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シナリオ詳細

櫻羽語り、花霞の宴

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 ――春は、好き?

 爛漫の、春。
 桜花ひらく豊穣郷の、麗らかな華宴。
 雪解けを迎えた柔らかな大地に生命が産声をあげる、芽生えの季節。
 春の色めきを漂わせるのは、薄紗のフリルを重ねるように咲く可憐な花々。春霞に朧な彩を揺らす木々は控えめで初々しい。朝露抱く花芯は歓びを溢れさせていて、柔らかな日差しがふっくら潤う緑の絨毯を撫でて、胸満たす光風は生命の息吹に溢れている。枝に震えて揺れる薄いピンク色の桜は無垢で可愛らしく、儚い。
 流れる風にふわりふわりと花を吹雪かせる生まれたての、春――。

 はらり、ひらり、手のひらに舞い降りる薄紅の花びら。
 優しい風波寄せる世界。

 新緑のさざめきに降る桜雪はやさしくて、甘い香りで抱きしめてくれるみたい。恋人たちが睦まじく語り合い手を繋ぎ、小さな子どもが新しい生命をみつけては声を弾ませている。春の陽射しに出逢うたび、暖かなおひさまの笑みが零れてしまう、そんなお花見日和の豊穣郷――。

 暖かな季節を迎え、言祝ぐ花宴は緑地に井草のござを敷き、ほろほろとした大和琴の旋律をききながら。
 お花見のお供、おもてなしのお菓子は雅なほろ苦さ潜む抹茶餡のお饅頭。はんなり、初々しい心地にさせてくれる櫻の最中。ひよこさんやわんこさん、ねこさんの形をしていて、可愛い顔が描かれている和風マシュマロは、中にジャムが入ってる。水羊羹は可愛いお魚が泳いでいる見た目で、涼やか。花砂糖は桜色や菫色で、おひさまを受け止めてきらきらしている。三色団子に金平糖、桜餅も忘れずに。
 花見酒はメロンやマスカットのような爽快でフレッシュな香り、甘味と酸味が調和した味わいの中に、米の旨味もほんのり感じられる酒々、雪桜。お酒が飲めないあなたには、定番のあったか緑茶はもちろん、甘酸っぱい初恋の味を思わせる苺や桃の果汁ジュースやタピオカに似た黒蜜入りのわらび餅が底を揺蕩う若芽色の和風ミルクティーもある。

 髪が風に梳かれていく。
 空の風と喜びを分かち合うみたいに、鳥が羽ばたいている。

 ねえ――春は、好き?


●依頼のお話
「お花見の季節ですね」
 マリエラ・メレスギル(p3n000235)が少し困った様子で話しかけてきたのは、あなたがギルドで依頼を探している時だった。
「こちらの依頼、なのですが……、
 祭事に通じる星芒家からの依頼で、豊穣郷のお花見の宴を妨げようとする鳥妖がいるのだそうです。妖から人々や催し事を守ってください、と。依頼書には、そう記述されています」
 お花見会場は、桜の木が並んでいる。
 妖はペールグリーンの毛並みをした大きな鳥型。主な生息地は会場の北方にある森林地帯。桜の花びらをつついて食い荒らしたり、宴客のお菓子を奪ったりする恐れがある。何より困った特徴として、ぷんぷん怒ると火球を吐くという点だ。会場や宴客への被害が危ぶまれる。
「もしよければ、一緒にいかがでしょうか? その……ひとりでは不安でしたので。given様が一緒だと安心かな、なんて」


●櫻羽語り、花霞の宴
 星芒 玉兎(p3p009838)は姉であると共に、彼女に付く女房である星芒 澄が仏頂面をしてストローで桃の果汁ジュースを飲んでいるのをちらりと見た。纏う布を余しがちな小柄な姉は、愛想の欠片もない。慇懃だが毒舌家でもある。静々と控えて身辺を世話してくれる一方で野放図にあんなことやこんなことをして妹を振り回したりもする。信頼できて、愛情を感じる――たまに畏れもあるが――。
 玉兎は、姉に負い目もある。澄は最初、月華の精霊種として星芒家に迎え入れられたのだ。その後により強い月気を纏った精霊種、玉兎が現れた事を切掛に、澄は水月の精霊種だと判断されて従者の立場に降ろされたのだ。
 玉兎が神使となった際は、澄は玉兎の身を案じて活動に難色を示したものだった。けれど、玉兎自身は神使としての活動に積極的な意欲があった。そのため、姉妹は初めて喧嘩をしたのだった。現在はお互いに一応矛を収めているものの、ギクシャクした関係が続いている――。

「春になると何かと活発になるのは自然ッスね。妖さん以外にも、痴漢とか泥棒とか、いろんな悪い事をする人がいないか注意するッス!」
 イルミナ・ガードルーン(p3p001475)がタピオカに似たドリンクをスタッフから受け取り、桜の木々の間を歩く。視界を薄紅の花びらがふわふわ降りていく。足元は明るい緑で、風に遊ばれて舞い降りた花びらの色もある。

「またお会い出来ましたね」
「また一緒に冒険できるね」
 エア(p3p010085)と雨涵(p3p010371)はペイトで一緒に冒険をした仲間。マリエラも「先日ぶりですね」と嬉しそうに目を細めて、頭を下げた。

 マリエラは、未だ異変が解決できていない故郷の深緑に思いを馳せるように頬に手を当てて、吐息を零した。
「心配事も多い世の中ですけれど――目の前の「できること」をひとつひとつ、頑張っていこうって思うんです。生きている人は皆、そうですよね。全く心配な事がない人なんて、そうそういませんよね。その人だけの悩みや心配事を抱えて、毎日をその人なりに生きています。
 日々に疲れていたり、つらい中で、春を感じてすこし癒されたり、嬉しいな、また頑張ろうって思えるのがお花見なのかなって思うんです。限られた時間で咲く桜に今年もまた逢おう、今年だけの思い出を作ろうって楽しみにしてた人たちはいると思うんです」

 毎年巡る季節。
 短い花の盛り、その時限り生まれる思い出。
 恋人と、家族と、友達と。人々は楽しい体験を期待して、その宴に集まっている。

「私は、そんな人たちのお花見を守りたいなって思います。どうか、お力を貸してください」


 ――桜と人と、妖と。
 これは、春を等しく感じる生命たちの物語。

GMコメント

 桜はお好きですか?
 透明空気です。今回は豊穣です。
 アフターアクションを送ってくださって、ありがとうございます。

●オーダー
・豊穣郷のお花見の宴を妨げようとする鳥妖から人々や催し事を守ってください。
 退治しても良いですし、追い払っても良いです。

●場所
・豊穣郷の『井佐』という土地。お花見の宴会場。
 桜の木が並んでいます。会場では和菓子やお茶、お酒、ジュースなどをお楽しみいただけます。
 OPに記載されているものを選んでお召し上がりいただいても大丈夫ですし、記載のないものを「これがあったので食べた!」と書いてもOKです。

・北方にある森『盈(みつる)の森』
 コブシやシュンラン、タチツボスミレが咲く森です。桜は見当たりません。
 鳥妖達がたくさん住んでいて、食べ物を探して飛び回ったり、囀りで情報交換したりしています。

●敵
・鳥妖
 北方にある森林地帯から飛んでくる(可能性があるので、警戒されている)妖です。
 桜の花びらをつついて食い荒らしたり、宴客のお菓子を奪ったりします。
 ぷんぷん怒ると火球を吐く特質あり。
 桜や藤、甘いお菓子を食べる性質、暖気を好む性質、鳥類の仲間に比較的好意的な性質があります。

●味方
・星芒 澄
 星芒 玉兎(p3p009838)さんの関係者です。玉兎の姉であると共に、彼女に付く女房。好きなものは氷菓。嫌いなことは背丈を揶揄されること。

・マリエラ・メレスギル(p3n000235)
 弊NPCです。OPの通り、モチベーションが高めです。ただし、各種能力は低く依頼の役には立ちません。武器も持っていないので、戦う時はぱんちです。

●依頼後のおまけ要素
・依頼成功後は、お花見の宴会場で自由に花景色やお菓子をお楽しみいただけます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。安心!

 以上です。
 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 櫻羽語り、花霞の宴完了
  • GM名透明空気
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年04月08日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
松元 聖霊(p3p008208)
それでも前へ
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
さくら(p3p009754)
花霞に盃を
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
エア(p3p010085)
白虹の少女
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
雨涵(p3p010371)
女子力(物理)

リプレイ

●櫻羽語り、あちらのほうへ
 ――きれいなお花。
 『おかえりを言う為に』ニル(p3p009185)が手のひらを天に向ける。初々しい朝露めいた銀の瞳は、桜色の花弁がその手に舞い降りるのを瞶めた。
「今日は天気も良いですし絶好のお花見日和ですね」
 『優しい気持ち』エア(p3p010085)はお菓子の入ったバスケットを指先でぽんと叩いて。
「わたし、すっごく楽しみだったのでお菓子を作ってきたんです♪」
「わぁ、お菓子! お花見……えへへ、楽しみッスねぇ」
 『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)が無垢な少女の顔で燥いでいる。

 右も左も明るい表情の人であふれていて、お花とおいしそうなごはんに囲まれて、みんなが笑っている。

 ――春……桜……華やぐ、言葉通りですね。景色も、楽しむみなさんの声も、すごく綺麗な色……。
 『未来を願う』ユーフォニー(p3p010323)の海色の瞳が絢爛の世界を映している。
「見惚れてしまうの、わかります」
 ニルが頷いた。きれいなお花を見ると、自然とにこにこして、ニルもお花になったみたいな心地がして。皆でおいしいごはんを食べる時間は、ニルをとってもあったかで楽しい気持ちにさせてくれるから。
 楽しくて、大好きな――春。
「みなさまと楽しい時間を過ごすために、ニルはがんばります」
 健気な聲色で言えば、ユーフォニーから優しい相槌が返ってくる。
「私も頑張ります!」

 ――当家がローレットに依頼を?
「これは遠回しに「家の事を忘れてやしないか」と苦言を呈されているのかしら。星祭には出席したでしょうに。節句は欠席しましたけど」
 『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)は扇で口元を隠して、姉をちらり。
「ねえ、どう思いますか姉さん?」
 小柄な姉は視線を返すことなく。
「危険な仕事ばかりしているからでは?」
「……?」
 玉兎はそっと首を傾ける。繊細な白銀の髪がはらりと肩にかかり、麗らかな日差しに艶を放った。
「巨大で狂暴な竜やアリが出るという土地に行ったのを誤魔化すのではないでしょうね」
 澄が小さく声を返すので、玉兎は瞬きをして。
「姉さん、わたくしの神使活動に反対なさっていましたけど――まさか報告書を全部?」
「当たり前です」
 姉の頬が仄かに上気している。心配してくれている――その仏頂面がなんだか幼く見えて、玉兎は扇で顔を隠してくすりと笑った。

 優しく儚い春霞に、桜の気配を纏う精霊種が佇んでいた。
「桜……」
 あえかに音を紡ぐ声は玲瓏と。
「もしかしたらわたしの子供や親兄弟、親戚の子だったりするのかな?」
 芽吹きを言祝ぐ大地の色合いをした可憐な瞳が桜の木々に微笑んだ。
「この子達があと数百年後にどうなるかも楽しみだなぁ」
 一面の桜景色に溶け込むような桜の古木の精霊種は、名をさくら(p3p009754)という。
「……一緒にお花見を楽しむなら嬉しいのだけど、そうじゃないならこらしめてあげないとね」
 頷いたのは、『女子力(物理)』雨涵(p3p010371)。
「いじめっ子には優しくしてあげない。お菓子もあげない。べーだ!」
 言いながら仲間に披露するのは、甘やかな夢色が詰まった琥珀糖の瓶。
「わたし、今日の依頼のためにお腹ぺこぺこにしてきた。これチラつかせて鳥妖達を誘き寄せる」
 ――雨涵、どうしてご飯を食べないんだい。
 心配するパパの声が蘇る。お仕事のためだと言ったら、パパはびっくりしていた。
「雨涵さんは依頼のためにお腹をぺこぺこに? これは急いでお仕事を終わらせて、美味しいごはん食べるしかないッスね」
 イルミナが青空みたいなカメラアイをキラキラさせつつ、燥ぐ心を引き締めている。きゅいんっという機械作動音を『ヒュギエイアの杯』松元 聖霊(p3p008208)の長耳が拾っていた。
「空腹で倒れないようにな?」
「わたし、元気。大丈夫」
「無理するなよ? とりあえず、急いで作戦を開始すっか」
 ニルと聖霊とさくらが保護結界を重ねて、さくらが桜の幹を淑やかな手付きで撫でながら首をかしげた。動きに伴って、はらりと頭から花弁が舞い降りる。
「妖鳥は、食べ物がなくなってこっちに来てるのかな? ……もしかして、そろそろ子育ての時期?」
 子供が増えたらいっぱい餌が必要だし、人がここにいっぱいごはんを持ってくるから取っていこうとするのかな、と発想を共有すれば、ニルは「なるほど」と共感顔。
「もし人が持っているのを啄んで行かずに、鳥妖のために準備したものを持ってくなら、人も妖も楽しく過ごせる宴になるのにね」
 殺生は好ましくないよね、とさくらが零せば。
「ええ。花の日和に、血や死の穢は不相応というものでしょう」
 玉兎が頷いて提案したのは『会場から離れた場で彼らにも甘味を提供する』という妙案だった。
「宴会というものは大抵、到底食べきれないだけの料理を用意して、案の定余らせて腐らすものです。ならば、翼の生えたお客様にお裾分けしても、誰も不幸になりはしないでしょう――姉さん……澄」
「はい、玉兎様」
 毅然とした態度で方針を定め、公の立場で澄に声をかければ、澄は恭しく頭を下げて粛々と使用人に指示を出して準備を進めてくれた。

「ぴ?」
「ぴ!」
「ちちち……♪」
 準備中の会場へと興味津々で寄ってくる妖鳥たち。聖霊が杖を垂直に地面に立て、付与術を行使する。蛇の紋章が杖の周囲に一瞬顕現して、医神の力を強めていく。雨涵は指を鳴らして花吹雪と七色に輝く演出光で存在を際立たせながら名乗り口上をあげた。
「ごはん、まだ準備できていない。『マテ』ができない子には、お菓子なし」
 お兄ちゃまも、言ってた。雨涵、欲しがりさんをほいほい甘やかしちゃいけないよ。雨涵は優しさにつけこまれてしまいそうで、お兄ちゃまは心配だよ。
(お兄ちゃま、だいじょうぶ。わたし、琥珀糖はあげない)
「周りの植物や生き物、傷つけるのは可哀想。思い出も、楽しいも奪わせない。わたし達が守る」
 きゅう。ちょっとだけ切なくお腹が鳴ったけど、雨涵は堂々と竜翼や尾を奮い、妖鳥たちの突撃を防いだ。
「こっちに来ちゃダメッスよー!」
 イルミナはできるだけ力加減した脚撃をお見舞いして。
「あとできる事……ボディランゲージッス、話せばわかるはずッス!」
 元気いっぱい両手を振り、「こっちにはーっ」両手をバツ印に交差させて「おいしい桜はーっ」ぴょーんと跳ねた「ないッスー!」もう一度ぴょーんと跳ねて「でも、もう少ししたら~おもてなしできるッス~!」伝わるッス? ドキドキ問いかけるイルミナ。隣ではニルが凍吹雪で鳥妖を追い払ったり、さくらがそーっと生命力を奪ったりしている。
「姉さん……澄も手伝いなさい。わたくしより巧いでしょう」
 月気を閃めかせた玉兎の声に頷いて、澄は「言われなくてもそのつもりです」と死角を守るように寄り添い、長い柄を操り円透扇をひらりと扇いで水月の気を送りこんだ。

 ――私も、頑張らなきゃ。
「……っ、助けて、係長」
 ハチワレにゃんこのバッグチャームを握り、極小声で万能遠距離攻撃係長『今井さん』を呼ぶユーフォニー。今井さんは即座に姿を現して、「何故そんな小声? まさか、今井を呼ぶのが恥ずかしいと仰る?」と怪訝な顔をしながらも魔力をお菓子の形に変えてお菓子会場の方向へと誘導してくれた。

「わたし達はこの綺麗な桜を見に来たんだ。このお菓子なら持って行っていいから、少しだけ桜を啄むのを我慢してもらえないかな?」
 エアがバスケットからお菓子を取り出すと、妖鳥たちは大喜びでお菓子を欲しがった。
「今度、貴方たちの住んでる森にプレゼントを持っていけるかもしれないの。それに、あっちに妖鳥さん用のお菓子会場ができたみたい」
「ニルも、あっちに誘導してみます」
 ニルが愛らしくあどけない歌声で妖鳥に飛び立つ力を与える。

 あまぁいお菓子はあちらのほうへ♪
 鳥さんだけのお菓子ぱーてぃ、だよ♪

 ――おや、可愛い歌がきこえるね。
 声は優しく風に乗り、花見客の笑顔を誘った。

「あなたたちもお花見したかったんだよね。それなら」
 ユーフォニーが桜や藤の花吹雪をふわりと舞わせて、ニルの星鳥が花と一緒にぱたぱたと飛んでいく。隣を飛ぶのは、ユーフォニーのファミリア―であるドラネコのミーフィアだ。
「ニャー!」
 友好的な鳴き声で誘導するのに合わせて、今井さんが鳥の形の魔力を投げる。
「あなたの仲間たちも追いかけていったよ……!」
 ユーフォニーが言えば、妖鳥たちは信じ込んで仲間の後を追いかけて行った。遠くなる妖鳥たちにユーフォニーが小声で謝っている。
「さっきのお菓子、見せかけでごめんね……」
「大丈夫かー?」
 聖霊が雨涵の傷を癒している。

「妖鳥たちは用意した会場に落ち着いたようですわ」
 玉兎が作戦の成功を告げると、仲間たちはハイタッチを交わして花見に移行した。


●花霞の宴を、あなたと
 陽光に明るい色を揺らめかせる苺ジュースを味わい、雨涵が「おこちゃまはお酒飲んじゃダメ」って言ったのとママの真似をすると、マリエラは「良いお母様なんですね」と微笑ましい顔をした。
「この前はエアさんがお塩とお砂糖、教えてくれたんだよね」
「そうでしたね!」
 雨涵とエアが顔を見合わせて笑う。マリエラは「今日は大丈夫ですよ」とシュガーポットを見せた。
「ん。……ちゃんと、甘い。お菓子はどれがおすすめ? そういえば、エアさんのお菓子――」
「あっ、まだ、ありますよ♪」
 エアが残ったお菓子を広げてくれた。甘くて優しい香りがふんわり、皆を包み込む。
「皆さんのお口に合えばいいのですが……♪」
 苺やハート、マーガレットの柄をした可愛らしく華やかなアイシングクッキー、ストロベリーが香るピンクの桜型チョコレート、カラフルなお花畑にぴょこんと顔を覗かせる白うさぎのカップケーキ!
「手作りですか? すごいです……っ」
 マリエラが感動の面持ちで声を洩らした。
「美味しい」
 雨涵がマーガレットのクッキーをさくりと食んで、ぽやぽやとした笑みを咲かせた。

「さくら、ひよこさん、おさかな……」
 ニルはファミリア―の鳥たちと一緒に、子供らしさのある柔らかな頬を薔薇色に染めて夢中でお菓子をつまんでいる。
「どれもこれもとってもとってもかわいいのです!」
 ひよこさんのマシュマロが可愛い顔でニルを見つめている。た、食べられません……っと思わず呟いて飲み物に手を伸ばせば。はらはらと優雅に宙を舞う花びらがちょうど白桃ジュース入りの盃に、ぷかり。「わあぁ……っ」花びらがゆらゆら揺蕩うのがきれいで、うっとり。
 そんなニルへとマリエラはピンクの花びらを浮かべる桜茶を差し出した。
「は。桜のお茶もあるのですか?」
「ええ。どうぞ♪」
「みなさまと過ごすすてきなじかん。ニルはとってもとっても「おいしい」です……♪」
 同じ花を愛でて憩う全員を見て、ニルは今日一番の笑顔を咲かせた。それは見ている人もつられて幸せになってしまうような最高の笑顔だった。

 ユーフォニーはドラネコのミーフィアと一緒にお土産を選んでいる。
「ミーちゃん、クーちゃんたちのお土産何がいいと思う?」
「ニャー♪」
「やっぱり桜餅は食べたいよね♪」
 桜餅をチョイスするユーフォニーに、ミーフィアがぽふりとアピール。ニャー、と視線を促す先には雨涵が持ってきたきらきら繊細な彩に輝く琥珀糖。雨涵はほわりと微笑んだ。
「すこしあげてもいい」
「宝石みたい……!」
「琥珀糖、という」
「綺麗……♪」
「ニャー♪」
「ドラネコ、お仕事おてつだい、いい子」
「あっ。この子は、ミーちゃんです」
 雨涵がミーフィアを撫でて、琥珀糖を分けてくれる。
「日持ちするなら今井さんにも渡せるかな……? 会えなかったら食べちゃおう」
 今井さんの分も確保して、ユーフォニーは雨涵にお礼を言い、ミーフィアと目を合わせて「これでよしっ♪」とにっこりした。
「桜……今度はみんなで見に来ようね」
「ニャー!」

「それにしても桜が綺麗ッス!」
 イルミナはお団子を手に、けれどお花にばかり目を向けてにこにこしてしまう。
 ――このどうしようもなく心を春一色に染めて浮き立たせるような、桜に囲まれた春の匂い!
「えへへ……お花、大好きッス」
 優しく花弁を指で触れると、儚くも活力に満ちた生命が感じられるよう。つるりとして滑らかな感触が、嬉しくて堪らない。
 ――誰も彼も、心がウキウキしてくるこの雰囲気が、貴重に思えて仕方ない。
「賑やかな時も、靜かな時も……桜が散るまでの短い間、たくさん愛でましょうね」
 年頃の少女らしいまっすぐな声で、イルミナは優しく花に微笑んだ。

「そろそろ、紅茶もお淹れしますね」
 マリエラはいそいそと全員に芽吹きの紅茶を淹れたので、エアは紅茶の香りを楽しむようにカップを揺らして「ほんわか優しい味がして大好きです♪」と呟いて、雨涵も頷いた。
「わたし、マリエラさんが作ってくれたお菓子も大好き。幸せの味がする」
「私も、エア様と雨涵様が大好きです! 大切なおともだちです♪」
 マリエラは嬉しそうに肩を揺らしうっかり紅茶をカップから溢れさせかけ――エアと雨涵が慌てて「「すとっぷ!」」と止めて事なきを得た。

 さやさやと、桜花が謡うように揺れている。
 さくらは大きな幹に軽く背を預けて花見酒が揺れる盃を楚々とした仕草で楽しんでいた。せっかくだから楽しんじゃおう、と乗り気になって一気に煽れば、周囲の人々が心配するような称賛するような目を向けてくる。
「お酒、どのくらいある?」
 二、三樽くらいは当然あるよね? と問う瞳は超然としていて、人々は「あれ?」と思った。
「わたし、飲みたいなー?」
 二時間後――そこには、樽を数個空にしても普通に飲み続けるさくらの姿があった。儚げなさくらの酒豪ぶりに、周囲には人だかりができていた。


●盈の森に、桜の苗木を
 ――桜は好きだぜ、懸命に咲いて惜しまれながらも散っていく。
(見てたら生命の廻りを見ているようで、眩しいんだよな)

 柔らかな緑の絨毯を静寂を友に歩んで、聖霊は一本の櫻樹の枝下に目を送る。持ち上がった樹の根に隠れるように蹲る妖鳥がふるふる震えて縮こまるのが視えて、聖霊はため息をついた。
(妖とはいえ、生命は生命。奪わずに済むならそれに越したことはねぇ)
 傍に無音でしゃがみこみ、医療鞄から消毒薬と包帯を取り出して怯える鳥に手を伸ばし、器用に回復魔力を織り交ぜながら手当を済ませてやれば、妖鳥はつぶらな瞳をぱちぱちさせて緊張した眼差しを向けてくる。
「ぴぃ……」
 目が合った――軽く笑んで瞳を伏せ、言い含める青年の聲は優しかった。
「宴の邪魔したり、人のもん取ったらダメだろ。本当に退治されちまうぞ?」
「ぴ」
 持ってきた桜餅を怖い思いさせた詫びも兼ねてと小さく千切り、差し出すと妖鳥は嘴の先でつんつんとつついてから啄んだ。
「どうせなら、手紙運ぶとか人の役に立つことしな。そうしたらご褒美に甘い物や桜を分けてもらえるかもしれねぇぞ? お前らも怖い思いをしなくて済むんだから」
「ぴ!」

 ――妖鳥が飛んでいく。
 妖の寿命は解らないが、奇跡のように一瞬だけ運命を交差させたあの生命はこの後の時間を懸命に生きて、軈てその生命も散るのだろう。聖霊は遠くなる影を優しく見送り、仲間のもとへと自身も戻ってさくらを中心に現地民が飲み比べ大会で湧いているのを目撃することになった。

「お花見は、守れましたわね」
 玉兎は和やかな会場に微笑み、そうそうと澄にお菓子を差し出した。
「姉さん、お土産が。ジェラートという名の氷菓子ですわ」
 姉妹の距離感で差し出されたそれは、見るからに姉好みの儚く凛冽な気配を纏った甘い桜色。上品なデザインのカップの中、日差しに細やかな粒がきらきらしていて、スプーンで掬う手応えは柔らかい。感情をあまり覗かせない姉の眼がきらきら輝いて、唇が感謝の言葉を紡ぐ。玉兎も一緒になってお揃いのジェラートを口に運ぶ。ひんやり、優しい冷たさが最初に感じられて、桜の風味が口の中に爽やかに広がる。蕩ける冷たさは上品な甘さを伴っていて、新鮮な春に抱かれているみたい。
 姉妹は目を合わせて、共に頂く美味しさに自然な笑みを咲かせた。

 そんな姉妹に声をかけたのは、エアだった。
「あの、実は周囲の環境に影響しにくい観賞用の桜の苗木を用意してみたんです。種のない美味しいさくらんぼも実りますので、これを盈の森で育ててみてはいかがでしょうか?」
「「苗木?」」
 姉妹の声が綺麗に揃う。
「効果が出るのは先かもしれませんが、きっと鳥妖さん達も喜ぶんじゃないかなって♪」
 きらきらとした笑顔で語るエア。姉妹は「試す価値はありますね」と揃って頷き、盈の森に苗木を育ててみることにしたのであった。

「今日は声をかけてくれてありがとう。また一緒にどこかにお出かけしようね」
 雨涵が手を振って、夜を前に一行は解散した。桜の花見会場は同じように寛ぎの時間に別れを告げて帰路につく人々の姿が散見され―― 一方で、夜はこれからと新たに訪れて夜宴の準備をする新たな人々の姿も見えた。
「皆様のおかげで、素敵な春の思い出ができました」
 マリエラは深々と頭を下げて、今度は武器の扱いも練習してこようかしら、お勧めの武器はありますかと問いかけたのだった。

成否

成功

MVP

エア(p3p010085)
白虹の少女

状態異常

なし

あとがき

 おかえりなさいませ、神使(イレギュラーズ)の皆様。
 素敵なプレイングを送ってくださり、ありがとうございました!
 依頼は無事成功し、現地の人々は今年のお花見を楽しむことができました。明日以降もお花見会場は人でにぎわい、妖鳥さんも特設の甘味会場でおもてなしを受けることができるでしょう。
 マリエラは依頼がうまくいったことと、お花見が楽しかったのとでにこにこして皆様に感謝しています。澄もその後の特設の甘味会場を管理してくれつつ、ジェラートがすっかり気に入ったようでこっそりと「あのジェラートはどこで入手できるのです?」と調べたりしているようです。盈の森の苗木は、時間が経ってみないとわからない部分もありますが、鳥妖たちにはさっそく人気が出ているようです。
 MVPは桜の苗木を植えるという「環境への長期的な働きかけ」をしてくださったあなたに。ひとりひとりのPCの行動が世界に影響を与えるPBWの可能性を感じさせ、わくわくさせてくださいました。とても素敵なプレイだと思います。

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