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シナリオ詳細

五欲三毒もろとも喰らわば

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 豊穣郷カムイグラ。『静寂の青』(旧絶望の青)の先に広がった島国であり、その首都高天京では神を交えた壮絶な戦いがあった。鬼人差別の誤解が解けたり禍神が倒され清き神として再誕したり眠っていた帝が目覚めたり四神が人里へ積極的に接触するようになったりと様々な変化があったが、その中に挿入されていたのが『羅刹十鬼衆』という魔種集団による大規模首都襲撃事件であった。
 これはローレットの介入によって防がれたが、まだ羅刹十鬼衆を倒せたわけではない。
 結界によって守られた首都に代わり、圧倒的人手不足によって手が回らなくなった地方へと彼らの手は伸び、そして見えぬうちにいくつもの村々が落ちていたという。
「しかしいつまでも隠れていられるわけでは御座いませんぞ!」
 両手を合わせ、青い肌の仏僧めいた男が吠えた。
 ツノのまわりには赤い刺青がはしり、これまた赤い数珠を手にかけている。
 僧衣も見事なものではあるが、詳しいものが観察すれば彼が破戒僧であることがわかるだろう。
 それも凶悪な、『犯持戒人』の罪に塗れた者だと。
「それでこの有様ですか、珍法。子鬼も使いようとはいえ……」
 声に応えたのは刀を下げたひとりの女性である。
 辟易したような声には、しかしハッキリとした拒絶の色はない。
 なぜなら彼女もまた、『邪見』という重い罪に塗れた存在であるからだ。
 帯刀した女の名を『焦熱地獄』初鹿野・露葉。破戒僧の名を『大焦熱地獄』珍法。
 いずれも先ほど名の出た『羅刹十鬼衆』の幹部魔種たちである。
 二人が振り返ると、浅緑色の子鬼(ゴブリン)たちが荷物を抱え列を作るさまが見えた。人目につかぬような谷を、まるで餌を運ぶアリのように途切れぬ一本の行列を作って歩くさまは壮観ですらある。
 子鬼たちの抱える荷物にはいくつか竹でできた檻があり、その中には尼僧や幼い子供の姿が見える。露葉はそのさまにこそ辟易した顔と声を出し、刀につい手が伸びる。
「おっと。その刀を拙僧へ抜いて貰ってはこまりますぞ露葉殿。拙僧等は貴殿の正義を遂行するためのいわば利害関係。少なくとも『例の計画』が叶うまでは……」
「わかっています」
 ぴしゃりと閉じるように言い切る露葉。あまりに棘のある様子だったが、珍法はまるで意に介さぬように平然としている。代わりに先ほどの話の続きをはじめた。
「拠点の荷物はこれで全部。輸送体もいくつかに分けましたし……仮にいくつかが潰されても大きく困ることはありますまい」
「行方を辿られたらどうする」
「それこそ、ハハハ!」
 渇いた笑いを浮かべ、珍法は細めていた目を大きく開いた。
「そこは子鬼どもの長、我流魔殿の居城。内政で手一杯の高天京にどうにかできるものではありませんぞ」


 カムイグラ地方村。子鬼による被害で半壊したその村の集会場に、ローレット・イレギュラーズたちが集められていた。
 その内の三人が――鬼城・桜華(p3p007211)、黎明院・ゼフィラ(p3p002101)、妙香良 比丘尼(p3p008782)である。
 そのうちのゼフィラが依頼書が囲炉裏の前に腰を下ろし依頼書をあらためて広げる。
 同じく囲炉裏をかこむ面々の顔は火の明かりに照らされ、心配そうに見守る村長代理の顔がそのひとつ外側にあった。
「子鬼の群れが村人らしき子供を輸送するのが見えた……と」
 ゼフィラがそう言いながら床に広げたのは依頼書とは別に添付された資料のひとつだ。
 カムイグラの子鬼事件を執念深く追い続けていた桜華が見つけてきた情報であり、たまたま居合わせた比丘尼と協力し行列を護衛あるいは監視する魔種たちの姿と会話内容を隠密に取得していた。
 数度頷くゼフィラ。
「この『我流魔(ガルマ)』というのは、たしか高天京を一度襲った子鬼軍団の長だったな?」
「そう。私が追ってる敵の大将でもある」
 桜華が腕を組み、トーンの低い声で言う。『餓鬼道』ガルマとは飢餓から反転した鬼人であり、その特殊能力は『子鬼の生成と自己繁殖』。ガルマの生み出した大小様々な子鬼というモンスター群は廃村や洞窟に巣を作り、狩りも栽培もせず略奪のみで生活をする。
 そこそこ以上に高い戦闘能力をもつローレット・イレギュラーズにとっては脅威にならないし、高天京からしても魔種や肉腫被害に比べれば些細な害獣程度の認識にしかなれない。しかし子鬼らは確実に弱い村落を狙い、人々の生産能力を徐々に蝕んでいくのだ。食料という食料を奪った上、一部の住民を浚っていくという形で。
「その『居城』とはな。輸送隊を襲わない手はないだろう。実際……」
 改めて依頼書を皆に見えるように翳してみせるゼフィラ。
 依頼書の内容は、村から浚われた子供達の救出である。
「依頼内容からもそぐわない。どうだろう?」
「賛成ですわ」
 それまで聞きに徹していた比丘尼が手をかざし、そして桜華も異論無しとばかりに頷く。
「決まりね。今すぐ出立するわ。輸送体のルートは予測できてる。馬を走らせて先周りすれば追いつけるはずよ」

 依頼内容は輸送中らしき子供達の救出。
 戦う相手は子鬼の一団。
 その先にいずれ見えるは、子鬼の長や魔種組織との対決である。

GMコメント

●オーダー
 子鬼の一団と戦い、輸送中の子供達を救出しましょう。

 カムイグラの山岳地帯にある谷を移動中の『子鬼の一団』
 皆さんはこの場所にやや余裕をもって先周りできます。罠を仕掛けたり茂みにひそんだりといった事が可能でしょう
 一応事前の確認によって魔種などの横やりは入らないことが分かっています

●エネミーデータ
 一団の内容は『大将×1』『武装子鬼×複数』『雑子鬼×大量』といった様子です。

・子鬼(雑子鬼)
 一般的に子鬼と呼ぶとこの雑子鬼になります。
 子供程度の背丈と浅緑~薄紫色の肌。子鬼同士でコミニュケーションはとっているようですが知性が低く人語をろくに解しません。
 みなが想像する子鬼像であり、弱く愚かです。
 武装も木の槍や投石といった粗末なものですが、とにかく数があり群がってきます。
 回避ペナルティを高めファンブルを出させるといった戦法が得意です。

・武装子鬼
 城内の武器を装備した、少し強力な子鬼です。
 体格も雑子鬼よりも大きく、やや小柄な人間程度はあります。
 槍、刀、弓、鎧。そういった装備でがっちり固めた彼らは雑魚と呼ぶには少々歯ごたえがあるでしょう。

・子鬼大将
 群れを率いる子鬼のリーダーです。
 鎧を装備し特別にきたえた武器で戦います。
 皆で協力して戦わなければ倒す事が難しく、そして暫く抑えておくにもそれなりの工夫と強さが必要です。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 五欲三毒もろとも喰らわば完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月16日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
ティスル ティル(p3p006151)
幻耀双撃
鬼城・桜華(p3p007211)
子鬼殺し
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
小金井・正純(p3p008000)
燻る微熱
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
不運《ハードラック》超越
物部 支佐手(p3p009422)
黒蛇
ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)
陽気な骸骨兵

リプレイ


 夜更けた森の中。山岳地帯の谷にあたるその場所は、かろうじて獣道があるかどうか。
「情報がなければ、ここを子鬼たちが通るとは思えないだろうな」
 『泥人形』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)が木の上に立ち、遙か遠くを見つめている。
 夜闇の先は、見通せないほどに暗い。
 ややすると、二羽の雀と一羽の鳩が飛んできたのが見えた。それを確認し、枝から飛び降りる。
「子鬼が人を襲い攫う、よくある話と言い切るには被害に遭った者達にとって悪辣にすぎるな……。
 子鬼共の裏幕には魔種がいるのだろう、悲劇の連鎖共々、奴らの鼻っ柱をたたき折ってやるとしよう」
 今度は、独り言ではない。飛んできた鳩を翳して自らの腕にとまらせ、『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)が長い髪の間からちらりと見える片目で振り向いた。
「人を害し、決して分かり得ぬもの。
 本能の儘に奪い、喰らうだけ。
 ならば、小鬼は此処で誅し、祓うが筋かと」
 そんな風に同意を示し、今度は彼女の頭上を飛び抜けていった雀たちに視線を動かす。
 雀は『銀雀』ティスル ティル(p3p006151)の周りを二周ほどしてから肩にとまり、チチチと鳴いた。
「その通りね。――にしても」
 ここ最近の『羅刹十鬼衆』の動きはあまりにも大胆だ。
 これまで中央の目を逃れ地方で細々としかし着実に力を付けていた彼らの状態に対して、まるで露見を恐れていないかのように見える。実際そうなのだとしたら……。
「厄介ね」
「ならば、なおのことこの企みは潰さねば」
 彼女たちの作業を手伝っていた『黒蛇』物部 支佐手(p3p009422)が手を止めて汗を拭う。
 作業というのは、ティスルと『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)が率先して行う罠の設置作業のことである。
 人にとっては低すぎるが小柄な動物にとっては足をひっかけてしまう程度に危ない細縄。ナリコにみせかけて吊るし、切ると足元の網が重い枝と連動して落ちる仕掛けになっている捕網罠。
 どちらも簡単なものだ。動物を捕獲するには適しているが、子鬼たちを壊滅させるほど決定的ではない。
 決定的にしているのは、ティスルたちによって巧妙にそれらが隠されていることだ。
 巧妙に隠した罠というのは相手の心を乱す。何もない場所にすら疑念を抱かせるようになるのだ。
「子鬼の一団、以前から何度か相対したことはありますが、あれだけの数では厄介極まりないですね。
 豊穣は未だ屋台骨がしっかりしてしていません。そういう時に犠牲になるのは、いつだって政治の中枢から遠く離れた者たちですから……」
 豊穣を立て直そうと苦心している『彼ら』の事をおもい、目を伏せる『燻る微熱』小金井・正純(p3p008000)。
 みな同じ想いを抱いているのだとわかる。
 だからこそと言うべきか。ゴリョウはあえて大きな声を出して背伸びをした。
「ぶはははッ、子供を奪ってくたぁ全くふてぇ野郎どもだ! しっかり潰さねぇとなぁ!?」
 背伸びしたまま振り向いたせいで大きな腹が揺れ、ニッとわらったゴリョウの表情と相まって正純たちの顔に笑みがやどる。
「確かに! 戦う力のない者を狙うなど不届き千万! お灸をすえてやらねばなりませんな!」
 『陽気な骸骨兵』ヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が全く同じ体勢と表情を作った。全身骨(体脂肪率零パーセント)のヴェルミリオがやると落差がはげしいのか、今度こそ仲間達が声をあげて笑った。
 顔を見合わせニッと笑い合うゴリョウとヴェルミリオ。
「子鬼達の輸送部隊を潰す事は我流魔、ひいては『羅刹十鬼衆』に大打撃を与える絶好の機会」
 気を引き締めるように、『子鬼殺し』鬼城・桜華(p3p007211)が重く呟く。
 これまで幾多の戦いをくぐり抜けた刀、『子鬼殺し』に手をかけ、すらりと抜いた。
「子鬼は全て殺す、慈悲はない」
 夜闇の刃が、月光を照り返した。


 あえて、ある子鬼の主観から語ろう。
 身の丈80センチ強。短い足に短い手。しかし夜闇を見通すだけの目があり、指もながく器用だ。木の棒の先端に石を巻き付け棍棒の威力を上げる程度のことは、彼にはできた。
 それだけをとれば人間に酷く劣るが、何にも代えがたい強みが彼らにはある。
 まず子鬼は思想をもたなかった。大事なものがなかった。あるのは巨大な餓えと、それに連なる浅い欲望のみだ。
 他の動物(主に人間)から食料その他全てを奪い、冬には穴蔵にこもって春になるとまた奪う。それを永遠に繰り返せると思っているし、来年どころか明日のことすら考えてはいなかった。
 だから彼らにとって命は軽く、仲間は軽く、血は薄く情ももたない。
 人間の子供を檻に入れて移動させろと子鬼大将に命令されたからそうしているが、今すぐにでも泣く子供を棍棒で殴りつけて黙らせたかった。運ぶくらいなら殺して喰った方がいくぶんかマシだとも思った。
 そうしないのは命令されたからで、命令の意味は理解しない。できるとも思っていないし、そのことを苦にもしない。
 だからだろう。
 前方に大きな腹をしたオークを見つけた時、まずなんとも思わなかった。
 自分達に敵対するかどうかは気になるところだが、せいぜいそれだけだ。
 人ならここで相手との接し方を考えるのだろうが、子鬼は違った。殺して喰うか、殺して捨てるか、あるいは相手がどこかへ消えるのを待つか。その三つしか考えていなかった。
 オークはおおきな腹をポンと叩き、笑った。
「ぶはははッ!」
 笑いながら、オカモチを取り出した。金属製の四角い箱だ。側面をスライドして開いて見れば、そこには甘辛く野菜と牛肉を炒めたものが良い香りを放っている。
 思わず見とれる子鬼は、オークの後ろからスッと姿を見せた灰色髪の女にも目を向けた。
 ひどく傷付いた娘だ。その様子が、どうにも子鬼の気分を引きつける。更には紫髪の娘も現れ、子鬼たちは色めきだった。
 美味い餌にそそる娘。これ以上無い組み合わせに舌なめずりをしていると、他の子鬼たちがざわつきはじめる。
 オークの後ろから現れたもう一人の娘が、奇妙なほど自分達の気分を引きつけるのだ。この娘を殺して八つ裂きにしたいという欲求が、子鬼から湧き上がる。
「なるほど。そういう力か」
 木により掛かり、ハアと息をついた男がいる。泥の沼から這い出たような、奇妙な雰囲気の男だ。
「充分だ。やろう」
 男が――

 マッダラーが飛び降りると同時にナイフを抜き、ロープのひとつを切断した。
 ガランというはげしい音と共に子鬼たちの足元から網が持ち上がり、数匹の子鬼を高く釣り上げた。
「人の世を脅かす狼藉の限り、お天道様にかわって、泥人形がお前さんらの罪を裁いてやろう」
 挑発するように手招きをするマッダラー。
 残る子鬼たちが牙と舌をむき出しにして走り出すと、マッダラーはぽいっとナイフを高く上に放った。
 そう脅威になりそうもないサバイバルナイフだ。しかし刃物が宙を舞うというのはどうしても注意をひきつけてしまうようで、子鬼たちは走りながらもつい上向き――足元にしかけられていたスネアトラップに躓き一斉に転倒した。
「豚も居るぜ熾燃共が! 冥土の土産に最後の晩餐でもくれてやらぁ!」
 ゴリョウが叫びながら突進し、大型の籠手をはめた拳で倒れた子鬼を殴りつける。更には縦の側面を使って殴りつけ、子鬼の顔面を土におおきく埋め込んだ。
 転倒していなかった子鬼たちは思わず飛び退き、きょろきょろと周りを見る。アッシュはここぞとばかりに手をかざし、キュッと指をおる仕草をする。
 それだけで周囲に巡らされていた灰色の糸が引っ張られ、転倒していた子鬼たちの手足が切断されていった。
 手足を失ってまで起き上がれる者はそういない。子鬼たちであればなおのことだ。
 雑子鬼よりも多少知恵の回るらしい武装子鬼たちはじっと足を止め、周囲の地面に注意を向ける。子供達を運んでいた檻を掴んでいた子鬼に前へ出るように命令すると、自ずと来た道を後ろ向きに下がり始めた。
 彼らにとって安全が確保されたエリアは、今まで歩いてきた道以外にない。他はスネアトラップが仕掛けられている可能性があり、ひっかかればアッシュによって足を断たれる。そういう恐怖が、彼らの足をとめさせていた。
 第一、暗闇を見通せる彼らがトラップを発見できなかったのだ。なんてことのない地面にも巧妙に隠されていると考えてしまっても不思議でないだろう。
 そこへ、桜華が勢いよく突っ込んでいく。それも『大きく跳躍して』だ。
「我が名は鬼城・桜華! 貴様ら子鬼を狩る者ぞ! さあ、我が子鬼殺しの刀の錆になりたいものは掛かってくるがいいのだわ!」
 武装子鬼のひとりがそれを迎え撃とうと斧をとる――が、桜華はあろうことか武装子鬼たちでなく、いましがた網によって釣り上げられた子鬼たちを刀で思い切り斬り付けたのだった。
 ギャアという声が重なり、血と内容物をぶちまけながら汚いくす玉と化した子鬼たち。
 それを見て、武装子鬼の足がびくりと止まる。
 スネアトラップだけではない。一度安全に通ることのできた地面でさえも、網が仕掛けられている危険に気付いたのだ。そして釣り上げられたが最後、汚いくす玉にされるのだ。
 ギラギラと目を光らせ、刀を構え直す桜華。
 進むも引くもできなくなった子鬼たち――の一方で。
「今よ!」
 ティスルが凄まじい速度で子鬼の集団へ突っ込んだ。空を飛び、ガチンと顔のまえで腕を交差させ腕輪をぶつける。こするように腕をひらくと、腕輪はひとりでに肩なの形に変化した。
 両手にそれを握って子鬼を螺旋状に斬り付けると、ついでとばかりに子供達を閉じ込めていた檻の上部を破壊。
 身を伏せていた子供たちの上で、檻がパカッと展開した。
「怖かったら目を閉じていてね? 大丈夫、私達がなんとかしてみせるから!」
 木の幹にタンッと足を付けてターンし、動きについて行けず振り返る子鬼の首を断つティスル。
 それまで木の幹の裏で気配を殺していた支佐手が飛び出し、子供のうち二人を抱えて別方向へと走り出した。
 雑子鬼たちにとっては、もはや子供のことなどどうでもいい。目の前の危機をどう切り抜けるかしか考えになかった。
「ヴェルミリオ殿、そちらを」
「合点承知ですぞ!」
 同じく身を潜めていたヴェルミリオも姿を見せ、支佐手とは別の樹幹の裏から飛び出し二人の子供を抱えた。
 見るからにスケルトンなヴェルミリオに子供がぎょっとしたが、ヴェルミリオの放つ妙に優しい雰囲気のせいか悲鳴はあげなかった。
「おっと、驚かないでくだされ! スケさんは骸骨でございますが、仲間と共に皆さんを助けに参りました骸骨でございます! もう大丈夫大丈夫ですぞ。皆さんの背中はこのスケさんがお守りいたしますゆえ!」
 子供はあと一人のこされている。子鬼の脇。手の届く位置にだ。
 スッと手を伸ばし、子供の髪をつかみギャアギャアと叫ぶ。手にしていた粗末な石ナイフを子供に突きつけ――ようとした所で、子鬼の腕と胸が矢によってピン留めされた。
 続いてすぐに、もう一本の矢が子鬼の頭に突き刺さる。
 正純の放った矢だ。正純はすぐさま走ると、子供を後ろに庇いながら弓を構え直す。
「子供達はもう大丈夫です! 攻撃を!」
 武装子鬼たちへと矢を放つ。矢は流星のように光ると分裂し武装子鬼たちへ殺到した。
 先頭の武装子鬼がそれを切り払い、グガアと獣のように吠えた。

 この時点で『失敗だ』と考えた子鬼はどれだけいただろうか。
 雑子鬼よりも多少知恵の回る武装子鬼といえど、目の前の敵をどう殺すかしか頭にない。
 突進する武装子鬼が石斧でマッダラーの頭をたたき割り、倒れた所を更に滅多打ちにしてニヤリと笑った――次の瞬間、伸びたマッダラーの手が武装子鬼の腕を掴む。
「どうした。殺すつもりではなかったのか?」
 崩れていた頭がひとりでに元に戻っていく。
 ヒッと声を上げた武装子鬼が必死になってマッダラーの顔面を殴り続けるが、歪むそばから元に戻り続けた。
 最後には変形した腕が武装子鬼の喉をアイスピックのように貫き、血をまき散らしながらゆるんだ土に蹴り倒す。
 その一方で、支佐手は後ろに子供達を庇うように立ちながら剣を抜いた。
 『火明の剣』という、水銀を塗布した巫術用の剣だ。キラリと光る刃へ本能的に恐れを見せた武装子鬼に、支佐手は斬撃を――浴びせる事無く術を発動させた。
 彼にとっての剣は武器というより儀式媒体だ。足元に描き出された白銀の陣からは黒き蛇の幻影が泳ぐように飛び出し、武装子鬼の頭へとかじりつく。そしてがじぼりと何かを砕く音をさせながら、全身を飲み込んで行く。
 一方でアッシュは弓をとり、正純と並んで大きくそれを引く。武装子鬼の二人組が剣をとり突撃を仕掛けるも、二人は全くブレなかった。矢を放つ。それだけで武装子鬼の額の頭蓋を矢が貫き、脳を破壊されたのか白目を剥いて同時に倒れた。
「貴方がたは痛み、苦しみ、地を這うがお似合いですよ」
「豊穣の安寧を乱すのであれば、看過できない。ここで潰えろ」
 冷たく言い放つ二人。
 別の武装子鬼がハンマーを持って襲いかかるも、ヴェルミリオがバッとその武装子鬼へ飛びかかった。それも正面から抱きつくようにだ。
 振り上げたハンマーをそのままに両手両足で抱きつかれた姿勢になった武装子鬼。そのがら空きの背中めがけ、ヴェルミリオはナイフを何度もつきたてまくる。崩れる武装子鬼を確認し、ゴリョウと桜華、そしてティスルが残る一体へと迫った。

 あの時点で『失敗だ』と考えた子鬼は、実のところ『一体だけ』だった。
 この一団を指揮していた子鬼大将である。鎧に身体を包み、どこかの大名が持っていたらしい刀を腰にさげた彼は、そこいらの子鬼よりずっと知恵がまわった。そしてだからこそ、子供達を奪われた時点で自分に未来がないことを悟ったのだ。
 子供達を取り返すのは絶望的。残れば殺され、逃げても仲間に処罰の対象として殺される。だから、一目散に来た道を逃げ出したのだ。
 どれだけ走ったか。チチチッという雀の鳴き声で足を止める。
 小鳥に怯えたのではない。
 いつのまにか素早く回り込んでいたティスルが木の幹の裏からするりと姿を見せたのだ。
 子鬼大将は刀を抜き、構え、そしてゆっくりと間合いをはかり……雄叫びをあげて斬りかか――ったところで、盾にそれを止められた。見た目からは想像もできないような機敏なスウェーで割り込んだゴリョウの盾にである。
 次の瞬間、刀を放つティスル――そして子鬼大将の背後から剣を突き立てた桜華。
「コロサ、ナイデ」
 子鬼大将が血を吐きながら言った。
「ハンセイ、シマス。ゴメンナサイ。モウ、ワルイコトハ、シマセン」
 涙を流し懇願する子鬼大将。
 桜華は刀をゆっくりと抜き。
「その言葉」
 子鬼大将の首をはねた。
「聞き飽きたのだわ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete
 
 ――子鬼の一団を壊滅させました。
 ――大将の持ち物から地図を発見しました。
 ――子鬼たちはあるエリアに集められるように計画されているようです……。

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