シナリオ詳細
痛みを伴う戦闘シミュレーション『No.00』
オープニング
●戦闘シミュレーションへようこそ
「デカブツが、くたばりやがれよ!」
『境界案内人』ラナードは過重なブレードを片手で軽々振り下ろすが、火花を散らしたそれは軽い刃こぼれを起こしながら弾かれ、全てを断ち切らんとする全力の一撃を放った筈の身体はぐらりと仰け反る。
「やべっっ――」
所謂パリィ状態にあったラナードは慌てて身体を捩り、自らがデカブツと呼んだ竜のような姿をした魔獣の反撃を避けようとするも、一度全力を出した身体がそれを阻止された時、余程の戦士でなければリカバリーするのは至難の業である。
結果、ラナードは腹部に飛んできた強烈な尻尾攻撃に薙ぎ払われ、嫌というほど鳩尾に強打が喰いこみ、息ができないまま近場の岩盤に叩きつけられる。
「カ、ハッ……くそ、身体が」
あまりに強烈な一撃を無防備に食らったラナードは動くことができず、追撃とばかりに突っ込んできた魔獣に押しつぶされ――その瞬間、魔獣の姿はフッと消えた。
「今ので一回死亡ですね。敵の動きが遅いからって油断しすぎですよ、ラナード」
気付けば背景も真っ白になり、ラナードの目の前には『境界案内人』イヴ・マリアンヌが彼を起き上がらせるべく手を差し伸べていた。
「敵の設定がおかしいだろこれ、俺の全力の刃で傷一つ付かなかったぞ!」
ガラス張りの壁の向こうでは白衣の研究員が数名、ラナードとイヴの方を見ながらバインダーに挟んだレポートと思われる紙に戦闘データらしきものを記入していた。
そう、これは実戦ではない。実物と痛みを伴うシミュレーション戦闘だ。
「調整に付き合ってほしいって依頼を受けたのは貴方の方でしょう。ほら、まだ数回データ取得が残っていますよ?」
そうイヴは言ったものの、先程の一撃でラナードの体力は既に参っていた。核を持つ彼の性質上、核を維持するエネルギーが続く限り先程のダメージ程度影響にはならない筈だが、流石に十戦ぶっ通しでボコボコにされ続けた為か参ってしまったらしい。
「わりぃ、もういつものコンディションで動けそうにねーんだわ。報酬は出すから後はいつもの奴等に引継ぎを頼んどいてくれ」
砂埃で汚れ、灰で構築された身体に亀裂すら入ったラナードはイヴにそう言い残すと、シミュレーション室を後にする。
その後ろ姿を見送ったイヴは深いため息を吐くと、イレギュラーズへの依頼書を纏め始めるのだった。
- 痛みを伴う戦闘シミュレーション『No.00』完了
- NM名牡丹雪
- 種別ライブノベル
- 難易度-
- 冒険終了日時2022年03月24日 22時15分
- 参加人数4/4人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 4 人
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参加者一覧(4人)
リプレイ
●痛みから強くなる戦闘シミュレーション
「これはわざわざ俺たちがやらなくてもラナード君が何度もトライして死にかけてくれるだけでも良いと思うんだが――」
「全部聞こえてるぞ、糞眼鏡!!」
誰が何を言おうが、一度シミュレーション室に入れば終えるまで出ることはできないことを事前に知らされていた『貧乏籤』回言 世界(p3p007315)は、少し高い位置にある観覧室から見下ろすラナードに目配せをしながら冗談交じりに呟いた。
実際のとこ、実はもう少し余裕があったラナードは世界の言葉に若干焦っているかのようにも見えたがそれはそれ。あくまでこれは、イレギュラーズの戦闘テストではなく、戦闘シミュレーションシステムのテストであることから考えて、コンディションの整ったイレギュラーズが行うのが最適なのだろう。
「情報によると、敵はこちらでいう亜種のようなものか」
どういう仕組みか定かではないが、実体のある映像技術。さしずめ現実への強い干渉機能を搭載した大規模AR空間といったところだろう。
大剣ですら傷一つ付けることのできない強靭な敵を断ち切らんと堂々構えるジン(p3p010382)は、腰に携えた鏡花水月の柄に触れ、その集中力を高めている。
「戦闘、シミュレーター?」
床も壁も、天井すら白く、無駄に広いだけの空間で優雨(p3p010426)は聞きなれない単語に首を傾げた。練達を知る者であれば順応も早いかもしれないが、彼女(?)召喚されたばかりのドラゴニア、それも天涯孤独であれば知る由も無い。
「戦闘シミュレーション!? 凄いね、これなら特訓し放題だよ!」
一方で、『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)は戦闘シミュレーションという言葉に心を踊らせていた。格闘家や侍といった存在はどうも、鍛錬や訓練といった己を高めることに余念が無いらしい。
「無痛の方が安心って意見もあるだろうけど、お父さんも言ってたもんね。痛みは何にも勝る、教えになるって!」
「いやその教え、無茶苦茶脳筋過ぎないか!?」
繧花の言葉を聞いた世界が思わず口にするが、他の三人より一回りも二回りも彼の経験が豊富なのだ。初心者で経験が少ない内は、痛みに慣れる訓練をするというのも一つの経験になるだろう。
「果たして今の俺の腕がどれほど通じるのか、全力で試させて貰おう」
●
「これ、当たったら痛いんだろ?」
ロックコドラのブレス攻撃を冷静に避けた世界は、熱風を肌に感じ、その攻撃が決して仮想だけのものではないことを実感する。
練達で流行ったR.O.Oではないが、情報しか持たない存在が、まるで意思を持つかの様に向かってくるのは不思議な感覚だ。
「どんなに硬い身体をしていようと、煉気破戒掌なら、打ち貫ける!」
ブレスを回避した世界とスイッチするように踏み込んだ繧花は、その小さな身体に強烈なインパクトの含んだ闘気を纏う。まるで目の前の敵を打ち砕かんとする、彼女の想いに応える様に、両手に着けた紅蓮之竜甲は、全身の闘気をその拳に集約させ、強力無比な一撃へと変換する。
「ってうわ、熱ッッ──いけど! 私に火炎は効かないよ!!」
熱きドラゴン・ロアを纏う彼女に、柔な炎など夏のそよ風にも満たない。
激しい衝撃波を伴う彼女の拳は、ロックコドラの炎すら自らのオーラに取り込み、コドラの鼻っ柱を盛大に歪めながら大きく吹っ飛ばした。身体に生えた鉱石が粉々に砕け散ったコドラは、”キュルルルルル……”と切ない鳴き声を上げながら倒れ、そのまま電子へと還される。
「熱いのは、我慢すれば、大丈夫……!!」
ブレスの火の粉が飛び交う中、明るく毅然と振る舞う繧花は、結果的に戦線を鼓舞していた。
それは同じ亜竜種としての対抗心か、あるいは魅せられたか、然してただの偶然か、もう一匹残ったロックコドラに素早く距離を詰めたジンは、鞘に納刀したままの鏡花水月を構え、繧花と同じ闘気を指先から送り込む。
「道場剣術ならいざ知らず、実戦剣術においては剣を振るだけが剣術ではない」
繰り出された煉気破戒掌──鐺へ集約した闘気の全てがコドラへぶつけられた。
今にもジンに襲い掛からんとしていたコドラは、まるで天体衝突が起きたような凹みを腹部に作ると、一瞬のタイムラグと共に大きく吹っ飛び、内部からぐちゃぐちゃに破壊され、先に吹き飛ばされたコドラのように電子の海へ還された。
「剣に囚われず、また最大限に活かすためにも、相応に体術も扱えなければな……」
消滅したコドラを見届けながら、ジンは未だに納刀された鏡花水月を腰へ戻し、前を見据える。
ここまであっさりと消滅したロックコドラであったが、見据えた先にはそれとは比にならないプレッシャーを放つ大ボス、ロックドラゴンがこちらを睨んでいる。
きっとシミュレート上、ロックドラゴンはロックコドラの親だったのだろう。我が子を倒された一匹の親は、その仇を討ち取らんとイレギュラーズたちへ迫る。
「っ、頼みます……!」
肌に身につけた重厚な装甲とは裏腹に、考えられない様な速さで詰めてきたロックドラゴンへ、優雨は目を見開きながら使役する陸鮫に指示を飛ばす。
ロックドラゴンへ果敢に飛び込む陸鮫、しかしそれは騎乗用の生き物に過ぎず、まるで遇らわれるように尻尾で薙ぎ払われると、陸鮫はなすすべなく吹き飛び、岩盤へ叩きつけられた。
だが、あくまでそれは陽動に過ぎない。薙ぎ払った直後のロックドラゴンへ素早く距離を詰めた優雨は、片刃機械剣──ガンブレイズバーストの銃口をロックドラゴンの口へ突っ込むと、躊躇なくその銃爪を引いた。
カチンッという音と共に振り下ろされた撃鉄は、マガジンリップに込められた火薬を強く叩き、ロックドラゴンの口内で小さな爆発と、大きな衝撃波を生み出した。──が、その程度でドラゴンは沈まない。
「なっ……!!」
まるで何事もなかったかのように優雨を睨め付けるロックドラゴン。迫る尻尾を捕捉できたまでは良いが、逃すまいと咥えられた腕はいくら引いても抜けることがない。
腹部から伝わる破壊的な一撃に、優雨は一瞬だけ呼吸を忘れてしまうことを余儀なくされた。
直後、何もかもが逆流するような感覚と、鉄の味。
「っ、まともに食らっちまったか!」
近くで世界が何かを言うのが聞こえるが、酷い耳鳴りでそれを聞き取ることすらままならない。
「早く手当てを! その間、私たちでなんとか抑えるからッ!」
既に優雨にミリアドハーモニクスをかけていた世界を庇うように、あるいはロックドラゴンに立ち塞がるように構えた繧花は、その両手に猛火を纏いながら烈火業炎撃を放つ。
燃え盛る猛火の拳は、目前の何もかもを焼き尽くしたように見えただろう。
──だが、しかし。
アダマント。そう呼ばれる鉱物は、ダイヤモンドを遥かに凌ぐ強度を持つという。更に、ダイヤモンドが熱により炭化してしまう性質に対し、アダマントは地獄の業火ですら加工が困難な貴金属だと伝えられている。
「──ぁぐッ!? ……──痛、っっ……」
拳より伝わりし焔は、アダマントには届かなかった。
繧花が身に着けていた手甲は、ロックドラゴンの頭部で盛大な金属音を奏でると、反動で仰け反った繧花のみぞおち辺りに、抉るようにその頭部が突き刺さった。
「あ、はは……これは、確かに……本物の痛みだね……」
自分が放つことの出来るインパクトの数倍、息の仕方さえ忘れ得るその衝撃波に、繧花は嗚咽と共に、そんな言葉すら零してしまう。
たった一匹の猛攻で陣形が崩れかけた中、繧花へ更なる追撃の牙が迫る中、未だに納刀されていた鏡花水月の柄を静かに握り、明鏡止水の如く集中力を高めていたジンは、慧眼の如く鋭い視線をロックドラゴンに向けながら口を開く。
「おい、随分余裕そうだな。俺のことは無視か?」
ピタリと、今にも繧花へ迫ったロックドラゴンの足が止まった。
ギロリと、鋭い視線と共に、重いプレッシャーが圧し掛かってくる。
地鳴らしをしながら、ゆっくりと方向を変えたロックドラゴンは、鞭のようにしならせた尻尾で地面を破壊しながら、一歩も引かないジンへとその狙いを定める。
刹那、当たれば致命傷は免れない、急所を狙った尻尾がジンを捉えた。
──斬ッッ!!
抜刀、そして、納刀。
極限まで昂った精神は、その刃をアダマントすら切り裂くオリハルコンへ変える。
刀が小さな金属音と共に鞘へ納まる頃には、ロックドラゴンの尻尾は鮮血を噴き出しながら宙を舞っていた。
「実に、脆い……」
「おう、時間稼ぎご苦労さん。だが油断は禁物だ」
尻尾を斬られ、暴れるように激怒したロックドラゴンは、間一髪のところで世界が受け止める。
すっかり回復した優雨が、動きの止まったロックドラゴンの背後から、その首を狙った魔性の一撃を放った。
「成る程な。アイツが音を上げるだけのことがあるのは認めてやろう。認めてはやるが──」
世界に押さえ込まれたロックドラゴンは、ピクリとも動くことが出来ない。
結局のとこ、経験に経験を重ねたイレギュラーズ相手に、情報だけで作り出された紛い物が敵う訳がなかった。
身動きの取れないロックドラゴンに、後の三人が迫る──。
「情報を取り直して、もう少しマシに作り直すこったな!」
「「……これで」」
「終わりだよっ!」
憐れ、模された鉱石竜は、電子の海へ消えた。
「じゃあ、あと二十回くらいよろしく」
「おい待てラナード君、俺はまだやるって言ってないんだが?」
「出来ればもっと……更に難度を上げて挑みたいんだが」
「いやいや、冗談だろ? まさか全員、シミュレーションに付き合うなんて言わないよな?」
「レインは、その……気ままにできるなら、何でも……」
「私はやるよっ! まだまだ、あんなの何発でも耐えてみせるんだ!」
「おい、待て! 俺の意見も聞け! 無言で扉を閉めn──」
成否
成功
状態異常
なし
NMコメント
イッツ戦闘シミュレーション。
強敵っぽい雰囲気は出してますが、ライブノベルは失敗しないのでご安心ください。
●状況
ラナードがとある世界で戦闘シミュレーションのテスト依頼を受けていたそうです。
彼もそこそこの戦力があるのですが、シミュレートで設定された敵が強すぎるらしく、仕方なくイレギュラーズへ引継ぎの依頼を行いました。
●目標『シミュレーションで敵と戦う』
イレギュラーズの皆さんがシミュレーション室へ入った所から始まります。
最初は真っ白な部屋ですが、数秒後に戦場である荒地に切り替わり敵が現れます。
あくまでシミュレーションなので敵を倒すことは目的に含まれません。
●エネミー
『鉱石喰らう』ロックドラゴン×1
冒頭でラナードを吹き飛ばした三メートル程度のドラゴンです。
翼が無いので空は飛びませんが、突出した防技と独自のダメージ軽減手段を持ちます。
また長い尻尾による薙ぎ払い攻撃は【飛】【封殺】【恍惚】を含む範囲攻撃なため、注意するべきでしょう。
『鉱石欲しい』ロックコドラ×2
ラナードが倒してしまったため冒頭では登場しませんでした。
ロックドラゴン同様に空は飛ばず、高い防技とダメージ軽減手段を持ちます。
また【火炎】を含むブレスを吐いて攻撃してくるそうです。
●ラノベシナリオについて
ライブノベルは判定と失敗のないシナリオコンテンツになります。
そのため敵との戦闘に直接の判定は無く、戦闘もフレーバー重視で行われます。
上記をご了承の上、参加いただけますと幸いです。
ではいざ、戦闘練習へ!
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