PandoraPartyProject

シナリオ詳細

【ホワイト】スワンは母親の夢を見るか

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●記憶の水面
――ブランや、どうか覚えていておくれ。ママは貴方を世界で一番、愛しているからね。

 幼い頃の温かい記憶。素敵な白い羽を持つ、優しい優しい僕のママ。
(どうしてそんな大切な事を忘れてたんだろう)

 白鳥のブランは翼を震わせ、降り立った湖の水面をすーっと泳いで辺りを見ます。間違いなく、子供の頃にブランがお母さんと暮らしていた湖です。
 綺麗な水面も、泳ぐ魚も。懐かしいものばかりなのに、たったひとつだけ昔と違うのは――

(ママ、どこに行っちゃったの?)

 どうしてママとはぐれたのか。
 何故その事を忘れたのか。
 ママは今、どこにいるのか――

 ブランの記憶は水面のように、ゆらゆら波紋で見えぬまま。思い出せれば会えるだろうか……悲しげにひと鳴きして、彼は友人を頼る事にしました。

●美しい母を探して
「よく見回りに行くライブノベルに、ブランという白鳥がいるんだけど」
『境界案内人』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)はそんな語り出しから、集まった特異運命座標へ依頼の内容を話しはじめた。
「彼の母親探しを手伝って欲しいんだ。何故はぐれてしまったのか、どうしてそんな大切な事を忘れたのか……全く思い出せないみたいでね」
 君達は失せ者さがしが得意だろう? と彼女は口角を少しだけ上げる。
 さっそく依頼人の元へ案内しようかと、案内人の導きでブランと会った特異運命座標だが――

「ママの特徴? ママは白い羽を持っている、とっても優しい鳥だよ」
「待ってくれ、ブラン」

 自信満々に翼を大きく広げるブランに、黄沙羅が怪訝そうな声で話しかける。

「白くて優しい、だけではあまりに情報が少なすぎる。もっと他に情報はないのかい?」
「えぇ? うーん……多分、僕みたいに綺麗なんじゃないかな! だって僕は白鳥、この湖の中で一番美しい存在だからね!」
「はぐれたのはいつだとか、どうして母親と離れたとか。もう少し分かりやすい情報をくれないか?」
「それが分かったらとっくに教えてるよ!」
 ぽこぽこと頭から湯気を立てながら、ブランは湖の西を翼の先で指し示す。
「どんな姿だったかは深く覚えてないけど、いつも湖のあそこらへんで一緒に泳いで……あっ」

 冬から春へ、暖かくなりはじめたいつかの今頃。
 母と子供、2羽が水面を泳いでいたら、ぬぅっと大きな黒い影が落ちてきて――

 カタカタカタ、ぶるぶるぶる。
「どうした、ブラン」
「……わからない。だけど何か、寒気がして。特異運命座標……早くママを見つけてね」 

――そして異説は開かれる。『■い■■■の■』、開幕――

NMコメント

 今日も貴方の旅路に乾杯! ノベルマスターの芳董(ほうとう)です。
 ご無沙汰しております。久しぶりのライブノベル、お手に取って戴ければ幸いです。

●目的
 ブランの母親を見つけ、ブランと再会させる

●登場人物
 ブラン
  皆さんに母親探しを依頼したオスの白鳥です。美しいものが大好きで、ナルシスト。
  自分の母親はきっと、美しい白鳥だろうと思っているようです。
  母親と別れた時の記憶はあやふやですが、何かよくない思い出のようです……。

 ブランの母親
  今回の捜索対象です。ブランと離れる前は、白い羽の優しい鳥だったそうです。

『迷える導』神郷 黄沙羅(しんごう きさら)
 謎多き境界案内人。浅黒い肌に金色の瞳をした男装の麗人です。今回皆さんをこの世界に案内した人物で、必要があればサポーターとして登場します。

●場所
 ライブノベル『■い■■■の■』の世界。表題の一部が掠れて読めなくなっている本です。
 捜索対象となるエリアは、この世界にある湖の周辺となります。
※以下は主な探索ポイントです。調査の目安にするもよし、記載にない場所を探してみるもよしです。

・湖の南側
  沢山の水鳥が暮らしているところです。人間を見た事がないようで、ややこちらを警戒しています。
・湖の北側
  魚が多く、鳥達の餌場になっています。ブランの記憶にもなんとなくある場所らしいです。
・湖の東側
  綺麗な花が沢山咲いた花畑に隣接しています。ブランは再会するであろう母に、お花を贈りたがっています。
・湖の西側
  暗い森に隣接しています。このあたりには恐ろしいクマが出没するという噂があるとか……。


●その他
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、記憶があやふやなため忘れている事もあるようです。

 説明は以上となります。
 それでは、よい旅を!

  • 【ホワイト】スワンは母親の夢を見るか完了
  • NM名芳董
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年04月05日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

回言 世界(p3p007315)
狂言回し
エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)
高邁のツバサ
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)
凶狼

リプレイ


「そうか、君が僕のママだったんだね! ママー!!」
(;╹V╹)<!?
 白い羽で美しく優しい鳥――Gハイペリオン様がブランに追いかけられている様を『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は目にした瞬間、即座に踵を返した。
「よし、解決したな。ライブノベル完!」
「待つのだ世界君、あのGペリ君はアーマデル君が連れて来た子だから絶対に違うのだ」
『呑まれない才能』ヘルミーネ・フォン・ニヴルヘイム(p3p010212)に真正面から正論をぶつけられ、世界は面倒くさそうに二羽を見やる。
「本人が納得してるならいいんじゃないか? 相手の手掛かりが無い状況で人探しもとい鳥探しをしろと言われてるようなものだぞ。湖周辺を虱潰しに探す手間が省けて俺達も得する。一石二鳥じゃないか」
「それでは根本的な解決になっていないのデス。アーマデル君、場を納める事はできマスカ?」
「任せてくれ。……Gペリオン殿」
『高邁のツバサ』エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)が指を弾くと、『冬隣』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)がイシュミル印のスムージーをGペリ様に放る。それを口にした瞬間、Gペリ様はゲーミングカラーに光りだして首をぐるんぐるん回しはじめた。
(((╹V╹)))<イェェエエエエエエ
「うわっ、何この羽の色!? 僕のママじゃない!」
「それ以外にもツッコミどころはあった筈なのだ」
 先が思いやられるとヘルミーネは溜息をつき、これからどうすると仲間へ訪ねた。エステットがそれを受け、顎に指を添えながら思考する。
「人探しもとい鳥探しの基本といえば、自ら捜査対象に成りきることデスかね」
 ブランを連れ、母親はこの湖でどんな生活をしていたか。何を食べていたか。母親の立場となって思考する――飛行種と鳥は姿こそ似ているものの、エステットは猛禽類の因子を持つ。白鳥とは食どころか性質も違うものだから、難しいと肩を竦めた。助言を受けたアーマデルは、荒ぶるとりのポーズで母親の思考をトレースすべくブランに問う。
「親が普段何を食べていたかはわかるか?」
「僕と一緒に湖の中の藻とかを食べてたけど……あ!」


――ママは確か、魚を食べたりもしていたよ!
 ブランの言葉を頼りに、一行はまず湖の北側を目指す事になった。途中、湖の東側を横切ると、色とりどりの花が咲き誇る花畑にさしかかる。
「うわぁ、美しいね」
「そうだな。よし次ぃー……」
「待ってよ世界、このお花をママに贈ろうかなって」
「そんなもん母親が見つかってからここに探しに来ればいいだけだろ。贈る相手がいなければ元も子も無いし」
 確かにそうかと俯くブランへ、世界はそっと言葉を付け足す。
「まぁ、湖の北で聞き込みをする時は相応の時間がかかる。その間にここの花を摘んで来るのは勝手だがな」
「世界君、さては素直になれないタイプなのデスネ?」
「知らん」
 エステットがクスクスと笑えば、世界は皆から顔を逸らした。
「そういえば先程からヘルミーネ殿の姿が見えないのだが」
 アーマデルが周囲を見回すと、疾く風のようにこちらへ迫る影がある。
「アーマデル君がGハイペリオン君を連れて来た様に、彼女も頼れる仲間を連れてきたのデス。ゆえに北側で我々が捜索をしてる間に、南側を調べるよう頼んでおいたのデスヨ。なにせ"彼"は足がはやい」
 影が一行の前で停止すると、びゅうと風が吹いた。魔狼ガルムーーヘルミーネの相棒となった黒狼である。その上には勿論、彼女が乗っていた。
「おかえりなさい。早かったデスネ」
「今日のために動物疎通が出来るようになっておいたのだ。おまけにガルムの足があれば、効率化はバッチリなのだ!」
 ね、とヘルミーネが話題を振ると、魔狼は目を静かに細める。
「疎通があったところで、話術がなければ欲しい情報が得られるとは限りませんよ、お嬢」
「相変わらず辛辣なのだー!?」
――余談だが、彼女が動物疎通を覚えてはじめてガルムに言われた言葉は「お嬢、もうちょっと考えて行動してください」だ。
 主従の従でありながらも言いたい事をズバズバ言うのは信頼の証と取れはするが、水鳥達とのコミュニケーションにあたふたした記憶が脳裏をかすめ、ヘルミーネは頭を抱えてしまった。彼女のピンチを察したか、有能なエステットはすかさず話題を変える。
「それで、何か手がかりを掴めたのデスカ?」
「うーん。南側の水鳥はほとんどマガモで白い羽じゃなかったのだ。白鳥の目撃情報はブランくらい。後は老年のアヒルが一羽だって」
「老年となると流石にブランと歳が離れすぎてるか」
 世界の考えにブランが首を縦に振る。朧気な記憶の中でも母と子ぐらいの年齢差だった事は覚えていたのだ。

 そんなやり取りを交えつつ、一行は目的地へと辿り着いた。前情報の通り、ここを餌場に沢山の鳥達が群れている。
「これだけ数がいれば、一羽くらいはブラン殿を見知っている鳥がいるかもしれないな」
「えぇ。わらわが無辜なる混沌で受けた恩恵――『探し物の天才』により導かれたのデス。何かしら見つかる筈ナノ」
 有能ですカラ! と胸を張るエステットに、おーとアーマデルが拍手した。さぁ、失せ鳥探しの山場である。

「まずは手堅く聞き込みだ」
 そう提案する世界にはちょっとばかり自信があった。
「俺は見ての通り人畜無害なひょろモヤシのような見てくれだ。人間の中でも警戒されづらい部類にあたるだろう」
「世界くん、すげー鳩に群がられてるのだ」
 一見すると平和の象徴にナメられてるようにしか見えないが、あれだけ集まれば情報収集も容易だろう。頑張ろうとヘルミーネもまたガルムと共に動物疎通で水鳥達と話してまわり、アーマデルは輝くGハイペリオン様ごしに水鳥へと話しかけ、情報と共に水鳥達の信仰までも蒐集している。
「わらわも気合を入れて探すのデス」
 エステットは思考する。この場所こそ湖の中で最も情報の凝縮された場所であろうと見抜いていた。
 水中で暮らす魚は水鳥達の餌となり、その水鳥を虎視眈々と別の生物が狙っている。生態系の縮図とも言えるこの場所に、仔のため食糧を求める賢母が近づかない筈がない。
「いくら屈強かつ頑丈な生命体でも生活の大半を獲物探しに求めるのは、天然の自然界の摂理ナノ。それを除くには“文明”がヒ・ツ・ヨ・ウ」
 そら、すぐに新たな手がかりが――と探し続けて数時間。

「ヘルちゃんの所はハズレだったのだ」
「まぁ、簡単に見つかるなら依頼にはならないよな」
(╹V╹)<イェェエエエエエエ
「Gペリオン殿はまだまだ元気だな」
 次々と空振りの報告が届き、エステットは頭を抱える。
「わらわのギフトではこんな時に使えないノネ」
 俯きかけた彼女の足元へ――ぺたぺた、一羽の鴨が近づいて来た。
「もしかしてその子、ブラン君? お母様の事は”痛ましい事件”だったわね」


「なあブラン。育ての親は鳥じゃなくて、実は熊だったっていうのはワンチャン無いか? よく思い出してみろ……熊と共に湖を泳ぎ、森の中を駆け回った日々を!!」
「その熊、今まさにヘルミーネとアーマデルがボコボコにしてるけど」
 ブランの視線の先で蛇腹剣が宙を這い、氷魔法が辺りをまとめて凍らせる。どう、と倒れた熊を見届け、世界はうむと腕を組んだ。
「まあ適当言ってただけだからな。……今日の晩飯は熊鍋か」
「ヘルちゃんは鶏肉の香草焼きを作るのだ! ガルムの好物なのだ」
「ブラン君の前で食べるには黒いジョークが効きすぎデスネ?」
 熊を速攻で討伐したのは、行く道を阻まれたから。ブランの知人いわく、彼は母親と共に居る時に、西の森で熊に襲われたらしい。その現場をエステットのギフトで探し、行ってみる事にしたのだ。
「わらわのギフトが事件現場はここだと告げていマス」
 示された場所にブランは立ち、ぞぞぞと身を震わせた。森を恐れたのは本能からか――それでも、思い出さなければ。
 世界が適当なジョークを飛ばしたのは、きっと心配してくれたからだ。賢明に探してくれた特異運命座標の期待に応えたい。その思いがブランの心を突き動かす。

 朧気だった記憶が鮮明になっていく。熊に襲われて必死に逃げた。気づけば母の姿はない。だが――熊は何も手にできずに帰った。

――僕のママは、生きている!!


 気になる事がひとつあるとアーマデルは問うた。
『ブラン』――即ち『白』。何故その名を選んだのか。自分も白い羽で、他にも白い羽の鳥たちが多くいるのに。
 そんなの簡単さとブランは答えた。
 白鳥の子は灰色だ。だから僕は不安がった。本当にママの子なのかなって。そしたらママはこう言ったんだ。

『貴方はきっと立派な白い羽根になるわ。だからブランと名付けましょう。……でもね、これだけは覚えておいて。
 たとえ羽根の色が違っても、私と貴方が違う鳥でも、私は貴方を愛しているわ』

「ブラン……」
「ママ、どうして……」

 聞こえた声は確かに母の声。しかしその姿を見ると、ブランは声を詰まらせた。自分の母は――年老いたアヒルだったのだ!
「白鳥の寿命は約15年。対してアヒルは10年程度と言われていマス。それだけ寿命に差があれば加齢の早さも違うのでショウ」
「ごめんなさいブラン。熊に襲われた後、怪我が癒える頃にはこんな状態で。美しいものが好きな貴方に、今の私は母親として相応しくないわね」
 長い沈黙が場を包んだ。ヘルミーネがブランの隣にしゃがみ、声をかける。
「母ちゃん、よぼよぼだから要らないのだ?」
「そんな事ない……ママはどんな姿でも僕のママだよ!」

《異説》みにくいアヒルの子――それが本の表題だ。

 身体を寄せ合い喜びあう二羽。母子の感動の再会シーンを目の前にしても、ヘルミーネにはその良さが分からない。
 我が子の死を願う母を思い出し、彼女は静かに目を伏せた。
(ヘルちゃんの母ちゃんも、こんなのだったらよかったのだ)

成否

成功

状態異常

なし

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