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シナリオ詳細

肉じゃがの反乱

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 肉じゃがの起源をご存じだろうか。
 異世界ではこういう話がある。元々ある国で提供されていたビーフシチューの味をいたく気に入った将官がいた――それを祖国でも艦上食として再現させようとした結果、生まれたのが肉じゃがだと。
 この話は作り話ともされている為、真偽は定かではないが……しかし。混沌の世にも肉じゃがはあるものであった。こういった話が伝わってきたからなのか、元からあったのか。これもまた分からないが、海洋の軍船では一部、肉じゃがが艦上食として振舞われる事もあり……
「さーて今日は、おぉ肉じゃがの日だったな。と、んっ?」
 そして。海洋王国東部で哨戒にあたっていた軍船グリバルでは夜食の準備が進められていた――作るべきメニューは、当然肉じゃが。
 じゃがいもに肉に人参、玉ねぎ、糸こんにゃく……と。準備しようと調理担当が薄暗い食糧庫へと入った――が。

 食材が、ない。

 どういう事だ――? 確かにここに大量のストックがあった筈。
 どこか別の場所に移動でもさせたか……? と視線を巡らせた、その時。
「ぐぁ!!? な、なんだ誰だ、何をする! 離せ!!」
「――静かにしろ。今からこの船は、我々が占拠する」
 食糧庫の奥から『何か』が急速に飛び出してきた。
 あまりに一瞬の出来事。あっという間に取り押さえられてしまった船員は、抵抗する暇もなく……そしてその襲撃を皮切りに、食糧庫の奥から無数の『何か』が更に出現してくる気配もあれば。
 感じるものだ――これは、シージャックだと。
「ば、馬鹿な事はやめろ……! ここは軍船だぞ!」
「知っている。だが我々は我々の為に立ち上がるのだ。
 そう。最早我々は食される側の者ではない……我々が食す側なのだと。
 今こそ世に知らしめる為に……!!」
 何の事だ――取り押さえながらも相手の風貌を窺わんとする船員。
 さすれば、悟った。今己を取り押さえているのは――人間ではない。
 巨大な、じゃがいもであると。

「我々は肉じゃが・フリート! 今こそ人間の世に反逆する者である――!!」


「た、助けてください!! 肉じゃがが……反乱を起こしたんです!!」
 海洋のローレット支部に駆けこんできたのは、一人の海種であった。
 何を言っているんだと初めは思ったものだが――どうにも話を聞いてみれば、軍船の中に保管していた食材の一部が、原因不明だが魔物化したらしく……反乱を起こして船を乗っ取ってしまったらしい。
 予測していなかった内部からの強襲には弱かったという事か――
 そして肉じゃが(の具材)達は、船員たちを人質にこう主張している。

『我々は独立する! 最早人に虐げられる立場は終わったのだ!
 我々を追うな。もしも我々を害さんとするのであれば――
 人質を一人ずつ鍋にぶち込んでいくぞ! 鳥が良いか! 魚が良いか!』

 鳥(飛行種)と魚(海種)の船員に刃物を突き付け、海の彼方へ消えんとしているのだ――
 無謀だ。航海技術があるかも分からない肉じゃが(の具材共)に海が渡れるものか……しかし最早魔物に対して道理を問うても仕方ない。とにかく人質となった船員たちを一刻も早く救出しなければならないのだ。
 まだ船の位置が補足出来ている内に。
「しかしそれなら海洋王国の他の軍船でも、もう動いてるんじゃ――」
「いえ。実はそうなのですが、撃墜されまして」
「撃墜!!?」
 なんでも救援に向かった海洋王国の軍船は――肉じゃがからの迎撃により船が落とされてしまったらしい。
 それが『ポティトゥ・メティオ(隕芋)』
 虐げられた肉じゃが達の怒りの鉄槌らしく――まるで隕石の如く注がせた巨大芋により遂に沈まされてしまったのだとか。まぁ人質の事などを踏まえて、軍船も反撃し辛かったのも大きな原因らしいが……
 とにかくまた援軍を送る暇すら惜しい。故にローレットに――と。
「反乱を起こした肉じゃがは大きく五つ。じゃがいも、肉、糸こんにゃく、人参、玉ねぎです。それぞれが2m~3m程度の巨大な存在へと変質しており、戦闘能力も宿している様です」
「どういう絵面なんだよ……」
「数もそれなりにいるようですが……ただ、つけ入る隙は存在します」
 なんでも占拠された船の様子を伺っていると――反乱を起こした具材達の連携は必ずしも良い訳ではないらしい。『俺こそが肉じゃがのリーダー』『いや俺が』『馬鹿か俺だろ』の様な雰囲気を醸し出していたとか……
 故に数が多くても隙はどこかに存在する筈だ。
 注意を引き付けながら裏側から船に侵入する――
 或いは全員、潜りながら船に接近するなど――
「全く。全部肉じゃがの具材なら仲良くしろよ……」
 吐息一つ。さてさてまずはどうやって船に乗り込んだものかと。
 イレギュラーズ達は思案を巡らせるのであった……

GMコメント

 肉じゃががビーフシチューの再現云々の逸話って創作の可能性もあるんだとか。
 へぇ~でも肉じゃが美味しいから何でもいいですね!!!!!
 ともあれ詳細です。よろしくお願いします!

●依頼達成条件
 肉じゃがの反乱を……鎮圧せよ!

●フィールド
 海洋王国の軍艦です。現在肉じゃが(の具材)達に制圧されています。
 彼らは独立を謳い、海の彼方へと船を進ませている様です……海洋王国が妨げようとすれば、船員の鳥(飛行種)と魚(海種)を煮て喰うぞと脅しています……

 周辺は穏やかな風が流れており、嵐などが来る気配はなさそうです。
 シナリオ開始時刻は昼でも夜でも選べます。

●敵戦力
 肉じゃがになる筈だった予定の食材達です。
 原因は分かりませんが突如として魔物化し、船を占拠してしまいました……彼らは船を見様見真似で操作し、海の彼方へといざ往かんとしている様です。シナリオ開始当初は船の各地に散っており、周辺の警戒も行っています。

 彼らをなんとか殲滅し肉じゃがにしてや……違う、船を取り返してください!

・じゃがいも×3
 俺が主役です。と言わんばかりに主張のやたら強い巨大じゃがいも。
 HPや防御力に優れており、いわゆるタンクとしての性能に優れている様です。更には『ポティトゥ・メティオ(隕芋)』なる必殺技があるらしく、下手に直撃すると小型船などは沈んでしまう可能性もあるとの事です……
 でも食べると美味しいです。

・お肉×3
 いや肉じゃがの主役は俺です。と言わんばかりにデカいお肉です。多分牛肉。
 物理攻撃力に優れており、アタッカーとして船を制圧しました。
 食べるとやっぱり美味しいです。

・糸こんにゃく×3
 何を言う。肉じゃがの影の主役は俺よ――とばかりのデカデカ糸こんにゃくです。
 神秘攻撃力に優れており、後衛として船を制圧しました。
 食べるとこれまた美味しいんだよなぁ。

・人参×3
 馬鹿共め。人参の俺がいなくては始まるまい……とのビッグサイズ人参です。
 反応と回避に優れ、連撃を繰り出してくるスタイルのアタッカーの模様です。
 食べるとホンッッット美味しいです。

・玉ねぎ×3
 俺抜きで肉じゃがを語るつもりか――? と支配者を気取るスマートな玉ねぎです。
 EXA、EXFに優れている様であり、BSを駆使して攻めてくるようです。
 食べるとめっちゃ美味しいです。

●人質達×20人ぐらい
 軍艦『グリバル』の船員達です。内部に突如として敵が湧くとは思っていなかったのか、一気に制圧されてしまいました。現在は船の一室に全員閉じ込められている様です。
 全員ではありませんが一部は戦闘を行える者もいるみたいですので、救出出来れば味方戦力として動いてもくれるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 肉じゃがの反乱完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)
泳げベーク君
海音寺 潮(p3p001498)
揺蕩う老魚
寒櫻院・史之(p3p002233)
若木
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
メリッサ エンフィールド(p3p010291)
純真無垢

リプレイ


「に、肉じゃがって人に襲い掛かってくるものなんですか……初めて知りました。これからは肉じゃがに襲われないように、ご飯の際は気を付ける必要がありそうですね……!」
「落ち着け――いいか。今回の依頼の要点はそこじゃねぇ。
 つまりだな……今夜はうまい肉じゃがにありつけるって話だ」
 そうなんですか! 『純真無垢』メリッサ エンフィールド(p3p010291)は『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)の発した言を信じるものである――一方の縁は、正直顔の端に『?』マークが浮かんでいる様な心境であるが!
 いやもう正直、話の流れはさっぱりわからない。
 だが良いぞ肉じゃがは。なにせ海洋の依頼ついでのまかないと言えば、やれ海の幸だのやれ狂王種だの、魚介の類を受け付けねぇ身にはキツい代物が多い……故にこそ肉じゃがは良いものだ。魚が無い故に。
 ――とにかく船員が人質に取られ危険な状態であるのに間違いない。だから。
「よーし! じゃあゆっくりと近付いていこうか、皆……!
 上手く行けば今夜の肉じゃがは豪勢に食べれそうだよ!!」
「ええ――この流れ、きっと肉じゃがの次はカレーか、或いはシチューなども乗り出してくるかもしれません。未来を見据えれば此処で対処を心得ておくべきかと。肉じゃがの味わい……じっくりと堪能させていただきます」
 『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)は潜水艇を繰り出し、海軍カレーらの登場に期待を馳せてお目目ぐるぐるな『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)や先のメリッサらと共に水面下から船に近付いていくものである。
 ふふふ。肉じゃがと言えば美味しいのが当たり前! 実に楽しみだと思えばこそ、慎重に。夜を選んで少しでも敵の眼から逃れる暗黒の海に潜むものだ……一方で縁は暗きを見据える目と共に直に泳ぐもの――さすれば。
「やれやれ。肉じゃがが自我を持ち、人間に反乱を起こすとは……世も末かのぉ」
「だが問題はないよ――喰おう。彼らに、肉じゃがとしての本来の使命を思い出させるんだ」
 縁と同様に泳ぎて近付かんとしているのは『揺蕩う老魚』海音寺 潮(p3p001498)と『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)である。海中より泳ぎて警戒網に掛からぬ様に注意しながら――進んでいく。
 特に史之は瞳に強き意志を宿しながら、だ。
 食おう。誰がなんと言おうと食ってみせる。
 今回の敵は人質まで取っているんだ情状酌量の余地はない、よって食う――
「ひさしぶりだなー和食、うまいんだよなあ肉じゃが」
 おっと。本音が零れてしまった。咳払い一つと共に接近再開。船の影が鮮明となる程の近さになってくれば、ここからが本番だ……クルーザーに乗り込んでいる花丸達は息を潜め存在を消すように。
 潮らも奴らの眼に留まらぬ様に備えるものだ――と、その時。
「んっ? なんだ……今何か音がした様な……」
 恐らく人参と思わしき影が水面を見据えるもの。
 灯りを照らし何かがいないかと、さすれば。
「……万が一の時は囮になるからの、その隙に乗り込むのじゃ」
 見つからぬ位置にて潮が紡ぐ。
 人参の警戒がなくなれば往こう――もし見つかれば囮となってでも。
 一拍。二拍。
 緊張に心臓の鼓動が高まる中、しかし――
「……気のせいか。魚でも飛び跳ねたのであろうな」
 警戒が、薄れる。その隙を見計らって跳び出したのは――『炎の守護者』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)だ。花丸らと同様に飛翔して船の一角にこっそりと降り立て、ば。
「よし。今の内に行こう――まずは人質の皆を救助してからだ……!」
「ええ……しかしあの食材軍はなんでさも当然の様に人に襲い掛かってくるんでしょうか……大自然の、いえ大海原の神秘ですかね……」
 続く『不屈の障壁』ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)らと共に船内へと侵入する。野菜が反乱を起こすなど疑問符盛り沢山の状況だが……まあいいかと。チャロロが助けを求める感情の色を探りベークが警戒しつつ周囲を索敵。
 船員が閉じ込められている部屋はどこだ――
 アッシュやメリッサは使い魔による索敵を行い虱潰していくもの。可能な限り食材共の警戒網は迂回し慎重に探し続け。花丸の優れた三感が更に警戒を成せば――
「んっ!? な、なんだお前達は!! どこから侵入し……ぐぁ!!?」
「問われたのなら名乗ろー!
 我々は肉じゃが美味しくいただき隊!
 肉じゃが・フリートを美味しくいただく者であるー!」
 もうすぐ近いと思わしき場所で見つけたのは、警備の糸こんにゃくだ。どうしてもルート上、回避が難しいが故に花丸が強襲し戦いの合図とせん。
 ……えへへ、ノリで言ってみたけどこんな感じで良かったかな?
 舌出す花丸ちゃん、かわいい!


 船内に侵入者が現れた? おのれ狼藉者共が!
「さては海洋王国からの刺客だな……!?
 人質を殺れぃ! こちらが本気であると示して……」
「そうはいかないよ。人質はこの先だよね――? 退いてもらおうかな」
 怒れる肉じゃが勢力。其処へと撃を成すは史之であった。
 人質救出の邪魔はさせない――薙ぎ払う様に食材共を押しのければ部屋へと突入。
「もう大丈夫だよ! 終わったらおいしい肉じゃがを食べよう! さぁ反撃開始だ!」
「戦えない人はこっちの方に! 敵が少ない方へと走ってください――!」
「おぉ、救援か! 助かるッ!」
 さすればここからは迅速な行動が必要だと、チャロロとメリッサが声を張り上げるものだ。不安なる感情の色を探し続けていたチャロロが先行し、囚われていた者達に声を掛け――メリッサが使い魔たるネズミのいる方向へ逃げてくださいと指差すもの。
 船員を探すと同時に敵の薄いルートも索敵していたのである。
 人質の危険さえ排除できれば後は遠慮なく戦えるのだからッ!
「ここは俺達に任せてくれ。大丈夫、これでも……大号令の体現者さ」
「おお! 貴方があの寒櫻院・史之殿か……! 分かりましたお任せします!」
 そして史之もまた避難誘導の為に言を成す。名乗らなくなって久しいけれど、これでも大号令の体現者。その名声が海洋の民たる彼らの意志統一の一助となっている様だ――
「外にクルーザーもあるからの。戦闘が出来ない者はそこまで逃げるのじゃ。
 戦える者は共に、肉じゃがへと抗うとしようかの」
「道中の敵は僕が引き付けます。さぁ急いで。食材……いや敵もやってきますよ」
 そして周囲を警戒しながら船員達を護らんとするのは潮とベークだ。
 目指すはイレギュラーズが侵入してきた地点。花丸のクルーザーがある場所まで誘導するのだ――ベークは常に自らに戦いの加護を齎し万全を整え、いざや現れれば甘き香りと共に敵を引き付けよう。さすれば潮の邪悪を払う光も放たれ道を切り開く。
「この痴れ者共めッ! 肉じゃが・フリートの力を見せてくれる!」
「おっと、こんな所で肉じゃがの主役に出会っちまうとは。
 やっぱりあの旨さはお前さん方なしじゃ成り立たねぇよな……会えて光栄だぜ」
 であれば。騒ぎを聞きつけやってきた食材達がいた――人参やじゃがいもだ。
 故に、そのタイミングを見計らって縁が紡ぐ。
 それは全て敵の内輪もめを誘発させる為……!
「やっぱり『肉じゃが』って言うからには肉とじゃがいもが主役だろ。『じゃがこん』やら『ねぎ肉』とは言わねぇし、『人肉』――は字面が既にアウトだ。もう誰が主役かなんてのは、名前の時点で決まってるものだよなぁ」
「ふっ。分かっているではないか人間……やはり人参など腰巾着よな」
「貴様、人参一族を愚弄するかッッッ!!」
 そしたら予想以上に簡単に言い争いが始まるものである。
 敵である人間を前にしても尚、譲れぬ一線があるかのように……
「そうです。人参さん、貴方は調理法によって甘さを際立たせることも出来れば、味染みにもなれる稀有な存在です。それほどの事がじゃがいもに出来ましょうか――? 否です。それほどの実力を持ちながら『肉じゃが』と云う名に満足なのですか?
 甘んじるのですか。『肉じゃが』の奴隷たる――現状に」
 更に、縁に続いて更なる扇動するのはアッシュだ。
 彼女の巧みな演説が奴らの心に染み渡る様で……
「貴方を蔑ろにする、お肉さんとジャガイモさんを許す事が出来ますか?」
「ぐぐぐ、確かに……じゃがいもらに対する屈辱、晴らさずにおくべきか……!」
 翻弄される肉とじゃがいも以外の精神――!
 流石に人間側に寝返ったりはしないものの明らかに隙が出来れ、ば。
「まぁ花丸ちゃんのお腹の中に丸く収めてあげる! いっくよ――!」
 そこへと至るのが花丸の一撃だ。引き付けられ、注意が散漫となった奴らの横っ面に一撃ぶち込んでやる――! まるで狩人が獲物を解体するかのように、鋭利なる撃が食材らを襲えば切り刻まれていくもの。
「やれやれ。事此処に至ってまで、肉じゃがの真の主役が分かっていないとは、ね」
 そして。混乱増す食材らの戦場へ――史之が跳躍すれば彼は紡ぐ。
 そもそもが勘違いなのだと。主役は食材ではない。
「『料理人』だよ、馬鹿野郎どもッ! おまえら群れてるだけじゃただの食材じゃないか!
 そもそも肉じゃがでも何でもない――お前らを昇華させる料理人こそ主役!
 すなわち俺だ! 崇め称えろ、誉め祀れ!」
 逆らうならお前らポトフにでもしてやろうか――!
 渾身の叫び。芋をぶちのめすように注意を引き付け、もののついでに拳も叩き込もう。
 鍋へ投身したとしても味付けがあればこその肉じゃがよ――

 その意味を思い知らせてやると……肉じゃがの体現者、此処に降臨すッ!


「わーん、人参も玉ねぎもやだ! たべれない!
 コンニャクもぶよぶよしててキライ! いらなーい!
 お肉お肉お肉~! お肉がいいよ~~!!」
「なんだとこのガキャアア! 肉しか食えないと申すか!」
「ふっ。やはり『肉じゃが』の名前に載る事すら出来ない者は論外だな……」
 更に戦いは過熱する――主に肉じゃがのどれが主役かで。
 渦中にて言を張り飛ばすのはチャロロだ。いや実は本当は全部食べられるのだが、野菜嫌いな子供を演じて奴らの不和を加速させるつもりなのである! 自らに近寄ってくる嫌いな人参や玉ねぎには盾の一撃により一閃し。
「……ところで。凄い疑問だったのですが……肉じゃがの具材に何故糸こんにゃくが? 私肉じゃがに糸こんにゃくが入るって初めて知ったのですが……」
「な、なぁにい!? 小娘、糸こんにゃくはメジャーであろうが!」
「えっ。ホントですか? 世界はまだまだ知らない事が沢山ありますね……」
 糸こんにゃくは地域差があるらしい。故にメリッサは純粋に知らなかった。糸こんにゃくがそもそも肉じゃが入りする可能性に……! ぐあああ! 糸こんにゃくが何故か勝手にダメージを受けているが、チャンスなので更に追撃するかのように熱砂の嵐を叩き込んでやる。こんがり。
『何をしている糸こんにゃくよ。所詮はローカル食材。
 肉じゃがの恥さらしが……さっさと腐ってしまえ。それすら出来ぬか?』
「な、何をッ――! 今のは肉の声だな! 許さぬぞ!!」
 更にその攻防を蔑む様に声を紡いだのは……潮である。
 それは他者の声を模倣し紡ぐ術の一端。潜入や戦闘の最中に耳にした言葉をもってして、糸こんにゃくの心の隙間を突いたのである。また、周囲が暗い状況であったのも功を奏したか――声を真似て険悪なる雰囲気を更に加速させていく。
「やれやれ。信頼さえあれば斯様な一声で揺らいだりはせんかったじゃろうにのう……」
「ええ。しかしこれが肉じゃがの限界という事でしょう――ならば」
 そこへ。更なる言霊を紡ぐのはアッシュだ。

 ――糸こんにゃくさん。貴方は決して煮崩れない、独特の食感をお持ちです。
 故に、全体をマンネリ化させない独特の存在感を放っておられるのです。
 なのに何故、料理名に其の名を連ねないのです?

 ――玉ねぎさん。塩系の味付けの中に、甘味という絶大なアクセントを生み出すのは貴方です。
 貴方がいなくては、旨味、塩気、甘味の三次元的味わいは生まれません
 貴方を蔑ろにする、お肉さんとジャガイモさんを許すことが出来ますか?

 それらはまるで神からのお告げの如く。
 求めていた言葉。『肉じゃがの主役は貴方』であるという言葉が降り注げば――
「うぉぉ……そうだ……じゃがいもを許すな! 王者は俺だ――!」
「ホンット思うんですけれど、この食材達って乗せられやすすぎません? いやまぁいいんですけどね。こいつら倒したら僕じゃなくてこいつらが今日の晩御飯になるだけなので」
 内乱勃発。一応、人間側に味方している訳ではないので混戦的状況だが。
 やれやれとベークは吐息を一つ零すものである……ま、なんでもいい。戦い方が変わっても、どういう立場で戦おうと自分の代わりにご飯になってくれる存在がいる――それだけで活力が沸いてくるというものだから。
「いや、だが待てよ。
 じゃがいもが主役だって言うんなら、今後は『じゃが肉』って呼ぶべきじゃねぇかい?
 『肉じゃが』って言う事は……やっぱり主役を暗に指し示しているのは……」
「やはり肉か? ふっ。分かっているではないか人間よ」
 肉なのではないかと――更にじゃがいもへと述べるのは、縁だ。事ここに至りて『肉』と『じゃが』すら決裂させんとする縁の策謀が張り巡らされる――人参を一刀両断するかのように撃を紡いで、駄目押しの扇動を行おう――
 と、その時。

「うぉぉぉぉ! この馬鹿共が……誰が真なる肉じゃがの神なのか。
 その目で刮目するが良いぞ! ポティトゥ・メティオ――!」

 必殺技、叫ぶじゃがいも。さすれば天より飛来する巨大じゃがいも――!
 愚かなりし人参たちの内乱に業を煮やしたじゃがいもが全てを薙ぎ払い、無かった事にするつもりか! その一撃が狙うのは船そのもの。まずい、このままでは食材達が海水に浸かって食えたモノではなくなる――! だから!
「そうはさせません。今日のご飯はあなたたちです。大人しくお縄についてください」
「ああ。そろそろ本格的に肉じゃがの時間だよッ!」
「肉肉肉肉じゃがー! お腹空かせてきてるんだから、只の食材に戻ってもらうよー!」
 ベークと史之が往く。大技の兆候を見切ったベークがジャガイモたちの気を引きつつ船外に跳び出すのだ。さすれば軌道修正されるメティオがベークらへと襲い掛からん……! 代わりに船には直撃せず、だからこそ次が放たれる前に花丸が食欲と共に拳を一撃。
 じゃがいもを粉砕せん。その身に亀裂が走りて……!
「ぐ、があああ! ば、馬鹿な、我らが人間如きに……!」
「互いへの信頼の無さ。其れがあなた方の敗因です――
 肉じゃがは全てが詰まっているからこそ至高の領域に到達しえるのですよ」
「然り。料理は一つの食材だけが偉いというわけではない。
 使われている全ての食材が偉いんじゃよ――それに気づけなかったお主らの負けじゃよ」
 その他の食材も同様だ。アッシュの気糸からの斬撃が細かく彼らを切り裂き、潮の光が彼らに熱を与えて殲滅せん。もしも彼らが真に……争う事なく『肉じゃが』として纏まっていれば厄介だったのやもしれぬが。
 出来なかったからこそ敗れ去るのだ――肉じゃが・フリートは。
 落ちてきたポティトゥ・メティオも処理しきれば……さて。

「という訳で肉じゃがタイムだね! さー花丸ちゃん、飛び切り美味しいのを作っちゃうよ!」

 皆楽しみ晩御飯の時間である――!
 救出できた船員達も誘って、皆でたのしい肉じゃがと洒落こもう。
 花丸渾身のお料理タイム。さすれば早速にも美味しい匂いが充満するもので……
「うん、丁度よくホクホクに煮えててお肉も柔らかくておいしい!」
 チャロロ、肉じゃがを食す。うんうんこの味だよこの味――!
 野菜も勿論食べる。オイラこう見えて中学生だもん、平気だよ!
「地元じゃ肉じゃがには豚肉を使うのが主流だったな……
 豚の脂とじゃがいもがよく合うんだよ……もちろん牛肉も旨味があっていいよね!」
「ああ。だが、俺はどっちかって言うと主役はそもそも食材というよりも」
 『肉じゃがの主役はみりん』派であると、言うは縁だ。
 一仕事終えた後の肉じゃがは格別。
 これだけは確実なる世の真理だと――酒を喉の奥へと運びながら、縁は確信していた。
「これ、持って帰れる量もありそうだね。お土産として持って帰りたいなぁ」
 そして肉じゃがを食す史之は己が伴侶にも分け与えたいと思考するものだ。
 ――料理人が主役だとは言ったが、実際の所は『食べる人』こそが主役に相応しい。
 誰かの笑顔がある事こそが、一番望ましいのだから……
「なるほど……これが糸こんにゃくの味わいですか、中々ですね……!」
 そしてメリッサも食す。なんだかすごくお腹が空いてくる相手だったが、肉じゃがとして食せば元気回復! 初めて見る糸こんにゃく入りの肉じゃがを前に、箸を進めてみれば――

 糸こんにゃくさん――馬鹿にしてすいませんでした――

 夜空のお星さまになった糸こんにゃくさんを思い浮かべながら。
 メリッサは美味しかったですと――天へ紡ぐのであった。

成否

成功

MVP

アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.

状態異常

なし

あとがき

 肉じゃがおいしい!!

 という訳で依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!! 肉じゃがの主役は人それぞれ……
 喧嘩せずに美味しくなってほしいですよね。ありがとうございました!!

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