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シナリオ詳細

探検家ロジャーと廃都よりの呼び声

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ロマンをなんと呼ぶか
 ――これはフリアノンの探検家ロジャー・ヴィットンソンによる記録を主とし様々な証言や記録をまとめたものである。

 フリアノンの外は危険だらけだ。
 空を危険な亜竜が頻繁に飛び、時には竜によって大地が滅茶苦茶に変形する。モグラの巣穴がごとき集落が落とされないのはかつての竜フリアノンの骨への畏怖や、単に穴蔵の中へ首を突っ込む面倒くささからだろう……と探検家ロジャー・ヴィットンソンは勝手ながら考えている。
 無論、物事には数多の理由があるものだが、主観というものはそれを細く狭めるものだ。そしてそれがなくては、人は前に進むことが出来ない。
「主観。そう、主観なのだ。私がこうして突き進む理由もまた」
 ランタンを掲げ、ロジャーは洞窟を進んでいく。
 人が通るには苦労しない程度の大きさをもった岩の穴。自然にできたとはとても考えづらいが、おおかた土を掘り進むタイプの亜竜によって作られたのだろう。その亜竜が再び現れる危険を考え知能の低い亜竜は入り込まないが、ロジャーは地面に落ちた排泄物の乾燥具合からそれはないと判断していた。この場所を作った亜竜は、作ってからかなり長い年月この場所を再利用していない。つまりはもうこの近くにいないか、ずっと前に死んでいるか。いずれにせよ、この穴の向こうから巨大なワームが現れ逃げ場のないロジャーを食い殺すというリスクはないに等しい。
 ではなぜここを進むのか。それは、ロジャーがフリアノンから東に大きく離れた『地上』にて発見した書物に、この場所が記されていたからに他ならない。
 地図と、印と、いくつかのヒント。
 その場所に何があるのか、彼は知らない。目もくらむ財宝かもしれないし、誰かの死体かもしれない。あるいはそのいずれも無く、残念だったネとあざ笑うメモが残されているかもしれない。
 それでも進むのだ。理由はなんだと人に問われれば、きっとこう答えるだろう。
「主観(ロマン)さ」

 洞窟を突き進む。危険はないが、それは洞窟を進んでいる間だけのことだった。
 しばらく進んだところで、彼は巨大な地下空洞へとたどり着いたのだ。
 まず想像してみてほしい。
 あなたがランタンの明かり一つで歩いていると、穴のずっと向こうにほのかな明かりを見つける。警戒しながら進んでいくと、穴は途中で途切れていた。
 まるでホースをスパンと切断したかのように唐突に途切れた足場からおそるおそる顔を突き出してみると、はるか眼下に景色があった。
 ほのかに光るものの正体であり、端的に言って『都市』だ。
 飛行の魔法でもなければ降りられないような距離に広がるのは三重の円形に道を作りそれにそって建物を並べたような円形都市であり、その中央には小ぶりな館がある。青白い光はその館から柱のように真上に伸びており、天井……つまりは地下空洞の岩盤によって遮られるように止まっていた。

 ロジャーは地図を広げ、マークを確かめる。歩いた距離やヒントからして、この場所が『そう』だ。
 ロジャーの探した『何か』はこの都市か、あるいはその中にあるものか……。
 ここから降りればより詳細に調べることができるだろう。
 だが、ロジャーはそうしなかった。
 籠にいれて連れていた小鳥にファミリアーの術式をかけて飛ばしてみると、より建物を近くでみることができた。
 建物はどれも小ぶりで、土か石を混ぜ合わせてつくられたのっぺりとした構造をしていた。雪でつくったカマクラをそのままコンクリートかなにかに置き換えたようなものばかりだ。形の微妙な違いはあれど、いずれも扉のようなものはなく、そして入り口も小さい。
 大人が常用するには小さすぎる、子供程度の身長に適した入り口だ。
 更に調べを進めようと小鳥を振り返らせたところで、人型の影を発見した。
 それは小鳥を発見したよううで、『グガッ』という声をあげると小鳥めがけて走り出した。
 飛んで逃げるような隙は、与えてくれなかったらしい。素早くとびかかり小鳥を掴むと、大きく口を開けてその頭を覆う。
 ショック――と共に接続が切れた。小鳥が殺されたのだろう。
 ロジャーはゆっくりと首を振り、そしてその場を後にした。
 危険があると分かっている場所に、一人でおりる愚はおかすまいと。

●探検家ロジャーと廃都よりの呼び声
「そういうわけだ。私の護衛と危険の排除。できれば調査の手伝いをしてもらいたい」
 フリアノンの中にあるバー。竜の骨でできたと言われるテーブルについて、亜竜種の男は言った。
 軽く髭をつけ、小粋な帽子を被った40~50台程度の顔つきだ。声は優しく、まるで眠る前に本を朗読するような落ち着きがあった。
「私はロジャー。探検家を名乗っている。マークのついた地図をもとに、その真実を求め探求する者だ」

 ローレットへと入ってきた依頼内容は彼の言ったように護衛。そして危険の排除。可能であれば調査の手伝いといったところだ。
 先述した『都市』らしき地下空洞へと降り、ファミリアー小鳥を殺した人型の存在を排除しつつ調査するといった所だろう。
 小鳥を見つけて即座にかみ殺すような存在ならば、おそらく話し合いや交渉といったものは通じないとみていいはずだ。
 そして作りこそ簡素であるとはいえいかにも理知的な都市を、こんな存在が作成し支配しているとは考えづらい。おそらくはこの場所を偶然みつけて住み着いたモンスターといったところだろう。
「私は戦闘の心は多少なりともあるが、あまり矢面に立たせてはくれるなよ。そのための、君たちなのだから」
 ロジャーはそう言って、ローレットの発行する依頼書にサインをした。

GMコメント

●オーダー
 探検家ロジャーの護衛と敵の排除。そしてできれば『都市』の調査を行います。
 この場所で遭遇するモンスターが「これで全部」だとは言い切れないので、多少の調査をしたらすぐに引き上げる予定になっています。

 敵対者の数は不明で戦闘力もわかっていません。
 人型であることから、ゴブリンやオーガといった亜人種族である可能性があげられています。
 戦闘がどのようなタイミングでおこるか明確には分かっていませんが、少なくとも都市へ降りてすぐに最初の戦闘が始まることは明らかです。
 最初の、または途中で発生するかもしれない戦闘である程度の被害が味方に出た場合、深刻化を避けるべく撤退を行います。この場合依頼は失敗扱いになるでしょう。

●調査内容
 この場所を都市と称しているのは建物が密集して建設されているからであって、社会的な都市機能があったか、住民が存在しているのか、といった部分については一切が不明です。
 こうした『未知』を切り拓く冒険が、この依頼の最大の目的と言えるでしょう。

●同行NPC
 この依頼には探検家ロジャーが同行します。というより、ロジャーの護衛として皆さんが同行する形になります。
 ロジャーが重傷を負ったり死亡するようなことがあれば、依頼は失敗となります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 探検家ロジャーと廃都よりの呼び声完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月10日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
黒水・奈々美(p3p009198)
パープルハート
ルビー・アールオース(p3p009378)
正義の味方
郷田 京(p3p009529)
ハイテンションガール
カフカ(p3p010280)
蟲憑き
風花(p3p010364)
双名弓手
梅・雪華(p3p010448)
梅妻鶴子

リプレイ

●主観(ロマン)は求めるものではない。既にもっていて然るべきものだからだ。
「幸い、ロマンには理解があるぜ。俺様にはな」
 中性的な顔立ちをしたドラゴニア、『梅妻鶴子』梅・雪華(p3p010448)は腰にかかるほど長い髪を片手で払うと、手にしていたひょうたん型のボトルの蓋を開いた。
 口をつけ、中身をあおるように傾ける。
 ぷはあと心地よいため息をつく彼には、酒精の香りが確かにあった。
「ま、ぼちぼちやろうじゃんロジャーくん」
「くんづけで呼ばれるほど若くは……まあ、あんたからはそう見えるのか。仙人さんよ」
 ロジャー・ヴィットンソン。フリアノンの探検家であり、今回の依頼人。
 彼は帽子のつばをちょいっと人差し指であげながら振り返ると、どこかキザな言い方をした。
「ほう? よく知ってるじゃん」
「知識は冒険の宝だぜ。ま、あんたの趣味に理解まではせんがね」
「どういう意味?」
 周りの面々がスーンとした顔をしたので、『パープルハート』黒水・奈々美(p3p009198)だけが首をかしげて尋ねてきた。
 チラリと見ると魔法生物『バンピア』もスーンとした顔をしていた。こういうとき大体ノリノリな筈だが……なんか解釈違いがあるのだろうか。
「え、なんで……? 大丈夫よね? 今回の依頼ももしかして強烈な……?」
 奈々美は地竜ザビアボロスと戦った(凄惨なと言ってもいい)記憶を思い出してぶるりと震えた。
「いやあ、さすがにドラゴンがらみじゃないっしょ」
 『ハイテンションガール』郷田 京(p3p009529)があえて声を大きくして、あっはっはと笑いながら手を振った。
 彼女たちが歩いているのは長いトンネル状の洞窟内。つまりは、ロジャーが地下都市を見つけるに当たって通った場所だ。
 ロジャーは地面に落ちている排泄物などを観察しながらワームが戻ってきては居ないことを確認し、ついてこいと手招きをした。
「別にないとは限らねえが……ドラゴンってのは身を隠さねえもんだからな」
 生き物は基本的に必要の無いことをしない。
 基本スペックが魔種より高く、天敵らしい天敵のいないドラゴンに隠れるだの潜むだのという考えははなからないのが殆どだ。
 一度訪れてその気配がないなら、ドラゴンはいないと考えておよそ間違いない。
「足の太い人間種」
「足の太い人間種?」
 自分のことを言ってんのか? と京が自分の膝を指さすと、ロジャーが頷きながら手招きを早める。
「この中で一番耳が良いのはお前だ。おかしな音は聞こえないか」
「んー……」
 京が耳に手を当てて意識を集中させている。風花(p3p010364)は邪魔にならないようにと口を閉じ、そしてできるだけ呼吸もとめた。
 その間にやることもないので、都市と呼ばれる場所のことを考えた。
 話によれば三重の円で舗装された道からなる円形の都市であるらしい。
 建物をその形に密集させるのは交通効率が高いという特徴をもつが、一方で正確な計測を要するため建設には相当な統率力と技術力そして人的資産を要するともいう。突然何かの奇跡で生えてきたんでもない限りは、相当に統率のとれた社会的集団がこの場所を建設したことになる。
 京が異常が無いことを告げると、とめていた息をはくようにして『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)がしゃべり出す。
「『一体この先に何が待ち受けているのか! ワレワレは未開の洞窟の奥へと進んだ!』
……イイよね! 謎の洞窟の奥にある町なんてロマンの塊だね! ワクワクするね!」
「ま、それは同感かな」
 両足を揃え、両手を腰の後ろで組んだ姿勢のままつつーっと滑るように隣をすすむ『ケイオスイーツ』カフカ(p3p010280)。
 ローラーシューズをまるで身体の一部のように器用に使いこなしているようだ。
「ちっちゃな頃親に黙って隣町まで遊びに行ったのを思い出すわ。
 っても、その時より危険やし、周りも頼りになるけど」
 冒険の規模はたしかに違い過ぎるが、未知を切り拓くこの感覚はやはりある。生まれて初めて日付をまたいだ時間まで起きていた時のことを、ふと連想した。昨日と今日という概念が急にひとつなぎになったような、混乱とも興奮ともつかないあの感覚。
 などと言っていると、『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)がスッと何か半透明なボードを取り出した。
「ロジャー・ヴィットンソン探検隊!
 覇竜領域の奥地に、幻の都市遺跡は実在した!」
 奇妙にギザギザとしたフォントで描かれた赤い文字。それにあわせ低い声でとなえるモカ。
 イグナートとカフカが突然この人はなにを言い出すんだという顔をしてきたが、モカは真顔のままコホンと咳払いをした。
「いや……元いた世界の娯楽作品でこういうのがあってな……。
 ロマンあふれる冒険を前に、つい思い出して叫んでしまったのだ」
「そういうモノなの?」
「ロマンの形って人それぞれやなあ」
「けど、誰がみてもロマンって分かる状況なのは確かだよね」
 『正義の味方』ルビー・アールオース(p3p009378)が両手をグーにして上下に振っている。
「竜の住まう大地の地下に謎の都市発見! これって凄いロマンだよ! 聞くだけでもうワクワクしちゃうよね」
 そう言いながら、ルビーは陸鮫を呼び出した。
 通路の奥から泳ぐように現れた陸鮫に跨がり、そこへ奈々美たちを相乗りさせる。
 そのまま通路を進むと途端に足場がなくなり……眼下には広い広い都市の姿が広がった。
 広大なスケールへの恐怖と、柱のようにのぼる青白い光とそれに照らし出される風景の美しさ。非日常的光景に、カフカたちは思わずオオと声を出してしまう。
 風花や雪華たちもそれは同じだったようで、飛行しながら眼下の風景にそれぞれの表情を浮かべていた。
「っても、優雅に空を観光するってわけにもいかなそうだぜ」
 見ろよと京が指さすと、こちらに向けて何かを振り回す存在が目に入った。
 布と石で作った投石具だ。やべっと呟いたカフカたちは陸鮫から離脱。遅れて、数個の石が空へと飛んできた。魔法を込めたのだろうか、かなりの飛距離を出していた。
 慌てて飛び出したルビーもカルミルーナのショットで起動を調節しながら建物の屋根へと着地した。
 飛行能力をもつモカが腕組みした姿勢で屋根の上へと合流し、覗き込むように様子をうかがう。
「早速、例の敵のお出迎えか」
「亜人系モンスターかな。ゴブリンとかそういうやつ」
 ポピュラーすぎてかえって定義が広いモンスターの名前を出し、カフカが相手の背丈を手で示した。
「対空攻撃の手段があるっぽいから空中戦は不利やね。機動力を生かして突っ込もう」
「速攻戦か。リョーカイ」
 イグナートは地面に両手をつくと、走り出すための独特な姿勢をとった。クラウチングスタートとは明らかに違う、走り出す前の虎のような姿勢だ。
 
 ギギッ、と食いしばった歯から声が漏れる。
 亜人系モンスターの口からだ。次なる投石を準備しようとしたところで、『空』から来た連中は建物の屋根に隠れてしまったからだ。
 よじのぼるには危険すぎるし、投石は構えて放つまでが長い。そして狙いもつけづらい。もし飛びかかってくるなら近接戦闘用の武器に持ち直す必要があるだろう。
 どのみち投石は牽制以上の意味は無いのだ。ならばここは堅実に近接戦闘の備えをすべきだろう。亜人系モンスターはそう考え、左手で短く持っていた棍棒を利き手である右手で長く持ち直した。縄をあんでつくった投石具は棍棒にからめるようにして回して握り、手から簡単に離れないようにする。
 さあいつでも来い――と構えたところで、道路両サイドの建物上から、二つの影が飛び出してきた。

「先手必勝。続きはたのむぜ」
 建物の屋根から滑るように路上へと飛び出した雪華は、斜角を確保し呪術のこもった札を放った。
 弾丸のように飛んだ札が、亜人系モンスターの棍棒に払われる。が、払った動作そのものがある意味雪華の狙いである。ほぼ同時に飛び出していた風花が射程を拡大した魔法を発射し亜人系モンスターへと直撃させる。APに乏しい個体だったのか、はげしいダメージを受けて派手に転倒した。
「小鳥を捕える程度には小回りも効くようですが、力任せ。とはいえここに住み着いてるということが重要です」
「ギッ――!」
 二人がある程度距離をとって戦闘をしかけた。それも高所からという所に亜人系モンスターたちは動揺したようだ。わざわざ不利な状況をつくったことに対してもそうだが、折角近接装備に持ち替えたのにという気持ちもあったのだろう。慌てた様子で残りの個体が投石の準備にかかった――ところで。
「愚直なのはいいけど、隙だらけなのさー! あんたらはー!」
 はげしい足音を立てて『屋根の上を』走り距離を詰める京。
 跳躍と同時に宙返りをかけ、ボウッと炎のオーラを吹き上げた。
 それだけではない。
 反対側の屋根を走ったモカが跳躍し、空中で不自然なほど的確に姿勢を整えると流星のようなキックを繰り出した。
 二人のキックが亜人系モンスターたちへと突き刺さる。とんでもない衝撃だが、全ての個体を倒しきるにはまだ足りない。
 残った個体たちは左右の建物へと逃げ込もう――として屋根からストンと飛び降りてきたイグナートとルビーに行く手を阻まれた。
 ガチンと武器を変形させるルビー。
 鎌の形をとったそれが魔力衝撃を噴射し、ほとんど構えもとらぬうちに高速で繰り出された刃が亜人系モンスターを真っ二つに切断する。
 その一方で、イグナートのパンチが亜人系モンスターの肉体に思い切り穴をあけた。
 こうなると建物の中へ逃げ込むのは無理だ。残った亜人系モンスターが通路の奥へと逃げだそうとしたところで、ガーッと何かが滑るような音が頭上でしたかと思うと屋根からカフカがジャンプした。
 ローラーシューズを巧みにつかった身のこなしで身体にスピンをかけ、着地の衝撃をスピンの勢いで逃がすそして踵のブレーキをかけてザッと立ち止まると――。
「どーも、ケイオスイーツでーす!」
 お届けにあがりました! と言いながら後ろ腰にあるホルスターから魔道銃を引き抜いて構えた。
 思わず足を止める亜人系モンスターたち。
 が、それがよくなかった。あるいは、詰んでいた。
 ズダンとはげしい音を立てて着地する奈々美が、マジカルステッキを構える。
 丁度カフカと奈々美で亜人系モンスターたちを挟むような構図だ。ハッとして振り返った亜人系モンスターたちだがもう遅い。奈々美とカフカが魔法を放つことで、建物に挟まれた通路上に固められた彼らの運命は決したのだった。いや、潰えたと言ったほうがいいだろうか。

「いやいや、見事なもんだ。いつもこのメンバーでやってるってわけでもないんだろう?」
 戦闘が終わってから姿を見せたロジャーが、ロープをつかって安全に通路へと降りてきた。
 イグナートの広域俯瞰によって敵の位置をある程度把握していた彼らは、戦場に敵を固めて範囲攻撃で一掃するという作戦を瞬時に立てていた。
 お互いの能力を知らないのによくできるなとロジャーはいうが、『全員ができることをした結果連携がとれた』というのはローレットでは日常茶飯事である。モカあたりは「むしろ何故知る必要がある?」などと首をかしげるほどだ。
 腕を組み、モカは京と並ぶように立った。
「私達の仕事はボディーガードだ。調査の方針を決めてくれ、ついていこう」
「アタシは脚ぃ使うのは得意だけどアタマ使うのは苦手だかんね。そっちは得意なやつに任すよ」
 得意なんでしょ? と話をふられてカフカが苦笑した。
「まあ、普通の人よりはできるかな」
 などと言いながらも、既にカフカの調査は始まっていた。
「少なくとも、この都市は亜人種のものやないね。建物の入り口が狭すぎるし、天井も低い。普段使いするには小さすぎる。もっと、さっきの亜人系モンスターみたいなのが使ってたと考えたほうが妥当じゃないかな。けど、こんなのを建設できるような技術力のあるやつが……」
「そうだなあ。棍棒と投石具だけで戦うわけねえよなあ」
 雪華が腕組みをして建物の中を覗き込む。
 中には真っ平らな地面があり、家具や道具のようなものはない。端っこに溝ができていて、そこが排水設備になっているのが雪華には分かった。
「なるほど、これは確かに都市、ですねぇ。知らない民族が住んでいたんでしょうか」
「かもしれねえなあ」
 風花が雪華と話ながら、ルビーに視線を向けてみる。ルビーはエネミーサーチを働かせているようで、何も感知していないことをジェスチャーで示してきた。
「本とか……そういう記録されたものはない?」
「そういうのは……ない……かな……」
 奈々美が他の建物をランタンで照らしながら呟く。ぱっとみ遺跡だ。はるかに永い年月を経て放置され、石でできた建物のガワだけが残り、そこにさっきの亜人系モンスターが住み着いたといった所だろう。第一、さっきの数だけで敵が尽きたというのが何よりの証となる。都市の規模に対して住民が少なすぎるし愚かすぎるのだ。
「やっぱり、行くべきはあそこかな」
 イグナートが振り返るのは、中央の建物だった。
 青白い光が空に向かって伸び、天井で遮られている。

 ロジャーたちは中央の建物へとやってきたが、入るための道はなかった。固く閉ざされているというか、そもそも扉のようなモノがないのだ。
 仕方なしにイグナートの鋼覇斬城閃で壁の一部を破壊して無理矢理侵入してみると、青い青白く巨大な宝石が建物の中央に浮いているのがわかった。
 宝石からは光が空に伸び、それが都市の外からも見えていた光だとすぐにわかる。
 建物内は手つかずのようで、あの亜人系モンスターが汚した形跡もない。
 ロジャーが宝石に近づき、カフカと雪華もそれに近づいた。
 ただの宝石でないことは一目瞭然だが……。
「魔力で、動いてるっぽいな……」
「そう、やなあ。ちょっとだけ注いでみる?」
 カフカは魔道銃の出力を絞って向けると、
 雪華もまた術を起動させて構える。ロジャーが頷くのを確認してから、二人は魔力を中央の宝石へと注ぎ始めた。
 するとどうだろう。宝石はゆっくりと回転をはじめ、ロジャーの『もっとだ』という声に応じて奈々美や風花たちも己の魔力を注力しはじめる。
 宝石はやがて元の形がわからなくなるほどに高速で回転し、そしてため込んだ力を放出するかのごとく柱の光を強めた。
「――っ!?」
 全員が身構える。
 そんな中で、光は都市の天井を塞いでいた岩盤にぶつかり、そして――貫いた。
 何かに気付いたのだろう。
 ロジャーが地図を広げる。
 そして。
「位置は、ここであっている。けどそれは、あくまで平面で見た場合の話だ」
 ロジャーが上を向いた。
「ん?」
「それって……」
 モカや京、イグナートやルビーたちが揃って上を見上げた。
「――空に、何かがあるのか?」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 この地下都市遺跡の直上。はるか上空に何かがあると確信したロジャーは一旦ここで冒険チームを解散しました。
 また冒険を続けたければ俺に声をかけてくれと言っています。

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