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シナリオ詳細

巨大アリペイト包囲網

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 『亜竜集落ペイト』。
 地中奥深くに築かれ、地竜とも呼ばれる亜竜種達が住まうこの洞穴の里には、武闘派の住人も多い。
 日々、自らを追い込みつつ鍛錬を続ける彼らは、ペイト近辺で鍛錬を行いつつ魔物を討伐する。
 それだけに、普段から亜竜や魔物から怒りを買っていることも少なくない。場合によっては目の敵にされていることも……。

「セイ! セェイ!」
「ハッ、ハアアアッ!」
 今日も彼らは集落で、その近辺の鍛錬場で、激しい修行を行い、汗を流す。
 その声は地中にこだまし、周辺に潜む魔物達に存在を示すこととなる。
 カサカサ、カサカサ……。
 ガサガサ、ガサガサ……。
 それらは群れをなし、一気に近づいてくる。
 数の利というのは恐ろしい。濁流のごとく、相手を一気に飲み込んでしまうからだ。
「「アリだー!」」
 同時に上がる亜竜種達の叫び。
 修行に明け暮れていた者達はそれを耳にして、すぐさま身を翻し、翼を羽ばたかせて現状の把握へと務める。
 地中を縄張りとする巨大アリどもの動きはあまりに素早い。
 どうやら、今回は働きアリだけでなく、数体の兵士アリの姿もある。
 その数は70から80と見られる。
 兵士アリ1体が働きアリ数体を引き連れる小隊を編成しており、組織的な動きでペイトを取り囲んでいく。
「早いな……」
 覇竜轟雷拳の師範、徐・宇航は苦い顔をする。
 先日の修練場を含む巨大アリの出現。
 間違いなく入れ知恵した上位のアリがおり、それは女王アリに違いない。
 幸い、女王アリの姿は今回確認されていないが、組織的な動きでこちらを襲ってきている。
 先日の事件以降、この巨大アリ関連について託されていた宇航も黙っていたわけではない。
 修行と並行して野良で活動していた巨大アリを叩き、その巣穴の特定を急いでいたのだが……。
「先手を打つつもりが、奴らの動きは想像以上に早かったな……」
 そこに駆け付けるローレットイレギュラーズ。
 メンバー達も先日の巨大アリの一件があって以降、宇航らの手伝いをしていた。
「すでに巨大アリは集落を包囲しているようですね」
 イレギュラーズの1人、プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)が悔しそうに声を漏らす。
 周囲にいる門下生達も思った以上に知的で、組織的で、それでいて高い力量を持つ巨大アリの力に辟易とさえしていたようだ。
 イレギュラーズも個々では考えが異なるが、これまでの難事件を解決に導いてきた実績もあり、尻込みすらせぬその姿に、亜竜種達も感嘆する。
「ならば、我々も打って出るのみ」
「「押忍ッ!!」」
 声を揃えた門下生達は兄弟子が弟弟子数名を引き連れて敵小隊の迎撃へと向かう。
「では、我らも向かうとしよう」
 同行しようとしてくる宇航に、イレギュラーズが驚くと、彼は不敵に笑う。
「一度、貴公らの戦いぶりを間近で見たいと思っておった」
 またとない機会だと、高ぶる宇航。彼もまた武の探求者であり、弱い重ねてなお強さの追求に余念がないということだろう。
「すでに敵情報はこれまでの戦いで得ておる。道中話そうぞ」
 宇航から、巨大アリの戦闘能力について聞き出しつつ、イレギュラーズが向かう先。
 ペイトの裏手側から別所へと向かう通路を塞ぐように、今回の襲撃の指揮を執る兵士アリ2体と部下である働きアリ数体の姿があった。
「奴らを倒せば、集落を囲むアリどもは統率をなくして敗走するはずだ」
 カサカサ、ガサガサ……。
 宇航の声に応じ、巨大アリどもが動き出す。
 待ちかねたぞ、亜竜種ども。
 そういわんばかりに爛々と目を輝かせ、巨大アリどもは一斉にメンバー達へと襲い掛かってきたのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 こちらは、プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)さんのアフターアクションによるシナリオです。
 先日現れた巨大アリが異様な数の仲間を引き連れ、『亜竜集落ペイト』を囲んでいます。
 集落の亜竜種達と共に集団を蹴散らし、群れを率いる上位のアリ数体の討伐を願います。

●成功条件
 集団を率いる上位の兵士アリ2体の討伐

●概要
 戦場はペイトの裏手側。
 ペイトの民が逃げられぬようにと別所に通じる通路を背にしております。
 地面や壁は硬い土で覆われ、所々に巨大な岩が存在します。
 天井は10~15m程度。普通に立ち回る分には気にする必要はないでしょう。
 
●敵……魔物、巨大アリ
 状況によっては、仲間を呼ぶことがあります。
 また、全ての個体が穴を掘ることがあり、増援が現れたり、逆に逃走したりすることもあるようです。

○兵士アリ×2体
 全長3mほど。下記の働きアリより一回り大きい体躯を持ちます。
 別所で門下生達が戦う小隊長よりやや格上であり、集団を統率していたようです。
 体術の他、ハンマーを使いこなします。また、下位の働きアリ同様、土塊、岩の叩きつけ、食らいつき、酸撒き散らしを使うこともあります。

○働きアリ×6体
 全長2.5mほどもある働きアリ。
 土塊や岩を叩きつけてくる他、直接食らいついたり、酸を撒き散らしたりしてきます。

●NPC……徐・宇航(じょ・ゆーはん)
 今回の依頼者ある亜竜。長く伸びた髭が特徴的な45歳男性。
 その翼や尻尾までも技に生かす武術、覇竜轟雷拳の師範です。
 今回は同行し、共闘してくれます。
 かなりの力を持っていますが、覇竜の魔物相手と考えれば、彼とうまく連携をとることも必要となるでしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • 巨大アリペイト包囲網完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月19日 22時21分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)
想い、花ひらく
ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)
ラッキージュート
月瑠(p3p010361)
未来を背負う者
風花(p3p010364)
双名弓手
熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠
シッコク(p3p010498)
シドラネル(p3p010537)

リプレイ


 亜竜集落ペイト。
「アリだー! なんて言ってる場合じゃないね!」
 イレギュラーズに興味津々の亜竜種ガール、『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)がテンション高く叫ぶ。
 この場からは視認できないが、『亜竜集落ペイト』奥側の通路手前には、巨大アリの一団が 陣取っているとのこと。
「巨大アリの軍団、やっぱりいたのですね」
 ドレス姿をした小柄な少女、『春風と導き』プラハ・ユズハ・ハッセルバッハ(p3p010206)は見込みが当たって良かったと安堵しつつ、素早い対処をと仲間達に願う。
「アリ……見ないわけではなかったが、侵攻するとは初めて聞いた」
「集落を包囲するほどのアリの大群……。なるほど確かに働きアリ程度が取れる手段ではないですね」
 色黒肌かつ漆黒の衣装を纏う『闇』シッコク(p3p010498)が唸る隣、狩猟を生業とする小柄な亜竜種女性、風花(p3p010364)は組織的な動きに違いないと感じていた。
「働きアリ、働きアリですか。働きたくない私への当て付けですか」
 そこで、インドア派の亜竜種シドラネル(p3p010537)が捲し立てるように独り言を呟く。
「ああ働きたくない。労働は悪、労働は悪い文明、他人のお金でご飯が食べたい。ご存知ありませんか? 伝説とされる竜というのは大体引き篭もりなのですよ。であるならば私もその例に倣いここは一先ず出直s……」
 シドラネルは仲間達の冷ややかな視線が集まっていることに、ハッと気付いて。
「はい、働きます。働いた後のご飯はおいしいです」
 そんなシドラネルはさておき。
「襲撃の頻度が上がっているのか……恐らく以前の巨大アリと同じ巣のアリ、でしょうか」
 幻想の名門貴族令嬢、『紅炎の勇者』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)が推論を語る。
「この様子だと、本格的に巣から働きアリを出しての活動に移って来たのかもしれません」
「しかし、今までならともかく、これからは包囲作戦それ自体が難しいのだと教えてあげましょう」
 危機的状況だとリースリットは示すが、風花がイレギュラーズとして存在を示すべく胸を張る。
「俺、特異運命座標になって初めての仕事がペイトの採掘場だったんだ」
 ガンマンのような風貌をした『ラッキージュート』ジュート=ラッキーバレット(p3p010359)は依頼で世話になったコイン職人のおっちゃんのことを思い出す。もしかしたら、腰痛でまだ動けないかもしれない、と。
「だから戦うんだ、縁を繋いだ人達をこの手でしっかり守るために!」
 討伐に強い意気込みを見せるジュートに、皆も同調して。
「最近なんだかどこもかしこもアリさんの被害が増えているしさっさと片付けないと!」
「アリさまにも言い分はあると思いますが、集落の生活を脅かすのであればそれなりに追い散らさないと」
 亜竜種の多いチームとあって、ユウェルは皆の家が無くならないかと懸念する。プラハも亜竜種達のことを気遣って。
「さあ、行きましょう。力を合わせて一緒に戦いましょう」
「「押忍!」」
 覇竜轟雷拳の面々がプラハに合わせて掛け声を上げる。
「では、我らも行くとしよう」
 門下生を別所の対応に派遣する徐・宇航師範のみが当チームに同行してくれるようだ。
「ありゅーしゅのめーよのためにふんこつさいしんがんばりましょー、おー」
 その宇航に促される形で、シドラネルは棒読み口調で掛け声を上げていたのだった。

 集落を通り抜ける一行。
 基本的に明かりは周囲に用意されていたが、集落の端とあってプラハはたいまつを掲げる。いきなり敵から奇襲を受ける可能性があることを、彼女は警戒していたのだ。
 その明かりに翳されて見えてきたのは……。
「アリー、でかいなー!」
 ギフトによって仔竜の姿をとる白銀の髪と灼眼の『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)が思わず声を上げる。
 集落から出る通路の手前へと陣取っている8体の黒き巨大アリ。
 それらはおそらく他の集団と足並みを揃えているのだろう。じっとその場から動かず待機している。
 いずれも武装しており、明らかに亜竜種を敵視している。
「黒き体を持ってはいても、導かれぬ者もいるということだな」
 ギフト「暗黒の教示者」によって、暗黒を名乗る何者かの言葉を聞き、シッコクは僅かに首を傾げながらも頷く。
「巨大であっても、やはり生態自体は小型の昆虫とそう変わらないのかもしれませんね」
 リースリットはそれらを遠方から見据え、明らかに違う種……いや、役割のアリだろうと推察する。
「悪知恵からくる安易な包囲など、範囲攻撃の的でしかないでしょう」
 ギ、ギギ……。
 風花が真っ先に呼びかけると、アリのうち2体が僅かに反応をみせる。
「統率の為、命令を出しているアリさん……あれで間違いないはず!」
「はい、小集団の統率役……それから優先的に始末しましょう」
 ユウェルの言葉に頷き、リースリットは身構える。
「兵士アリは正面突破を図ってくるはずだ!」
 事前に、ジュートは依頼映像を元にしてアリの行動パターンを学んでおり、暗視で対応の上、天井に頭をぶつけぬ程度に飛行する。
「まずは兵隊アリからだな!」
 熾煇は仲間内の作戦を理解し、首を縦に振る。
 指令系統を先に潰せば、あとは烏合の衆。隊列をかき乱せばばらばらになるはず。再び編成し直す前にまたは逃走前に叩くこともできる。
「全部倒してしまえば、あいつらに襲われる心配しなくてすんで、しゅーらくのやつらも喜ぶな」
「うむ」
 熾煇の主張に同行の宇航も同意する。
「徐・宇航さんは、働きアリ引き付け側の援護をしながら攻撃していっていただければ」
「相分かった」
 働きアリの引きつけ側を援護と自らの役割を把握した宇航。
 ギ、ギギキィィィ……。
 カサカサ、カサカサカサカサ……。
 こちらが最終的な作戦のすり合わせをしている間に、巨大アリ達は素早い動きで、イレギュラーズへと迫ってきたのだった。


 カサカサカサカサ……。
 攻め入ってくる働きアリ達。
 それぞれ立ち回るイレギュラーズの中、リースリットは敵集団を指揮する兵士アリの周囲へと魔眼の力で焔の幻を燃え上がらせた。
 それによって兵士アリが彼女へと向かうと、働きアリも一緒になって移動しようとするが、そちらはシドラネルが引きつけに当たる。
「宇航さん、一緒に頑張りましょう」
「おぬしらの力、見せてもらうぞ」
 彼らまで働きアリが至る前に、風花が先んじて魔砲の一撃を放つ。
「これで数を減らしたいところですが……」
 破壊的魔力を浴びた巨大アリ達は確かにダメージを負ってはいたが、そこは覇竜を生きる生物。耐えきった上で歩みを止めず攻め入ってくる。
「リースリットせんぱいの釣り出したアリさんに集中攻撃するよ!」
 皆に呼びかけるユウェルが先陣を切って、烈火業炎撃を見舞う。
「どんどんいくよ! 炎を纏わせて……ぱんち!」
 その威力もさることながら、燃え盛る炎が兵士アリの体を焦がす。
「ちっちゃいのと違って、あーゆーのは危ないんだな。早く倒してしまうぞ!」
 しかし、熾煇はアリが食べられない、おっきい虫はばっちいと自問自答してしまう。
 その間に、巨大アリとイレギュラーズとがぶつかっていく。
 開けた場所だが、空中を飛ぶジュートは柱などを遮蔽として働きアリが飛ばす土塊を避け、敵を纏めて捉える。
「俺のアンラッキーを少しだけ分けてやるよ」
 暗がりの中、ジュートが煌めかせたコイン。それが穴を掘る敵や積極的に武器で殴り掛かる敵を刺激し、怒りで漲らせる。
 カサカサカサカサ……。
「相手になりますよ」
 近づいてくる働きアリの攻撃を引きつけるのは、シドラネルだ。
 カサカサカサカサ……。
 …………!!
 …………!!
 複数の脚を動かし、飛びかかってくる働きアリ達。
 その勢いに、彼女も圧倒されてしまって。
「あ、これ私ヤバイ奴ですね。早めの撃破をお願いします」
 働きたくない精神は色々思うところはあるが、シドラネルなりの信念をもって意地でも働きアリを働かせないよう抑えつける。
「アリも無計画に穴を掘るわけじゃないと思うんですよ」
 ぼそりと語るプラハは、兵士アリが攻撃しながらも、何やら働きアリに指示を出すように指差しなどしているのを目にする。
 兵士アリは作業支持者や現場監督も兼ねると、プラハは疑わない。
「さあ、私が相手になります」
 ともあれ、そちらはリースリットが抑えてくれていることもあり、プラハは仲間の抑えから外れたアリを捕捉し、名乗りを上げる。
 すでに数人の仲間達が引付を行っており、やや後発となったプラハに近づいてくる敵は少なめだった。
「バシバシっとやっちゃってくださいね」
「了解した」
 そこを協力者である宇航が拳の連打を浴びせかけていく。
 さすがは武術の師範。その動きは実に無駄がない。
「なんなら多少の誤爆巻き添えは構いません」
 最優先はアリの殲滅。抑え役となるメンバーが持たせてくれている間に、攻撃役となる面々もまた全力で巨大アリを叩く。
 序盤は容赦なく蹴りから、無数の魔力弾を繰り出していたシッコク。
 徐々に混戦模様となってきたこともあり、シッコクは自らに祝福の囁きによる強化を施してから、武器を使って直接攻撃を繰り出す。
「俺、ちっちゃい頃は虫も食ってたからなぁー?」
 熾煇はばっちいから駄目とご主人様から言われていたことを思い出しつつ、兵士アリ目掛けて虹色の軌跡を残すリリカルスターを叩き込んでいく。
 抑えに当たるメンバーはかなり多く、攻撃に集中させて穴を掘らせぬよう自分達へと注意を引くよう立ち回る。
 風花は気力を振り絞り、魔力の大砲を叩き込む。
 数を減らそうと撃ち込んだが、仲間達の攻撃は格上の兵士アリに集まっており、思うように働きアリの数を減らせずにいた。
 だが、そちらを抑えるシドラネルと、援護攻撃を繰り返す宇航も働きアリに殴打を打ち込み、1体を弱らせる。
 そこで、風花は魔導書を開き、術式を展開してナルシスの魔獣の力も得て遠距離から通常攻撃を撃ち込む。
(魔砲と、邪道虚無必殺など色々と効果の付いている通常攻撃、この2つに戦闘手段を搾って鍛えたのが私)
 それだけに、彼女は自信をもって渾身の一撃を叩き込み、1体を沈めてみせた。

 順調に攻め立てるイレギュラーズ。
 しかしながら、アリ達もかなりのタフネスを持っており、しつこく岩や酸を飛ばし、抵抗してくる。
「このまま皆でどんどん攻撃して命令を出している兵士アリを片付けちゃおう!」
 テンション高くユウェルが叫び、燃え上がる拳を打ち込んでいく。
 それらの兵士アリはリースリットが主として抑える。
 ダイヤモンドダストを発生させた彼女は、兵士アリを纏めて凍り付かせる。
 ギ、ギギギィィィ……!
 怒りを漲らせる兵士アリだが、思いっきり凍った脚で地面を鳴らす。
 地面から突き出すように姿を現す2体の働きアリ。
 それをきっかけとして、兵士アリが指示を出すことで、働きアリが組織的な動きを見せる。
 酸を吐きかけた1体の後、飛びかかった増援2体が風花を組み伏せる。
 倒れた風花はパンドラを使って身を起こすが、すでに働きアリのターゲットはシッコクへと移っていて。
 ギギギィィ……。
 ただ、シッコクは増援が現れるのを察して飛び退いていた。
「硬い土で岩の多い地中というのが少しアレだが……」
 生命の再生能力を使用した一撃は土の中において、満足な力を出せないと考えるシッコク。
 彼女は地面に根を張る大木や暗がりに生息するコケの力を得て。
「今あるこの力で!」
 今は地の力だが、将来は闇を放出できることを期待しつつ、シッコクは働きアリ目掛けて殴り掛かる。
 めり込む程の強撃に耐えられず、その働きアリが意識を失ったのだった。
「大丈夫だ。大した数じゃねー」
 冷静に状況を見ていたジュートが神気閃光を発しながら、この場で統率力をみせる。
 すると、メンバー達はすぐに立ち直し、さらに攻勢を強めていく。
 炎の拳を振るっていたユウェルだが、彼女はハルバードも使いこなし、アリを追い込む。
 リースリットが兵士アリのハンマーや格闘術を引きつけ続ける。
「本当、頼りになるせんぱいたち。きっとだいじょーぶ!」
 勢いのままに、ユウェルは一気にハルバードを振り回し、纏めて切り裂いた片方の兵士アリの首を跳ね飛ばす。
 もう1体も仲間の状況が落ち着いたこともあり、リースリットが仕掛ける。
(増援に兵士はいなかったようですね)
 最初からいる兵士アリは仲間達の攻撃が集まり、疲弊している。
 リースリットは風の精霊の力を集めた一閃で、その兵士アリの体を寸断してみせた。

 統率していた兵士アリがいなくなれば、働きアリの動きに精細さが無くなって。
「ハアアアアッ!」
 宇航が見事な空中殺法を披露する中、熾煇が追撃をかける。
 依頼主である宇航へと攻撃を当てぬよう気づかい、熾煇は方向を変えてから魔砲を放出し、風穴を開けた働きアリを倒してしまう。
 その熾煇と十字砲火となるよう、プラハは位置取っていて。
「いきます! 魔砲どーん!」
 プラハもまた高出力の魔力の大砲で、近場の1体を仕留めてみせた。
「早めに叩かないと、仲間を呼ばれて長期化します」
 これ以上、敵が増えることは避けたい。
 土や岩を浴びながらも、デコイとなり続けるシドラネルも、殲滅に加わる。
 シドラネルは手甲を盾代わりとして強く働きアリの頭を殴りつけ、その首をへし折ってしまう。
 そのシドラネルに余裕があると判断したジュートは別方向で抗戦中の仲間を援護に動く。
 穴を掘る敵は最優先で討伐。一度敵を穴から吹き飛ばして遠ざけ、ジュートはさらなる追撃で無数の魔力弾を撃ち込む。
「言葉通り、アリ一匹すら逃さねえ。男の意地ってのを見せてやろうじゃねーの!」
 全身を撃ち抜かれた働きアリはそれ以上動けず、横倒しになって崩れ落ちる。
 傍ではほのおぱんちを打ち込んだユウェルは1体の上半身を燃え上がらせる。
 トドメにとユウェルは胴体へと炎の拳をめり込ませ、その命を奪い取っていた。
 気づけば、残る巨大アリは1体。
 シッコクから活力を分け与えてもらっていた熾煇が魔力撃を見舞っていく横から、立て直した風花もまた魔導書から抽出した魔力で魔砲を放つ。
「技のレパートリーには乏しいですが、威力はなかなかのものでしょう?」
 ギ、ギギ……。
 統率を失い、どうしようもなくなった働きアリは敗走すら許されない。
 風の精霊術が横から飛来し、その体を切り裂かれ、働きアリは避ける間もなく絶命してしまう。
 その術を発動させたリースリットは、この場にいた最後のアリの討伐を確認し、大きく息をつく。
「実に見事だ。さすがはイレギュラーズ」
 遺憾なく実力を発揮したメンバー達に、宇航も舌を巻いてしまうのだった。


 統率の兵士アリが倒れたことで、別方向から集落を囲んでいたアリ達も敗走を始めたようだった。
「こうして働きアリは働かないアリになりましたとさ」
 胸を張るシドラネルの傍ら、熾煇が倒れるアリへと食らいついたが。
「うーっ……ぺっぺっ。まずいぞこれー? 死んだこのアリどうするんだー? 食べられないぞー?」
 熾煇は想像以上に不味いと吐き出してしまう。
 なお、アリは通常種でも自重の数百倍の物を持ち上げる力を持ち、アリは食用に適した種があるのと、乾燥したり、加工したりするのだとか。
 漢方にも使われる為、有用性は高いのがアリという生物だ。
「食用ってほどの個体ではないですよね」
 風花もそうは言うが、依頼とはいえ狩りは狩り。狩ったのであれば可能な限り有効活用したいと考える。
「よく聞くのは、ワックスを使ったアリの敵味方識別能力の偽装や虫除け、ですか」
 ともあれ、部位を切り分け、宇航に伝手があるペイトの職人の元へと運ぶことに。
 ユウェルも仲間と手分けし、周囲を見回して穴が掘られていないか、追加のアリが来ないか等を調べる。
「うーん、やっぱり女王アリをどうにかしないとだめかな?」
 その際、ユウェルはファミリア―も使い、入念に調査を進めて何か手がかりをつかもうとしていた。
 そんな中、シドラネルはのんびりと寝そべっていて。
「ところで働きアリの7割が実際は働いていないと言う事実をご存知ですか?」
 やはり、労働は悪。働いたら罪となる法律制定をと主張する彼女に、皆呆れてしまうのだった。

成否

成功

MVP

リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは相手の生態から統率を崩すことを最優先とし、作戦を組んだあなたへ。
 今回はご参加、ありがとうございました。

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