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シナリオ詳細

海底を這い牽く

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●海底を這い牽く
 潮風薫る、海洋、コン=モスカ島。
 海洋王国と静寂の青との境辺りに立するという事もあり、新天地へと向かう際の重要な拠点の一つとなっているこの海域。
 そしてその海域の周囲には幾つもの島があり、島に住む島民達は日々の生活が為に漁へと漕ぎ出している。
『……さぁ、今日も海の幸に感謝しよう』
 大海原に感謝の意を捧げながら、島を離れて数日……周りに他の漁船が殆ど居ない、彼等だけが知る漁場へと到着。
『みんな、準備はいい? それじゃ、網を投げ入れるよ! いーち、にー……さーん!』
 気持ちを合わせて、海底まで届く位に深くまで届く漁師網を投げ入れる。
 ロープがクルクルと周っていき……十分ほどすると、ロープの回転が止まる。
『海底に届いた様ですね……では、少ししたら引き揚げましょう』
 燦々と照りつける朝日はひなたぼっこに丁度良い位の暖かさ。
 同じ漁船に乗る仲間達と、どうでもいい話を笑ったり、ふざけあったり……一仕事前のささやかな休息の時。
 ……そして、時は経過し、引き揚げる時間。
『それでは、皆さん。一気に引き揚げますよ!』
『おー!!』
 と気持ちを合わせて、海底に沈んだ投網を船上に向けて引き揚げ始める。
 ……少しずつロープが巻かれていき、海底に広がった網がぎゅっと締め付けられて巻き上げられていく。
 だが……突然引き揚げているロープの回転が停止。
『……あれ? おかしいな……巻き上げ機、壊れたかな?』
 と、それを点検するが……壊れてなどいない。
『おかしいですね……何か大きいのが掛かってしまったか、それとも根掛かりか?』
 一旦ロープの巻き上げを止めて、緩ませ再度勢いづけて巻き上げる。
 ……が、その瞬間。
『……う、うわぁああ!?』
 巻き上げていた筈のロープが、逆に海中に向けて強く張る。
 いや、張るというよりは……逆に海底に向けて引っ張られている模様。
 網が引っ張られ……それを止めようとロープを全員で掴むが……その勢いは人の力を超えている。
 そして船は大きく傾き……そのまま90度横倒しになり、そして転覆へ。
 海に投げ出された彼等が必死に救いを求める中、網は船諸共海底へと沈んで行くのであった。


「おう……もう皆来ていたのか、すまないな」
 と、ひらり手を上げ挨拶する『黒猫の』ショウ(p3n00005)。
 そして時間を惜しむが如く、早速。
「今日皆に来て貰ったのは他でもないんだな……『コン=モスカ島』の近海で、最近不思議な海洋事故が多発しているんだ」
 海洋事故……と聞いて、小首を傾げる者。
「ああ、この海域に住む人々は、原因不明……漁をしていたら、船が転覆して海に投げ出され、そのまま死を迎える人々が多発しているって事になっている。でも、どうやらこの事故は……この海域の海底に根を張っている狂王種がどうも原因の様なんだわ」
「この狂王種……決して会場には出て来ず、海底で常に生活をしている、水棲系の狂王種の様なんだわ。そして網やらで海底丸ごと攫おうとしてくる漁船を網諸共海の中に引き込んでいるらしいんだわ」
「つまり……海底にびったりと張り付いている生物なのは間違い無い……ま、タコとかがへばりついているのだろう」
「狂王種は今の所会場には出て来ていないので、大きな被害までは至ってはいない。だが……味を占めたヤツが更なる被害を出して来るって事も考えられる訳だ。という訳で……今の内にこいつに対処してきて欲しい、って訳さ」
「本当にタコなのか、それとも別のなのかは分からねえ。でも、イレギュラーズの皆なら、少し位違っても対処出来る……だろ? という訳でよ、宜しく頼むぜ」
 と、ショウはニヤリ笑みを浮かべるのであった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 コン=モスカ島近海に現れた、海底生物の退治……となっております。

 ●成功条件
  海底深くに棲まう狂王種を退治する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
  今回の舞台は、コン=モスカ近海の深い深い海底になります。
  狂王種さんは今の所、決して会場に浮き上がってきません。
  その為、海底での戦いが強いられる形になりますので、引き揚げる作戦が無ければ海中行動は必須となります。
  ちなみに剥がせば行けるのでは……と思う部分もありますが、今回の狂王種は海底の岩場にへばりついている為、そう簡単に引き剥がすことはできませんので、ご注意下さい。

 ●討伐目標
  狂王種『這底蛸』
   巨大な蛸の狂王種です。
   その触腕の吸盤を、海底の岩場にしっかりとくっつけており、海底から浮き上がる様な事はほとんどありません。
   一対2本の腕を岩場にしっかりと張り付けているので、残る3対6本の触腕が基本的な攻撃手段となります。(つまり一ターンに6連続攻撃可能)
   この腕で出来るのは、腕を振り回しての攻撃と、海流を乱して皆様の動きを乱させる……という二つになります。
   またその口からタコ墨をぷしゅーっと吹き出し、海の中を墨で満たして視界不良を発生させます。
   仲間がその墨の中に紛れてしまい、見えない為にスキルが通らない……という可能性も考えられますので、その辺りもご注意下さい。
 
 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • 海底を這い牽く完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年03月19日 22時21分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
リオリオ・S・シャルミャーク(p3p007036)
タコ足総動員
玖・瑞希(p3p010409)
深き森の冒険者
嶺 繧花(p3p010437)
嶺上開花!

リプレイ

●海の薫りを
 潮風薫る、海洋のコン=モスカ島近海。
 新天地へと向かう為の重要な拠点であるこの海域には、幾つもの島々が点在しており、それらの島々に棲まう人々は、日々の生活を過ごす為、海へと漕ぎ出している。
 ただ無闇に殺生する訳ではない……海の幸に感謝し、海洋生物等への感謝の意を持ちながら、生きる為の糧を得る……それは、彼等彼女らにとっての日常。
 そんな蒼青と広がる大海原に。
「わーい、海洋だー、狂王種討伐だー!! 今回の仕事は……蛸討伐? えーと、腕が二本、足が六本のアレ、だよね?」
 目をキラキラと光らせている妻、『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)に夫『紅獣』ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)ははは、と笑いながら。
「そうだな。今度は巨大な蛸、と……生みとは言え、何でもかんでも巨大化し過ぎじゃないか??」
「そうだねー。今迄の狂王種も巨大化した水棲生物ばっかりだったけどねー」
 ははは、と乾いた笑いを浮かべるルーキス……そう、そんな日常に差し込むのは、不幸なる事件。
「今回の仕事は、海底に潜む蛸の狂王種を倒す、という事か……」
「ああ、全く……海底に寝そべったまま獲物を待つとは、随分と頭のいいやつらしい。それとも、ただの怠け者か……どっちにせよ厄介なことに変わりはねぇな」
 『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)の言葉に、肩を竦めながら、『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)が溜息をつく。
 ただ、『怠け者』という言葉に義弘が。
「怠け者、か……はは、面白いじゃないか?」
「面白いか? ……まぁ、俺が怠け者なのは否定しねぇがね。それじゃ今回は怠け者らしく見物させてもら……」
 と義弘のその言葉によりそうように『暁月夜』蜻蛉(p3p002599)が苦笑。
「……冗談さ。ちゃんとそれなりの動きはするさね」
 ははは、と乾いた笑いを躱す彼に、蜻蛉は。
「そうやね。そんなに海の底にしがみついて……いっその事、そのまま岩になってしもたらええのに。そやって静かに獲物が来るんを、そこで待っとるんやろうね」
 と静かに言葉を紡ぐ。
 そんな海洋に最早手慣れた仲間達の言葉に対し、まだまだそんなに慣れていないのは……。
「ふぅん……海にも、亜竜みたいに怖いモンスターが居るんだね?」
「その様だね? でも、むむぅ……水中戦か……! 私が水属性だったら良かったんだけどねぇ……あ、でもでも、ちゃんと泳ぎの練習はしてきたし、何事も経験だよね!」
「そうだね! ボク達でしっかり退治して、安心して出来るようにするんだ!」
 不安はあるものの『深き森の冒険者』玖・瑞希(p3p010409)と『嶺上開花!』嶺 繧花(p3p010437)が拳を振り上げ気合いを込める。
 そんな仲間達の気合いの入りように心強く感じつつも、一抹の不安を覚えてしまうのは……『タコ足総動員』リオリオ・S・シャルミャーク(p3p007036)。
「えーっと……狂王種? っていうのはよくわかんないけど、要は倒せばいいのよね? タコ仲間としては心苦しいけれど、海は弱肉強食の世界……負けた方がタコ焼きになる運命なのよ」
 そんなリオリオの言葉に気付いたように、ルナールが。
「そうだな。まぁ、タコは煮ても焼いても大体上手いしな。仕事終わりに回収して帰れたら良いんだがな」
「え……?」
 ルナールの言葉に明らかに引いた表情のルーキス。
 ともあれ。
「ま、兎に角まずは仕事を終わらせるとしようか?」
 とルーキスを促すと、気を取り直した様にルーキスは。
「そ、そうだね。うん、よし! 食えって言われる訳じゃないから大丈夫、多分!!」
 と、話をすり替えるように声を上げる。
 それに義弘、蜻蛉の二人からも。
「そうやね。これ以上人に悪さを重ねてしまわんうちに……終わりにしましょ」
「ああ。今回の奴は海の中で強烈な個体だ。タコ脚や吸盤で、海底から引き剥がすのも難しいだろう……ならば、正面からぶち抜くのみだ。倒して煮ダコにしてやるさ」
 そして、そんな仲間達の言葉を纏めるが如く、繧花が。
「よーっし! それじゃ今回も頑張っていこうっ!!」
 と、誰よりも気合い十分に拳を振り上げるのであった。

●映す影の形
 そしてイレギュラーズ達は船に乗り、コン=モスカ島から数日経た夕刻過ぎ。
 この辺りは島から島へ渡るルートからも離れており、漁をする船くらいしか訪れる事は無い……なので、船が通りがかる事もほとんど無く、海は静けさに包まれている。
「さて……と。この辺りだって話だな」
 島民達から船の調達と共に話を聞いておいた縁が、水平線を広く見渡す。
 全く以て、船の姿は見受けられないのだが……海図と照らし合わせれば、確かにこの辺り。
「うーん……もしかしたら、その巨大タコさんが牙を振るった後、とかかな?」
「ああ。だが、そうとなれば、船の残骸でもありそうなもんだが……」
 リオリオに義弘が首を傾げる。
 確かに今回の狂王種は、船を海中に引き摺り込んでいくという習性を持つ。
 でも、船諸共海中に引き摺り込んだとしても、船の残骸全てが海底に沈んでいるとは思えない。
「うーん……ん? ねえ、あれって何かな?」
 じっと目を凝らしていた瑞希がふと、左舷の遥か前方を指さす。
 単眼鏡でその辺りを確認すると……船に使われている甲板と思しき木材の破片が散らばり、漂っている。
「……うん、あの辺りで間違い無さそうだね」
「分かった。急いで向かおう」
 ルーキスに頷くルナール、そして船は舵を取り、その方角に向けて全速前進。
 その海域に到着すると、船の残骸と共に……漁師達の遺品が海上を漂っていた。
「……」
 そんな遺留品達に、僅かに悲しそうな表情を浮かべる蜻蛉。
「……大丈夫か?」
「……」
 縁の声掛けに、こくり、と頷く蜻蛉。
 そして繧花が。
「それじゃ、海の中へ……だよね? 深海は暗いって聞いた事があるから、しっかりと暗所でも見えるようにしないと、ね!」
 ニッ、と笑みを浮かべ、暗いところでも視界ぱっちりな目薬を刺す繧花。
 他の仲間達も、飴やらお茶やらで暗視効果を得ると共に、船をその場に停泊させて。
「それじゃみんな、準備はいい? 行くよ!」
 リオリオの言葉に皆も頷き、次々と海中へダイブしていく。
 既に宵闇始めた海中は灯りもなく、真っ暗。
 かなり視界は悪く、海浅な所は多少は視界を持てる状態。
「取りあえず……先ずは海底に向かうぞ。今回の奴さんは、海底を這いずりまわっていると言うしな」
 と縁の言葉に皆も頷き、イレギュラーズ達は海底に向けて深く、深く深水していく。
 当然深くなれば成る程、空の灯りは差し込まなくなり暗視であってもそこまで遠くまで見渡す事は出来ない程の状態になっていく。
「……中々、暗いね……」
 と瑞希が少し不安気にぽつりと零す。
 それに繧花が。
「本当だね……でも、大丈夫。みんなで力を合わせれば、ね!」
 明るいポジティブシンキングで励ますと、瑞希はこくり、と頷く。
 そして、更なる海底に向けて深く、深く潜っていくと……ぼんやりと海底を這いずりまわる、暗桃色の『何か』の姿を捉える。
「……あいつか」
「そうみたいだね……アタシは後ろから援護するね。みんな、頑張って」
 義弘に頷くリオリオ、そしてイレギュラーズ達は一気に、海底を這いずる狂王種タコに向けて接近していく。
 勿論、海底を這いずるタコは接近してくるイレギュラーズ達に気付き。
『……ウゥゥ』
 海の中でも響く、声とも付かない呻き声を上げながら、その腕を振り上げ、海底へと振り落とす。
 腕の衝撃波によって巻き起こされた海流がうねりを上げて、海底に渦の流れを作り出す。
 ……そしてそのうねりはイレギュラーズ達の居る辺りにまで伝搬し、左へ、右へと押し流される。
「っ……!」
 咄嗟に防御姿勢を取り、その乱れ波に抵抗するルナール。
「このうねりは中々厄介そうだ。泳ぎ慣れたヤツでも流れに飲まれかねねえ。だが……取りあえず攻撃範囲まで近づかないとな」
 と義弘の言葉にこくり、と瑞希は。
「……うん。僕、頑張るよ」
 恐怖は一杯だが、それを魅せないように力強く頷く。
 そして、そのまま瑞希はタコに向けて。
「僕こそは捕食者だ! キミを美味しく頂く者だ!!」
 威風堂々たる名乗り口上を述べて、巨大タコの注意を己に惹きつける。
 タコは、その声に身を向ける……耳はある模様。
 そして瑞希の挑発にビタンビタン、と足を地面に叩きつけ、更なる乱れた海流を作り出して行く。
 だが、その間に縁が逆のサイドに移動しつつ更なる接近。
「ずっと海の底にいるんじゃ、身体が鈍っちまってるだろ。俺たちと根比べといこうや、でっかいの!」
 逆方向からの怒りを呼ぶ声に、タコはその足の一部で反攻。
 6本の触腕を前後に叩きつけることで、前からも、後ろからもの両面攻撃に対峙してくる。
 とはいえそれは攻撃回数も、当然前後に分散される事になってしまう。
「ほらよ。腕六本でどこまでもつかねぇ?」
 ニッ、と不敵な笑みを浮かべた縁が、漂う足を乱撃の閃剣で次々と切り刻んでいく。
 攻撃を受け、僅かに怯んだ風な相手に、更に斬り込んでいく義弘と繧花。
「お前さんが海底にひっついているのも、その足でだろう? なら、その足を傷付ければ、お前さんも浮かんでくるかもな?」
「そうだね! よーっし、いくぞー!! これがホントのタコ殴りってね!!」
 義弘と、繧花二人は最接近して、両者海底に引っ付いている触腕に向けて集中攻撃を行う。
 勿論その足は地面にひっついているので、攻撃を躱す事は出来ない。
 ……とは言え一撃、二撃位の攻撃で、簡単に引き剥がされるものでもないようで、タコはまだ海底にしっかりとひっついたまま。
「ふーん……これは中々体力もあるみたいだね。本当、最近はこういう風に暴れている狂王種が多いこと多い事……」
 と苦笑するルーキス……そして隣にいた蜻蛉に向けて。
「回復の方は、頼んだよ?」
「ええ……」
「うん。それじゃあ……私はこれでみんなをサポートするよ」
 ルーキスは血を好む軍勢を召喚。
「多少暗かろうが見逃すキミ達じゃない。さあ、行って」
 とその軍勢を離れたタコに向けて進軍させ、様々な方角から攻撃。
 そしてルナールは、その軍勢を横目に見た上で、後方のルーキス、蜻蛉にアイコンタクト。
「こっちは大丈夫だよ!」
「そうか……庇いはあまり必要無いかもな。それなら前衛は前衛らしく、前に出て叩くとするか」
 庇う予定だったが、二人は大丈夫そうだと感じ、ルーキスもタコに接近し、防御を攻撃へと帰る一撃で、タコ脚一つに強打の一撃。
 そう前衛陣が一通り攻撃を終えた所で、状況を観察していたリオリオが。
「取りあえずこのタコさんの一番厄介なのは、巻き起こす海流の様だね……なら、アタシが動きを阻害させてもらうね!」
 と封印の術を施し敵の動きを制限。
 そして最後に蜻蛉が、仲間達の消耗度合いを見定めた上で。
「皆、くれぐれも済みには気ぃつけて。危なくなったら見えるところまで出て来て下さいね!」
 と月の光を浮かび上がらせ、周りの仲間達を回復させていく。
 そんなイレギュラーズ達の行動に、どうやら相手も……少しは知恵が回り始めた様で。
『グゥゥ……ゥゥゥ』
 唸り声で威嚇すると共に、その顔がドンドンと赤く染まる。
 そして、プシュウ、と口元から漆黒の隅を吐き出す事で、視界を漆黒に染め行く。
「これがタコ墨か……怒りが頂点に達すると吐き出すとかか?」
「みたいだな。仲間の誤射に気をつけてな」
 ルナールに縁が真摯な口調で注意喚起。
 仲間の姿をも見えない位に真っ黒なタコ墨。
 暗視でぼんやりとではあるがタコの巨躯はどうにか見渡せるので……ピンポイントに狙いを定め、接近し、攻撃。
 タコの3対6本の足を集中的に攻撃しつつ、1対2本は義弘と繧花が攻撃を行い……海底への固着を引き剥がそうと悪戦苦闘。
 流石に4対8本の足を持つタコだが、人数比で言えば1対8なのは変わらない。
 数刻の先には、まずは固着していたタコ足が使い物にならなくなる。
 足元崩されたタコは、海底で不安定に挙動を乱す事になる。
「ん、体勢を崩したみたいだね? それじゃあこっちも前に出ますか!」
 とルーキスは嬉しそうに前線へと進軍、ルナールの一歩後ろまで展開し。
「ルナール先生、ガードアシスト頼むよ!」
「ああ、庇いは俺に任せろ」
 息のあった連携で、ルーキスは神秘的破壊力を持った一撃、ルナールは同じく破壊力抜群の一閃を叩き込む。
 縁、義弘、繧花らもそれぞれ足を至近距離で集中攻撃し……傷を負った際にはその場から離れて墨の外へ出ることで、蜻蛉、リオリオの回復を受ける様に動き回る。
 ……流石にその様な動きに俊敏に対応出来ない巨躯のタコは、海流を乱してイレギュラーズを妨害しようとするので精一杯。
 そして……4対8脚全てがもはや使い物にならなくなれば、残るは回避出来ずに鎮座する己が身のみ。
「大丈夫。毒抜きもしっかりして、キミの命は無駄にはしないから……!」
 と瑞希が掛ける言葉に、巨大タコはふるふると身を震わせる。
 勿論、見逃す事は出来ないので……そんな巨大タコに放つは、残影を纏う攻撃。
 その拳がタコの身を次々と叩きのめすと、加えて繧花の烈火の如き拳が放たれれば……避ける事も出来ないタコは絶命の一途を辿るのであった。

●命を守る心
 ……そして。
「ふぅ……これで最後、だよね」
 倒した巨大タコの身を分断し、引き揚げるイレギュラーズ。
 船の甲板が半分以上埋まる程の巨躯は、かなり圧巻。
「……ふぅ。ほんまにこんな巨体やったんやね」
 苦笑する蜻蛉に頷きつつ、瑞希が。
「ちゃんと食べられるみたいだし、少しも無駄にはしないって約束したからね……それじゃあ、美味しく料理してあげないとね」
 と瑞希が先ずはそのタコ足を少し切り取り、調理し始める。
 ……が、それに驚いた表情を浮かべたのは、繧花とルーキス。
「え……食べられるんですかコレ!?」
「これ、食べるの?? 食材適正つけたから平気?? え??」
 ちょっと混乱している二人。
 そこにルナールが。
「どうした?」
 と声を掛けるとルナールは。
「だってこれ美味しいとか絶対いけるとかじゃなくてこれモンスターだから!!」
 呼吸為しにまくしたてるルーキス。
「ルーキス、これはモンスターだが蛸だぞ、蛸。ちゃんと食材だから食える……って、そうか、コレを食う文化が無かったんだっけか……さっきまで元気だったから新鮮だぞ?」
「いやいやさっきまで元気だったからとか新鮮というの謎!」
 興奮……というか混乱ぎみなルーキスを、ルナールは宥めつつ、一方繧花は調理してくれている瑞希の手際を見つつ。
「……ま、まぁ確かに、大きい蛸だと思えば……アリ? アリかな? そうだよね、狩った獲物は無駄にしちゃいけないっていうし……みんなで美味しく頂きましょうか! えっへっへー、タコ焼きタコ焼きー!!」
 ちゃっかり食べるモードに入ってしまう繧花。
 そして瑞希が料理している中、義弘はもう少し潜り……遺留品などを回収。
 更に蜻蛉も、宵闇に染まった海を眺めつつ……目を閉じ、今回の被害者達の冥福を祈る。
 そして、タコ焼きがどでんと出来上がり、もぐもぐしていくイレギュラーズ(ルーキス除く)達。
「……」
 ルーキスは明らかに戦慄の表情を浮かべており、それに縁が。
「まぁ……確かに慣れるにゃ時間が掛かるだろうなぁ……」
 と笑うと……蜻蛉もこくりと頷くのであった。

成否

成功

MVP

玖・瑞希(p3p010409)
深き森の冒険者

状態異常

なし

あとがき

今回も依頼に参加頂き、ありがとうございました!
タコさん嫌い、というか海の幸を生で食べる習慣がない方にとっては、確かに今回の依頼……地獄だったかもしれませんね……。
ともあれ海洋の平穏を護るためにも、これからも宜しくお願いします……?

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