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シナリオ詳細

僕たちは今日、空を飛ぶ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●美少女砲弾
 街を出て少し歩いた先にある大きな原っぱでは、街中の喧騒というものから解放された気分になる。
 夏の日差しは燦々と主張しているものの、視界の通る此処ではしがらみを取り払ってくれるような清々しさがあった。
 それを除いて。
「いやあああああああああああああああああああああああ!!」
 悲鳴。悲鳴だ。
 それも女性の悲鳴というやつだ。
 すわモンスターのひとつでも現れたかと、慌て駆けつけはしたのだが、なんというか、今回のそれはまったくもって事情の異なるものだった。
 悲鳴が遠ざかっていく。視線をそちらに向ければ、奇妙な物体と、明後日の方向を向いた女がいた。
 知った顔だ。『可愛い狂信者』青雀(p3n000014)である。
「あっれ、先輩、こんなとこでどうしたッスか?」
 こちらに気づいた彼女が、振り向いて声をかけてくる、
 どうしたもこうしたもない。悲鳴を聞いたから心配をしたのだ。それに、彼女は情報屋。個人での戦闘能力はないに等しい筈だ。
 こんなところにひとりで居ては危ないだろうに。
「大丈夫ッスよ。ビューティーちゃんが一緒ッスから」
 どうやら、『クソザコ美少女』ビューティフル・ビューティー(p3n000015)も一緒であるらしい。
 彼女が一緒だというなら、まあ、不安は残るが、一応戦える人間がついていることになる。
「いざとなったら囮にして逃げるッス!」
 悪魔か。
 だが、肝心のビューティーの姿が見えない。どこに行ったのだろう。
「ああ、さっき射出したッスから。もうちょっとで戻ってくると思うッス」
 そう言って、青雀は自分の横にある物体をぽんぽんと叩いてみてみせた。
 物体。よく見れば、それは大砲だった。
 鉛の砲弾を入れて、お尻の導火線に火を点けて発射する、ガレオン船なんかに積んでいそうなアレだ。
 大砲。遠ざかっていく悲鳴。
 今、射出つった?
「どういうことですのおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 疑問が明確な形を見せたところで、それが走ってきた。ビューティーである。
「どうしてわたくしが大砲で発射されないといけないんですの!?」
 あちこち焦げた様相で、青雀に向かい怒りを顕にしている。
「ビューティーちゃんなら大丈夫だと思ったッスよ。ビューティーちゃんは強いッスから。そうッスよね?」
「え――そ、そうですわね! わたくしはつよ~いですから!」
 一瞬で丸め込まれた。
 で、何やってたの?
「人間砲弾コンクールの練習ッス」
 なんだって?
「もうちょっと人数欲しかったッスよ。参加者が増えるのは大歓迎ッス!!」
 なんだって?

GMコメント

皆様如何お過ごしでしょう、yakigoteです。

優勝賞品が欲しいという依頼がギルドに来たので、人間砲弾コンクールで優勝してきてください。
人間砲弾コンクールは射出後の動きや着地における芸術度の高さで決まります。
あ、着地の安全確保は各自でお願いします。

【用語集】
□会場
・広い原っぱ。海と山に挟まれており、いい感じにマイナスイオンが出ている。

□大砲
・攻撃力はないと製作者が言い張る安全な大砲。人間射出用。

  • 僕たちは今日、空を飛ぶ完了
  • GM名yakigote
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年08月16日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

サイズ(p3p000319)
妖精■■として
江野 樹里(p3p000692)
ジュリエット
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
Q.U.U.A.(p3p001425)
ちょう人きゅーあちゃん
スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
パズズ・ログサウンド(p3p005256)
蹴闘士
御天道・タント(p3p006204)
きらめけ!ぼくらの

リプレイ

●砲弾予備軍
 翼に憧れるのは、持たざる者の総意である。我々はそれを望み、願い、焦がれ、その上で無い物は無いままにそれでも大空を捨てなかったのだ。例えその羽ばたきが虚飾にまみれていたとしても。

 色の無い花火が打ちあがり、それが一種の祭であるのだと教えてくれる。
 からりと晴れて、今日も蒸し暑い。だが、それ以上の熱気が会場全体を包み込んでいた。
 いや、膨れ上がっていたという方が正しい表現かもしれない。大衆的なそれでもあるが、何よりも火薬を使用しているという物理的な事実があるのだから。
「俺、自力で飛べる製作者の翅があるのになんでこんなのに参加してるんだろうか……?」
 その制作者の手の中で『隠名の妖精鎌』サイズ(p3p000319)は考える。
「多分大砲で射出された時に飛行したら失格かな……? まあ、滑空や翅に風を当てて回転するようなトリック、着地用に翅を使うのはセーフかな?」
 なんというか、非常にまじめな性格なのだろう。思考は既に悩みから如何にコンクールで勝利するのかにシフトしていた。
「遠い、ある日の朝のことです……」
『ジュリエット』江野 樹里(p3p000692)が回想に入る。
「私がいつものように朝ご飯をはむっとしていると、ふと窓辺に座り遠くを見つめた父がこう呟いたのです。『飛べないハーモニアはただのハーモニアだ』、と……」
 お父さんが娘に対して辛辣過ぎる。
「お父様、樹里は今日、飛べないハーモニアを卒業して空を飛びます……!」
 人間大砲で納得してくれるんだろうか。
「美しく飛ぶというのであれば、装いも相応のもので着飾るのが良いだろう」
『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は仲間を手伝い、コンクールに向けた衣装を用立てていた。裁縫そのものへの技術を持っているわけではないが、それに向いた感覚は養っているつもりだ。なんというか、焦げてしまいそうだが。
「青い空、白い雲、巨大な大砲! どうしてこうなった! 私向けの依頼って聞いたのに!」
 からりと晴れた空の下で、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)が愚痴る。
「水着美少女コンクールとかじゃいけなかったんですか!」
 それを自分で言ってしまうあたりが原因ではなかろうか。
「しかし、時既に不退転。光鱗矢の如し。空を飛ぶならメリポでやった! やってやろうじゃない砲弾役、目指せ優勝!」
「にんげんキャノンボール! すごい!」
『!!OVERCLOCK!!』Q.U.U.A.(p3p001425)が素直な感想を口にする。人間大砲には人類の叡智と浪漫がごちゃ混ぜに組み上げられているのだ。
「飛行がなくてもおそらをとべる! たのしそう!」
 期待を胸に、わくわくが止まらないという風で。
「もちろん、きゅーあちゃんもとぶよ! うぃーきゃんふらーい!」
「人間大砲ね……なんつーモンを拵えてやがるんだ」
 スティーブン・スロウ(p3p002157)の見上げる先、上空をヒト型の何かが放物線を描きながら飛んでいく。本番前のリハーサルか、はたまたパフォーマンスの一環なのか。とにもかくにも、数時間の内には自分が同じことをしているはずだというのだから、世の中は理不尽にまみれている。その上で、わざとらしくため息をついた。
「面白すぎだろう」
「今回の依頼は砲撃戦のようだナ」
『蹴闘士』パズズ・ログサウンド(p3p005256)腕を組んでひとりごちた。それはちょっと違う気がするけれど。
「問題はその砲弾がアタシ達だということと、ビューティーが張り切ってることが不安なのだガ」
 そちらはある意味平常運転とも言える。騙されているところまで含めて、彼女は徹頭徹尾ああいうものだ。
「まあやるからには優勝して、依頼主に景品を渡さねーとスッキリしないゼ!」
「オーッホッホッホッ!」
『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)が挨拶代わりの高笑いを決める。なんというか、キャラ被り感もバッチリだ。
「ビューティフル・ビューティー! 口ほどにもございませんわね!」
 そりゃお前、煽てに有頂天なだけでさして何も言ってないからな。
「わたくしが華麗に優勝して本物の美しさというものを魅せて差し上げますわー!」
 なんだか今日は2倍お得なようだ。ポイントカードかしら。

●装填段階
 わかったような気がする。わかったような気がする。わかっ……

「おーっほっほっほっほああああああああああああああ!!」
 なんというか特殊な効果音をつけて金髪巻き毛の可哀想な子が射出された。
 叫びと涙で飛行機雲を描き、山なりに飛んでは落ちていく彼女は、なんというか遠目で見ると弥次郎兵衛に似ている。あのバランスとるだけの玩具だか風土品だかわかんないやつだ。
 それは綺麗なアーチを描くと、思い切り顔面から海へと落ちて水柱を立てた。
「ビューティーちゃん、今のよかったッス! もう一回ッスー!!」
 悪魔がなんか言っているが聞かなかったことにしよう。
 そろそろ、自分の順番なのだから。

●発射用意
 落ちてはいない。まだ飛んでいるところだ。

 サイズは大砲に対し、念入りに危険性がないのかを確認していた。火器類の類となればやや門外漢のきらいもあるが、そこは同じ武具のそれ。殺傷性という調査であれば一日の長があった。
 ヒトを空高く射出する時点で危険性も何もあったものではないが、少なくとも射出時の火薬や衝撃で砲弾役が怪我を負うような構造にはなっていないようだ。俄には信じられない話だが。
 点火係によるカウントダウン。スリーツーワンファイアの掛け声で発射されるサイズ。
 それは、大鎌たる自らを振り回しながら空高く飛び上がっていく。もしも地面と平行に射出したならば、その弾道状の障害物を無残に切り裂きながら直進していくだろう。なんだその凶悪兵器。
 サイズは放物線の頂上で体勢を滑空のそれに切り替えると、そのまま重力加速度の影響を殺しつつ華麗な着地を決めてみせた。
 会場から起こる拍手。武器商人の展覧会にしか見えないが、ここは間違いなく人間大砲のコンクールである。たぶん似たようなものだ。

「ではいざ……しゅっぱーつ」
 やや気の抜けた掛け声とともに樹里が空高く発射される。
 他の参加者よりもその角度は高い。まるで太陽に手を伸ばそうというように、ぐんぐん高度を上げていく。
 いや、『まるで』ではない。
 太陽に届きうる高度こそが樹里の狙いなのである。
 彼女は身につけていた巨大なレーザーガンを後方に向けると、加速の為に4度、魔法を連射した。点火係が思いっきり巻き込まれた。
 若干名の悲鳴は何するものぞ。魔法の反動をも味方につけ、樹里はどんどん昇っていく。
「今こそこの手を伸ばして掴み取ります……! 目指せてっぺん、イカロス某の何するものぞ――ぁ。無理ですねこれ」
 しかし、大気圏超えられるだけのエネルギーも装備もない。ある一点で急激に失速すると、彼女はそのまま真っ逆さまに落ちていった。
 ちゅどーんという何か古典的な爆発音と共に頭から地面に突き刺さる。
 通常のシナリオでは死にます。ご注意ください。

「聞けば、蜘蛛は自らの糸を一本垂らしそれが風に飛ばされることで自身もまた風に乗るという……」
 エクスマリアは、砲身の中で自らの髪を一本、長く長く伸ばしていく。
「ならば、マリアのギフトで髪を伸ばし風を捉えれば、或いは……!」
 人体を飛ばすほどの突風ってなんだろう。竜巻か。
 そして発射される。
 エクスマリアは演出も兼ね、帽子の中に隠している双角の力を放出させていた。
 荒れ狂う火焔と、喚き立つ稲妻が二筋の線を描いて彼女の軌道を色付ける。
 それらはまるで翼のように広がり、空気へと霧散していった。
 放物線の頂点より、落下へ。
 エクスマリアを迎えるように、大地から巨大な腕が生える。
 その掌に着地した彼女は、非常に幻想的であった。
 直後、攻撃スキルとしての本領を発揮、自ら召喚した腕にふっ飛ばされてまた明後日の方向に飛んでいったのはご愛嬌である。
「ところで賞品とは一体……?」

「まあ、芸術点を取れというならあれよ。私のないすばでぃで魅了してくれるわ、という感じで行くしかないわね……」
 そう、イリスの本来の姿は正にナイスバディと言って差し支えないだろう。こう、造形美的な意味で。
 それは鰐にも似た姿を持つ2m近い巨大な魚。美しい光沢を放つ鱗を持った、一見凶悪にも見えるそれである。
「アーイキャーンフラァァァァァ!?」
 射出される。錐揉み回転しながら。アリエーターガーとも呼ばれる魚が飛んでいく。たぶんこういうサメ映画がいつか公開されると思う。アイヴィーショップでレンタルしてたら誰か教えてくれ。
 放物線の頂上でイリスは人間モードに変化。そのまま落ちる威力を利用し、回転しながら海面に沈むと思いきや、勢いのまま水切り石のように跳ねていった。なんともシュールなトビウオである。
 なお、アトラクトステウス属は殆どが淡水魚だそうなので、本当に海に放してはいけないよ。

「とにかくめだてばいいんだよね!」
 きゅーあは発光しながら射出されると、空中で自らに衝撃を与えた。
 本来は敵を吹き飛ばすために使うその技を、方向転換の為に使用したのである。
 そしてまるで体操選手のように華麗な技を次々と決めていく。
 観客からすれば彼女の細かな動作のひとつひとつまで確認することはできないが、予想外の軌道を描く発光体はそれだけで注目に値するものだった。
「ちゅうがえり! バクちゅう! だいしゃりん! トリプルアクセル! ステイルフィッシュ! どうだ!」
 そんな彼女も、延々と空には居られない。自分を殴って空を飛べたら世の中ヤバイ変態ばかりになってしまう。
 着地と同時、でかでかと『押すな』なんて書かれたそれを躊躇いなくポチり。
「どっかーん!」
 昭和的な爆発音。もくもくとあがる煙が晴れた頃、中から出てきたのは顔を炭だらけにし、アフロ頭でピースをするきゅーあだった。
「びっくりしたでしょ!」

「我ながらいい仕事をしたぜ、役得役得」
 自らが拵えた仲間の衣装を見て、満足げに頷くスティーブン。
 そんな彼も、自分の番になれば黒いスーツ姿で砲身に収まっていた。
 勢いよく発射されるが、わざと目立たぬ衣装で飛び出した彼は、観客席からもよく見えない。
 だが、それも最初だけの話だ。
 スティーブンは放物線の頂上でスーツについた紐を引っ張ると、それは左右に解けて中から真っ赤なスーツが現れた。
 どこぞの伝説的なロックシンガーよろしく、腕にひらひらと帯状の何かが無数についている。
 そのまま華麗にポージングを決めると、素直に落下していった。
 向かうは山岳地帯。無事に着地できる自信など皆無である。このままでは尖った岩肌で素敵にリフティングされることだろう。
「ええい、なるようになれ!」
 飛んじまったものは仕方がないのだ。

「ヤッベェ、意外と怖ェ! 本当に大丈夫なんだろうな、この大砲! こんなので重傷になったら恨むぜ依頼主さんよォ!」
 砲身の中でパズズの叫びが反響する。
 人間がすっぽりとおさまってしまうような巨大な大砲だ。その中に入れば、視界の先に映るものは砲口の向いた青空だけであり、周囲の状況がまるでわからなくなる。
 自分がいるのは本来殺傷兵器であるはずのものの中だという事実が、言いようのない恐怖を掻き立てた。
 点火係のカウントダウンがなければ発狂していたかもしれない。だがともあれ、彼女もまた無事に射出される。
「ウオオオオオオッ、世界で初めて空を飛んだアリゲーターはアタシだァ!!」
 くるくると回転しながらパズズが飛んでいく。フライングアリゲーター。このタイトルは探したらもうどこかにありそうだな。
 ムーンサルトもかくやという程の回転をつけ。その勢いを無理矢理に殺して着地する。
 両腕をYの字に広げることも忘れずに。

「人間大砲なんてファンキーなものを好む方々ですもの! とにかく景気よくド派手なのがお好みですわよね!」
 所謂『お嬢様が高笑いするポーズ』のままタントは放物軌道線を描いていく。
 マンガ表現ばりのきらきらしたものを振りまきながら飛んでいくのだから、たぶん無敵アイテムでもとったのだろう。
 軌道の頂上から落下を始めると同時、彼女はフィンガースナップを決める。そのまま膝を抱えてくるくると縦回転を始めると同時、どこからともなく声が聞こえてきた。
 \きらめけ!/
 回転を早めていく、きらきらが尾を引いてまるで流れ星のように。
 \ぼくらの!/
 そのまま着弾するかのように、しゅたりと着地を決めてみせる。足の痺れがやばかったが、何事もなかったかのように立ち上がり、ポーズを決めた。
 \\タント様!//
 最後の掛け声と共に巻き起こる拍手と歓声。何かが全力で彼女を飾り立てていた。
 何だこの面白い生き物。

●着弾確認
 ところで某拳法についてだが、普通に砲弾を撃ち込んだほうが効果的だと思う。

 気絶したままのビューティーを抱えて先に帰った青雀を見送った帰り道。
 夕焼け空に照らされた『副賞』を眺めている。
 依頼人が欲しがったというのはこれのことだろう。あとはギルドを経由して送り届けてもらえばいい。
 みんみんとセミの声が聞こえる。
 喧しいとも思うが、不意にその声が途切れたときには物寂しいと感じた。
 どうしてこれを欲しがったのか、などということは詮索すまい。気にはなるが、プライベートな事情だ。
 しかし、しかしとも思う。
『人間大砲で行くレガド・イルシオンの旅:ペアチケット』
 これには顔をしかめてもいいだろう。

 了。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

みんな本当にこういうところでパンドラを使うのが好きだ。

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