シナリオ詳細
翼持つ赤毛の聖獣
オープニング
●
独立都市アドラステイア。
天義において、首都フォン・ルーベルグから離れた海沿いに築かれた独立都市。
この地には身寄りのない子供達が多く流れてきており、彼らをマザー、ファザーと呼ばれる大人達が導いている。
毎日一度、都市の中心で鐘の音が鳴り響く。
我らの神によ――今日も幸福を与え賜え。
大人達によって作られた神ファルマコンへと、子供達は祈りを捧げる。
ただ、日々を過ごす子供達は大人から信任を得る為、互いを監視し、隙あらば魔女裁判を行って仲間すらも蹴落とす。
そうして、彼らはより高い生活水準で暮らす為に……、都市の中層、高層に行っていい暮らしができるようにキシェフを得る。
大人達から聖銃士として認められた彼らは、都市の為に一層大人達に尽くすのだ。
●
天義、フォン・ルーベルグ某所に集まるイレギュラーズ。
アドラステイアという場所は調べれば調べるほど、きな臭さしか感じさせない。
「子供達を使って、マザーだの、ファザーだのって連中は一体何を考えているのかね……」
『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は説明の前に本音を吐露する。
彼女は情報屋としての活動の合間にこの都市へと潜入、出来るだけ情報を集めているが、なかなか有用な情報を得られずにいる。
子供達は何も知らされず、大人は硬く口を閉ざしてこの都市について語らない。
とはいえ、イレギュラーズの辛抱強い情報収集の甲斐もあり、ローレットは<ディダスカリアの門>の攻略を経て中層へと至っている。
その攻略の際、レイリー=シュタイン(p3p007270)は突然戦場を去る聖銃士の少女について気にかけていた。
「やはり、ミロイテ殿の行方が気になる」
また、ヴィリス(p3p009671)やココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)も同様のことを考えていたようで。
「ミロイテに何があったのかを調べないとね」
「あの子も救けましょう!」
この場に集うメンバーの士気は高い……が、オリヴィアの様子が優れない。
「……残念だが、ミロイテは発見されていない。それどころか、都市内では失踪したことになっている」
調査の最中、子供達の会話を伝え聞くと、信じられない情報が聞こえてくる。
なんでも、ミロイテはすでにローレットによって始末されたという。
「そんなはずはない。あの後、ミロイテを見たという情報はイレギュラーズの中から一切出ないんだからさ」
その真偽を確かめるべく、もう一度アドラステイアへと突入したい。合わせて中層調査ができれば今後の依頼に生かすこともできるだろう。
「途中までは同行するが、アタシは独自で行動させてもらう。ミロイテの件はよろしく頼んだよ」
一通り説明を終えたところで、メンバー達はアドラステイアに向け、出発することにしたのだった。
●
アドラステイアへと至ったメンバー達は一旦中層へと足を踏み入れる。
下層はスラム街を思わせる町並みだったが、中層はいたって普通の街並みを感じさせる。
そこに住む子供達は宿舎や教会を巡り、日々の生活を営む。
現状、行方の知れないミロイテについて語り合う子供達もおり、イレギュラーズは耳をそばだてるが、やはり、ローレットの手にかかったという話が聞こえてくる。
中層の調査を進めたメンバーは改めて、ミロイテの動向について探る。
最後に戦った場所は下層、中層へと至る関門の近く。
そこからミロイテは中層を目指したように見えた。
ミロイテは聖銃士。ならば、普段は中層に住んでいるはず。
それもあって、普段の彼女の行動範囲を探っていたのだが……。
「待て。貴様らはローレットだな!」
まだあどけなさも残る白銀の鎧を纏う少女騎士がやや可愛らしい声で叫びかけてくる。
特定の少女を探るその行動は、聖銃士らにとっても目に付いたのだろう。
「姉さんを……ミロイテ姉さんを手にかけた貴様ら……絶対に許さない……!」
街中だが、小隊長と思われる少女はお構いなしに隊員を差し向け、かつ聖獣を呼び寄せてくる。
アオオオオオオオ!!
呼び寄せたのは赤毛の獅子を思わせる翼持つ聖獣。
ただ、それはさらに狐、狸の姿をした一層大きな聖獣を呼び寄せる。
さすがに聖獣3体と聖銃士10数人は多勢に無勢。
加えて、如何に子供達がローレットを敵視していようとも保護すべき対象。できるなら、戦いは避けたい相手だ。
それに、気になる赤毛の聖獣。赤毛の獅子など、あまり見聞きしたことのない相手だ。
「まさか……ね」
レイリーはその赤毛に思うことがあったが、確証はない。
何せ、聖銃士達はミロイテがすでに亡き者と教えられているようなのだ。これも、マザー・マリアンヌから伝え聞いたものであるのは間違いなさそうだが……。
「聖銃士が小隊長、ニコラ、参る!」
小隊長自ら飛び込んできたのに合わせ、隊員、聖獣らもまた一斉にイレギュラーズへと襲い掛かってきたのだった。
- 翼持つ赤毛の聖獣完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年03月31日 22時15分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
天義、独立都市アドラステイア。
イレギュラーズ達は都市中層の調査と合わせ、失踪したという聖銃士の小隊長ミロイテを捜索していたのだが……。
「また面倒なことになったわね」
『黒靴のバレリーヌ』ヴィリス(p3p009671)がそう思うのも無理はない。
アオオオオオオオ!!
立ち塞がる聖銃士が呼び寄せた赤毛の獅子を思わせる聖獣。
さらに、2体の聖獣を呼び寄せたのも面倒だが、赤毛自体にメンバーは注目していた。
「この聖獣は……もう遅かったの?」
『白騎士』レイリー=シュタイン(p3p007270)が表情をこわばらせるのも無理はない。
「……まさか、イコルを過剰摂取して聖獣になったとか?」
「赤毛の獣……たしかにミロイテさんを思い起こさせます」
『命の欠片掬いし手』オウェード=ランドマスター(p3p009184)が口にしたその言葉は、メンバー皆が考えていたこと。『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)もその考えを否定はしない。
「深い事情は知らないけど、仲間が――レイリーさん達が理不尽なことするなんて絶対ないって信じてる」
『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)は先日の依頼について完全に把握しているわけではないが、仲間であるレイリーに非があるはずないと疑わない。
「都合が悪ければ亡き者とし、口を封じた手駒で再利用……なるほど」
その蛍の相方、『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)はアドラステイアの大人達が自分らと倫理が異なる組織なのだと理解する。
「でも、わたしを揺さぶるためのマザー・マリアンヌの策略かもしれない」
何が真実なのか、現状では確証はないと考えたココロ。
ならば、ミロイテは聖獣になっていない。そう信じることにしていた。
「あの聖獣も気になるけれど……まずはこの場をどうにか切り抜けましょう」
ヴィリスが言うように、今回は敵も多く、本来なら保護すべき対象。
加えて敵地である為、増援も来る可能性も高い。上手くやり過ごして撤退へと転じたいところだ。
「ヴァイスドラッヘ! 只今参上!」
まだできることはあるはず。レイリーは楽観的に考えず、ギフトを展開して聖銃士の小隊長と赤毛の聖獣の前に立つ。
「さぁ、君達を助けよう」
例え、傲慢と言われようが構わない。そんな気概で立つレイリーに、聖銃士らは物凄い形相でローレット勢を睨みつけてくる。
「啓蒙と洗脳は違うのよねぇ」
事もなげに告げる偽名司書、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)。
シスター服姿のイーリンは怒りや憎しみで感情を満たした子供達へ、それらがわかりやすい原動力だと認めながらも問う。
「あなた達は今『何のために』戦っているのかしら?」
「無論、姉さんに手をかけたローレットを全力で排除するためだ!」
そんなアドラステイアの子供達の怒りはきっと誤解だと蛍は考えて。
「とりあえず、降りかかる火の粉は振り払わせてもらうわよ!」
「しっかりと、共に場を支えましょう」
ともすれば心が荒れそうな状況だが、珠緒は蛍の存在を寛治、短慮など見せられないと気合を入れる。
「まだ分からない事があるが……、その前に護衛をしつつ情報と撤退準備じゃな……」
オウェードも全容把握とはいかぬが、まずはこの場を切り抜けるのが先と判断したようだ。
「思う所はあるが……自らの意思で剣を取る以上、容赦はせん」
存在変質によって、黒翼の天使型へと己の姿を変貌させた『黒竜翼』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)。
彼は説得を仲間に任せ、向かい来る敵対勢力を迎撃する構えだ。
「残念でしたね、若い女の子は見たものまんましか信じないから!」
「教えてあげるわ……神がそれを望まれる」
ココロ、そして彼女がお師匠様と仰ぐイーリンが続けて身構える。
「いくぞ!」
「「了解!!」」
子供達は聖獣らと共に、そんなイレギュラーズへと全力で攻撃を仕掛けて来るのである。
●
戦場となるのは、アドラステイア中層の街中。
聖銃士と呼ばれる子供達は、大人達に自分らの有能性を示し、自分達の地位を高める為に、そして、自分達の大切な人を奪ったローレットを倒すべく、武器を振るってくる。
(できれば、レイリーさん達が小隊の子達や聖獣に探りを入れたりする機会を作れればなおさらいいわよね)
逃げる為の戦いであるのは蛍も承知。ただ、この戦いでも何か得られるものがあればと、聖銃士を相手にすべく珠緒と共に連携し、先手を取る。
敵小隊へと向かう蛍は桜吹雪と業炎の火の粉を舞い散らし、子供達の注意を強く引く。
そうなれば、聖銃士が振るう刃を多く受けることとなる。
それを想定していた蛍は一時的に完全なる自由を得る為の翼を得て、出来る限りそれらの刃を避けられるようにと動く。
ペアとなる珠緒は予め物陰からファミリアーを離脱させて近辺の状況把握を勧めながら、この戦いに臨む。
向かってくる小隊員が優先対象。自らの脆さを自覚している珠緒は蛍が集める子供達へと神気を浴びせかけつつ、小隊長である少女騎士ニコラの統率状況などを見定めようとしていた。
アオオオオオオオ!!
翼持つ赤毛の聖獣は狐と狸を思わせる巨獣を従える。
それらもまた、元々は人である可能性があることを、今のレイリーは認知していて。
「私達はミロイテの行方を知らなかったわ、でもね、手がかりを今見つけたの」
性格の悪い大人がこの都市には必ずいるはず。
「ねぇ、貴女がミロイテでしょ。ごめんね」
そう考えたレイリーは赤毛へと呼び掛け、謝りながら抱きしめる。
目の前にいる聖獣の心もまた人であるなら、助けを求めているのではないか。レイリーは人助けセンサーも働かせ、ハイテレパスで会話を試みようとする。
聖獣は獣となってしまった存在である為か、意思の疎通は難しい。
だが、現状について受け入れてはおらず、何か苦しんでいるような感情は伝わってきた。
「私は君達を助けよう。もしも、苦しみや怒りを私に全部ぶつけなさい! 全て受け止めるわ」
狐や狸についても、レイリーはできる限り意志を汲み取ろうと、それらの妖術を白い大盾で受け流す。もちろん、赤毛も激しく抵抗し、両前脚による乱撃を槍で受け止めていた。
「ヴァイスドラッヘ殿……ワシも後輩の一人として行こうかね……」
オウェードはレイリーの勇士を視界に入れ、自らも囮役にならんと動く。
それだけでなく、彼はレイリーが聖獣らへと働きかけるタイミングを見定め、自らも肉体言語で何かわかることはないかと試行していて。
(これも賭けじゃが……)
相手が荒ぶるままに攻撃を仕掛けてきているのは、オウェードも感じとる。
怒り、苦しみ、戸惑い、焦り……。
ネガティブな感情を感じ取りながらも、オウェードもまた聖獣の攻撃をしっかりと防御する。
また、聖獣を足止めせねばらぬこともあり、彼は意志の力を破壊の力へと転じ、片手斧を叩き込んで相手の動きを鈍らせる。
「さぁ、アナタの気持ちを教えて頂戴?」
ヴィリスもまた聖獣の思考を読み取ろうとしていたが、感じられるのはローレットに対する怒り、耐えがたいほどの苦しみ。そして、なぜこうなったのかという戸惑いそして焦り……。
「今の状況に満足してないのは間違いないけれど……」
それらの中からヴィリスが感じ取ったのは、願望。
それが何なのかまでヴィリスは読み取ることはできなかったが、知り得た情報は全て仲間達へと伝達していく。
「空対空か。獣がどこまでやれるか……見せてもらう」
相手がどのような存在であれ、今は空を舞う獣。
自身の黒翼で空中へと舞い上がったレイヴンはあまり高く飛び上がらぬよう高度に気を付け、聖獣を優先して攻撃を行う。
聖獣の注意はレイリーやオウェードと向いているが、それらへと横槍を入れるべくレイヴンは機動力を活かして断頭台の刃を見舞う。
狙うは、相手の機動力を削ぐ為の翼。一度切りかかった後、レイヴンはすぐさま離脱するヒット&アウェイの戦法で立ち回る。
(聖獣を狩って戦意喪失してくれれば儲けものなんだがな)
ローレットに強い敵意を抱く聖銃士達だ。あまり楽観的には捉えず、レイヴンは攻撃を繰り返す。
「やれやれ、シスターも楽じゃないわね」
悪態づくイーリンは低空飛行した状態で、聖銃士らへと問う。
「貴方達は中層に居るということは、下層や『自分たちより下』の存在を見てきたのではないの? それを見て何も感じなかった?」
ただ、子供達だって生きるのに必死だ。他者など見ている余裕などないのだ。
イーリンはそんな彼らを無力化すべく、魔力を剣とし、纏めて聖銃士らを貫いていく。
その聖銃士らに向けても、ヴィリスはリーディングを行う。
「正直私としては何を信じるかは自由だし、個人の自由にすればいいと思うわ」
躍動的なステップで動きを妨害し、ヴィリスが聖銃士に語り掛ける。
「でもね。本当のことを何一つ教えないで、自分の都合のいいように何も知らない子を使うっていうのは反吐が出るの」
「…………!」
聖銃士がヴィリスへと切りかかるが、一撃当たりのダメージはさほど重くないようだ。
皆、思い思いに立ち回るが、彼らをココロがヒーラーとして支える。
とりわけ、負担が大きいのはレイリーやオウェードだ。
彼らを回復の軸に据え、戦う仲間達へとココロは福音を、また祈りの言葉で癒しをもたらす。
回復ばかりにココロは意識を向けてはいない。彼女もまた、聖銃士に……小隊長であるニコラに誤解されたままなのを好ましく思ってはいなかったのだ。
「ミロイテさんの居場所はわたし達も知らない。ねえ、あなたは彼女が心配じゃないの?」
「そんなの、心配に決まっている……!」
言いたいことを告げるローレットの言葉に確証などない。
それだけにニコラは一層憤り、武器を持つ手を強めるのである。
●
交戦続く中層の街。
聖獣も聖銃士も、激しく抵抗していたが、イレギュラーズは相当戦い慣れしていたこともあり、加えてほとんど油断なく立ち回る。
ヴィリスは手数を活かしてステップを踏む回数を増やし、一気に敵の動きを止めていた。
「私たちをすぐには信用できないかもしれないけれど、マザーももう信じられないでしょう」
聖銃士らにはイレギュラーズの説得もあり、少しずつ動揺が広がっている。この機を見て、ヴィリスはさらに呼びかける。
「だから私たちを利用するの。そうして考える時間を稼ぎなさい」
「う、うるさい!」
抑えられていたこともあって、聖銃士達の攻撃に精彩さが欠けてくる。
ニコラが新たに据えられた小隊長ということもあり、統率力はまだ高くないと珠緒は判断する。
「あの子はきっと生きている。どこかで助けを求めているかもしれない」
聖獣を抑える2人を癒すココロも、ニコラへと呼び掛けを続けて。
「あなた達は何のために戦ってるの?」
「生きる為だ」
端的に答える相手へ、ココロは自分達が魔種を滅ぼす為にアドラステイアへとやって来たことを伝えて。
「だから、協力できるはず。一緒に探しに行きましょう?」
敢えて、マザー・マリアンヌの正体には言及せず、ココロは説得を行う。下手に不審がられる主張はさせるべきと判断したのだ。
続き、イーリンがそのマザーについて、聖銃士達へと主張する。
「母親(マザー)に怒られるのが怖い? 大丈夫よ『正しい母親なら必ず許してくれる』わ。貴方達を『見捨てたりしない』もの」
「…………」
重くなった体を動かす聖銃士らは抵抗を続けるも、イーリンがどんな主張をしてくるかは気にしていたらしい。
「じゃあ私はどうか、私は『シスター』よ、貴方達をより良いものに導く物」
誘惑の言葉をかけながらも、イーリンは切りかかってきた聖銃士へと魔眼による視線を投げかけ、意識を奪う。
「貴方達……『これに反発した』わね? では、私と同じように、傷つけ、言葉を弄し、時に共食いさえさせたのは誰?」
そう、母親……マザーだと、イーリンは慈愛に満ちた笑みで締めくくる。
「惑わされるな!」
そこでニコラが一喝する。
自分がこれまで教えられ、信じていたものを否定することは簡単ではない。まして、主張しているのは、憎むべしとされているローレットイレギュラーズ。
力を振り絞り、ニコラが振るった長剣の切っ先は蛍へと向かう。まず、彼女を倒さねばローレット勢を崩すことはできないと考えたのだろう。
ただ、ニコラの剣戟を抑える蛍は真心をこめてエールを送る。
「珠緒さん……!」
「ええ、蛍さん」
強い結びつきで連携する2人。エールを受けた珠緒はすぐさまニコラから距離をとり、広域に神聖なる光を発して隊員を倒していく。
半壊する聖銃士達。聖獣もかなり傷ついてきており、オウェードやレイヴンは仕留めにかかる。
メインで引付を行っていたのはレイリーで変わらないが、彼女をサポとすべく、聖獣の翼や足を叩いていたオウェードは正気に戻った狐聖獣の妖気をその身で受け止めて。
「心配するな……ワシもまた受け止めよう……」
悪意を塊である妖気に耐えたオウェードは自身の力で苦難を打ち破り、防御の力を攻撃へと転化し、激しい一撃を見舞って狐聖獣を昏倒させてしまう。
もう1体、狸聖獣はレイヴンが相手をしていて。
自重を活かし、レイヴンを潰そうとしてくる相手に対し、レイヴンは一度距離をとってから攻撃を避け、機を見て再度近づく。
『"断頭台"-告死黒竜-』。
近づきながら溜めた力を放出するレイヴンは、執行人の爪でその翼を切り裂いてしまう。
落下していく狸聖獣。そいつが抵抗する間もなく、レイヴンはその首を強く跳ね飛ばし、まさにその頭を断ち切ってしまった。
聖獣が倒されれば、聖銃士達の動揺も一層強くなる。
――ローレットイレギュラーズの強さはこれほどまでなのか。
――僕達でこんな相手を倒せるのか……?
中には、先代ミロイテの下で編成されていた隊員達もおり、改めてその強さを垣間見たことで臆しかけていた。
「まだだ、ミロイテ姉さんの仇をとるんだ!」
逆境の中でも、ニコラは心からの叫びをあげ、隊員達に自分の力を示そうとする。
「貴方達のマザーは君たちを使い潰し、果てはこんな姿にまでさせて戦わせようとするの」
赤毛の聖獣を抑え続けるレイリーは、そんなニコラ達聖銃士へと誘いかける。
「そんな貴方達と戦いたくない。ねぇ、私達の所へ来ない? 悪いようにしないから」
生活と知識を、そして生きていく力を与える為にとレイリーは自身の領で引き受けようとしたのだが。
「断る……!」
ここにきて、小隊長としてのカリスマの片鱗を見せ始めるまだ若すぎる少女。ただ、蛍と珠緒がその力を十分には生かさせない。
再び蛍のエールを受けた珠緒はニコラを見定め、弾幕の連撃を浴びせかけていく。
そこに、ココロが神気による閃光を浴びせかけて。
「……あ、ぁぁ……っ」
意識を失ったニコラは前のめりに倒れたのだった。
アオオオオオオ……!
それまで抵抗を続けていた赤毛の聖獣。
だが、ニコラが倒れたこともあり、聖獣は新手を呼び寄せる為か、高く飛び上がっていずこかへと去っていく。
「戦意を失ったなら、追うこともないだろう」
レイヴンは仲間達へと告げ、武器を収めたのだった。
●
聖獣も聖銃士も退け、イレギュラーズは撤退に転ずる。
「この隙に離脱すれば、何とか振り切れそうかしら?」
蛍の主張に頷く珠緒。
彼女は離脱を皆に勧めるべく、回収したファミリアーによって取得済みの情報によって割り出した経路を、ギフトを併用したテレパスを使って示す。
口頭説明による齟齬を防ぎ、かつ時間短縮をという珠緒の配慮は大きい。
現状、増援が来る様子がないと判断し、レイヴンは高機動でこの場から離れる。
倒れる聖銃士の中で、メンバーは可能な限り数人を抱えて保護することに。
「今度こそ子どもたちのプリンシパルになってみせるわ!」
傷を負って気を失った子供をヴィリスが1人抱え、イーリンも漆黒の牝馬ラムレイに1人を乗せる。その搬送はオウェードも手伝っていた。
レイリーも聖獣やニコラに手を差し伸べるが、ニコラは最後まで拒絶する。
再び、赤毛の聖獣が仲間の聖獣を引き連れてきたのが見えた為、メンバーはやむなく2人だけを保護して都市外部まで離脱していく。
落ち着いたところで、ココロが医術士の技術によって子供達の傷を塞ぐ。
目覚めた彼らはまだ警戒心をむき出してはいたが、傷を癒していたことは感謝していた事にココロはホッとしていたようだ。
「落ち着いたかね?」
子供達へと問いかけるオウェード。まだローレットに対する誤解を抱いたままだったのは、皆テレパスで感じていた通り。
「また成果を上げられればいいのだけど」
ニコラを始め、今回、保護できなかった子供達。そして、ミロイテとみられる赤毛の聖獣……。
子供達を救う為の新たな情報が仕入れられればと期待しながら、蛍は仲間と共にアドラステイアを離れていくのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは相方と主に聖銃士を無力化させた貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
独立都市アドラステイア中層シナリオをお届けします。
こちらは今回、レイリー=シュタイン(p3p007270)さんのアフターアクションによるシナリオとしておりますが、同じく、ヴィリス(p3p009671)さん、ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)さんからも同様のアクションがあり、今回1つのシナリオとして運営させていただきます。
マザー・マリアンヌ関連シナリオではあるのですが、3名の優先参加となりましたことで派生シナリオとさせていただき、今回は本筋と別の展開にさせていただきました。
この為、関係者シナリオとはしておりません。予めご了承願います。
●目的
聖獣、聖銃士を撃退し、戦場から逃れること
●敵……聖獣及び聖銃士一隊
◎聖獣×3体
・赤毛の聖獣(名称不明)
全長3.5mほど。他の聖獣を率いる赤毛の獅子に翼を生やす聖獣。
機動力を活かして空中から相手を強襲し、前脚を薙いできます。
他にも、両腕と翼での乱撃、自重を使ったのしかかり等も行います。
・野良聖獣×2体
全長5mほど。1体は狐の姿、もう1体は狸の姿をしています。
いずれも妖術を使っての遠距離攻撃を得意としていますが、狐は素早さを、狸は自重を使った攻撃も仕掛けてきます。
◎アドラステイアの騎士:二コラ小隊
別名『聖銃士』。白銀の鎧を纏う子供達です。
いずれも長剣、長槍など重くない近接武器を所持しています。
赤毛の聖獣を与えられ、襲い掛かってきます。
・小隊長ニコラ
13歳、期待の新小隊長。
ミロイテを姉と慕い、彼女のようになろうと新たな聖銃士小隊を率いております。ミロイテと同じく長剣を使いますが、力量は彼女には劣ります。
ミロイテの失踪がローレットによるものだと聞き、並々ならぬ怒りを抱いているようです。
・一般聖銃士×15名
マザーに認められてアドラステイアの騎士となった少年、少女。
新設隊ですが、半数はミロイテ隊からの移籍組です。
都市内で戦闘経験を積みはしていますが、技量は他小隊の構成員と同程度といった印象です。
●NPC
◎マザー・マリアンヌ
魔種。20代女性。血に濡れた修道服を纏う元人間種女性。
手枷足枷は二度と神を裏切らぬ証。罪人たる自身を戒める拘束具。それを解き放った時、マザーは神を冒涜する者を排するといいます。
今回は名前のみの登場です。
●魔種
純種が反転、変化した存在です。
終焉(ラスト・ラスト)という勢力を構成するのは混沌における徒花でもあります。
大いなる狂気を抱いており、関わる相手にその狂気を伝播させる事が出来ます。強力な魔種程、その能力が強く、魔種から及ぼされるその影響は『原罪の呼び声(クリミナル・オファー)』と定義されており、堕落への誘惑として忌避されています。
通常の純種を大きく凌駕する能力を持っており、通常の純種が『呼び声』なる切っ掛けを肯定した時、変化するものとされています。
またイレギュラーズと似た能力を持ち、自身の行動によって『滅びのアーク』に可能性を蓄積してしまうのです。(『滅びのアーク』は『空繰パンドラ』と逆の効果を発生させる神器です)
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
Tweet