PandoraPartyProject

シナリオ詳細

注げ満たせよ神なる力

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●汝は信奉者なりや
「おい、どういう事だよ蒼矢ァ。お前が旅行に行きたいなんて駄々こねるからついて来たんだぞ?」
「おかしいなぁ……旅館、ちゃんと予約して来たんだけど」
『close』の看板がぶら下がった旅館の入口で、『境界案内人』の蒼矢と赤斗は呆然と立ち尽くしていた。
 ライブノベルの世界の中には観光に適した異世界も存在する。たまには温泉にでも浸かって疲れを癒そう――そう考えた二人は、この世界を選んだのだが。
「この旅館だけじゃねェ。駅からここまでずーっと閉店続きだ。商店街も、他の温泉旅館も、それこそ病院やら役所やら生活に必要な施設だって」
 これは何かあったとしか思えない。観光パンフレットをヒラヒラと振りながら赤斗が言うと、背後から何人かの足音が近づいて来た。振り返ればそこには笑顔の人々。誰も皆おだやかな笑顔だが、不気味でどこか虚ろな不気味さがある。

「貴方がたもセミナーへ参加しに来たのですか?」
「セミナー……?」
「えぇ。ちょうど教祖様がお見えになる頃です。私達この温泉街の者は皆、『恋慕(きゅん)するフォーチュンクッキー教団』――略して『KF団』に入信しているのです」

 熱心な信奉者である彼ら彼女らは仲間を増やそうと丁寧に教えてくれた。

 KF団の教祖が配るフォーチュンクッキーには必ず的中する占いが入っている事。
 大凶を引いた者は穢れを祓うために教団へ奉公しなければならない事。
 若い者達が奉公に出ていくようになり、どの施設も立ち行かなくなってしまった事――。

「それでも私達は幸せです。ご加護がありますからねぇ」
「えぇ、全く。ありがたい事です」

 どこか破棄のない笑い声が響く中、蒼矢は一歩前へと歩み出た。
「すっごく興味深いお話をありがとうございます。どうせなら友達にもこの事を教えたいので、また来てもいいですか?」
『おい蒼矢、余計な事に首を突っ込むなよ!』
 蒼矢の思わぬ一言にテレパスで赤斗が抗議の言葉をぶつける。
『俺達から見たらどんなに胡散臭い宗教でも、救いを求める事に対して他人がとやかく言う筋合いはねぇだろうがよォ』
『うん。そうだね、赤斗の言う通りだ』
『だったら何で――』
 すっ、と蒼矢は真っ直ぐ教団の会館を指し示す。その建物にはだくだくと尋常ならざる負の気配が満ちていた。

『中でどんな儀式が行われているか分からないけれど、あれを放置していたらきっと、このライブノベルの世界は滅んでしまうよ』
 救う手立てはただひとつ――本物の"希望"達を呼ぶことだ。

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 推理小説の主人公が旅先で事件に巻き込まれるように、境界案内人もまたライブノベルの異変に巻き込まれる宿命なのです。

●目標
『KF団』を壊滅させる事

●説明
 今回のシナリオでは温泉街全体が『KF団』にずぶずぶ首まで浸かっているため、まずは街の人達を教団から引き剥がす必要があります。
 引き剝がしかたは人それぞれ。自分の信じる宗教を持ち込んで信仰蒐集するもよし、教団の巫女として潜入して暗躍をするもよし。
 信者がある程度削られると教祖が現れるので、後は皆でがーっと倒しちゃいましょう!

●エネミー
 教祖×1
「ぐふふ、これで温泉街はワシのものじゃ!」
 黙っていればそれなりに見れる顔の教祖の男性なのだが、見ての通りの残念な性格。
 烏の飛行種らしき外見で、人型で黒い翼を持つ。
 やたらとこの土地に詳しいようだが、何故そんな彼が宗教詐欺をはじめたのかは現在のところ不明である。

 温水を自在に操る神秘術で戦うらしいが、彼のスペックは温泉街の人々の信仰心が強いほど強化されるらしい。

 敵幹部×3
 教祖が街の外から連れて来た胡散臭い3人。戦闘では剣士、弓兵、回復役とバランスの取れたグループになる。
 彼らのスペックも温泉街の人々の信仰心が強いほど強化されるらしい。

●ロケーション
ライブノベル『夢々温泉郷』
 観光名所として知られているライブノベル。古き良き現代日本の温泉街の景観。
 戦闘の時は教祖が特別な結界を張って特異運命座標を追い詰めようとするが、足場ペナルティもなく視界良好、広い場所での戦闘となるため実は特異運命座標にとって有利な状況となる。

●味方
 戦闘能力は特異運命座標ほどないものの、『境界案内人』は呼ばれれば手伝ってくれる事があるようだ。

『境界案内人』神郷 蒼矢(しんごう あおや)
 怠惰でお調子者な境界案内人。それでも特異運命座標の事をひと一倍信頼して好いているため、頼まれれば断れずにいられない。
 必要な道具を頼めばある程度準備してくれたり、おいしいお菓子で労ってくれたりする。

『境界案内人』神郷 赤斗(しんごう あかと)
 真面目な境界案内人。特異運命座標に何度も救われた恩があり、信頼している。
 特異運命座標ほどではないが剣技の心得がある他、動画編集の類が得意だったりもする。

 説明は以上です。それでは、よい旅を!

  • 注げ満たせよ神なる力完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年04月26日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
首塚 あやめ(p3p009048)
首輪フェチ
杜里 ちぐさ(p3p010035)
明日を希う猫又情報屋

リプレイ


「それじゃーカメラに近づいて、目線こっちからで頼むぜ。3、2……」
「僕は『ねこまた教』の神様なのにゃ。この動画見たら理解できるにゃ。KF団は邪教にゃ、騙されちゃダメなのにゃ!」
 カチンコの音が室内に響く。問題の温泉街から目と鼻の先の隣町の宿屋で拠点を確保した一行は、そこで『少年猫又』杜里 ちぐさ(p3p010035)を教祖にした『ねこまた教』の宣伝PVの作成を始めたのだが――
「キリッてカッコよくしたり、お昼寝のカットを使うのはまだ分かるのにゃ。このバナナをカメラの前でペロペロするシーンは何に使うのにゃ?」
「そういえば、この動画、打ち合わせの時と大分内容が変わってますね」
 レフ板を掲げていた『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)が台本を見直す。びっしりと書き込まれている赤字は大体、境界案内人によるものだ。
「クヒヒ! あざといカットを所望するのは蒼矢さんらしいと思いますが、このフリルいっぱいでやたら可愛い衣装を赤斗さんが用意したというのは意外でしたねェ」
 ちぐさを後ろから抱きすくめるように『首輪フェチ』首塚 あやめ(p3p009048)がカメラの画面に入ってくる。ちぐさとあやめに加えて、画面外のお仕事を任された睦月までもがアイドルの様な撮影衣装を着せられていた。そこかしこに猫やら首輪やら雪のマークやら、各々に因んだマークが細かに刺繍されている。間違いなく手作りの代物だ。
 徹夜で4着こしらえた赤斗は、カメラに映らない場所でぐったりしていた身を起こす。
「恋慕(きゅん)には恋慕(きゅん)をぶつけんだよ。世界の分もそこのロッカーにかけてあるから、いつでも着てくれよなァ」
「着てたまるか! 明らかに俺と他3人じゃビジュアルの方向性が違うだろ? 何で『混ぜるな危険』と分かっていながらフリフリの服をこしらえたんだ」
 普段の白衣ルックを死守したままカメラ役の『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は半眼で拒む。
「そもそもこの異世界の温泉街、街全体が怪しい宗教に嵌るとは一体どれだけ騙されやすいんだよ。疑う事を知らない無垢な子供か?
 名前からしてもうOBK48(おバカ)な教団だろ。信じる要素が皆無じゃねえか。占いもどうせバーナムな効果のアレだろ?
……あと恋慕(きゅん)する要素どこにあるんだ。誰か教えてくれ」
 KF団の勧誘パンフレットに映っているのは、素人が作ったであろうゆるい教団マスコットの着ぐるみ。御世辞にも可愛いとは言えないクオリティに溜息しか出ない。頭がおかしくなりそうだ。
「洗脳が強ければ、物の良し悪しなどの判断もつきづらくなりますからねぇ。同業者――奴隷商人の中にも、そういう人心掌握を使う者もいますが。
 日常生活に支障をきたし、生活を壊す程の悪意あるものであれば、見過ごす訳にはいきません」
 あやめの言葉は正論に聞こえる――が、その手はごく自然な流れを装い、ちぐさに黒い首輪をはめていた。
「な、何なのにゃ!?」
「いいですねぇちぐささん。首輪の似合う特異運命座標との縁は大歓迎ですよぉ! 嗚呼、テンション上がってきました……早く作戦を開始しましょう!」
「お待たせ。こっちも準備が出来たよ」
 部屋のキッチンからバスケットを持って来た蒼矢が睦月へ中身を見せている。
 ふわりと漂う甘いバターの香りに一瞬、世界が反応した。それを見越していたのか、睦月は彼の手へ出来上がったものをひとつ握らせて、仲間達へと振り返る。
「信仰を悪用するなんて元かみさまとして許せません! 夢々温泉郷の平和は僕たちが守りましょう!」


 能面のように笑顔を顔に貼り付けた人々が、怪しい会館に吸い込まれていく。
『KF団祈祷会場』と立て札がかけられたその施設にやって来たのは、『恋慕(きゅん)するフォーチュンクッキー教団』の信者達だったが――会場のお立ち台に現れたのは、見慣れた教祖とは異なる人物だ。
「ようこそ『恋慕(きゅん)するフォーチュン首輪教団』の祈禱会場へ。私は教祖のあやめと申します」
 堂々と自己紹介を始めたあやめに会場はどよつく。
「ちょっと待て、首輪って……クッキーじゃないのか? 俺達の教団のパクリじゃないか!」
「いえいえ、これはわざとです」
 抗議の声をあげた信者の前へあやめが近づき、その顎を掴んで顔を向けさせる。
 強い組織にぽっと出の新しい組織で対抗するのは難しい。ならばこの様に誤認させて引き入れてしまえばいいのだ。一歩こちら側へ来たなら、後は簡単だ。
「さぁ、皆さんにはこの『幸運の首輪』を付けて差し上げましょう! これを着け善行を行う者は誰もが幸せになれるのです。ねぇ赤斗さん?」
「ハイ、シアワセデス」
 KF団の信者として巻き込まれた赤斗が、赤い首輪をつけたまま即答する。会場からおぉ、と声があがり、俺も私もと首輪を求めてあやめの方へ手が伸びてきた。信仰蒐集の才を持つ彼女には、この手の印象操作はお手の物だ。
「クヒヒ! さて、他の方は上手くやられているでしょうか?」

「おめでとう、これであなたは苦役から解放されました」
 フォーチュンクッキーから大吉を引いた者達が、睦月の言葉に嬉しそうに頬を綻ばせる。実は彼女が蒼矢に用意させたクッキーは全て大吉入りなのだが、街の住人はそれを知るはずもなく。
「やった、これで温泉街に帰れるぞ!」
「良かったですね。それにしても……おかしいとは思いませんか? 今あなたは、苦役という僕の言葉を素直に受け入れました。
 つまり、あなた自身も心の底で、教団へ奉仕する事を苦痛に思っていたのではないですか?」
「それは……」
 核心を突かれて、心が揺らぐ若者たち。その奥底に秘めた罪の記憶を睦月は己のギフト『幽世の瞳』に映し出し、ひとつひとつと向き合っていく。
「貴方は両親と喧嘩別れして奉仕に来た事を悔いているのですね? 今から行って、素直にその気持ちを伝えてあげてください」
「ッ、ありがとうございます!」
「そして、その隣の貴方は……あ」
 瞳に映る薄暗い記憶。『殺してやる』と赤いペンで書かれた紙を握りしめて怯える男性。それは手伝いに来ていた蒼矢だった。
「蒼矢さん、すみません! 今あなたの記憶が――」
「それより睦月、大変だよ! KF団の教祖が行方不明なんだって。アイツ逃げたのかも!」


「くちゅん! だ、誰かがワシを噂しておるな?」
 温泉街の地下通路をバタバタと走りながら、KF団の教祖は悪魔の召喚陣へ向かっていた。
「何がどうなっておるのだ、ようやくこの温泉街の信者どもを生贄に、悪魔召喚が成るはずだというのに――ぬおっ!?」
 ヒュキィン! と高い音がして、教祖の足元が凍り付く。足元を見れば簡易式召喚陣の痕跡があり、罠にかかったのだとようやく気付いた。
「誰じゃ貴様は!」
「名乗るほどのものじゃないが」
 睦月から貰ったフォーチュンクッキーをザクザク咀嚼しながら、世界は教祖の前に立つ。
「あんだけ増えた信者を生贄にして悪魔を呼び出したら召喚者もただじゃ済まない。自殺するなら他人を巻き込むなよ」
 彼は妖精専門だが、傍目から見ても分かるほど、教祖の魔法陣は自虐の色を帯びていた。故に先回りしておいて、使えないよう破壊しておいたのだが。
「ワシはこの温泉街で旅館を作ろうと外からやって来た起業家じゃった。しかしこの温泉街の者達は、余所者であるワシに源泉を使わせまいと阻んだのじゃ!」
「――だそうだぞ、ねこまた様。許してやるか?」
「可哀相な事はあっても、人を殺していい理由にはならないにゃ!」
 世界が時間を稼ぐうちに駆けつけてきたちぐさが、両手を前につき出した。教祖服もといアイドル衣装を目にした瞬間、KF団の教祖がカッ! と目を見開いた。
「かわいいーー!!」
 ざっぱぁん!!
「にゃー!?」
 ダイダルウェイブ(温泉Ver.)が広範囲に降り注ぐ! 慌てて受け身をとった世界は、ずぶ濡れになりながらも何とか踏みとどまる事が出来た。仲間が信仰心を削いだ事で、教祖は確実に弱体化している!
「あの教団名は単純に趣向からかよ! まぁいい、今の弱さなら俺達でも倒せそうだ」
 氷の妖精を呼び出しながら連携をとろうと世界がちぐさへ目を向けると、そこにはお湯でべしょべしょに濡れて服の透けかけた際どい姿が――
「にゃー、服が張り付いて気持ち悪いにゃー……わぷっ!」
「着とけ」
 世界が白衣をちぐさに投げてよこしたのは、せめてもの良心だったという。後続として現れたあやめと睦月、そして境界案内人2人が目撃したのは、萌えるあまり鼻血の止まらない教祖と、白衣を肩からかけて震えるちぐさ、そして「俺を巻き込むな」と目で訴える世界による混沌とした現場だった。


「まさかKF団(クッキー)がそんなに危ないカルトだったなんて……」
 4人揃った特異運命座標が教祖を倒すには数ターンもかからなかった。縛についた教祖を転がし、悪魔の魔法陣を街の人に公開して一件落着である。
「ねこまた様、あやめ様、旅立たれてしまうのですか?」
「クヒヒ! まだまだ多くの人に幸せの首輪を広めなければいけませんからねぇ」
「僕のPV、バナナを舐めてるシーンばっかり再生回数が爆上がりしたって本当にゃ? 怖すぎるから消しておいてにゃ」
 仲間と一緒に帰ろうと睦月が踵を返すと、その背中ごしに声をかけられた。クッキーを配った時に助けた青年だ。すぐ後ろには両親もおり、不和が解消された事が伺える。
「アンタのおかげで俺は全てを取り戻せたよ、ありがとう! カルトから引き剥がすためとはいえ、あんなに的確な助言をくれるなんて。今回の件で心が救われた奴も結構いてさ。アンタ達は何者なんだ?」
 睦月は柔らかく微笑み、信仰蒐集のオーラを纏ってふわりと飛行した。おぉと民衆から驚嘆の声があがる。
「僕達が何者か……それはあなたがたが決めればいいことです」

成否

成功

状態異常

なし

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