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シナリオ詳細

【月夜の華】夢の宴

完了

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

・今宵の月は

 華という国がある。それは季節を問わず牡丹の花が咲き、決して日の昇ることのない、常夜の世界である。

 空に浮かぶのは明るい月と、ちらちらと瞬く星ばかり。流れる雲が時折月を覆い隠し、夜の明るさを気まぐれに変えている。
 満月の夜であれば、夜道を歩くときは困らない。しかし、そうでない時は、提灯の明かりに頼らなければならない。

 棒の先に提灯を取り付け、青年は夜道を歩いていた。夜の世界に住んでいるとはいえ、所詮この青年は人間である。明かりがなければ、この先を歩くことはできない。

『月明りの暗い夜は気をつけなさい』

 祖父が言っていた言葉である。理由を尋ねるとまちまちで、異界に連れられてしまうからとか、鬼に好かれてしまうからとか、不思議な場所に迷い込むとか、そういった幻想的なものばかりだった。

 とはいえ。この国に鬼、つまり死霊がうろついているのは事実である。祖父の言う物語なぞ、決して空想の類で収まるものではないのだった。

 しかし、自分に限ってそんなものに縁があるはずがないと思うのが、人というもの。この青年もまた、自分がそんなものに魅入られるとは思いもしなかったのである。

「なんだ、ここは」

 青年が思わず声をこぼす。
 この青年は、どういうわけか選ばれた。鬼たちの過ごす場所に、招かれた。

 天女のような女たちが、ひらりひらりと踊っている。上等な衣装をまとった男たちが酒を囲み、談笑している。

「取って食おうとはしないさ」

 男が笑い、女が駆け寄ってくる。

「俺たちばかりで過ごすのはちとつまらなくてな」
「少し話し相手が欲しいのよ」

 鬼の一人が、青年の腕を掴む。どうやら、ここに交わらなければ、元の場所には帰れないようだった。


・牡丹の花

「鬼と一緒に、時間を過ごしてもらえないかしら」

 そう切り出したのは、境界案内人のカトレアである。

 鬼といっても、角が生えているものではない。言ってしまえば死者の霊である。姿は生前と変わらず、特段強力な力を備えているわけでもない。

 華国は、死後の世界と隣り合わせの国らしい。その境は曖昧で、鬼ならば行き来にさほど困らないという。そうして鬼たちは自分の生きた場所に紛れ込んでは、退屈しのぎに「遊び」をする。

「青年を巻き込んだ鬼たちは、本当に退屈しのぎをしたいだけみたい。気が済んだら、元の場所に戻るとのことよ」

 鬼たちが求めているのは、生きている人間とのやりとりだ。命を忘れた彼らは、もう成長はしない。だからこそ、成長し続ける生者が恋しくなるのだろう。

「その青年も、彼らが満足すれば解放されるわ。お酒やおいしい食べ物もあるみたいだし、談笑しながら楽しんでもいいと思うの」

 食べ物もお酒も、生者の国のものだから安心して。艶やかな笑みを浮かべて、カトレアはそっと礼をした。

NMコメント

 こんにちは。椿叶です。
 中華風味な世界で宴に参加する話です。

世界観:
 中華に和が混ざったような世界観の、「華」という国です。牡丹の花が年中咲き誇り、常夜の空には月と星ばかりが浮かんでいます。
 華国では、死者の魂は「鬼」と呼ばれます。死者の国は華国と隣り合っていますが、その境ははっきりしたものではありません。鬼たちは時折華国に戻ってきては、退屈しのぎに遊んでいるようです。

目的:
 鬼たちの催す宴に混ざり、鬼と時を過ごすことです。
 鬼はもう成長することはありません。命を持ち成長を続ける生者と触れ合うことを楽しみにしている鬼たちが、生者を呼ぶために宴を開きました。その宴に参加し、対話をしたり、一緒に踊ったりして、彼らと共に楽しんでください。

鬼について:
 死者の魂が、生前の姿そのままで存在しているものです。ひとに対して悪意を持つ者も少なくありませんが、幸いこの宴に集まっている鬼に悪意はないようです。
 人の域を外れた存在ですが、一人ひとりは大した力を持ちません。この宴に集まった鬼に関しては、特に警戒する必要はありません。

できる事:
・鬼と対話をする。
・酒や食事を楽しむ。
・鬼と共に歌い踊る。

注意点:
 飲酒は成人の方のみでお願いします。飲みすぎには注意してください。

サンプルプレイング:

 本当に、夜の国なんだな。明かりは月と提灯が頼りか。
 それにしても死者が本当に酒を飲んで食べている。踊っているひともいるし。生きている人間とさほど変わらないのだろうが、あれでも命を落としているのか。なんだか、生者が恋しくなるのも分かるかもしれない。
 俺は酒は飲めないから、ひとまず桃を食べながら話でもしようか。俺に向かって手を振っているひとがいるな。そこに混じらせてもらおうか。さて、どんな話をしようかな。


 交流したい鬼がいれば、特徴(性格、見た目、境遇等)をプレイングに記載していただければと思います。記載がなければこちらで出会う鬼を選ばせていただきます。
 よろしくお願いします。

  • 【月夜の華】夢の宴完了
  • NM名花籠しずく
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年03月15日 22時05分
  • 参加人数4/4人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 4 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(4人)

星影 昼顔(p3p009259)
陽の宝物
尹 瑠藍(p3p010402)
嶺 繧花(p3p010437)
嶺上開花!
紲 寿馨(p3p010459)
紲家

リプレイ

・留まることを

 死者が鬼と呼ばれているのは、珍しいかもしれない。少なくとも、自分にとっては角が生えているイメージだった。そう周囲を見回したのは『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)である。
 踊る女たちの衣装がひらめき、酒の嗜む男たちの声が響くこの場所は、幻想的な極楽のようで、あのおとぎ話を思い出す。

 とにかく、青年が早く帰れるように手伝おう。

「此処が極楽でも、何処かの誰かみたいに、実は生者の世界では何百年も経ってましたーは嫌でしょ?」

 向こうで鬼に囲まれている青年に向かって、口の中で呟く。
 おとぎ話のようにはならないとは思う。死者の国に居たいなんて人はそうそういないだろうから。自分のように、前を向けずに、立ち止まっている人を除いては。

「おい君。こっちに混ざらないか」

 近くで鬼の声がした。彼らは酒と料理を前に談笑していて、昼顔に向かって手招きしている。丁度料理を楽しみたいと思っていたところだったから、素直に頷いた。

 どんな料理かと見れば、点心や炒飯、饅頭などが置かれている。昆虫食でなければ食べられはするだろうが、やはり美味しいもののほうが嬉しい。そう思ってゆっくりとそのひとつに箸をつけると、温かな味が口の中に広がった。

 自分の世界では、死者の国では何かを食べてはいけないと言われている。ヨモツヘグイなんかがいい例だ。だけどここにいる人たちは生者の国から食べ物を用意しているのだ。そこに、誠実さを感じてしまう。

「どうだい、楽しめそうかい」

 男の言葉に、昼顔は頷いた。他愛のない会話はしたかった。

 例え深く会話をするとして、彼らの望むような話ができるとは思えない。彼らが求めているのは、成長し続ける生者なのだ。だから今の自分がそれにそぐわない様に思えて、自分をさらけ出すことは躊躇われた。

 自分は練達での事件をずっと引きずっている。未だに陽を迎えるのが、新しい日がやってくるのが怖い。心から笑うことだって、難しい。

 イレギュラーズからは誰も死亡せず、ROOも練達も救えてハッピーエンドで終われた。そう言って皆が笑っているのに。自分は、笑えない。練達も皆も先へ進んでいるのに、自分は置いていかれているような気がしてしまう。

「本当、君達が生者に見えるぐらい、自分でも死んでいるように生きてるなぁと思うんだ」

 ぽつりと零した言葉が、夜の闇に溶けていく。どうかしたかと首を傾げる鬼に、何でもないと首をふった。


・永遠の眠り

 亡くなった後も永遠の眠りにつけず、変わることもない。それはさぞ時間を持て余すのだろう。守るべき眠りが無いなら、彼らの退屈しのぎに付き合おう。そう『蛟』尹 瑠藍(p3p010402)は持っていた酒を鬼の前に見せた。

 陶器に入れられた酒は、蓋を開けずとも馨しい香りがする。それに釣られて、数人の鬼が近寄ってきた。

「お嬢さん。こちらに座るかい?」

 料理を囲んで座り込み、酒を注ぎ合う。甘い香りが辺りに広がって、夜の空気を変えていく。
 鬼たちは酒を気にいったらしい。何度も味わうように口に含んでいる。

「秘蔵の蜂蜜酒とオアシスの雫というの。外つ国の酒よ。華国のものと飲み比べはいかが」

 瑠藍の言葉に、鬼たちは頷いた。彼らは自分たちが用意した酒を集めて、杯に注ぎ始めた。

 つい先日、亜竜種の歓迎会があったのだ。知らない酒に見たこともない食材を振る舞ってもらって、とても楽しかった。だから、普段と違う酒を飲むのは変化であり、刺激になると思ったのだ。

 成長はできなくとも、こういう楽しみを味わってもらえればいい。瑠藍は、そう思う。

「あなたたちは、今まではどう過ごしていたのかしら」

 生者との交流を彼らが望んでいるのなら、彼らの今までを尋ねながらこちらの話をするのがいいだろう。ぽつぽつと自分たちの生前や死後の話をしている彼らに、自分のことを話していく。

「故郷では危険だから、勝手な遠出が禁じられているの」

 本当は自由に川を泳いで、野山へ遠乗りに行きたいこと。

「でも本当に危険なのよ。星を見るのが好きな二哥は、この国のような綺麗な星空を見に出て住処の外で襲われたの」

 亡骸は何も残らなかったこと。

「二哥も貴方たちのように永遠の安息を得られていないのかしら」

 これからもっと遠くに行けるように、鍛錬を続けていくこと。

「その道中で二哥のことが分かったら、せめて亡骸の一部を故郷に持ち帰りたいわね」

 穏やかに話すと、彼らはこちらを励ますように微笑んだ。

「あんたは、先を歩んでいくんだな」

 瑠藍も、彼らに向かって微笑む。例え彼らが先に進めなくても、誰かが覚えているのなら、記憶や想いと共に歩めると思うのだ。自分が進んだ先で、ここで知ったひとたちのことを別の誰かに話したいとも思う。

 それとも、自分だけ置き去りにされて、話が独り歩きするほうが嫌かしら。鬼に気がつかれないように、瑠藍はそっと首を傾げた。


・共に料理を

 綺麗なところだ。『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)は空を見上げた。たおやかな月灯りと僅かな光源だけで過ごすのは、デザストルに住んでいた頃から馴染みがある。だけど、ここは不思議と空気が澄んでいるように感じられた。
 ああ、でも。あまり魅せられたら、それこそ還れなくなってしまいそうだ。ならば観光気分で楽しませてもらおうか。

 繧花の興味があるのは、やはり料理だ。この世界の料理と鬼たちの料理。一体どんなもので、どんな味がするのかに、好奇心をそそられる。

「ねえ君。一緒に食べようか」

 宴の席に混ぜてもらい、料理をとりわける。口に運んだ麻婆豆腐はぴりりと辛く、食欲をかきたてられる。

「美味しいね」

 素直に感想を言うと、鬼たちは嬉しそうに笑った。

「もっと食べるかい?」
「気にせず食べておくれ。その方がこちらも嬉しい」

 いいのか、と繧花は鬼たちを見回す。

「ちーなーみーにー。私、結構食べる方だよ?」

 格闘キャラのお約束ってヤツですかね。そんな声に、鬼もつられて笑った。明るい声があちこちで弾けて、料理の上で跳ねる。

「さぁさぁ、そういう訳だからじゃんじゃん持ってきてね! ぜーんぶ食べちゃうぞー!」


「ふー、満足満足!」

 繧花が平らげた料理を、ひとりの鬼が満足そうに数える。いい食いっぷりだったなあと、その目が語っていた。

「食べさせて貰ってばかりじゃ悪いよね」

 一言呟くと、鬼たちが首を傾げた。

「良かったら私からもご馳走させてほしいなーって。まぁ、材料は借りる事になるんだけどさ」

 どんな食材があるか見せて欲しいと言えば、彼らは嬉々として料理をしている場所に連れていってくれた。食材の入れられた籠をのぞくと、野菜や卵などがまだ残されている。

「デザストル風手料理の数々、たんと作ってあげるよ!」

 鬼が見守るなか、手早く食材を切りはじめる。鬼に食事はできるのかと尋ねると、彼らはまばらに頷いた。

「できれば食べてみて欲しいけど、もし食べられなくても、目で見て楽しんでよ!」

 それが自分にできる精一杯のお礼なのだから。

「それじゃあ、ご照覧あれ!」

 借りた中華鍋をしっかりと熱して、そこに材料を入れていく。

「覇竜の料理は火力が命! いっくぞぉぉぉ! ファイヤー!!」

 手際よく炒められる食材と、漂った香りに、鬼たちは歓声をあげる。彼らを楽しませられていると、繧花は確かに感じた。


・牡丹の香り

 様子見を兼ねて、境界図書館に来てみたのだ。集落を出てから初めてのことが続いて、理解が追い付いていないことも多い。そう思いながら『紲家』紲 寿馨(p3p010459)は周囲を見回し、手にした照明器具で照らした。

 境界案内人によれば、ここは死後の世界と隣り合わせらしい。月こそ浮かんでいるが、死後の世界とはこんな風に暗いのだろうか。
 だとすれば、父さんは――。

 いや。思考に沈むそうになる前に、寿馨は首をふる。今は、攫われた青年を探そう。
 鬼が満足すれば彼も帰れるらしいが、無事を確認しておきたかった。宴を楽しめているのならいいけれど、怖がっているような気もした。

 牡丹の咲く道を、照明を片手に進む。一歩踏み出すたびに、華やかな香りが鼻をくすぐった。

 さほど歩かないうちに、艶やかな音色が聞こえてきた。この先にひとがいるのならばと思い、音を辿るように足を向かわせる。すると、突然道が開けた。

「あら、生きているひとだわ」

 鬼だった。二胡を弾いていた手を止めて、寿馨を眺めている。

「アンタが鬼ってやつ?」

 彼女は頷いた。角もないし、豊穣に住む鬼とは違うようだ。

「宴をしているって話だったけど」
「宴を盛り上げる音楽も必要よね」

 微笑む鬼に、なるほどと寿馨は頷いた。

「綺麗だなって思ったし、構わないならもう少し聞かせてほしいな」

 話し相手にもなるよ。そう言うと、鬼は微笑んで、再び演奏を始めた。

「オレは普段は調香師をやっているんだ。まぁ、なったばかりだけどねー」

 にこやかに、気さくに受け取ってもらえるように話しながらも、名前を言うのは避けてしまう。やはり、警戒心を解くことができないのだ。名前を聞かれたら、「馨」と答えるつもりだった。

「死者は香りを食べるって話もあるが、アンタ達はそんな感じじゃなさそうだ」

 想像するに、普通の食べ物のほうが美味しいと思う。それは鬼も同じらしかった。

「鬼が住む場所に、香りが届くことはあるのかな」
「あるかもしれないわね。香りが届いたら食べてみようかしら」

 音色に紛れた、ほんの少しの気持ち。それが途切れずに、空気を振るわせてくる。
 多少なりとも、香を焚くことに意味がある気がした。

 ふっと微笑んだ寿馨に、鬼が何かに気が付いたような声をあげた。

「気を使う必要はないよ」

 それだけが全てじゃないんだ、多分ね。そう小さく呟いて、寿馨は鬼を見やる。
 届ける香りは決めていた。

成否

成功

状態異常

なし

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