PandoraPartyProject

シナリオ詳細

戯れのティータイム

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●招待状は突然に
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は激怒した。
 必ず、この床のシミと化したジェラートの仇は取らねばならぬと決意した。
「うっ、うぇええええ……! アイッ、アイスっ! ボクのじぇらーとぉぉおおお……!」
「何だかすまない事をした気がする……」
 ユリーカの目の前に立つ大柄な男は自身の服に付いたジェラートの残骸に気にせず、おいおい泣くユリーカにどうしたものかと腕を組んでいるばかりである。
 その光景は率直に言って事案だった。

「ねえ、ちょっとあの人……」
「やだぁ……レオンさん呼んで来る?」
「ユリーカちゃんかわいそう」

 あちこちから囁かれる非難の嵐。次第に集まって来るイレギュラーズ達。
 なんかもう完全に事件現場に集まる野次馬だった。
「ぐぬぬぬ……なぜこんなことに!? 俺は主人からの招待状を持ち込みに来ただけだと言うのに! これでは模擬戦の依頼どころでは……」
「うっ、うっ……う? 依頼なのです?」
「如何にも! 俺は偉大なるゼシュテル鉄帝国が誇るドルベンシュゲイン子爵の言伝を持ち参上したのだ、余りにも緊張していたもので前が見えなくなっていたのは事実! 申し訳なかった少女よ!」
 大柄な男は自身が鉄帝の者だと名乗りを上げると、外套の下から振り上げ、ムキムキの上腕二頭筋を盛り上げて見せた。
 ユリーカは目尻の涙を拭い、立ち上がる。
「ボクはローレットの情報屋ユリーカ・ユリカなのです! 依頼なら丁度お話を聞くのですよ?」
「おお、なんと奇縁な! フハハッこれは幸先が良い。ではこの文をだな……」

 そうしてギルドの奥へ行く二人を見送るイレギュラーズの内、数人は見てしまった。
「……ユリーカちゃん笑ってたね」
 ただの笑顔ではない。
 そう、彼女は激怒していた。必ずやジェラートの恨みは晴らすと床に溶けて行くバニラに誓ったのだ。
 獰猛な笑みを小柄で愛らしい姿の後ろに隠しながら、彼女は間違いなくこの後の展開を予想して既に策を練っていた。
 分かるだろうか、これからイレギュラーズ諸君に公開される依頼とは彼女の怒りを代弁する事なのだ。

GMコメント

 ちくわガンブレードです、皆様よろしくお願い致します。
 今回はほのぼのとしたシナリオになります。

●依頼内容
 ドルベンシュゲイン子爵の私兵部隊と模擬戦を行う

※ユリーカからのお願い
 ジェラートの仇を討つのです。

●イカれた仲間を紹介するぜ!(by情報屋ミリタリア)
 『筋肉自慢』ゴウランガ
 わざわざ主人の為にローレットに直接依頼しに来るほどのムキムキマッチョマンの変態忠犬だぜ!
 こう見えて幼い少女を愛でる紳士だ! だがひとたび戦闘に入ればそれはもう『ぽこちゃかパーティー』だぜ!
 持久力はそれほど無いらしいが問題は当たったら大怪我ってことだな! 健闘を祈るぜ!

 『賢い賢者』ニンポウ
 隊で一番賢い天才博識秀才賢者と自称してる変態忍者だ! 得意技はえらい精度で『精密射撃』や銃撃してくるぜ!
 機動力が高いみたいだ、どうやって距離を詰めるかが重要だぜ! 好きな食べ物はハンバーガー!

 『不運とダンサー』バドラク
 常に不運に見舞われている寡黙な変態ソードメェン!! 手にしたなんか黒いオーラ出てる大剣はもしやカースドのウェポンか!?
 こいつとやり合うんなら精々不運にファンブルすることを祈りなぁ! 回避に集中すれば攻略の糸口がみえるかもしれないぜぇ!

 『霧の魔女』レーヴァテイン
 強力な狙撃銃と卓越したフットワークから繰り出される引き撃ちは命中精度と合わせて非常に厄介です。
 彼女の戦闘データがほぼ無いのは、実際に彼女が子爵の私兵として出て来る際はそれだけ相手を必殺しているからです。
 しかし模擬戦闘はあくまで平地。個人所有の闘技場内で行います。上手くすれば追い詰められるはずです……

 『元村勇者』セレス
 幻想の辺境地で活躍していたと噂される女性戦士です。
 彼女はバランス良い身体能力に加えて、鉄帝で子爵と敵対した他貴族の私兵との代理決闘においては『四人に分身した』とされています。
 武装はロングソードとアイアンシールド。騎士型の戦闘スタイルと予想されます。

●ロケーション
 ドルベンシュゲイン子爵の所有する闘技場で行われます。面積は凡そ300m範囲の平地です。
 戦闘開始時の互いの距離は50m。天井の無い開けたフィールドなので、飛行も可能です(飛行や騎乗は戦闘マニュアルに従って処理します)

●目的
 ユリーカのくだりは置いておいて、今回は好戦的な鉄帝の貴族から『活躍を聞いたので是非その実力が見たい!』という純粋な希望から依頼されています。
 ですので正々堂々と敵パーティーと戦闘して実力を出し切ってあげて下さい。
 (互いに不殺を心がけてはいる、という体で。本シナリオ中はあらゆるスキルに【不殺】を付与している物として判定します)

 以上、良き戦いを。
 皆様のご参加をお待ちしております。

  • 戯れのティータイム完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年08月09日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

Suvia=Westbury(p3p000114)
子連れ紅茶マイスター
マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)
緋色の鉄槌
コラバポス 夏子(p3p000808)
今日も良い日だ
巡理 リイン(p3p000831)
なぐるよ!
高千穂 天満(p3p001909)
アマツカミ
ファリス・リーン(p3p002532)
戦乙女
九重 竜胆(p3p002735)
一刀繚乱
ニア・ルヴァリエ(p3p004394)
君が居るから

リプレイ

●素敵なお披露目会

「ゴウランガ殿はいったい何をやらかしてしまったので?」
「どうせ幼い子供を舐め回すような目で見ていたからでしょう」
「あっはは! ゴウランガさんは子供好きだからなぁ!」

「ジェラートを床のシミにしてしまうとは……なんという鬼畜の所業。ユリーカのジェラートの仇だ、正々堂々と取らせてもらおう」
「まあまあ、何ということでしょう。ユリーカさん、とってもかわいそうですの」
「ま、ユリーカのお願いとあっちゃ張り切らないワケにはいかないね。ジェラートの仇、ってね」
「乙女のアイスの恨みと、大人の理不尽さへの抗議をぶつけちゃいましょうっ! ぷんすこぷん!」

 明らかに注がれる、ユリーカが植え付けた敵意……
 『戦乙女』ファリス・リーン(p3p002532)を筆頭に並んだ『年中ティータイム』Suvia=Westbury(p3p000114)、『水面の瞳』ニア・ルヴァリエ(p3p004394)、『円環の導手』巡理 リイン(p3p000831)達女性陣は特に張り切っていた。
 ユリーカの為にも怨敵を討ち、これから始まる戦いに勝って報告しに行かねば。
 彼女達から一身に視線を注がれているゴウランガという巨漢は、彼等が今いる闘技場の主ドルベンシュゲイン子爵の私兵の一人である。
「フハハッ! なんだろうな、皆目見当がつかないのだが! 所でリインという娘が一番尊いと思うのだが!」
「……俺はあの赤いのと打ち合いたいものだな」
「拙者は分かりますぞゴウランガ殿」
(せっかく鉄帝の逞しい殿方と親密になれるチャンスだと思って少し期待していたのですが、変態さんばかりで超がっかりですの)
 Suviaは遠目に溜息を吐いた。
 当のゴリラは籠手や革の防具を検めながら他人事の様な体である。どうやら覚えていないらしい。
「うーん、お相手さんも悪気があった訳じゃないだろうし。回避できなかったこっちも悪いのでは?」
「……食い物の恨みって怖えなー」
 冷静に首を傾げる『駆け出し』コラバポス 夏子(p3p000808)の横では、同じく首を傾げながら『緋色の鉄槌』マグナ=レッドシザーズ(p3p000240)が女性陣を眺めていた。

「揃ったな! 準備は良いか! 特にレーヴァ、お前は俺の所の『看板』だからな! しっかり頼んだぞ!
 特異運命座標の諸君等も先は我が屋敷でゆっくり体を休められた事だし、気合も戦意も充分の様だ! 本当はこの俺が直々に試合を申し込みたかったのだが……」
「それはお止めください」
「爺がこう言うのでな! 既に説明して報酬を前払いした通りだ、諸君等のその魔種をも退けたという力を是非正々堂々と見せてくれ!!
 戦いはもう始まっているぞ、双方共に動いた時が太刀打つ戦時よ!」
 獅子の鬣を思わせる豪快に伸ばした髭と金髪の漢、ドルベンシュゲイン子爵は闘技場の観覧席に座ってティーカップごと茶を丸飲みして手を振っていた。
 彼の言う模擬戦、或いはお披露目会か。この一戦を見る事で子爵は『参考』にしたいのだという事だった。
 ならばその期待に応えるのもまた一仕事。
「武を誉とする鉄帝においてやはり信仰を集めるには、強者を打ち破るほかあるまい。
 ともなれば今回の依頼は渡りに船、彼奴等を打倒し余の信仰を広める足掛かりとしようぞ」
 『アマツカミ』高千穂 天満(p3p001909)は宝具である天逆鉾をその手に、意気溢れる瞳を輝かせる。
「命のやり取りも無いってことだし、思いっきり暴れさせてもらうぜぇ!」
 拳を掲げて見せるマグナもそれは同じく、彼等は一様に(一部気色は違うが)一戦を交える事に異は無い。滾る思いをその手に、一歩前へ進む。
「イレギュラーズ、ターン開始は互いに一歩動いた時。それでいいわね?」
「『九重 竜胆』。最初に名乗ったと思うけどね、私はそれで良いわ。みんなはどうかしら」
 私兵の一人、肩に担いでいた古い木の意匠をした狙撃銃を構えたレーヴァテインの確認に応じた『一刀繚乱』九重 竜胆(p3p002735)が視線を巡らせれば、それに応えたのは七。
 文句は無い。依頼主であり主催者であり、雇い主たるドルベンシュゲイン子爵は胸躍る展開を求めてそれまでの豪快な雰囲気を潜める。
 闘技場に在るのは守衛や子爵の親しい貴族仲間が数人程度。
 歓声は無い。その場の全員が求めている、あのサーカス団に完全勝利を収めた特異運命座標の戦いぶり。それと対する鉄騎の戦士四人とそれに並ぶ辺境勇士。

「イレギュラーズ ローレット一兵、夏子」
「鉄帝に生きる者達がどれ程の実力を持つか、貴方達で試させてもらうわ。
 ────いざ、尋常に!」

●紅き花弁を貫け
 彼等の視界に散った火花が果たして何処から生まれた物なのか、一瞬の出来事に認識出来なかった者もいた。
 ただ一人それを直に捉える事が出来たのは『受けた者』だけだろう。
「……!」
 初撃。
 竜胆が振り上げた、納刀したままの刀はそれを見事弾いて見せる。

「標的決定。リンドウといったかしら、今の射撃を防いだのは素敵よ……セレス!」
「アタシの出番って事か! 十秒稼いでくれゴウランガさん!」
 一歩踏み出した瞬間の牽制を完全に防いだ竜胆へ称賛の言葉を贈った狙撃者は、仲間へ慣れた様子で指示を出す。
 紅い意匠の装備に身を包むセレスと呼ばれた彼女は、レーヴァテインの前へ出ながら何らかの魔術の準備に入った。
 だが、彼女の眼前へ飛び出す筈のゴウランガより先に視界に入って来たのは文字通りのイレギュラーである。
「任せろ……って、なにぃ!?」
 否、遅かったのだ。
「燃えろ魂! “始まりの赤”!! さあ、行くぜ『勇者』!」
「勇者だなんて照れ……ツッ!?」
 尋常ではない速度。
 マグナの真紅のハサミが盾を打つと同時に、赤い魔棘が激しく突き上げた。
 多少楽観的だった私兵達の目が色を変わり、セレスの苦悶の声が引き金となる。
(! ……他のイレギュラーズもセレスを狙っている? 幻想の情報屋め、あの子の能力を伝えていたようね)
 戦場を一気に駆け抜けて来る姿にレーヴァテインの目が見開かれる。
「意気や良し! 雄々ォォ!!」
「庇う気なら、押し通らせてもらうよ!」
 ニアがマグナの肩口を飛び越えた更なる追撃を巨漢の剛腕が割り込み、鈍い音と共に防ぐ。
 小駆ならではの素早い動きから為される短剣と、小盾による攻防術はゴウランガと充分に渡り合い、或いはニアの方が押している様に見える程だ。
 だが隣へ滑り込んだ竜胆と天満の二人がそこへ加わり、敵の前衛もセレスやゴウランガを庇うべく一気にその場が激しい打ち合いへと向かう。
「拙者の天才的頭脳が助太刀致す、ゴウランガ殿!」
「ニンポウッ!? 馬鹿、狙うのはリンドウって言ったでしょうがこのヘタクソ忍者……!」
「……レーヴァ、俺はどうすればいい」
「バドラク! あ、アンタ達ねぇ……!?」
 ニアがゴウランガ、或いはセレスを狙った事で危機感を煽られたのか。仲間の援護に入ろうと和装の銃士による精密射撃がニアのみに注がれる。
 一方で漆黒の大剣を背負うバドラクは動かない。思考が鈍ったのか、元よりそういう性格だったのか。
 舌打ちをしたレーヴァテインはセレスの方を見るが、未だ魔術は発動されない。
「ははーっ、模擬戦だしお手柔らかにね?」
「よく言う……ぐ、ぉぉおっ!?」
「落とせます、合わせましょう!」
 精密射撃を紙一重でニアが躱す。跳弾の音が響き渡る最中夏子が再び名乗りを挙げ、彼と並んでリインがゴウランガへ殺到する。
 巨漢の彼も流石にこれを避ける事も捌き切る事も出来ず。防ぐ事すら、積み重なるダメージによって困難を増していく。
 脳筋が蒸気を吹かして起死回生を狙おうとするが、それは叶わない。
「行くぞ筋肉野郎! これがテメエにやられたジェラートの分!
これがジェラートを失ったユリーカの分!
そしてこれが! こんなクソくだらねえ復讐任された、オレの分だぁ!」
「最後の同意!!」
 マグナと夏子、リインのそれぞれの赤い拳が、槍が、鎌が次々にゴウランガの纏う鎧や具足を弾き飛ばして行き、粉塵巻き上げ攻め抜いて行く。
「うおおおおおぉぉぉ……っ!!」
 連打、連撃に対応できない。
 そして遂にゴウランガはセレスの隣へ半ば吹き飛ぶ様に力尽き、最後にリインとニアへ微笑んで倒れた。彼は満足だった。
 納得いかないがユリーカの悲願が果たされたのは違いなかった。

「まあ、リイン様お手柄ですね? こちらは殆ど無傷ですし意外とあっさり完勝しそうですわ」
「だが気を付けた方が良い。あの男は守り切ったのだ……『勇者』を初手で落とせなかった事がどう変わるか」
 Suviaと共に前衛との間を詰めながら、ファリスは傍らで鼓舞する歌をその美声で奏でる。

「全く……お披露目会が台無しね。ゴウランガがやられたのは痛いけれど、セレスを盾にして一気に仕留めるわよ」
 そう、ゴウランガが倒れた時には既に魔術が発動されていた。
 粉塵の向こうで現れたのは大量の魔力と体力を消耗しながらも悠然と構える四人の戦士の姿。
 盾を前へ掲げ、剣を垂直に構えるそのスタイルは機動と防技に秀でた者の慣れ親しんだ物か。いずれにせよ一目で彼女の存在は戦況を泥沼へと変えるだろう。
 イレギュラーズはかの紅き花弁を貫かなくてはならないのだ。

●合理性とは異なる物
 紅い盾を掠め穿たれる弾丸を、ファリスは自身のランスを盾にして防ぐ。
 続く銃撃。見当違いな方向への銃弾は地面を削るに留まったかと思えば、夏子の鎧を強かに打ち叩いた。
 火花が散り、その輝きを切り裂くように竜胆の刃による一閃が弧を描く。しかしそれらは敵の盾を削るに留まり、ダメージは小規模。
 視線を巡らせればニアとリインは互いの小駆を利用して上手く潜り抜け、手を合わせてスイングする様に宙を薙ぐ大剣を躱していた。
「攻めきれない、思ったより厄介だね」
 ブロック、庇い、防ぎ、踊るように立ち位置を入れ替えて、漆黒の大剣を振り回す寡黙な男が軽々とその鉄塊を振り抜くその様は至近で対峙する事でニアは強烈な威圧感を覚える。
 だが尤もその強力な攻撃も……
「む!」
 突然の転倒からの武器のすっぽ抜け。
 ああ、悲しいかなバドラク。彼はとても不幸に愛されていた。
 不幸な男を無視して夏子が前へ踏み込む。
「素敵な女性に会えるって聞いて来たんだ、どうやら君の事みたいだね」
「え? やぁ、そんなアタシなんかほらガサツってか……って、っとォ!?」
 突然の言葉に思わず目を逸らした紅き盾、セレスを盾の上から一気に体重を乗せて押し込む夏子。咄嗟に受けた彼女の眼前には白い影。
「正直、どれが本物か全くわからなかった……けど。それならまとめて! てーーい!!」
「いいよ! 俺ごとヤッちゃって!」
「ッ、まじか……!?」
 リインの鎌が数瞬の煌めき、或いは不吉の紫電を纏ったのを見てセレスがバドラクの前へ踏み出た。だが、それで防げばいいものではない。

────白い小駆が一閃となり駆け抜けた直後、紅く塗られた盾と無防備に尻餅を突いていた男が吹き荒ぶ紫電に吹っ飛ばされた。

「がッ、あ……!!?」
 致命的一撃(クリティカルヒット)。バドラクとセレスはその場に叩き付けられる様に落ちた。
 片方は霧のように霧散した事から、どうやら分身体だったようだ。
「……ははー、ちょっと効いた」
 共に紫電に晒された筈の夏子は焦げた籠手を脱ぎ捨てて首を鳴らす。どうやら彼は幸運に恵まれていた様だ。手痛い傷ではあるが重傷には繋がるまい。
「お疲れ夏子、スヴィアに傷の手当てを受けた方が良いよ」
「まだ魔女さん達がいます! 行きましょう!」
「多分、向こうから来ると思うよ。魔女さんの素敵な瞳と目が合ったからね」
 事実。夏子が手傷を負った様子を挑発を受けない距離から強かに狙っている銀髪の魔女の銃口が在った。
 これまでの通常射撃とは比べるまでも無い。磨き抜かれた本物の狙撃……!
「……!」
 しかし。その銃が狙撃を行うことは無かった。

「今ですの、皆様」

 遠術による衝撃弾がレーヴァテインを捉えようとした瞬間、彼女の射線上へ二人のセレスが飛び出したのだ。
 狙撃の中断。短い舌打ちは最早何度目か、Suviaの方向を睨むもそれが意味を為さない事は彼女自身がよく分かっていた。
 ここに来て『霧の魔女』と呼ばれる彼女は一つ痛感した事がある。
(毎回同じ組み合わせでも無いと言うのに、この練度! 単騎の強さ! 魔種を討ったのは伊達ではないわね……ッ)
 合理的な組み合わせや能力の有無ではない。
 それがイレギュラーズの強さという事なのだと、彼女はその足を動かしながら理解した。
 Suviaの一声に当てられた竜胆達が駆け抜けて一気に距離を詰める先には、ニンポウとセレスの二人が迎え撃つ所だった。

●イレギュラーズ一閃!
「天上天下唯我独尊絶対無敵の天神様、それが! 余である!」
 駆けながら天満の天逆鉾が高速で回転し、薙ぎ払われる蒼き衝撃波がセレスの盾を打つ。
 初撃こそ防ぐ、故に二撃はどうか。
「ユリーカのジェラート、これが何を意味するか分かるか」
「えっ? あ、いや。どうだろう」
「子供にとってアイスを落とした時の悲しみは計り知れないという事だ。私は許さない……よくもユリーカのジェラー……」
「それアタシ関係なくねぇ!!?」
 本来の用途が遠距離用武器とは思えない程的確に、そして謎の怒りをぶつけられて混乱したセレスを更なるランスによる突きが襲う。
 否、ファリスの狙うは盾ではなく素早い一撃から滑らせ生じたセレスの防御の隙。受け流すかのような防技が使えず、その動きが短調な防御と化してしまうのを誘発させていた。
 そこへ駆け付ける更なる分身、或いは本体なのか。紅き花弁が三枚並んだ。
 だがそれも充分な攻撃なくしてはただの壁。
 イレギュラーズが何を乗り越えてきたのか、私兵達は知らないだろう。
「本物を見極めるのが困難、なら……リインと同感ね」
 距離を詰めて凄まじい勢いで盾に蹴りつけた竜胆が不敵に笑う。
 鯉口を鳴らす軽快な音。次の瞬間、竜胆の提げていた二刀の刃が剣閃を瞬かせ、数瞬の遅れを経て三人の女戦士達を盾ごと薙ぎ払っていた。
「~~~ッッ!!」
 切り裂かれ、鋭い紫電の刃に焼かれた盾や防具を脱ぎ捨てるセレス。
 声にならない悲鳴を上げて半ば薙ぎ倒される体で後退するが、それまで抜いていなかった剣を彼女達三人は同時に抜刀した。
 飛び上がる赤髪の軌跡はマグナの残像か。
 その下を縫うように撃ち込まれる蒼き衝撃波。巻き上がる粉塵に紛れて一瞬で距離を詰めて来る小駆の『刈り取る者』。
 無呼吸に等しい連撃に次ぐ連撃が闘技場に轟いた。

「拙者の超天才的頭脳にかかれば、この程度の盤面を崩す事容易し……!」
「……!」
 当然遠距離型は他にもいる。ニンポウの精密射撃が天満の胸元へ直撃し、前衛達の後ろで微かに息を飲む声が掻き消える。
 エセニンジャの表情が歪む、が……直ぐにそれが真顔になる。天満の傷をSuviaが治癒させていたのだ。
「情報屋さんからのお話では変態さんばかりみたいですが、鉄帝は変態さんが多いのでしょうか??」
「ぐぅ!? 距離があるのにはっきり聞こえますぞ!?」

 ───そんな事をやっている横で繰り広げられる壮絶な剣戟の嵐。
 打ち合う度に散る火花が重なり、視界を覆う。
 だがそれらを吹き散らす様にファリスのランスが、ニアの短剣が、息を吐かせぬ連撃を維持してセレスを追い詰めて行った。
 そも、既にこの段階で追い詰められていたのだろう。
「あはは……っ、あんたら強いなぁ……幻想を安心して任せられるよ」
 竜胆の居合抜きが切り裂いたセレスは、霧散しなかった。
 最後に親指を立ててにっと笑って見せた彼女はその場でほうと息を吐いて倒れるのだった。
 分身体が消え、その場が静寂に一瞬包まれる。
 気が付けば何やらどくどく状態でぶっ倒れてるニンポウをSuviaが指先でツンツンしていた。

「後は彼女だけのようね」
「それじゃ、追い詰めるとしますか」
 夏子と竜胆が距離を取って狙撃して来るレーヴァテインを見据える。

「…………完敗ね、これは」
 霧の魔女はスコープ越しに見せつけられた戦いを前にして、諦めた様に笑うしかなかった。

 依頼主は大変な喜び様だった。

「素晴らしい! 実に、実に素晴らしい!
 見せて貰ったよイレギュラーズ諸君。なるほど統制が取れているのとは違うのだな、私の兵の中でも選りすぐりの隊長格を連れて来たのだが!
 これはそう易々とは落とせないだろうなぁ、ハッハッハ!!」
 何を落とせないのかは敢えて聞かない。
 だが間違いなく子爵の反応は良い。依頼はまず成功と見て良いだろう。
 それぞれが傷の手当てや汗を流す間に子爵の屋敷ではお茶が用意され、最後に戦った相手と共に一仕事を終えた後の戯れに茶を飲むのだった。

「何にせよ、とりあえずこれでユリーカに良い報告が出来るな」
「そうですね! ゴウランガさんも後からアイスを送ってくれるみたいですし!」
「俺は報酬でアイス奢っておくかね」
 
 Suviaが淹れた紅茶を飲みながらアイスの件を思い出すファリス達、だが彼等は知らない。
 まさかアイスの事を忘れていたユリーカの所に夏子とゴリラから大量のジェラートが送りつけられて悲鳴を上げるとは……

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 霧の魔女とのお茶会にて───
ーー「もし、私と『仕事』で戦う時があるなら。次は手加減しないわ……覚えておきなさい」

 お疲れ様でしたイレギュラーズの皆様。
 ターン数がえらい事になるセレスを割と早く落とせる範囲攻撃と複数人での集中攻撃は見事でした。
 戦闘のボリュームが足りなく思えぬ様に迫力を増したリプレイとさせて頂きましたが、如何でしたでしょうか?

 皆様のご雄姿を再び見れる機会をお待ちしております。
 お疲れ様でした。

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