PandoraPartyProject

シナリオ詳細

雲雀の翼

完了

参加者 : 5 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 赤とイエロー、ピンクに紫。色取り取りのチューリップが庭園いっぱいに広がる。
 春風は優しく花々を揺らし、陽光が朝露に反射した。

 朗らかな陽気と爽やかな風に吹かれ、『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)はくるりと振り返る。
「とっても綺麗なの!」
 金色の髪がふわりと流れて、アリスブルーのスカートがゆっくりと揺れた。
 アルエットは顔を綻ばせ、ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)の元へ走り寄ってくる。
「ジェラルドさんも早く、早く!」
「お、おう」
 ジェラルドの手を掴んだアルエットはその勢いのまま、彼を赤いチューリップの前まで引っ張った。
 小さなアルエットに手を掴まれているものだから、ジェラルドの姿勢は前のめりになっている。
「ほら、見て!」
 青年は少女の言葉に視線を上げてチューリップ畑を見渡した。
 赤い色の波が押し寄せて、その後ろに眩しいイエロー、優しいピンクと美しい紫が続く。
「白いチューリップや模様が入ったものもあるみたいですね」
 アルエットの隣に寄り添うのは鶫 四音(p3p000375)だ。
「そうなの? そっちも見てみたいね!」
 四音に満面の笑みを向けるアルエットは、指をそっと絡ませる。
 お互いの指にはお揃いの指輪が光っていた。

「それにしても壮観ですね」
 リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)は帽子を押さえながら、目の前に広がる景色に目を細める。
 石造りのアーチを抜けて、石畳の通路を歩いて行けば、開けた丘に数万のチューリップが咲き誇る庭園。
 そこへリースリット達は遊びに来ていたのだ。なだらかな丘にはチューリップだけではなく、菜の花やスイセン、ポピーなども咲いている。
「そうだね! さすが『レントルスガーデン』だね~」
 額へ水平に手を置いて、ぐるりと辺りを見渡す炎堂 焔(p3p004727)は、その美しく煌めく風景に感嘆の声を零した。
 幻想南部にあるこの庭園は、花を慈しむレントルスという貴族が開いているものだ。
 リースリットの生家であるファーレル家とも交流があるレントルス。その昔、彼女の父であるリシャールに助けられた恩義があるとかそういう話しも聞いた事があったとリースリットは思い出していた。
 幾度か訪れた事があるリースリットでも、このチューリップ畑には感動してしまう。
「こんなにも花が……」
 文・久望(p3p010407)は細い茎の上に乗っかるチューリップの花弁をじっと観察していた。
 久望の故郷である覇竜の地には、手入れが行き届いた広大な庭園は見なかった。特に青空の下、花が咲き誇っている事に感動を覚える久望。
「空中庭園に喚ばれてからというもの、驚かされてばかりだな」
 世界は自分が思っていたよりも大きく広いのだと久望は口の端を上げる。

「そういえば、ガーデンカフェもあるんだよね?」
 焔がこてりと首を傾げながらリースリットに視線を向けた。
「はい。たしかこの先に……」
「あ、あれかな?」
 チューリップ畑を抜けて少し小高くなった丘の上にガーデンテラスが見えた。
 テラスには木製の椅子が置かれ、花畑を一望できるようになっているらしい。
「中はどうなってるのかな?」
 アルエットは白いドアをそっと押してみる。
 陽光の下から店内へ。
 明度差に数度瞬きをして慣れた視界に映るのは、フラワーアレンジメントと可愛い絵本。
 店内を見渡せば、静かなソファ席と陽光が降り注ぐサンルームがあるようだった。
 ハーブティの良い香りと、紅茶の香ばしい匂いがジェラルドの鼻腔を擽る。

 焔はリースリットの袖を小さく引いた。
 アルエット達が店内へと入って行く後ろ姿を確認して、焔はリースリットにこくりと頷く。
 実は今日はアルエットの誕生日なのだ。
 事前にお店へと連絡を入れて、バースディパーティをこっそりと準備していた二人。
 他の仲間にもそれは伝えてあるから、プレゼントもお店に置いて貰っているのだ。

「リースリットさん、焔ちゃん! こっちだよー!」
 アルエットの元気な声が聞こえる。
 彼女の驚いて喜ぶ顔を想像してリースリットと焔はくすりと微笑み合った。

GMコメント

 もみじです。
 アルエットの誕生日をお祝いして頂きありがとうございます!

●目的
 アルエットの誕生日を楽しむ

●ロケーション
 幻想南部にあるレントルスガーデンです。
 広大な敷地の中には美しい庭園が広がります。
 見頃はチューリップ、菜の花、スイセン、ポピーなど。
 散歩道をゆっくりと歩く事ができます。
 花畑を見渡せる丘にガーデンカフェがあります。

 花や雑貨を提供しているお店もいくつかあります。
 ガーデンのお土産やプレゼントにも最適です。

●出来る事
【A】カフェでパーティ
 花畑を見渡せる丘にガーデンカフェがあります。
 アルエットの誕生日パーティをしましょう。
 ガーデンカフェにはテラス席や、サンルーム、ゆっくりソファ席があります。
 レントルス卿の厚意で貸し切りなのでどの場所で寛いでもかまいません。
 お食事しながら雑談に花を咲かせましょう。
 アルエットへお祝いの言葉を掛けたり、プレゼントを渡したり。

○メニュー
・ポピーの花を添えた前菜サラダ
・カルパッチョ、オイルサーディン
・生ハムとチーズ、トマトとモッツァレラのカプレーゼ
・ソーセージ盛り合わせ、フライドポテト
・甘辛手羽元チキン、若鶏のからあげ
・ポークパテ、鶏レバーパテ、自家製コンビーフ、厚切りベーコンエッグ
・ローストビーフ、煮込みハンバーグ、1ポンド牛ステーキ
・パスタ、ピッツァ
・バゲット、ガーリックトースト
・フレッシュジュースやお酒なんかも用意しています。
・アルエットのバースディケーキ(最後に出て来ます)

【B】花畑をお散歩
 青空の下、美しい庭園をお散歩しましょう。
 赤とイエロー、ピンクに紫。色取り取りのチューリップが庭園いっぱいに広がっています。
 菜の花や、スイセン、ポピーなども咲いています。

【C】お店巡り
 花屋、雑貨屋などがぽつりぽつりと並んでいます。
 ガーデンで育てた花々を売っていたり、フラワーアレンジメントがあります。
 雑貨屋にはお花をモチーフにしたアクセサリーなどが売っています。

●NPC
『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)
 自分の誕生日の事なんてすっかり忘れて、友達と花畑に来た事が嬉しいようです。
 楽しくはしゃいでいます。躓いてこけたりするかも。
 プレゼントを渡されたりサプライズパーティとしてケーキが出て来た際はとても驚いて喜んで泣いてしまうかもしれませんね。

  • 雲雀の翼完了
  • GM名もみじ
  • 種別リクエスト
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年04月21日 22時05分
  • 参加人数5/5人
  • 相談8日
  • 参加費300RC

参加者 : 5 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(5人)

鶫 四音(p3p000375)
カーマインの抱擁
※参加確定済み※
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
紅炎の勇者
※参加確定済み※
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
※参加確定済み※
ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)
二花の栞
※参加確定済み※
文・久望(p3p010407)
運命で満たすは己の欲
※参加確定済み※

リプレイ


 アジュール・ブルーの空から柔らかな太陽の光が降り注ぐサンルーム。
 テラスへと続くドアを開ければ、ガセボさながらの開放感と共に、爽やかな風が吹き抜ける。
「わぁ! とっても素敵な所なの!」
 目を輝かせて羽をぱたぱたと揺らす『籠の中の雲雀』アルエット(p3n000009)は、目の前に広がるアンティークカフェの店内をじっくりと見渡した。
 その様子に顔を綻ばせるのは『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)と『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)だ。
 今日は『アルエットの誕生日』なのだという。それが本当か嘘か、リースリットと焔には分からなかったけれど。何れヘルムスデリーに住むギルバート・フォーサイスに話しを聞く事もあるだろう。
 だから、と焔とリースリットは視線を合わせる。
 目の前の彼女(アルエット)の誕生日は今日である。きっとその事実だけでいいのだ。
 今日はそういう難しい話しは置いておいて、思いっきり楽しむ。そう決めたのだ。
『不屈の』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)は妹分のアルエットが驚く様子を想像して、少し上ずった笑みを浮かべる。期待を隠せないジェラルドの尻尾の様子に『運命で満たすは己の欲』文・久望(p3p010407)は口の端を上げた。同じ亜竜種でなくとも、ジェラルドが高揚を抑えきれない事がわかってしまうだろう。
 くすりと微笑んだ『カーマインの抱擁』鶫 四音(p3p000375)は親友であるアルエットのお誕生日祝いに、らしからぬ程、心が弾んでいるのを自覚する。
 めちゃくちゃに祝ってやろうと、ポケットの中にあるクラッカーをそっと握った。

「アルエットちゃん!」
「ふえ?」
「せーの!」
 焔に呼ばれてくるりと振り返ったアルエット。
 瞬間、クラッカーの音が響き、細いリボンと紙吹雪が部屋の中に舞い上がる。
「アルエットちゃん! お誕生日おめでとー!」
「お誕生日、おめでとうございます!」
「おめでとう御座いますアルエットさん。喜んで頂けたら幸いです」
「ハッピーバースデー、アルエット!」
「御目出度う」

 一斉に訪れた衝撃に、目を数度瞬かせたアルエットは「はわ、わ」とその場にへたり込んでしまった。
 顔を真っ赤にしたアルエットの瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「あぅ……ありがとうなの。すっごく嬉しいよぉ!」
「ふふ、サプライズ大成功だね!」
 焔がにっかりと笑顔を向ければ、こくこくとアルエットは頷いた。
 感動のあまり泣き出してしまったアルエットをジェラルドが抱え上げる。
「さ、飛びっきり楽しもうぜ! 特等席までご案内だ!」
 ジェラルドはそのままアルエットを『お誕生日席』に座らせ、優しく頭を撫でた。
「今日ぐらいは好きなもん食ったりパーッとはしゃいじまってもバチは当たらねぇさ!」
「食事もプレゼントもありますからね? 楽しみにして下さい」
 アルエットの隣に座った四音はこっそりと耳打ちする。
「――さぁ、それじゃあお誕生日パーティーを始めよっか!」
 焔の元気な声と共に、爽やかな風がサンルームにそよいだ。

 久望はサンルームから見えるチューリップ畑を見つめ素晴らしいと小さく呟く
「俺は、このように花が咲き誇っている場所を、他に見たことが無い。心が華やぐというのは正にこういうことだろう。だからこそ、今日という日がアルエットにとって良い日になることを願うばかりだ」
「えへへ……久望さんはとっても優しい人なのね」
 会ったばかりだというのに、こんなにも自分の事を気に掛けてくれる久望の人柄に、アルエットは親しみを覚えた。


 運ばれてくる料理はどれも見た目が華やかであった。
 サラダだけとは言わず、どの料理にも花飾りやソースのデコレーションがされている。
「見た目も可愛いね」
「そうだね!」
 可愛いお皿に並ぶ料理に、アルエットと焔は朗らかに笑い合った。
「料理も華やかなものが多いのは、土地柄だろうか」
 久望は覇竜に住む亜竜種だ。基本的に穴蔵生活を送っているから、こんな風に料理を飾り付けることも少ないのだろう。
「とにかく目新しい物が多いし、馴染みのある料理でも盛り付けが素晴らしい。俺も、見習いたいものだ」
 シェフオススメの甘めの赤ワインを傾け、前菜のポークパテを摘まむ久望。

「皆はどのお料理が好き? ボクは甘辛い味付けのチキンが美味しかったな」
 焔がテーブルを囲む仲間達に問いかける。
「どれも美味しくて、どれが一番というのも甲乙つけ難いですけど……焔さんと同じになってしまいますけど甘辛手羽元チキン、確かに良いですね」
 ハニーマスタードのソースに、塩こしょうや唐辛子、香ばしいたれを付けて焼き上げたもの。
 骨があるので少し食べにくいのが難点だが、それを鑑みても『美味しい』の一言に尽きるとリースリットは焔に頷く。
「だよね! こうやって齧りつくのが最高に美味しい!」
 パクリと甘辛手羽元チキンを頬張る焔。
「確かに……フォークとナイフで食べる事も出来るのですが、ワイルドに食べるのも美味しいですよね」
 リースリットは焔に習ってチキンに齧り付く。口の端に付いたソースをハンカチで拭いてアルエットと四音に向き直ったリースリット。
「……ふふ、アルエットさんと四音さんは如何ですか?」
「私は、ソーセージの歯ごたえ等が好みです」
 リースリットの問いかけに四音はプツリとソーセージにフォークを挿した。
 この中から肉が弾ける感じが良いのだとうっとりと応える四音。
「アルエットもソーセージ好きよ」
「ふふ、一緒ですね。こうして一年の節目を感じるのも良いものですね。皆さんと楽しそうにしているアルエットさんを見ているだけで胸が高鳴ってしまいますよ」
 二人だけの閉じた世界に浸るのも悪く無いけれど。アルエットには青空の下で笑っていて欲しいと思ってしまう自分が居るのも確かなのだ。以前までの自分からは想像も付かない程、不思議な感覚。

 久望はモッツァレラチーズを凝視して首を傾げる。
「これは、何だ?」
 フォークでチーズを少しだけ取って口に運べば、柔らかさと程よい酸味が口の中に広がった。
「柔らかいがさっぱりして、後味が良い。ジェラルド、これの作り方は分かるか?」
「乳と酢で作るんだろうが……やったことはないな」
 覇竜領域の出身であるジェラルドが知っていればと思ったが。調べる必要がありそうだ。
「しかし、世界が広がりそういった知識を味わえるのも素晴らしい」
 豊かな食文化はどんどん取り入れて行きたいと久望は思っている。
「里でも、再現してみたいな。あ、それと、折角だから野菜はしっかりと食え。此方の野菜は、生食に適しているからな」
「ああ、言われなくても!」
 ジェラルドの前には肉と山盛りのサラダが置かれていた。

「――じゃあ、お待ちかねのケーキだよ!」
 運ばれてきたバースディケーキには、苺やベリー、キウイにオレンジ。沢山の果物が乗せられていて、チョコレートの板にはハッピーバースデーと綴られている。
 ロウソクを大きいのを1つと、小さいのを5本挿して火を灯す。
 キラキラの光がアルエットの瞳に映り込んだ。
 焔は顔をリースリット達と見合わせて、よく歌われるバースディソングを歌い出す。
 カフェの店長が、アドリブでピアノを奏で出せば、嬉しさに笑顔が溢れた。
「ハッピバースデートゥーユー♪」
 歌い終わると共にアルエットがロウソクの火をふぅと吹き消した。
 沸き起こる拍手と歓声にアルエットの瞳から、再び涙が零れ落ちる。
「ありがとうなの! みんな大好き!」

 焔はホールケーキを一生懸命切り分けた。
「あわ……」
 少し大きさが揃わなかったのはご愛嬌。にししと笑った焔は一番大きいケーキをアルエットの前に置く。
「一番大きい部分はお誕生日のアルエットちゃんに!」
 バースディケーキをぱくりと頬張れば、甘くて美味しくて。
 皆の気持ちがこもっているように感じて、アルエットはジンと胸が熱くなる。
「それからお誕生日プレゼントも用意してるんだ!」
「えっ、プレゼントも!?」
 驚くアルエットの手の中に焔は小包を置いた。
「はい、ボクからは赤いお花の飾りが付いたかんざし。長くて綺麗な髪をしてるから、髪飾りみたいなのがいいかなって。普通のだと持ってるかもって思ったから、ちょっと変わったのにしてみたんだ!」
 アルエットは包みを開けて、金色の髪に花飾りの簪を乗せてみる。
 手鏡に映る綺麗な簪は金色の髪に良く似合っていた。
「光が反射して宝石みたいで綺麗なの……」
「私からは……櫛を用意してみました。実用品ですからそこまで値の張るものではないですが、仕立は十二分に見栄えのするものに仕上がっていると思います」
 リースリットが差し出した櫛は、金色の縁取りに鳥の羽を思わせる意匠に、小さな水色の石が埋め込まれていた。髪を梳かす時に引っかからないように特殊な樹脂で固められつるりとした手触りになっている。
「わぁ! 綺麗なの。こんな素敵なの貰って良いの?」
 特注品であろう櫛を手にリースリットを見上げるアルエット。
「既にお気に入りのものを持っていらっしゃいるとは思いますけれど。ふふ、宜しければ、どうぞ」
 頬を赤らめ、早速髪を梳かしてみるアルエットにリースリットは顔を綻ばせた。
 ジェラルドは頬を掻いてポケットの中の『プレゼント』を握りしめる。
 何だか渡しづらいような気がしたからだ。

「誕生日御目出度う、アルエット。この日がアルエットにとって、思い出深い日になれば嬉しい」
 口の端を上げた久望は少女の両手に包みを乗せる。
 油分を外に逃がさないように白い布に包まれ、口をリボンで結んだもの。
「というわけで、今日の為に作った花の形にくり貫いたクッキーだ。外の世界の材料とレシピで作ってみたので、味は保障する。日持ちがするから、何時かのおやつにでも食べてくれ」
 アルエットはリボンを解いて、一口クッキーを頬張った。
 甘くて柔らかな香りのするクッキーは心には久望の心が籠もっている。
「ハッピーバースデー、アルエット。素敵な一日を貴女に」
 四音はアルエットに香水瓶を手渡した。
 ピンク色のまあるい形で蓋の方が少し細くなっている。
 瓶を飾るように花を象った装飾が施されていた。
「また一つ大人になった貴女に心を込めて」
 頬を撫でる四音の指先を押さえて、零れ落ちる涙と笑顔を見せるアルエット。

「嬉しい……こんな」
 ――こんな風に、誕生日を祝って貰えた事なんて無かったから。
 そう言いかけてアルエットは口を噤んだ。
 幸せに愛情たっぷりに育てられた『アルエット・ベルターナ』ならあったはずだから。
 自分はアルエットだから。生きているのはアルエットでなければならないから。
 可哀想な『カナリー・ベルターナ』はもう死んでしまったのだから。
「ありがとうなの、皆」
 アルエットのお祝いをしてくれて。『私』のお祝いをしてくれて。


「お散歩に行きましょうか? その前に香水をつけて……と、よしバッチリですね」
 四音はアルエットの手を引いてカフェから庭園へと歩き出す。
「いける。いけますよ私!」
 何時になく張り切っている四音にアルエットは首を傾げた。
「あ、いえ何でもないので気にしないでください」
「ふふ……変な四音さん。あ、見てポピーが咲いてるの」
 色取り取りの花を大好きなアルエットと一緒に見て居られる。笑顔を向けてくれる。
 彼女こそが自分にとっての花なのだと四音は思い馳せた。

「アルエットさんの誕生日の日に、この素敵な光景を合わせられたのは良かった」
 はしゃぐアルエット達を見つめてリースリットは胸を撫で下ろす。
 彼女だけではない、他の仲間にも喜んで貰えている事がリースリットは嬉しかった。
「ジェラルドさんと久望さん、覇竜出身のお二人も……レントルス卿の『作品』、如何でしょうか?」
「レントルス卿の『作品』かぁ。花畑が作品ってのは『外』の奴らの発想はすげぇなぁ……」
「故郷にも出来たら良いのだが」
 ジェラルドと久望の故郷は覇竜領域。常に死と隣り合わせの場所だから、一面の花畑を作る余裕なんて無いのだろう。だからこそ、この光景は素晴らしく、故郷の皆にも見せてやりたいと思うのだ。
「凄く綺麗だよねぇ、ボクもお庭でちょっとだけお花を育ててるからこれだけ綺麗に咲かせるのが大変なのはわかるよ」
 焔は一面に広がる花畑にほうと溜息を吐いた。足下を見遣れば美しい青色の花が咲いている。
「この花はなんだろうね? 種とか売ってるかな?」
「あっちの方に苗を売っている場所があったな。其処で見てみるか」
 久望の提案に焔は大きく頷いた。

「ふむ、球根なら水で栽培できるようだな。それなら、紲家の土産にもなる」
「うんうん。良いお土産になるね」
 雑貨屋に来た久望と焔は様々な花の種や球根を見つめる。
「此処のようにはならないかもしれないが、いつか故郷に花が増えたなら。きっと皆も、彼女も、喜ぶかもしれないな」
「いいね! その時はボクも見てみたいよ!」

「折角ですから、お土産も良いですね」
 リースリットと四音はアルエットを連れて雑貨屋へと足を踏み入れた。
「アルエットさんに似合う花のアクセサリとか、見繕ってみましょうか。それと、お部屋に飾れるアレンジメントをお願いしましょう」
「そうですね。プレゼントはもう渡しましたけど。花のアクセサリー等は贈ってみたくもあります」
 シャイネンナハトにはお揃いのリングを送って貰ったから、今度は自分から何か送りたいのだと四音はアクセサリーの棚を吟味する。
「さて、それでは。えいっと」
 一緒にアクセサリーを見ていたアルエットに抱きついた四音。
「わわ? どうしたの?」
「急に抱き着いたりしてどうしたのかなって思いましたか?」
 きょとんとするアルエットの頬を四音は両手で包んだ。
「今、私がつけている香水ってプレゼントしたものと一緒なんですよ。お揃いになりましたね」
 優しい花の香りは甘く蕩けるようなラストノートへ変わるのだという。
「一緒なのね」
「ふふふ、私はいつも貴女の傍に、です。だからね、アルエット。一人で辛い時は私を呼んでね? 直ぐに駆けつけるから」
 こんな風に一人の『人間』に執着するとは思ってもみなかった。
 自分は人とは違う生き物だから、人間の情動を理解できるとも思わなかった。
 けれど、アルエットは他とは違うのだ。直ぐに駆けつけてやりたいと思う程には。絆されている。
「えへへ。ありがとうなの四音さん。そう言って貰えてアルエットとても嬉しいの」
 四音に抱きついたアルエットは、親友の肩に顔を埋める。

「興味ありそうなもんを贈りてぇところなんだがどうだろう?」
 アルエットと一緒にアクセサリーの棚を覗き込んだジェラルドは、少女が遠慮がちに「いいの?」と首を傾げるのに頭を撫でて大丈夫だと笑った。
「女にプレゼントなんて贈った事あんまねぇんだ、勘弁してくれよ?」
 しばらく棚を見た後、ジェラルドは水色のブレスレットを手に取る。
「これなんか似合いそうかね。アルエット、ちょっと手ぇ貸してみな」
 大人しくジェラルドに手を差し出したアルエットに水色の石がついたブレスレットが巻かれた。
「うん、色味もアンタに合ってそうだ。どうだ? 気に入ってもらえっと良いんだが……」
「ジェラルドさん、ポケットから何かはみだしてるの」
「……ゲッ!」
 慌ててポケットの中に手を突っ込んだジェラルドに、アルエットは身体を左右に振って追い詰める。
「あー……あーあー……これはー……なんつーかなぁ! べ、別に隠す事でもねぇーけどよ!」
 しわくちゃになった栞をアルエットに差し出すジェラルド。
「パーティの前に別の雑貨屋で柄にもなく押し花の栞をだな……でも、失敗だからこれは」
 ジェラルドが再びポケットの中に仕舞おうとするのをアルエットが力強く掴む。
「これはアルエットにくれるやつ?」
「アジアンタムとゼラニウムの押し花の栞……のつもりだったんだよ、最初は。けど失敗しちまったからさ自分用に持ち帰ろうとしてたんだ。慣れない事はするもんじゃねぇな」
 この二つの花はアルエットの誕生花なのだという。
「店員に聞いて初めて知ったけどよ、俺もアンタに似合うと思うぜその花。だから、まぁ今度綺麗なヤツ、贈らせてくれよ」
 アルエットは栞を掴んだまま離さない。
「おい、これは失敗なんだって」
「ううん。ジェラルドさんがアルエットの為に作ってくれたんだから、失敗じゃないよ。うれしいの」
 期待の眼差し。以外と力強い手の力にジェラルドは観念したように指を離した。
「やったー! プレゼント貰ったの! 嬉しいの!」
「全く……プレゼント一つとっても考えるのは難しいな?」
 喜ぶアルエットの頭をわしわしと撫でて、小さく息を吐いたジェラルド。



「今日は一日、何から何までご協力いただけて……レントルス様にも、改めてお礼に伺わないとです」
「楽しかったねぇ! また来ようね」
「はい」
 リースリットと焔は夕暮れの橙に染まる花畑を見渡して顔を綻ばせた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。如何だったでしょうか。
 アルエットのお誕生日を祝って頂きありがとうございました!

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