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シナリオ詳細

再現性東京202X:担任教師が眼鏡を忘れた

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●担任の様子がおかしい
 希望ヶ浜学園中等部、2年某組。
 病み上がりの文岸 彩陽は、幾つか空いている学生の席を一瞥した。自分がなにか大変な、夢のような出来事に遭っている間に彼等は行方を眩ませたのだという。ほどなくして全員が状態の別こそあれ存命で見つかったが、相手によっては暫く復学できないほどのトラウマを抱えてしまったとかなんとか。この学校なら少しの遅れは十分追いつけるかもしれないが、しかしそれが自分の『夢』に於ける所業の結果だとしたら……などと、夢見がちとはいえ考えてしまう。
 そも、他のクラスや学年、高等部などでも度々そのようなことが起きていることを鑑みれば自分が思っている以上に『普通のこと』なのかもしれないが。
「……ねえ、いくらなんでも遅くない?」
「日高先生が遅刻? まさかぁ……」
 ふと、彩陽は顔を上げて周囲を見た。そういえば、既にHRの時間だ。規則を重んじ時間を守る彼女のような人間がこの時間に姿を表さないのはちょっとだけ考えにくい。生徒達がにわかに騒がしくなり始めた頃、入口の扉が開く。
 と、思われた。
「痛゛っ」
 がたん、という音と共に扉が揺れる。声の主はあろうことか、扉を半開きにした状態で「開いた」と判断して頭から突っ込んだのだ。
 滑り込むように、というより転がり込むように体をねじ込んだその影は、真っ直ぐ歩くこともままならず顔面から床にダイブ。暫くの間、ヘッピリ腰のまま起き上がることができなかった。
「……おはようございます」
「「お、おはようございます……?」」
 地面に転がったままのその人、日高先生こと日高 三弦 (p3n000097)は生徒達に声をかけたがそれ以前に説明してほしいことが多すぎるな、と一同脳裏で総ツッコミである。
 蛞蝓のようにゆっくりと体を起こした彼女の姿を見て、果たしてこの中の何人が三弦であると納得できたであろうか?
 いっそ着ていないほうが礼儀正しいのではとすら思えるよれよれのスーツ、靴下は左右別で普段履きのスラックスの折り目もなかなか怪しい。果ては、靴はどこで買ったものやらその足のサイズに合った学生向け上履きではないか。
「どうしました、授業を始め゛っ」
 立ち上がろうとした三弦は踵を踏んで前に投げ出されるようにして倒れ込んだ。
「ひ、日高先生ー!?」
 学生達の声が虚しく響く。
 哀れ、三弦はそのままHRすらこなすこと無く保健室へ直行となったのだった。

●担任が忘れ物をしている
「ええと、こちらに日高先生と知己の方々がいると伺って来たのですが」
 休み時間。
 カフェ・ローレットに集っていた特待生や教師――ローレット・イレギュラーズ――は、目の前に現れた中等部の少年の不安げな態度に首を傾げた。見る者が見れば、つい先ごろ行方を晦まし、『不安の花』なる夜妖の宿主になった人物であることが認識できるだろう。彩陽は一同に深々と頭を下げてから、おずおずと話を切り出す。
「すみません、日高先生がHRのときに倒れてしまって……朝から様子がおかしいんですが、どうやら眼鏡を忘れてきちゃったみたいで」
 はあ、眼鏡を。てかあれ伊達じゃなかったんだ。
「服装は乱れてるし足取りもおぼつかないし終始どこを見ているのかわからないし何しろ藪睨みでこっちを見てくるので凄く怖くて……今は保健室でジャージ姿なんですが、先生をどうにかしていただけないでしょうか……? 取り敢えず授業は絶望的なので放課後に連れ出して貰うことになるかと思います。職員室にスーツと靴の替えはあるそうです」
 え、そこから忙しないといけないの?

GMコメント

 メガネを忘れてポンコツになるの、あると思います。
 でもメガネかけてない姿は絶許なんだよなあ。面倒くさいなお前な。はい。

●成功条件
 三弦の眼鏡を確保して無事に帰らせる。その間起きた出来事の一切を不問と処す(戦闘とか彼女への理不尽な行いとか公序良俗に反する行為を除く)。

●日高三弦-眼鏡
 全く役に立たないどころか超のつくポンコツです。常時寝起きみたいな感じ。
 現在は保健室でジャージ姿できょとんとした顔であちこち見ていますが放っておくと立ち上がってすっ転びます。寝起きどうしてるんだろう……。
 彼女が家に辿り着くにはスーツに着替えさせ→町に出て眼鏡を確保し→帰路(この場合希望ヶ浜の安アパート)のルートをたどる必要があります。
 着替えの場合は女性が望ましいですが男性が下心ありすぎると無意識にプロレス技を仕掛けてきます。
 町に出た際、眼鏡が完成するまで時間があるので上手いこと言いくるめて着せかえ人形みたいな扱いをしてもまあバレないでしょう。
 なお、依頼終了後にデジタルタトゥー化し三弦は関係者を探し回ります。負傷したんくないなら記録に残ることを重々承知のうえで行いましょう。

  • 再現性東京202X:担任教師が眼鏡を忘れた完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2022年03月20日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
エル・エ・ルーエ(p3p008216)
小さな願い
雨紅(p3p008287)
愛星
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ

●教師をどうするか、という話
「文岸さん……普段の生活に戻れたみたいで、良かった。でも……」
 『淡き白糖のシュネーバル』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は保健室のベッドで寝息を立てている日高 三弦 (p3n000097)の姿に、心配そうに表情を歪めた。文岸少年が紆余曲折あって日常に戻ってきたと思ったら、三弦がこの有様とは理解が追いつかない。
「一般的に人間が外界から得る全情報の80%程度は視覚によるものですとか。眼鏡がないと調子が出ないというのも頷けます」
「自分の中でこれがあるからきちんと動ける、とかそういうものってあるよな。三弦女史にとってはそれが眼鏡だったんだな……」
 目が見えないからって一連の奇行は『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)には理解し難いものだったが、多分理由はあるのだろうと考えた。『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は視覚の云々以上に、三弦にとっての眼鏡は日常生活を送る上でのルーティーンじみたものだと認識していた。両者ともに『持つ者』なので理解し難いのだが、見えないと靴や靴下の正誤の判断も儘ならぬのである。揃えとけよって話だが。
「あの『ローレットのお局』三弦さんが眼鏡を失うと、ここまでポンコツになるのか……」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は三弦のあまりのポンコツ具合に、好奇心が思いの外刺激された様子だった。イレギュラーズはツンケンした彼女しか知らない者が大半なので、その感想も無理からぬものか。したってお局呼ばわりは傷つくかもしれんが。
「私の眼鏡は視力矯正用ではないのですが、それでも眼鏡がないと困るのはわかります」
「眼鏡の方って大変なのですね」
 『柴犬さんのお散歩マスター』金枝 繁茂(p3p008917)の理解と実感の籠った言葉に、『刑天(シンティエン)』雨紅(p3p008287)は不思議そうな様子だった。眼鏡には眼鏡なりの苦労があるものだ。わからないけど、というニュアンス。雨紅は着替えの手伝いも考えたが、そもそも女性体ではない姿で居合わせるのは不味くもあるのでおとなしく引っ込む。
「日高さんが、明日もしっかり、お仕事できるように、エルはお手伝いします。着替えるお手伝いも、します」
「みっちー、とりあえずスーツに着替えないと。はい、男子は出ていく出ていく」
 となると、着替えをこなすのは女性陣になるわけで、モカはもとより『ふゆのこころ』エル・エ・ルーエ(p3p008216)や『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)がすごく乗り気なのが気になるところ。というか、夕子の目にあらぬ光が宿っているように見えてならない。
(いま、みっちーは何も見えないんだ。そっかー、そっかぁ……。あの真面目眼鏡先生が……)
(またとない機会、以前から考えていた『日高三弦魅力再発見計画』を発動するか)
 夕子とモカの心中が明らかに(害意はないにせよ)三弦をどうにかしよう感に溢れているのを、エルは肌で感じていた。いたのだが、よもや仲間達が腹に一物抱えているとは思うまい。
 布団を持ち上げ、茫洋とした表情から見る間に藪睨みへと変わる三弦の表情はちょっと怖いが、急ぎ着替えないとならぬのは確かだ。
「……えーっと……私の授業は……」
「瑠璃さんが、プリントを配りに行きました。大丈夫だと、エルは思いました」
「……そうですか」
「それよりみっちー、着替えないと帰れないよ? 頭打ったんだし代わりの眼鏡買って帰らなきゃ。あーし達も一緒するし!」
「みっ……? 大丈夫なのですか、その、授業とか」
「大丈夫大丈夫!」
 畳み掛けるようにぽんぽんと肩を叩く夕子に思わず疑問を呈する三弦。が、その疑問に対して正しく答えられる者がその場に居るはずもなく。三弦の不安がほどなくして的中することを、彼女は知らない。

●堅物教師がどう映えるか、という流れ
「ええと、私の替えのスーツが職員室のロッカーにあるはずですが」
「あー、あるある! あーしが『スーツ』持ってきた!」
 藪睨みの表情のまま中空に手を彷徨わせる三弦に、どこから取り出したんだか大きなトランクを引っ張ってきた夕子は、その中から物凄い衣装を取り出した。中世欧州貴族っぽいそれに、エルのみならずほか二名も表情が固まる。
「あーし、知ってる。スーツってトランプの一組の事よね。というわけでお着替えお着替え。うわ、結構でっかい……!」
 良い子の皆は思ったよね。綴りが違うんじゃねって。でもトランプの紋標も社会人の着る方もSuitなんだよ。あと何がでかいのかは言わないでおこうな夕子。
「えっとえっと、大丈夫、でしょうか?」
「……エルさん、これは『スーツ』なんですよね?」
 エルはあまりの状況に思考が硬直してしまった。仲間達はきゃいきゃい騒いでいるがこれって大丈夫なのだろうか? 三弦の言葉に返答しようとし。
「うんうん、スーツで間違いないって! 調べたから!」
「……えっと。スーツ、だそうです」
 夕子の強引な肯定に思わずエルも同意せざるを得なかった。いいのかそれで。
「此方に別の衣装を用意したけどこれはこれで……そうだみつるちゃん、髪がまとまってないね。メイクもちょっと乱れてる」
「そうですね、ちょっと見えなかったので殆ど素でしたか」
 モカはここまでくるとロリータファッションを着せるのはムリと判断、別方面のアプローチを開始した。具体的には髪とメイク。三弦は視覚が乱れると他も鈍くなるのか、いじられるままにしている。明らかに髪がお貴族縦ロールなのだが……。
「私は彼女をよく存じ上げませんが……まあ、よく知っている貴方方が言うならその方がいいのでしょう」
 丸め込まれるな瑠璃。さりげなくこの女性陣の中で一番三弦と関わり深いの多分エルだぞ。そのエルが目を白黒させているんだ気づいてくれ。
「誰かと一緒だと、恥ずかしい気持ちより楽しい気持ちのほうが大きくなると思うんです。ですから私達も一緒に着替えましょう」
 状況が動いたと認識して入ってきた雨紅は、その惨状(?)に呆然とする男性陣をよそにすげぇ提案をした。恥ずかしがってない(そもそも気づいていない)三弦は首を傾げているが。
「素敵なお洋服……可愛い、ね。僕も猫さんな付け耳・尻尾付けてみよう」
 祝音は(装備はともかく)制服の上に猫耳や付け尻尾(クリップ式)を取り付けていく。ノリが軽い。とっても軽い。
「……いやおかしくないか!? 明らかにコスプレだろそれ!」
「まあまあ。三弦さんも何も言っていませんし」
「気づいてないだけだろ!?」
「あっそうだ(唐突)皆で食事に行きませんか」
「課業後だけどそうじゃなくないか?」
 エーレンが唯一まともなリアクションを返してくれて非常に嬉しいんだけどそれはそれとして三弦は『コスプレ』が誰のことを指しているのか気づいていなかった。あと繁茂がいい具合に丸め込もうとしていた。それはそれとして、眼鏡が外れただけでここまでポンコツになるものなのか……?

●堅物コスプレ貴族風女教師がショッピングモールを行脚する、という光景
 昼下がりのショッピングモール内は、それはそれは不思議な雰囲気につつまれていた。
「……手で食べられる物だったら大丈夫と思っていましたがそうでもなさそうですね」
「女史。時計でいうと2時のあたりにナプキンがある。12時の方向に紙皿があるから一旦ケバブサンドを置こう」
 なぜなら、両脇に繁茂とエーレンを侍らせた三弦が滅茶苦茶高そうな貴族衣装縦ロール姿でケバブサンドにかぶりつき、ボロボロと紙皿に中身を零しながら食べていたからだ。ナプキンを取ろうとした彼女はしかし、何故か手がスカってしまう。たまりかねた繁茂がそれを見て頬を拭った。周囲の年頃の女性陣が目を剥いた。
「お茶……です。飲める……?」
『ズゴゴゴォッ』
 祝音が取り出した紙パック飲料を、ストローに口をつけたあと一瞬で飲み干す三弦。多分飲食でペース配分とかリミッターがぶっ壊れてるんだと思う。
「ケバブサンドだけじゃなくて、折角だし貴族っぽいのとかどう? たしかあれよね? 『パンが売り切れてたらケーキ食べましょ』ってやつ」
「違ってるようで要点は合ってるような……」
 いつのまにかダイス状のミニケーキ盛り合わせを持ってきた夕子は、三弦の傍らにスッと差し出す。売り切れるというか生産できなくなったり高騰したら……というくだんの『迷』言のうろ覚えには、エーレンも強く言えなかった。
 なお、この様子は夕子が撮ったし記録映像にもなるしなんならドヒャッターでバズっている。
「実はエルも、メガネはとっても、気になっていました。エルは伊達眼鏡を買いますので、一緒にご試着してみましょう」
「そうですね。視力検査も改めて行った上で……AR機能などがあるといいのですが。時間がかかりそうですね」
「というか、私はギフトが擬似ARというかそういうものなので……」
 エルと瑠璃は食事が終わったのを見計らって、眼鏡店への移動を提案。三弦も四苦八苦しつつなんとか食事を終え、立ち上がる。何故か貴族衣装に適応し始めている気がしないでもない。
「あ、誰か三弦女史と手を繋いで一緒に歩いてくれないか。その方がきっと彼女も安心する。女史はこの際、移動を俺達に任せて目を閉じてもらえないか。定かではない視覚に頼ると状況が悪化する」
「名案ですね。では、お願いしましょうか」
 エーレンの提案はなるほど正しいものだった。三弦はその提案に乗っかる形で目を閉じると、エルの手をとって歩き出した。

「いつもの、アンダーリムで、ご一緒に、きりっとしたり。
べっ甲色の、フレームで、お洒落なマダム風、だったり。
ちょっとレトロな、まんまるメガネで、学者さん風、だったり。……えーとえーと、悩みます」
「良いですね。鼻先に引っ掛ける程度の小さい丸眼鏡などもありますが」
 エルは色々なフレームを付け替えながら、繁茂とともに眼鏡を見て回っていた。三弦はといえば、瑠璃に引っ張られて検査中だ。変わった眼鏡を用意するのも、有りかもしれない。
 なお、この間部屋の奥から絶叫が聞こえたり、雨紅が慌てて着替えの入ったかばんを持って入ったりとひと悶着あったことを書き添えておこう。
 なお三弦は待合中のために仮の眼鏡を渡されてフレームを選んだ結果、3種くらいに絞って予備にと買ったらしい。

「みっちー、眼鏡がないとそんな感じなんだ。大変よねー。これから眼鏡忘れたらあーしとかに言ってね。すぐに助けてあげるから」
「今日は連れ回した分、食事の世話はしよう。……それで部屋着は?」
「帰ればあるので問題ありません。ご迷惑をおかけしたようで……」
 そして帰路。夕子とモカは三弦をあれやこれやした責任があるとばかりに色々と話しかけていた。どう考えても夕子は企んでいるが。三弦はしかし、視界がもどっても午前中の負荷で目がしょぼしょぼしており、脳に掛かった負担のせいで今尚夢心地だ。だからこぞって引っ張っているのだが。
「こちらは自習用に配ったプリントです。解答も添えておきました」
「助かります……」
 瑠璃はその辺も抜かり無く処理しており、三弦はその出来栄えに感動する(事になるのは、多分翌日だ)。
 男女(+無性)8名が並んで歩く様は壮観だが、スーツに戻った縦ロール三弦とスーツ(紋標)姿の雨紅ほか数名というのも結構アレだ。
「今日1日……お疲れ様、です。みゃー」
 なんやかんやで戻ってこれた三弦に、挨拶をして祝音を始めとしたイレギュラーズは立ち去った。
 モカとエーレンは侘び食と称して作り置きを用意するなどして去っていったので、万が一が合っても三弦はしばらく大丈夫そうである。

●その結果
「……なるほど」
 後日、カフェ・ローレットの一角で三弦と卓を囲む者達がいた。
 反省しきりの夕子と何とか犠牲を抑えようと身構えるモカ、あとは神妙な顔でことの推移を見守る男性陣とエルである。なお、夕子とモカは自主的に正座しようとしたし夕子に至っては反省用の首掛札を持ってきていたのだが、三弦はそのどれもを拒否した。固辞した、といったほうがいいのだろうか。
「お二人共勘違いなさっているようですが、私は事の次第をエルさんから、そして他の皆さんから聞き及んでいます。夕子さんの行動にも悪意がないことは承知しております。……モカさんの行いがどうかは一考の余地がありますが、『まさか』徒に私を辱めるつもりでやったわけではないのでしょう?」
 まさか、のあたりで明確な感情が籠っていたように思うがそれはともかく。問いかけには、二人共首がもげる勢いで頭を縦に振った。
「も、モチだよみっちー!」
「一応学園内なのでその呼び方はちょっと」
 夕子は必死に身振り手振りで罪を否定するが、罪の所在以前に親密なあだ名呼びは三弦が難色を示した。飽くまで教師と生徒という体面は保ちたいという気持ちが垣間見えた。
「そりゃあまあ、悪気があってやるなんてことは……デジタルタトゥーにならないようには配慮したつもりだが」
「ええ、まあモカさんがまさか楽しむためだけにやってるだなどとは思っていませんよ。ええ」
 モカも恐る恐る声をかけるが、夕子に向けたものより幾分視線に籠った温度が低いようにすら思えた。
「待て、落ち着いてくれ女史。力及ばずではあったが俺(と仲間)は最大限御身の安心・安全に配慮した」
「デジタルタトゥー……? ってなんだろう?」
 エーレンはこのまま行くと飛び火しかねぬと察して言葉を尽くしたが、彼はどうやら「雉も鳴かずばなんとやら」という諺が頭から抜けていたらしい。そして祝音はそもそも女性二名相手にぷりぷりしているのかがまるでわかっていなかったりする。
「日高さん、あんまり、怖がらせるばかりなのは、めっ、です」
「成程。エルさんがそう言うのなら」
 三弦はエルの提案に理解を示すように頷くと、一同を流し見て、納得したように頷いた。
「今回は眼鏡を壊した私にも非がありますので、先日の一件に関しては一先ず脇に置きましょう。助けてもらって罰を与えるのは人道に反しますので」
 でも教師と生徒の関係は体面上忘れないように、と結ぶと席を立ち、職員室の方へと歩いていった。
 一同は、なんとか罰を受ける可能性を回避できたのである。……受けても問題なさそうな連中ばかりだったというのは言わない約束だ。
 またこれは余談であるが、この一件より後、三弦の家のクローゼットには問題の衣装が眠っているらしい。これらが日の目を見る日がくるのかは、神のみぞ知る。

成否

成功

MVP

エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

状態異常

なし

あとがき

 三弦はそこまで皆さんからの好感度高くもないし恨み買ってるわけでもないから無難に着地するだろうなとか思ってました。
 全く無難とは程遠いところにいた。どうして……。

 コスプレ服とロリータファッションと眼鏡のバリエーションですね、了解。
 現ナマは用意します。

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