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シナリオ詳細

紳士の下穿きは風に揺れる

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●イレギュラーズ達、雪国へ
「やぁ、皆。調子はどうだい?最近天義や鉄帝からもお誘いが来るようになって、それに合わせるかのように各国に現れだした魔種……夏祭りが終わったばかりだっていうのに忙しないね」
『黒猫の』ショウ(p3n000005)がイレギュラーズを労うように声をかける。
「今回はその鉄帝からお呼び出しがかかったよ、依頼主は鉄帝に済む一人の男性なんだけれど。自社の工場を守ってほしいそうだ。どうやらあちこちで恨みを買っているらしい、ある貴族がその工場を潰そうと、傭兵を雇って攻めに来る事を事前に察知したらしい……なんでかわからないけれど、その企業は前々から理不尽に恨まれやすいようでね」
 一切心当たりが無いけど、とわざとらしくショウが付け加える。

「とにかく、『めっちゃ強いやつを集めてきて来れ』って依頼内容だから、これくらいしか説明がないんだ、実に鉄帝らしくていいね」

 依頼内容は至ってシンプル。工場を守りつつ、傭兵を追い払う。最も鉄帝の地では「力ずくで追い払う」事が一番大変なわけだが。
 おそらくではあるが、傭兵達は工場を攻撃する為の貫通手段を用意してくるだろう。一歩たりとも近づけない、あるいは守り抜く等の工夫が必要だ。

「それと、これは別件で仕入れた情報だけど……依頼主は相当自社製品を護る意識が高い人達だ。ある程度援護はしてくれるだろうけど、その戦力はあまり期待しないほうがいいかもね」

 まあ、難しいことは考えないで要はとにかく戦って追い払えばいいよ、そうショウは笑い、イレギュラーズ達を送り出した。

●鉄帝のとある町中にて
「はっはっはっ! やはりカースド武器は最高だな! 火力が違う!」
 夏だと言うのに降りしきる雪の中、やかましく蒸気を吹き上げる鉄騎種の大男が腕組みをして高笑いをあげている。
 その男は『おっさん印の靴下工場』――バクチー。
「部下達が心配するから一応『ローレット』なる所に相談を持ちかけてみたが……何! これなら問題ないな!」
「ほんとうに大丈夫ですか? おやっさん」
 高笑いをする工場長に、おっさんの一人が心配そうに声を掛けるも、お構いなしに笑い飛ばす。
「ははは! 問題は無用だ! 今回はかわい子ちゃん達と違ってむさ苦しい男達だからな! 絶対に負けんよ!」
 そんな工場長を敬愛する部下のおっさんたちは、「大丈夫かなあ……」と不安そうにそれを見守るのであった――

GMコメント

 どうも、塩魔法使いです。
 靴下の次はぱんつです。とはいえ鉄帝依頼なので筋肉で解決することになりますが。

●依頼内容
・『工場』の護衛
・敵の撃破

●場所
 ゼシュテル鉄帝国、通称『鉄帝』のとある町外れとなります。
 国土の大半が厳しい気候に晒されるこの国はまさに『力』こそが全てです。脳筋っていうな。

●敵
『傭兵』×10
 手慣れの傭兵です。厳つい武士の様な見た目で、野太刀、長槍、弓、火縄銃といった不可思議な武器で連携を取って攻撃してきます。
 ランク3相当までの攻撃と、『貫通』属性を持った攻撃を繰り出し、工場ごと攻撃しようとしてきます。

『貴族』×1
 工場がぶっ壊されている所を見たいと乗り込んだ鉄帝のとある貴族です。雇った傭兵達より前に突っ立っているのは無謀や馬鹿だからではなく、自らの装甲に自身がある為。
 防御技術はなんと脅威の『100』……ですがHPと回避が控えめです。
 盾を使った格闘撃に注意。


●依頼主
『工場長バクチー』
『おっさん印の靴下』の工場長です。企業名は靴下ですがここで生産しているのはぱんつです。やたらと気前がよかったり高笑いをする煩い男。
 見た目は灰色の肌、蒸気の力を動力源とする、2.5mはある巨大な鉄騎種と言った所。神秘による近接戦闘を得意とする男。
 とある事情により、両手両足を負傷してしまったため、本来の力を発揮することがまだできませんが、頼めば肉の壁にはなってくれるでしょう。頼まなかったら中でお茶飲んでます。

『下着職人』×30
 おっさん達です。下着工場をひたすら「かばう」し続けてくれるが、何故か一撃で一人吹っ飛ばされてしまいます。

●護衛対象
『(株)おっさん印の靴下 鉄帝工場』
「混沌に安価で優良な下着を」のスローガンの元団結する多国籍企業。確かに価格も質も悪くないがロゴマークも見た目もダサい。本当にダサい。現在は靴下とぱんつに続き、ブラジャーを開発中との噂。
 おっさん達がかばってくれるが、下着職人が居なくなれば工場を護る人間が誰も居なくなってしまうので注意(それでもある程度は持ちこたえますが……)
 イレギュラーズがかばうには最低2人、あるいは『2体同時にかばえる能力』持ちが1人必要。思いっきって攻めに出るか、堅実に守りを固めるかはイレギュラーズ達次第。

●補足
・この依頼のみ、『おっさんのぱんつ』『おっさんの靴下』を装着すると『工場を護ろうとする意思が強い』と見なされ1個につきHP+50 防御技術+1の補正が付きます。
・紳士の靴下は虚しくはためく(https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/587)と繋がっているシナリオではありますが、把握の必要は一切ありません。前回『お世話に』なった人にはおっさん達から「なぁにぃぃぃぃぃ!?」な面倒な反応がお見舞いされるでしょうが、特に問い詰められたりはしません。バレたくない人は仮面なりグラサンなりぱんつなり頭にかぶっておきましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●アドリブ『やや多め』
 この依頼にはアドリブ要素が含まれる事があります。差し支えなければステータスシートかプレイングにアドリブ「歓迎or拒否」等の記載をしていただければそのように行います。

  • 紳士の下穿きは風に揺れる完了
  • GM名塩魔法使い
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月16日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リオネル=シュトロゼック(p3p000019)
拳力者
日向 葵(p3p000366)
紅眼のエースストライカー
エリック=マグナム(p3p000516)
(自称)海の男
マッド・ラインナー(p3p000615)
ガンマン
楔 アカツキ(p3p001209)
踏み出す一歩
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
華懿戸 竜祢(p3p006197)
応竜
リナリナ(p3p006258)

リプレイ

●晴れ時々おっさんの靴下
「はっはっはっ! よくぞ来た! ローレットの諸君!」
 雪が降り積もった鉄帝の町外れ、稼働が停止し異様な程静かになった工場の前で響く怒声のような笑い声。ローレットから駆け付けたイレギュラーズ達を歓迎したのは、『おっさん印の靴下工場長』の笑い声であった。
 図体が大きく、体のあちこちに蒸気機関と配管が纏わりついている以外はまさしくおっさんな彼は、彼らに事情を語る。
「先日、我々の所にさる貴族から『お前の所の製品つかまされたから潰す』という予告状を受けたのだが、今日がその日なのだ……我々だけでも大丈夫とは思うが念には念をと――」
「大丈夫じゃねェから呼んだんだろ!」
『(自称)海の男』エリック=マグナム(p3p000516)がその大男の言葉を遮るようにツッコミを入れる。「うぐ」という言葉と共に固まる工場長の様子から察するに、図星であろう。
「とにかく傭兵と貴族をぶっ飛ばして工場を守りゃ良いんだよな? 下着は生憎持ってねェが、なんとか頑張るぜ!!」
「……すまない、頼んだぞ」
 しおらしくなる工場長に、エリックがガハハとそれを励ますように笑う。
「それに戦闘のプロが、そうじゃねぇ連中を一方的に潰そうってのは、穏やかじゃねーよ」
『拳力者』リオネル=シュトロゼック(p3p000019)が「オレ達に任せとけよ」と言わんばかりに工場長を元気づける様に声をかける。工場が一体どういうものなのかは詳しくは知らなかったが、貴族のその権力と力に任せた行動にリオネルには不服を覚えていた。
「コージョー、おっさんのぱんつ作る所か」
 如何にも寒そうな毛皮の服を羽織った『特異運命座標原人』リナリナ(p3p006258)が奥の建物を眺める。
 原人であるリナリナにとっては『工場』が何たるものであるかは不明であった。が、崩れないバベルによる超解釈の末『おっさんのぱんつ』を作るところである事はわかっていた。
 おっさん達があの中で様々なぱんつを履いては『おっさんのぱんつ』に変えている。つまりあれが壊されれば中にいるおっさん達が逃げ出し、世界中のありとあらゆる高級ぱんつがおっさんのぱんつに変えられてしまう――
 そうなると、乙女のぱんつやまだ見ぬ高級ぱんつもおっさんのぱんつに変わり、貨幣(?)経済の崩壊――
「おーっ、リナリナ、全部わかったゾっ!! 『コージョー破壊禁止! オッサン開放厳禁!!』」少々変な方向に解釈したようだが、目的は間違えていないので問題ない。
『ガンマン』マッド・ラインナー(p3p000615)は「何故貴族が態々大枚払ってぱんつ工場まで襲撃してきたか気になるところだが、依頼を引き受けた以上最善を尽くすとしよう」と、貴族がぱんつ工場に拘る理由を疑問に思いながらも、問題なく任務をこなす意志を銃を工場長に見せる事で示し。
 ラインナーに同意するように「工場の内容がどうであれ、守らなきゃいけねぇならやるしかねぇっス」と『紅眼のエースストライカー』日向 葵(p3p000366)が淡々と。それに「そうだな」と頷くは『応竜』華懿戸 竜祢(p3p006197)。
「ここがどのような場所なのかは私が知った事ではない……が、ここで働く者達に宿る命の輝きは本物だ」と、愛おしい物を眺めるような微笑みで言う。庶民の為に滅私奉公で尽くす工場長の姿に、彼女の愛する強い前向きな精神を感じ取ったのだろう。
「しかし『力づく』で全て解決とは、この国は随分と分かりやすいな」
『軋む守り人』楔 アカツキ(p3p001209)は鉄帝の風潮に対して淡々と感想を述べながら工場長の瞳を見つめる。散々おっさんの下着には悩まされてきたアカツキではあるが、とは言え八つ当たりの様に破壊されるのは見過ごせないという意志は工場長にも伝わったのだろう。
「皆、すまない……私も手負いの身ながら加勢しよう。よろしく頼むよ!」
 そう、恥ずかしそうに工場長は皆に感謝の意志を伝え、「外で待ち続けるのも寒いだろう。予告されている夕刻までうちで休んでくれたまえ!」と工場案内を兼ねた休憩を申し出る。
「おうともよ! ところでおめぇさん、戦いの前に一つ聞いておきたいことがあるんだがちょっといいか?」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が工場長をいったん呼び止め、何か会話を交わしながら共に入っていく。それに連なるように、残りのメンバーも一緒に工場内へ入り、予告の時間まで旅の疲れを癒すのであった。

●曇り時々おっさんのぱんつ
 その貴族達が現れたのは予告どおり、日没と同時であった。
 全身を鎧に固め大盾と剣を構えた小柄な騎士が、重く篭った雪を踏み固める音を鳴らしながら町中より現れる。その後続に、地球で言う東洋の武士が着る鎧を着た大柄の戦士達が、体格に見合う大きな武器を担ぎながら次々と姿を現す。
「現れやがった!」「あいつら、建物ごとぶっ壊す気だ!」「おやっさんは避難してくだせえ! ここは俺らで食い止める!」
 その明らかに殺意を持った武装と人数の軍勢に、どこからともなく現れ見張りについていた工場のおっさん達が即座に工場を護ろうと配置に付く。本来であれば慌てふためき禄に防御を固める事すら間一髪となっていたであろう彼らが護りを固める事ができたのは、ただ彼らが工場を護る意志に堅いだけではなく、直前にイレギュラーズ達の鶴の一声を受けた事もあっただろう。貴族達がその工場を焼き払いに行ける距離に到達する頃には、おっさん達はびっしりと護りを固め、工場を護る構えを取っていた。その中にはゴリョウもいる。彼の頑丈な守りは、おっさん達にとっても非常に頼りになるものであったであろう。
 おっさん達の前で、リオネルが腕を組みながら貴族を待ち構え、他のイレギュラーズ達もまた、奇襲を仕掛ける為に工場の側面や物陰で息を殺し、一瞬の隙も見逃さぬとその時を待ち続ける。

 貴族達は目標の工場を戦闘範囲内に捕らえ、歩みを止める。そして、イレギュラーズやおっさん達を見渡すように眺めると、工場に向けて剣を向け、傭兵達に破壊の指示を出す。
「ちょっと待てよ」
 貴族に対し、リオネルが一旦静止を呼びかける。ポケットに手を突っ込んだままゆっくりと歩き、剣を構えたまま動かぬ貴族に接近する。リオネルは「なあ」と、両腕を広げ、かかってこいと言わんばかりに手招きをし、「お貴族様ってなぁ、見物だけかい? 暇なら相手してくれよ……タイマンだ」と自分の顔を叩き、そして貴族の鎧をノックして挑発する。

 その貴族はリオネルの挑発に乗ってしまった。肩をすくめ、鼻で笑う。

「ふっ、舐められたものだ……幻想のひよっことは違うのだ。我々鉄帝の貴族を舐めないでもらいたい!」
 若い男性の声であった――次の瞬間、リオネルの胴へ強烈な一撃が重くのしかかる。あたかもこれが鉄帝の市民だと言わんばかりの一撃に、リオネルはにかっと微笑み、「上等だ!」と即座にカウンターの正拳突きを浴びせ、継続戦闘の構えを取る。貴族もまた盾と剣を構え『目の前の生意気な奴』を倒す事に完全に夢中になってしまう。「何をやっているんだ! 早く壊せ!」と荒々しく傭兵達に言い放つのは熱くなっている為であろうか。
 傭兵達はその言葉に従うように飛び出し、何人かは工場に向けて得物で斬りかかろうと接近し、何人かは攻撃を放つ。完全に貴族と傭兵が切り離されたそのスキをイレギュラーズ達は見逃さなかった。一斉に6人が飛び出し、貴族を孤立させ、傭兵達をはさみうちにする。
 唸る貴族に、リナリナの攻撃が襲いかかる。しっかりとガードを固めそれを防ぐも続くラインナーの攻撃には防御に失敗し、素で受けてしまう。
 リロードをしながら、「さて、どこまで抑えられるかね」と不敵に笑う後方で、挟み撃ちに成功したエリックが大きな腕を振りながら、「どけろ、どけろぉ!」と傭兵達に殴りかかる。
「さて、皆の輝きを守るとしようか」
 くくっと笑いながら、竜祢が大剣を振りかざし、その重量を以て激しく斬りかかる。巨大な野太刀と大剣が激しい鍔迫り合いを起こし、傭兵と取っ組み合いの形になる。その後方から、素早くアカツキが駆け寄り蹴り飛ばした。
「ふふ、最高だよ」と声をかける竜祢に対して、無言で目線を投げて返事を伝えるアカツキ。苦しそうに動く傭兵に対し、「ちょうど新調したコイツの威力を試すいい機会ッス!」と葵が黒いサッカーボールの様な兵器を取り出し、蹴り飛ばす。光の如き速さの弾丸がその足より繰り出され、傭兵が1人吹き飛ばされていく。
「とにかく早く倒すッスよ!」
 葵の言葉に、前衛で戦う3人も頷く。とにかく敵の数を減らさなければ。
 傭兵は一体一体は体力も少なくシンプルに相手しやすい連中ではあったが、その純粋な攻撃力の高さは「傭兵」を名乗るに値するものであった。何より厄介なのは、その巨大な得物を活かした重い一撃。それは普通の防戦ではとても太刀打ちできないものである。
 だが傭兵達の装備を以ってしても工場を守っていたゴリョウの巨大な戦車とでも言わんばかりのその巨体を貫く事はできず、傷をつけようにもエルフ鋼で強化されたその装備に包まれた彼を傷つけるのは至難であった。
「こちとらこの工場のぱんつ穿いて難事に挑むくらい覚悟してんだ! 守りきってみせらぁ!」
 気合いを入れ、ただひたすら壁となり鎧となるゴリョウ。その覚悟に、共に守るおっさん達も勇気付けられる。
 その様子に貴族や傭兵達も苛立ちを覚えたのだろう。怒り心頭の貴族がその大きな盾を振りかざし、辺りの戦士達を所構わず殴りつける。体力をも犠牲にして繰り出すその防御術は、攻防一体となった痛恨の一撃、重い打撃音が鈍く響き、イレギュラーズ達を苦しめる。
 傭兵達も負けじと迎撃と制圧の半々に別れれば、イレギュラーズ達同様各個撃破にあたろうと狙いを定め、その武器を振るう。
「そんなに工場が破壊される様を見たいのか? 貴様に、彼らの生活を奪う資格がどこにあると言うのだ?」
 傭兵の攻撃を手甲で受け止めながら貴族に問いかけるアカツキに、無言で貴族が睨み返す。兜の隙間からちらりと見えた、まるで「理由なんて無い、憎いから壊したいんだよ」と言わんばかりな狂気的な瞳にアカツキは顔をしかめる。もはや目を合わせるのも不適と考え、傭兵の方を向き直すと全身全霊の一撃を与えそれを吹き飛ばす。
 イレギュラーズ達は必死に抗うも、鉄帝国のタフな貴族と傭兵達には手も足もでない――一瞬、諦めかけた、その時であった。
 突然、おっさん達の方から、歌声があがったのだ。ゴリョウの歌だ。勢いと意気込みは伝わるのだが、非常にダサい、まるでおっさんの下着の様な歌を。
「なんだその耳が腐りそうなダサい歌は!?」と貴族や傭兵達が狼狽えるも、ゴリョウはその歌をやめない。一人、また一人とおっさん達がその歌――『おっさんの靴下工場』の社歌を歌い出し、歌が共鳴していく。

「おやっさん! 頼むぜ!」
 ゴリョウの呼びかけに応え現れるは、カースド装備を手に蒸気を吹き上げ、やる気に満ちた姿の工場長。
「おやっさんだ!」「おやっさん!」「おやっさーん!」
「はははは! 待たせたね!」
 そう意気込み、傭兵に武器を構える工場長。「見るが良い! これがバクチ撃ちというものだ!」と放つは強大な神秘の大砲。その神がかりな一撃は傭兵達の急所を突き、なぎ倒していく。
 工場長の登場と、おっさん達の士気向上により、形勢が一気に逆転、イレギュラーズ達は反撃に出る。
「一掃するっス!」
 葵が飛び上がり、宙返りをしながら傭兵達が固まっている場所を指差す。3人が頷き、待避した瞬間。その足から鮮血のコウモリが放たれ――誘爆。2匹、3匹、4匹――連続して起こる爆発が、傭兵達に確実なトドメを刺していく。

 対貴族組も負けては居ない、全身全霊を込めて立ち上がり、その腕を振るうラインナー達。
 その堅い鎧の上からでも叩き潰すと言わんばかりに、ただひたすら、打ち込み続け。
「おのれ、おのれ、おのれぇ!」
 怒りに震える貴族に、リオネルが最後の挑発をしかける。

「かかってこいよ……逃げねぇ、よなあ?」
「誰が、誰がぁぁぁあああ!」
 盾と拳による、クロスカウンター。
 肉を切らせて骨を断つ。全身全霊を込めたリオネルの拳圧は真空の刃となり、鎧の中で貴族を切り刻む。「ぐう」という声とともに、貴族はふらつき、よろめき、雪の地面に膝を付いた。
「オレの勝ちだな……!」と勝ち誇るリオネルに対し、貴族は「貴様……覚えておけよ……!」と負け惜しみをつぶやけば、ヨロヨロと立ち上がり、つい1分前まで逃げないと言っていたにもかかわらず、全力で戦線を離脱していった。「お前達、必ず工場を壊すんだぞ!」という怒号と脱ぎ捨てた鎧だけを残して。

 だが、頭が潰れ、数も大幅に減った傭兵達にそのような事ができるはずもない。貴族を倒し、戦線に復帰したイレギュラーズ達と、精力を温存していた工場長の手により、雪崩れるように次々とその数を減らしてしまい。

「あとはお前だけのようだな」
 竜祢が最後に残った傭兵の一人を指差し、これで終わりだともう片腕で大剣を握り、振り下ろす。

 傭兵はゆっくりとよろめきながら、何かをコロンと転がして崩れ落ちる。

 その様子を見て、両脇に倒した傭兵を一人ずつ抱えたエリックが、勝ち誇ったように高笑いをあげる。
「おらァ! てめェらみてぇな三下が俺に勝とうなんざ10年はえぇんだよ! ガッハハハハハ!」
 これで終わった。後はこの傭兵達を捕まえ尋問をすればあの貴族についてもわかるだろう。そう油断した瞬間だった。
 傭兵がさきほど転がした『何か』――爆弾が、突然光り輝いたのだ。
「あぶない!」
 そう叫び声を上げるリナリナに応じて、皆が伏せ、数秒後……大爆発。
 辺りを轟音と衝撃波が飛び交い、雪が巻き上がり、視界が一気に妨げられる――

 激しい嵐の後、皆が立ち上がって辺りを見回したときには、傭兵達の姿はどこにもいなかった。これを機会と逃げ出したのか、爆風で跡形もなく消し飛んだのか……おそらく前者であろう。
 主同様、傭兵達もまた逃げ足だけは優れていたのだ。戦闘の数分後、イレギュラーズ達は以下の言葉が工場の壁に刻み込まれているのを発見することとなる。

『我らの負けだ。もう二度とここに来ることはない』


●雪時々おっさんの……
 貴族は誇りである鎧を捨て逃げ出し、彼らが工場を破壊するために使う予定であった爆弾もまた、傭兵達の逃走のための煙玉代わりに使用され無くなった。これでは暫く立ち直ることもできないだろう。
「撃退成功ってわけだな、しかし中々強敵だった」
 ラインナーはそんな軽い事をいい、銃に故障が無いかチェックをする。葵もまた、クールダウンをしながら「こっちもこっちでキツかったっス」と激闘の感想をこぼし、深呼吸をする。
「しっかし、横から見てたけど貴族キツかったろ……装備ガチガチすぎてエライ事になってな」
 アカツキは逃げ出した傭兵達の足跡を眺めながら考える。一体あの和装の傭兵達はどこから来たのだろうかと。工場長はそんなアカツキの意志を察して近づき、「はっはっはっ……おおかた力自慢に来ていた者を雇いでもしたのだろう! あまり深く考える必要はないさ!」と気楽に笑い飛ばす。
 そんな工場長に、おっさん達は「また恨まれますよー」「調べなくていいんすかおやっさーん」とやじを飛ばす。そんなおっさん達を竜祢が満足そうに「皆の眩いほどの輝き、この目にしかと焼き付けたよ」と言いながら眺めるのは言うまでもない。
 工場長はおっさん達をええいやかましいと黙らせれば、イレギュラーズ達の方を向き直る。
「皆、ありがとう! 何か私達にできることはないだろうか! 報酬だけというのも申し訳ないのでね!」と。それにエリックが乗り、「なら一つここで作ってる下着の試着もしてえなぁ! かなりでかいサイズになるとおもうがな!」と笑う。
 職人気質のおっさん達はそれにすっかり喜んだのだろう、彼らも笑い、工場長もまた蒸気を噴き出しながら「いいだろう!」と大笑いするのであった。

 かくして、『おっさんの靴下工場鉄帝支部』は闇市の恨みという魔の手から無事護りきられる事となったのであった。
 後日、また別の国の貴族によって他の工場が襲われるのかもしれないが。それはまだ先の物語。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

なし

あとがき

 お疲れさまでした。
 鉄帝の依頼は中々タフな奴が多いと思うのでこれからも頑張ってください。

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