスアンガス正純達と戯れており――
「うーん、そうだなぁ……メニュー名は『正純が焼くエリザベスアンガス正純の正純焼き』だ!! これは売れるぞ~!! 後は、そうだなぁ……四六時中虹を撒き散らしてる可愛い生物とかいないかな……はぁ、ヴァリューシャぁ……」
『ハァ、ヴァリューシャァ……』
その時。『んっ?』と。穏やかであるが、己が愛しき存在が隣に居ないのを嘆いたマリアが吐息を零した――正にその瞬間。己が隣からなんだか声がして振り向けば。
「……わぁ!!? なんだい君、オウムかな!!?」
『ナンダイ君、オウムカナ!!?』
そこにはちょっと大きめのオウムらしき鳥がいた。
己が言葉を繰り返してくる。はっ! なんだか体が虹色の様な……! ねぇ君もしかして虹を吐いたりとか――あっ、逃げた!
「待て~! ヴァリューシャのお土産にするんだ~!」
エリザベスアンガス正純を咥えたドラネコがオウムを追いかける。あのオウムが虹を吐くかまでは分からないが――不思議な新生物もいるものだなぁと、マリアは想うのであった。
「……のぉ地上の蚊よりも早い飛翔速度と隠密性能を宿している普通の蚊……
いや、それ、普通の蚊じゃなくね? 新種か何かなのでは??」
「くわれることなら 得意なわたしも さすがに その『くわれ』かたは 想定外ですの!! ううっ 地上は…… いえ天空は、やはり とんでもない所ですの ……!」
ふと思ったんじゃが、魚って蚊を食べる側じゃね――? そんな事を樹龍(p3p010398)
は蚊の脅威に恐れ戦いている『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)へと告げるものだ。魚とはいえ 蚊が主食かは 話が別ですの!
「とにかく 今の内に かれらが入れないような川を 探しておきますの。
ワモンさんが 泳いでる川でも 良さそうですが 他にもないか……
流れてさえいれば 寄生虫の心配も ありませんの」
「ハハハ。まぁ、いざとなれば儂に任せておくが良いぞ! アーカーシュに降り立った、絢爛にして傾国たる儂がぁ〜? 蚊なんぞまるっと、ばりっと、さらっと、退治してやる! あっ、ついでにボウフラ対策にメダカでもぶち込んでやるかの~!」
昨日の夜だってぐっすりじゃったしの――ハハハ!
その時の樹龍の顔は希望に満ち溢れていた。
そう――この時の樹龍は、とっても元気であったのだ……
●いざや決戦
ぐがー……zzz……ぷぴー……ぐごごご……(ぷぃーん)
ぐが……むぐむぐ……(ぺちぺち)
ぐごー(ぷぃーんぷぃーん)
ふがふが(ぺちぺち)
(ぷぃーんぷぃーんぷぃーん。ぷぷぷぷ~ん)
「あああああ――! 来やがったなこんチクショウ! 逃がさねぇぞおらー!」
そして遂に来た――夜。
お昼にはしゃいでちょっと疲れて眠ってしまってたワモンが飛び起きる……
そう。なぜなら『奴ら』の襲撃が始まったのだから!
であれば時間だ、決戦の時が来た、と。
『Safety device』ヨハン=レーム(p3p001117)は闘志と共に――松明に火を灯して。
「キエエエエ――――ッ! 怨敵必滅、色物よ滅びろッ――!!」
そして彼はキレていた。それはもうブチギレていた。
なんでだよ! ふざ、ふざけるな! なんで僕には心躍る冒険や強敵でなくこんな色物との戦いが待ってるんだよ! 普通さぁ神秘溢れる遺跡とか、眠っていた古代兵器とかと戦う展開じゃないのぉ!!?
「もう怒ったぞこの未開の地め。アーカーシュを火の海にする。
――いや、火の海は言いすぎたがこいつらは絶対に許さん。
神の火を知るがいい!! 燃えろオラァ!! 死ね!!」
彼は松明を頭に二本。手に一本ずつ。そして尻尾で一つ――
これぞ後にアーカーシュに伝わる伝説の『五剣戦士』の姿の始まりであった――振るう一閃はまるで光り輝く剣の様に。ぶぉんぶぉん! くらえヨハンファイヤ――! これが浄化の炎だ!
「悪いが虎は蚊を相手にも全力を尽くす生物!!
決して手は抜かないよ……! ヨハン君が神の火を使うなら、私は裁きの雷だ!」
「ふははは! 撃て撃てー! オイラのガトリングがうなるぜうなるぜー!
今宵のオイラのガトリングは蚊に飢えてるぜ――!!」
更に続けざまマリアやワモンも往く――! マリアは蚊を相手に全力全開。
死闘の際に繰り出す蒼雷状態へと至り天を操る化身と化すのだ。そして落とすは雷撃一閃。天災に近しい破壊の閃光が、ヨハンの炎と共に奴らへ。続けざまにワモンのガトリングの嵐も振るわれれば、ハハハ蚊がゴミの様……
だと思った――が。
「な、なにぃ!!? これを……躱すだと!!?」
「そ、そんな馬鹿な――!! 無数に落ちる雷撃の嵐を……全て!?」
ヨハンの剣撃(松明ソード)――マリアの超速の雷撃――それらを全て、なんと蚊は躱していた! 嘘だろ!? 信じられない! 掠る事すら許さず、回避しているというのか――!?
速いの何なの? バカか?? テメェら正々堂々と松明と戦え!!
「そんな戦い方はなぁ……闘争、暴力に失礼なんだよ!!
ぶつかり合えよぉ!! くらえこのアホどもがーっ!! 地べた這いずれやぁああ!!」
――しかし! それならそうでとヨハンは聖銃を抜く!
放つ一閃は必中の如く。空へと放つ全てが小さき蚊であろうと穿つものだ――!
「さぁ来い駆逐してやるぞ!! いざやこの時の為に備えた叡智を喰らうがいい――!」
そして続くのは天狐だ。お前達の生きる渇望……受け止めてやろうぞ!
彼女がこの時までに備えたのは、集めたハーブらをすり潰し、服などへの香り付け。
――今や彼女からは独特なる香りが漂っていた。人の身からすれば少し特徴的な――ミントに近い様な、清涼感のある程度だが。蚊の様な存在からすれば耐えがたき程の気配を醸し出している事であろう……!
『――――!』
「むっ。それでも来るというのか……! ならばこちらも付き合おうではないか!
手は抜かぬぞ。それこそが礼儀! それこそが――生死を賭けた闘争なのだから!
安らかな夜の平穏の為に儚く散るが良い!」
が。この地に根差す蚊として負けてはられぬのか、挑んでくる個体も幾つか。
故に斯様な存在達には敬意をもって――超速の体当たりを放つものだ。それは走り屋としての上級デリバリー奥義……通称ひき逃げアタック! 蚊も迅速なる動きをもってして躱さんとするが――当たれば粉微塵も残さぬわぁ!
「うわーん! 大量の蚊が寄ってくるんじゃけどー!?
もはや雲みたいな量なんじゃけどー!? こんなの災害じゃろ――!!」
と、その時。彼方から叫ぶ声が聞こえてきたと思えば――樹龍だ!
闇夜より出でる彼女の背後には……ひぇ、めっちゃ蚊が――!
昼間の余裕は何処へ行ったのか。しかも見てみればなんかやたらムキムキマッチョな蚊も混じってる! やだー! 鎧を貫通してきそうなアレなんじゃああー!?
彼女は想起する。ああ、思い描いていた未来はこんな感じではないと――!
――ハーハッハッハ! 無駄無駄無駄ァ~! 蚊が刺した痛みなんぞ感じんの~!
そんな感じでサイキョーたる儂が余裕綽々一網打尽にする気だったのに~!
「助けてくれイレギュラーズ!! 助けて――! あ、儂もイレギュラーズじゃった!!」
「よーし! なら、さあ! どこからでも掛かってこいっす! モスキートぉお!
ボクは此処っす! 逃げも隠れもしないっすよおおおおお!」
「え、えーと……吸えるもんなら吸ってみろ!! オイラ、今夜はまけないぞー!」
さすれば合流したのはレッドにチャロロである。
村の周囲から苦情が来てはまずい――故に声は抑えつつもレッドは樹龍が涙ながらに引き連れている蚊共を更に誘導せんとする。
「一族徒党根絶やしにしてくれるっす……! くらえ!
これがボクの肉を吸わせて蚊を潰す戦法――っす!!」
さすれば――己に近付いてきた蚊達を、邪悪を払う光にて一気に殲滅せん――! うぉぉぉ全て余さず光で呑み込んでしまえば躱す余地もあるまい!! って、ぎゃ――!! 一瞬の隙を突いた蚊が、蚊がめっちゃ来る――!!
「ううっ! でも、どうせ完全に吸われないのなんて難しいんだ……!
なら、オイラごとやるんだ――! 今がチャンスだ――!!」
「そうっす!! ボクに寄り付く奴をボクごと吹き飛ばしてしまえーっす!」
「うぉぉぉぉ! その雄姿、しかと見届けたぜ――! 喰らえ蚊共、アザラシを舐めるなー!」
滅茶滅茶吸われて涙目のレッドと共に、しかしチャロロもまた諦めない!
自らの身を犠牲に、ワモンのガトリングをあえて受ける様に一掃していくものだ! そして己ら自身も引き付けた一匹一匹を確実に潰していく。吸う瞬間には動きが鈍ろう、と……くっ、しかしやっぱり痒みがすごい!
ある意味攻撃の痛みの方がマシに思えてくる程だ――! ああ~~!
――と、その時。
ノリアは見た。蚊達が……チャロロの宿す反射の力で弱っているのを! 確実に当たる力こそやはり正義――! まぁ厳密には蚊達が与えるダメージはかなり小さいので、成果が出るのにも時間が掛かりそうだ、が。
「こうなったら わたしも 覚悟を決めるしか ありませんの……!」
しかし。意を決してノリアもまた――往くものだ。
見つけていた川より出でて仲間に降り注がせるのは、まるで大海の抱擁が如き力。大いなる力が皆を満たしていく。反射の力が蚊を穿ち貫いていけば激しい応酬が繰り広げられるものだ……!
「ウォォォォ! 退くな! ここで退けば一生蚊の下だぞ!!
振るい立て! こんなダボ共に負けるんじゃねぇ――! 誇りが掛かってんぞ――!」
「えっ、なんじゃ、あの量のたいまつ……怖っ……可愛い顔して割とやるもんじゃの……あの猫……もうちょっとおしとやかに戦うタイプかと思っとったわ……見かけによらんの」
そして全体の戦況はより苛烈を極めていく――!
渦中。尤も激しき箇所で松明を振り続けるヨハンは、決して負けられなかった。立ち続ける。幾ら喰われようとも、奴らにだけは絶対に膝を着くものかと……かゆみを払う号令をもってして味方を鼓舞する――! まぁそれでも痒いものは痒いんだけど。
さすれば樹龍はその雄姿を見てドン引く様な、感嘆する様な複雑な吐息を零しつつ。
「この! この! ひーキリがないよー! うわ、痒い痒い痒い!」
「慈悲も掛けるな情けも掛けるな! 如何に奴らとて無限ではあるまい!!」
さすればマリアや天狐も戦い続けるものだ――が。やはりこれだけ数が多いと流石に蚊にやられる場所も増えてくるものである……ドリームシアターによる幻影も、実体がないからか、蚊達はやがて躱して本物のマリアに寄ってくる有り様!
「ぐわー! 刺された! いつの間に?! くそ! 来るんじゃねぇ!
来るんじゃねぇよお前ら! あ、あああ――! こうなったら、最終奥義!
アザラシローリングプレスだ!」
そしてガトリングを放ち続けていたワモンだが、弾切れの刹那に急接近された蚊に痒みを伴い始める。ならばと、こんなこともあろうかと……持ち込んでいた糊を使ってゴロゴロして潰してやらぁあ!
あっ。すごいベタベタする! 草が凄く付く! ちっくしょー!
だけど潰せてはいる。動けなくなった蚊達を次々と……そして
「……あの よくかんがえたら 一匹一匹相手にしなくても……
蚊がテントに 集まった所を 出口を閉じて
一掃してしまえば いいのではないでしょうか……!」
と、瞬間――言を紡いだのはノリアだ。成程! 囮テントを一つ用意して始末する戦法か! 中が水に溢れようと海神の加護も与えれば水中で呼吸するにも問題ないのだから。
故に――実行する。最早蚊との混戦であり、前衛も後衛もあったものではないのだ!
一か所に集まり、蚊を収束させ――そして!
「野郎ォォォォぶっころしてやらぁあっす!」
レッド。遂にブチギレながら最後の力を振り絞るもの。両手を上下に構え挟み叩く確殺率高い叩き法でシメ始める! 逃すかぁ! 他の面々も一斉射撃! 用意していたテントの中にある光に寄り集まる蚊達は、反射の力で弱っていた事もあり……
とうとう一網打尽にされるものだ。
戦いは終わった――色んな意味で、あまりにも辛く苦しい戦いであった――
「はぁはぁ、もう顔面ボッコボコだよ……うう、カユイ……皆もいる? 痒み止め……」
さすれば待望のチャロロのかゆみ止めが配られるもの。
塗りながら、もう蚊の相手はこりごりだぜー……と思うのはワモンであり。
「水の中までは蚊もこねーだろうし、湖でも行って昼寝してくるぜー……」
「はぁ、はぁ…… 陸は 本当に 大変ですの……」
安堵の息を零すノリア。ああ、全く。体中が痒いものである……
そして後日。
「おーい! 珍しい蚊を持ってきたぞ! 見るのじゃ見るのじゃ――うわっ!」
樹龍が、虫かごに入れて例の蚊をローレットで見せびらかさんとした。
が。偶然にも躓いてしまった彼女が虫かごを地に落としてしまい……
同時。箱が開けば蚊が飛び出る――! うわー! もう回収不能だ――!
あの恐ろしい蚊が地上へと解き放たれた――瞬間であったとか。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
依頼、お疲れさまでしたイレギュラーズ!!
蚊はね、アレですよね……毎年の怨敵ですよね……
アーカーシュにもいるのでしょう。奴の名は――はたして。
ありがとうございました!
GMコメント
昨日蚊が出てきたんですが、私は蚊を倒せませんでした。くそう!!
ちなみに虫に刺されたりすることを『喰われる(噛まれる)』って言いますよね? 私は喰われる派でした。貴方はどっちで……えっ、それは方言? そんなばかなー!
●依頼(?)達成条件
憎き蚊の殲滅!!!!!
●フィールド・シチュエーション
貴方はレリッカ村に訪れていました。
が、その一角で野宿していると――蚊が現れたのです!
奴らとの死闘には決着が付きませんでした……凄まじい速度で逃げるからです。
しかしやられっぱなしではいられません。奴らと、再戦しましょう。
奴らは夜になると活発的になるそうです。なので昼の内は準備したり、或いは純粋にレリッカ村の周辺を探索して見てもいいでしょう。何か新しい動物や植物、その他遺物などを発見出来たりするかもしれません。
●蚊×??匹
蚊です。別に魔物とかじゃなくて普通の蚊です。ただレリッカ村の近くにだけいる種類なのだとか――ですが地上の蚊よりも早い飛翔速度と隠密性能を宿している様です。
一瞬でも目を逸らせばいつの間にか消えるッッッ!!
しかし感じる!!! 耳では奴らの羽音が!!!!!
攻撃を躱し、探知する術を躱し、チクッとしてくる……中々の強敵です……!
……奴らは夜になるといつの間にか周囲に現れます。レリッカ村の一室を借りたり、或いはテントなど張って待機していればやがて出会える事でしょう――倒してください。ええ必ず! 憎き奴らめを――!
ちなみに蚊取り線香とかには謎の耐性があり、結構強いそうです(全く効かない訳ではないとか)。なので基本的には叩いて潰す事になるのが主体になるかと思われます。
●特殊ルール『新発見命名権』
浮遊島アーカーシュシナリオ<Celeste et>では、新たな動植物、森や湖に遺跡、魔物等を発見出来ることがあります。
発見者には『命名権』があたえられます。
※命名は公序良俗等の観点からマスタリングされる場合があります。
特に名前を決めない場合は、発見者にちなんだ名が冠されます。
※ユリーカ草、リーヌシュカの実など。
命名権は放棄してもかまいません。
※放棄した場合には、何も起りません。
●情報精度
この依頼の情報精度はAです。
絶対に蚊は近くにいます。よろしくお願いします!!
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